説明

画像形成装置

【課題】感光体上のフィルミング現象の発生が抑制される画像形成装置の提供。
【解決手段】画像形成装置は、回転する像担持体と、この像担持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を、像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する中間転写体の表面に転写する1次転写手段と、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段とを有する画像形成装置において、中間転写体は、像担持体と当接する表面が、ラジカル重合性モノマーと無機微粒子とを混合し、ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られる有機−無機ハイブリッド材料により構成されており、当該表面のナノインデンテーション法による表面硬度が、像担持体の表面の表面硬度より大きく、当該中間転写体の周速度が、像担持体の周速度より大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が有機−無機ハイブリッド材料により構成される中間転写体を具える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置においては、CPP(Cost Per Print:印刷紙一枚当たりのコスト)の低下を図るため、高寿命化および高安定化のものが求められている。
特に、機能部材として、像担持体、いわゆる感光体の高寿命化は、CPPを低下させる上で有効な手段とされている。
感光体の高寿命化は、例えば感光体表面の高硬度化を図ることにより、達成することができる。
【0003】
一般に、画像形成装置においては、感光体の周速度と中間転写体の周速度とに差を設けることにより、中間転写体が感光体の表面を擦過して、当該感光体の表面を削ることにより、フィルミング現象の発生を防止している。
しかしながら、感光体の表面の硬度が高くなるに従って、当該表面を十分に削り取ることができず、その結果、フィルミング現象の発生を十分に抑制することができないという問題がある。
【0004】
例えば特許文献1には、中間転写体の表面粗さを初期の感光体の表面粗さより大きい状態に維持するための研磨装置を中間転写体に設けることにより、上記問題を解決することが記載されているが、未だ十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−235052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、感光体上のフィルミング現象の発生が抑制される画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、回転する像担持体と、この像担持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を、前記像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する中間転写体の表面に転写する1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段とを有する画像形成装置において、
前記中間転写体は、前記像担持体と当接する表面が、ラジカル重合性モノマーと無機微粒子とを混合し、前記ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られる有機−無機ハイブリッド材料により構成されており、当該表面のナノインデンテーション法による表面硬度が、前記像担持体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度より大きく、当該中間転写体の周速度が、前記像担持体の周速度より大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置においては、前記中間転写体の表面の表面抵抗率の値が、1010〜1013Ω/□であることが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成装置においては、前記中間転写体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値が、0.8〜2.0GPaであり、
前記像担持体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値が、0.4〜1.6GPaであることが好ましい。
【0010】
本発明の画像形成装置においては、前記中間転写体の表面を構成する有機−無機ハイブリッド材料に含有される前記無機微粒子が、表面処理によりその表面が不飽和結合を持つ反応性基が付与されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、中間転写体の表面が、有機−無機ハイブリッド材料により構成され、当該表面のナノインデンテーション法による表面硬度(以下、単に「表面硬度」ともいう。)が、像担持体(感光体)の表面の表面硬度より大きく、中間転写体の周速度が、像担持体の周速度より大きいことにより、当該中間転写体が像担持体の表面を擦過することによって表面を削ることができ、その結果、フィルミング現象の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、回転する像担持体と、この像担持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を、像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する中間転写体の表面に転写する1次転写手段と、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段とを有するものである。
より詳細には、回転する像担持体と、像担持体の表面を一様に帯電する帯電手段と、一様な電位が付与された像担持体上に画像信号に基づいて露光を行って静電潜像を形成する露光手段と、像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を、像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する中間転写体の表面に転写する1次転写手段と、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段と、記録材上に転写されたトナー像を定着する定着手段とを有するものである。
【0015】
図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものであって、4組の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkと、中間転写体ユニット7と、2次転写手段としての2次転写ローラ5bと、給紙搬送手段21および定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0016】
