画像情報処理方法、画像情報処理装置、及び記録媒体
【課題】より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定する。
【解決手段】画像全領域から部分領域を抽出する部分領域抽出手段12a、部分領域の平坦度を算出する平坦度算出手段12b、部分領域の色純度を算出する色純度算出手段12c、及び平坦度や色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段12dとを具備する繰り返し処理手段12と、画像の全領域のうち、優秀部分領域を多く含む領域を候補領域として選択する候補領域選択手段13と、候補領域の中で成立し得る4つの部分領域の組合せを特定する組合せ特定手段14と、特定された組合せについて、平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて指標値を算出する指標値算出手段15と、指標値に基づいて、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段16とを設けた。
【解決手段】画像全領域から部分領域を抽出する部分領域抽出手段12a、部分領域の平坦度を算出する平坦度算出手段12b、部分領域の色純度を算出する色純度算出手段12c、及び平坦度や色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段12dとを具備する繰り返し処理手段12と、画像の全領域のうち、優秀部分領域を多く含む領域を候補領域として選択する候補領域選択手段13と、候補領域の中で成立し得る4つの部分領域の組合せを特定する組合せ特定手段14と、特定された組合せについて、平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて指標値を算出する指標値算出手段15と、指標値に基づいて、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段16とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法や画像処理装置に関するものである。また、かかる画像処理方法を実現するプログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ等の画像形成装置によって出力した画像の色と、オリジナルの画像情報の色との差を比較して、画像形成装置の作像性能の良否を判定することが行われている。一般的には、次のような判定手法によって作像性能の良否を判定する。即ち、まず、予め用意されている画像情報を利用して色判定用のチャート画像を出力した後、そのチャート画像をスキャナに読み取らせて出力画像情報を得る。次いで、チャート画像における各部の色について、オリジナルの画像情報によって表現されている色と、出力画像情報によって表現されている色との差を求め、その結果に基づいて作像性能の良否を判定する。
【0003】
しかしながら、写真画像などの出力需要が増えてきている近年において、そのような判定手法を用いると、専用のチャート画像を高価なフォト光沢紙に出力しなければならず、コスト高になってしまう。このため、専用のチャート画像の代わりに、ユーザーが自由に出力した画像を用いて、作像性能の良否を判定する技術の開発が望まれている。
【0004】
ユーザーが自由に出力した画像を用いて作像性能の良否を判定するためには、その画像の全領域から、色の判定に適した被検領域を抽出する技術が必要になる。そして、かかる技術としては、特許文献1に開示されている領域抽出方法が挙げられる。この領域抽出方法は、まず、画像情報に基づいて、オリジナルの画像の全領域から、注目画素を含む小区画領域を抽出し、その小区画領域における各画像の画素値に基づいて、その小区画領域における濃度差の平坦性(濃度の均一性)を示すエントロピー値を求める。そして、注目画素を順次ずらしていきながら、前述の小区画領域の抽出とエントロピー値の算出とを行う処理を繰り返し実施した後、それぞれの小区画領域のエントロピー値に基づいて、画像の全領域の中から、濃度差の平坦な領域を特定する。濃度差の平坦な領域は、色の変化が少ないため、出力色のチェックを行う領域として適している。つまり、特許文献1に開示されている領域抽出方法を応用すれば、ユーザーによって提供されるオリジナルの画像の全領域から、色の判定に適した被検領域を抽出することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、単に濃度差の平坦な領域を抽出するだけでは、作像性能の良否を精度良く判定することはできない。精度良い判定のためには、濃度差が平坦である(平坦度が高い)ことに加えて、色材に近い色調である(色純度が高い)ことや、画像の全領域の中で適度に散らばっている(空間分散度が高い)ことが求められる。具体的には、カラー画像を出力する画像形成装置では、インクやトナーなどの色材として、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)などといった互いに色の異なる少なくとも3つの色材を用いる。そして、必要に応じてそれら単色の色材を紙面上で混ぜ合わせたり、それぞれの色材だけからなる単色ドットの面積比率を調整したりして、多彩な色調を再現している。このような構成において、色の再現性を精度良く判定するためには、被検領域として、Y、M、C色に近い色調の単色領域を選択するなどといった具合に、色材に近い色調の領域を被検領域として選択する必要がある。また、画像形成装置には、同じ色であっても紙面の上側と下側とでは再現性が異なるなど、画像の位置によって異なる色再現性を示すことがある。このため、Y,M,Cなどの各単色についてそれぞれ画像全領域の中の1領域だけを被検対象とするだけでは不十分であり、それぞれ画像中で適度に散らばっている複数領域を被検対象とする必要がある。よって、各単色についてそれぞれ、平坦度や色純度の比較的高い部分領域を複数組み合わせたものであって、且つ、それら部分領域の空間分散度が比較的高くなるものを、画像の全領域の中から特定しなければならないのである。
【0006】
本発明者は、そのような部分領域の組合せを特定する方法として、次のような方法を採用することを考えた。即ち、まず、画像の全領域の中から所定の大きさの部分領域を抽出してその平坦度及び色純度を算出する処理を、画像全体を網羅するまで繰り返し実施する。次に、全ての部分領域の中から、所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る全ての組合せを特定し、それぞれの組合せについて、各部分領域の平坦度、色純度及び空間分散度の線形和を求めて指標値とする。そして、その指標値が最も大きくなった組合せを、出力色の被検対象とする部分領域の組合せとして特定する方法である。
【0007】
しかしながら、この方法では、全ての部分領域の中から、所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る膨大な量の組合せについてそれぞれ上述した線形和を求めるのに多大な処理時間を費やしてしまうため、実用的でないことが判明した。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムを記録した記録媒体を提供することである。即ち、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる画像処理方法等である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法において、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出工程と、抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出工程と、抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出工程と、抽出した部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定工程とを繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択工程と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定工程と、特定した複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出工程と、前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定工程とを実施することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像処理装置において、前記部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記平坦度を算出する処理を実施するように、前記平坦度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の画像処理装置において、前記部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、前記特定色との均等色空間内におけるユークリッド距離を前記色純度として算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2又は3の画像処理装置において、前記部分領域における互いに異なる少なくとも3つの色成分のそれぞれの平均値のうち、前記特定色に対応するものの符号を正又は負の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記特定色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて前記色純度を算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項2乃至7の何れかの画像処理装置において、前記組合せ特定手段により、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての前記組合せが特定されるのに先立って、前記組合せ特定手段によって特定された前記組合せについての前記指標値の算出を開始するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像処理装置において、算出済みの指標値の履歴に基づいて、新たな組合せを特定してその前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項2乃至9の何れかの画像処理装置において、前記平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数を乗算した値の和に基づいて前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、プログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体であって、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置における、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて複数の前記組合せの中から画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備える画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムを機械読み取り可能に記録したことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、前記画像の全領域の中から部分的に抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度、及び特定色に対する純度である色純度を算出し、算出結果に基づいてその部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する処理を繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択し、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出し、算出結果に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
