説明

画像形成装置

【課題】印刷終了後、分離風吹きつけ手段の運転を一定時間継続する場合でも、分離風の流動によりトナー粉煙が飛散するのを回避可能な画像形成装置の提供を図る。
【解決手段】印刷が終了して制御部60により分離風吹きつけ手段40の運転が停止されると、一定時間経過してからトナー粉煙吸引手段50の運転が該制御部60により停止される。結果、分離風吹きつけ手段40が結露防止のため印刷終了後、一定時間運転が継続されようとも、トナー粉煙吸引手段50によるトナー粉煙の吸引,捕集を積極的に行って、分離風の流動によるトナー粉煙の飛散を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等、およびこれら複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、用紙にトナー画像を形成する場合、用紙にトナー画像を転写し、その後、当該用紙が定着装置における定着ニップ部を通過することにより用紙にトナー画像を定着させるというプロセスを実行する。
【0003】
この定着装置では、定着ニップ部を通過した用紙が、該定着ニップ部を構成する定着ベルトや定着ローラといった定着部材から分離しないで、該定着部材に巻き付いたままとなることがある。
【0004】
このようなことから、従来では、例えば特許文献1に示されているように、定着装置における定着ニップ部の排紙側に分離風吹きつけ手段を配設し、定着ニップ部に通紙された用紙の先端に分離風を吹きつけることにより、当該用紙を定着ベルトや定着ローラ等の定着部材から分離させるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−271115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分離風吹きつけ手段は高温化する定着装置に近接配置してあるため、印刷が終了して運転を停止した場合に結露する可能性がある。
【0007】
そこで、この結露防止のため印刷終了後も分離風吹きつけ手段を一定時間運転を継続する必要がある。
【0008】
一方、画像形成装置は、画像形成時に発生するトナー粉煙による機内の汚損を防止するために、トナー粉煙吸引手段によってトナー粉煙を吸引して捕集するようにしている。
【0009】
このトナー粉煙吸引手段は、印刷終了と同時に運転停止されるため、上述のように印刷終了後も分離風吹きつけ手段を一定時間運転を継続すると、この分離風の吹きつけによってトナー粉煙が撒き散らされて、機内を汚損してしまう不具合を生じる。
【0010】
そこで、本発明は印刷終了後、分離風吹きつけ手段の運転を一定時間継続する場合でも、分離風の流動によりトナー粉煙が飛散するのを回避することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、定着装置における定着ニップ部の排紙側に、通紙された用紙を定着部材から分離させるための分離風を吹きつける分離風吹きつけ手段と、機内のトナー粉煙を吸引して捕集するトナー粉煙吸引手段と、前記分離風吹きつけ手段と、前記トナー粉煙吸引手段とを作動制御する制御部と、を備えている。
【0012】
そして、前記制御部は、前記分離風吹きつけ手段を停止させた後、一定時間経過してから前記トナー粉煙吸引手段を停止させることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷が終了して制御部により分離風吹きつけ手段の運転が停止されると、一定時間経過してからトナー粉煙吸引手段の運転が該制御部により停止される。
【0014】
この結果、分離風吹きつけ手段が結露防止のため印刷終了後、一定時間運転が継続されようとも、トナー粉煙吸引手段によるトナー粉煙の吸引,捕集を積極的に行って、分離風の流動によるトナー粉煙の飛散を回避して、トナー粉煙による機内の汚損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像形成装置を概念的に示す全体構成図。
【図2】トナー粉煙吸引手段を概念的に示す説明図。
【図3】分離風吹きつけ手段およびトナー粉煙吸引手段の制御系を示すブロック図。
【図4】制御部の制御動作を示すフローチャート図。
【図5】記憶部に保持されるテーブル1とテーブル2とを、(a),(b)にて示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0017】
図1は、本発明に係る画像形成装置Aを説明する図である。
【0018】
画像形成装置Aは、タンデム型カラー画像形成装置と称されるもので、4組の画像形成部により画像形成を行う。
【0019】
原稿台上に載置された原稿は画像読取装置SCの走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれ、光電変換された画像情報信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像形成部の光書込部に入力される。