画像形成ユニット10Yはイエロー色の画像を形成するものであり、画像形成ユニット10Mはマゼンタ色の画像を形成するものであり、画像形成ユニット10Cはシアン色の画像を形成するものであり、画像形成ユニット10Bkは黒色の画像を形成するものである。
【0017】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkは、感光体1Y,1M,1C,1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるのみであって、同じ構成とされるので、以下においては、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0018】
画像形成ユニット10Yは、像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、トナー像形成手段4Y、1次転写手段としての1次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、トナー像形成手段4Y、クリーニング手段6Yが一体化されて設けられている。
【0019】
感光体1Yは、図1の矢印方向に所定の周速度により回転駆動されるものである。
感光体1Yは回転過程で、帯電手段2Yにより所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、露光手段3Yによりデジタル画像信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のイエロー画像の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0020】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与えるものであって、本実施形態においては、感光体1Yにコロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0021】
露光手段3Yは、帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、デジタル画像信号(イエロー画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成するものであって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0022】
トナー像形成手段4Yは、回転する現像スリーブを備え、当該現像スリーブ上に保持されたトナーを感光体1Yの表面に搬送して静電潜像を顕在化させることによりトナー像を形成するものであり、公知のものを用いることができる。
【0023】
1次転写ローラ5Yは、トナー像形成手段4Yにより形成されたトナー像を、感光体1Yと当接される位置において当該感光体1Yと同方向に移動する中間転写体70の表面に転写するものであり、公知のものを用いることができる。
【0024】
クリーニング手段6Yは、トナー像を中間転写体70に転写させた後の感光体1Yに残存するトナーを除去する例えばゴムブレードよりなるものである。
【0025】
中間転写体ユニット7は、複数のローラ71,72,73,74により巻回され、回動可能に支持された無端ベルト状の中間転写体70を有する。
中間転写体70は、図1の矢印方向、すなわち感光体1Yと当接される位置において当該感光体1Yと同方向に移動する方向に所定の周速度により回動駆動されるものである。
【0026】
2次転写手段としての2次転写ローラ5bは、中間転写体70上のトナー像を給紙カセット20から所定のタイミングで搬送された記録材P上に転写するものであり、公知のものを用いることができる。
【0027】
定着手段24は、2次転写ローラ5bにより記録材P上に転写されたトナー像を一対のローラにより加熱加圧して、当該トナー像を記録材P上に定着させるものであり、公知のものを用いることができる。
【0028】
画像形成処理中において、1次転写ローラ5Yは中間転写体70を介して、常時、感光体1Bkに当接している。他の1次転写ローラ5Y,5M,5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y,1M,1Cに中間転写体70を介して当接する。
2次転写ローラ5bは、記録材Pが通過して2次転写が行われる時にのみ、中間転写体70に当接する。
【0029】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L,82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0030】
このような画像形成装置においては、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkにおいて、感光体1Y,1M,1C,1Bk上に、帯電手段2Y,2M,2C,2Bkにより帯電、露光手段3Y,3M,3C,3Bkにより露光、トナー像形成手段4Y,4M,4C,4Bkにより現像を経て各色のトナー像が形成され、1次転写ローラ5Y,5M,5C,5Bkにより中間転写体70上に各色のトナー像が順次重ね合わされて転写される。そして、給紙カセット20内に収容された記録材Pが、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A,22B,22C,22D、レジストローラ23を経て、2次転写ローラ5bに搬送されると共に、当該記録材P上に中間転写体70上に転写されたカラートナー像が一括して転写される。その後、記録材P上に転写されたカラートナー像が定着手段24において加圧および加熱により定着され、カラートナー像が定着された記録材Pが排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。トナー像を中間転写体70に転写させた後の感光体1Y,1M,1C,1Bkは、クリーニング手段6Y,6M,6C,6Bkにより転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後に、次の画像形成に供される。
一方、2次転写ローラ5bにより記録材P上にカラートナー像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した中間転写体70は、クリーニング装置6Aにより残留トナーが除去される。
【0031】
〔中間転写体〕
本発明の画像形成装置に用いられる中間転写体は、例えば樹脂などの基体上に特定の有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層が設けられた構成とされる。
【0032】
中間転写体を構成する基体としては、例えばポリイミド樹脂などが挙げられる。
基体の厚さは、例えば60〜100μmであることが好ましい。
【0033】
中間転写体は、像担持体(感光体)と当接する表面が、ラジカル重合性モノマーと無機微粒子とを混合し、前記ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られる有機−無機ハイブリッド材料により構成されており、この表面のナノインデンテーション法による表面硬度が、像担持体の表面の表面硬度より大きく、また、当該中間転写体の周速度が、像担持体の周速度より大きいものである。
