説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルト12の寄り制御を行う構造で、トナー像と記録材Sとの幅方向の位置ずれを低減する。
【解決手段】最上流の画像形成ステーションPaの感光ドラム1aに対して露光装置3aにより静電潜像の形成が行なわれるタイミングから、その静電潜像が現像されたトナー像が2次転写装置11の位置まで搬送されるタイミングまでの時間をT6とする。そして、時間T6の間に中間転写ベルト12がベルト走行方向に対して交差する幅方向に移動する変動量を、中間転写ベルト12の幅方向の位置の検知結果に基づいて予測する。予測した中間転写ベルト12の変動量に基づき、記録材カセット13から2次転写位置T2に搬送されてくる記録材Sの幅方向の位置を制御して、上述のトナー像を記録材Sとの幅方向の位置を合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に係り、特に無端状の中間転写ベルトを備え、中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材に転写して出力画像を得る中間転写方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体上に形成された色相の異なるトナー像を無端状の中間転写ベルトに順次重ねて1次転写し、中間転写ベルト上に形成されたトナー像を記録材に2次転写する中間転写方式の画像形成装置が多数提案されている。
【0003】
このような画像形成装置においては、中間転写ベルトの駆動時にベルトの片寄りや蛇行が発生しやすく、寄りきり等によるベルトの破損を防止する必要がある。ベルトの寄りを制御する手段としては、ベルトの寄り状況をベルト周辺に配設した検知手段により検知し、ベルトに強制的に片寄り力を付与し、ベルトを一定範囲内で確実に往復運動させる技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、ベルトを保持するローラ等の支持部材の中央部を大径に形成したクラウン形状にし、ローラの形状にベルトを沿わせてベルト端部と中央部で内部応力差を発生させ、ベルトを中央に寄せるようにする技術も使用されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3―288167号公報
【特許文献2】特開2003−330300号公報
【特許文献3】特開平6−118823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した各特許文献に記載されたような無端状のベルトの寄り制御を、上述の中間転写ベルトに適用した場合、以下のような問題が発生する可能性がある。即ち、寄り制御により中間転写ベルトが走行方向に交差する幅方向に移動すると、感光体上に形成されたトナー像が中間転写ベルトを介して記録材に転写されるまでに、このトナー像と記録材との位置が幅方向にずれてしまう場合がある。
【0007】
この結果、印刷物の左右余白の幅が異なると言う問題が発生する可能性がある。また、記録材の両面に画像形成を行う両面印刷物を出力する場合において、表面の左右余白と裏面の左右余白の幅が異なるために、表面の画像位置と裏面の画像位置が合わず、良好な両面印刷物を出力できないという問題も発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、中間転写ベルトの寄り制御を行う構造で、トナー像と記録材との幅方向の位置ずれを低減すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像してトナー像とする現像手段と、前記像担持体に形成されたトナー像が転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを走行駆動する駆動手段と、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写する転写手段と、を備え、前記中間転写ベルトの走行方向に交差する幅方向の寄り位置を制御する画像形成装置において、前記中間転写ベルトの前記幅方向の位置を検知する位置検知手段と、前記位置検知手段の検知結果により、前記静電潜像形成手段による所定の潜像形成タイミングから、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像が前記中間転写ベルトを介して前記転写手段で記録材に転写されるまでの、前記中間転写ベルトの前記幅方向の変動量を予測して、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像と記録材との前記幅方向の位置を所定の位置に合わせるように、静電潜像と記録材とのうちの少なくとも何れかの前記幅方向の位置を制御する制御手段と、を有する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置検知手段により中間転写ベルトの幅方向の変動量を予測して、トナー像と記録材との位置を合わせるように、静電潜像或いは記録材の幅方向の位置を制御しているため、トナー像と記録材との幅方向の位置ずれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】中間転写ベルトユニットを示す概略構成斜視図。