これらの発明においては、画像の全領域から抽出した複数の部分領域のうち、平坦度及び色純度の優れた部分領域だけを優秀部分領域であると判定する。そして、例えば優秀部分領域を多く含む領域を候補領域とするなど、それら優秀部分領域の画像全領域における位置に基づいて、画像の全領域の中から、被検対象とする候補領域を選択した後、その候補領域の中に含まれる部分領域だけについて、所定数の部分領域からなる複数の組合せを特定する。その後、それぞれの組合せについて、被検対象とするか否かを判定するための指標値を算出する。かかる構成においては、画像の全領域の中で成立し得る膨大な数の部分領域組合せの全てについて上記指標値を算出する場合に比べて、上記指標値の算出対象とする組合せ数を低減する。これにより、指標値の算出に要する時間を短縮することが可能になるので、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る画像処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】同画像処理装置によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャート。
【図3】正方行列Qの対角成分を正、非対角成分を負、wを0ベクトルとして色純度f(μ)を定義し、且つmY=mK=0とした場合における関数の形状を示す模式図。
【図4】図2のS7の工程によって選択された候補領域の一例を説明するための模式図。
【図5】画像の全領域と、4つの部分領域からなる組合せと、候補領域との関係の一例を示す模式図。
【図6】各部分領域のそれぞれの重心間のユークリッド距離に基づく空間分散度の算出方法を説明するための模式図。
【図7】変形例に係る画像処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図8】同画像処理装置によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャート。
【図9】図8に示される処理フローのS8の工程であって、且つ2つ目以降の組合せの特定の際に実施される工程をより詳しく示す詳細フロー。
【図10】同詳細フローの他の例を示すフローチャート。
【図11】同画像処理装置によって特定される新たな組合せと保持解組合せとの関係の第1例を示す模式図。
【図12】同関係の第2例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像処理装置の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る画像処理装置10の要部構成を示すブロック図である。図示のように、画像処理装置10は、画像情報取得手段11、繰り返し処理手段12、候補領域選択手段13、組合せ特定手段14、指標値算出手段15、処理停止判定手段16、被検対象決定手段17等を有している。また、繰り返し処理手段12は、部分領域抽出手段12a、平坦度算出手段12b、色純度算出手段12c、及び優劣判定手段12dを具備している。
【0013】
画像処理装置10の画像情報取得手段11は、ユーザーからパーソナルコンピュータ等を介して送られてくる画像データを取得する。この画像データは、画像を構成する、マトリクス状に並ぶ複数の画素についてそれぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものであり、パーソナルコンピュータ等からプリンタに出力されるオリジナルの画像データである。画像処理装置10は、この画像データの全領域のうち、どの領域を色検査の被検対象にするのかを決定するものである。この決定の後、画像処理装置10に対して、出力画像をスキャナで読み取らせた読取画像データが入力されると、画像処理装置10は、その出力画像における被検対象領域を、各画素のマトリクスの位置に基づいて特定し、その色データをオリジナルの色データと比較して、出力色の良否を判定する。
【0014】
画像処理装置10は、オリジナルの画像データにおける色検査の被検領域を決定するにあたり、まず、C,M,Y,Kの4色についてそれぞれ、その画像データの全領域の中から、色の検査に適した部分領域の組合せを決定する。
【0015】
図2は、画像処理装置10によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャートである。画像処理装置10は、まず、画像情報取得手段(11)によって画像データを取得する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。そして、繰り返し処理手段12により、S2〜S6の処理を繰り返し行う。具体的には、画像データによって表される画素マトリクスの所定位置にある画素を注目画素とし、その注目画素を中心とする所定サイズの領域を部分領域として抽出する。例えば、初回の抽出においては、画素マトリクスにおける左上から51列目で且つ51行目の画素を注目画素とし、この注目画素を中心とする101画素×101画素の矩形領域(約4mm角の領域)を部分領域として抽出する。この抽出は、図1に示したように、繰り返し処理手段12の部分領域抽出手段12aによって行われる。
【0016】
繰り返し処理手段12の平坦度算出手段12bは、部分領域抽出手段12aによって抽出された部分領域における各画素の画素値(C,M,Y,K)を参照しながら、その部分領域全体としての濃淡の平坦さを示す平坦度を算出する(S2)。平坦度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。平坦度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、C,M,Y,Kについてそれぞれ、各画素の分散を求める。次いで、その分散の和に負の符号をつけたものを部分領域内の平坦度として求める。
【0017】
平坦度の第2例として、分散共分散行列の行列式を挙げることができる。具体的には、C,M,Y,Kについてそれぞれ、部分領域内の各画素における分散と共分散を求める。次いで、分散を対角成分に、共分散を非対角成分に配置した4×4の分散共分散行列を構築し、その行列式を計算する。そして、行列式の値に負の符号を付けたものを平坦度として求めてもよい。分散共分散行列の行列式を用いることで、CMYK空間での分布の広がりを評価することができるからである。先に説明した第1例の平坦度に比べて、異なる成分間の色の広がりも評価することができる点が優れている。
【0018】
また、平坦度の第3例として、色の周波数特性を利用したものを挙げることができる。具体的には、部分領域内の各画素値を用いてフーリエ変換を行い、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を求める。この和に負の符号を付けて平坦度とする。特定周波数については複数の周波数を用いることができる。第1例の平坦度では、中間調処理された画像に対しては中間調処理のパターンの影響を受けて、平坦である領域を識別できないケースがある。これに対し、第3例の平坦度では、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を用いることで、中間調処理の影響を排した平坦度を算出することができる。
【0019】
S3の工程で求める平坦度は、これまで説明した第1例〜第3例のものに限られるものではなく、公知の平坦度算出技術を用いることが可能である。
【0020】
繰り返し処理手段12は、平坦度算出手段12aによって部分領域の平坦度を求めると、次に、色純度算出手段12bにより、部分領域のC,M,Y,Kについての色純度をそれぞれ算出する(S4)。色純度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。色純度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、部分領域における各画素の画素値の平均値を算出し、それをL*a*b*や、L*u*v*等の均等色空間の点に変換する。そして、均等色空間にて、その変換点とC,M,Y,Kの点とのユークリッド距離を算出して、それぞれ最も小さい値をC,M,Y,Kについての色純度として算出する。
【0021】
色純度の第2例として、CMYK成分量の二次式を用いたものを挙げることができる。具体的には、まず、部分領域の各画素におけるC,M,Y,Kについて平均値mC,mM,mY,mKを算出する。次いで、平均値mC,mM,mY,mKを要素とした4次元の縦ベクトルをμとして、4次元の縦ベクトルwと4×4の正方行列Qとを設計パラメータとして次式により色純度f(μ)を算出する。
【数1】
【0022】
数1の数式における上付添え字のTは転置を表している。Qの非対角成分を負に設定することで、異なるC,M,Y,K成分の積に対して色純度を減少させることができる。Qの対角成分を正に設定すれば、C,M,Y,Kの二乗値に対して色純度を増加させることができる。wの設定で色純度が極大となる点を調整することができる。図3に、数1の数式で正方行列Qの対角成分を正、非対角成分を負、wを0ベクトルとして色純度f(μ)を定義し、且つmY=mK=0とした場合における関数の形状を示す。単色に近く且つ濃度が高いほど純度が高くなり、CとMとが同比率で混合している場合に純度が低くなることがわかる。この第2例では、色純度をC,M,Y,Kの平均値の二次式で表現したが、三次以上の式で表現することも可能である。その場合も、異なるC,M,Y,K成分の積に対して色純度を減少させ、単色項に対しては色純度が増加するように係数を設定すればよい。なお、色純度としては、これまで説明した第1例や第2例のものに限られるわけではなく、公知の色純度算出技術を用いることが可能である。
【0023】
繰り返し処理手段12は、色純度算出手段12cによって部分領域におけるC,M,Y,Kについての色純度をそれぞれ求めると、次に、優劣判定手段12dにより、その部分領域について平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する(S5)。この判定については、C,M,Y,Kの各色についてそれぞれ個別に行う。より詳しくは、C,M,Y,Kの各色についてそれぞれ、平坦度が所定の閾値以上となり、且つ色純度が所定の閾値以上となった場合には、優秀部分領域であると判定するのに対し、何れか一方でも閾値未満になった場合には、優秀部分領域でないと判定する。
【0024】
このようにして部分領域の優劣を判定すると、繰り返し処理手段12は、次に全ての部分領域を抽出したか否か(画像の全領域について部分領域の抽出が完了したか否か)、を判断する(S6)。そして、まだ抽出していない部分領域があると判断した場合には(S6でN)、処理フローをS2の工程にループさせて、S2〜S6までの工程を繰り返し行う。このとき、例えば2個目の部分領域の抽出であれば、注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらして、左上から52列目、51行目の画素を注目画素とし、それを中心とする101画素×101画素の矩形領域を部分領域として抽出する。以降、3、4、5・・・n個目の部分領域の抽出の際に、それぞれ注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらしていく。そして、注目画素の列方向の位置をマトリクスの右端から左に向けて51番目の位置までずらした後は、注目画素の列方向の位置をマトリクスの左端から右に向けて51番目の位置まで戻すとともに、行方向の位置を1画素分だけ下方向にずらす。その後、注目画素の位置を1画素分ずつ右にずらす処理を繰り返す。以上のようにして、注目画素の位置をラスタ走査のように順次ずらしていって、画像の全領域を網羅する。
【0025】
なお、注目画素を1画素分ずつずらすのではなく、抽出した部分領域同士の縁部を互いに重ねないように各部分領域を抽出してもよい。例えば、51列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出した後には、102列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出するのである。