【0034】
(ナノインデンテーション法による表面硬度)
中間転写体の表面、すなわち有機−無機ハイブリッド材料により構成される表面の表面硬度は、像担持体の表面の表面硬度より大きく、具体的には、像担持体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度との差が、0.2〜0.4GPaであることがより好ましい。また、中間転写体の表面の表面硬度の値は、0.8〜2.0GPaであることが好ましい。
中間転写体の表面の表面硬度が、像担持体の表面の表面硬度より大きいことにより、中間転写体が像担持体の表面を擦過することによって削ることができる。
【0035】
中間転写体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度は、ナノインデンター(微小硬度計)、具体的には「TriboscopeおよびSII製NanoNaviII」(Hysitron社製)を用い、四角錐または三角錐形状の圧子(cube corner Tip)を、試験荷重をかけながら測定試料に押し込み、所望の深さに達した時点でのその深さから圧子が測定試料と接触している表面積を求め、下記式(1)により算出されるものである。
式(1):表面硬度=(試験荷重)/(接触表面積)
上記式(1)中、接触表面積は、試験荷重下での圧子の測定試料との接触表面積を示す。
【0036】
ナノインデンテーション法は、特に1μm以下の薄膜の測定に対して、基材の物性の影響を受けにくく、また、押し込んだ際に薄膜の割れの発生を抑制することができるという特徴を有している。この方法は、一般に、非常に薄い薄膜の物性測定に用いられている。
【0037】
(表面抵抗率)
中間転写体の表面、すなわち有機−無機ハイブリッド材料により構成される表面の表面抵抗率の値は、1010〜1013Ω/□であることが好ましく、より好ましくは1011〜1012Ω/□である。
中間転写体の表面の表面抵抗率の値が上記範囲であることにより、良好な転写性が得られ、飛び散りなどの画像欠陥を抑制することができる。
【0038】
中間転写体の表面の表面抵抗率は、抵抗率計「ハイレスタ」(三菱化学製)により測定されるものである。測定方法は、測定プローブを測定面に対して一定の圧力とし、押圧して抵抗値の測定を行う。測定時の電圧値は100Vにて統一する。
【0039】
(周速度)
中間転写体の周速度は、像担持体の周速度より大きく、具体的には、像担持体の周速度と中間転写体の周速度との差は、画像寸法精度や2色以上の色重ねによる位置精度などに影響を及ぼさない程度の0.1〜1.4%以内が好ましく、更に0.5〜0.9%以内であることがより好ましい。
中間転写体の周速度が、像担持体の周速度より大きいことにより、中間転写体が像担持体の表面を擦過することによって削ることができる。
【0040】
なお、中間転写体の周速度は、ストロボスコープ(品番 M318S−3111R)により測定することができる。
【0041】
(有機−無機ハイブリッド材料)
中間転写体の表面を構成する有機−無機ハイブリッド材料は、ラジカル重合性モノマーと無機微粒子とを混合、分散し、ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られる硬化樹脂よりなるものである。
【0042】
・ラジカル重合性モノマー
有機−無機ハイブリッド材料に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、紫外線や電子線などの活性線照射により重合(硬化)するものであれば特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーなどが挙げられる。
【0043】
本発明においては、ラジカル重合性モノマーは単独で用いても、2種類以上のラジカル重合性モノマーを混合して用いてもよい。
【0044】
ラジカル重合性モノマーとしては、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることからアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものが特に好ましい。
【0045】
以下にラジカル重合性モノマーの具体例を示す。以下に示すAc基数(アクリロイル基数)またはMc基数(メタクリロイル基数)は、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数を示す。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
ただし、上記においてRは下記式(2)で示されるアクリロイル基である。
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
ただし、上記においてR′は下記式(3)で示されるメタクリロイル基である。
【0062】
【化16】

【0063】
本発明においては、ラジカル重合性モノマーは官能基(反応性基)が3以上のものを用いることが好ましい。また、ラジカル重合性モノマーは、2種以上のものを併用してもよいが、この場合でも、ラジカル重合性モノマーは官能基が3以上のものを50質量%以上用いることが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとして官能基(反応性基)が3以上のものを用いることにより、架橋密度を高め、高硬度化を達成することができる。
【0064】
・無機微粒子
有機−無機ハイブリッド材料に用いられる無機微粒子としては、金属酸化物微粒子が挙げられ、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、チタニア(酸化チタン)、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどの金属酸化物の微粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化錫の金属酸化物の微粒子が好ましい。
【0065】
無機微粒子の含有量は、ラジカル重合性モノマー100質量部に対し100〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは100〜200質量部である。
【0066】
このような無機微粒子の製造方法は、特に限定はないが、例えば、JIS K1410に記載された間接法(フランス法)、直接法(アメリカ法)またはプラズマ法などが挙げられる。特に、プラズマ法により生成された無機微粒子が、平均粒径が他の製法と比較して小さく且つ、粒形が比較的揃った晶癖の微粒子であり好ましい。
【0067】
プラズマ法により無機微粒子を製造する方法としては、直流プラズマアーク法、高周波プラズマ法、プラズマジェット法などの方法が挙げられる。
【0068】
直流プラズマアーク法では、金属原料を消費アノード電極とする。そして、カソード電極からプラズマフレームを発生させる。そして、アノード側の金属原料を加熱、蒸発させ、金属原料の蒸気を酸化、冷却することにより無機微粒子が得られる。
