説明

画像形成装置

【課題】装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能な複数のヘッド部を備えた記録ヘッドにおける任意のヘッド部の交換を行い、そのヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド1を備えるプリンタは、直列に接続された複数のヘッド部11のうちの最下流側に位置する第五ヘッド部11eの流出部に接続されるヘッド排出管26と、複数のヘッド部11のうちの任意に選択した一つのヘッド部11の流出部に対して接続可能なバイパス下流側カップリング53を備える下流側バイパス供給管25bと、不図示の廃インク収容器に対するヘッド排出管26の連通または遮蔽を切り替え、且つ、排出液収容部に対する下流側バイパス供給管25bの連通または遮蔽を切り替える三方弁51と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体をノズルから液滴として吐出する液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液状のインクを液滴としてノズル孔から吐出するヘッド部を備えた記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行うものである。このような液体吐出記録方式の画像形成装置としては、記録ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置や、主走査方向の全域にノズル孔を備え、記録ヘッドが移動しない状態でインク滴を吐出して画像を形成するライン型記録ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。ライン型画像形成装置としては、例えば特許文献1〜3に記載のものがある。
【0003】
ライン型画像形成装置としては、ライン型記録ヘッドとして、インクを収容する空間をそれぞれ独立して形成した複数のヘッド部を主走査方向に並べて配置する構成がすでに知られている。このようなライン型記録ヘッドでは、何らかの原因により任意のヘッド部が破損した場合には対象となるヘッド部のみを交換する。これにより、ヘッド部に破損が生じた場合の交換部品を最小限にすることができる。
【0004】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のライン型記録ヘッドは、複数のヘッド部を直列に接続しており、最上流側のヘッド部からインクを供給することで、下流側のヘッド部に向けて順にインクを供給する。複数のヘッド部を直列に接続したライン型記録ヘッドでは、最下流側のヘッド部と廃液収容器等の大気開放された排出液収容部とを連通する大気開放流路を備え、この大気開放流路には大気開放弁が配置されている。そして、通常のインク吐出動作のときには、大気開放弁を閉鎖し、ヘッド部内をインクの吐出やインク供給に必要な圧力状態に維持している。また、全てのヘッド部にインクが充填されてない初期状態の場合は、大気開放弁を開放した状態で最上流側のヘッド部からインクの供給を行う。
【0006】
最下流側のヘッド部を大気開放することで、ヘッド部内の空気は上流側から供給されてくるインクによって下流側に向けて押し出され、大気開放流路を通って大気開放された排出液収容部に放出される。これにより、ヘッド部内の空気をインクに入れ替えることができ、初期状態の全てのヘッド部にインクを充填することが出来る。
【0007】
しかしながら、複数のヘッド部の一つを交換のために取り外し、交換後の新たなヘッド部にインク充填を行おうとした場合、次のような問題が生じた。すなわち、新たなヘッド部にインクを充填しようとする場合、ヘッド部内の空気を押し出すために大気開放する必要があるが、複数のヘッド部を直列に接続している構成では、最下流側のヘッド部以外のヘッド部は、その下流側にある一つまたは複数の他のヘッド部と大気開放流路とを介してしか大気開放することが出来ない。このため、最下流側のヘッド部以外のヘッド部を交換してインク充填を行うと、すでにインクが充填されている下流側のヘッド部に対して、交換したヘッド部内から空気を送り込んでしまう。このような場合、交換前に下流側のヘッド部内に存在したインクも空気とともに排出液収容部に排出されるため、多くのインクが無駄に排出されてしまう。
【0008】
また、このような問題は、記録ヘッドが画像形成時に主走査方向に移動しないライン型画像形成装置に限に限るものではなく、画像形成時に記録ヘッドが主走査方向に移動するシリアル型画像形成装置であっても記録ヘッド内の複数のヘッド部が直列で接続された構成であれば起こり得る問題である。また、記録ヘッドから吐出されるものはインクに限るものではなく、記録媒体に対して吐出することで画像を形成できる液体であればよい。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能な複数のヘッド部を備えた記録ヘッドにおける任意のヘッド部の交換を行い、そのヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体を液滴として吐出するノズル孔と、該ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、該液室内に流入する液体が通過する流入部と、該ノズル孔を通過せずに該液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える複数のヘッド部を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容タンクと、該ヘッド部の該流出部から排出された液体を収容する大気開放された排出液収容部と、を有し、該ノズル孔から吐出した液体を記録媒体に付着させることで画像を形成する画像形成装置において、上記複数のヘッド部は、上記流入部及び上記流出部に、接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ液流出防止機構を備えた接続部を備え、上記ノズル孔から液滴を吐出する液滴吐出時には、上記複数のヘッド部のうち一つの上記ヘッド部を最上流側ヘッド部として、その流入部を他の該ヘッド部を介さずに上記液体収容タンクに接続した状態で、且つ、該最上流側ヘッド部以外の該ヘッド部の該流入部を該最上流側ヘッド部を含む他の該ヘッド部の上記流出部と接続することで該複数のヘッド部を直列に接続した状態としておき、該液体収容タンクから該最上流側ヘッド部に供給された該液体を下流側の該ヘッド部に液体を供給する構成であって、該複数のヘッド部のうち、該最上流側ヘッド部を通過した液体の流路の最下流側に位置する最下流側ヘッド部の該流出部に接続されるヘッド部下流端流路と、該複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の該流出部に対して接続可能な端部を備えるヘッド排出部流路と、上記排出液収容部に対する該ヘッド部下流端流路の連通または遮蔽を切り替える下流端流路切替手段と、該排出液収容部に対する該ヘッド排出部流路の連通または遮蔽を切り替える排出部流路切替手段と、を備えることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項4の発明は、液体を液滴として吐出するノズル孔と、該ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、該液室内に流入する液体が通過する流入部と、該ノズル孔を通過せずに該液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える複数のヘッド部を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容タンクと、該ヘッド部の該流出部から排出された液体を収容する大気開放された排出液収容部と、を有し、該ノズル孔から吐出した液体を記録媒体に付着させることで画像を形成する画像形成装置において、上記複数のヘッド部は、上記流入部及び上記流出部に、接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ液流出防止機構を備えた接続部を備え、上記液体収容タンクと接続し、該複数のヘッド部のすべての該流入部との接続部を有する共通流入液収容部と、上記排出液収容部に対する連通状態または遮蔽状態を切り替え可能で、上記複数のヘッド部のすべての上記流出部との接続部を有する共通流出液収容部と、を有し、該共通流出液収容部が、該複数のヘッド部のすべての該流出部に連通する状態と、該複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の該流出部にのみ連通する状態と、を切り替えることができる流出部連通状態切替機構を備えることを特徴とするものである。
【0011】
請求項1に記載の構成を備える発明においては、複数のヘッド部は、流入部及び流出部に、液流出防止機構を備えた接続部を備えるため、流入部及び流出部の接続部と接続対象との接続を解除しても複数のヘッド部の流入部や流出部から液体が流出することなく、各ヘッド部を装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能である。
また、請求項1に記載の構成を備える発明においては、液滴吐出時には、下流端流路切替手段及び排出部流路切替手段を共に遮蔽状態とする。これにより、すべてのヘッド部が連通した状態で、最下流側ヘッド部の流出部に接続されたヘッド部下流端流路は大気開放された排出液収容部に対して流路が遮蔽される。この状態では各ヘッド部は大気開放されていないため、ヘッド部内を液体の吐出や液体供給に必要な圧力状態に維持することができる。
また、請求項1に記載の構成を備える発明においては、液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、下流端流路切替手段を連通状態とし、排出部流路切替手段を遮蔽状態とする。これにより、ヘッド部内の空気は上流側から供給されてくる液体によって下流側に向けて押し出され、ヘッド部下流端流路を通って大気開放された排出液収容部に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部に液体を充填することが出来る。
さらに、請求項1に記載の構成を備える発明においては、交換したヘッド部に液体を充填するときには、ヘッド排出部流路の端部を交換したヘッド部の流出部に接続し、排出部流路切替手段を連通状態として、下流端流路切替手段を遮蔽状態とする。この状態で、交換したヘッド部の流入部から液体を供給することにより、交換したヘッド部内の空気は流入部から供給される液体によって流出部から押し出される。このとき、交換したヘッド部の流出部は、他のヘッド部を介することなく、ヘッド排出部流路を介して大気開放された排出液収容部と連通しているため、交換したヘッド部内の空気が液滴吐出時に下流側となるヘッド部に送り込まれることがない。よって、交換したヘッド部の空気とともに交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が排出液収容部に排出されることを防止できる。
【0012】
請求項4に記載の構成を備える発明においては、複数のヘッド部は、流入部及び流出部に、液流出防止機構を備えた接続部を備えるため、流入部及び流出部の接続部と接続対象との接続を解除しても複数のヘッド部の流入部や流出部から液体が流出することなく、各ヘッド部を装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能である。
