説明

画像形成装置

【課題】カラーセンサー方式によりプリンタγ補正を行う画像形成装置において、定着器の交換時に必要であったγ補正用データの生成を不要とし、定着器交換に係る作業及び時間を大幅に低減する。
【解決手段】画像形成装置10によれば、制御部1aは、用紙に印刷されたγ補正用チャートをカラーセンサー22で読み取ることによりγ補正用データを生成し、当該生成されたγ補正用データをγ補正用チャートの印刷に用いた用紙の種類及び定着器の種類に対応付けて不揮発メモリー1bに記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における画像処理では、画像形成装置の装置特性による影響を低減し、入力画像に忠実な色の画像を用紙に印刷するため、濃度補正が行われている。濃度補正には、例えばプリンタγ補正がある。「プリンタγ補正」とは、画像形成装置に入力された入力画像の濃度や輝度などの値(入力値)と、入力画像に基づいて実際に用紙に印刷された画像の濃度(出力値)との相対関係を調整することをいう。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像形成装置の定着器より下流にカラーセンサーを設け、用紙に印刷されたγ補正用チャートをこのカラーセンサーにより読み取ることにより得られた測色値と、γ補正用チャートの本来の濃度値とを比較して、入力された画像データにプリンタγ補正を施す技術が記載されている。このカラーセンサーを用いた方式では、用紙の特性及び転写プロセスから定着プロセスまでのプロセス条件の特性を補正することができる。
【0004】
特許文献1に記載のように、カラーセンサーを用いてプリンタγ補正を行う画像形成装置においては、一般的に、カラーセンサーの電圧値を濃度値に変換するための濃度変換テーブル又は関数や、γ補正用チャートをカラーセンサーにより読み取ることにより得られた電圧値を濃度変換テーブル又は関数を用いて濃度変換した濃度値がγ補正用データとして記憶されており、この記憶されたγ補正用データを用いてプリンタγ補正が行われる。
【0005】
また、特許文献2には、画像形成プロセスで用いられるトナーや感光体等を一体化したプロセスカートリッジを各々に適応した条件で使用するために、各プロセスカートリッジに当該プロセスカートリッジの属性情報等の管理情報をプロセスカートリッジに記憶しておき、装着されたプロセスカートリッジの管理情報に基づいて画像形成プロセスを制御することで、出力画像の最適化を可能する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−103535号公報
【特許文献2】特開2006−250969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、画像形成装置においては、複数種類の定着器を着脱可能に構成されたものが知られている。上述したカラーセンサー方式のプリンタγ補正に用いられるγ補正用データは定着の特性を含んで生成されたものである。そのため、複数種類の定着器を着脱可能に構成された画像形成装置において、上述したカラーセンサー方式のプリンタγ補正を行って出力画像を最適化する構成とした場合は、定着器を交換する度に、記憶していたγ補正用データを全消去して再度作り直す必要があり、定着器交換に係る作業が非常に煩わしく、膨大時間がかかるという問題があった。
特許文献2に記載の技術を適用して各定着器にその定着器の属性情報等を記憶しても、上記問題を解決することはできない。
【0008】
本発明の課題は、カラーセンサー方式によりプリンタγ補正を行う画像形成装置において、定着器の交換時に必要であったγ補正用データの生成を不要とし、定着器交換に係る作業及び時間を大幅に低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
着脱可能な定着器を含む印刷手段を備える画像形成装置であって、
前記画像形成装置に装着されている定着器の種類を識別する定着器識別手段と、
前記印刷手段により用紙に印刷された画像を読み取るセンサーと、
前記印刷手段により用紙に印刷されたγ補正用チャートを前記センサーで読み取ることによりγ補正用データを生成し、当該生成されたγ補正用データを前記γ補正用チャートの印刷に用いた用紙の種類及び定着器の種類に対応付けて記憶媒体に記憶するγ補正用データ生成手段と、
前記記憶媒体に記憶されている、印刷に使用する用紙の種類及び定着器の種類に対応するγ補正用データに基づいて、印刷対象の画像データにプリンタγ補正を行うプリンタγ補正手段と、
を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記定着器識別手段により前記画像形成装置に装着されている定着器の種類が識別されると、前記識別された定着器の種類に対応するγ補正用データを前記記憶媒体から読み出し、当該読み出されたγ補正用データを用いて、前記印刷手段における入力画像と出力画像の関係を示すγデータを生成するγデータ生成手段を備え、
前記プリンタγ補正手段は、印刷に使用する用紙の種類及び定着器の種類に対応するγ補正用データに基づいて前記γデータ生成手段により生成されたγデータを用いて、印刷対象の画像データにプリンタγ補正を行う。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
表示手段と、
前記記憶手段に記憶されているγ補正用データの一覧を前記表示手段に表示させる表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、前記画像形成装置に現在装着されている定着器とは異なる種類の定着器に対応するγ補正用データを前記一覧に表示しないか又は網掛け表示するよう制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラーセンサー方式によりプリンタγ補正を行う画像形成装置において、定着器の交換時に必要であったγ補正用データの生成を不要とし、定着器交換に係る作業及び時間を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の概略構成図である。
【図2】画像形成装置の機能ブロック図である。
【図3】不揮発メモリーのデータ格納構造を示す図である。
【図4】カラーセンサーの概略構成図である。
【図5】γ補正用チャートのサイズ仕様である。
【図6】γ補正用チャートの一例である。
【図7】γ補正用データのデータ構造例を示す図である。
【図8】用紙カテゴリーのデータ構造例を示す図である。
