説明

画像形成装置

【課題】1つの原稿を複数回読み取り,その複数の画像を1枚の用紙に印刷する場合に,その出力物について,同じ原稿であることをチェック可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿の読み取りを2回行い,それぞれの読み取り時に原稿から識別情報を取得する(S101〜S104)。1回目の読み取り時に取得した識別情報と,2回目の読み取り時に取得した識別情報とが一致した場合に(S105:YES),1回目の読み取りで読み取った画像と2回目の読み取りで読み取った画像とを,1枚の用紙に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿を読み取り,その読み取った原稿の画像データを用紙に印刷する画像形成装置に関する。さらに詳細には,複数の画像データを1枚の用紙に印刷する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,身分証明書等の特別な原稿を読み取り,その読み取った画像を用紙に印刷する場合に,その特別な原稿の読み取りないし印刷の設定を簡単に行うためのモードを有する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば,特許文献1には,免許証のコピーを行うための免許証モードを有する画像形成装置が開示されている。特許文献1に開示されたモードによれば,ガイダンスに従ってユーザによる免許証のコピー設定が行われ,免許証の表面および裏面をスキャナによってそれぞれ順に読み取り,その免許証の表面および裏面の画像を1枚の用紙の一方の面に印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,原稿の表面と裏面とを読み取るような,1つの原稿に対して複数回の読み取りを行い,その複数の画像を1枚の用紙に印刷する場合,必ずしもユーザが同一の原稿を読み取らせるとは限らない。そのため,出力物について,原稿の同一性が問題となる。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,1つの原稿を複数回読み取り,その複数の画像を1枚の用紙に印刷する場合に,その出力物について,同じ原稿である可能性が高い画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像形成装置は,原稿の第1面の画像を読み取る第1読取部と,前記第1読取部での読み取り時に,前記第1読取部の読み取り対象の原稿から当該原稿の識別情報を取得する第1取得部と,前記第1読取部での読み取り後に,原稿の第2面の画像を読み取る第2読取部と,前記第2読取部での読み取り時に,前記第2読取部の読み取り対象の原稿から当該原稿の識別情報を取得する第2取得部と,前記第1取得部が取得した前記識別情報と,前記第2取得部が取得した前記識別情報とが一致するか否かを判断する判断部と,前記判断部にて識別情報が一致すると判断した場合,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像とを,1枚の用紙に印刷する印刷部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像形成装置は,原稿の第1面の読み取りと第2面の読み取りとの,2回の読み取りを行い,それぞれの読み取り時に原稿から識別情報を取得する。原稿の識別情報の取得方法としては,例えば,原稿に組み込まれたRFIDタグの情報を読み取る方法や,原稿に印刷されたバーコードやQRコードを読み取る方法がある。そして,1回目の読み取り時に取得した識別情報と,2回目の読み取り時に取得した識別情報とが一致した場合に,1回目の読み取りで読み取った画像(第1面の画像)と2回目の読み取りで読み取った画像(第2面の画像)とを,1枚の用紙に印刷する。用紙への印刷では,用紙の片面に複数の画像を印刷してもよいし,両面印刷を利用して各画像をそれぞれ用紙の表裏面に印刷してもよい。
【0009】
すなわち,本発明の画像形成装置では,1回目の読み取り対象の原稿と,2回目の読み取り対象の原稿とが一致するか否かを判断し,両者が一致する場合に印刷を行っている。つまり,原稿が一致すると判断した上で,それぞれ読み取った画像を1枚の用紙に印刷している。これにより,その印刷物について,原稿の同一性を確保できる。
【0010】
また,前記印刷部は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と,前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像と,の印刷を行わないとよい。この構成により,原稿が一致しない2つの画像の,1枚の用紙への出力を確実に回避できる。
【0011】
また,前記印刷部は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と異なる画像である識別画像を印刷してもよい。ユーザが所望する画像と異なる画像が印刷されることで,ユーザが原稿の読み取りに失敗したことを認識することが期待できる。
