説明

画像形成装置

【課題】画像の筋を目立たなくする。
【解決手段】半導体基板上に複数の発光素子Pを形成し、主走査方向に並べて配置された複数の発光チップCHからなる発光アレイ41と、前記発光アレイ41の前記発光素子Pに画像の階調を示すディザパターンZを形成させる発光制御装置100とを備え、前記発光制御装置100は、前記発光チップ同士の継目に位置する2つの発光素子間の距離が基準値より大きい場合、前記発光アレイ41の各発光チップCHが形成する各集合線分LL、LRにおける、前記発光チップ同士の継目Cに対応する一対の端部のうち、少なくともいずれか一方側の端部を、前記主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向へ折り曲げるように、前記端部に対応する発光素子Pの点灯タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の筋を目立たなくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、LEDアレイチップ間の距離に応じて、境界部における発光素子の光量を補正することで、白筋を目立たなくさせる技術が開示されている。また、下記特許文献2には、画像の階調を、斜め線の繰り返しパターンからなるディザパターンにより表すようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−080111公報
【特許文献2】特開2004−364084公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画品質を高めるには、白筋などの筋を極力目立たなくすることが好ましく、更なる改良が求められていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、画像の筋を目立たなくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像形成装置は、半導体基板上に複数の発光素子を形成し、主走査方向に並べて配置された複数の発光チップからなる発光アレイと、前記発光アレイにより露光される感光体と、前記感光体に形成される静電潜像を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記発光アレイの前記発光素子に、前記画像の階調を示し、一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線が副走査方向に繰り返されるディザパターンを形成させる発光制御装置とを備え、前記発光制御装置は、前記発光チップ同士の継目に位置する2つの発光素子間の距離が基準値より大きい場合、前記発光アレイの各発光チップが形成する各集合線分における、前記発光チップ同士の継目に対応する一対の端部のうち、少なくともいずれか一方側の端部を、前記主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向へ折り曲げるように、前記端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御するタイミング制御を行う。尚、「主走査方向に並べて配置」には、発光チップが主走査方向に一列状に配置されるパターンや、発光チップが主走査方向に千鳥状に配置されるパターンが含まれる。
【0007】
本明細書によって開示される画像形成装置では、集合線分の端部を折り曲げることで、継目部分を自然に見せることができる。そのため、白筋を目立たなくすることが出来る。
【0008】
本明細書によって開示される画像形成装置は、半導体基板上に複数の発光素子を形成し、主走査方向に並べて配置された複数の発光チップからなる発光アレイと、前記発光アレイにより露光される感光体と、前記感光体に形成される静電潜像を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記発光アレイの前記発光素子に、前記画像の階調を示し、一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線が副走査方向に繰り返されるディザパターンを形成させる発光制御装置とを備え、前記発光制御装置は、前記発光チップ同士の継目に位置する2つの発光素子間の距離が基準値より小さい場合、前記発光アレイの各発光チップが形成する各集合線分における、前記発光チップ同士の継目に対応する一対の端部のうち、少なくともいずれか一方側の端部を、前記主走査方向に対する傾斜が急になる方向へ折り曲げるように、前記端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御するタイミング制御を行う。
【0009】
本明細書によって開示される画像形成装置では、集合線分の端部を折り曲げることで、継目部分を自然に見せることができる。そのため、色筋を目立たなくすることが出来る。
【0010】
上記画像形成装置では、以下とすることが好ましい。
・前記発光制御装置は、前記一対の端部の双方を、前記主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向又は傾斜が急になる方向へ折り曲げるように、前記一対の端部に対応する発光素子の前記点灯タイミングを制御する。
【0011】
・前記発光制御装置は、折り曲げた前記一対の端部が一直線になるように、前記一対の端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御する。
【0012】
・前記発光制御装置は、前記点灯タイミングの制御を、点灯タイミングが一律に制御される複数の発光素子からなる制御単位で、実行する。
