説明

画像形成装置

【課題】用紙上に転写されたトナー上に、他の色のトナーを良好に重ねることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置(カラープリンタ1)は、第1の画像形成部30Yと、その下流側に配置される第2の画像形成部30Kとを備える。第1の画像形成部30Yは、第1の感光体の回転方向において、第1の現像ローラ53Yよりも下流側で、かつ、第1の転写部材(転写ローラ74Y)の上流側の位置で、第1の感光体の表面を露光する第1の転写前露光部材100を備える。そして、第1の転写前露光部材100は、第1の色の現像剤が吸収可能な光を出射するように構成され、第1の感光体が第1の転写前露光部材100によって露光されるとともに、第2の感光体が転写前露光されないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像を形成可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラープリンタなどの画像形成装置として、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応した感光ドラムが用紙の搬送方向に沿って並べて配置される、タンデム型のものが知られている(特許文献1参照)。タンデム型の画像形成装置では、各感光ドラムに対応して転写ローラが設けられ、この転写ローラに転写バイアスが印加されることで、感光ドラムと転写ローラとの間で用紙を搬送する際に、感光ドラム上のトナーが用紙上に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−102084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した技術では、図6(a)に示すように、例えば用紙Pに転写した1色目のトナーT1が一箇所に凝集した場合には、当該1色目のトナーT1の電位が高くなることがある。そして、この場合において、図6(b)に示すように、1色目のトナーT1の上に他の色のトナーT2を重ねるように転写すると、電位が高い1色目のトナーT1によって他の色のトナーT2が弾かれ、飛散してしまうといった問題があった。なお、この飛散の問題は、1色目のトナーが2色目、3色目の感光ドラムと転写ローラ間を通る際に転写バイアスによって帯電量が上がること(以下、「チャージアップ」とも呼ぶ。)によって、4色目のトナーを1色目のトナーに載せる場合に顕著に生じる。
【0005】
そこで、本発明は、用紙(被転写媒体)上に転写されたトナー(現像剤)上に、他の色のトナーを良好に重ねることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、第1の画像形成部と第2の画像形成部とを備える。
第1の画像形成部は、第1の感光体と、前記第1の感光体に現像剤を供給する第1の現像ローラと、前記第1の現像ローラに供給される第1の色の現像剤が内部に収容される第1の現像剤収容器と、前記第1の感光体と対向して配置され、当該第1の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第1の転写部材と、を有する。
第2の画像形成部は、第2の感光体と、前記第2の感光体に現像剤を供給する第2の現像ローラと、前記第2の現像ローラに供給される第2の色の現像剤が内部に収容される第2の現像剤収容器と、前記第2の感光体と対向して配置され、当該第2の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第2の転写部材と、を有する。
前記第1の感光体は、前記被転写媒体の搬送方向において、前記第2の感光体に対して上流側に配置される。
前記第1の画像形成部は、前記第1の感光体の回転方向において、前記第1の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第1の転写部材の上流側の位置で、前記第1の感光体の表面を露光する第1の転写前露光部材を備える。
そして、前記第1の転写前露光部材は、前記第1の色の現像剤が吸収可能な光を出射するように構成され、前記第1の感光体が前記第1の転写前露光部材によって露光されるとともに、前記第2の感光体が、当該第2の感光体の回転方向における前記第2の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第2の転写部材の上流側の位置で露光されないように構成されている。
【0007】
本発明によれば、第1の転写前露光部材で第1の感光体を露光すると、第1の感光体の表面のうち第1の色の現像剤が付着している部位は現像剤が光を吸収することで電位が下がり難く、現像剤が付着していない部位の電位が下がることになる。これにより、第1の色の現像剤が周囲の部位に飛散するので、用紙に転写した際の現像剤の凝集による電位の上昇を抑えることができ、下流側の第2の色の現像剤を第1の色の現像剤の上に精度よく重ねることができる。また、第2の感光体に対しては転写前露光(現像ローラよりも下流側で、かつ、転写部材の上流側の位置での露光)が行われないことにより、第2の感光体上において第2の色の現像剤が飛散しないので、第2の色の現像剤を滲ませることなく第1の色の現像剤上に重ねることができる。
【0008】
また、本発明において、前記第1の画像形成部および前記第2の画像形成部とは別の画像形成部を、前記搬送方向において前記第1の画像形成部および前記第2の画像形成部との間に並ぶように少なくとも1つ設け、前記第2の色をブラックとし、前記第1の画像形成部を前記搬送方向において最上流側に設けてもよい。
【0009】
これによれば、第1の画像形成部と第2の画像形成部との間に別の画像形成部が設けられる状況下では第1の色の現像剤がチャージアップしてブラックの現像剤が第1の色の現像剤に載り難いが、第1の画像形成部にて第1の色の現像剤を分散させることで、チャージアップの影響を減らして、ブラックの現像剤を第1の色の現像剤に精度よく重ねることができる。