【0020】
4組の画像形成部はイエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y,マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M,シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kであり、それぞれ共通する符号10の後に形成する色をあらわす符号Y、M、C、Kを付して表記する。
【0021】
画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yおよびその周囲に配置された帯電部2Y,光書込部3Y,現像装置4Y,およびドラムクリーナ5Yを備えている。
【0022】
その他の画像形成部10M,10C,10Kも、画像形成部10Yと同様な構成であり、感光体ドラム1M,1C,1Kの周辺に、帯電部2M,2C,2K、光書込部3M,3C,3K、現像装置4M,4C,4K、およびドラムクリーナ5M,5C,5Kを備えている。
【0023】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y,1M,1C,1K、帯電部2Y,2M,2C,2K、光書込部3Y,3M,3C,3K、現像装置4Y,4M,4C,4K、およびドラムクリーナ5Y,5M,5C,5Kはそれぞれ共通する内容の構成である。以下、特に区別が必要な場合を除き符号Y,M,C,Kを付さずに表記することにする。
【0024】
画像形成部10は、光書込部3にて画像情報信号を感光体ドラム1に書き込み、感光体ドラム1に画像情報信号にもとづく潜像を形成する。そして、潜像は現像装置4により現像され、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー画像が形成される。
【0025】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kのそれぞれの感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kに、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色の画像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト6は、複数のローラにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0027】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kにより形成された各色のトナー画像は、走行する中間転写ベルト6上に一次転写部7Y,7M,7C,7Kにより逐次転写されて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色が重畳したカラー画像が形成される。
【0028】
用紙搬送部20は用紙Sを搬送する。用紙Sは給紙トレイ291,292,293に収容されている。用紙Sは第1給紙部21により給紙され、レジストローラ22を経て二次転写部7Aに搬送され、用紙S上に中間転写ベルト6上のカラー画像が転写される。カラー画像が転写された用紙Sは、定着装置30にて加熱・加圧することにより用紙S上のトナー像が定着され、定着搬送ローラ23および排紙ローラ25を経て機外に排出される。
【0029】
また、画像形成装置Aは用紙反転部24を備えており、定着がなされた用紙Sを定着搬送ローラ23から用紙反転部24に導いて表裏を反転して排紙ローラ25を経由して排出し、あるいは画像形成部10の上流位置へ再給紙して、用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0030】
上述の定着装置30は、装置筺体31内に配設した定着ベルトユニット32と、該定着ベルトユニット32と圧接して定着ニップ部NPを形成する加圧ローラ36と、を備えている。
【0031】
定着ベルトユニット32は、定着ローラ33と、加熱ローラ34と、これら両ローラ33,34に掛架した定着用ベルト35と、を備えている。
【0032】
この定着装置30において、用紙Sは定着対象面が定着ベルトユニット32と向き合う格好で搬送されており、用紙Sの搬送過程で定着ニップ部NPを通過する。これにより、定着ベルトユニット32の定着ローラ33と加圧ローラ36とによる加圧、および定着用ベルト35の有する熱の作用によって、用紙Sの定着対象面へのトナー画像の定着が行われる。
【0033】
定着装置30における定着ニップ部NPの排紙側に、該定着ニップ部NPに通紙された用紙Sの先端に分離させるための分離風を吹きつける分離風吹きつけ手段40を配設してある。