【図9】個別設定画面の一例を示す図である。
【図10】用紙カテゴリーのリスト画面の一例を示す図である。
【図11】図2の制御部により実行されるリスト表示制御処理を示すフローチャートである。
【図12】トレイ用紙プロファイルのデータ構造を示す図である。
【図13】出力紙濃度調整設定画面の一例を示す図である。
【図14】出力紙濃度調整の設定情報の一例を示す図である。
【図15a】図2の制御部により実行されるプリンタγ自動生成処理を示すフローチャートである。
【図15b】図2の制御部により実行されるプリンタγ自動生成処理を示すフローチャートである。
【図16】出力紙濃度調整画面の一例を示す図である。
【図17】図2の制御部により実行されるプリンタγ生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態における画像形成装置の構成及び動作について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態ではカラーの画像形成装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限らず、例えばモノクロの画像形成装置によっても本発明を実現することは可能である。
【0015】
[画像形成装置10の構成]
図1に、画像形成装置10の概略構成を示す。図2に、画像形成装置10の機能ブロック図を示す。
画像形成装置10は、電子写真方式のデジタル印刷機であって、本体部11及びリレーユニット(以下、「RU」)21を備えて構成される。
【0016】
本体部11は、制御基板1、操作表示部2、スキャナー部3、プリント部4、プリンタコントローラー5等を備えて構成される。各部は図示しない電源部により電源が供給される。
【0017】
制御基板1は、制御部1a、不揮発メモリー1b、読み取り処理部1c、圧縮IC1d、DRAM制御IC1e、画像メモリー1f、伸長IC1g、書き込み処理部1h等を備えて構成される。
【0018】
制御部1aは、CPU、RAM、ROM等から構成され、ROM又は不揮発メモリー1bに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開された各種プログラムとの協働により各種処理を実行して画像形成装置10の各部を制御する。例えば、制御部1aは、プログラムとの協働により、画像形成装置10の各部を制御することにより、γ補正用データ生成手段、プリンタγ補正手段、γデータ生成手段、表示制御手段として機能する。
【0019】
不揮発メモリー1bは、書き換え可能な不揮発性のメモリーにより構成された記憶媒体であり、各種プログラムや各種データを記憶する。
本実施形態において、不揮発メモリー1bには、図3に示すように、後述する出力紙濃度調整のためのデータ格納領域として、設定情報格納領域A11、γ補正用データ格納領域A12、用紙カテゴリー格納領域A13、トレイ用紙プロファイル格納領域A14等が設けられている。
また、不揮発メモリー1bは、後述するγ補正用チャートの画像データ、サイズ仕様、デフォルト補正値、IDCセンサーによるγ補正用データ等を記憶している。また、不揮発メモリー1bには、プリント部4におけるトータルの印刷枚数をカウント値を格納するためのトータルカウンターが設けられている。
【0020】
読み取り処理部1cは、CCD3aから出力されるアナログ画像信号を入力し、入力されたアナログ画像信号にアナログ処理、シェーディング処理、A/D変換処理等を行いデジタル画像データを生成する。読み取り処理部1cは、生成された画像データを圧縮IC1dに出力する。
【0021】
圧縮IC1dは、読み取り処理部1cから出力される画像データを入力し、入力された画像データに圧縮処理を行った後、画像データをDRAM制御IC1eに出力する。
【0022】
DRAM制御IC1eは、読み取り処理部1cにより読み取られた画像データを圧縮IC1dにより圧縮し、圧縮画像データを圧縮メモリー11fにより記憶する。
また、DRAM制御IC1eは、圧縮メモリー11fから圧縮画像データを入力して伸長IC1gにより伸長し、伸長された非圧縮画像データをページメモリー12fにより記憶する。更に、DRAM制御IC1eは、ページメモリー12fに記憶されている非圧縮画像データを入力し、入力された非圧縮画像データを書き込み処理部1hに出力する。
【0023】
画像メモリー1fは、DRAMにより構成され、圧縮メモリー11f及びページメモリー12fを備える。圧縮メモリー11fは、圧縮画像データを記憶する。また、ページメモリー12fは、印刷前に印刷対象の非圧縮画像データを一時的に記憶する。
【0024】
伸長IC1gは、入力される圧縮画像データに伸長処理を行う。
【0025】
書き込み処理部1hは、DRAM制御IC1eから入力された印刷対象の画像データに基づいて印刷用データを生成し、プリント部4に出力する。
【0026】
操作表示部2は、LCD(Liquid Crystal Display)2a及び操作表示制御部2b等を備えて構成される。
LCD2aは、LCD2aを覆うタッチパネルを備える。操作表示制御部2bは、制御部1aから出力される表示信号を入力し、入力される表示信号に基づいて各種設定画面等をLCD2aに表示する。また、操作表示制御部2bは、図示しない操作キー群又はタッチパネルの押下により生成される操作信号を入力し、入力される操作信号を制御部1aに出力する。
【0027】
スキャナー部3は、CCD3a及びCCD3aを駆動制御するスキャナー制御部3bを備えて構成される。スキャナー部3は、図示しない原稿台に載置された原稿面を光源により露光走査して原稿面からの反射光を受光し、受光された反射光をCCD3aにより光電変換してアナログ画像信号を生成する。スキャナー部3は、生成されたアナログ画像信号を読み取り処理部1cに出力する。
【0028】
プリント部4は、プリンタエンジン4a及びプリンタエンジン4aの画像形成動作を制御するプリンタ制御部4bを備えて構成される印刷手段である。
プリンタエンジン4aは、図1に示す給紙部12、感光体ドラム13〜16、中間転写ベルト17、転写ローラー18、定着器19等を備えて構成され、用紙にトナー像を形成し、形成されたトナー像を定着させる一連の画像形成処理を行う。また、IDCセンサー17aが中間転写ベルト17の回転方向下流側に設置されている。
【0029】
給紙部12は、複数の給紙トレイを備えて構成され、用紙種類ごとに用紙を格納し、格納されている用紙を所定の搬送路により搬送して用紙を給紙する。
感光体ドラム13〜16は、感光体ドラム上にYMCK各色のトナー像をそれぞれ形成して担持し、これを中間転写ベルト17上に転写する(一次転写)。