【0013】
・前記発光制御装置は、前記集合線分と前記端部の境界部分が滑らかに繋がるように、前記境界部分における発光素子の点灯タイミングを制御する。
【0014】
・前記発光制御装置は、前記発光チップ同士の継目に対応する端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御するタイミング制御と、前記発光チップ同士の継目に位置する発光素子の光量を、発光素子間の距離に応じて補正する光量制御とを併用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像の筋を目立たなくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係るカラープリンタの要部側断面図
【図2】LEDユニットおよびプロセスカートリッジの拡大図
【図3】LEDユニットを露光面側から見た図
【図4】発光制御部及び制御装置のブロック図
【図5】白筋の抑制原理を示す図
【図6】色筋の抑制原理を示す図
【図7】線分同士の継目部分を拡大した図(端部折り曲げの前後を示す)
【図8】発光素子の点灯タイミングを示す図
【図9】発光素子の点灯タイミングを示す図
【図10】折り曲げの効果を示す図
【図11】線分同士の継目部分を拡大した図(端部折り曲げの前後を示す)
【図12】光量補正の原理を示す図
【図13】補正値データを示す図
【図14】補正テーブルを示す図
【図15】印刷データ受信時に実行される処理の流れを示すフローチャート図
【図16】線分と端部の間のコーナを曲線で接続した図
【図17】発光素子の点灯タイミングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
一実施形態について図1から図15を参照して説明する。
1.カラープリンタの全体構成
図1に示すように、電子写真方式のカラープリンタ1は、本体筐体10内に、被記録媒体の一例である用紙Sを供給する給紙部20と、給紙された用紙Sに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部90と、これらの各部の動作を制御する制御装置100とを備えている。尚、以下の説明において、用紙Sの送り方向に直交する方向(図7の左右方向)を主走査方向とし、用紙Sの送り方向(図7の上下方向)を副走査方向とする。
【0018】
本体筐体10の上部には本体筐体10に対し相対的に開閉自在なアッパーカバー12が、後側に設けられたヒンジ12Aを支点として上下に回動自在に設けられている。アッパーカバー12の上面は、本体筐体10から排出された用紙Sを蓄積する排紙トレイ13となっており、下方には露光装置であるLEDユニット40が設けられている。
【0019】
また、本体筐体10内には、各プロセスカートリッジ50を着脱自在に収容するカートリッジドロア15が設けられている。カートリッジドロア15は、左右に一対設けられた金属製のサイドプレート15A(片側のみ図示)と、一対のサイドプレート15Aを連結するクロスメンバー15Bが前後に一対設けられている。サイドプレート15Aは、LEDユニット40が有する露光ヘッドとしてのLEDアレイ41の左右方向の両側に配置され、感光体ドラム53を直接的または間接的に支持し、位置決めする部材である。LEDアレイ41の発光は、制御装置100及び発光制御部110により制御される。尚、制御装置100と発光制御部110が本発明の発光制御装置の一例である。また、感光体ドラム31が本発明の感光体の一例である。
【0020】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、本体筐体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24を主に備えている。
【0021】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Sが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、搬送経路28を通って後ろ向きに方向転換され、画像形成部30に供給される。
【0022】
画像形成部30は4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備える。4つのLEDユニット40、4つのプロセスカートリッジ50はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色に対応する。
【0023】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、図2に示すように、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に対して着脱自在に装着される現像ユニット61とを備えている。サイドプレート15Aは、プロセスカートリッジ50を支持しており、プロセスカートリッジ50は、感光体ドラム53を支持している。尚、各プロセスカートリッジ50は、現像ユニット61のトナー収容室66に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。
【0024】
ドラムユニット51は、ドラムフレーム52と、ドラムフレーム52に回転可能に支持される感光体の一例としての感光体ドラム53と、スコロトロン型帯電器54とを主に備えている。
【0025】