また、請求項4に記載の構成を備える発明においては、液滴吐出時には、共通流出液収容部と排出液収容部とを遮断状態とし、流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態とする。すべてのヘッド部の流出部に連通する共通流出液収容部が大気開放されていないため、ヘッド部内を液体の吐出や液体供給に必要な圧力状態に維持することができる。
また、請求項4に記載の構成を備える発明においては、液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、共通流出液収容部と排出液収容部とを連通状態とし、流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態とする。これにより、ヘッド部内の空気は共通流入液収容部から供給されてくる液体によって共通流出液収容部に向けて押し出され、共通流出液収容部と連通する排出液収容部に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部に液体を充填することが出来る。
さらに、請求項4に記載の構成を備える発明においては、交換したヘッド部に液体を充填するときには、共通流出液収容部と排出液収容部とを連通状態とし、流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部として交換したヘッド部の流出部にのみ連通する状態とする。この状態で、交換したヘッド部の流入部に共通流入液収容部から液体を供給することにより、交換したヘッド部内の空気は流入部から供給される液体によって流出部から押し出される。このとき、交換したヘッド部の流出部は、他のヘッド部を介することなく、共通流出液収容部を介して排出液収容部と連通しているため、交換したヘッド部内の空気が他のヘッド部に送り込まれることがない。よって、交換したヘッド部の空気とともに交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が排出液収容部に排出されることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、交換したヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が交換したヘッド部の空気とともに排出液収容部に排出されることを防止できるため、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の記録ヘッドにおける一つのヘッド部を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図。
【図2】本実施形態に係るプリンタの概略構成図
【図3】実施例1のプリンタが備える、記録ヘッド、インクカートリッジ、サブタンク及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせの説明図。
【図4】実施例2のプリンタが備える、記録ヘッド、インクカートリッジ、サブタンク及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせの説明図。
【図5】実施例2の記録ヘッドにおける一つのヘッド部を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図。
【図6】実施例3のプリンタが備える、記録ヘッド、インクカートリッジ、サブタンク及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせの説明図。
【図7】実施例3の供給マニホールドと排出マニホールドとの説明図、(a)は、図6中の二つのヘッド部近傍のY−Z断面の拡大図、(b)は、供給マニホールドのX−Z断面図、(c)は、排出マニホールドのX−Z断面図。
【図8】実施例3の記録ヘッドにおける一つのヘッド部を交換した際のインク充填時の説明図。
【図9】図8に示す状態の供給マニホールドと排出マニホールドとの説明図、(a)は、図6中の二つのヘッド部近傍のY−Z断面の拡大図、(b)は、供給マニホールドのX−Z断面図、(c)は、排出マニホールドのX−Z断面図。
【図10】、図6及び図7に示す状態における供給マニホールド断面と、供給制御用センサに対する供給制御用エンコーダの回転位置の関係とを示す説明図。
【図11】図8及び図9に示す状態における供給マニホールド断面と、供給制御用センサに対する供給制御用エンコーダの回転位置の関係とを示す説明図。
【図12】従来のライン型画像形成装置が備える記録ヘッドにおける一つのヘッド部を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ100)について説明する。
図2は、プリンタ100の概略構成図である。
【0016】
プリンタ100は、ノズル孔から記録媒体に向けて各色のインクを吐出して画像を形成する四つの記録ヘッド1(Y,M,C,K)を収容するヘッドユニット12を備える。ヘッドユニット12の下方には、記録媒体である用紙8を搬送する搬送ユニット5を備える。搬送ユニット5は、副走査方向の一方(図2中のX軸プラス方向)に向けて用紙8を搬送する無端状の搬送ベルト13と、搬送ベルト13の下方に配置されたエアー吸引ファン10とを備える。搬送ユニット5に対して用紙8の搬送方向上流側には、給紙トレイ800に載置された用紙8の一番上の一枚を搬送ベルト13の上面に向けて供給する給紙ユニット6が配置されている。一方、搬送ユニット5に対して用紙8の搬送方向下流側には、搬送ガイド板9及び排紙台7が配置されている。
【0017】
エアー吸引ファン10は上方の空気を吸引して下方に排出するものであり、搬送ベルト13は穴開け加工がされている。このような構成により、搬送ユニット5では、搬送ベルト13の上面に供給された用紙8の下面を搬送ベルト13に吸着させることができ、搬送ベルト13が図2中の反時計回り方向に表面移動することで用紙8を副走査方向に搬送することができる。
【0018】
ヘッドユニット12は、副走査方向に直交する主走査方向(図中のY軸方向)の全幅(搬送する用紙8の最大幅)にノズル孔が並んで形成された四つの記録ヘッド1(Y,M,C,K)が搭載されている。フルカラーの画像を形成する際には、各記録ヘッド1(Y,M,C,K)から、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクを吐出する。
また、プリンタ100は、各記録ヘッド1(Y,M,C,K)に供給する各色のインクをそれぞれ収容するインクカートリッジ3(Y,M,C,K)を搭載するインクカートリッジユニット300を備える。さらに、各インクカートリッジ3(Y,M,C,K)から供給される各色インクを一時的に貯留し、各記録ヘッド1(Y,M,C,K)にインクを供給するサブタンク2(Y,M,C,K)を搭載するサブタンクユニット200を備える。
プリンタ100は、記録ヘッド1(Y,M,C,K)、インクカートリッジ3(Y,M,C,K)、サブタンク2(Y,M,C,K)及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせを各色に対応して4組備えるが、各組み合わせは使用するインクの色が異なる点以外は同様の構造である。
【0019】
次に、プリンタ100での一連の画像形成動作を説明する。
プリンタ100は、不図示のパーソナルコンピューター等の外部装置から、画像情報と共にプリント開始命令を受信すると、先ず、給紙ユニット6によって送られた用紙8を搬送ユニット5によってヘッドユニット12の下方に搬送する。用紙8がヘッドユニット12の各記録ヘッド1(Y,M,C,K)の下方に到達するタイミングに合わせて、画像情報に応じたインクの吐出を行い、用紙8の上面に画像を形成する。上面に画像が形成され、搬送ユニット5を通過した用紙8は、搬送ガイド板9上を通過して排紙台7上に積載される。
【0020】
次に、画像形成動作終了後、または、所定時間経過後に実行される記録ヘッド1のクリーニング動作について説明する。
記録ヘッド1のクリーニングを行う際には、先ず、ヘッドユニット12が、画像形成動作時の位置よりも上方の図2中の破線で示す位置まで退避する。そして、搬送ユニット5とヘッドユニット12との間にできた空間にクリーニングユニット4がスライドして入り込む。次にヘッドユニット12が下降してクリーニングユニット4の上に載り、各記録ヘッド1(Y,M,C,K)の下面がクリーニングユニット4の上部に設けられた吸引キャップ31(図1及び図3参照)よってキャッピングされる。
【0021】
クリーニングユニット4には、不図示の吸引ポンプユニットが接続されており、吸引ポンプユニットが負圧を発生させることによってクリーニングユニット4がキャッピングしている各記録ヘッド1(Y,M,C,K)の下面に負圧が作用する。これにより、各記録ヘッド1(Y,M,C,K)のノズル孔から記録ヘッド1内のインクの吸引が成され、記録ヘッド1のクリーニングが行われる。
記録ヘッド1のクリーニング動作が完了したら、ヘッドユニット12は再び上方に退避し、クリーニングユニット4が図2で示す位置に戻る。その後、ヘッドユニット12が搬送ベルト13の用紙搬送面である上部張架面に対向する位置に下降し、記録可能状態となる。
【0022】
〔実施例1〕
次に、本発明を適用したプリンタ100の一つ目の実施例(以下、実施例1と呼ぶ)について説明する。
図3は、実施例1のプリンタ100が4組備える、記録ヘッド1、インクカートリッジ3、サブタンク2及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせのうちの一組の説明図である。
プリンタ100では、インクカートリッジ3内のインクが一旦サブタンク2に送られた後、記録ヘッド1に供給される。サブタンク2は、インクを収容するケーシング形状の一部(図中の円弧状の部分)に可撓性フィルムを溶着してインクを収容する部分の容積を変更可能な構造である。また、サブタンク2の内部には、スプリング29が自然長よりも短い状態で配置されており、スプリング29がサブタンク2の可撓性フィルムの部分を外側に押し広げるように作用する。このスプリング29の作用によりサブタンク2内には負圧が形成される。
【0023】
実施例1のインクカートリッジ3は、内側がアルミニウム製の袋部材(いわゆる「アルミパウチ」)で、外側がハードケースの二重構造となっており、各色インクはアルミニウム製の袋部材内に収容されている。また、インクカートリッジ3は、不図示のエアーポンプによってハードケース内部に空気を送りこむことでアルミニウム製の袋部材が空気で加圧される構成となっている。インクカートリッジ3とサブタンク2とを接続するインク搬送管であるサブタンク供給管20には、サブタンク2へのインクの供給を調整する供給調整弁21が設けられている。不図示のエアーポンプを駆動し、供給調整弁21を開放することで、インクカートリッジ3のハードケース内部に送られた空気によってアルミニウム製の袋部材が加圧され、内部のインクがサブタンク供給管20を通ってサブタンク2へと供給される。
サブタンク2と記録ヘッド1との間には、水頭差によって記録ヘッド1へとインクが供給される力が作用するが、サブタンク2内に負圧が形成された状態となることで、記録ヘッド1内が満杯の状態では、それ以上のインクの供給がなされない状態となる。記録ヘッド1がインクを吐出し、その内部のインクが減少すると水頭差によりサブタンク2内のインクが記録ヘッド1へと供給される。