【0034】
分離風吹きつけ手段40は、例えば送風ファン41と、空気を導くダクト42とを主体に構成され、ダクト42の先端のノズル43が定着ニップ部NPの排紙側に臨むように配置されている。具体的には、ダクト42の先端のノズル43は、定着ニップ部NPの排紙側の正面位置よりも定着ローラ33側へシフトした位置に配置されている。このようなノズル43の配置は、定着用ベルト35および加圧ローラ36のうち、用紙Sの定着対象面側に位置する定着用ベルト35の方が、用紙Sの巻き付き傾向が高いとの経験にもとづくものである。
【0035】
送風ファン41から送風された分離風(空気)は、ダクト42内を先端のノズル43に向けて導かれ、該ノズル43から定着ニップ部NPの排紙側に向けて吹きつけられる。このノズル43から吹きつけられる分離風により、定着用ベルト35から用紙Sが分離される。
【0036】
ここで、上述の画像形成部10では、現像装置4により感光体ドラム1上にトナー画像を形成する際に、トナー粉煙が不可避的に発生する。このトナー粉煙による機内の汚損防止を図るため、例えば、図2に示すトナー粉煙吸引手段50が設けられ、該トナー粉煙吸引手段50により機内に発生したトナー粉煙を吸引して捕集するようにしている。
【0037】
トナー粉煙吸引手段50は、吸引ファン51と、吸引ダクト52とを主体に構成される。本実施形態では画像形成部10がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)用の4組が用いられているため、吸引ダクト52は、各色の現像装置4Y,4M,4C,4Kに沿って配設される4本の分岐ダクト52aを備える。各分岐ダクト52aの吸入口52bは感光体ドラム1と現像装置4とが近接した現像位置近傍に配置される。吸引ファン51は4本の分岐ダクト52aの集合部分に設定された集塵部53に設けられる。
【0038】
上述の分離風吹きつけ手段40と、トナー粉煙吸引手段50は、図3に示す制御部60によって作動制御される。
【0039】
制御部60としては、例えば、CPU、ROM、RAM、I/0インターフェイスを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0040】
制御部60は、分離風吹きつけ手段40の送風ファン41に運転,停止の信号を出力する送風ファン制御部61と、トナー粉煙吸引手段50の吸引ファン51に運転,停止の信号を出力する吸引ファン制御部62と、送風ファン41が停止してから吸引ファン51を停止させるまでの時間を計算する時間算出部63と、記憶部64と、を備えている。
【0041】
記憶部64は、図5(a)に示すトナーの劣化度(%)と直前の画像率(%)との関係で時間T(秒)を規定するテーブル1、および図5(b)に示す機内の湿度(%)と係数hとの関係を規定するテーブル2を保持する。これらテーブル1およびテーブル2は、上述の時間算出部63における時間設定に際して参照される。一般に、機内におけるトナー粉煙発生量は、トナーの劣化度(%)、直前の画像率(%)、機内の湿度(%)によって左右される。テーブル1で規定される時間T(秒)と、テーブル2で規定される係数hは、それぞれ実験やシミュレーションを通じて設定される。トナーの劣化度(%)および直前の画像率(%)は、制御部60に入力される画像形成部10の画像情報から取得される。また、湿度(%)は、制御部60に入力される湿度センサ65からの情報によって取得される。
【0042】
図4は、本実施形態の制御部60における処理動作の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、画像形成装置Aの電源投入をトリガーとして実行される。
【0043】
まず、ステップS10において画像形成装置Aが印刷開始されると、ステップS11において吸引ファン制御部62からトナー粉煙吸引手段50の吸引ファン51に作動信号が出力される。これにより、トナー粉煙吸引手段50の運転が開始され、機内の現像装置4周りで発生するトナー粉煙の吸引,捕集が行われる。
【0044】
続いて、ステップS12において送風ファン制御部61から分離風吹きつけ手段40の送風ファン41に作動信号が出力される。これにより、分離風吹きつけ手段40の運転が開始され、ダクト42の先端のノズル43から所要量の分離風が定着装置30の定着ニップ部NPの排紙側に吹きつけられ、定着ニップ部NPを通過した用紙の定着用ベルト35からの分離が適切に行われる。この分離風吹きつけ手段40の運転による分離風の吹きつけは、印刷終了後、予め設定された所定時間を経過するまで継続され、ダクト42および送風ファン41の結露防止が図られる。
【0045】