【0069】
高周波プラズマ法では、大気圧力のもとでガスを高周波誘導放電によって加熱したときに発生する熱プラズマを利用する。このうちプラズマ蒸発法では、不活性ガスプラズマ中心に固体粒子を注入し、プラズマ中を通過する間に蒸発させ、この高温蒸気を急冷凝縮することにより無機微粒子が得られる。
【0070】
プラズマジェット法は、不活性ガスのアルゴン、および2原子分子ガスである水素や窒素、酸素雰囲気中でアーク放電すると、アルゴンプラズマ、水素プラズマなどが得られるが、とくに2原子分子ガスが熱解離して生じた水素(窒素、酸素)プラズマは分子状ガスに比べてきわめて反応性に富んでいるので、不活性ガスのプラズマと区別して反応性アークプラズマとも呼ばれている。このうち酸素プラズマ法は無機微粒子を製造する方法として効果的である。
【0071】
無機微粒子の数平均一次粒径は1〜300nmであることが好ましく、より好ましくは3〜100nmである。
【0072】
無機微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置「LUZEX AP ソフトウエアバージョン Ver.1.32」((株)ニレコ)を使用することにより算出することができる。
【0073】
本発明において、無機微粒子は、表面処理によりその表面が不飽和結合を持つ反応性基が付与されたものであることが好ましい。無機微粒子表面への反応性基の付与は、反応性有機基を有する表面処理剤を用いることにより処理することができる。無機微粒子は、反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理することにより、表面が不飽和結合を持つ反応性基が付与されたものに改質され、表面処理済み無機微粒子間またはラジカル重合性モノマーとの結合が強固になる。
【0074】
無機微粒子の表面処理に用いる表面処理剤としては、無機微粒子の表面に存在する水酸基などと反応性を有するものであればよい。このような表面処理剤としては、下記に記すような化合物が例示される。
【0075】
S−1:CH2 =CHSi(CH3 )(OCH3 2
S−2:CH2 =CHSi(OCH3 3
S−3:CH2 =CHSiCl3
S−4:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
S−5:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(OCH3 3
S−6:CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(CH3 )(OCH3 2
S−7:CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(OCH3 3
S−8:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
S−9:CH2 =CHCOO(CH2 2 SiCl3
S−10:CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
S−11:CH2 =CHCOO(CH2 3 SiCl3
S−12:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
S−13:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(OCH3 3
S−14:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )(OCH3 2
S−15:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(OCH3 3
S−16:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
S−17:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 SiCl3
S−18:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
S−19:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 SiCl3
S−20:CH2 =CHSi(C2 5 )(OCH3 2
S−21:CH2 =C(CH3 )Si(OCH3 3
S−22:CH2 =C(CH3 )Si(OC2 5 3
S−23:CH2 =CHSi(OCH3 3
S−24:CH2 =C(CH3 )Si(CH3 )(OCH3 2
S−25:CH2 =CHSi(CH3 )Cl2
S−26:CH2 =CHCOOSi(OCH3 3
S−27:CH2 =CHCOOSi(OC2 5 3
S−28:CH2 =C(CH3 )COOSi(OCH3 3
S−29:CH2 =C(CH3 )COOSi(OC2 5 3
S−30:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(OC2 5 3
S−31:(SH)CH2 CH2 COOSi(OCH3 3
S−32:(SH)CH(CH3 )CH2 COOSi(OCH3 3
S−33:(SH)CH(CH3 )OCOO(CH2 3 Si(OC2 5 3
【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
表面処理剤において、反応性有機基は、少なくとも1つがラジカル重合性基であることが好ましく、ラジカル重合性基が炭素−炭素二重結合を有する基であることがさらに好ましい。また、ラジカル重合性基がアクリロイル基またはメタクリロイル基であることが特に好ましい。
【0079】
表面処理剤使用量は、処理前の無機微粒子100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましい。
【0080】
以下、反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理された無機微粒子の製造方法を、酸化チタン粒微子を例にして説明する。
【0081】
表面処理済み酸化チタン微粒子は、酸化チタン微粒子を、反応性有機基を有するシラン化合物よりなる表面処理剤などを用いて表面処理することにより、得ることができる。表面処理においては、処理前の酸化チタン微粒子100質量部に対し、シラン化合物を表面処理剤として0.1〜200質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用することが好ましい。
【0082】
以下に、均一で、しかもより微細にシラン化合物で表面処理された酸化チタン微粒子を製造する表面処理方法を述べる。
すなわち、酸化チタン微粒子とシラン化合物の表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、酸化チタン微粒子を微細化すると同時に酸化チタン微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一で、しかもより微細なシラン化合物により表面処理された酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0083】