中間転写ベルト17は、転写されて形成されたトナー像を担持しながら回転する。
転写ローラー18は、中間転写ベルト17上に担持されているYMCK各色のトナー像を用紙に転写する(二次転写)。
【0030】
定着器19は、用紙に転写されて形成されたYMCK各色のトナー像を加熱又は加圧し、トナー像を用紙に定着させる。トナー像が定着された用紙は、その後、RU2に搬送される。
ここで、定着器19は、画像形成装置10の本体部11に着脱可能に構成されている。定着器19としては、通常定着器191と、特殊定着器192の2種類があり、何れか一方が本体部11に装着される。ここで、本実施の形態において、通常定着器191は、封筒とは異なる用紙への印刷時に使用するための定着器である。特殊定着器192は、封筒への印刷時に使用するための専用の封筒定着器である。特殊定着器192は、例えば、定着ローラーの厚みを薄くしてシワが起こりにくくする等、封筒に特化した構成となっているため、封筒以外の用紙の定着に用いるとダメージが大きく、コストも高くなる。そのため、特殊定着器192は封筒用の印刷に、通常定着器191は封筒以外の用紙の定着に専用に用いられる。
【0031】
本体部11における定着器19の装着部には、装着された定着器19の種類を識別する定着器識別手段としてのポート19aが設けられている。例えば、通常定着器191が装着されるとポート19aを介してプリンタ制御部4bに定着器識別信号としてHIGH信号が出力される。特殊定着器192が装着されるとポート19aを介してプリンタ制御部4bに定着器識別信号としてLOW信号が出力される。プリンタ制御部4bは、この定着器識別信号に基づいて、画像形成装置10に装着されている定着器を認識することが可能となっている。
【0032】
また、中間転写ベルト17の回転方向下流側には、IDC(Image Density Control)
センサー17aが設置されている。IDCセンサー17aは、中間転写ベルト17に形成されたγ補正用チャートを読み取って得られた電圧値を制御部1aに出力する。
【0033】
プリンタコントローラー5は、コントローラー制御CPU5a、LANIF5b、USBポート5c、DRAM制御IC5d、画像メモリー5eを備えて構成される。
【0034】
コントローラー制御CPU5aは、プリンタコントローラー5の各部の動作を統括的に制御する。
LANIF5bは、NICやモデム等のLANと接続するための通信インターフェイスであり、外部PCから送信された画像データをLANを介して受信する。また、LANIF5bは、受信された画像データをDRAM制御IC5dに出力する。
【0035】
USBポート5cは、USBメモリーによって記憶されている各種データを入力し、入力された各種データをコントローラー制御CPU5aに出力する。
【0036】
DRAM制御IC5dは、画像データを画像メモリー5eに出力し、画像メモリー5eから画像データを入力する。また、DRAM制御IC5dは、制御基板1のDRAM制御IC1eとPCIバスで接続され、画像データ又は各種データをDRAM制御IC1eに出力する。
【0037】
画像メモリー5eは、DRAMにより構成され、画像データを一時的に記憶する。
【0038】
RU21は、RU制御部21a及びカラーセンサー22等を備えて構成される。RU21は他にも、本体部11から搬送されてくる用紙の搬送スピードと同期をとる機能を備える。更に、RU21はパンチ処理、折り処理、糊塗布処理、断裁処理等の各処理を行い得る機能、いわゆるフィニッシャー機能を備えるとしてもよい。
RU制御部21aは、CPU、RAM、ROM等から構成され、ROMに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開された各種プログラムとの協働によりRU21各部の制御を行う。また、RU制御部21aは、プリンタ制御部4bを介して制御基板1の制御部1aとデータ通信可能に接続される。
【0039】
カラーセンサー22は、図4に示すように、LED光源221、受光素子222、レンズ223、レンズホルダ224等を備えて構成される反射型センサーであり、センサー上を通過する用紙に形成されたγ補正用チャート(図6参照)を読み取って得られた電圧値をRU制御部21aに出力する。
【0040】
[プリンタγ補正]
上述のように、画像形成装置10は、IDCセンサー17aとカラーセンサー22を備えており、IDCセンサー方式と、カラーセンサー方式の2種類の方法によりプリンタγ補正を行うことが可能である。
IDCセンサー方式は、プリント部4における転写特性を補正するための方式である。IDCセンサー方式では、中間転写ベルト17にIDCセンサー用のγ補正用チャートを形成し、これをIDCセンサー17aで測色してγ補正用データを生成し、このγ補正用データに基づいて、ジョブに基づく印刷時にプリンタγ補正を行う。画像形成装置10では、スクリーンに応じて5種類のγ補正用データを生成する。
カラーセンサー方式は、プリント部4における転写から定着の特性を補正するための方式である。カラーセンサー方式では、使用する用紙固有の特性も補正対象となる。カラーセンサー方式では、プリント部4においてγ補正用チャート(図6参照)を用紙に形成してRU21のカラーセンサー22で測色してγ補正用データを生成し、このγ補正用データに基づいて画像形成時にプリンタγ補正を行う。画像形成装置10では、定着器種類、スクリーン、用紙種類(ここでは、普通紙、上質紙、塗工紙の3種)の組合せに応じて15種類のγ補正用データを生成する。このカラーセンサー22を用いてγ補正用データを生成することを出力紙濃度調整と呼ぶ。以下、出力紙濃度調整について詳細に説明する。
【0041】
図5に、出力紙濃度調整で用いられるγ補正用チャートのサイズ仕様を示す。
γ補正用チャートのサイズ仕様の設定については、予め不揮発メモリー1bに記憶されているものとする。γ補正用チャートは複数のγ補正用パッチにより構成され、γ補正用パッチは複数枚の用紙に渡って形成される。なお、γ補正用パッチのサイズはカラーセンサー22の性能等によって定まる。一般に、用紙サイズが大きいほどγ補正用チャートに用いられる用紙枚数は少なくて済み、用紙サイズが小さいほど多くの用紙が必要となる。ここでは、大サイズ、中サイズ、小サイズの合計3パターンの用紙サイズに対し、γ補正用チャートに必要な用紙枚数が対応付けられた設定となっている。例えば、副走査方向(用紙搬送方向)の長さが297.0mmの用紙(A4用紙)にγ補正用チャートを形成する場合、「中サイズ」であるから、「γ補正用パッチ数」は32個、「用紙枚数」は4枚である。