【0010】
また、本発明では、前記第1の色をイエローとし、前記第2の色をブラックとするのが望ましい。
【0011】
これによれば、飛散させる現像剤の色が目立たないイエローなので、画像品質を維持することができる。また、目立つ色のブラックの現像剤がイエローの現像剤の上で飛散しないので、画像品質を向上させることができる。
【0012】
また、本発明では、マゼンタの現像剤が供給される第3の感光体を有する第3の画像形成部と、シアンの現像剤が供給される第4の感光体を有する第4の画像形成部と、さらに設け、前記第3の感光体と前記第4の感光体を、前記第1の感光体と前記第2の感光体の間に配置してもよい。
【0013】
これによれば、最も目立たないイエローの現像剤を最上流側にして飛散させることで、飛散による画像品質への影響を最も少なくすることができる。
【0014】
また、本発明では、前記第3の画像形成部が、前記第3の感光体に現像剤を供給する第3の現像ローラと、前記第3の感光体と対向して配置され、当該第3の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第3の転写部材と、前記第3の感光体の回転方向において、前記第3の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第3の転写部材の上流側の位置で、前記第3の感光体の表面を露光する第3の転写前露光部材と、を備え、前記第4の画像形成部が、前記第4の感光体に現像剤を供給する第4の現像ローラと、前記第4の感光体と対向して配置され、当該第4の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第4の転写部材と、前記第4の感光体の回転方向において、前記第4の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第4の転写部材の上流側の位置で、前記第4の感光体の表面を露光する第4の転写前露光部材と、を備える場合には、前記第1の転写前露光部材から出射される光が前記第1の感光体上の現像剤により吸収される割合が、前記第3の転写前露光部材および前記第4の転写前露光部材から出射される光が前記第3の感光体および前記第4の感光体上の現像剤により吸収される割合よりも大きくなるように構成してもよい。
【0015】
これによれば、第3の感光体および第4の感光体では、第1の感光体に比べ光が現像剤により吸収されにくいので、第3の感光体上および第4の感光体上の現像剤の飛散を低減することができる。また、第3の感光体および第4の感光体に対して転写前露光を実行することで、第3の感光体および第4の感光体全体の電位を低くすることができるので、被転写媒体上の第1の色の現像剤が第3の感光体および第4の感光体を通過するときにおける第1の色の現像剤のチャージアップを抑えることができ、第2の画像形成部での転写性を上げることができる。
【0016】
また、本発明において、前記第1の転写前露光部材から出射される光のピーク波長を、紫外線の波長領域よりも長くするのが望ましい。
【0017】
これによれば、ピーク波長が紫外線の波長領域にある光を感光体に出射する場合に比べて、感光体の劣化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被転写媒体上に転写された現像剤上に、他の色のトナーを良好に重ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを簡略化して示す説明図である。
【図2】第1の転写前露光部材を示す説明図である。
【図3】感光ドラム上に供給されたトナーが転写前露光によって飛散する状態を示す説明図(a)〜(d)である。
【図4】飛散したイエローのトナーにブラックのトナーを重ねる状態を示す説明図(a),(b)である。
【図5】第3および第4の画像形成部に第3および第4の転写前露光部材を設け、各転写前露光部材から光を出射させる形態を示す説明図である。
【図6】1色目のトナーに他の色のトナーを重ねるときに発生する問題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0021】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0022】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、被転写媒体の一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0023】
給紙部20は、用紙Pを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙搬送装置22とを備えている。
【0024】
画像形成部30は、スキャナユニット40と、プロセスユニット50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備えている。
【0025】
スキャナユニット40は、装置本体10内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。そして、スキャナユニット40では、レーザビームが図の2点鎖線で示す経路を通って、後述する感光体の一例としての感光ドラム51の表面上に高速走査にて照射される。
【0026】
プロセスユニット50は、装置本体10の前面に配置されたフロントカバー11を開放することによって形成される開口部10Aを通して、装置本体10に着脱可能となっている。プロセスユニット50は、ドロワ60と、ドロワ60によって回転可能に支持される4つの感光ドラム51と、各感光ドラム51に対応するようにドロワ60に着脱可能に設けられる4つの現像カートリッジ52とを備えている。