【0024】
プリンタ100がそなえる各記録ヘッド1は、図3に示すように、ヘッド部11を主走査方向(図中のY軸方向)に複数個並べて配置したラインエンジン型のものである。そして、第一ヘッド部11aの排出ポートと第二ヘッド部11bの供給ポートとが接続されるように、隣り合うヘッド部11同士のうち、上流側のヘッド部11の排出ポートと下流側のヘッド部11の供給ポートとが接続されている。これにより、上流側のヘッド部11から下流側のヘッド部11へとインクが供給される構成となっている。図3では、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11eまでの5つのヘッド部11を備えた構成となっているが、ヘッド部11の数を5つに限るものではない。複数個のヘッド部11は、インクを収容する空間をそれぞれ独立して形成しており、各ヘッド部11はそれぞれ独立して交換可能な構成となっている。また、各ヘッド部11は、複数のノズル孔、ノズル孔に対応した圧力室及び圧力室に供給するインクを収容する少なくとも一つの共通液室を備える。また、任意のヘッド部でインクが消費されることによって共通液室に負圧が生じると、その一つ上流側のヘッド部11の共通液室内のインクが供給される。なお、プリンタ100の圧力室を加圧し、ノズル孔からインクを吐出する構成としては静電アクチュエータを用いるものを適用できるが、これに限るものではない。
【0025】
図3は、各インク搬送管および各ヘッド部11内にインクが充填された状態を示している。
インクの流れは、インクカートリッジ3からサブタンク2に送られ、サブタンク2から記録ヘッド1に供給されたインクは、複数のヘッド部11のうち、先ず上流側の第一ヘッド部11aに送られ、さらに、下流側の「第二ヘッド部11b」→「第三ヘッド部11c」→「第四ヘッド部11d」→「第五ヘッド部11e」の順にインクが供給される。
隣り合うヘッド部11同士の排出ポートと供給ポートとの間や、ヘッド部11とインク搬送管(22、25a、25b、26)との間、及び、インク搬送管同士の間は、上流側カップリング(24、50、52)と下流側カップリング(23、53、54)とによって接続が成される。各カップリングは、接続が解除された状態ではインクが外に流出しないように弁機構を備えており、着脱動作においても供給流路にインクが充填された状態で供給流路を切り離すことが可能となっている。
【0026】
サブタンク2と記録ヘッド1とを接続するヘッド上流側供給管22の下流側端部には、供給管カップリング50が設けられており、第一ヘッド部11aの供給ポートに設けられた第一供給カップリング23aとの間の接続及び接続の解除が可能な構成となっている。また、第一ヘッド部11aの排出ポートに設けられた第一排出カップリング24aと第二ヘッド部11bの供給ポートに設けられた第二供給カップリング23bとの間の接続及び接続の解除が可能な構成となっている。同様に、第二排出カップリング24bと第三供給カップリング23cとの間、第三排出カップリング24cと第四供給カップリング23dとの間、及び、第四排出カップリング24dと第五供給カップリング23eとの間も接続及び接続の解除が可能な構成となっている。
【0027】
また、ヘッド上流側供給管22は供給管カップリング50よりも上流側でバイパス供給流路としてのバイパス供給管25が枝分かれしている。バイパス供給管25は、三方弁51、ヘッド排出管26及び排出管カップリング54を介して、第五ヘッド部11eの排出ポートと接続されており、通常のインク供給時は記録ヘッド1における下流側端部のヘッド部11(第五ヘッド部11e)へのインク供給の補助の役割を備えている。バイパス供給管25の流路の途中には、バイパス上流側カップリング52とバイパス下流側カップリング53とを備えており、このカップリングの接続を解除することで、上流側バイパス供給管25aと下流側バイパス供給管25bとに分離する構成となっている。
【0028】
三方弁51は、バイパス供給管25、ヘッド排出管26及び廃液流路であってインクや気体を大気圧の空間に排出する大気排出管30の三つの流路と接続しており、三つの流路のうちの二つの流路を連通し、他の一つの流路を閉鎖するものである。そして、連通する流路の組み合わせを不図示の制御部の制御、または手動によって変更可能な構成となっており、通常のインク供給時には、バイパス供給管25とヘッド排出管26とを連通した状態である。これにより、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11eのすべてのヘッド部が連通した状態で、最下流側ヘッド部である第五ヘッド部11eの流出部は、ヘッド排出管26を介して大気開放されていないバイパス供給管25と連通する。大気開放されていないため、各ヘッド部11内をインクの吐出やインク供給に必要な圧力状態に維持することができる。
【0029】
また、未使用の記録ヘッド1をプリンタ100に装着し、液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、三方弁51をヘッド排出管26と大気排出管30とを連通した状態とする。これにより、各ヘッド部11内の空気は上流側から供給されてくるインクによって下流側に向けて押し出され、大気排出管30を通って大気開放された空間に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部11にインクを充填することが出来る。
【0030】
ヘッド部11がインクを吐出するとサブタンク2内のインクが減少し、スプリングが圧縮される。このとき、サブタンク2内の負圧が最も大きい状態となるが、ヘッド部11でのインクの吐出に影響を与えない許容範囲内である。
サブタンク2内のインク量の変化は、サブタンク2の可撓性フィルム面の膨らみの変化をセンサーフィラー60で増幅し、センサーフィラー60の振幅をインク空検知センサ62及びインク満杯検知センサ61で検知する。そして、この検知結果に基づいて不図示の制御部がエアーポンプの駆動及び供給調整弁21の開閉を制御することによって、サブタンク2内のインク量を適量に制御する。
【0031】
詳しくは、サブタンク2内のインクの減少によりスプリングが縮んでくるとセンサーフィラー60が図中の左方向に倒れる。そして、インク空検知センサ62がセンサーフィラー60の先端を検知すると、不図示の制御部が、サブタンク2内のインク量が少ないと判断し、エアーポンプを駆動して供給調整弁21を開く制御を行うことで、インクカートリッジ3からサブタンク2内へインクが供給されるインクカートリッジ3からサブタンク2にインクを送り、サブタンク2内が膨らんでくる(スプリングが伸びてくる)と、センサーフィラー60が図中の右方向に倒れる。そして、インク満杯検知センサ61がセンサーフィラー60の先端を検知すると、不図示の制御部が、サブタンク2内のインク量が適正な状態となったと判断し、供給調整弁21を閉じてエアーポンプを停止することでインク供給を止める。この状態においてもサブタンク2内は微小な負圧状態を保っている。
【0032】
このようなサブタンク2へのインクの制御においては、サブタンク2の可撓性フィルム面の変位量(スプリングの変位量)が1[mm]程度の範囲となることが望ましい。このため、センサーフィラー60の動きをインク空検知センサ62及びインク満杯検知センサ61で検出し、エアーポンプの駆動及び供給調整弁21の開閉を制御することで、サブタンク2内の負圧変動を最小限にしている。
【0033】
プリンタ100のように、記録ヘッド1からインクを吐出して用紙8上に画像を形成する構成では、記録ヘッド1の下方を通過する用紙8と記録ヘッド1の下面であるヘッドノズル面とが近接する。このため、用紙8が搬送中に紙詰りを起こした場合など、用紙8が記録ヘッド1の下面に接触してヘッドノズル面を破損する場合がある。このような場合、プリンタ100では、記録ヘッド1は複数のヘッド部11を備え、各ヘッド部11はそれぞれ独立して交換可能な構成となっているため、ヘッドノズル面の破損によりヘッド交換が必要な場合には、対象となるヘッド部11のみを交換可能である。このとき、対象となるヘッド部11の供給側に設けられた供給カップリング23及び排出側に設けられた排出カップリング24について、他のカップリングとの接続を解除することで、対象となるヘッド部11のみを取り外すことが出来る。
【0034】
図1は、実施例1のプリンタ100が備える記録ヘッド1における一つのヘッド部11(第三ヘッド部11c)を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図である。
第三ヘッド部11cを交換するときには、第三供給カップリング23cと第二排出カップリング24bとの間の接続、及び、第三排出カップリング24cと第四供給カップリング23dとの間の接続を解除して、第三ヘッド部11cとして使用していたヘッド部11を取り外す。また、バイパス供給管25のバイパス上流側カップリング52とバイパス下流側カップリング53との接続を解除する。
次に、新たなヘッド部11を第三ヘッド部11cとして設置し、第三供給カップリング23cとバイパス上流側カップリング52とを接続し、第三排出カップリング24cとバイパス下流側カップリング53とを接続する。これにより、第三ヘッド部11cの供給ポートと上流側バイパス供給管25aとを接続し、さらに、第三ヘッド部11cの排出ポートと下流側バイパス供給管25bとを接続した状態となる。
【0035】
バイパス供給管25と大気排出管30との間には三方弁51が取り付けられており、通常のインク供給時には、バイパス供給管25とヘッド排出管26との間を三方弁51が連通する状態である。一方、図1に示すように、交換したヘッド部11へのインク充填の場合には、バイパス供給管25と大気排出管30との間を三方弁51が連通する状態となる。
実施例1のプリンタ100で、第三ヘッド部11cにインクを充填する場合には、図1に示す流路の接続状態で、上述したインクカートリッジ3に接続されたエアーポンプを駆動し、供給調整弁21を開放する。エアーポンプによるインクカートリッジ3内の加圧を利用してサブタンク2にインクを送り、サブタンク2内が満杯状態(可撓性フィルムが膨らんだ状態)になると、サブタンク2内のインクが上流側バイパス供給管25aを介して第三ヘッド部11c内に供給される。このとき、充填前に第三ヘッド部11c内に存在した空気は供給されたインクによって押し出され、第三ヘッド部11cの排出ポート、下流側バイパス供給管25b、三方弁51及び大気排出管30を介して、大気圧空間である装置外部に排出される。
【0036】
このとき、サブタンク2から供給されるインクは、供給管カップリング50を介して第一ヘッド部11aの方にも僅かに供給される。しかし、交換された第三ヘッド部11cは、三方弁51及び大気排出管30を介して大気に開放された状態であるため、殆どのインクは第三ヘッド部11cに供給されることになる。
図1に示す状態で、インクカートリッジ3から所定時間インク供給したら供給調整弁21を閉じてインク供給を止めて、第三ヘッド部11cへのインク充填を終える。インク充填後、第三ヘッド部11cの第三供給カップリング23c及び第三排出カップリング24cの接続状態を図3に示す状態につなぎ変えて、通常の画像形成が可能な状態となる。
なお、実施例1のプリンタ100におけるカップリング同士の間の接続及び接続の解除は、人の手で行うものである。
【0037】
図1及び図3中のヘッド部11の下方には、クリーニングユニット4の上部に設けられた吸引キャップ31を示している。