【0042】
図6に、出力紙濃度調整で用いられるγ補正用チャートの一例を示す。
図6に示すγ補正用チャートは、A4用紙に形成されたγ補正用チャートである。YMCK各色のγ補正用パッチがA4−1〜A4−4の合計4枚に渡って形成される。A4用紙1枚につきγ補正用パッチは8個形成され、A4用紙4枚で合計32個形成される。YMCK各色のγ補正用パッチの総数は、32個×4色=128個である。γ補正用チャートA4−1〜A4−4に形成されるγ補正用パッチの階調値は、同図に示すように、階調255を最大としてA4−1〜A4−4に満遍なく散らされる。濃度を満遍なく散らすことにより、色の再現性を確保し、チャート依存性の低減又はノイズの低減を図ることができる。
【0043】
図7に、本実施形態において出力紙濃度調整で生成されるγ補正用データのデータ構造の一例を示す。γ補正用データは、γデータ(プリンタエンジン4aにおける入力画像と出力画像の関係を示すγ補正テーブル又は関数)の生成に用いられる、γ補正用チャートをカラーセンサー22で読み取った測定値(濃度値)を含むデータである。図7に示すように、γ補正用データは、「登録状態」、「定着器種類」、「用紙カテゴリー番号」、「用紙種類」、「スクリーン」、「カウンター」、「更新日」、「センサー測定値」、「過去のセンサー測定値」等の項目により構成されている。
【0044】
「登録状態」には、未登録、登録、再調整モードの何れかの登録状態が格納される。未登録は、センサー測定値が登録されていないことを示す。登録は、センサー測定値が登録されていることを示す。再調整モードは、画像安定化制御が行われたためセンサー測定値の再生成が必要であることを示す。
「定着器種類」には、「センサー測定値」を取得するためのγ補正用チャートの印刷に用いた定着器の種類を示す情報(通常定着器:0、特殊定着器:1)が格納される。ここで、定着器の種類とは、使用目的や用途が同じ定着器を分類したまとまりをいう。
「用紙カテゴリー番号」には、カラーセンサー22により出力された電圧値を濃度値に変換する際に使用された用紙カテゴリー(カラーセンサー22のセンサー補正データ)の登録番号が格納される。用紙カテゴリーについては詳細を後述する。
「用紙種類」には、「センサー測定値」を取得するためのγ補正用チャートの印刷に用いた用紙の種類を示す情報が格納される。
「スクリーン」には、「センサー測定値」を取得するためのγ補正用チャートの印刷に用いたスクリーンの種類を示す情報が格納される。
「カウンター」には、センサー測定値が登録された時点での画像形成装置10におけるトータルカウンター(印刷枚数)を示す情報が格納される。
「更新日」には、当該γ補正用データが更新された日付が格納される。
「センサー測定値」には、出力紙濃度調整においてカラーセンサー22によりγ補正用チャートを測色して得られた電圧値を濃度値に変換した値が格納される。「過去のセンサー測定値」は、更新前のセンサー測定値が格納される。このセンサー測定値を用いてプリンタγ補正に用いられるγデータが生成される。
このγ補正用データは、不揮発メモリー1bのγ補正用データ格納領域A12に記憶される。
【0045】
ここで、用紙カテゴリーについて説明する。
出力紙濃度調整は、用紙に形成されたγ補正用チャートをカラーセンサー22で読み取ることにより行う。用紙種類に応じてカラーセンサー22の反射率は異なる。そのため、安定した画質の画像を得るためには、例えば、用紙毎に、カラーセンサー22の交換や位置ずれ等のセンサー固有の変化等によって変化したカラーセンサー22の読み取り特性を補正する必要がある。そこで、センサー特性補正を行って、給紙部12から用紙を搬送し、用紙に形成されたγ補正用チャートをカラーセンサー22により読み取ることにより得られた電圧値と、測色機等によりγ補正用チャートを読み取って得られたXYZ三刺激値等の濃度値とを取得して、センサー補正データとして不揮発メモリー1bの用紙カテゴリー格納領域A13に記憶する。このセンサー補正データは用紙に依存するデータであるので「用紙カテゴリー」と呼ばれる。用紙カテゴリーに基づいてセンサーの電圧値を濃度値に変換するための濃度変換テーブル又は関数を生成し、この濃度変換テーブル又は関数を用いてγ補正用データを生成する。
【0046】
図8に、用紙カテゴリーのデータ構造の一例を示す。図8に示すように、用紙カテゴリーには、用紙に形成されたγ補正用チャートをカラーセンサー22により読み取ることにより得られた電圧値である「パッチ測色電圧値」と、測色機等によりγ補正用チャートを読み取って得られたXYZ三刺激値等の濃度値である「濃度値」、γ補正用チャートの出力時に装着されていた定着器の種類(通常定着器:0、特殊定着器:1)を示す「定着器の種類」を含む。用紙カテゴリー格納領域A13には、例えば、NO.1〜NO.1の10個の用紙カテゴリーを登録することができる。用紙カテゴリーに基づいてカラーセンサー22から出力される電圧値とXYZ三刺激値等の濃度値の関係を示す濃度変換テーブル又は関数を生成することで、カラーセンサー22の特性を補正することができる。
なお、不揮発メモリー1bには、デフォルトのセンサー補正データ(デフォルト補正値と呼ぶ)が記憶されており、プリンタγ補正を行う際には、デフォルト補正値を使用することも可能である。
【0047】
上記用紙カテゴリー及びデフォルト補正値は、各給紙トレイのトレイ用紙設定に関連付けられる(リンク付けされる)。出力紙濃度調整時には、出力紙濃度調整の対象用紙がセットされた給紙トレイのトレイ用紙設定に関連付けられた用紙カテゴリー又はデフォルト補正値を用いてγ補正用データが生成される。
【0048】
各給紙トレイのトレイ用紙設定への用紙カテゴリー又はデフォルト補正値の関連付けは、例えば、図9に示す各トレイの個別設定画面G1から行うことができる。具体的には、操作表示部2のLCD2aに、所望のトレイの個別設定画面G1を表示して「出力紙濃度調整」ボタンを押下すると、画面右領域に「デフォルト補正値」ボタン、「用紙カテゴリー」ボタン、「OFF」ボタンが表示される。「デフォルト補正値」ボタンが押下されると、対象トレイに設定されている用紙にデフォルト補正値が関連付けられる。「用紙カテゴリー」ボタンが押下されると、図10に示すように、登録されている用紙カテゴリーのリスト画面G2が表示され、リストの中から選択された用紙カテゴリーが対象トレイに設定されている用紙に関連付けられる。「OFF」ボタンが押下されると、IDCセンサー方式でのγ補正が関連付けられる。
【0049】
用紙カテゴリーのリスト画面G2を表示する際には、制御部1aにより、図11に示すリスト表示制御処理が行われる。