【0026】
画像の全領域からの部分領域の抽出や優劣の判定を行うと、繰り返し処理手段12は、全ての優秀部分領域の位置情報を候補領域選択手段13に出力する。候補領域選択手段13は、それら優秀部分領域の位置情報に基づいて、画像の全領域の中から、優秀部分領域を多く含む領域を候補領域として選択する(S7)。
【0027】
図4は、S7の工程によって選択された候補領域の一例を説明するための模式図である。この例では、図示のように画像の全領域の中から、大、中、小の3つの候補領域が選択されている。このようにして候補領域が選択されると、組合せ特定手段14が、候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる全ての組合せを特定する。実施形態では、その所定数を4に設定している。そして、図4に示した大、中、小の3つの候補領域が選択された例では、図5に示すように、それら候補領域に含まれる全ての部分領域の中から、4つの部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる全ての組合せを特定する。
【0028】
このようにして特定された組合せの情報は、組合せ特定手段14から指標値算出手段15に送られる。指標値算出手段15は、組合せ特定手段14から送られてきた全ての組合せの情報のうち、1つをランダムに選択した後、その部分領域について、空間分散度の算出と(S9)、指標値の算出(S10)とを行う。
【0029】
空間分散度の算出の工程(S9)において求められる空間分散度の第1例として、各部分領域の重心間のユークリッド距離に基づいて求められるものを挙げることができる。具体的には、図6に示すように、その組合せに含まれる4つの部分領域の重心をそれぞれの代表点として、代表点間のユークリッド距離(d12、d13、d14、d23、d24、d34)の逆数の和を算出し、それに負の符号を付したものを空間分散度とする。
【0030】
空間分散度の第2例として、各部分領域間の(統計量としての)分散を利用して求められるものを挙げることができる。具体的には、まず、4つの部分領域の代表点(例えば重心)の座標を算出し、その水平・垂直位置の分散共分散行列を算出する。次いで、その分散共分散行列のトレースまたは行列式を空間分散度とするのである。なお、空間分散度は、これまで説明した第1例や第2例のものに限られるわけではなく、公知の空間分散度算出技術を用いることが可能である。
【0031】
指標値算出手段15は、上記組合せにおける空間分散度を算出すると(S9)、次に、その空間分散度と、組合せにおける4つの部分領域の平坦度及び色純度とに基づいて、次式のようにして指標値を算出する。
【数2】
【0032】
この式において、aは平坦度についての重み付け係数、bは色純度についての重み付け係数、cは空間分散度についての重み付け係数である。また、平坦度、色純度、空間分散度の横にそれぞれ付されているΣは、4つの部分領域の平坦度、色純度、空間分散度を総和することを示している。この指標値は、平坦度、色純度、空間分散度の組合せが優れたものであるほど、数値が大きくなる。
【0033】
このようにして指標値が求められると、その結果が指標値算出手段15から処理停止判定手段16を介して被検対象決定手段17に送られる。処理停止判定手段16は、指標値の算出を停止するか否かを判断するための判断基準を予め記憶している。実施形態では、その判断基準として、指標値の算出回数を採用している。例えば、1000回(互いに異なる1000個の組合せについてそれぞれ指標値を算出)など、算出回数の閾値を記憶しており、実際の算出回数について閾値に達しているか否かを判断する(S11)。そして、達している場合には、それ以上の算出を停止すると判断し、その結果を被検対象決定手段17に送る。これに対し、まだ停止基準に達していない(閾値に達していない)と判断した場合には、指標値算出手段15に対し、他の組合せについての指標値を算出するように命令信号を送る。この命令信号を受信した指標値算出手段15は、組合せ特定手段14から予め提供されている全ての組合せのうち、まだ選択していないものをランダムに1つ選択して、その指標値を算出する。
【0034】
被検対象決定手段17は、指標値の算出を停止する旨の信号を処理停止は根知手段16から受信すると、それまで受信した全ての指標値のうち、最も数値の大きい指標値に対応する組合せ(4つの部分領域からなる)を、被検対象とする4つの部分領域の組合せとして決定する(S12)。そして、その組合せの位置データを被検対象領域データとして出力する。
【0035】
なお、S8〜S12の工程については、C,M,Y,Kの各色でそれぞれ個別に行われる。よって、被検対象決定手段17は、被検対象領域データとして、C,M,Y,K用のものをそれぞれ個別に出力する。
【0036】
以上の構成の画像処理装置においては、画像の全領域から抽出した全ての部分領域のうち、平坦度及び色純度の優れた部分領域だけを優秀部分領域であるとみなす。そして、画像の全領域のうち、それら優秀部分領域を比較的多く含む候補領域だけについて、互いに異なる4つの部分領域からなる組合せの全てを特定し、それぞれの組合せについて指標値を算出する。かかる構成においては、画像の全領域から抽出した全ての部分領域について、4つの部分領域からなる組合せの全てを特定してそれぞれについて指標値を算出する場合に比べて、指標値の算出に要する時間を短縮するので、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる。
【0037】
実施形態に係る画像処理装置10は、パーソナルコンピュータと、これを画像処理装置として機能させるためのプログラムとから構成されている。そして、このプログラムは、記録媒体たるCD−ROMやDVD−ROM等の光ディスクに機械読み取り可能に記憶され、その光ディスクからパーソナルコンピュータのハードディスクにインストールすることが可能になっている。先に図1に示した繰り返し処理手段12、候補領域選択手段13、組合せ特定手段14、指標値算出手段15、処理停止判定手段16、被検対象決定手段17は、何れもパーソナルコンピュータのCPUの演算処理によってソフト的に実現されるものである。
【0038】
なお、候補領域として、複数の優秀部分領域を含むものを選択する例について説明したが、一部又は全ての候補領域として、優秀部分領域を1つだけ含むもの(部分領域と同じ大きさのもの)を選択してもよい。
【0039】
次に、画像処理装置10の変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係る画像処理装置10の構成は、実施形態と同様である。
図7は、変形例に係る画像処理装置10の要部構成を示すブロック図である。また、図8は、変形例に係る画像処理装置10によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャートである。変形例に係る画像処理装置10は、組合せ特定手段14による組合せ特定処理や、その後の処理工程が、実施形態と異なっている。図2のフローチャートと図8のフローチャートとは互いに非常に似ているが、前者がS11の工程からS9の工程にループしているのに対し、後者がS11の工程からS9の工程にループしている点が異なっている。このようなループ先の違いは、指標値の算出対象となる組合せを決定しているのが前者では指標値算出手段15であるのに対し、後者では組合せ特定手段14であることに起因している。
【0040】
変形例に係る画像処理装置10の組合せ特定手段14は、RAM等からなる保持解記憶部を有している。この保持解記憶部には、指標値が比較的高い値になった組合せのデータが記憶される。組合せ特定手段14は、候補領域に含まれる全ての部分領域の中から4つを選択して組み合わせて新たな組合せを特定する毎に、その特定結果を指標値算出手段15に順次出力する。そして、指標値算出手段15は、新たな組合せのデータが組合せ特定手段14から送られてくる毎に、その組合せについての指標値の算出を行う。つまり、実施形態では、候補領域の中で成立し得る4つの部分領域からなる全ての組合せのうち、どの組合せの指標値を求めるのかの選択を指標値算出手段15がランダムに行っていたのに対し、変形例ではその選択を組合せ特定手段14が行っている。
【0041】
組合せ特定手段14は、4つの部分領域からなる1つ目の組合せをランダムに特定すると、その結果を指標値算出手段15に送った後、指標値算出手段15から指標値の算出結果が送られてくるのを待機する。そして、算出結果が送られてくると、それを組合せのデータとともに保持解記憶部に記憶する。次いで、組合せ特定手段14は、2つ目の組合せをランダムに特定した後、その組合せの指標値の算出結果を指標値算出手段15から受け取ると、それと、保持解記憶部に記憶している算出結果とを比較する。そして、新たに特定された組合せの指標値の方が、保持解記憶部の指標値よりも大きい場合には、保持解記憶部内のデータを新たに特定された組合せに関するデータに更新する。また、その逆に、後者の指標値の方が前者の指標値よりも大きい場合には、保持解記憶部内のデータをそのままにしておく。その後、3つ目の組合せを新たに特定する際には、保持解記憶部内に記憶している組合せを参照しながら、その組合せと位置的に近くなる組合せを新たに特定する。このような、必要に応じた保持解の更新と、保持解に基づく新たな組合せの特定とを、3つ目以降の組合せの特定の際に行う。
【0042】
図9は、図8に示される処理フローのS8の工程であって、且つ2つ目以降の組合せの特定の際に実施される工程をより詳しく示す詳細フローである。同図に示すように、2つ目以降の組合せを特定する際には、まず、前回の評価値(例えば2つ目の組合せを特定する場合には1つ目の組合せの評価値)について、保持解記憶部に記憶している評価値よりも大きいか否かを判定する(S8a)。そして、大きいと判定した場合には(S8aでY)、保持解記憶部に記憶している組合せと評価値とのデータを、前回の組合せのものに更新する(S8b)。これに対し、大きくないと判定した場合には(S8aでN)、保持解記憶部のデータをそのまま保持する。そして、保持解記憶部に記憶している組合せに対して、位置的に近い組合せを新たな組合せとして特定する(S8c)。
【0043】
このように、保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近い組合せを新たな組合せとして特定することで、新たな組合せとして、指標値の比較的高くなる組合せを選択する可能性を高くすることができる。これにより、指標値の高くなる組合せを効率的に探索していくことができる。
【0044】
なお、S8aの工程で、前回の評価値が保持解保持部内の評価値(以下、保持解評価値という)を下回った場合であっても、ある条件を満たす場合には保持解の更新を行うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、保持解評価値に対する前回の評価値の改悪量をdとし、パラメータtのもとでexp(−d/t)の確率で保持解の更新を行うようにしてもよい。パラメータtについては繰り返しごとに値を減少させる。この方法は、模擬焼きなまし法(Simulated Annealing)と呼ばれるものである。
【0045】
また例えば、S11の工程における停止基準として、保持解の更新頻度がある一定値以下になる(たとえば、10回連続で保持解が更新されなければ停止する)等の基準を用いても良い。模擬焼きなまし法について説明したが、新たな組合せとして評価値の大きなものを特定する確率を高くする方法は、これに限るものではなく、公知の最適化技術を用いることが可能である。
【0046】
保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近いものを新たな組合せとして特定する方法の第1例として、次のようなものを挙げることができる。即ち、新たな組合せにおける4つの部分領域のうち、3つとしてそれぞれ保持解記憶部に記憶している組合せ(以下、保持解組合せという)と全く同じものを選択し、且つ残りの1つとして保持解組合せの残りの1つに部分的に重なるあるいは隣接するものを選択する方法である。例えば、前回の組合せが先に図5に示した4つの部分領域からなるものである場合、新たな組合せとして、図11に示すものを特定するのである。図11に示される新たな組合せにおいて、4つの部分領域のうち、3つは図5の部分領域と全く同じものである。また、残りの1つは、図中点線で示される保持解組合せの残りの1つの部分領域にと局所的に重複する部分領域である。