第三ヘッド部11cにインクを充填するときには、第一〜第三のヘッド部11(a〜c)内は、負圧が保てなくなるため、ノズル孔からインクが垂れ落ちる。このため、ヘッド部11を交換するときにはヘッドユニット12をクリーニングユニット4の上に載せた状態とし、各ヘッド部11(a〜e)の下面を吸引キャップ31でキャッピングする。そして、インク充填時に第一〜第三のヘッド部11(a〜c)のノズル孔から垂れ落ちるインクについては、各ヘッド部11(a〜e)の下部に配置した吸引キャップ31で吸引する。更に、交換した第三ヘッド部11cのヘッド内液室(圧力室及び共通液室)の隅々までインクを充填するために、吸引キャップ31によってノズル孔からヘッド部11内部の空気とインクとを吸引することによって行う。
【0038】
ここで、従来のライン型画像形成装置で、複数のヘッド部11がそれぞれ独立して交換可能な構成で本発明の特徴部を有しない構成の問題点について説明する。
図12は、従来のライン型画像形成装置が備える記録ヘッド1における一つのヘッド部11(第三ヘッド部11c)を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図である。
従来の構成では、新たなヘッド部11を第三ヘッド部11cとして設置した後は、第三供給カップリング23cは第二排出カップリング24bに接続し、第三排出カップリング24cは第四供給カップリング23dに接続する。
【0039】
この状態で、第三ヘッド部11cへのインクの充填するには、インクタンク3内を加圧する不図示のエアーポンプを駆動した状態で、排出弁55及び供給調整弁21を開放する。このときの第三ヘッド部11cへのインク供給は、サブタンク2から第一ヘッド部11aに供給され、次に、第二ヘッド部11bに供給され、その後、第三ヘッド部11cへと供給される。すなわち、交換後の新たなヘッド部11(第三ヘッド部11c)にインク充填を行おうとした場合、交換してインクの充填を要するヘッド部(第三ヘッド部11c)だけでなく、すでにインクが充填されており、新たなインクの供給を要しないヘッド部(第一ヘッド部11a及び第二ヘッド部11b)にもインクが供給される。
このとき、充填前に第三ヘッド部11c内に存在した空気は供給されたインクによって押し出される。この空気を記録ヘッド1の外に排出するためには、第三ヘッド部11cの排出ポートを通過した空気を「第四ヘッド部11d」→「第五ヘッド部11e」の順に通過させ押し出す必要がある。
【0040】
インク充填時には、排出弁55が開いているため、第四ヘッド部11d及び第五ヘッド部11e内のインクが排出されながら充填前に第三ヘッド部11c内に存在した空気が排出されることになる。このとき、相当量のインクを無駄に排出してしまうことになる。そして、交換したヘッド部11が上流側であるほど(最上流側は、第一ヘッド部11a)、無駄に排出してしまうインクの量が多くなる。さらに、空気の排出に要する時間も交換するヘッド部が上流側であるほど長くなる。
このように従来構成の場合、ヘッド部11交換後のインク充填によって大量のインクが無駄に排出されてしまうという問題や、インク充填に要する時間が長くなるという問題があった。
【0041】
実施例1のプリンタ100では図1に示すように、交換した第三ヘッド部11cの供給ポートとサブタンク2との間を他のヘッド部11を介さずに直接接続した状態で第三ヘッド部11cへのインクの充填を行うことが出来る。また、交換した第三ヘッド部11cの排出ポートと大気排出管30のとの間を他のヘッド部11を介さずに直接接続した状態で第三ヘッド部11c内の気体を装置外部へ排出することができる。
【0042】
このような構成により、交換したヘッド部11から内部の気体を直接に大気排出管30に排出できるので、交換したヘッド部11(図1の例では「第三ヘッド部11c」)内のエアーをインク流路下流側に配置された他のヘッド部11(交換不要な正常なヘッド部で、図1の例では「第四ヘッド部11d」及び「第五ヘッド部11e」)に送る必要がないので、記録ヘッド1のインクの流路全体からの気体の排出が容易となり、インク充填時間が短時間で済む。
更に、交換したヘッド部11(図1の例では「第三ヘッド部11c」)のみにサブタンク2からのインクの供給路を連通させることで、インクで満たされている交換の必要がない他のヘッド部11(図1の例では「第一ヘッド部11a」、「第二ヘッド部11b」、「第四ヘッド部11d」及び「第五ヘッド部11e」)にインクを送る必要がないので、インク充填時に排出してしまうインクの無駄を低減できる。
【0043】
実施例1では、第三ヘッド部11cを交換した場合について説明したが、他のヘッド部11(a,b,d,e)を交換した場合も、同様に供給カップリング23とバイパス上流側カップリング52とを接続し、排出カップリング24とバイパス下流側カップリング53とを接続する。これにより、上述した第三ヘッド部11cを交換した場合と同様のインク充填を行うことができる。また、最下流側ヘッド部である第五ヘッド部11eを交換した場合は、インク充填時に第五排出カップリング24eを接続する相手は、バイパス下流側カップリング53に限らず、排出管カップリング54であってもよい。この場合、三方弁51は、ヘッド排出管26と大気排出管30とを連通させる。
【0044】
実施例1のプリンタ100では、大気排出管30を通過したインクを不図示の排出液収容部としての廃インク収容器で回収して廃棄する。しかし、大気排出管30を通過したインクの取り扱いとしては、廃棄する構成に限らず、大気開放されたインクカートリッジ3に戻す構成としてもよい。この構成では、インクカートリッジ3が排出液収容部となる。サブタンク2はその容積の膨張によって発生する負圧によってインクカートリッジ3内のインクの供給を受けるため、インクカートリッジ3が大気開放された状態でインクカートリッジ3からサブタンク2へのインクの供給を行うことが出来る。
【0045】
〔実施例2〕
次に、本発明を適用したプリンタ100の二つ目の実施例(以下、実施例2と呼ぶ)について説明する。
図4は、実施例2のプリンタ100が4組備える、記録ヘッド1、インクカートリッジ3、サブタンク2及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせのうちの一組の説明図である。
実施例1とは、サブタンク2と第五ヘッド部11eとを接続するバイパス供給管25を備えていない点で異なる。しかし、他の構成は同様であり、実施例1と同じ符号が付されている部材は、実施例1で説明した部材と同様の機能を有するものである。また、実施例1と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0046】
図4に示すように、記録ヘッド1内のインクの流路における最下流のヘッド部11である第五ヘッド部11eは、ヘッド排出管26及び三方弁51を介して大気排出管30に接続されている。また、三方弁51は、ヘッド排出管26及び大気排出管30の他に、交換時排出管32が接続されている。三方弁51との接続部とは反対側の交換時排出管32の端部には交換時排出用カップリング33が設けられており、各ヘッド部11の排出ポートに設けられた排出カップリング24とカップリング接続可能なように、フリーな状態で配置されている。
図4の状態での三方弁51は、第五ヘッド部11eの排出ポートと交換時排出管32とが連通された状態であり、大気排出管30と他の流路とは遮断されている。
【0047】
図4は各インク搬送管および各ヘッド部11内にインクが充填された状態を示している。
実施例2のプリンタ100におけるインクの流れは、バイパス供給管25がない点以外は、実施例1と同様である。すなわち、インクカートリッジ3からサブタンク2に送られ、サブタンク2から記録ヘッド1に供給されたインクは、複数のヘッド部11のうち、先ず上流側の第一ヘッド部11aに送られ、さらに、下流側の「第二ヘッド部11b」→「第三ヘッド部11c」→「第四ヘッド部11d」→「第五ヘッド部11e」の順にインクが供給される。
隣り合うヘッド部11同士の排出ポートと供給ポートとの間や、ヘッド部11とインク搬送管(22、32、26)との間、及び、インク搬送管同士の間は、上流側カップリング(24、50)と下流側カップリング(23、33、54)とによって接続が成される。各カップリングは、接続が解除された状態ではインクが外に流出しないように弁機構を備えており、着脱動作においても供給流路にインクが充填された状態で供給流路を切り離すことが可能となっている。
【0048】
図5は、実施例2のプリンタ100が備える記録ヘッド1における一つのヘッド部11(第三ヘッド部11c)を交換した際のインクの流路の接続状態を示す説明図である。
第三ヘッド部11cを交換するときには、第三供給カップリング23cと第二排出カップリング24bとの間の接続、及び、第三排出カップリング24cと第四供給カップリング23dとの間の接続を解除して、第三ヘッド部11cとして使用していたヘッド部11を取り外す。
次に、新たなヘッド部11を第三ヘッド部11cとして設置し、第三ヘッド部11cの供給ポートに設けた第三供給カップリング23cと、第三ヘッド部11cに対して一つ上流側のヘッド部11である第二ヘッド部11bの第二排出カップリング24bとを接続する。さらに、第三ヘッド部11cの排出ポートに設けた第三排出カップリング24cと、交換時排出管32の交換時排出用カップリング33とを接続する。
図5に示す状態では、三方弁51は、交換時排出管32と大気排出管30とが連通された状態であり、第五ヘッド部11eの排出ポートと他の流路とは遮断されており、交換時排出管32に排出ポートが接続された第三ヘッド部11cが大気に開放された状態である。
【0049】
実施例2のプリンタ100で、第三ヘッド部11cにインクを充填する場合には、図5に示す流路の接続状態で、実施例1と同様に、インクカートリッジ3に接続されたエアーポンプを駆動し、供給調整弁21を開放する。エアーポンプによるインクカートリッジ3内の加圧を利用してサブタンク2にインクを送り、サブタンク2内が満杯状態(可撓性フィルムが膨らんだ状態)になると、サブタンク2内のインクが第一ヘッド部11a内に供給される。
第一ヘッド部11aに供給されたインクは、「第一ヘッド部11a」→「第二ヘッド部11b」→「第三ヘッド部11c」の順に供給される。このとき、第三ヘッド部11cの排気ポートは交換時排出管32及び大気排出管30を介して大気に開放されているため、第三ヘッド部11c内へのインクの充填は殆ど抵抗なく実行できる。
【0050】
図5に示す状態で、インクカートリッジ3から所定時間インク供給したら供給調整弁21を閉じてインク供給を止めて、第三ヘッド部11cへのインク充填を終える。インク充填後、第三ヘッド部11cの第三排出カップリング24cの接続状態を図4に示す状態につなぎ変えて、通常の画像形成が可能な状態となる。
インク充填時に第一〜第三のヘッド部11(a〜c)のノズル孔から垂れ落ちるインクについては、各ヘッド部11(a〜e)の下部に配置した吸引キャップ31で吸引する。更に、交換した第三ヘッド部11cのヘッド内液室(圧力室及び共通液室)の隅々までインクを充填するために、吸引キャップ31によってノズル孔からヘッド部11内部の空気とインクとを吸引することによって行う。
【0051】
〔実施例3〕
次に、本発明を適用したプリンタ100の三つ目の実施例(以下、実施例3と呼ぶ)について説明する。
図6は、実施例3のプリンタ100が4組備える、記録ヘッド1、インクカートリッジ3、サブタンク2及びこれらを接続するインク搬送管の組み合わせのうちの一組の説明図である。