まず、現在装着されている定着器19の種類と用紙カテゴリーの「定着器種類」が一致するか否かが判断される(ステップS1)。ここで、装着されている定着器の種類は電源投入時にポート10aからの定着器識別信号に基づきプリンタ制御部4bから取得され、制御部1aの内部メモリーに記憶されている。
現在装着されている定着器19の種類と用紙カテゴリーの「定着器種類」が一致していると判断されると(ステップS1;YES)、用紙カテゴリーの「名称」や「設定日」(更新日)等の情報が用紙カテゴリーのリスト画面G2に表示される(ステップS2)。現在装着されている定着器19の種類と用紙カテゴリーの「定着器種類」が一致しないと判断されると(ステップS1;NO)、その用紙カテゴリーの情報はリストに表示されないか、又は網掛け表示される(ステップS3)。用紙カテゴリー格納領域A13に格納されている全ての用紙カテゴリーについてのステップS1〜ステップS3の処理が終了すると(ステップ4;YES)、リスト表示制御処理は終了する。
例えば、図10において、登録番号3の用紙カテゴリーは現在装着されている定着器とは異なる定着器に対応しているため、選択不可能となる。このように、リスト表示制御処理により、現在装着されている定着器の種類に適合しない用紙カテゴリーは選択できなくなるため、現在装着されている定着器の種類に適合しない用紙カテゴリーが給紙トレイに関連付けられてしまうことを防止することができる。
【0050】
ここで、不揮発メモリー1bは、トレイ用紙プロファイルを格納するためのトレイ用紙プロファイル格納領域A14を有している。トレイ用紙プロファイルは、画像形成装置10の給紙部12の各給紙トレイにセットされた用紙についての設定情報である。図12に、トレイ用紙プロファイルのデータ構造の一例を示す。このトレイ用紙プロファイル格納領域A14に格納されている対象トレイのトレイ用紙プロファイルの「プリンタγ補正モード」が押下されたボタンに応じた内容に設定されることで、対象トレイに対して押下されたボタンに応じたプリンタγ補正の方式が関連付けられる。また、プリンタ補正モードが「2」に設定された場合は、「用紙カテゴリーデータベースへのリンク」にリストから選択された用紙カテゴリーの登録番号が設定されることにより、選択された用紙カテゴリーへのリンク付けが行われる。
【0051】
[出力紙濃度調整の設定]
出力紙濃度調整を行うには、予め出力紙濃度調整設定画面G3により出力紙濃度調整を有効にしておく必要がある。
図13に、出力紙濃度調整設定画面G3の一例を示す。出力紙濃度調整設定画面G3は、出力紙濃度調整についての各種設定を行うための画面である。この出力紙濃度調整設定画面G3は、操作表示部2からの所定の操作に応じて表示される。
図13に示すように、出力紙濃度調整設定画面G3は、「出力紙濃度調整の使用」、「調整強度」、「自動調整」、「調整間隔」、「画像安定化制御との連携」の各項目についての設定を行うための操作ボタンが設けられている。
【0052】
「出力紙濃度調整」項目は、出力紙濃度調整の使用する/しないを設定する項目である。「する」ボタンが押下されると、出力紙濃度調整が使用可能に設定される。「しない」ボタンが押下されると、出力紙濃度調整が使用不可に設定される。この場合、プリンタγ補正は、すべてIDCセンサー方式により行われる。デフォルトでは、「しない」に設定されている。「出力紙濃度調整の使用」項目が「しない」の場合は、以下の項目は網掛けとなり、設定が不可能となる。
【0053】
「自動調整」項目は、出力紙濃度調整を自動で実行するか否かを設定する項目である。「ON」ボタンが押下されると、「調整間隔」で設定された間隔で出力紙濃度調整が自動で実行される設定となる。「OFF」ボタンが押下されると、自動実行は行わない設定となるが、OFFでも手動調整は可能である。「自動調整」項目が「OFF」の場合は、以下の項目は網掛けとなり、設定が不可能となる。
「調整間隔」項目は、自動補正のタイミングを設定するための項目である。この項目で設定された枚数の印刷が行われると出力紙濃度調整が自動で実行される設定となる。「変更」ボタンを押下していくことで、100〜99999枚の間で調整間隔を設定することができる。
「調整強度」項目は、出力紙濃度調整によるγ補正の重み付けを設定するための項目である。調整強度は1〜10までの間で設定可能である。
「画像安定化制御との連携」の項目は、画像安定化制御が行われた場合に、これに応じて出力紙濃度調整を自動で実行するか否かを設定するための項目である。「する」ボタンが押下されると、画像安定化制御に連動した出力紙濃度調整が自動的に実行される設定となる。「しない」ボタンが押下されると、画像安定化制御に連動した出力紙濃度調整は行われない設定となる。
【0054】
出力紙濃度調整設定画面G3から設定された設定情報は、不揮発メモリー1bの設定情報格納領域A11に記憶される。図14に、設定情報格納領域A11に格納される設定情報のデータ構造を示す。
【0055】
[画像安定化制御と出力紙濃度調整]
ここで、画像安定化制御と出力紙濃度調整の関係について説明する。
画像安定化制御は、画像形成装置10内の温度、湿度等の環境要因の変化、あるいは現像剤交換に対して画質の安定供給を図るための制御である。画像安定化制御が入る主なタイミングは、以下のとおりである。
・アイドリング状態が6時間以上続いた場合
・前回の画像安定化制御実行から所定枚数を印刷した場合
・電源ON状態で前回の画像安定化制御実行から機内の温度と湿度が20パーセント以上変化した場合
・現像剤交換を実施した場合
【0056】
画像安定化制御では、例えば、最高濃度調整、感光体の表面電位均一補正、中間調濃度補正が実施される。最高濃度調整では、現像DCバイアスを調整する。表面電位均一補正では、グリット電圧を調整する。中間調濃度補正では、最大レーザパワーを調整する。これらのプロセス条件の調整はハード的な変化要因を電気的に補正をかけるものである。そのため、画像安定化制御後は、調整を行った後のプロセス条件に適合したγ補正用データを生成し直す必要がある。
【0057】
しかし、カラーセンサー方式のγ補正用データを生成する、即ち出力紙濃度調整を行うには、出力紙濃度調整用の用紙が給紙部12の何れかの給紙トレイにセットされている必要がある。しかし、画像安定化制御終了時に必ずしも対象の用紙が何れかの給紙トレイにセットされているとは限らないという問題がある。また、ジョブ中に画像安定化制御が行われた場合、ジョブの印刷物にγ補正用チャートが混入してしまい、乱丁や落丁の原因となったり、生産性の低下を引き起こしたりする可能性がある。そのため、カラーセンサー方式では、IDCセンサー方式のように画像安定化制御の終了時には出力紙濃度調整を行うことは好ましくない。