【0047】
また、保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近いものを新たな組合せとして特定する方法の第1例として、次のようなものを挙げることができる。即ち、新たな組合せにおける4つの部分領域のうち、いくつかとして保持解組合せと全く同じものを選択し、且つ、残りをランダムに選択する方法である。例えば、前回の組合せが先に図5に示した4つの部分領域からなるものである場合、新たな組合せとして、図12に示すものを特定するのである。図12に示される新たな組合せにおいて、4つの部分領域のうち、3つは図5の部分領域と全く同じものである。また、残りの1つは、図中点線で示される保持解組合せの残りの1つの代わりとして、候補領域の中からランダムに選択されたものである。
【0048】
これまで、Y,M,C,Kの4つの色成分についてそれぞれ明度を示した画素値を具備するカラー画像データを処理する例について説明したが、画素値によって白黒の明度だけを示す2値画像データ、グレースケール画像、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3つの色成分についてそれぞれ明度を示す画素値を具備するカラー画像データ、4色以上の色瀬異聞についてそれぞれ明度を示す画素値を具備するカラー画像データ、分光画像データなどを処理してもよい。なお、色純度を算出する際に、均等色空間のユークリッド距離を使用する第1例の方法では目的の色を変更することで、C,M,Y,Kに対する色純度の代わりに、他の色に対する色純度を求めることが可能である。また、二次式を用いる第2例の方法では、軸の取り方を変更することで、C,M,Y,Kに対する色純度の代わりに、他の色に対する色純度を求めることが可能である。
【0049】
実施形態に係る画像処理装置10においては、部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて部分領域の平坦度を算出する処理を実施するように、平坦度算出手段12bを構成している。かかる構成では、平坦度として、部分領域の濃淡の均一性と相関の高い数値を算出することができる。
【0050】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第1例の色純度を算出するものでは、部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、特定色であるC,M,Y,Kとの均等色空間内におけるユークリッド距離を色純度として算出する処理を実施するように、色純度算出手段12cを構成している。かかる構成では、部分領域の平均色の均等色空間内における特定色(C,M,Y,K)とのユークリッド距離が小さくなるほど、色純度の値を大きくすることができる。
【0051】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第2例の色純度を算出するものでは、部分領域における互いに異なるC,M,Y,Kの色成分のそれぞれの平均値のうち、検査対象となる色(C,M,Y又はK)に対応するものの符号を正(又は負でもよい)の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて色純度を算出する処理を実施するように、色純度算出手段12cを構成している。かかる構成では、検査対象となる色に平均色が近い部分領域ほど、色純度の値をプラス側に大きくする(又はこの逆)ことができる。
【0052】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第2例の空間分散度を算出するものでは、4つの部分領域からなる組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、行列又は逆行列によって4つの部分領域の分散性を把握することができる。
【0053】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第1例の空間分散度を算出するものでは、4つの部分領域からなる組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを空間分散度として算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、単純な数値によって4つの部分領域の分散性を把握することができる。
【0054】
また、変形例に係る画像処理装置10においては、組合せ特定手段14により、候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての組合せが特定されるのに先立って、組合せ特定手段14によって特定された組合せについての指標値の算出を開始するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、全ての組合せが特定されてからそれぞれの組合せの指標値の算出を開始する場合に比べて、指標値算出の開始タイミングを早めることができる。
【0055】
また、変形例に係る画像処理装置10においては、算出済みの指標値の履歴である保持解組合せの指標値に基づいて、新たな組合せを特定してその指標値を算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、新たな組合せとして、指標値の比較的高くなる組合せを選択する可能性を高くすることができる。
【0056】
また、実施形態に係る画像処理装置10においては、平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数a、b、cを乗算した値の和に基づいて指標値を算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、重み付け係数a、b、cの大きさの比率を調整することで、平坦度、色純度、及び空間分散度のうち、指標値の変化に最も影響を与えるものや、最も影響を与え難くするものを、任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:画像処理装置
12a:部分領域抽出手段
12b:平坦度算出手段
12c:色純度算出手段
12d:優劣判定手段
12:繰り返し処理手段
13:候補領域選択手段
14:組合せ特定手段
15:指標値算出手段
17:被検対象決定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特許第3860540号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法や画像処理装置に関するものである。また、かかる画像処理方法を実現するプログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ等の画像形成装置によって出力した画像の色と、オリジナルの画像情報の色との差を比較して、画像形成装置の作像性能の良否を判定することが行われている。一般的には、次のような判定手法によって作像性能の良否を判定する。即ち、まず、予め用意されている画像情報を利用して色判定用のチャート画像を出力した後、そのチャート画像をスキャナに読み取らせて出力画像情報を得る。次いで、チャート画像における各部の色について、オリジナルの画像情報によって表現されている色と、出力画像情報によって表現されている色との差を求め、その結果に基づいて作像性能の良否を判定する。
【0003】
しかしながら、写真画像などの出力需要が増えてきている近年において、そのような判定手法を用いると、専用のチャート画像を高価なフォト光沢紙に出力しなければならず、コスト高になってしまう。このため、専用のチャート画像の代わりに、ユーザーが自由に出力した画像を用いて、作像性能の良否を判定する技術の開発が望まれている。
【0004】
ユーザーが自由に出力した画像を用いて作像性能の良否を判定するためには、その画像の全領域から、色の判定に適した被検領域を抽出する技術が必要になる。そして、かかる技術としては、特許文献1に開示されている領域抽出方法が挙げられる。この領域抽出方法は、まず、画像情報に基づいて、オリジナルの画像の全領域から、注目画素を含む小区画領域を抽出し、その小区画領域における各画像の画素値に基づいて、その小区画領域における濃度差の平坦性(濃度の均一性)を示すエントロピー値を求める。そして、注目画素を順次ずらしていきながら、前述の小区画領域の抽出とエントロピー値の算出とを行う処理を繰り返し実施した後、それぞれの小区画領域のエントロピー値に基づいて、画像の全領域の中から、濃度差の平坦な領域を特定する。濃度差の平坦な領域は、色の変化が少ないため、出力色のチェックを行う領域として適している。つまり、特許文献1に開示されている領域抽出方法を応用すれば、ユーザーによって提供されるオリジナルの画像の全領域から、色の判定に適した被検領域を抽出することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、単に濃度差の平坦な領域を抽出するだけでは、作像性能の良否を精度良く判定することはできない。精度良い判定のためには、濃度差が平坦である(平坦度が高い)ことに加えて、色材に近い色調である(色純度が高い)ことや、画像の全領域の中で適度に散らばっている(空間分散度が高い)ことが求められる。具体的には、カラー画像を出力する画像形成装置では、インクやトナーなどの色材として、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)などといった互いに色の異なる少なくとも3つの色材を用いる。そして、必要に応じてそれら単色の色材を紙面上で混ぜ合わせたり、それぞれの色材だけからなる単色ドットの面積比率を調整したりして、多彩な色調を再現している。このような構成において、色の再現性を精度良く判定するためには、被検領域として、Y、M、C色に近い色調の単色領域を選択するなどといった具合に、色材に近い色調の領域を被検領域として選択する必要がある。また、画像形成装置には、同じ色であっても紙面の上側と下側とでは再現性が異なるなど、画像の位置によって異なる色再現性を示すことがある。このため、Y,M,Cなどの各単色についてそれぞれ画像全領域の中の1領域だけを被検対象とするだけでは不十分であり、それぞれ画像中で適度に散らばっている複数領域を被検対象とする必要がある。よって、各単色についてそれぞれ、平坦度や色純度の比較的高い部分領域を複数組み合わせたものであって、且つ、それら部分領域の空間分散度が比較的高くなるものを、画像の全領域の中から特定しなければならないのである。
【0006】
本発明者は、そのような部分領域の組合せを特定する方法として、次のような方法を採用することを考えた。即ち、まず、画像の全領域の中から所定の大きさの部分領域を抽出してその平坦度及び色純度を算出する処理を、画像全体を網羅するまで繰り返し実施する。次に、全ての部分領域の中から、所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る全ての組合せを特定し、それぞれの組合せについて、各部分領域の平坦度、色純度及び空間分散度の線形和を求めて指標値とする。そして、その指標値が最も大きくなった組合せを、出力色の被検対象とする部分領域の組合せとして特定する方法である。
【0007】