現像ユニット61は、現像フレーム62と、現像フレーム62に回転可能に支持される現像ローラ63および供給ローラ64とを備え、トナーを収容するトナー収容室66を有している。プロセスカートリッジ50は、現像ユニット61がドラムユニット51に装着され、これにより、現像フレーム62とドラムフレーム52との間に上方から感光体ドラム53を臨める露光穴55が形成される。この露光穴55には下端にLEDアレイ41を保持したLEDユニット40が挿入される。LEDアレイ41の詳細については後述する。
【0026】
転写ユニット70は、図1に示すように、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を主に備えている。
【0027】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム53に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム53に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0028】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0029】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光体ドラム53の表面(感光面53A)が、スコロトロン型帯電器54により一様に帯電された後、各LEDアレイ41から照射されるLED光により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0030】
また、トナー収容室66内のトナーが、供給ローラ64の回転により現像ローラ63に供給され担持される。現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光体ドラム53に対向して接触するときに、感光体ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム53上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される。
【0031】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Sが各感光体ドラム53と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム53上に形成されたトナー像が用紙S上に転写される。そして、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙S上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0032】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、手前側に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Sを搬送する複数対の搬送ローラ92を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Sは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、本体筐体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
【0033】
2.LEDアレイの構成
図3に示すように、LEDアレイ41は、用紙の送り方向(図3の上下方向)に直交する主走査方向に複数の発光素子Pを配置したものである。具体的には、回路基板CB上に20個のLEDアレイチップCHを千鳥状に配置した構成となっている。各LEDアレイチップCHは半導体プロセスにより、半導体基板上に発光素子Pたる発光ダイオードを複数形成したものである。このLEDアレイ41は、後述する発光制御部110により発光の信号が入力されることで、主走査方向の走査開始側(例えば、図3の左側)から走査終了側(例えば、図3の右側)へ向けて発光し、感光体ドラム53を露光する機能を果たす。尚、この実施形態では、LEDアレイ41を構成する各発光素子Pは、LEDアレイチップCH内では制御単位で発光素子Pの発光タイミングが制御される。
【0034】
また、この例では図3に示すように、回路基板CB上に各LEDアレイチップCHを主走査方向に直交する副走査方向にずらして千鳥配置しているが、これは製造上、発光素子Pをチップ縁まで形成できないからである。すなわち、千鳥配置することで、チップCH同士の継目Cにおける発光素子間の距離Dxを基準ピッチに一致させている。
【0035】
3.制御装置100と発光制御部110の説明
制御装置100はカラープリンタ1の全体を制御するものであり、CPUなどから構成される演算制御部100Aと、RAM100Bと、ROM100Cとを含む構成となっている。発光制御部110は、制御装置100と共に、LEDアレイ41の各発光素子Pを点灯制御するものである。発光制御部110は、図4に示すようにASIC120を備える構成となっている。発光制御部110には、4組のLEDアレイ41が共通接続されており、発光制御部110のASIC120が4組のLEDアレイ41を点灯制御する構成となっている。
【0036】
また、各LEDアレイ41には不揮発性の記憶手段としてEEPROM43が設けられている。このEEPROM43とROM100Cには、次に説明する点灯タイミングの補正、光量補正を行うのに必要な次のデータがそれぞれ記憶されている。
【0037】
・チップ同士の継目部分における発光素子間の主走査方向のピッチ「Dx」のデータである(図3参照:EEPEOMに記憶))。
・補正値データX、補正値テーブルである(図13、図14参照:EEPROMに記憶)