【図3】中間転写ベルトの挙動と、手前側および奥側の端面検知センサにより検知される信号との関係を示す図。
【図4】記録材の搬送経路に配置された、記録材の幅方向位置を調整する調整機構を示す概略構成斜視図。
【図5】第1の実施形態で、調整機構を制御する制御回路のブロック図。
【図6】調整機構の別例を示す概略構成図。
【図7】第1の実施形態で、記録材の位置調整の制御を行うフローチャート。
【図8】本発明の第2の実施形態で、静電潜像の主走査方向の書き出しタイミングを制御する制御回路のブロック図。
【図9】第2の実施形態で、静電潜像の書き出しタイミングの制御を行うフローチャート。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。まず、画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0013】
[画像形成装置]
図1は、本実施形態のタンデム型中間転写方式のカラー画像形成装置を示す。本実施形態の画像形成装置では、4つの画像形成ステーション(画像形成部)Pa、Pb、Pc、Pdが、無端状の中間転写ベルト12の走行方向(画像送り方向)に並べて配置されている。なお、各画像形成ステーションの構成は、トナーの色が異なる以外はほぼ同じであるため、同様の内容については、その画像形成ステーションの構成であることを示す添え字を省略して(必要に応じて付して)説明する。
【0014】
画像形成ステーションPは、像担持体である感光ドラム1、帯電装置2、静電潜像形成手段である露光装置3、現像手段である現像装置4、クリーニング装置5、および1次転写装置7を備えている。また、各画像形成ステーションPa〜Pdの感光ドラム1a〜1dと1次転写装置7a〜7dとの間を通るように、中間転写体である中間転写ベルト12が移動可能に配置されている。
【0015】
感光ドラム1は、不図示の駆動手段により回転駆動され、帯電装置2により表面が所定の電位に帯電される。そして、帯電された感光ドラム1の表面を、スキャナや外部端末から入力された画像信号に基づいて、露光装置3により露光し、この表面に静電潜像を形成する。感光ドラム1に形成された静電潜像は、現像装置4により各色のトナーでトナー像として現像される。
【0016】
露光装置3は、光源装置20、ポリゴンミラー21、反射ミラー22、fθレンズなどを有する。露光は、光源装置20から発せられたレーザー光をポリゴンミラー21を回転して走査し、その走査光の光束を複数の反射ミラー22によって偏向し、fθレンズにより感光ドラム1の母線上に集光して行われる。これにより、感光ドラム1上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0017】
現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの非磁性トナーと磁性キャリアが所定の混合比で混合された現像剤が所定量充填されており、感光ドラム上の静電潜像を各色のトナーで現像する。
【0018】
各感光ドラム1a、1b、1c、1dに形成された各色のトナー像は、各1次転写装置7a、7b、7c、7dにより中間転写ベルト12に順次重ねて1次転写される。これにより、中間転写ベルト上にフルカラーのトナー像が形成される。
【0019】
一方、記録材カセット13に収容された記録材Sは、ピックアップローラ15および複数の搬送ローラ16により転写手段である2次転写装置11へ搬送される。そして、中間転写ベルト12上に担持されたトナー像が、記録材Sへ2次転写される。トナー像が転写された記録材Sは、定着器9にて加熱及び加圧によりトナー像が定着された後、記録画像として装置外に排出される。
【0020】
また、記録材Sへの2次転写位置T2から中間転写ベルトの走行方向下流には中間転写ベルト12表面に付着したかぶりトナーや2次転写残トナー等をクリーニングする中間転写ベルトクリーニングブレード14が常時に当接され清掃される。一方、感光ドラム1上に残留した1次転写残トナー等は、ファーブラシ、ブレード手段等のクリーニング装置5により清掃される。
【0021】