表面処理装置である湿式メディア分散型装置は、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、無機微粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、無機微粒子に表面処理を行う際に無機微粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミルなどを使用することができる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズなどの粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力などにより微粉砕、分散が行われる。
【0084】
上記サンドグラインダーミルで用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.1〜1.0mm程度のものを用いることが好ましい。
【0085】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のものが好ましい。
【0086】
・有機−無機ハイブリッド材料による表面層の形成方法
有機−無機ハイブリッド材料による表面層は、例えば、溶媒にラジカル重合性モノマーおよび無機微粒子を分散した分散液中に重合開始剤を添加して有機−無機ハイブリッド材料塗布液を調製し、この有機−無機ハイブリッド材料塗布液を塗布機で一定の層厚に基体上塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、活性線を照射してラジカル重合性モノマーを重合(硬化)することにより形成することができる。
【0087】
本発明に用いられるラジカル重合性モノマーを重合反応させる際には、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが用いられる。重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
【0088】
ラジカル重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、あるいはフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、あるいはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。
【0089】
一方、熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、パーオキシジカーボネート系化合物、パーオキシエステル系化合物などが用いられ、これらの熱重合開始剤は企業の製品カタログなどで公開されている。
【0090】
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性モノマー100質量部に対し0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0091】
有機−無機ハイブリッド材料による表面層を形成するために用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
塗膜の乾燥は、活性線を照射する前後、及び活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できるが、自然乾燥または熱乾燥を行った後、活性線を照射して反応させることが好ましい。
【0093】
乾燥条件は、溶媒の種類、層厚などのよって適宜選択できる。乾燥温度は、室温〜180℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜140℃である。乾燥時間は、1分間〜200分間であることが好ましく、より好ましくは5分間〜100分間である。
【0094】
塗布方法は、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などの公知の方法を採用することができる。
【0095】
活性線としては紫外線や電子線が特に好ましく、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
【0096】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノンなどを用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2 、好ましくは5〜100mJ/cm2 である。ランプの電力は、好ましくは0.1kW〜5kWであり、特に好ましくは、0.5kW〜3kWである。
【0097】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量としては、0.5〜10Mradであることが好ましい。
【0098】
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒間〜10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間〜5分間がより好ましい。
【0099】
有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層の層厚は、1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。
【0100】
〔像担持体〕
本発明の画像形成装置に用いられる像担持体は、その表面のナノインデンテーション法による表面硬度が、中間転写体の表面の表面硬度より小さく、周速度が中間転写体の周速度より小さいものである。
【0101】
(ナノインデンテーション法による表面硬度)
像担持体の表面の表面硬度は、中間転写体の表面の表面硬度より小さく、具体的には、表面硬度の値は、0.4〜1.6GPaであることが好ましい。
【0102】
像担持体の表面の表面硬度は、前述した中間転写体の表面を構成する有機−無機ハイブリッド材料のナノインデンテーション法による表面硬度の測定方法と同様の方法により測定されるものである。
【0103】
(周速度)
像担持体の周速度は、中間転写体の周速度より小さく、具体的には、像担持体の周速度と中間転写体の周速度との差が0.1〜1.4%以内であり、更に0.5〜0.9%以内であることがより好ましい。
なお、像担持体の周速度は、ストロボスコープ(品番 M318S−3111R)により測定することができる。
【0104】
像担持体は、例えば、導電性支持体上に有機感光層および表面層がこの順に積層されてなるものである。
このような像担持体は、特に限定されるものではないが、具体的には下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生層および電荷輸送層、並びに表面層がこの順に積層されてなる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層、並びに表面層がこの順に積層されてなる層構成。