実施例1及び2とは、すべてのヘッド部11の供給ポートが接続されている供給マニホールド70と、すべてのヘッド部11の排出ポートが接続されている排出マニホールド71とを備える点で異なる。しかし、他の構成は同様であり、実施例1または2と同じ符号が付されている部材は、実施例1または2で説明した部材と同様の機能を有するものである。また、実施例1または2と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0052】
供給マニホールド70及び排出マニホールド71は二重円筒状の構造となっており、内側の円筒状部材である内部構造体(701、711)の回転位置を制御することで、選択したヘッド部11の内部空間に対して各流路を自動で連通または遮断できること構成である。
供給マニホールド70には、各ヘッド部11(a〜e)の供給ポートに設けられた供給カップリング23(a〜e)とそれぞれ接続する供給管カップリング50(a〜e)が取り付けられている。各供給カップリング23(a〜e)と各供給管カップリング50(a〜e)とを接続することで、ヘッド上流側供給管22と各ヘッド部11(a〜e)とが供給マニホールド70を介して連通する。また、排出マニホールド71には、各ヘッド部11(a〜e)の排出ポートに設けられた排出カップリング24(a〜e)とそれぞれ接続する排出管カップリング54(a〜e)が取り付けられている。各排出カップリング24(a〜e)と各排出管カップリング54(a〜e)とを接続することで、大気排出管30と各ヘッド部11(a〜e)とが排出マニホールド71を介して連通する。
【0053】
また、一つのヘッド部11における供給カップリング23と供給管カップリング50との接続、及び、排出カップリング24と排出管カップリング54との接続を解除することで、実施例1及び2と同様に、各ヘッド部11がそれぞれ独立して交換可能な構成となっている。
図6は各インク搬送管および各ヘッド部11内にインクが充填され、通常の画像形成が可能な状態を示している。また、サブタンク2から各ヘッド部11へのインクの供給は供給マニホールド70を通して行われる。
【0054】
図7は、供給マニホールド70と排出マニホールド71との説明図である。図7(a)は、図6中の二つのヘッド部11(a、b)近傍のY−Z断面の拡大図であり、図7(b)は、供給マニホールド70のX−Z断面図であり、図7(c)は、排出マニホールド71のX−Z断面図である。
供給マニホールド70及び排出マニホールド71は、どちらも二重構造体となっており、供給内部構造体701及び排出内部構造体711は、供給外部構造体702及び排出外部構造体712に対して回転可能な構成である。供給内部構造体701には、各ヘッド部11(a〜e)の供給ポートに対応したインク供給可能な孔であるインク供給孔700(a〜e)が設けられている。また、排出内部構造体711には、各ヘッド部11(a〜e)の排出ポートに対応したインク排出可能な孔であるインク排出孔710(a〜e)が設けてある。
【0055】
図7は、図6の拡大図であり、各インク搬送管および各ヘッド部11内にインクが充填され、通常の画像形成が可能な状態を示している。
供給マニホールド70は各ヘッド部11(a〜e)の供給ポートと接続されている。そして、供給内部構造体701のインク供給孔700(a〜e)の配置は、すべてのヘッド部11(a〜e)に供給可能な配置となっている。
また、排出マニホールド71は各ヘッド部11(a〜e)の排出ポートと接続されている。そして、排出内部構造体711のインク排出孔710(a〜e)の配置は、すべてのヘッド部11(a〜e)からインクが排出可能な配置となっている。
【0056】
排出マニホールド71の一端には大気排出管30が接続されており、排出弁55によって大気排出管30の開閉を行っている。供給内部構造体701は、供給連結軸90を介して供給駆動モータ72につながっており、供給駆動モータ72の回転角度を制御することによって供給内部構造体701の回転位置を調節することが出来る。排出内部構造体711は、排出連結軸91を介して排出駆動モータ73につながっており、排出駆動モータ73の回転角度を制御することによって排出内部構造体711の回転位置を調節することが出来る。
【0057】
供給連結軸90及び排出連結軸91には、供給内部構造体701及び排出内部構造体711の回転位置を検出するための供給制御用エンコーダ80及び排出制御用エンコーダ81がそれぞれ取り付けられている。これらのエンコーダ(80及び81)を供給制御用センサ75及び排出制御用センサ76でそれぞれ検出する。供給マニホールド70では、供給制御用エンコーダ80の検出によって、各ヘッド部11(a〜e)の供給ポートに対応した供給内部構造体701のインク供給孔700(a〜e)の位置を検出できる。一方、排出マニホールド71では排出制御用エンコーダ81の検出によって、各ヘッド部11(a〜e)の排出ポートに対応したインク排出孔710(a〜e)の位置を検出できる。
【0058】
図8は、実施例3のプリンタ100が備える記録ヘッド1における一つのヘッド部11(第二ヘッド部11b)を交換した際の交換したヘッド部11に対するインク充填時の説明図である。
第二ヘッド部11bへのインク充填時には、供給マニホールド70の供給内部構造体701のインク供給孔700(a〜e)は、第二ヘッド部11bの供給ポートに対応した第二インク供給孔700bのみが連通された状態となる。一方、排出マニホールド71の排出内部構造体711のインク排出孔710(a〜e)は、第二ヘッド部11bの排出ポートに対応した第二インク排出孔710bのみが連通された状態となる。
インク充填の際には、排出マニホールド71の一端に接続された大気排出管30の途中に設けられた排出弁55が開放された状態であり、排出マニホールド71及び第二ヘッド部11bは大気開放された状態となる。
【0059】
図9は、図8に示す状態の供給マニホールド70と排出マニホールド71との説明図である。図9(a)は、図8中の二つのヘッド部11(a、b)近傍のY−Z断面の拡大図であり、図8(b)は、供給マニホールド70のX−Z断面図であり、図8(b)は、排出マニホールド71のX−Z断面図である。
図9に示す状態が図7に示す状態と異なる点は、供給内部構造体701及び排出内部構造体711の回転位置であり、これにより、ヘッド部11と連通するインク供給孔700及びインク排出孔710が異なる。
【0060】
図6及び図7に示す状態では、供給内部構造体701の回転位置は、すべてのインク供給孔700(a〜e)が対応するヘッド部11(a〜e)と連通する位置であり、すべてのヘッド部11(a〜e)にインク供給が可能な状態である。また、図6及び図7に示す状態では、排出内部構造体711の回転位置は、すべてのインク排出孔710(a〜e)が対応するヘッド部11(a〜e)と連通する位置であり、すべてのヘッド部11(a〜e)からインク排出が可能な状態である。
【0061】
これに対して、図8及び図9に示す状態では、供給内部構造体701の回転位置は、第二インク供給孔700bのみが対応するヘッド部11である第二ヘッド部11bと連通する位置である。そして、第二ヘッド部11bのみにインク供給が可能な状態である。また、図8及び図9に示す状態では、排出内部構造体711の回転位置は、第二インク排出孔710bのみが対応するヘッド部11である第二ヘッド部11bと連通する位置であり、第二ヘッド部11bのみからインク排出が可能な状態である。
サブタンク2から供給されたインクは、供給マニホールド70を通って、第二ヘッド部11bに供給され、他のヘッド部11(a,c,d,e)には供給されない。第二ヘッド部11b内は、排出マニホールド71及び大気排出管30を介して大気に開放された状態であるため、第二ヘッド部11b内へのインク充填は容易に行える。
【0062】
図10は、図6及び図7に示す状態における供給マニホールド70のX−Z断面と、供給制御用センサ75に対する供給制御用エンコーダ80の回転位置の関係とを示す説明図である。
供給マニホールド70の供給内部構造体701には、図中Y方向(主走査方向)の直線状に一つまたは五つのインク供給孔700からなるインク供給孔列705(a〜f)が形成されている。
【0063】
第一インク供給孔列705aは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に第一インク供給孔700aのみが形成されており、第一ヘッド部11aの供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
第二インク供給孔列705bは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に第二インク供給孔700bのみが形成されており、第二ヘッド部11bの供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
第三インク供給孔列705cは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に第三インク供給孔700cのみが形成されており、第三ヘッド部11cの供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
第四インク供給孔列705dは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に第四インク供給孔700dのみが形成されており、第四ヘッド部11dの供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
第五インク供給孔列705eは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に第五インク供給孔700eのみが形成されており、第五ヘッド部11eの供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
【0064】
また、第六インク供給孔列705fは、図中Y方向(主走査方向)の直線状に五つのインク供給孔700(a〜e)が形成されており、全てのヘッド部11(a〜e)の供給ポートにインク供給可能となるように対応している。
図10に示す状態では、供給内部構造体701の回転位置が、第六インク供給孔列705fが下方となる位置であり、五つ全てのヘッド部11(a〜e)にインク供給可能な状態である。
供給駆動モータ72が供給連結軸90を回転駆動することによって供給内部構造体701と共に回転する供給制御用エンコーダ80には供給制御用スリット80aが設けてある。また、供給制御用エンコーダ80の周りには、六つの供給制御用センサ75(a〜f)が配置されている。
【0065】
第六インク供給孔列705fが供給マニホールド70における下方に位置することを検出するには第六供給制御用センサ75fが供給制御用スリット80aを検知する。同様に、第一インク供給孔列705aが下方に位置することを検出するには第五供給制御用センサ75e、第二インク供給孔列705bが下方に位置することを検出するには第四供給制御用センサ75dが供給制御用スリット80aを検知することになる。さらに、第三インク供給孔列705cが下方に位置することを検出するには第三供給制御用センサ75c、第四インク供給孔列705dが下方に位置することを検出するには第二供給制御用センサ75b、第五インク供給孔列705eが下方に位置することを検出するには、第一供給制御用センサ75aが供給制御用スリット80aを検知することになる。