【0012】
また,前記印刷部は,前記識別画像として,原稿が不一致であることを示すマークを印刷するとよい。印刷物に,原稿が不一致であることを示すマーク(文字列や図柄等)が印刷されていることで,ユーザが原稿の読み取りに失敗したことを把握し易い。
【0013】
また,前記印刷部は,前記識別画像として,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と色違いの画像を印刷するとよい。印刷物に,ユーザ所望の画像と色違いの画像が印刷されていることで,ユーザが原稿の読み取りに失敗したことを把握し易い。
【0014】
また,前記印刷部は,前記識別画像として,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と配置が異なる画像を印刷するとよい。配置が異なる画像としては,例えば,第1面の画像と第2面の画像とで向きが不一致の画像を印刷する。印刷物に,ユーザ所望の画像配置と異なる画像が印刷されていることで,ユーザが原稿の読み取りに失敗したことを把握し易い。
【0015】
また,本発明の画像形成装置は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と,前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像と,の一方を削除し,再度,原稿を読み取る再読取部と,前記再読取部での読み取り時に,前記再読取部の読み取り対象の原稿から識別情報を取得する再取得部と,前記再取得部が取得した前記識別情報と,前記再取得部で削除されなかった画像の読み取り時に取得された識別情報とが一致するか否かを判断する再判断部と,前記再判断部にて識別情報が一致すると判断した場合に,前記再読取部で読み取った画像と前記削除部で削除されなかった画像とを1枚の用紙に印刷するリカバリ印刷部とを備えるとよい。この構成によれば,原稿が不一致の場合には,一方の面を再度読み取ることでリカバリが可能になる。また,一方の面のみを読み取ってリカバリを行うことで,始めからやり直して2面分を読み取る場合と比較して早期に印刷物を取得できる。
【0016】
また,本発明の画像形成装置は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,再度,原稿を読み取る第2再読取部と,前記第2再読取部での読み取り時に,前記第2再読取部の読み取り対象の原稿から識別情報を取得する第2再取得部と,前記第1取得部が取得した前記識別情報および前記第2取得部が取得した前記識別情報のうち,前記第2再取得部が取得した前記識別情報と一致する識別情報があるか否かを判断する第2再判断部と,前記第2再判断部にて一致する識別情報があると判断した場合,前記第2再読取部で読み取った画像と前記第2再判断部にて一致すると判断された識別情報に対応する画像とを1枚の用紙に印刷する第2リカバリ印刷部とを備えるとよい。この構成によれば,原稿が不一致の場合には,一方の面を再度読み取ることでリカバリが可能になる。また,リカバリを行う場合に,1回目の読み取り時の原稿と2回目の読み取り時の原稿とのどちらに一致するかを画像形成装置が判別している。これにより,ユーザは,誤った原稿が第1面か第2面かを意識することなくリトライを行うことができる。
【0017】
また,本発明の画像形成装置は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,原稿が不一致であることを報知する報知部を備えるとよい。報知方法としては,例えば,メッセージ表示,警告音,音声アナウンスが該当する。原稿の不一致を報知することで,ユーザが原稿の不一致を認識し易い。
【0018】
また,前記判断部は,前記第1取得部が取得した前記識別情報と,前記第2取得部が取得した前記識別情報との少なくとも一方で,複数の識別情報を取得した場合には,識別情報が一致しないと判断するとよい。1度の読み取りに対して複数の識別情報が取得された場合には,原稿の特定が困難である。そのため,このような場合には,原稿が一致しないものとし,不適切な画像の出力を回避する方が望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,1つの原稿を複数回読み取り,その複数の画像を1枚の用紙に印刷する場合に,その出力物について,同じ原稿である可能性が高い画像形成装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態にかかるMFPの外観を示す図である。
【図2】MFPの画像読取部の構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態にかかるMFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】第1の形態におけるIDコピー処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】IDコピー機能を利用した際の出力画像の一例である。