しかしながら、この方法では、全ての部分領域の中から、所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る膨大な量の組合せについてそれぞれ上述した線形和を求めるのに多大な処理時間を費やしてしまうため、実用的でないことが判明した。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムを記録した記録媒体を提供することである。即ち、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる画像処理方法等である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法において、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出工程と、抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出工程と、抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出工程と、抽出した部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定工程とを繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択工程と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定工程と、特定した複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出工程と、前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定工程とを実施することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像処理装置において、前記部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記平坦度を算出する処理を実施するように、前記平坦度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の画像処理装置において、前記部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、前記特定色との均等色空間内におけるユークリッド距離を前記色純度として算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2又は3の画像処理装置において、前記部分領域における互いに異なる少なくとも3つの色成分のそれぞれの平均値のうち、前記特定色に対応するものの符号を正又は負の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記特定色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて前記色純度を算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項2乃至7の何れかの画像処理装置において、前記組合せ特定手段により、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての前記組合せが特定されるのに先立って、前記組合せ特定手段によって特定された前記組合せについての前記指標値の算出を開始するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像処理装置において、算出済みの指標値の履歴に基づいて、新たな組合せを特定してその前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項2乃至9の何れかの画像処理装置において、前記平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数を乗算した値の和に基づいて前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、プログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体であって、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置における、前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて複数の前記組合せの中から画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備える画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムを機械読み取り可能に記録したことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、前記画像の全領域の中から部分的に抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度、及び特定色に対する純度である色純度を算出し、算出結果に基づいてその部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する処理を繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択し、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出し、算出結果に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
これらの発明においては、画像の全領域から抽出した複数の部分領域のうち、平坦度及び色純度の優れた部分領域だけを優秀部分領域であると判定する。そして、例えば優秀部分領域を多く含む領域を候補領域とするなど、それら優秀部分領域の画像全領域における位置に基づいて、画像の全領域の中から、被検対象とする候補領域を選択した後、その候補領域の中に含まれる部分領域だけについて、所定数の部分領域からなる複数の組合せを特定する。その後、それぞれの組合せについて、被検対象とするか否かを判定するための指標値を算出する。かかる構成においては、画像の全領域の中で成立し得る膨大な数の部分領域組合せの全てについて上記指標値を算出する場合に比べて、上記指標値の算出対象とする組合せ数を低減する。これにより、指標値の算出に要する時間を短縮することが可能になるので、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る画像処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】同画像処理装置によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャート。
【図3】正方行列Qの対角成分を正、非対角成分を負、wを0ベクトルとして色純度f(μ)を定義し、且つmY=mK=0とした場合における関数の形状を示す模式図。
【図4】図2のS7の工程によって選択された候補領域の一例を説明するための模式図。
【図5】画像の全領域と、4つの部分領域からなる組合せと、候補領域との関係の一例を示す模式図。
【図6】各部分領域のそれぞれの重心間のユークリッド距離に基づく空間分散度の算出方法を説明するための模式図。
【図7】変形例に係る画像処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図8】同画像処理装置によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャート。
【図9】図8に示される処理フローのS8の工程であって、且つ2つ目以降の組合せの特定の際に実施される工程をより詳しく示す詳細フロー。
【図10】同詳細フローの他の例を示すフローチャート。
【図11】同画像処理装置によって特定される新たな組合せと保持解組合せとの関係の第1例を示す模式図。
【図12】同関係の第2例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像処理装置の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る画像処理装置10の要部構成を示すブロック図である。図示のように、画像処理装置10は、画像情報取得手段11、繰り返し処理手段12、候補領域選択手段13、組合せ特定手段14、指標値算出手段15、処理停止判定手段16、被検対象決定手段17等を有している。また、繰り返し処理手段12は、部分領域抽出手段12a、平坦度算出手段12b、色純度算出手段12c、及び優劣判定手段12dを具備している。
【0013】
画像処理装置10の画像情報取得手段11は、ユーザーからパーソナルコンピュータ等を介して送られてくる画像データを取得する。この画像データは、画像を構成する、マトリクス状に並ぶ複数の画素についてそれぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものであり、パーソナルコンピュータ等からプリンタに出力されるオリジナルの画像データである。画像処理装置10は、この画像データの全領域のうち、どの領域を色検査の被検対象にするのかを決定するものである。この決定の後、画像処理装置10に対して、出力画像をスキャナで読み取らせた読取画像データが入力されると、画像処理装置10は、その出力画像における被検対象領域を、各画素のマトリクスの位置に基づいて特定し、その色データをオリジナルの色データと比較して、出力色の良否を判定する。
【0014】
画像処理装置10は、オリジナルの画像データにおける色検査の被検領域を決定するにあたり、まず、C,M,Y,Kの4色についてそれぞれ、その画像データの全領域の中から、色の検査に適した部分領域の組合せを決定する。
【0015】
図2は、画像処理装置10によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャートである。画像処理装置10は、まず、画像情報取得手段(11)によって画像データを取得する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。そして、繰り返し処理手段12により、S2〜S6の処理を繰り返し行う。具体的には、画像データによって表される画素マトリクスの所定位置にある画素を注目画素とし、その注目画素を中心とする所定サイズの領域を部分領域として抽出する。例えば、初回の抽出においては、画素マトリクスにおける左上から51列目で且つ51行目の画素を注目画素とし、この注目画素を中心とする101画素×101画素の矩形領域(約4mm角の領域)を部分領域として抽出する。この抽出は、図1に示したように、繰り返し処理手段12の部分領域抽出手段12aによって行われる。
【0016】
繰り返し処理手段12の平坦度算出手段12bは、部分領域抽出手段12aによって抽出された部分領域における各画素の画素値(C,M,Y,K)を参照しながら、その部分領域全体としての濃淡の平坦さを示す平坦度を算出する(S2)。平坦度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。平坦度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、C,M,Y,Kについてそれぞれ、各画素の分散を求める。次いで、その分散の和に負の符号をつけたものを部分領域内の平坦度として求める。
【0017】
平坦度の第2例として、分散共分散行列の行列式を挙げることができる。具体的には、C,M,Y,Kについてそれぞれ、部分領域内の各画素における分散と共分散を求める。次いで、分散を対角成分に、共分散を非対角成分に配置した4×4の分散共分散行列を構築し、その行列式を計算する。そして、行列式の値に負の符号を付けたものを平坦度として求めてもよい。分散共分散行列の行列式を用いることで、CMYK空間での分布の広がりを評価することができるからである。先に説明した第1例の平坦度に比べて、異なる成分間の色の広がりも評価することができる点が優れている。
【0018】
また、平坦度の第3例として、色の周波数特性を利用したものを挙げることができる。具体的には、部分領域内の各画素値を用いてフーリエ変換を行い、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を求める。この和に負の符号を付けて平坦度とする。特定周波数については複数の周波数を用いることができる。第1例の平坦度では、中間調処理された画像に対しては中間調処理のパターンの影響を受けて、平坦である領域を識別できないケースがある。これに対し、第3例の平坦度では、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を用いることで、中間調処理の影響を排した平坦度を算出することができる。
【0019】
S3の工程で求める平坦度は、これまで説明した第1例〜第3例のものに限られるものではなく、公知の平坦度算出技術を用いることが可能である。
【0020】