また、画像形成装置本体100には、本体を制御する制御手段であるコントローラ部51を有する。このコントローラ部51には、作業用のメモリとして使われるRAM52、コントローラが実行するプログラムや各種データが格納されたROM53、取得したデータなどをバックアップするバックアップRAM54が接続されている。そして、このコントローラ部51により上述のように各部を制御して、画像形成を行っている。
【0022】
[中間転写ベルトユニット]
次に、図2を用いて、中間転写ベルト12を駆動し、且つ、中間転写ベルトの寄り制御を行う中間転写ベルトユニット200について説明する。中間転写ベルト12は、固定配置の駆動ローラ31、テンションローラ32、揺動ローラ33、2次転写内側ローラ34の4本のローラにより張架されている。そして、駆動ローラ31に配設した駆動手段である駆動モータ35により、中間転写ベルト12が矢印A方向に走行駆動する。
【0023】
揺動ローラ33は、回転軸をステッピングモータなどのアクチュエータ36の作動軸に同軸に接続してあるロッド37に接続されている。そして、アクチュエータ36の作動軸が往復運動することで、揺動ローラ33の軸傾きを変動させ(揺動させ)、中間転写ベルト12の寄り制御を行う。なお、アクチュエータ36としてステッピングモータを使用する場合、揺動ローラ33の変動量はステッピングモータに対して出力される駆動パルス数により設定できる。また、揺動手段として揺動ローラ33の回転軸または軸受に対してカムを当接させ、カムの位相を変更して揺動ローラの軸傾きを変動させるような構成とすることもできる。また、この場合にカムの駆動をステッピングモータで行っても良い。
【0024】
更に、揺動ローラ33と2次転写内側ローラ34との間で、中間転写ベルト12の走行方向に交差(直交)する幅方向の両端部に、位置検知手段である端面検知センサ38、39を配置している。画像形成装置本体100の設置状態で、手前側に端面検知センサ38を、奥側に端面検知センサ39を配置している。これらの端面検知センサ38、39は中間転写ベルト12の幅より例えば1mm長い距離をもってお互いに配置されている。そして、一方の端面検知センサにより中間転写ベルト12の幅方向の端面が検知されると、検知された側と逆方向に中間転写ベルト12が寄るように、揺動手段により制御される。つまり、中間転写ベルト12は1mmの幅をもって往復運動するように(寄り制御されるように)、動作が制御される。
【0025】
[寄り制御]
次に、図3を用いて、中間転写ベルトの寄り制御について説明する。中間転写ベルト12が手前側に寄ると手前側の端面検知センサ38により検知され、揺動ローラ33の軸傾きの制御により奥側に向かって寄るように動作する。このとき、中間転写ベルト12の寄り方向がすぐ変わるものではなく、手前側の端面検知センサ38の検知されている滞在時間T1の間、手前側に寄っている状態になる。次に、中間転写ベルト12が奥側に向かっていき、時間T3後に奥側の端面検知センサ39により検知され、滞在時間T2後にまた手前側に向かってベルトが寄りを始める。そして再び、時間T4後に手前側の端面検知センサ38により中間転写ベルト12の端面の検知が行われる。
【0026】
これら、手前側滞在時間T1、奥側滞在時間T2、手前側から奥側への移動時間T3、奥側から手前側への移動時間T4は、画像形成装置本体100に備えられたバックアップRAM54に記憶される。また、これら中間転写ベルト12の寄り制御や画像形成動作等はコントローラ部51により制御プログラムに基づいて総括的に制御される。
【0027】
前述したように、このような中間転写ベルト12の寄り制御を行った場合、各画像形成ステーションPで形成されたトナー画像が、中間転写ベルト12を介して2次転写装置11まで搬送されてくるまでに、記録材との幅方向の位置がずれてしまう。そして、印刷物の左右余白の幅が異なってしまう。
【0028】
例えば、印刷物の左右の余白幅が2.5mmに設定された印刷物の画像形成を行う場合に、中間転写ベルト上に1次転写されたトナー像の位置に対して記録材の中心位置が右にZ[mm]ずれたとする。すると、右側の余白が2.5+Z[mm]、左側の余白が2.5−Z[mm]となり、出力された印刷物の左右の余白幅は2Z[mm]違うことになる。ずれ量Zに対して、左右余白の差異の感じ方を確認してみたところ、Zが100[μm]以下の場合は、左右余白幅の差をほとんど感じず、良好な印刷物と感じられたが、Zが300[μm]以上の場合は、左右余白幅に差を感じる場合が多かった。
【0029】