【図6】第2の形態におけるIDコピー処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の形態におけるIDコピー処理の出力画像の一例(その1)である。
【図8】第2の形態におけるIDコピー処理の出力画像の一例(その2)である。
【図9】第3の形態におけるIDコピー処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明にかかる画像形成装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,原稿を複数回読み取り,それら読み取った画像を1枚の用紙に印刷する機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0022】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10(印刷部の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20(第1読取部,第2読取部の一例)とを備えている。なお,画像形成部10の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。画像読取部20も,カラー画像の読み取りが可能であっても,モノクロ読取専用であってもよい。
【0023】
画像読取部20には,前面側に,液晶ディスプレイからなる表示部41,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群42等を備えた操作パネル40が設けられている。MFP100では,この表示部41やボタン群42により,動作状況の表示やユーザによる入力が可能になっている。
【0024】
[画像読取部の構成]
画像読取部20は,図2に示すように,原稿(例えば図2中の原稿90)の画像の読み取りを行うスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22とを備えている。
【0025】
スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するイメージセンサ25とを備えている。スキャナ部21は,ADF22によって原稿が自動搬送される際には,プラテンガラス23下に固定され,原稿の画像を読み取る。また,原稿がプラテンガラス24上に載置される際には,副走査方向(図2の矢印A方向)に移動して,原稿の画像を読み取る。
【0026】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。ADF22は,原稿トレイ221に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿を搬送路223を介してプラテンガラス23に対向する位置に搬送する。そして,イメージセンサ25が主走査方向に1ラインずつ原稿の画像を読み取る。その後,その原稿を排出トレイ222上に排出する。
【0027】
また,画像読取部20は,RFID(Radio Frequency IDentification)タグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読み出しおよび書き込みを行うことが可能なR/W装置50(第1取得部,第2取得部の一例)を備えている。R/W装置50は,RFIDタグが貼付された原稿が,原稿トレイ221上に載置された場合,あるいはプラテンガラス24上に載置された場合に,そのRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。
【0028】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図3に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,画像形成部10と,画像読取部20と,操作パネル40と,ネットワークインターフェース37とに,電気的に接続されている。
【0029】
ROM32には,MFP100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33およびNVRAM34は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは印刷データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0030】
CPU31(判断部の一例)は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素を制御する。
【0031】
ネットワークインターフェース37は,他の装置との通信を可能にするインターフェースである。MFP100は,ネットワークインターフェース37を介して他の装置から送信される印刷データを受信する。
【0032】
[MFPの制御]