【0058】
そこで、画像形成装置10においては、画像安定化制御後、登録されているγ補正用データの登録状態を「再調整モード」とする。そして、ジョブによる印刷に伴って、以下に説明するプリンタγ自動生成処理を実行し、ジョブで印刷に使用する定着器種類、用紙種類及びスクリーンに対応するγ補正用データの登録状態が「再調整モード」である場合には当該γ補正用データを生成し直すことで、画像安定化制御後のプロセス条件に適合したγ補正用データを生成する。
【0059】
[プリンタγ自動生成処理]
図15a〜図15bに、制御基板1の制御部1aにより実行されるプリンタγ自動生成処理のフローチャートを示す。この処理は、ジョブによる印刷指示がなされた時に、ジョブの実行に伴って制御部1aと不揮発メモリー1bに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0060】
ジョブに基づいて印刷時に使用される給紙トレイ(印刷に使用する用紙がセットされている給紙トレイ)が決定されると(ステップS21)、不揮発メモリー1bの出力紙濃度調整の設定情報が参照され、自動で出力紙濃度調整を実行する設定となっているか否かが判断される(ステップS22)。自動で出力紙濃度調整を実行する設定となっていないと判断されると(ステップS22:NO)、本処理は終了し、ジョブによる印刷の給紙へ移行する。
【0061】
判断の結果、自動で出力紙濃度調整を実行する設定となっていると判断されると(ステップS22;YES)、印刷時に使用する給紙トレイのトレイ用紙プロファイルが参照され、セットされている用紙が出力紙濃度調整を行う設定となっているか否かが判断される(ステップS23)。具体的には、印刷時に使用する給紙トレイのトレイ用紙プロファイルのプリンタγ補正モードが「1:デフォルト補正値」又は「2:用紙カテゴリー」となっている場合、セットされている用紙が出力紙濃度調整を行う設定となっていると判断される。
【0062】
トレイ用紙プロファイルにおいて、出力紙濃度調整を行う設定となっていないと判断されると(ステップS23;NO)、本処理は終了し、ジョブによる印刷の給紙へ移行する。トレイ用紙プロファイルにおいて、出力紙濃度調整を行う設定となっていると判断されると(ステップS23;YES)、不揮発メモリー1bに記憶されている、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「登録」又は「再調整モード」であるか否かが判断される(ステップS24)。印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「登録」又は「再調整モード」であると判断されると(ステップS24;YES)、処理はステップS25に移行する。印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「登録」又は「再調整モード」ではない、即ち、「未登録」であると判断されると(ステップS24;NO)、処理はステップS29に移行する。
【0063】
ステップS25においては、出力紙濃度調整が必要な条件に合致しているか否かが判断される(ステップS25)。例えば、前回の出力紙濃度調整から調整間隔設定の枚数以上の印刷がなされている場合(トータルカウンターからγ補正用データのカウンターの値を引いた差分が調整間隔設定の枚数以上である場合)、出力紙濃度調整が必要な条件に合致していると判断される。
【0064】
出力紙濃度調整が必要な条件に合致していると判断されると(ステップS25;YES)、処理はステップS28に移行する。
出力紙濃度調整が必要な条件に合致してないと判断されると(ステップS25;NO)、不揮発メモリー1bの出力紙濃度調整の設定情報が参照され、画像安定化制御と連携して出力紙濃度調整を実行する設定となっているか否かが判断される(ステップS26)。画像安定化制御と連携して出力紙濃度調整を実行する設定となっていないと判断されると(ステップS26;NO)、本処理は終了し、ジョブによる印刷の給紙へ移行する。
【0065】
画像安定化制御と連携して出力紙濃度調整を実行する設定となっていると判断されると(ステップS26;YES)、不揮発メモリー1bに記憶されている、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「再調整モード」であるか否かが判断され、「再調整モード」ではないと判断されると(ステップS27;NO)、本処理は終了し、ジョブによる印刷の給紙へ移行する。印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「再調整モード」であると判断されると(ステップS27;YES)、処理はステップS28に移行する。
【0066】
ステップS28においては、不揮発メモリー1bに記憶されている、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの「定着器種類」が装着されている定着器の種類と一致しているか否かが判断される(ステップS28)。装着されている定着器の種類は、制御部1aの内部メモリーを参照して判断される。印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの「定着器種類」が装着されている定着器の種類と一致していないと判断されると(ステップS28;NO)、本処理は終了し、ジョブによる印刷の給紙へ移行する。
【0067】
一方、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの「定着器種類」が装着されている定着器の種類と一致していると判断されると(ステップS28;YES)、出力紙濃度調整が実行される(ステップS29)。出力紙濃度調整においては、まず、印刷に使用する給紙トレイから用紙が給紙され、プリント部4において当該用紙にγ補正用チャートが印刷される。次いで、用紙に印刷されたγ補正用チャートがカラーセンサー22により測色されて測色結果である電圧値が取得される。次いで、今回の印刷に使用する給紙トレイのトレイ用紙プロファイルにおいてリンクされている用紙カテゴリー(デフォルト補正値の場合はデフォルト補正値)を用いて電圧値が濃度値に変換され、得られた濃度値をセンサー測定値として、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データが更新される。
【0068】