・各色のディザパターンZの角度「θ」のデータである(ROM100Cに記憶)。
【0038】
4.点灯タイミングの補正
LEDアレイ41上の各発光素子Pは主走査方向において一定の基準ピッチDp、具体的には、画像の解像度が600dpiである場合は42μmのピッチで並んでいる。そして、各LEDアレイチップCHの継目Cについても、発光素子間の主走査方向の距離Dxが基準ピッチDpになるようにLEDアレイチップCHを配置している。継目部分の副走査方向の距離は52.3μmに配置されている。尚、基準ピッチDpが本発明の「基準値」の一例である。
【0039】
しかし、回路基板CB上に各LEDアレイチップCHをマウントする際に搭載位置が正規位置からずれることがあり、LEDアレイチップ同士の継目Cでは、図3にて一点鎖線枠(A部、B部、C部の3か所)で示すように、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpに対して増減する場合がある。発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpに対して増減すると、図5、図6に示すように、各発光素子Pの形成するドットにより構成され、主走査方向に対して傾斜した斜線Lの繰り返しであるディザパターンZを使用して画像を印字したときに画像に筋が発生し易くなる。
【0040】
すなわち、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpに一致している場合(図3のA部の場合)には、図5、図6の左手に示すように、ディザパターンZに筋の発生はない。ところが、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合(図3のB部の場合)、図5の中央に示すように、その部分だけ光量が低くなって白筋が発生し易くなる。また、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合(図3のC部の場合)、図6の中央に示すようにその部分だけ光量が高くなって色筋が発生し易くなる。
【0041】
そこで、本実施形態では、各LEDアレイチップCHの継目Cにおける発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpから外れている場合に、ディザパターンZの斜線Lを構成する各線分LL、LRの端部を、折り曲げることで、ディザパターンZに現れる、色筋や白筋の発生を抑える。尚、斜線Lは本発明の一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線の一例であり、斜線Lの各線分LL、LRが本発明の集合線分の一例である。
【0042】
ディザパターンZとは、斜線Lの繰り返しパターンであり、画像に階調(すなわち、印字色の濃淡)をつける時に使用される。本実施形態では、4色のトナーに対応して4パターン、すなわち、主走査方向に対する斜線角度θが異なる4種のディザパターンZが設けられている。具体的には、斜線Lの角度θが「+27°」、「−27°」、「+63°」、「−63°」の4パターンのディザパターンZが設けられている。尚、色ごとにディザパターンZを変えているのは、ディザパターンZ同士が重ならないようにするためである。
【0043】
以下、画像に発生する筋の抑制方法を、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合、すなわち白筋が発生する場合と、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合、すなわち色筋が発生する場合に、場合を分けて説明する。
【0044】
<発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合>
発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合、図7に示すように、ディザパターンZを構成する2つの線分LL、LRの間に空白Nが出来る。本実施形態では、2つの線分LL、LRのうち、各線分LL、LRの継目C側の端部Tをそれぞれ、主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向へ折り曲げる。
【0045】
以下、線分LL、LRの折り曲げについて、補正直線を用いて説明する。補正直線は、2つの線分LL、LR間の中心点を通り、斜線Lに対して傾斜角を一定値だけ小さくした直線であり、図7の上段には、角度が異なる2パターンの補正直線が示されている。補正直線1は、斜線Lに対して角度を15度緩くした直線であり、補正直線2は、斜線Lに対して角度を30度緩くした直線である。
【0046】
例えば、補正直線1を用いる場合には、各線分LL、LRのうち、補正直線1との交点Sより先側の端部Tを補正直線1に一致するように折り曲げる。これにより、交点Sから先の端部Tが15度折れるので、折り曲げ後、2つの線分LL、LRは図7の下段の形状となる。
【0047】
このようにすれば、2つの線分LL、LRの継目Cは折り曲げ後においても、両線分間に空白Nが残るものの、2つの線分LL、LRの継目Cが一直線になる。そのため、継目Cが自然に見えることから、白筋が目立たなくなる。
【0048】
尚、線分LL、LRの端部Tを、図7のように折り曲げるには、各線分LL、LRの端部Tに対応する発光素子Pの点灯タイミングを、発光素子Pの作るドットが補正直線上に位置するように補正すればよい。
【0049】