続いて,MFP100の制御について説明する。MFP100は,RFIDタグが貼付された特殊な原稿に対し,その原稿の表面と裏面との2回の読み取りを行い,それら読み取った画像を1枚の用紙に印刷するIDコピーモードを有する。このIDコピーモードは,例えば免許証や保険証,あるいはパスポートといった特定の原稿の,複数の画像を読取って1枚の用紙に印刷する場合に好適である。なお,IDコピーモードを利用する際の原稿は,個人認証に用いられる特殊な原稿に限るものではない。
【0033】
[IDコピー処理]
[第1の形態]
以下,IDコピーモードを実現するIDコピー処理(第1読取部,第1取得部,第2読取部,第2取得部,判断部,印刷部,再読取部,再取得部,再判断部,リカバリ印刷部,報知部の一例)について,図4のフローチャートを参照しつつ説明する。IDコピー処理は,ユーザが操作パネル40を操作し,IDコピーモードに切り換え,その状態でMFP100に実行指示が入力されたことを契機に,制御部30によって実行される。
【0034】
第1の形態のIDコピー処理では,先ず,原稿の第1面をセットし,読み取り開始指示を入力する旨のメッセージを,操作パネル40の表示部41に表示する(S101)。原稿は,ADF22にセットしてもよいし,プラテンガラス24上にセットしてもよい。どちらの場合であっても,原稿は1枚のみセットする。
【0035】
その後,原稿の読み取り指示が入力されると,画像読取部20によってその原稿の読み取りを開始する(S102,第1読取部および第1取得部の一例)。読み取った原稿の画像は,第1面の画像としてRAM33あるいはNVRAM34に記憶される。また,S102での原稿の読み取りの際,R/W装置50が原稿に貼付されたRFIDタグにアクセスし,そのRFIDタグに記憶されている情報を取得する。本形態では,RFIDタグから原稿の識別番号を取得する。
【0036】
なお,S102の際,原稿にRFIDタグが貼付されていない,あるいはRFIDタグにアクセスしたものの識別情報を取得できない,あるいは複数のRFIDタグにアクセスしたために識別番号を特定できない等,読み取り対象の原稿の識別情報の取得に失敗した場合には,その旨のメッセージを表示部41に表示し,原稿の読み取りのやり直しを指示する。
【0037】
原稿の第1面の読み取りおよびRFIDタグからの識別情報の取得に成功した後は,原稿の第2面をセットし,読み取り開始指示を入力する旨のメッセージを,操作パネル40の表示部41に表示する(S103)。
【0038】
その後,原稿の読み取り指示が入力されると,画像読取部20によってその原稿の読み取りを開始する(S104,第2読取部および第2取得部の一例)。読み取った原稿の画像は,第2面の画像としてRAM33あるいはNVRAM34に記憶される。また,S104での原稿の読み取りの際,S102と同様に,R/W装置50が原稿に貼付されたRFIDタグにアクセスし,そのRFIDタグに記憶されている情報を取得する。なお,S104の際に,読み取り対象の原稿の識別情報の取得に失敗した場合には,その旨のメッセージを表示部41に表示し,原稿の読み取りのやり直しを指示する。
【0039】
S104にてRFIDタグからの識別情報の取得に成功した後は,S102で取得した識別情報と,S104で取得した識別情報とが一致するか否かを判断する(S105,判断部の一例)。すなわち,S102で読み取り対象となった原稿とS104で読み取り対象となった原稿とが,同じが否かを判断する。なお,S105の判断では,S102で取得した1つの識別情報と,S104で取得した1つの識別情報とを比較している。そのため,いずれか一方のステップで複数の識別情報を取得した場合にはどの識別情報を比較対象とするか不明となる。このことから,識別情報を特定できない場合には,S105にて不一致と判断される。
【0040】
識別情報が一致する場合には(S105:YES),第1面と第2面とが同じ原稿から読み取られたものと判断でき,第1面の画像と第2面の画像とを1枚の用紙に印刷するための合成画像を作成する(S106)。合成画像の作成後は,第1面の画像と第2面の画像とをメモリから削除し,作成した合成画像の印刷を開始する(S107,印刷部の一例)。S107の後は,IDコピー処理を終了する。
【0041】
図5は,S106で作成される合成画像の例である。この例では,RFIDタグ92が貼付された原稿90について,図5(A)に示すように,S102で読み取られた画像を画像Pとし,S104で読み取られた画像を画像Qとする。そして,用紙91に印刷される合成画像は,図5(B)に示すように,画像Pと画像Qとを並列に配置し,用紙91に収まるサイズに必要に応じて変更した画像Rとする。なお,本形態では,用紙91の片面に画像Pと画像Qとを印刷するため,合成画像を必要としているが,用紙91の一方の面に画像P,他方の面に画像Qとなるように両面印刷する場合には,合成画像の作成は不要である。
【0042】
一方,識別情報が一致しない場合には(S105:NO),第1面と第2面とで原稿が一致しない旨のエラーメッセージを,操作パネル40の表示部41に表示する(S121,報知部の一例)。その後,読み取りのリトライを行うか否かを,ユーザに問い合わせる(S122)。