【0027】
なお、本明細書および図面において、トナー(現像剤)の色に対応した感光ドラム51や現像カートリッジ52などを特定する場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれに対応させて、Y、M、C、Kの記号を付することとする。また、トナーの色とは関係なく、感光ドラム51等を説明する場合には、上述したようなY、M、C、Kの記号は省略することとする。
【0028】
各感光ドラム51は、プロセスユニット50を装置本体10に装着している状態において、前後方向(所定方向)に沿って配列されている。ドロワ60には、各感光ドラム51を露光する4つの帯電器55などが適宜設けられている。また、現像カートリッジ52には、感光ドラム51にトナーを供給する現像ローラ53と、トナーが内部に収容されるトナー収容器54と、公知の層厚規制ブレードや供給ローラ等が設けられている。
【0029】
転写ユニット70は、給紙部20とプロセスユニット50との間に設けられ、公知の駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写部材の一例としての転写ローラ74を備えている。
【0030】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間にエンドレスベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光ドラム51に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光ドラム51に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0031】
定着ユニット80は、プロセスユニット50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0032】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム51の表面が、帯電器55により一様に帯電された後、スキャナユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、現像カートリッジ52に回転可能に支持される現像ローラ53によって、現像カートリッジ52内のトナーが、感光ドラム51上の静電潜像に供給されることで、感光ドラム51上にトナー像が担持される。
【0033】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム51と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム51上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0034】
排紙部90は、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラ91を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ91によって搬送され、装置本体10の外部に排出される。
【0035】
<画像形成部30の詳細構造>
画像形成部30は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を用紙Pにそれぞれ形成するために4つの画像形成部30Y,30M,30C,30Kに分かれて構成されている。具体的に、イエローの画像を用紙Pに形成するための画像形成部30Yは、図面に記号Yを付して表記する感光ドラム51Y等の各部材や、スキャナユニット40内におけるイエロー用の光源や光源からの光を感光ドラム51Yに導くためのイエロー用の光学部品によって構成されている。
【0036】
そして、4つの画像形成部30Y,30M,30C,30Kは、用紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向けて順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に並べられている。すなわち、本実施形態においては、イエロー用の画像形成部30Yが第1の画像形成部に相当し、ブラック用の画像形成部30Kが第2の画像形成部に相当し、マゼンタ用の画像形成部30Mが第3の画像形成部に相当し、シアン用の画像形成部30Cが第4の画像形成部に相当している。なお、以下の説明では、必要に応じて、イエローに対応する部材には名称の頭には「第1」を付し、マゼンタに対応する部材には「第3」を付し、シアンに対応する部材には「第4」を付し、ブラックに対応する部材には「第2」を付すこととする。
【0037】
最上流側に位置する第1の画像形成部30Yには、第1の転写前露光部材100が設けられ、その他の画像形成部30M,30C,30Kには転写前露光部材が設けられない構成となっている。すなわち、第1の感光ドラム51Yのみに対して転写前露光(現像ローラ53よりも下流側で、かつ、転写ローラ74の上流側の位置での露光)が実行され、他の感光ドラム51M,51C,51Kに対しては転写前露光が実行されないようになっている。
【0038】
第1の転写前露光部材100は、感光ドラム51Yの回転方向において、現像ローラ53Yよりも下流側で、かつ、転写ローラ74Yの上流側の位置に配置され、当該位置で感光ドラム51Yの表面を露光している。具体的に、第1の転写前露光部材100は、図2に示すように、冷陰極管や発光ダイオードなどの1つの光源110と、光源110から感光ドラム51Yの軸方向に沿って出射される光を略直角に偏向して感光ドラム51Yの表面の軸方向略全体に出射する導光板120とを備えて構成されている。なお、感光ドラム51Yに対する光の出射範囲は、画像形成範囲(用紙Pに形成される画像の最大幅)以上であればよい。
【0039】