例えば、図5に示す左側のアレイチップCHLであれば、図8に示すように正規の点灯タイミングに対して、端部Tに対応する発光素子PT1の点灯タイミングを、補正する角度に対応する時間t1だけ、早くすればよい。また、図5に示す右側のアレイチップCHRであれば、図9に示すように正規の点灯タイミングに対して、端部Tに対応する発光素子PT2の点灯タイミングを、補正する角度に対応する時間t2だけ、遅くすればよい。
【0050】
尚、正規の点灯タイミングとは、ディザパターンZを構成する線分LL、LRを折り曲げない場合の点灯タイミング、すなわち各発光素子Pを、等間隔に発光させるタイミングを意味する。
【0051】
また、上記では、白筋が目立たなくなる理由として、継目が直線に近くなる点を挙げたが、端部の折り曲げにより、副走査方向に隣合う2つの線分LL、LR間の隙間が狭くなることも挙げられる。すなわち、図10の例では、LL3とLR2の間の隙間Dが、狭くなる。
【0052】
<発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合>
発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合、図11に示すように、ディザパターンZを構成する2つの線分LL、LRのうち、各線分LL、LRの継目C側の端部Tをそれぞれ、主走査方向に対する傾斜が急になる方向へ折り曲げる。図11の上段には、角度を15度、急にした場合を補正直線3で示し、角度を30度、急にした場合を補正直線4で示してある。
【0053】
本例では、各線分LL、LRの継目C側の端部Tをそれぞれ、補正直線3に一致するように折り曲げるようにしてあり、折り曲げ後、2つの線分LL、LRは図11の下段の形状、すなわち2つの線分LL、LRの継目Cは一直線になる。そのため、継目Cが自然に見えることから、色筋が目立たなくなる。
【0054】
尚、各線分LL、LRの継目C側の端部Tを折り曲げるには、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合と同様に、各線分LL、LRに対応する2つのLEDアレイチップCHL、CHRのうち、端部Tに対応する発光素子の点灯タイミングを、発光素子Pの作るドットが補正直線上に位置するように、補正すればよい。
【0055】
<点灯タイミングの補正が必要な発光素子数>
ディザパターンZを構成する斜線Lの角度θが同じであった場合、端部Tの折り曲げ角度を小さくする(例えば、補正直線1や補正直線3)と、折曲長が長くなるので、点灯タイミングの補正が必要な発光素子数は増える。一方、折り曲げ角度を大きくする(例えば、補正直線2や補正直線4)と、折曲長が短くなるので、点灯タイミングの補正が必要な発光素子数は少なくなる。
【0056】
線分LL、LRの継目Cを自然に見せるには、端部Tの折り曲げ角度を小さく設定することがこの好ましい。しかし、角度を小さくすると、上記のように、点灯タイミングの補正が必要な発光素子数が増加することとなり、制御が複雑になる。そのため、制御が複雑にならない範囲で、線分LL、LRの折り曲げ角度を小さく設定することが好ましい。
【0057】
また、点灯タイミングの補正が必要な発光素子数は、基準ピッチDpに対する距離Dxの誤差量の大きさや、ディザパターンZを構成する斜線Lの主走査方向に対する角度θによって異なるので、実際には、これら誤差量や、線分LL、LRの角度についても考慮した上で、折り曲げ角を設定する必要がある。
【0058】
<発光素子の制御単位>
LEDアレイ41の各LEDアレイチップCHを構成する各発光素子Pは素子数が多く、これらの点灯タイミングを個々に制御すると、制御が複雑になる。そこで、本実施形態では、複数の発光素子(一例として4つの発光素子)を一つの制御単位とし、各LEDアレイチップCHについて発光素子Pの点灯タイミングを制御単位で一律に制御する。そして、上記した点灯タイミングの補正についても、制御単位を1まとまりにして行うことが好ましい。
【0059】
具体的には、例えば、点灯タイミングの補正が必要な発光素子数が9個と算出された場合、制御単位に換算すると2単位に相当するので、8個の発光素子について点灯タイミングを一律補正するとよい。尚、図8、図9に示すタイミングチャート図は、図中の発光素子Puが一の制御単位に対応していて、制御単位の点灯タイミングを示している。
【0060】
5.光量補正
また、本実施形態では、上記した点灯タイミングの補正と光量補正を併用することで、色筋や白筋の抑制効果を高めている。
光量補正とは、各LEDアレイチップCHの継目Cにおける発光素子Pの光量を、発光素子間の距離Dxに応じて補正するものであり、この光量補正を行うことで、色筋や白筋の発生を抑えることが出来る。例えば、図12に示すように、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合に、継目中央の2つの発光素子Pa、Pbを対象に、発光時間を長くして光量を増加させる補正を行う。これにより、光量補正後には、図12の右側に示すように、継目中央部分はラインが繋がった状態となり、補正をしない場合と比べて白筋が目立たなくなる。
【0061】
また、図12の例とは反対に、発光素子間の距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合に、継目中央の2つの発光素子Pa、Pbを対象に、発光時間を短くして光量を減少させる補正を行う。これにより、光量補正後には、継目中央部と周辺部との光量差が少なくなるので、補正をしない場合と比べて色筋が目立たなくなる。
【0062】
尚、各発光素子Pの発光時間は、次に説明する補正値データXにて決められており、それぞれ設定値が異なっている。これは、LEDアレイ41の各発光素子Pは輝度ばらつきを持っており、発光時間や電流値などの条件を一律同じにして点灯させると、光量に差が生じる結果、露光むらが発生し画品質に影響を及ぼす。そこで、各発光素子Pの輝度値に応じて発光時間を変えることで、輝度ばらつきを補い、光量を均一化するためである。