ステップS13において画像形成装置Aが印刷終了すると、ステップS14において印刷終了から所要時間が経過したかが判断される。ステップS14において否定の場合、所定時間が経過するまで分離風吹きつけ手段40の運転が継続される。ステップS14において肯定の場合、ステップS15に進んで、該ステップS15において送風ファン制御部61から送風ファン41に停止信号が出力される。これにより、分離風吹きつけ手段40の運転が停止して、ノズル43から定着ニップ部NPの排紙側へ向けての分離風の吹きつけが停止する。
【0046】
このとき、前述のトナー粉煙吸引手段50の運転は継続したままであり、吸引ファン51の稼動によるトナー粉煙の吸引,捕集が積極的に行われる。
【0047】
次に、制御部60は、ステップS16において記憶部64に保持されたテーブル1から、直前の画像率およびトナーの劣化度のデータをもとに時間T(秒)を読み取る。
【0048】
続いて、ステップS17において記憶部64に保持されたテーブル2から、湿度センサ65により検出された機内湿度に応じた係数hを読み取り、時間算出部63においてh×Tの値を算出して、これを前記送風ファン41が停止してから吸引ファン51を停止させるまでの時間とする。
【0049】
ステップS18において、前記ステップS16,S17において設定された吸引ファン停止時間が経過したかが判断される。ステップS18において否定の場合、設定時間が経過するまでトナー粉煙吸引手段50の運転が継続される。ステップS18において肯定の場合、ステップS19に進んで、該ステップS19において吸引ファン制御部62から吸引ファン51に停止信号が出力される。これにより、トナー粉煙吸引手段50の運転を停止して、本ルーチンを終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、印刷が終了して制御部60により分離風吹きつけ手段40の運転が停止されると、一定時間経過してからトナー粉煙吸引手段50の運転が該制御部60より停止される。
【0051】
この結果、分離風吹きつけ手段40が結露防止のため印刷終了後、一定時間運転が継続されようとも、トナー粉煙吸引手段50によるトナー粉煙の吸引,捕集を積極的に行って、分離風の流動によるトナー粉煙の飛散を回避して、トナー粉煙による機内の汚損を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上述の分離風吹きつけ手段40を停止してからトナー粉煙吸引手段50を停止させるまでの設定時間を可変制御するため、機内のトナー粉煙発生状況に応じた適切なトナー粉煙の吸引,捕集を行わせることができる。
【0053】
とりわけ、この設定時間を、機内におけるトナー粉煙発生量に密接な関係にある直前の画像率(%)、トナーの劣化度(%)、機内の湿度(%)などの情報を入手して、この情報を元に算出して可変制御するため、より効果的なトナー粉煙の吸引,捕集を行わせることができる。
【0054】
なお、前記実施形態では分離風吹きつけ手段40として送風ファン41により送風するタイプのものを例示したが、この他、コンプレッサにより圧縮した空気を噴射弁の制御の下に噴出するタイプのものを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
A…画像形成装置
30…定着装置
NP…定着ニップ部
40…分離風吹きつけ手段
41…送風ファン
50…トナー粉煙吸引手段
51…吸引ファン
60…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着装置における定着ニップ部の排紙側に、通紙された用紙を定着部材から分離させるための分離風を吹きつける分離風吹きつけ手段と、
機内のトナー粉煙を吸引して捕集するトナー粉煙吸引手段と、
前記分離風吹きつけ手段と、前記トナー粉煙吸引手段とを作動制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記分離風吹きつけ手段を停止させた後、一定時間経過してから前記トナー粉煙吸引手段を停止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記分離風吹きつけ手段を停止してから前記トナー粉煙吸引手段を停止させるまでの設定時間を、可変制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記分離風吹きつけ手段を停止してから前記トナー粉煙吸引手段を停止させるまでの設定時間を、画像率、トナー劣化度、機内の湿度に基づき算出して可変制御することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20194(P2013−20194A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155386(P2011−155386)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】