そこで、寄り制御による中間転写ベルト12の幅方向の変動量を考慮して、静電潜像と記録材とのうちの少なくとも何れかの幅方向の位置を制御するようにする。本実施形態では、記録材の幅方向の位置を調整するようにしている。即ち、端面検知センサ38、39の検知結果により、中間転写ベルト12の幅方向の変動量を予測する。ここで予測するのは、露光装置3による所定の潜像形成タイミングから、このタイミングで感光ドラム1に形成されたトナー像が中間転写ベルト12を介して2次転写位置T2で記録材Sに転写されるまでの、中間転写ベルト12の幅方向の変動量である。そして、所定の潜像形成タイミングで感光ドラム1に形成されたトナー像と記録材Sとの幅方向の位置を所定の位置に合わせるように、記録材Sの幅方向の位置を制御する。
【0030】
本実施形態では、所定の潜像形成タイミングは、複数の画像形成ステーションのうち、中間転写ベルトの走行方向の最上流に位置する画像形成ステーションPaで静電潜像が形成されるタイミングである。また、所定の位置とは、例えば、印刷物の左右の余白幅が、それぞれ所定の長さとなる位置、或いは、左右の余白幅が同じとなる位置、更には、左右の余白幅がそれぞれ0となる位置などである。また、記録材Sの幅方向の位置は、次述する調整機構70により調整される。
【0031】
[調整機構]
まず、2次転写装置11に搬送される記録材の幅方向の位置を調整する調整手段である調整機構70について、図4ないし図6を用いて説明する。図4に示す様に、記録材カセット13から2次転写装置11までの記録材搬送経路内には、記録材の幅方向の位置を調整する調整機構70を配置している。調整機構70は、位置規制板71、アクチュエータ72、レール74、バネ75を有する。位置規制板71は、記録材Sの搬送方向Bと平行に配置されている。また、アクチュエータ72は、例えばステッピングモータにより構成され、位置規制板71に接続されたロッド73を押し引きする。レール74は、搬送方向Bと交差(直交)する幅方向Cに沿って配置され、位置規制板71を案内するようにしている。バネ75は、位置規制板71をアクチュエータ72により押される方向と逆方向に付勢している。
【0032】
記録材カセット13から搬送されてきた記録材Sは、搬送経路内において、位置規制板71に突き当てるような負荷が搬送ローラ16から加えられる。位置規制板71の記録材接触面とは逆の面には、アクチュエータ72の作動軸に同軸に接続してあるロッド73を接続している。アクチュエータ72としてステッピングモータを使用する場合、位置規制板71の変動量はステッピングモータに対して出力される駆動パルス数により設定できる。また、位置規制板の下にはレール74が備えられ、位置規制板71は、アクチュエータ72の作動によりこのレールに沿って幅方向Cに移動する。更に、位置規制板にはバネ75が取り付けられ、ロッド73を押したり緩めたりすることより、位置規制板71を手前側や奥側に変動させることができる。したがって、記録材Sの幅方向の位置は、調整機構70により調整される。
【0033】
図5に示す様に、中間転写ベルト12の寄り位置の情報が手前側および奥側の端面検知センサ38、39から送られ、バックアップRAM54に複数回の履歴が記憶される。画像形成ジョブが始まり記録材の位置を変更する場合には、バックアップRAM54からデータが読み出され、コントローラ部51により位置規制板71の位置の変動量が決定され、アクチュエータ72のドライバ76に制御命令が送られる。そして、アクチュエータ72を動作させ、位置規制板71の幅方向Cに関する位置を変更する。
【0034】
なお、調整機構は、上述のような構成に限らず、例えば、図6に示すような構成を採用することもできる。図6に示す構成では、記録材カセット13内に記録材位置規制板131およびアクチュエータ132を備えている。この構成の場合、上述の端面検知センサ38、39の検知結果に基づいてアクチュエータ132を駆動し、記録材位置規制板131を移動させることにより、記録材Sの搬送方向Bに直交する幅方向Cの位置を調整する。
【0035】
但し、このように記録材カセット13内で位置調整を行っても、記録材搬送路において記録材搬送中に幅方向へのズレが生じる可能性があるので、2次転写位置T2に近い位置で記録材の位置調整を行うことが好ましい。また、複数の記録材カセットを備えている場合、それぞれのカセットに記録材位置制御手段が必要となるため、この場合にも上述の図4に示したように、記録材の搬送経路内に調整機構を設けることが好ましい。
【0036】
[制御の流れ]
次に、上述のように調整機構70により、トナー画像と記録材Sとの幅方向位置を合わせる制御の流れの1例について、図7を用いて説明する。まず、画像情報が送られてきて画像形成装置の動作が開始されると(S1)、最新のベルト寄り情報から現在の中間転写ベルト12の移動方向および位置が算出される(S2)。例えば、現在の状況が、直近で端面検知されたのが手前側の端面検知センサ38であり、この端面検知センサ38から離れて時間T5が経った状態の場合には、次のように算出できる。即ち、中間転写ベルト12が手前側から奥側に向かう速度V3は、例えば1mmの寄り幅(端面検知センサ38、39の間隔から中間転写ベルト12の幅を差し引いた値)に対して、移動時間T3(図3)かかっているので1/T3となる。このように移動速度V3=1/T3が求められれば、端面検知されてから時間T5後の位置が、手前側の端面検知センサ38からT5/T3mmであると算出することができる。