【0043】
リトライを行うことが指示された場合には(S122:YES),S104で読み取った第2面の画像をメモリから削除し(S123),S103に戻ってユーザに第2面の原稿のセットを指示した後,S104にて第2面の読み取りおよび識別情報の取得をやり直す(再読取部,再取得部の一例)。そして,S104にて再度取得した識別情報とS102で取得した識別情報とが一致するか否かを判断する(再判断部の一例)。そして,識別情報が一致する場合には,S104にて再度読み取った画像とS102にて読み取った画像との合成画像を作成し(S106),その合成画像の印刷を開始する(S107,リカバリ印刷部の一例)。このように第2面の読み取りのリトライを行うことで,始めからやり直して2面分の画像を読み取る場合と比較して早期に印刷物を取得できる。
【0044】
一方,リトライを行わないことが指示された場合には(S122:NO),S102およびS104で記憶した画像をメモリから削除する(S124)。そして,印刷を開始することなく,IDコピー処理を終了する。
【0045】
前述したように第1の形態のIDコピー処理では,2回の原稿の読み取りに際して,それぞれ原稿に貼付されているRFIDタグから識別情報を取得し,1回目の読み取りで取得した識別情報と,2回目の読み取りで取得した識別情報とを照合し,両者が一致する場合に印刷を行っている。すなわち,原稿が一致すると判断した上で,それぞれ読み取った画像を1枚の用紙に印刷している。これにより,その印刷物について,原稿の同一性を確保できる。
【0046】
なお,第1の形態では,識別情報が不一致であればリトライを行うかもしくはIDコピー処理自体を終了しているが,原稿の不一致を報知した上で,印刷を行ってもよい。すなわち,S121にて原稿の不一致を報知することで,少なくともユーザが,印刷物に印刷されている複数の画像について同一の原稿から読み取られた画像ではないことを把握することが,期待できる。
【0047】
また,第1の形態では,識別情報が一致していれば,その旨を報知することなく印刷を開始しているが,原稿が一致することを報知した上で印刷を開始してもよい。原稿の一致を報知することで,ユーザが,印刷物に印刷されている複数の画像について同一の原稿から読み取られた画像であることを把握することが,期待できる。
【0048】
また,第1の形態では,リトライを行う際,第2面の読み取りをやり直しているが,第1面の読み取りをやり直してもよい。また,リトライを行うにあたって,読み取りをやり直す面をユーザに問い合わせ,ユーザが選択した面についてリトライを行うようにしてもよい。
【0049】
[第2の形態]
続いて,IDコピー処理の別形態について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。本形態のIDコピー処理では,識別情報が不一致であった場合,識別情報が一致した場合と異なる画像を印刷する。この点,識別情報が不一致であった場合,エラーを報知し,第2面の画像の読み取りのリトライあるいはIDコピー処理のキャンセルを行う第1の形態と異なる。なお,第1の形態と同じ処理については,第1の形態と同じ符号を付し,説明を省略する。
【0050】
第2の形態のIDコピー処理では,S101からS105までの処理は,第1の形態と同様である。また,S106およびS107の,識別情報が一致する場合(S105:YES)の処理についても,第1の形態と同様である。
【0051】
一方,識別情報が一致しない場合には(S105:NO),S106にて作成される合成画像と異なる合成画像である第2合成画像を作成する(S221)。具体的に,第2合成画像としては,識別情報が一致した場合,すなわち原稿が一致したときに印刷される画像と異なることが,ユーザが一目で把握できるような画像が好ましい。例えば,図7に示すように,不一致であることを示すマークR10が合成された画像R1を作成する。マークは,文字列であっても画像であってもよい。また,例えば,図8に示すように,第1目の画像と第2面の画像とのいずれか一方の画像の向きを変更し,原稿が一致したときに印刷される画像(図5参照)と画像の配置が異なる画像R2を作成する。また,例えば,原稿が一致したときに印刷される画像がカラー画像である場合には,原稿が一致しなかったときに印刷される画像をモノクロ画像にしてもよい。
【0052】
前述したように第2の形態のIDコピー処理では,1回目の読み取りで取得した識別情報と2回目の読み取りで取得した識別情報とが一致しなかった場合に作成する合成画像を,一致した場合に作成する合成画像と異なる画像にしている。これにより,原稿が不一致であった場合には,ユーザ所望の画像が得られない。換言すると,原稿が一致した場合についてのみユーザ所望の画像が得られる。このことから,原稿の同一性を確保できる。
【0053】
[第3の形態]