出力紙濃度調整が終了すると、印刷に使用する用紙種類とスクリーンの組合せのγ補正用データの登録状態が「登録」に変更される(ステップS30)。また、当該γ補正用データの「定着器種類」に、内部メモリーに記憶されている現在装着されている定着器の種類(0;通常定着器、1:特殊定着器)がセットされる(ステップS31)。即ち、γ補正用データと、そのγ補正用データに対応する定着器の種類が対応付けて不揮発メモリー1bに記憶される。そして、更新されたγ補正用データを用いてγデータが生成され(ステップS32)、本処理は終了する。ステップS32では、例えば、γ補正用データの濃度値と補正用チャート自体の濃度値のデータが比較され、相違を打ち消すγデータが生成される。生成されたγデータは、生成に使用されたγ補正用データ(例えば、γ補正用データの識別番号)に対応付けて制御部1aの内部メモリーに記憶される。本処理の終了後、制御部1aの制御により、ジョブに基づく印刷のための給紙が開始されるとともに、印刷に使用する用紙の種類(及びスクリーンの種類)及び定着器の種類に対応するγ補正用データに基づいて生成されたγデータを用いて印刷対象の画像データにプリンタγ補正が施され、補正された画像データに基づいてプリント部4で用紙に印刷が行われる。
【0069】
なお、出力紙濃度調整の自動調整がOFFとなっている場合や、画像安定化制御との連携がOFFとなっている場合でも、手動調整により調整後のプロセス条件に合致したγ補正用データを再生成することができる。例えば、ユーザーは、操作表示部2を操作して図16に示す出力紙濃度調整画面G4をLCD2aに表示させ、この画面G4に表示されるγ補正用データから所望のγ補正用データを選択することで、出力紙濃度調整を行って、現在のプロセス条件に合致したγ補正用データを生成することができる。出力紙濃度調整画面G4にγ補正用データをリスト表示する際には、制御部1aは、上述のリスト表示制御処理と同様の制御を行い、「定着器種類」が現在装着されている定着器と一致しているγ補正用データをリストに表示し、「定着器種類」が現在装着されている定着器と一致しないγ補正用データについては、リストに表示しないか網掛け表示する。これにより、「定着器種類」が現在装着されている定着器と異なるγ補正用データに誤って出力紙濃度調整を行うことを防止することができる。
【0070】
[プリンタγ生成処理]
上記プリンタγ自動生成処理においては、印刷時に出力紙濃度調整が必要な条件に合致しているか、或いは、画像安定化制御が行われてプロセス条件に変更が生じた場合等に、自動で出力紙濃度調整を行って新たなγ補正用データを生成し、このγ補正用データに基づいてγデータを生成し、この生成されたγデータを用いて印刷対象の画像データにγ補正が施されたが、それ以外の印刷時には、電源投入時に生成されたγデータを用いてγ補正が施される。
【0071】
図17に、電源投入時に実行されるプリンタγ生成処理について説明する。プリンタγ生成処理は、制御部1aと不揮発メモリー1bに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0072】
まず、プリンタ制御部4bを介して、現在装着されている定着器19の種類の情報が取得される(ステップS41)。
次いで、取得された定着器種類(0:通常定着器、1:特殊定着器)が制御部1aの内部メモリーに記憶される(ステップS42)。
【0073】
次いで、内部メモリーに記憶された定着器種類に基づいて、現在装着されている定着器19が通常定着器191であるか否かが判断される(ステップS43)。現在装着されている定着器19が通常定着器191であると判断されると(ステップ43;YES)、不揮発メモリー1bのγ補正用データ格納領域A2に記憶されているγ補正用データのうち、「定着器種類」が「0:通常定着器」のγ補正用データを用いてγデータが生成されて内部メモリーに記憶され(ステップS44)、プリンタγ生成処理は終了する。生成されたγデータは、生成に使用されたγ補正用データ(例えば、γ補正用データの識別番号)に対応付けて制御部1aの内部メモリーに記憶される。
【0074】
一方、現在装着されている定着器19が通常定着器191ではない(特殊定着器192である)と判断されると(ステップ43;NO)、不揮発メモリー1bのγ補正用データ格納領域A2に記憶されているγ補正用データのうち、「定着器種類」が「1:特殊定着器」のγ補正用データを用いてγデータが生成されて内部メモリーに記憶され(ステップS45)、プリンタγ生成処理は終了する。生成されたγデータは、生成に使用されたγ補正用データ(例えば、γ補正用データの識別番号)に対応付けて制御部1aの内部メモリーに記憶される。
【0075】
ここで、上述のように、画像形成装置10は、通常定着器191と特殊定着器192の2種類の定着器19が装着可能であり、ユーザーはジョブの内容に応じて、必要に応じて一旦電源を落として定着器19を交換し、再度電源を投入して印刷を行っている。定着器19を交換した場合には、交換後の定着器の種類の特性に応じたγ補正用データを用いてγデータを生成する必要がある。従来は、定着器19の交換が行なわれる度に出力紙濃度調整を行って、装着された定着器19の特性に応じたγ補正用データを生成し、このγ補正用データを用いてγデータを生成していた。しかし、これは膨大な時間と工数を要するものであった。
そこで、画像形成装置10においては、上述のように、γ補正用データに、そのγ補正用データを生成したときに装着されていた定着器の種類を関連付けて不揮発メモリー1bに記憶する構成とし、電源投入時に上記プリンタγ生成処理を行って、不揮発メモリー1bに記憶されているγ補正用データの中から装着された定着器に対応するγ補正用データを特定し、これを用いてγデータを生成する。これにより、ユニット交換の度に出力紙濃度調整を行う必要がなくなり、ユニット交換に係る工数や煩雑さを大幅に解消することができる。
【0076】
以上説明したように、画像形成装置10によれば、制御部1aは、用紙に印刷されたγ補正用チャートをカラーセンサー22で読み取ることによりγ補正用データを生成し、当該生成されたγ補正用データを少なくともγ補正用チャートの印刷に用いた用紙の種類及び定着器の種類に対応付けて不揮発メモリー1bに記憶する。
従って、装着されている定着器の種類に対応するγ補正用データを不揮発メモリー1bから読み出してプリンタγ補正に使用することができるので、従来、定着器の交換時に必要であったγ補正用データの生成が不要となり、定着器交換に係る作業及び時間を大幅に低減することができる。
【0077】