【0037】
本実施形態では、手前側、奥側の滞在時間T1およびT2や移動時間T3およびT4は最新のバックアップデータから複数回(例えば5回分)のデータ履歴を保存している。そして、複数回(5回分)のデータをさかのぼって平均した値を使用している。上記で説明した時間T1〜T4は、画像形成装置の使用状況により変化するものである。また、中間転写ベルト12の寄り方向反転時の滞在時間や移動速度は、中間転写ベルト12の内面と複数張架ローラなどとの摩擦係数の大きさや、張架ローラの外径の変化などに影響を受ける。例えば、飛散したトナーなどが中間転写ベルト12の内面や張架ローラの外周面に付着することにより、摩擦係数やローラの外径が変化する。
【0038】
特に、画像形成装置で多量の画像形成動作が行われると、中間転写ベルトの内面とそれに接触する部材(例えば1次転写ローラなど)との摩擦により削れ粉が発生し、中間転写ベルトや張架ローラに付着し、摩擦係数やローラ外径の変化を発生させる。また、エアフロー等により飛散したトナーなどが、中間転写ベルト内面に回りこむことによっても同様のことが発生する。よって、最新またはそれに準ずる情報から、滞在時間や移動速度を算出することが好ましい。
【0039】
次に、最上流の画像形成ステーションPaの感光ドラム1aに対して露光装置3aにより静電潜像の形成が行なわれるタイミングから、その静電潜像が現像されたトナー像が2次転写装置11の位置まで搬送されるタイミングまでの時間をT6とする。そして、時間T6の間に中間転写ベルト12がベルト走行方向に対して交差する幅方向に移動する変動量を、バックアップRAM54に記憶された情報T1、T2、T3、T4、即ち、端面検知センサ38、39の検知結果に基づいて予測する(S3)。
【0040】
S3で予測した中間転写ベルト12の変動量に基づき、記録材カセット13から2次転写位置T2に搬送されてくる記録材Sの幅方向の位置を調整機構70により調節する(S4)。そして、2次転写装置11により記録材Sに対して中間転写ベルト12上のトナー像が2次転写され、定着器9に向かって搬送される。次いで、次の画像形成ジョブが残っているか判断し、残っていれば次の画像形成動作を行ない、ジョブが終了と判断すれば本体動作を終了する(S5)。
【0041】
具体的には、本実施形態の画像形成装置において、画像形成動作が少ない中間転写ベルトユニット200では、手前側から奥側への移動時間T3および奥側から手前側への移動時間T4は5回平均で15sec程度であった。また、50000枚のA4サイズの普通紙に対して画像形成動作を行った中間転写ベルトユニット200では、T3およびT4の時間は10sec程度に短くなった。かつ、手前側から奥側への寄り速度V3と奥側から手前側への寄り速度V4の差が大きくなるような傾向が見られた。手前側滞在時間T1および奥側滞在時間T2は5回平均で2sec程度であった。また、寄り速度V3およびV4が早くなると、1枚の印刷物の中での画像傾き(余白傾き)が問題となるため、本実施例において寄り時間T3またはT4が4sec以下となった場合は、中間転写ベルトユニットの交換を指示するようにした。
【0042】
また、本実施形態におけるアクチュエータ72はステッピングモータであり、駆動パルスが1パルス当り7.5°回転し、360°回転でロッド73の変動量が0.7mm変動するものを使用した。つまり、1パルス=14.5μmの分解能で位置制御を行った。
【0043】
以上のような制御を画像形成動作ごとに行ったところ、出力されてくる印刷物1000枚の左右余白の幅を測定すると、余白中心2.5mmに対して2.5mm±100μmの範囲に入っていることが確認できた。これに対し、本実施形態の制御を行わない場合は、左右余白の差を感じる2.5mm±300μm以上の印刷物も出力され、2.5mm±500μmの範囲にしか入らなかった。
【0044】
このような本実施形態の場合、端面検知センサ38、39により中間転写ベルト12の幅方向の変動量を予測して、トナー像と記録材との位置を合わせるように、記録材の幅方向の位置を制御している。このため、トナー像と記録材との幅方向の位置ずれを低減できる。この結果、記録材に形成される画像の左右余白の幅が安定した高品質な印刷物を出力する画像形成装置を提供することができる。
【0045】