続いて,IDコピー処理の更なる別形態について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。本形態のIDコピー処理(第2再読取部,第2再取得部,第2再判断部,第2リカバリ部の一例)では,識別情報が不一致であってリトライを行う場合,リトライを行う原稿の面を設定しない。この点,原稿の第2面についてリトライを行う第1の形態と異なる。なお,第1の形態と同じ処理については,第1の形態と同じ符号を付し,説明を省略する。
【0054】
第3の形態のIDコピー処理では,S101からS105までの処理は,第1の形態と同様である。また,S106およびS107の,識別情報が一致する場合(S105:YES)の処理についても,第1の形態と同様である。
【0055】
一方,識別情報が一致しない場合には(S105:NO),第1面と第2面とで原稿が一致しない旨のエラーメッセージを,操作パネル40の表示部41に表示する(S121,報知部の一例)。その後,リトライを行う原稿をセットし,読み取りの開始指示を入力する旨のメッセージを,操作パネル40の表示部41に表示する(S321)。S321では,原稿の読み取り面までは指定しない。
【0056】
その後,原稿の読み取りが指示されると,画像読取部20によってその原稿を読み取る(S322,第2再読取部,第2再取得部の一例)。読み取った原稿の画像は,RAM33あるいはNVRAM34に記憶される。また,S322での原稿の読み取りの際,R/W装置50が原稿に貼付されたRFIDタグにアクセスし,そのRFIDタグに記憶されている情報を取得する。
【0057】
そして,RFIDタグからの識別情報の取得に成功した後は,S322で取得した識別情報と,S102で取得した識別情報とが一致するか否かを判断する(S323,第2再判断部の一例)。識別情報が一致する場合には(S323:YES),S322で再読み取りを行った原稿は第1面の画像を読み取った原稿と同じものと判断でき,S322では第2面の画像のリカバリと判断できる。そこで,S104で読み取った第2面の画像をメモリから削除する(S331)。そして,S106に移行し,S102で読み取った画像とS322で読み取った画像とを1枚の用紙に印刷するための合成画像を作成する(S106)。合成画像の作成後は,その合成画像の印刷を開始する(S107,第2リカバリ印刷部の一例)。
【0058】
一方,S322で取得した識別情報がS102で取得した第1面の識別情報と一致しない場合には(S323:NO),S322で取得した識別情報と,S104で取得した第2面の識別情報とが一致するか否かを判断する(S324,第2再判断部の一例)。識別情報が一致する場合には(S324:YES),S322で再読み取りを行った原稿は第2面の画像を読み取った原稿と同じものと判断でき,S322では第1面の画像のリカバリと判断できる。そこで,S102で読み取った画像をメモリから削除する(S341)。そして,S106に移行し,S104で読み取った画像とS322で読み取った画像とを1枚の用紙に印刷するための合成画像を作成する(S106)。合成画像の作成後は,その合成画像の印刷を開始する(S107,第2リカバリ印刷部の一例)。
【0059】
一方,S322で取得した識別情報がS104で取得した第2面の識別情報とも一致しない場合には(S324:NO),S322で再読み取りを行った原稿は,第1面の画像を読み取った原稿とも第2面の画像を読み取った原稿とも異なるものと判断できる。そのため,S121に移行し,エラーを報知して原稿の読み取りをやり直す。
【0060】
前述したように第3の形態のIDコピー処理では,1回目の読み取りで取得した識別情報と2回目の読み取りで取得した識別情報とが一致しなかった場合に,リトライを行う原稿の面を指定せず,MFP100がどちらの面が読み取られたかを自動判別している。これにより,ユーザは,誤った原稿が第1面か第2面かを意識することなくリトライを行うことができる。
【0061】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,複写機等,画像読取機能および画像送信機能を備えるものであれば適用可能である。
【0062】
また,実施の形態では,原稿から識別情報を取得する方法として,原稿に組み込まれたRFIDタグの情報を読み出しているが,これに限るものではない。例えば,原稿に印刷されたバーコードやQRコードを読み取る方法がある。
【0063】
また,実施の形態では,読み取り指示やエラー報知を,操作パネル40の表示部にメッセージ表示しているが,報知方法としてはこれに限るものではない。例えば,警告音,音声アナウンスであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 画像形成部
20 画像読取部
50 R/W装置
90 原稿
91 用紙
92 RFIDタグ
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の第1面の画像を読み取る第1読取部と,
前記第1読取部での読み取り時に,前記第1読取部の読み取り対象の原稿から当該原稿の識別情報を取得する第1取得部と,