【0105】
像担持体を構成する導電性支持体としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0106】
像担持体においては、導電性支持体と有機感光層との間にバリアー機能と接着機能とを有する中間層を設ける構成とすることができる。種々の故障防止などの観点から、このような中間層を設けることが好ましい。
【0107】
中間層の層厚は、0.1〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。
【0108】
像担持体を構成する有機感光層における電荷発生層は、電荷発生物質およびバインダー樹脂よりなるものである。
【0109】
電荷発生物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノン、アントアントロンなどのキノン顔料;キノシアニン顔料;ペリレン顔料;インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料;フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
電荷発生層用のバインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。
【0112】
像担持体を構成する有機感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)およびバインダー樹脂よりなるものである。
【0113】
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセン、トリフェニルアミン誘導体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂などが挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらには、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールZ(BPZ)、ジメチルBPA、BPA−ジメチルBPA共重合体などが耐クラック、耐磨耗性、帯電特性の点で好ましい。
【0115】
電荷輸送層の層厚は、電荷輸送物質の特性、バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、5〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
【0116】
像担持体を構成する表面層は、例えば、ラジカル重合性モノマーを重合させることによって得られた硬化樹脂よりなるものが挙げられる。このような硬化樹脂は、例えば紫外線や電子線などの活性線を照射することにより、ラジカル重合性モノマーが重合反応(硬化反応)されて得られたものである。
このようなラジカル重合性モノマーは、前述した中間転写体の表面を構成する有機−無機ハイブリッド材料に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0117】
像担持体を構成する表面層においては、無機微粒子が含有されていることが好ましく、また、当該無機微粒子が反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理されたものであることが特に好ましい。
表面層において、無機微粒子が含有されていることにより、像担持体がより高い耐久性を有するものとなる。
このような無機微粒子は、前述した中間転写体を構成する有機−無機ハイブリッド材料に用いられるものと同様のものを用いることができる。また、無機微粒子を表面処理する際に用いられる表面処理剤についても、前述した中間転写体を構成する有機−無機ハイブリッド材料に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0118】
表面層の層厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜6μmである。
【0119】
〔トナーおよび現像剤〕
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0120】
重合トナーとはバインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーをいう。
具体的には、懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーをいう。
【0121】
トナーの体積平均粒径、すなわち50%体積粒径(Dv50)は2.0〜9.0μmであることが好ましく、より好ましくは3.0〜7.0μmである。
トナーの体積平均粒径が上記範囲であることにより、解像度を高くすることができる。
【0122】
本発明においては、トナーは一成分現像剤として、または二成分現像剤として用いてもよい。
【0123】
トナーを一成分現像剤として用いる場合においては、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0124】
また、トナーを二成分現像剤として用いる場合においては、キャリアと混合して用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることができる。これらの中でも特にフェライト粒子が好ましい。このような磁性粒子は、その体積平均粒径が15〜100μmであることが好ましく、より好ましくは25〜80μmである。
【0125】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0126】
キャリアは、磁性粒子がさらに樹脂により被覆されている樹脂被覆型キャリア、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアであることが好ましい。
樹脂被覆型キャリアにおける被覆用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。
また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0127】
本発明の画像形成装置によれば、中間転写体の表面が、特定の有機−無機ハイブリッド材料により構成され、当該表面の表面硬度が、像担持体(感光体)の表面の表面硬度より大きく、中間転写体の周速度が、像担持体の周速度より大きいことにより、当該中間転写体が像担持体の表面を擦過することによって削ることができ、その結果、フィルミング現象の発生が抑制される。
【実施例】
【0128】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
〔無機微粒子の作製例1〕
酸化アルミニウムの無機材料に対して、表面処理剤として上記化合物(S−15)を用いて表面処理を行った。