また、本実施形態では、手前側、奥側の滞在時間T1およびT2や移動時間T3およびT4は最新のバックアップデータから複数回(5回分)のデータをさかのぼって平均した値を使用している。このため、より高精度にトナー像と記録材との幅方向の位置ずれを低減できる。但し、最新の1回のデータのみを使用して、同様の予測を行っても良い。
【0046】
更に、位置合わせを行うトナー像が形成される所定の潜像形成タイミングを、最上流の画像形成ステーションPaで静電潜像が形成されるタイミングとしている。最上流の画像形成ステーションPaは、2次転写装置11から最も離れているため、位置ずれも最も大きくなり易い。したがって、本実施形態のように、最上流の画像形成ステーションPaで静電潜像が形成されるタイミングを基準として制御すれば、トナー像と記録材との幅方向の位置ずれを効果的に低減できる。
【0047】
但し、この所定の潜像形成タイミングは、例えば、各画像形成ステーションで潜像が形成される平均のタイミングとしても良い。即ち、最上流の画像形成ステーションPaで静電潜像が形成されてから、最下流の画像形成ステーションPdで静電潜像が形成されるまでの時間の半分となるタイミングを所定の潜像形成タイミングとする。なお、このタイミングで形成されるトナー像は実際にない場合があるが、この場合、このタイミングでトナー像が形成されると仮定して、制御を行う。
【0048】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図1ないし図3を参照しつつ、図8及び図9を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、中間転写ベルト12の幅方向の変動量を予測して、記録材Sの幅方向の位置を制御していたのに対し、本実施形態では、記録材Sの位置は変更せず、露光装置3による主走査方向(幅方向)の静電潜像の書き出しタイミングを制御している。即ち、静電潜像の幅方向の位置を制御している。本体構成については第1の実施形態と同一なので、同一の構成部分についての説明は省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0049】
図8は、露光装置3による主走査方向の静電潜像の書き込みタイミングを制御する制御回路のブロック図である。中間転写ベルト12の揺動情報が手前側および奥側の端面検知センサ38、39から送られ、バックアップRAM54に複数回の履歴が記憶される。次いで、画像形成ジョブが始まると露光装置3による静電潜像の書き込みに先立って、バックアップRAM54からデータが読み出される。このデータから、コントローラ部51により露光装置3の光源装置20による主走査方向の静電潜像の書き込みタイミングが決定され、書き込み制御部24に制御命令が送られる。そして、光源装置20を動作させ感光ドラム1に対して露光が行なわれる。
【0050】
なお、静電潜像の書き込みタイミングをずらすステーションは、最上流の画像形成ステーションだけでも良いし、全ての画像形成ステーションでも良い。また、各ステーションの書き込みタイミングは、位置合わせを行うトナー像が形成される所定の潜像形成タイミングとの関係で定める。例えば、所定の潜像形成タイミングを最上流の画像形成ステーションPaで静電潜像が形成されるタイミングとした場合、求めた中間転写ベルト12の幅方向の変動量に応じて、最上流の画像形成ステーションの静電潜像の書き込みタイミングをずらす。全ての画像形成ステーションで静電潜像の書き込みタイミングをずらす場合には、最上流の画像形成ステーションの静電潜像の書き込みタイミングを基準とした中間転写ベルト12の幅方向の移動量を算出して、行うようにしても良い。
【0051】
本実施形態における露光装置3による主走査方向の静電潜像の書き込みタイミングは、例えば、16分の1画素単位で変更することができ、1画素=42μmなので2.625μmの分解能で位置制御を行える。また、記録材Sの搬送経路には、第1の実施形態の位置規制板71(図4参照)の場所に突き当て板を配設し、記録材を突き当てるような負荷を搬送ローラ16から加えるようにしている。これにより、記録材の搬送方向に対して垂直方向の位置を安定させることができる。
【0052】
次に、上述のように静電潜像の書き込みタイミングをずらすことにより、トナー画像と記録材Sとの幅方向位置を合わせる制御の流れの1例について、図9を用いて説明する。まず、画像情報が送られてくると画像形成装置の動作が開始され、最新のベルト揺動情報から現在のベルト移動方向および位置が算出される(S11)。
【0053】