前記第1読取部での読み取り後に,原稿の第2面の画像を読み取る第2読取部と,
前記第2読取部での読み取り時に,前記第2読取部の読み取り対象の原稿から当該原稿の識別情報を取得する第2取得部と,
前記第1取得部が取得した前記識別情報と,前記第2取得部が取得した前記識別情報とが一致するか否かを判断する判断部と,
前記判断部にて識別情報が一致すると判断した場合,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像とを,1枚の用紙に印刷する印刷部と,
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像形成装置において,
前記印刷部は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と,前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像と,の印刷を行わないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載する画像形成装置において,
前記印刷部は,前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と異なる画像である識別画像を印刷することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載する画像形成装置において,
前記印刷部は,前記識別画像として,原稿が不一致であることを示すマークを印刷することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載する画像形成装置において,
前記印刷部は,前記識別画像として,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と色違いの画像を印刷することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3に記載する画像形成装置において,
前記印刷部は,前記識別画像として,前記判断部にて識別情報が一致した場合に印刷する画像と配置が異なる画像を印刷することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1に記載する画像形成装置において,
前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,前記第1読取部で読み取った前記第1面の画像と,前記第2読取部で読み取った前記第2面の画像と,の一方を削除し,再度,原稿を読み取る再読取部と,
前記再読取部での読み取り時に,前記再読取部の読み取り対象の原稿から識別情報を取得する再取得部と,
前記再取得部が取得した前記識別情報と,前記再取得部で削除されなかった画像の読み取り時に取得された識別情報とが一致するか否かを判断する再判断部と,
前記再判断部にて識別情報が一致すると判断した場合に,前記再読取部で読み取った画像と前記削除部で削除されなかった画像とを1枚の用紙に印刷するリカバリ印刷部と,
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1に記載する画像形成装置において,
前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,再度,原稿を読み取る第2再読取部と,
前記第2再読取部での読み取り時に,前記第2再読取部の読み取り対象の原稿から識別情報を取得する第2再取得部と,
前記第1取得部が取得した前記識別情報および前記第2取得部が取得した前記識別情報のうち,前記第2再取得部が取得した前記識別情報と一致する識別情報があるか否かを判断する第2再判断部と,
前記第2再判断部にて一致する識別情報があると判断した場合,前記第2再読取部で読み取った画像と前記第2再判断部にて一致すると判断された識別情報に対応する画像とを1枚の用紙に印刷する第2リカバリ印刷部と,
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する画像形成装置において,
前記判断部にて識別情報が一致しないと判断した場合に,原稿が不一致であることを報知する報知部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載する画像形成装置において,
前記判断部は,前記第1取得部が取得した前記識別情報と,前記第2取得部が取得した前記識別情報との少なくとも一方で,複数の識別情報を取得した場合には,識別情報が一致しないと判断することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77943(P2013−77943A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216143(P2011−216143)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】