繰り返し処理手段12は、平坦度算出手段12aによって部分領域の平坦度を求めると、次に、色純度算出手段12bにより、部分領域のC,M,Y,Kについての色純度をそれぞれ算出する(S4)。色純度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。色純度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、部分領域における各画素の画素値の平均値を算出し、それをL*a*b*や、L*u*v*等の均等色空間の点に変換する。そして、均等色空間にて、その変換点とC,M,Y,Kの点とのユークリッド距離を算出して、それぞれ最も小さい値をC,M,Y,Kについての色純度として算出する。
【0021】
色純度の第2例として、CMYK成分量の二次式を用いたものを挙げることができる。具体的には、まず、部分領域の各画素におけるC,M,Y,Kについて平均値mC,mM,mY,mKを算出する。次いで、平均値mC,mM,mY,mKを要素とした4次元の縦ベクトルをμとして、4次元の縦ベクトルwと4×4の正方行列Qとを設計パラメータとして次式により色純度f(μ)を算出する。
【数1】
【0022】
数1の数式における上付添え字のTは転置を表している。Qの非対角成分を負に設定することで、異なるC,M,Y,K成分の積に対して色純度を減少させることができる。Qの対角成分を正に設定すれば、C,M,Y,Kの二乗値に対して色純度を増加させることができる。wの設定で色純度が極大となる点を調整することができる。図3に、数1の数式で正方行列Qの対角成分を正、非対角成分を負、wを0ベクトルとして色純度f(μ)を定義し、且つmY=mK=0とした場合における関数の形状を示す。単色に近く且つ濃度が高いほど純度が高くなり、CとMとが同比率で混合している場合に純度が低くなることがわかる。この第2例では、色純度をC,M,Y,Kの平均値の二次式で表現したが、三次以上の式で表現することも可能である。その場合も、異なるC,M,Y,K成分の積に対して色純度を減少させ、単色項に対しては色純度が増加するように係数を設定すればよい。なお、色純度としては、これまで説明した第1例や第2例のものに限られるわけではなく、公知の色純度算出技術を用いることが可能である。
【0023】
繰り返し処理手段12は、色純度算出手段12cによって部分領域におけるC,M,Y,Kについての色純度をそれぞれ求めると、次に、優劣判定手段12dにより、その部分領域について平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する(S5)。この判定については、C,M,Y,Kの各色についてそれぞれ個別に行う。より詳しくは、C,M,Y,Kの各色についてそれぞれ、平坦度が所定の閾値以上となり、且つ色純度が所定の閾値以上となった場合には、優秀部分領域であると判定するのに対し、何れか一方でも閾値未満になった場合には、優秀部分領域でないと判定する。
【0024】
このようにして部分領域の優劣を判定すると、繰り返し処理手段12は、次に全ての部分領域を抽出したか否か(画像の全領域について部分領域の抽出が完了したか否か)、を判断する(S6)。そして、まだ抽出していない部分領域があると判断した場合には(S6でN)、処理フローをS2の工程にループさせて、S2〜S6までの工程を繰り返し行う。このとき、例えば2個目の部分領域の抽出であれば、注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらして、左上から52列目、51行目の画素を注目画素とし、それを中心とする101画素×101画素の矩形領域を部分領域として抽出する。以降、3、4、5・・・n個目の部分領域の抽出の際に、それぞれ注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらしていく。そして、注目画素の列方向の位置をマトリクスの右端から左に向けて51番目の位置までずらした後は、注目画素の列方向の位置をマトリクスの左端から右に向けて51番目の位置まで戻すとともに、行方向の位置を1画素分だけ下方向にずらす。その後、注目画素の位置を1画素分ずつ右にずらす処理を繰り返す。以上のようにして、注目画素の位置をラスタ走査のように順次ずらしていって、画像の全領域を網羅する。
【0025】
なお、注目画素を1画素分ずつずらすのではなく、抽出した部分領域同士の縁部を互いに重ねないように各部分領域を抽出してもよい。例えば、51列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出した後には、102列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出するのである。
【0026】
画像の全領域からの部分領域の抽出や優劣の判定を行うと、繰り返し処理手段12は、全ての優秀部分領域の位置情報を候補領域選択手段13に出力する。候補領域選択手段13は、それら優秀部分領域の位置情報に基づいて、画像の全領域の中から、優秀部分領域を多く含む領域を候補領域として選択する(S7)。
【0027】
図4は、S7の工程によって選択された候補領域の一例を説明するための模式図である。この例では、図示のように画像の全領域の中から、大、中、小の3つの候補領域が選択されている。このようにして候補領域が選択されると、組合せ特定手段14が、候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる全ての組合せを特定する。実施形態では、その所定数を4に設定している。そして、図4に示した大、中、小の3つの候補領域が選択された例では、図5に示すように、それら候補領域に含まれる全ての部分領域の中から、4つの部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる全ての組合せを特定する。
【0028】
このようにして特定された組合せの情報は、組合せ特定手段14から指標値算出手段15に送られる。指標値算出手段15は、組合せ特定手段14から送られてきた全ての組合せの情報のうち、1つをランダムに選択した後、その部分領域について、空間分散度の算出と(S9)、指標値の算出(S10)とを行う。
【0029】
空間分散度の算出の工程(S9)において求められる空間分散度の第1例として、各部分領域の重心間のユークリッド距離に基づいて求められるものを挙げることができる。具体的には、図6に示すように、その組合せに含まれる4つの部分領域の重心をそれぞれの代表点として、代表点間のユークリッド距離(d12、d13、d14、d23、d24、d34)の逆数の和を算出し、それに負の符号を付したものを空間分散度とする。
【0030】
空間分散度の第2例として、各部分領域間の(統計量としての)分散を利用して求められるものを挙げることができる。具体的には、まず、4つの部分領域の代表点(例えば重心)の座標を算出し、その水平・垂直位置の分散共分散行列を算出する。次いで、その分散共分散行列のトレースまたは行列式を空間分散度とするのである。なお、空間分散度は、これまで説明した第1例や第2例のものに限られるわけではなく、公知の空間分散度算出技術を用いることが可能である。
【0031】
指標値算出手段15は、上記組合せにおける空間分散度を算出すると(S9)、次に、その空間分散度と、組合せにおける4つの部分領域の平坦度及び色純度とに基づいて、次式のようにして指標値を算出する。
【数2】
【0032】
この式において、aは平坦度についての重み付け係数、bは色純度についての重み付け係数、cは空間分散度についての重み付け係数である。また、平坦度、色純度、空間分散度の横にそれぞれ付されているΣは、4つの部分領域の平坦度、色純度、空間分散度を総和することを示している。この指標値は、平坦度、色純度、空間分散度の組合せが優れたものであるほど、数値が大きくなる。
【0033】
このようにして指標値が求められると、その結果が指標値算出手段15から処理停止判定手段16を介して被検対象決定手段17に送られる。処理停止判定手段16は、指標値の算出を停止するか否かを判断するための判断基準を予め記憶している。実施形態では、その判断基準として、指標値の算出回数を採用している。例えば、1000回(互いに異なる1000個の組合せについてそれぞれ指標値を算出)など、算出回数の閾値を記憶しており、実際の算出回数について閾値に達しているか否かを判断する(S11)。そして、達している場合には、それ以上の算出を停止すると判断し、その結果を被検対象決定手段17に送る。これに対し、まだ停止基準に達していない(閾値に達していない)と判断した場合には、指標値算出手段15に対し、他の組合せについての指標値を算出するように命令信号を送る。この命令信号を受信した指標値算出手段15は、組合せ特定手段14から予め提供されている全ての組合せのうち、まだ選択していないものをランダムに1つ選択して、その指標値を算出する。
【0034】
被検対象決定手段17は、指標値の算出を停止する旨の信号を処理停止は根知手段16から受信すると、それまで受信した全ての指標値のうち、最も数値の大きい指標値に対応する組合せ(4つの部分領域からなる)を、被検対象とする4つの部分領域の組合せとして決定する(S12)。そして、その組合せの位置データを被検対象領域データとして出力する。
【0035】
なお、S8〜S12の工程については、C,M,Y,Kの各色でそれぞれ個別に行われる。よって、被検対象決定手段17は、被検対象領域データとして、C,M,Y,K用のものをそれぞれ個別に出力する。
【0036】
以上の構成の画像処理装置においては、画像の全領域から抽出した全ての部分領域のうち、平坦度及び色純度の優れた部分領域だけを優秀部分領域であるとみなす。そして、画像の全領域のうち、それら優秀部分領域を比較的多く含む候補領域だけについて、互いに異なる4つの部分領域からなる組合せの全てを特定し、それぞれの組合せについて指標値を算出する。かかる構成においては、画像の全領域から抽出した全ての部分領域について、4つの部分領域からなる組合せの全てを特定してそれぞれについて指標値を算出する場合に比べて、指標値の算出に要する時間を短縮するので、より短時間で、平坦度、色純度、及び空間分散度の比較的高い部分領域の組合せを画像の全領域の中から特定することができる。
【0037】
実施形態に係る画像処理装置10は、パーソナルコンピュータと、これを画像処理装置として機能させるためのプログラムとから構成されている。そして、このプログラムは、記録媒体たるCD−ROMやDVD−ROM等の光ディスクに機械読み取り可能に記憶され、その光ディスクからパーソナルコンピュータのハードディスクにインストールすることが可能になっている。先に図1に示した繰り返し処理手段12、候補領域選択手段13、組合せ特定手段14、指標値算出手段15、処理停止判定手段16、被検対象決定手段17は、何れもパーソナルコンピュータのCPUの演算処理によってソフト的に実現されるものである。
【0038】
なお、候補領域として、複数の優秀部分領域を含むものを選択する例について説明したが、一部又は全ての候補領域として、優秀部分領域を1つだけ含むもの(部分領域と同じ大きさのもの)を選択してもよい。
【0039】
次に、画像処理装置10の変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係る画像処理装置10の構成は、実施形態と同様である。
図7は、変形例に係る画像処理装置10の要部構成を示すブロック図である。また、図8は、変形例に係る画像処理装置10によって実施される被検対象領域決定処理の処理フローを示すフローチャートである。変形例に係る画像処理装置10は、組合せ特定手段14による組合せ特定処理や、その後の処理工程が、実施形態と異なっている。図2のフローチャートと図8のフローチャートとは互いに非常に似ているが、前者がS11の工程からS9の工程にループしているのに対し、後者がS11の工程からS9の工程にループしている点が異なっている。このようなループ先の違いは、指標値の算出対象となる組合せを決定しているのが前者では指標値算出手段15であるのに対し、後者では組合せ特定手段14であることに起因している。
【0040】