【0063】
図13に示す補正値データXは、LEDアレイ上の各発光素子Pについて、補正階調のどのグレードを適用するか対応関係を定めるものである。図14の枠内の数字、例えば「2」、「1」、「3」等は補正階調のグレードを示している。一方、補正階調のグレードと発光時間(具体的にはクロックのカウント数)との対応関係は、図14の補正値テーブルで定められている。
【0064】
そのため、補正値テーブルを参照することで、各発光素子の発光時間が得られる。今、図13に示す発光素子P1であれば、補正値データXは「2」である。この場合、補正階調のグレードは「2」となり、補正値テーブルに従って、クロックのカウント数が「29」回、すなわち発光時間は112.4secとなる。また、発光素子Pnであれば、補正値データXは「4」である。この場合、補正階調のグレードは「4」となり、補正値テーブルに従って、クロックのカウント数が「31」回、すなわち発光時間が120.1secとなる。尚、ここでは、発光時間を計時するクロックのクロック周期を「3.875」nsとしている。
【0065】
図13に示す補正値データ「X1」は、補正値データXに対して色筋や白筋の発生を抑える光量補正を織り込んでものであり、補正値データ「X」に対して、継目中央に位置する2つの発光素子Pa、Pbの補正階調のグレードを変更している。
【0066】
6.点灯制御
続いてLEDアレイ41を構成する各発光素子Pの点灯制御例を図15を参照して説明する。制御装置100の演算制御部100Aは、印刷データを受けると、まず、各LEDアレイ41のEEPROM43から、各LEDアレイ41について、チップ同士の継目Cにおける発光素子Pのピッチ「Dx」のデータを読み出す(S10〜S20)。
【0067】
その後、演算制御部100Aは、各LEDアレイ41のLEDアレイチップCHについて、ディザパターンZの色筋や白筋が軽減されるように、点灯タイミングを補正する発光素子Pをそれぞれ決定する(S30)。具体的には、チップ同士の継目部分における発光素子Pのピッチ「Dx」のデータに基づいて、点灯タイミングを補正する発光素子Pをそれぞれ決定する。
【0068】
次に、演算制御部100Aは、各LEDアレイ41のEEPROM43から補正値データ「X」を読み込むと共に、読み込んだ補正値データ「X」から補正値データ「X1」を作成する。具体的には、チップ同士の継目部分における発光素子Pのピッチ「Dx」のデータに基づいて、継目中央の2つの発光素子Pa、Pbの発光時間を調整する補正を行う。
【0069】
その後、演算制御部100Aは印刷パターンの判定を行う。具体的には、印刷する画像にディザパターンZが使用されるかどうか判定する(S50)。
【0070】
印刷する画像にディザパターンZが使用される場合には、S50でYES判定される。S50でYES判定された場合、処理はS60に移行する。S60では印刷処理Aが実行される。
【0071】
具体的には、各LEDアレイ41の各LEDアレイチップCHについて点灯タイミングを補正する発光素子Pのデータと補正値データX1が、印刷データと共に発光制御部110に送られる。すると、データを受けた発光制御部110のASIC120は、各LEDアレイ41の各LEDアレイチップCHについて指定された発光素子Pの点灯タイミングを補正しつつ、LEDアレイ41に搭載された各発光素子Pの発光時間を、補正値データX1に従って制御する。
【0072】
これにて、LEDアレイチップCHの継目部分では、線分LL、LRの端部Tが一直線になるように折り曲げられ、更には発光素子Pの光量が調整され、各発光素子Pの作るドットが規則的に繋がる状態に近くなる。従って、ディザパターンZ中に白筋や色筋が目立たなくなる。
【0073】
一方、印刷する画像にディザパターンZが使用されない場合には、S50でNO判定される。S50でNO判定された場合には、S70に移行する。S70では印刷処理Bが実行される。印刷処理Bの場合、印刷データと共に補正値データXが発光制御部110に送られる。よって、発光制御部110のASIC120は、各LEDアレイ41の各LEDアレイチップCHについて発光素子Pの点灯タイミングを正規の点灯タイミングで制御し、またLEDアレイ41に搭載された各発光素子Pの発光時間を補正値データXに従って制御する。すなわち、ディザパターンZを使用しない場合には、端部Tの位置する発光素子の点灯タイミング補正や、光量補正は実行されない。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、線分LL側の端部Tと線分LR側の端部Tを同じ補正直線で折り曲げている。そのため、折り曲げ後、2つの端部Tが同一直線になるので、継目Cを自然に見せることが可能となる。そのため、白筋や色筋を目立たなくすることが出来る。
【0075】
加えて、本実施形態では、点灯タイミングの制御を、点灯タイミングが一律に制御される複数の発光素子からなる制御単位で、実行するので、点灯タイミングの制御が複雑にならないというメリットがある。
【0076】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
(1)上記実施形態では、発光アレイの一例として、発光素子に発光ダイオードを用いたLEDアレイを例示したが、発光素子に有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を用いた有機ELアレイを用いることも可能である。
【0078】