【0066】
図11は、図8及び図9に示す状態における供給マニホールド70のX−Z断面と、供給制御用センサ75に対する供給制御用エンコーダ80の回転位置の関係とを示す説明図である。
図10に示す状態では、第四供給制御用センサ75dが供給制御用エンコーダ80の供給制御用スリット80aを検出している。このとき、第二インク供給孔列705bが下方に位置し、第二インク供給孔700bからのみインク供給可能な状態であり、第二ヘッド部11bにのみインク供給可能な状態となっている。
【0067】
図10及び図11では、供給マニホールド70について説明したが、排出マニホールド71においても同様の構成により、排出マニホールド71が、五つのヘッド部11(a〜e)のすべての排出ポートに連通する状態と、五つのうちの何れか一つのヘッド部11のみの排出ポートに連通する状態とを切り替えることができる。
【0068】
上述した実施形態のプリンタ100は、主走査方向の全域にノズル孔を備えたライン型画像形成装置であるが、本発明の特徴部を適用可能な画像形成装置はライン型画像形成装置に限るものではない。記録ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置であっても、一つの液体収容タンク(インクカートリッジ3)からインクを供給されるヘッド部を記録ヘッド内に複数備える構成であれば適用可能である。なお、本実施形態のプリンタ100のようにライン型画像形成装置であれば、高速プリントに対応することが出来る。
【0069】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
〔態様A〕
インク等の液体を液滴として吐出するノズル孔と、ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、液室内に流入する液体が通過する流入部と、ノズル孔を通過せずに液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部を有する記録ヘッド1等の記録ヘッドと、記録ヘッドに供給する液体を収容するサブタンク2等の液体収容タンクと、ヘッド部の流出部から排出された液体を収容する大気開放された不図示の廃インク収容器等の排出液収容部と、を有し、ノズル孔から吐出した液体を用紙8等の記録媒体に付着させることで画像を形成するプリンタ100等の画像形成装置において、複数のヘッド部は、流入部及び流出部に、供給管カップリング50、排出管カップリング54または他のヘッド部の流入部及び流出部のカップリング(23、24)等の接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ弁機構等の液流出防止機構を備えた供給カップリング23及び排出カップリング24等の接続部を備え、ノズル孔から液滴を吐出する液滴吐出時には、複数のヘッド部のうち一つのヘッド部を第一ヘッド部11a等の最上流側ヘッド部として、その流入部を他のヘッド部を介さずにサブタンク2等の液体収容タンクに接続した状態で、且つ、最上流側ヘッド部以外の第二ヘッド部11b〜第五ヘッド部11e等のヘッド部の流入部を最上流側ヘッド部を含む他のヘッド部の流出部と接続することで複数のヘッド部を直列に接続した状態としておき、液体収容タンクから最上流側ヘッド部に供給されたインク等の液体を下流側の該ヘッド部に液体を供給する構成であって、複数のヘッド部のうち、最上流側ヘッド部を通過した液体の流路の最下流側に位置する第五ヘッド部11e等の最下流側ヘッド部の流出部に接続されるヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路と、複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流出部に対して接続可能なバイパス下流側カップリング53または交換時排出用カップリング33等の端部を備える下流側バイパス供給管25bまたは交換時排出管32等のヘッド排出部流路と、不図示の廃インク収容器等の排出液収容部に対するヘッド部下流端流路の連通または遮蔽を切り替える三方弁51等の下流端流路切替手段と、排出液収容部に対するヘッド排出部流路の連通または遮蔽を切り替える三方弁51等の排出部流路切替手段と、を備える。
これによれば、実施例1及び実施例2について説明したように、複数のヘッド部は、流入部及び流出部に、供給管カップリング50、排出管カップリング54または他のヘッド部の流入部及び流出部のカップリング(23、24)等の接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ弁機構等の液流出防止機構を備えた供給カップリング23及び排出カップリング24等の接続部を備えるため、流入部及び流出部の接続部と接続対象との接続を解除しても複数のヘッド部の流入部や流出部から液体が流出することなく、各ヘッド部をプリンタ100等の装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能となる。
また、実施例1及び実施例2について説明したように、インク等の液滴吐出時には、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路と下流側バイパス供給管25bまたは交換時排出管32等のヘッド排出部流路とを連通した状態とする等により、下流端流路切替手段及び排出部流路切替手段を共に遮蔽状態とする。これにより、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等のすべてのヘッド部が連通した状態で、第五ヘッド部11e等の最下流側ヘッド部の流出部に接続されたヘッド部下流端流路は、大気開放された排出液収容部に対して流路が遮蔽される。この状態では各ヘッド部は大気開放されていないため、ヘッド部内を液体の吐出や液体供給に必要な圧力状態に維持することができる。
また、実施例1及び実施例2について説明したように、インク等の液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路と大気排出管30等の大気開放流路とを連通した状態とする等により、下流端流路切替手段を連通状態とし、排出部流路切替手段を遮蔽状態とする。これにより、ヘッド部内の空気は上流側から供給されてくる液体によって下流側に向けて押し出され、ヘッド部下流端流路を通って大気開放された排出液収容部に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部に液体を充填することが出来る。
さらに、実施例1及び実施例2について説明したように、第三ヘッド部11c等の交換したヘッド部にインク等の液体を充填するときには、下流側バイパス供給管25b等のヘッド排出部流路の端部を交換したヘッド部の流出部に接続し、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出部流路と大気排出管30等の大気開放流路とを連通した状態とする等により、排出部流路切替手段を連通状態として、下流端流路切替手段を遮蔽状態とする。この状態で、交換したヘッド部の流入部から液体を供給することにより、交換したヘッド部内の空気は流入部から供給される液体によって流出部から押し出される。このとき、交換したヘッド部の流出部は、他のヘッド部を介することなく、ヘッド排出部流路を介して大気開放された排出液収容部と連通しているため、交換したヘッド部内の空気が液滴吐出時に第四ヘッド部11d及び第五ヘッド部11e等の下流側となるヘッド部に送り込まれることがない。よって、交換したヘッド部の空気とともに交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が大気開放された空間に排出されることを防止できる。このように、交換したヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が交換したヘッド部の空気とともに排出液収容部に排出されることを防止できるため、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できる。
〔態様B〕
〔態様A〕において、一端部が不図示の廃インク収容器等の排出液収容部に接続された大気排出管30等の大気開放流路と、大気開放流路の他端部、下流側バイパス供給管25bまたは交換時排出管32等のヘッド排出部流路の流出部に対して接続可能なバイパス下流側カップリング53または交換時排出用カップリング33等の端部の逆側の端部、及び、ヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路の流出部に接続される排出管カップリング54等の端部の逆側の端部が接続され、大気開放流路、ヘッド排出部流路及びヘッド部下流端流路の三つの流路のうちの互いに連通させる二つの流路の組み合わせを変更可能な三方弁51等の流路切替機構とを有し、ヘッド排出部流路における流出部に対して接続可能な端部は接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ弁機構等の液流出防止機構を備え、流路切替機構は、大気開放流路とヘッド部下流端流路とが連通した状態とそれ以外の状態とを切り替えることで下流端流路切替手段として機能し、大気開放流路とヘッド排出部流路とが連通した状態とそれ以外の状態とを切り替えることで下排出部流路切替手段として機能する。
これによれば、実施例1及び2について説明したように、インク等の液滴吐出時には、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路と下流側バイパス供給管25bまたは交換時排出管32等のヘッド排出部流路とを連通した状態とする。これにより、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等のすべてのヘッド部が連通した状態で、第五ヘッド部11e等の最下流側ヘッド部の流出部は、ヘッド部下流端流路を介して、大気開放されていないヘッド排出部流路と連通する。ここで、実施例1では、ヘッド排出部流路である下流側バイパス供給管25bが上流側バイパス供給管25aと接続されることで、ヘッド排出部流路を大気開放されていない状態としている。一方、実施例2では、ヘッド排出部流路である交換時排出管32の端部の交換時排出用カップリング33の弁機構が閉鎖することで、ヘッド排出部流路を大気開放されていない状態としている。このように、液滴吐出時には、ヘッド部が大気開放されていないため、ヘッド部内を液体の吐出や液体供給に必要な圧力状態に維持することができる。
また、実施例1及び実施例2について説明したように、インク等の液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出管26等のヘッド部下流端流路と大気排出管30等の大気開放流路とを連通した状態とする。これにより、ヘッド部内の空気は上流側から供給されてくる液体によって下流側に向けて押し出され、大気開放流路を通って排出液収容部に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部に液体を充填することが出来る。