変形例に係る画像処理装置10の組合せ特定手段14は、RAM等からなる保持解記憶部を有している。この保持解記憶部には、指標値が比較的高い値になった組合せのデータが記憶される。組合せ特定手段14は、候補領域に含まれる全ての部分領域の中から4つを選択して組み合わせて新たな組合せを特定する毎に、その特定結果を指標値算出手段15に順次出力する。そして、指標値算出手段15は、新たな組合せのデータが組合せ特定手段14から送られてくる毎に、その組合せについての指標値の算出を行う。つまり、実施形態では、候補領域の中で成立し得る4つの部分領域からなる全ての組合せのうち、どの組合せの指標値を求めるのかの選択を指標値算出手段15がランダムに行っていたのに対し、変形例ではその選択を組合せ特定手段14が行っている。
【0041】
組合せ特定手段14は、4つの部分領域からなる1つ目の組合せをランダムに特定すると、その結果を指標値算出手段15に送った後、指標値算出手段15から指標値の算出結果が送られてくるのを待機する。そして、算出結果が送られてくると、それを組合せのデータとともに保持解記憶部に記憶する。次いで、組合せ特定手段14は、2つ目の組合せをランダムに特定した後、その組合せの指標値の算出結果を指標値算出手段15から受け取ると、それと、保持解記憶部に記憶している算出結果とを比較する。そして、新たに特定された組合せの指標値の方が、保持解記憶部の指標値よりも大きい場合には、保持解記憶部内のデータを新たに特定された組合せに関するデータに更新する。また、その逆に、後者の指標値の方が前者の指標値よりも大きい場合には、保持解記憶部内のデータをそのままにしておく。その後、3つ目の組合せを新たに特定する際には、保持解記憶部内に記憶している組合せを参照しながら、その組合せと位置的に近くなる組合せを新たに特定する。このような、必要に応じた保持解の更新と、保持解に基づく新たな組合せの特定とを、3つ目以降の組合せの特定の際に行う。
【0042】
図9は、図8に示される処理フローのS8の工程であって、且つ2つ目以降の組合せの特定の際に実施される工程をより詳しく示す詳細フローである。同図に示すように、2つ目以降の組合せを特定する際には、まず、前回の評価値(例えば2つ目の組合せを特定する場合には1つ目の組合せの評価値)について、保持解記憶部に記憶している評価値よりも大きいか否かを判定する(S8a)。そして、大きいと判定した場合には(S8aでY)、保持解記憶部に記憶している組合せと評価値とのデータを、前回の組合せのものに更新する(S8b)。これに対し、大きくないと判定した場合には(S8aでN)、保持解記憶部のデータをそのまま保持する。そして、保持解記憶部に記憶している組合せに対して、位置的に近い組合せを新たな組合せとして特定する(S8c)。
【0043】
このように、保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近い組合せを新たな組合せとして特定することで、新たな組合せとして、指標値の比較的高くなる組合せを選択する可能性を高くすることができる。これにより、指標値の高くなる組合せを効率的に探索していくことができる。
【0044】
なお、S8aの工程で、前回の評価値が保持解保持部内の評価値(以下、保持解評価値という)を下回った場合であっても、ある条件を満たす場合には保持解の更新を行うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、保持解評価値に対する前回の評価値の改悪量をdとし、パラメータtのもとでexp(−d/t)の確率で保持解の更新を行うようにしてもよい。パラメータtについては繰り返しごとに値を減少させる。この方法は、模擬焼きなまし法(Simulated Annealing)と呼ばれるものである。
【0045】
また例えば、S11の工程における停止基準として、保持解の更新頻度がある一定値以下になる(たとえば、10回連続で保持解が更新されなければ停止する)等の基準を用いても良い。模擬焼きなまし法について説明したが、新たな組合せとして評価値の大きなものを特定する確率を高くする方法は、これに限るものではなく、公知の最適化技術を用いることが可能である。
【0046】
保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近いものを新たな組合せとして特定する方法の第1例として、次のようなものを挙げることができる。即ち、新たな組合せにおける4つの部分領域のうち、3つとしてそれぞれ保持解記憶部に記憶している組合せ(以下、保持解組合せという)と全く同じものを選択し、且つ残りの1つとして保持解組合せの残りの1つに部分的に重なるあるいは隣接するものを選択する方法である。例えば、前回の組合せが先に図5に示した4つの部分領域からなるものである場合、新たな組合せとして、図11に示すものを特定するのである。図11に示される新たな組合せにおいて、4つの部分領域のうち、3つは図5の部分領域と全く同じものである。また、残りの1つは、図中点線で示される保持解組合せの残りの1つの部分領域にと局所的に重複する部分領域である。
【0047】
また、保持解記憶部に記憶している組合せと位置的に近いものを新たな組合せとして特定する方法の第1例として、次のようなものを挙げることができる。即ち、新たな組合せにおける4つの部分領域のうち、いくつかとして保持解組合せと全く同じものを選択し、且つ、残りをランダムに選択する方法である。例えば、前回の組合せが先に図5に示した4つの部分領域からなるものである場合、新たな組合せとして、図12に示すものを特定するのである。図12に示される新たな組合せにおいて、4つの部分領域のうち、3つは図5の部分領域と全く同じものである。また、残りの1つは、図中点線で示される保持解組合せの残りの1つの代わりとして、候補領域の中からランダムに選択されたものである。
【0048】
これまで、Y,M,C,Kの4つの色成分についてそれぞれ明度を示した画素値を具備するカラー画像データを処理する例について説明したが、画素値によって白黒の明度だけを示す2値画像データ、グレースケール画像、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3つの色成分についてそれぞれ明度を示す画素値を具備するカラー画像データ、4色以上の色瀬異聞についてそれぞれ明度を示す画素値を具備するカラー画像データ、分光画像データなどを処理してもよい。なお、色純度を算出する際に、均等色空間のユークリッド距離を使用する第1例の方法では目的の色を変更することで、C,M,Y,Kに対する色純度の代わりに、他の色に対する色純度を求めることが可能である。また、二次式を用いる第2例の方法では、軸の取り方を変更することで、C,M,Y,Kに対する色純度の代わりに、他の色に対する色純度を求めることが可能である。
【0049】
実施形態に係る画像処理装置10においては、部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて部分領域の平坦度を算出する処理を実施するように、平坦度算出手段12bを構成している。かかる構成では、平坦度として、部分領域の濃淡の均一性と相関の高い数値を算出することができる。
【0050】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第1例の色純度を算出するものでは、部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、特定色であるC,M,Y,Kとの均等色空間内におけるユークリッド距離を色純度として算出する処理を実施するように、色純度算出手段12cを構成している。かかる構成では、部分領域の平均色の均等色空間内における特定色(C,M,Y,K)とのユークリッド距離が小さくなるほど、色純度の値を大きくすることができる。
【0051】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第2例の色純度を算出するものでは、部分領域における互いに異なるC,M,Y,Kの色成分のそれぞれの平均値のうち、検査対象となる色(C,M,Y又はK)に対応するものの符号を正(又は負でもよい)の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて色純度を算出する処理を実施するように、色純度算出手段12cを構成している。かかる構成では、検査対象となる色に平均色が近い部分領域ほど、色純度の値をプラス側に大きくする(又はこの逆)ことができる。
【0052】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第2例の空間分散度を算出するものでは、4つの部分領域からなる組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、行列又は逆行列によって4つの部分領域の分散性を把握することができる。
【0053】
また、実施形態に係る画像処理装置10において、第1例の空間分散度を算出するものでは、4つの部分領域からなる組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを空間分散度として算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、単純な数値によって4つの部分領域の分散性を把握することができる。
【0054】
また、変形例に係る画像処理装置10においては、組合せ特定手段14により、候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての組合せが特定されるのに先立って、組合せ特定手段14によって特定された組合せについての指標値の算出を開始するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、全ての組合せが特定されてからそれぞれの組合せの指標値の算出を開始する場合に比べて、指標値算出の開始タイミングを早めることができる。
【0055】
また、変形例に係る画像処理装置10においては、算出済みの指標値の履歴である保持解組合せの指標値に基づいて、新たな組合せを特定してその指標値を算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、新たな組合せとして、指標値の比較的高くなる組合せを選択する可能性を高くすることができる。
【0056】
また、実施形態に係る画像処理装置10においては、平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数a、b、cを乗算した値の和に基づいて指標値を算出する処理を実施するように、指標値算出手段15を構成している。かかる構成では、重み付け係数a、b、cの大きさの比率を調整することで、平坦度、色純度、及び空間分散度のうち、指標値の変化に最も影響を与えるものや、最も影響を与え難くするものを、任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:画像処理装置
12a:部分領域抽出手段
12b:平坦度算出手段
12c:色純度算出手段
12d:優劣判定手段
12:繰り返し処理手段
13:候補領域選択手段
14:組合せ特定手段
15:指標値算出手段
17:被検対象決定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特許第3860540号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法において、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出工程と、
抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出工程と、
抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出工程と、
抽出した部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定工程とを繰り返し実施した後、
画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択工程と、
前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定工程と、
特定した複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出工程と、
前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定工程と