また、制御部1aは、電源投入時に、ポート63aにより識別された定着器の種類に対応するγ補正用データを不揮発メモリー1bから読み出し、当該読み出されたγ補正用データを用いて、プリント部4における入力画像と出力画像の関係を示すγデータを生成して内部メモリーに記憶しておき、印刷時に、印刷に使用する用紙の種類及び定着器の種類に対応するγデータを用いて、印刷対象の画像データにプリンタγ補正を行う。従って、定着器が交換されても、装着された定着器の種類に応じたγ補正用データで印刷対象の画像データにプリンタγ補正を行うことができるので、定着器交換に係る作業及び時間を大幅に低減することができる。
なお、例えば、使用していた定着器が寿命に達して新品に交換する場合等、交換前と交換後の定着器の種類が同種である場合がある。この場合、定着プロセス特性に大きな変化はないため、交換前後で同じγ補正用データを用いてγデータの生成が行われる。
【0078】
また、制御部1aは、用紙カテゴリーやγ補正用データをリスト表示する際に、現在装着されている定着器とは異なる種類の定着器に対応する用紙カテゴリーやγ補正用データをリストに表示しないか又は網掛け表示するよう制御する。従って、ユーザーが装着されている定着器に対応していないγ補正用データを誤ってリストから選択することを防止することができる。
【0079】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る画像形成装置の好適な一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、上記実施の形態においては、最良の形態として、安定化制御後にγ補正用データの登録状態を「再調整モード」とし、印刷時に、印刷に使用する用紙種類及びスクリーンに対応するγ補正用データの登録状態が「再調整モード」となっている場合に出力紙濃度調整を行ってγ補正用データを生成することとして説明したが、安定化制御に続いて、装着されている定着器の種類に対応するγ補正用データを更新し、γデータを生成することとしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態においては、通常定着器と特殊定着器(封筒定着器)を交換する場合を例にとり説明したが、これに限定されない。例えば、用紙のサイズに応じて定着器を交換可能な画像形成装置においても本発明を適用することができる。
【0082】
また、上記実施の形態においては、γ補正用データを本体部11の不揮発メモリー1bに記憶することとして説明したが、通常定着器191、特殊定着器192のそれぞれに不揮発メモリー等の記憶媒体を備える構成とし、生成されたγ補正用データを、γ補正用データの生成時(即ち、γ補正用チャートの生成時)に使用された定着器19の記憶媒体に記憶させることとしてもよい。
【0083】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体として、ROM、不揮発性メモリー、ハードディスク等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0084】
その他、各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 画像形成装置
11 本体部
12 給紙部
13〜16 感光体ドラム
17 中間転写ベルト
18 転写ローラー
19 定着器
191 通常定着器
21 リレーユニット
22 カラーセンサー
1 制御基板
1a 制御部
1b 不揮発メモリー
1c 読み取り処理部
1d 圧縮IC
1e DRAM制御IC
1f 画像メモリー
1g 伸長IC
1h 書き込み処理部
2 操作表示部
2a LCD
2b 操作表示制御部
3 スキャナー部
3a CCD
3b スキャナー制御部
4 プリント部
4a プリンタエンジン
4b プリンタ制御部
5 プリンタコントローラー
5a コントローラー制御CPU
5b LAN IF
5c USBポート
5d DRAM制御IC
5e 画像メモリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能な定着器を含む印刷手段を備える画像形成装置であって、
前記画像形成装置に装着されている定着器の種類を識別する定着器識別手段と、
前記印刷手段により用紙に印刷された画像を読み取るセンサーと、
前記印刷手段により用紙に印刷されたγ補正用チャートを前記センサーで読み取ることによりγ補正用データを生成し、当該生成されたγ補正用データを前記γ補正用チャートの印刷に用いた用紙の種類及び定着器の種類に対応付けて記憶媒体に記憶するγ補正用データ生成手段と、
前記記憶媒体に記憶されている、印刷に使用する用紙の種類及び定着器の種類に対応するγ補正用データに基づいて、印刷対象の画像データにプリンタγ補正を行うプリンタγ補正手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記定着器識別手段により前記画像形成装置に装着されている定着器の種類が識別されると、前記識別された定着器の種類に対応するγ補正用データを前記記憶媒体から読み出し、当該読み出されたγ補正用データを用いて、前記印刷手段における入力画像と出力画像の関係を示すγデータを生成するγデータ生成手段を備え、
前記プリンタγ補正手段は、印刷に使用する用紙の種類及び定着器の種類に対応するγ補正用データに基づいて前記γデータ生成手段により生成されたγデータを用いて、印刷対象の画像データにγ補正を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
表示手段と、
前記記憶手段に記憶されているγ補正用データの一覧を前記表示手段に表示させる表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、前記画像形成装置に現在装着されている定着器とは異なる種類の定着器に対応するγ補正用データを前記一覧に表示しないか又は網掛け表示するよう制御する請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15a】
image rotate

【図15b】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−88683(P2013−88683A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230230(P2011−230230)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】