次に、最上流の画像形成ステーションPaの感光ドラム1aに対して露光装置3aにより静電潜像の形成が行なわれるタイミングから、その静電潜像が現像されたトナー像が2次転写装置11の位置まで搬送されるタイミングまでの時間をT6とする。そして、時間T6の間に中間転写ベルト12がベルト走行方向に対して交差する幅方向に移動する変動量を、バックアップRAM54に記憶された情報T1、T2、T3、T4、即ち端面検知センサ38、39の検知結果に基づいて予測する(S12)。
【0054】
次に、S12で予測した中間転写ベルト12の変動量に基づき、光源装置20による主走査方向の静電潜像書き込みタイミングを決定する(S13)。そして、最上流の画像形成ステーションPaから順次画像形成動作がスタートされ、記録材に対して画像形成が行なわれる(S14)。次いで、次の画像形成ジョブが残っているか判断し、残っていれば次の画像形成動作を行ない、ジョブが終了と判断すれば本体動作を終了する(S15)。
【0055】
以上のような制御を画像形成動作ごとに行ったところ、第1の実施形態と同様に、出力されてくる印刷物1000枚の左右余白の幅を測定すると、余白中心2.5mmに対して2.5mm±100μmの範囲に入っていることが確認できた。これに対し、本実施形態の制御を行わない場合は、2.5mm±500μmの範囲にしか入らなかった。
【0056】
本実施形態の場合、露光装置3による静電潜像の書き込みタイミングをずらせば良いので、第1の実施形態の用のような調整機構70が不要となり、コストの低減を図れる。なお、調整機構70を設けて、静電潜像の書き込みタイミングと記録材の幅方向の位置の両方を制御するようにしても良い。また、露光装置として、主走査方向に複数の光源(例えばLED)を並べたものも使用しても良い。この場合、光源の点灯位置を主走査方向にずらすことにより、静電潜像の幅方向の位置をずらせる。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0057】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図10を用いて説明する。上述の第1、第2の実施形態では、記録材Sの片面に画像形成を行う片面印刷における補正制御を行う構成であるのに対し、本実施形態で、記録材両面への画像形成を行う両面印刷の補正制御が可能である。両面の紙搬送経路以外の本体構成については第1の実施形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0058】
記録材Sの片面に対して画像形成を行う場合は、第1の実施形態で説明したとおりの動作を行うが、本実施形態では、記録材Sの両面に画像形成を行う両面印刷時の動作について説明する。両面印刷を行う場合、記録材Sの1面目の画像形成動作は第1の実施形態と同様の動作が行われ、1面目のトナー像が定着器9により記録材に定着される。定着器9を通過した記録材Sは、定着器9より記録材搬送方向下流に備えられた搬送路切り換え手段82により両面搬送路81に送られ、記録材Sを反転させた後に再び2次転写装置11まで搬送されて2面目の画像形成が行われる。
【0059】
2面目における記録材位置制御は、第1の実施形態と同様に行う。即ち、2面目の画像情報に対する静電潜像の書き込みが画像形成ステーションPaの感光ドラム1aに対して行なわれるタイミングから、その静電潜像が現像されたトナー像が2次転写装置11の位置まで搬送されるタイミングまでの時間をT6´とする。そして、時間T6´の間に中間転写ベルトの走行方向に対して交差する幅方向に移動する変動量を、第1の実施形態と同様に端面検知センサ38、39の検知結果に基づいて予測する。本実施形態の場合、この予測に基づいて位置規制板71の位置を制御して、記録材Sの幅方向の位置をトナー像の位置に合わせるようにしている。
【0060】
以上のような制御を行ったところ、記録材両面に対して画像形成を行う両面印刷の場合にも、1面目画像および2面目画像の左右余白の幅が安定し、1面目と2面目の左右の画像位置が合わせることができた。なお、本実施形態では、2次転写位置T2に搬送される記録材の位置を制御しているが、第2の実施形態に示したような露光装置による主走査方向の静電潜像の書き込みタイミングを制御しても同様の効果が得られる。
【0061】
また、記録材に対して両面印刷を行う場合、1面目の画像形成が終了して定着器を通過した記録材は、記録材の種類によっては記録材内に含有される水分量が減少するため、記録材の大きさが変化することがある。そこで、両面搬送路81内に紙サイズセンサ83を配設し、記録材Sの搬送方向に対して交差する方向の幅を検知するようにしている。そして、紙サイズに変化がある場合には、露光装置3a〜3dにより感光ドラム1a〜1d上に形成される静電潜像の主走査方向の倍率を、紙サイズの変化に合わせて変更するようにしている。これにより、1面目と2面目の左右の画像位置をより高精度に合わせることができる。