(2)上記実施形態では、線分LL側、線分LR側の双方の端部Tを折り曲げることで、色筋や白筋の発生を抑える例を示したが、片側の端部Tだけを折り曲げるようにしてもよい。また、双方の端部Tを折り曲げる場合であっても、折り曲げ後、端部Tが直線に近くなるものであればよく、各線分の端部Tを、角度の異なる補正直線を用いて折り曲げることも可能である。
【0079】
(3)上記実施形態では、線分LL、線分LRに対して、角が出来るように端部Tを折り曲げた例を示したが、例えば、図16に示すように、各線分と各端部の境界部分が滑らかに繋がるように、コーナを曲線Rでつなぐようにしてもよい。尚、コーナを曲線Rで繋ぐ場合には、発光素子Pの作るドットが曲線R上に乗るように、LEDアレイチップCHを構成する発光素子Pの点灯タイミングを設定すればよい。具体的には、図17に示すように、正規の点灯タイミングに対する点灯タイミングの補正量を段階的に大きく変化させるか、小さく変化させるように設定すればよい。
【符号の説明】
【0080】
1…プリンタ(本発明の「画像形成装置」の一例)
30…画像形成部
40…LEDユニット
41…LEDアレイ(本発明の「発光アレイ」の一例)
53…感光体ドラム(本発明の「感光体」の一例)
100…制御装置(本発明の「発光制御装置」の一例)
110…発光制御部(本発明の「発光制御装置」の一例)
C…継目
CH…LEDアレイチップ(本発明の「発光チップ」の一例)
P…発光素子
L…斜線(本発明の「一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線」の一例)
LL…線分(本発明の「集合線分」の一例)
LR…線分(本発明の「集合線分」の一例)
Z…ディザパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に複数の発光素子を形成し、主走査方向に並べて配置された複数の発光チップからなる発光アレイと、
前記発光アレイにより露光される感光体と、
前記感光体に形成される静電潜像を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記発光アレイの前記発光素子に、前記画像の階調を示し、一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線が副走査方向に繰り返されるディザパターンを形成させる発光制御装置とを備え、
前記発光制御装置は、前記発光チップ同士の継目に位置する2つの発光素子間の距離が基準値より大きい場合、
前記発光アレイの各発光チップが形成する各集合線分における、前記発光チップ同士の継目に対応する一対の端部のうち、少なくともいずれか一方側の端部を、前記主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向へ折り曲げるように、前記端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御するタイミング制御を行う画像形成装置。
【請求項2】
半導体基板上に複数の発光素子を形成し、主走査方向に並べて配置された複数の発光チップからなる発光アレイと、
前記発光アレイにより露光される感光体と、
前記感光体に形成される静電潜像を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記発光アレイの前記発光素子に、前記画像の階調を示し、一方向に傾斜する規則性をもったドットの集合体からなる集合線が副走査方向に繰り返されるディザパターンを形成させる発光制御装置とを備え、
前記発光制御装置は、前記発光チップ同士の継目に位置する2つの発光素子間の距離が基準値より小さい場合、
前記発光アレイの各発光チップが形成する各集合線分における、前記発光チップ同士の継目に対応する一対の端部のうち、少なくともいずれか一方側の端部を、前記主走査方向に対する傾斜が急になる方向へ折り曲げるように、前記端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御するタイミング制御を行う画像形成装置。
【請求項3】
前記発光制御装置は、前記一対の端部の双方を、前記主走査方向に対する傾斜が緩くなる方向又は傾斜が急になる方向へ折り曲げるように、前記一対の端部に対応する発光素子の前記点灯タイミングを制御する請求項1又は請求項2画像形成装置。
【請求項4】
前記発光制御装置は、折り曲げた前記一対の端部が一直線になるように、前記一対の端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記発光制御装置は、前記点灯タイミングの制御を、点灯タイミングが一律に制御される複数の発光素子からなる制御単位で、実行する請求項1又は請求項2画像形成装置。
【請求項6】
前記発光制御装置は、前記集合線分と前記端部の境界部分が滑らかに繋がるように、前記境界部分における発光素子の点灯タイミングを制御する請求項1又は請求項2画像形成装置。
【請求項7】
前記発光制御装置は、
前記発光チップ同士の継目に対応する端部に対応する発光素子の点灯タイミングを制御する前記タイミング制御と、
前記発光チップ同士の継目に位置する発光素子の光量を、発光素子間の距離に応じて補正する光量制御とを併用する請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−67142(P2013−67142A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209011(P2011−209011)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】