そして、第1の転写前露光部材100は、イエローのトナーが吸収可能な光を出射するように構成されている。具体的には、第1の転写前露光部材100は、光のピーク波長が紫外線の波長領域よりも長い380nm〜480nmの光を出射するように構成され、特に本実施形態では、中心波長が470nmのブルーの光を出射するように構成されている。
【0040】
これにより、ピーク波長が紫外線の波長領域にある光を感光ドラム51Yに出射する場合に比べて、感光ドラム51Yの劣化を抑えることが可能となっている。
【0041】
また、図1に示すように、装置本体10には、第1の転写前露光部材100を制御するための制御装置200が設けられている。制御装置200は、印字指令を受けると、印字制御の間、第1の転写前露光部材100から感光ドラム51Yに対して光が出射されるように、第1の転写前露光部材100を制御している。
【0042】
<第1の転写前露光部材100の作用>
次に、第1の転写前露光部材100の作用について説明する。
図3(a),(b)に示すように、帯電器55Yによって帯電された感光ドラム51Yの表面をスキャナユニット40からのレーザビームで露光すると、レーザビームで露光された部位の電位が下がる。
【0043】
図3(c)に示すように、スキャナユニット40で露光された部位に対して現像ローラ53YからイエローのトナーTYが供給されると、感光ドラム51Y上にイエローのトナーTYによるトナー像が形成される。その後、第1の転写前露光部材100によって感光ドラム51Yの表面が露光されると、図3(d)に示すように、感光ドラム51Yの表面のうちイエローのトナーTYが付着している部位はトナーTYがブルーの光を吸収することで電位がほとんど下がらないので、このトナーTYが付着した部位よりもトナーTYが付着していない部位の電位が下がることになる。
【0044】
これにより、イエローのトナーTYが周囲の部位に飛散するので、トナーTYの凝集による電位の上昇を抑えることが可能となっている。
【0045】
その後、図4(a)に示すように、感光ドラム51Y上で飛散したイエローのトナーTYが用紙Pに転写されることで、用紙P上においてもイエローのトナーTYの電位は維持される。そして、図4(b)に示すように、この用紙P上のイエローのトナーTY上にブラックのトナーTKを重ねて転写する際には、ブラックのトナーTKがイエローのトナーTYで弾かれることないので、ブラックのトナーTKをイエローのトナー上に精度よく重ねることができる。
【0046】
以上、本実施形態によれば、前述した効果の他、以下に示す効果も奏する。
ブラックの感光ドラム51Kに対しては転写前露光が行われないことにより、ブラックの感光ドラム51K上においてブラックのトナーTKが飛散しないので、ブラックのトナーTKを滲ませることなくイエローのトナーTY上に重ねることができる。
【0047】
第1の画像形成部30Yと第2の画像形成部30Kとの間に別の画像形成部30M,30Cが設けられる状況下ではイエローのトナーがチャージアップしてブラックのトナーTKがイエローのトナーTY上に載り難いが、第1の画像形成部30YにてイエローのトナーTYを分散させることで、チャージアップの影響を減らして、ブラックのトナーTKをイエローのトナーTYに精度よく重ねることができる。これによって、下地となるイエローのトナーが見えることによる色調の変化を低減できる。
【0048】
転写前露光により飛散させるトナーの色をイエローとしたので、画像品質を維持することができる。また、目立つ色のブラックのトナーTKを飛散させないようにしたので、画像品質を向上させることができる。
【0049】
特に、本実施形態では、最も目立たないイエローのトナーを最上流側にして転写前露光により飛散させたので、飛散による画像品質への影響を最も少なくすることができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0051】
前記実施形態では、第1の画像形成部30Yのみに第1の転写前露光部材100を設けることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、第3の画像形成部30Mおよび第4の画像形成部30Cにも、第3の転写前露光部材300および第4の転写前露光部材400を設け、各転写前露光部材100,300,400から前記実施形態と同様のブルーの光を出射させてもよい。すなわち、制御装置200によって各転写前露光部材100,300,400から各感光ドラム51Y,51M,51Cに向けて光を出射させてもよい。言い換えると、第1の転写前露光部材100から出射される光が第1の感光ドラム51Y上のイエローのトナーにより吸収される割合が、第3の転写前露光部材300および第4の転写前露光部材400から出射される光が第3の感光ドラム51Mおよび第4の感光ドラム51C上のマゼンタやシアンのトナーにより吸収される光の割合よりも大きくなるように構成される場合には、各転写前露光部材100,300,400から各感光ドラム51Y,51M,51Cに向けて光を出射させてもよい。
【0052】
これによれば、第3の感光ドラム51Mおよび第4の感光ドラム51Cでは、第1の感光ドラム51Yに比べ光がトナーにより吸収されにくいので、第3の感光ドラム51M上および第4の感光ドラム51C上のトナーの飛散を低減することができる。また、転写前露光によって第3の感光ドラム51Mおよび第4の感光ドラム51C全体の電位を低くすることができるので、用紙P上のイエローのトナーが第3の感光ドラム51Mおよび第4の感光ドラム51Cを通過するときにおけるイエローのトナーのチャージアップを抑えることができ、第2の画像形成部30Kでの転写性を上げることができる。
【0053】
前記実施形態では、第1の画像形成部をイエロー用の画像形成部30Y、第2の画像形成部をブラック用の画像形成部30K、第3の画像形成部をマゼンタ用の画像形成部30M、第4の画像形成部をシアン用の画像形成部30Cとしたが、本発明はこれに限定されず、各画像形成部と色の関係は適宜変更してもよい。