【0062】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、複数の画像形成ステーションを中間転写ベルトに沿って並べて配置したタンデム型の構造について説明した。但し、本発明は、この構造に限らず他の構造にも適用可能である。
【0063】
例えば、ロータに複数の現像器(現像手段)を配置し、ロータを回転させて感光ドラムに対向する現像器を順次ずらすことにより、各色の現像を行う、所謂1ドラム型の構成にも適用可能である。この構成の場合も、上述の各実施形態と同様に、位置合わせを行うトナー像が形成される所定の潜像形成タイミングを、最初の現像器により現像される静電潜像が形成されるタイミングとすることができる。また、この所定の潜像形成タイミングを、例えば、各現像器により現像される静電潜像が形成される平均のタイミングとしても良い。但し、より高精度に制御を行うためには、所定の潜像形成タイミングを各現像器により現像される静電潜像毎とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1(1a、1b、1c、1d)・・・感光ドラム(像担持体)、3(3a、3b、3c、3d)・・・露光装置(静電潜像形成手段)、4(4a、4b、4c、4d)・・・現像装置(現像手段)、12・・・中間転写ベルト、35・・・駆動モータ(駆動手段)、38、39・・・端面検知センサ(位置検知手段)、51・・・コントローラ部(制御手段)、70・・・調整機構(調整手段)、P(Pa、Pb、Pc、Pd)・・・画像形成ステーション(画像形成部)、S・・・記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像してトナー像とする現像手段と、前記像担持体に形成されたトナー像が転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを走行駆動する駆動手段と、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写する転写手段と、を備え、前記中間転写ベルトの走行方向に交差する幅方向の寄り位置を制御する画像形成装置において、
前記中間転写ベルトの前記幅方向の位置を検知する位置検知手段と、
前記位置検知手段の検知結果により、前記静電潜像形成手段による所定の潜像形成タイミングから、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像が前記中間転写ベルトを介して前記転写手段で記録材に転写されるまでの、前記中間転写ベルトの前記幅方向の変動量を予測して、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像と記録材との前記幅方向の位置を所定の位置に合わせるように、静電潜像と記録材とのうちの少なくとも何れかの前記幅方向の位置を制御する制御手段と、を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトの走行方向に並べて配置された複数の画像形成部を有し、
前記複数の画像形成部は、それぞれ前記像担持体と、前記静電潜像形成手段と、前記現像手段とを有し、それぞれの前記像担持体に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに順次重ねて転写するものであり、
前記所定の潜像形成タイミングは、前記複数の画像形成部のうち、前記中間転写ベルトの走行方向の最上流に位置する画像形成部で静電潜像が形成されるタイミングである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写手段に搬送される記録材の前記幅方向の位置を調整する調整手段を有し、
前記制御手段は、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像と記録材との前記幅方向の位置を前記所定の位置に合わせるように、前記調整手段を制御する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定の潜像形成タイミングで前記像担持体に形成されたトナー像と記録材との前記幅方向の位置を前記所定の位置に合わせるように、前記静電潜像形成手段により形成する静電潜像の前記幅方向の位置を制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88643(P2013−88643A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229602(P2011−229602)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】