具体的には、数平均一次粒子径が30nmの酸化アルミニウム微粒子100質量部、化合物(S−15)100質量部、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒300質量部の混合液を、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌し、さらに、ヘンシェルミキサーへ移動して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥することによって、酸化アルミニウム微粒子に対して表面処理を行い、表面処理済みの無機微粒子〔1〕を得た。無機微粒子〔1〕は、上記表面処理により、微粒子表面が表面処理剤により被覆されていた。
【0130】
〔無機微粒子の作製例2〕
無機微粒子の作製例1において、使用する無機材料を酸化チタンに変更したことの他は同様にして表面処理済みの無機微粒子〔2〕を得た。
【0131】
〔無機微粒子の作製例3〕
無機微粒子の作製例1において、使用する無機材料を酸化スズに変更したことの他は同様にして表面処理済みの無機微粒子〔3〕を得た。
【0132】
〔中間転写体の作製例1〕
表面層の構成を有する中間転写体〔1〕を以下に示す方法で作製した。
なお、中間転写体の基体の材質は、導電性フィラーとしてカーボンを分散したポリイミド樹脂(PI)である。
【0133】
(1)基体の作製
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(「ユーワニスS」(宇部興産社製、固形分18質量%))に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(「SPECIAL BLACK4」(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%))をポリイミド系樹脂固形分100質量部に対して、23質量部になるよう添加した。この組成物を2分割後、衝突型分散機「GeanusPY」(シーナス製)を用い、圧力200MPa、最小面積が1.4mm2 で衝突させ、再度2分割する経路を5回通過させて、混合して、カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を得た。
カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした。さらに250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間当てた後、150℃にて60分間加熱した。その後、360℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、更に360℃で30分加熱して溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を図った。その後室温に戻し、金型から剥離し、総厚0.1mmの無端ベルト状基体〔1〕を作製した。
【0134】
(2)有機−無機ハイブリッド材料による表面層の形成
下記ラジカル重合性モノマー、溶媒および無機微粒子を分散機としてサンドミルを用いて、10時間分散した後、下記重合開始剤を加え、遮光下で混合、撹拌して溶解し有機−無機ハイブリッド材料塗布液〔1〕を調製した。なお、この工程中においては、遮光状態を保った。
・ラジカル重合性モノマー:上記例示化合物(Ac−1) 100質量部
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 600質量部
・無機微粒子〔3〕 100質量部
・重合開始剤:「イルガキュアー379」(BASFジャパン社製) 5質量部
この有機−無機ハイブリッド材料塗布液〔1〕を基体〔1〕上に浸漬塗布法により、下記塗布条件により塗布して塗膜を形成した。その後、100℃で5分間乾燥し、塗膜に紫外線を下記照射条件により基体〔1〕を回転速度60mm/sで回転させながら照射して、中間転写体〔1〕を作製した。中間転写体〔1〕の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値および表面抵抗率の値を下記表1に示す。
−塗布条件−
・塗布液供給量:1L/min
・引き上げ速度:4.5mm/min
−照射条件−
・光源:高圧水銀ランプ(「H04−L41」(アイグラフィック社製)
・照射口から塗膜表面までの距離:100mm
・照射光量:1J/cm2
・照射時間:240秒
【0135】
〔中間転写体の作製例2〜4〕
中間転写体の作製例1において、(2)有機−無機ハイブリッド材料塗布液の調製において用いたラジカル重合性モノマーおよび無機微粒子の種類、含有量を下記表1に従って変更したことの他は同様にして中間転写体〔2〕〜〔4〕を作製した。中間転写体〔2〕〜〔4〕の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値および表面抵抗率の値を下記表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
〔像担持体の作製例1〕
(1)導電性支持体の作製
ドラム状のアルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体〔1〕を作製した。
【0138】
(2)中間層の形成
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式により10時間の分散を行い、中間層塗布液〔1〕を調製した。
・バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「X1010」(ダイセルデグサ社製) 1質量部
・金属酸化物微粒子:酸化チタン「SMT500SAS」(テイカ社製)(数平均一次粒径:0.035μm) 1.1質量部
・溶媒:エタノール 20質量部
上記導電性支持体〔1〕上に、この中間層塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布し、110℃で20分間乾燥し、層厚2μmの中間層〔1〕を形成した。
【0139】
(3)有機感光層の形成
(電荷発生層の形成)
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、10時間の分散を行い、電荷発生層塗布液〔1〕を調製した。
・電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で5少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するもの) 20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
上記中間層〔1〕の上に、この電荷発生層塗布液〔1〕を浸漬塗布法によりで塗布し、層厚0.3μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0140】
(電荷輸送層の形成)
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:4−メトキシ−4’−(4−メチル−α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン 150質量部
・バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製)300質量部
・酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 6質量部
・溶媒:トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000質量部
・レベリング剤:シリコーンオイル「KF−54」(信越化学社製) 1質量部
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布し、120℃で70分間乾燥し、層厚20μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
【0141】
(4)表面層の形成
下記ラジカル重合性モノマー、溶媒および無機微粒子を分散機としてサンドミルを用いて、10時間分散した後、下記重合開始剤を加え、遮光下で混合、撹拌して溶解し表面層塗布液〔1〕を調製した。なお、この工程中においては、遮光状態を保った。
・ラジカル重合性モノマー:上記例示化合物(Mc−1) 100質量部
・溶媒:2−ブタノール 700質量部
・無機微粒子〔3〕 100質量部
・重合開始剤:「イルガキュアー819」(BASFジャパン社製) 5質量部
この表面層塗布液〔1〕を上記電荷輸送層〔1〕上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、塗布して塗膜を形成した。その後、室温で20分間乾燥し、メタルハライドランプ(500W)を用いて100mmの位置で回転させながら1分間照射して、層厚3μmの表面層を形成し、像担持体〔1〕を作製した。像担持体〔1〕の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値を下記表2に示す。
【0142】
〔像担持体の作製例2〜4〕
像担持体の作製例1において、(4)表面層の形成におけるラジカル重合性モノマーおよび無機微粒子の種類および含有量を下記表2に従って変更したことの他は同様にして像担持体〔2〕〜〔4〕を作製した。像担持体〔2〕〜〔4〕の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値を下記表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
〔実施例1〜9および比較例1〜7〕
画像形成装置「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に、下記表3に示す組み合わせに従って中間転写体および像担持体を搭載し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、画像比率6%の文字画像をA4横送りで各300,000枚両面連続プリントを行う耐久試験を実施し、下記評価を行った。
なお、画像形成装置において、中間転写体は、像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する方向に周速度300mm/secで回転駆動するように設定し、像担持体は、周速度297mm/secで回転駆動するように設定した。
【0145】
(像担持体上のフィルミング現象の評価)
耐久試験終了後にA3サイズのベタ黒画像をプリントし、白抜けの画像欠陥として表れる現象を下記評価基準により評価した。結果を下記表3に示す。
−評価基準−
A:白抜けの画像欠陥無し
B:一部に白抜けの画像欠陥発生
C:全面に白抜けの画像欠陥発生
【0146】
(文字部のトナー飛び散りの評価)
耐久試験終了後に、低温低湿(温度10℃、湿度15%RH)でプリントした文字画像を、ルーペで拡大観察し、文字部周辺のトナー散りの状態を目視で下記評価基準により評価した。結果を下記表3に示す。
−評価基準−
A:10000枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない
B:5000枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない
C:1000枚未満のプリントでトナー散りが増加し、実用上問題となるレベル。
【0147】
【表3】

【符号の説明】
【0148】
1Y,1M,1C,1Bk 感光体
2Y,2M,2C,2Bk 帯電手段
3Y,3M,3C,3Bk 露光手段
4Y,4M,4C,4Bk トナー像形成手段
5Y,5M,5C,5Bk 1次転写手段
5b 2次転写ローラ
6A クリーニング装置
6Y,6M,6C,6Bk クリーニング手段
7 中間転写体ユニット
8 筐体
10Y,10M,10C,10Bk 画像形成ユニット
20 給紙カセット
21 給紙搬送手段
22A,22B,22C,22D 中間ローラ
23 レジストローラ
24 定着手段
25 排紙ローラ
26 排紙トレイ
70 中間転写体
71,72,73,74 ローラ
82L,82R 支持レール
A 本体
SC 原稿画像読み取り装置
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像担持体と、この像担持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を、前記像担持体と当接される位置において当該像担持体と同方向に移動する中間転写体の表面に転写する1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段とを有する画像形成装置において、
前記中間転写体は、前記像担持体と当接する表面が、ラジカル重合性モノマーと無機微粒子とを混合し、前記ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られる有機−無機ハイブリッド材料により構成されており、当該表面のナノインデンテーション法による表面硬度が、前記像担持体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度より大きく、当該中間転写体の周速度が、前記像担持体の周速度より大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写体の表面の表面抵抗率の値が、1010〜1013Ω/□であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値が、0.8〜2.0GPaであり、
前記像担持体の表面のナノインデンテーション法による表面硬度の値が、0.4〜1.6GPaであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体の表面を構成する有機−無機ハイブリッド材料に含有される前記無機微粒子は、表面処理によりその表面が不飽和結合を持つ反応性基が付与されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−24898(P2013−24898A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156291(P2011−156291)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】