さらに、実施例1及び実施例2について説明したように、第三ヘッド部11c等の交換したヘッド部にインク等の液体を充填するときには、下流側バイパス供給管25b等のヘッド排出部流路の端部を交換したヘッド部の流出部に接続し、三方弁51等の流路切替機構をヘッド排出部流路と大気排出管30等の大気開放流路とを連通した状態とする。この状態で、交換したヘッド部の流入部から液体を供給することにより、交換したヘッド部内の空気は流入部から供給される液体によって流出部から押し出される。このとき、交換したヘッド部の流出部は、他のヘッド部を介することなく、ヘッド排出部流路を介して大気開放流路と連通しているため、交換したヘッド部内の空気が液滴吐出時に第四ヘッド部11d及び第五ヘッド部11e等の下流側となるヘッド部に送り込まれることがない。よって、交換したヘッド部の空気とともに交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が排出液収容部に排出されることを防止できる。このように、交換したヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が交換したヘッド部の空気とともに排出液収容部に排出されることを防止できるため、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できる。
〔態様C〕
〔態様A〕または〔態様B〕において、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流入部に対して接続可能なバイパス上流側カップリング52等の端部を備えた上流側バイパス供給管25a等のヘッド部供給流路を備え、ヘッド部供給流路の端部が接続されたヘッド部とサブタンク2等の液体収容タンクとが他のヘッド部を介することをなく連通する。これによれば、実施例1について説明したように、第三ヘッド部11c等の交換したヘッド部にインク等の液体を充填するときには、上流側バイパス供給管25a等のヘッド部供給流路の端部を交換したヘッド部の流入部に接続する。この状態で、サブタンク2等の液体収容タンクから水頭差を利用した構成等の圧送手段によってインク等の液体を記録ヘッドに向けて搬送することにより、第一ヘッド部11a及び第二ヘッド部11b等の他のヘッド部を介することなく、インクの充填を要するヘッド部に直接に液体の供給を行うことが出来る。これにより、選択した任意のヘッド部のみから液体及び気泡の排出ができる排出流路を形成(連通)し、更に選択した任意のヘッド部のみに液体の充填ができる供給流路を形成(連通)することで、ヘッド部の一つを交換した後の液体の充填をした際に液体を無駄に捨てることなく、短時間で充填ができる。
〔態様D〕
インク等の液体を液滴として吐出するノズル孔と、ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、液室内に流入する液体が通過する流入部と、ノズル孔を通過せずに液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部を有する記録ヘッド1等の記録ヘッドと、記録ヘッドに供給する液体を収容するサブタンク2等の液体収容タンクと、ヘッド部の流出部から排出された液体を収容する大気開放された不図示の廃インク収容器等の排出液収容部と、を有し、ノズル孔から吐出した液体を用紙8等の記録媒体に付着させることで画像を形成するプリンタ100等の画像形成装置において、サブタンク2等の液体収容タンクと接続し、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部のすべての流入部との接続部を有する供給マニホールド70等の共通流入液収容部と、大気開放された空間に対する連通状態または遮蔽状態を切り替え可能で、複数のヘッド部のすべての流出部との接続部を有する排出マニホールド71等の共通流出液収容部と、を有し、共通流出液収容部が、複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態と、複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流出部にのみ連通する状態と、を切り替えることができる排出内部構造体711、排出外部構造体712及び排出駆動モータ73等の流出部連通状態切替機構を備える。
これによれば、実施例3について説明したように、複数のヘッド部は、流入部及び流出部に、供給管カップリング50及び排出管カップリング54等の接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ弁機構等の液流出防止機構を備えた供給カップリング23及び排出カップリング24等の接続部を備え、流入部及び流出部の接続部と接続対象との接続を解除しても複数のヘッド部の流入部や流出部から液体が流出することなく、各ヘッド部をプリンタ100等の装置本体に対してそれぞれが独立して着脱可能となる。
また、実施例3について説明したように、インク等の液滴吐出時には、排出弁55を閉鎖する等により、排出マニホールド71等の共通流出液収容部と不図示の廃インク収容器等の排出液収容部とを遮断状態とし、排出内部構造体711、排出外部構造体712及び排出駆動モータ73等の流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態とする。すべてのヘッド部の流出部に連通する共通流出液収容部が大気開放されていないため、ヘッド部内を液体の吐出や液体供給に必要な圧力状態に維持することができる。
また、実施例3について説明したように、インク等の液体が入っていない初期状態の全ヘッド部内に液体を充填するときには、排出弁55を開放する等により、排出マニホールド71等の共通流出液収容部と排出液収容部とを連通状態とし、排出内部構造体711、排出外部構造体712及び排出駆動モータ73等の流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態とする。これにより、ヘッド部内の空気は供給マニホールド70等の共通流入液収容部から供給されてくる液体によって共通流出液収容部に向けて押し出され、共通流出液収容部と連通する排出液収容部に放出することができ、初期状態の全てのヘッド部に液体を充填することが出来る。
さらに、実施例3について説明したように、第二ヘッド部11b等の交換したヘッド部にインク等の液体を充填するときには、排出弁55を開放する等により、排出マニホールド71等の共通流出液収容部と排出液収容部とを連通状態とし、排出内部構造体711、排出外部構造体712及び排出駆動モータ73等の流出部連通状態切替機構は、共通流出液収容部が複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部として交換したヘッド部の流出部にのみ連通する状態とする。この状態で、交換したヘッド部の流入部に供給マニホールド70等の共通流入液収容部から液体を供給することにより、交換したヘッド部内の空気は流入部から供給される液体によって流出部から押し出される。このとき、交換したヘッド部の流出部は、他のヘッド部を介することなく、共通流出液収容部を介して大気開放流路と連通しているため、交換したヘッド部内の空気が他のヘッド部に送り込まれることがない。よって、交換したヘッド部の空気とともに交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が排出液収容部に排出されることを防止できる。このように、交換したヘッド部に液体を充填するときに、交換したヘッド部以外のヘッド部内に存在した液体が交換したヘッド部の空気とともに排出液収容部に排出されることを防止できるため、交換したヘッド部以外のヘッド部内の液体を排出することを抑制できる。
また、実施例3について説明したように、排出内部構造体711、排出外部構造体712及び排出駆動モータ73等の流出部連通状態切替機構が、排出駆動モータ73等の駆動手段の駆動を制御することで流路を切り替えることができることで、ヘッド部の一つを交換したときに、交換したヘッド部の流入部と流出部との接続を行えば、液体の充填動作から、その後通常の液滴吐出動作への移行を自動で行うことができる。
〔態様E〕
〔態様D〕において、排出マニホールド71等の共通流出液収容部は、排出外部構造体712等の外側円筒部に対して排出内部構造体711等の内側円筒部が回転可能な二重円筒形状の収容部であり、外側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する外側円筒連通口を、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部に対応する数だけ備え、外側円筒連通口は、複数のヘッド部の流出部にそれぞれ接続されており、内側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通するインク排出孔710等の内側円筒連通口を、内側円筒部の回転軸方向について外側円筒連通口が設けられた位置と対応するそれぞれの位置に周方向について二つずつ備え、流出部連通状態切替機構は、外側円筒部に対する内側円筒部の回転位置を変化させるによって、不図示のインク排出孔列(インク供給孔列705と同様のもの)の回転位置を変化させる等によって、外側円筒連通口のすべてが回転軸方向の同一の位置にある二つの内側円筒連通口の一方と対向する状態と、外側円筒連通口の一つのみが回転軸方向の同一の位置にある二つの内側円筒連通口の他方と対向する状態と、を切り替える機構である。これによれば、実施例3について説明したように、外側円筒部に対する内側円筒部が回転位置を制御することで、共通流出液収容部が、複数のヘッド部のすべての流出部に連通する状態と、複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流出部にのみ連通する状態と、を切り替えることが出来る構成を実現できる。
〔態様F〕
〔態様D〕または〔態様E〕において、供給マニホールド70等の共通流入液収容部が、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部のすべての流入部に連通する状態と、複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流入部にのみ連通する状態と、を切り替えることができる供給内部構造体701、供給外部構造体702及び供給駆動モータ72等の流入部連通状態切替機構を備える。これによれば、実施例3について説明したように、第二ヘッド部11b等の交換したヘッド部にインク等の液体を充填するときには、供給内部構造体701、供給外部構造体702及び供給駆動モータ72等の流入部連通状態切替機構は、供給マニホールド70等の共通流出液収容部が第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部として交換したヘッド部の流入部にのみ連通する状態とする。この状態で、サブタンク2等の液体収容タンクから水頭差を利用した構成等の圧送手段によってインク等の液体を記録ヘッドに向けて搬送することにより、交換したヘッド部のみに液体の供給を行うことが出来る。これにより、選択した任意のヘッド部のみから液体及び気泡の排出ができる排出流路を形成(連通)し、更に選択した任意のヘッド部のみに液体の充填ができる供給流路を形成(連通)することで、ヘッド部の一つを交換した後の液体の充填をした際に液体を無駄に捨てることなく、短時間で充填ができる。
〔態様G〕