【0054】
前記実施形態では、感光体として感光ドラム51を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を採用してもよい。
【0055】
前記実施形態では、被転写媒体の一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよいし、中間転写ベルトなどであってもよい。
【0056】
前記実施形態では、転写部材として転写ローラ74を採用したが、本発明はこれに限定されず、導電性ブラシや導電性板バネなど、転写バイアスが印加されるものでどのようなものであってもよい。
【0057】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 カラープリンタ
30Y 第1の画像形成部
30K 第2の画像形成部
51Y 第1の感光ドラム
53Y 第1の現像ローラ
54 トナー収容器
55Y 帯電器
74Y 転写ローラ
100 第1の転写前露光部材
P 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の感光体と、前記第1の感光体に現像剤を供給する第1の現像ローラと、前記第1の現像ローラに供給される第1の色の現像剤が内部に収容される第1の現像剤収容器と、前記第1の感光体と対向して配置され、当該第1の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第1の転写部材と、を有する第1の画像形成部と、
第2の感光体と、前記第2の感光体に現像剤を供給する第2の現像ローラと、前記第2の現像ローラに供給される第2の色の現像剤が内部に収容される第2の現像剤収容器と、前記第2の感光体と対向して配置され、当該第2の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第2の転写部材と、を有する第2の画像形成部と、を備えた画像形成装置であって、
前記第1の感光体は、前記被転写媒体の搬送方向において、前記第2の感光体に対して上流側に配置され、
前記第1の画像形成部は、前記第1の感光体の回転方向において、前記第1の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第1の転写部材の上流側の位置で、前記第1の感光体の表面を露光する第1の転写前露光部材を備え、
前記第1の転写前露光部材は、前記第1の色の現像剤が吸収可能な光を出射するように構成され、
前記第1の感光体が前記第1の転写前露光部材によって露光されるとともに、前記第2の感光体が、当該第2の感光体の回転方向における前記第2の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第2の転写部材の上流側の位置で露光されないように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の画像形成部および前記第2の画像形成部とは別の画像形成部を、前記搬送方向において前記第1の画像形成部および前記第2の画像形成部との間に並ぶように少なくとも1つ設け、
前記第2の色はブラックであり、
前記第1の画像形成部は、前記搬送方向において最上流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の色はイエローであり、前記第2の色はブラックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
マゼンタの現像剤が供給される第3の感光体を有する第3の画像形成部と、
シアンの現像剤が供給される第4の感光体を有する第4の画像形成部と、を備え、
前記第3の感光体と前記第4の感光体は、前記第1の感光体と前記第2の感光体の間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第3の画像形成部は、
前記第3の感光体に現像剤を供給する第3の現像ローラと、
前記第3の感光体と対向して配置され、当該第3の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第3の転写部材と、
前記第3の感光体の回転方向において、前記第3の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第3の転写部材の上流側の位置で、前記第3の感光体の表面を露光する第3の転写前露光部材と、を備え、
前記第4の画像形成部は、
前記第4の感光体に現像剤を供給する第4の現像ローラと、
前記第4の感光体と対向して配置され、当該第4の感光体との間で被転写媒体に現像剤を転写する第4の転写部材と、
前記第4の感光体の回転方向において、前記第4の現像ローラよりも下流側で、かつ、前記第4の転写部材の上流側の位置で、前記第4の感光体の表面を露光する第4の転写前露光部材と、を備え、
前記第1の転写前露光部材から出射される光が前記第1の感光体上の現像剤により吸収される割合は、前記第3の転写前露光部材および前記第4の転写前露光部材から出射される光が前記第3の感光体および前記第4の感光体上の現像剤により吸収される割合よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の転写前露光部材から出射される光のピーク波長は、紫外線の波長領域よりも長いことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11767(P2013−11767A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144812(P2011−144812)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】