〔態様F〕において、供給マニホールド70等の共通流入液収容部は、供給外部構造体702等の外側円筒部に対して供給内部構造体701等の内側円筒部が回転可能な二重円筒形状の収容部であり、外側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する外側円筒連通口を、第一ヘッド部11a〜第五ヘッド部11e等の複数のヘッド部に対応する数だけ備え、外側円筒連通口は、複数のヘッド部の流入部にそれぞれ接続されており、内側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通するインク供給孔700等の内側円筒連通口を、内側円筒部の回転軸方向について外側円筒連通口が設けられた位置と対応するそれぞれの位置に周方向について二つずつ備え、流入部連通状態切替機構は、外側円筒部に対する内側円筒部の回転位置を変化させることによって、インク供給孔列705の回転位置を変化させる等によって、外側円筒連通口のすべてが回転軸方向の同一の位置にある二つの内側円筒連通口の一方と対向する状態と、外側円筒連通口の一つのみが回転軸方向の同一の位置にある二つの内側円筒連通口の他方と対向する状態と、を切り替える機構である。これによれば、実施例3について説明したように、外側円筒部に対する内側円筒部が回転位置を制御することで、共通流入液収容部が、複数のヘッド部のすべての流入部に連通する状態と、複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の流入部にのみ連通する状態と、を切り替えることが出来る構成を実現できる。
〔態様H〕
〔態様A〕乃至〔態様G〕の何れか一項の態様において、記録ヘッド1等の記録ヘッドは、ヘッド部11等のヘッド部を主走査に複数個並べて配置し、主走査方向に移動しない状態でインク等の液滴を吐出して画像を形成するライン型記録ヘッドである。これによれば、実施形態について説明したように、高速プリントに対応することが出来る。
【符号の説明】
【0070】
1 記録ヘッド
2 サブタンク
3 インクカートリッジ
5 搬送ユニット
8 用紙
11 ヘッド部
12 ヘッドユニット
13 搬送ベルト
20 サブタンク供給管
21 供給調整弁
22 ヘッド上流側供給管
23 供給カップリング
24 排出カップリング
25 バイパス供給管
26 ヘッド排出管
29 スプリング
30 大気排出管
32 交換時排出管
33 交換時排出用カップリング
50 供給管カップリング
51 三方弁
54 排出管カップリング
55 排出弁
70 供給マニホールド
71 排出マニホールド
72 供給駆動モータ
73 排出駆動モータ
75 供給制御用センサ
76 排出制御用センサ
80 供給制御用エンコーダ
80a 供給制御用スリット
81 排出制御用エンコーダ
90 供給連結軸
91 排出連結軸
100 プリンタ
200 サブタンクユニット
300 インクカートリッジユニット
700 インク供給孔
701 供給内部構造体
702 供給外部構造体
705 インク供給孔列
710 インク排出孔
711 排出内部構造体
712 排出外部構造体
800 給紙トレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2000−318187号公報
【特許文献2】特開2009−045848号公報
【特許文献3】特許4683419号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出するノズル孔と、該ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、該液室内に流入する液体が通過する流入部と、該ノズル孔を通過せずに該液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える複数のヘッド部を有する記録ヘッドと、
該記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容タンクと、
該ヘッド部の該流出部から排出された液体を収容する大気開放された排出液収容部と、
を有し、
該ノズル孔から吐出した液体を記録媒体に付着させることで画像を形成する画像形成装置において、
上記複数のヘッド部は、上記流入部及び上記流出部に、接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ液流出防止機構を備えた接続部を備え、
上記ノズル孔から液滴を吐出する液滴吐出時には、上記複数のヘッド部のうち一つの上記ヘッド部を最上流側ヘッド部として、その流入部を他の該ヘッド部を介さずに上記液体収容タンクに接続した状態で、且つ、該最上流側ヘッド部以外の該ヘッド部の該流入部を該最上流側ヘッド部を含む他の該ヘッド部の上記流出部と接続することで該複数のヘッド部を直列に接続した状態としておき、該液体収容タンクから該最上流側ヘッド部に供給された該液体を下流側の該ヘッド部に液体を供給する構成であって、
該複数のヘッド部のうち、該最上流側ヘッド部を通過した液体の流路の最下流側に位置する最下流側ヘッド部の該流出部に接続されるヘッド部下流端流路と、
該複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の該流出部に対して接続可能な端部を備えるヘッド排出部流路と、
上記排出液収容部に対する該ヘッド部下流端流路の連通または遮蔽を切り替える下流端流路切替手段と、
該排出液収容部に対する該ヘッド排出部流路の連通または遮蔽を切り替える排出部流路切替手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
一端部が上記排出液収容部に接続された大気開放流路と、
該大気開放流路の他端部、上記ヘッド排出部流路の上記流出部に対して接続可能な端部の逆側の端部、及び、上記ヘッド部下流端流路の上記流出部に接続される端部の逆側の端部が接続され、該大気開放流路、該ヘッド排出部流路及び該ヘッド部下流端流路の三つの流路のうちの互いに連通させる二つの流路の組み合わせを変更可能な流路切替機構とを有し、
該ヘッド排出部流路における該流出部に対して接続可能な端部は接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ液流出防止機構を備え、
該流路切替機構は、該大気開放流路と該ヘッド部下流端流路とが連通した状態とそれ以外の状態とを切り替えることで上記下流端流路切替手段として機能し、該大気開放流路と該ヘッド排出部流路とが連通した状態とそれ以外の状態とを切り替えることで上記下排出部流路切替手段として機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の上記流入部に対して接続可能な端部を備えたヘッド部供給流路を備え、
該ヘッド部供給流路の端部が接続された該ヘッド部と上記液体収容タンクとが他のヘッド部を介することをなく連通することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
液体を液滴として吐出するノズル孔と、該ノズル孔に供給する液体が通過する液室と、該液室内に流入する液体が通過する流入部と、該ノズル孔を通過せずに該液室から流出する液体が通過する流出部と、を備える複数のヘッド部を有する記録ヘッドと、
該記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容タンクと、
該ヘッド部の該流出部から排出された液体を収容する大気開放された排出液収容部と、を有し、
該ノズル孔から吐出した液体を記録媒体に付着させることで画像を形成する画像形成装置において、
上記複数のヘッド部は、上記流入部及び上記流出部に、接続対象との接続を解除した状態で液体の流出を防ぐ液流出防止機構を備えた接続部を備え、
上記液体収容タンクと接続し、該複数のヘッド部のすべての該流入部との接続部を有する共通流入液収容部と、
上記排出液収容部に対する連通状態または遮蔽状態を切り替え可能で、上記複数のヘッド部のすべての上記流出部との接続部を有する共通流出液収容部と、を有し、
該共通流出液収容部が、該複数のヘッド部のすべての該流出部に連通する状態と、該複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の該流出部にのみ連通する状態と、を切り替えることができる流出部連通状態切替機構を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
上記共通流出液収容部は、外側円筒部に対して内側円筒部が回転可能な二重円筒形状の収容部であり、
該外側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する外側円筒連通口を、上記複数のヘッド部に対応する数だけ備え、該外側円筒連通口は、該複数のヘッド部の上記流出部にそれぞれ接続されており、
該内側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する内側円筒連通口を、該内側円筒部の回転軸方向について該外側円筒連通口が設けられた位置と対応するそれぞれの位置に周方向について二つずつ備え、
上記流出部連通状態切替機構は、該外側円筒部に対する該内側円筒部の回転位置によって、
該外側円筒連通口のすべてが回転軸方向の同一の位置にある二つの該内側円筒連通口の一方と対向する状態と、該外側円筒連通口の一つのみが回転軸方向の同一の位置にある二つの該内側円筒連通口の他方と対向する状態と、を切り替える機構であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または5の画像形成装置において、
上記共通流入液収容部が、該複数のヘッド部のすべての該流入部に連通する状態と、該複数のヘッド部のうちの任意に選択した一つのヘッド部の該流入部にのみ連通する状態と、を切り替えることができる流入部連通状態切替機構を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記共通流入液収容部は、外側円筒部に対して内側円筒部が回転可能な二重円筒形状の収容部であり、
該外側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する外側円筒連通口を、上記複数のヘッド部に対応する数だけ備え、該外側円筒連通口は、該複数のヘッド部の上記流入部にそれぞれ接続されており、
該内側円筒部は、その内部空間と外部空間とを連通する内側円筒連通口を、該内側円筒部の回転軸方向について該外側円筒連通口が設けられた位置と対応するそれぞれの位置に周方向について二つずつ備え、
上記流入部連通状態切替機構は、該外側円筒部に対する該内側円筒部の回転位置によって、
該外側円筒連通口のすべてが回転軸方向の同一の位置にある二つの該内側円筒連通口の一方と対向する状態と、該外側円筒連通口の一つのみが回転軸方向の同一の位置にある二つの該内側円筒連通口の他方と対向する状態と、を切り替える機構であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項の画像形成装置において、
上記記録ヘッドは、上記ヘッド部を主走査に複数個並べて配置し、主走査方向に移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型記録ヘッドであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63528(P2013−63528A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202242(P2011−202242)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】