を実施することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、
抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、
抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、
抽出された部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、
前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、
前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、
特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、
前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2の画像処理装置において、
前記部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記平坦度を算出する処理を実施するように、前記平坦度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3の画像処理装置において、
前記部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、前記特定色との均等色空間内におけるユークリッド距離を前記色純度として算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2又は3の画像処理装置において、
前記部分領域における互いに異なる少なくとも3つの色成分のそれぞれの平均値のうち、前記特定色に対応するものの符号を正又は負の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記特定色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて前記色純度を算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、
前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、
前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れかの画像処理装置において、
前記組合せ特定手段により、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての前記組合せが特定されるのに先立って、前記組合せ特定手段によって特定された前記組合せについての前記指標値の算出を開始するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8の画像処理装置において、
算出済みの指標値の履歴に基づいて、新たな組合せを特定してその前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れかの画像処理装置において、
前記平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数を乗算した値の和に基づいて前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
プログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置における、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて複数の前記組合せの中から画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備える画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムを機械読み取り可能に記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項12】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、
前記画像の全領域の中から部分的に抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度、及び特定色に対する純度である色純度を算出し、算出結果に基づいてその部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する処理を繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択し、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出し、算出結果に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理方法において、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出工程と、
抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出工程と、
抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出工程と、
抽出した部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定工程とを繰り返し実施した後、
画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択工程と、
前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定工程と、
特定した複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出工程と、
前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定工程と
を実施することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、
抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、
抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、
抽出された部分領域について、前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、
前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、
前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、
特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、
前記指標値に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2の画像処理装置において、
前記部分領域における画素の色情報である画素値の分散度、画素値の最大値と最小値との差分、及び画素値の周波数特性のうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記平坦度を算出する処理を実施するように、前記平坦度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3の画像処理装置において、
前記部分領域における画素の色情報である画素値の平均と、前記特定色との均等色空間内におけるユークリッド距離を前記色純度として算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2又は3の画像処理装置において、
前記部分領域における互いに異なる少なくとも3つの色成分のそれぞれの平均値のうち、前記特定色に対応するものの符号を正又は負の符号とする一方で、他の平均値の符号を前記特定色に対応する平均値とは逆符号にした数値に基づいて前記色純度を算出する処理を実施するように、前記色純度算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、
前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標の分散共分散行列又はこれの逆表列を前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項2乃至5の何れかの画像処理装置において、
前記組合せにおける各部分領域それぞれの代表点座標間の距離の逆数を総和したものを前記空間分散度として算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れかの画像処理装置において、
前記組合せ特定手段により、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中で成立し得る全ての前記組合せが特定されるのに先立って、前記組合せ特定手段によって特定された前記組合せについての前記指標値の算出を開始するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8の画像処理装置において、
算出済みの指標値の履歴に基づいて、新たな組合せを特定してその前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れかの画像処理装置において、
前記平坦度、色純度、及び空間分散度に対してそれぞれ固有の重み付け係数を乗算した値の和に基づいて前記指標値を算出する処理を実施するように、前記指標値算出手段を構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
プログラムを機械読み取り可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置における、
前記画像の全領域から所定の大きさの部分領域を抽出する部分領域抽出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度を算出する平坦度算出手段と、抽出された部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における特定色に対する純度である色純度を算出する色純度算出手段と、抽出された部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する優劣判定手段と、前記部分領域抽出手段による抽出処理、平坦度算出手段による平坦度算出処理、色純度算出手段による色純度算処理、及び優劣判定手段による優劣判定処理の繰り返しの実施によって複数の前記優秀部分領域が特定された後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択する候補領域選択手段と、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せを特定する組合せ特定手段と、特定された複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値に基づいて複数の前記組合せの中から画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定する被検対象決定手段とを備える画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムを機械読み取り可能に記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項12】
少なくとも画像における個々の画素の色情報を具備する画像情報に基づいて、前記画像の全領域のうち、画質の良否判定の被検対象とする領域を決定する画像処理装置において、
前記画像の全領域の中から部分的に抽出した部分領域の各画素の色情報に基づいてその部分領域全体における濃淡の平坦度、及び特定色に対する純度である色純度を算出し、算出結果に基づいてその部分領域について前記平坦度及び色純度の優れた優秀部分領域であるか否かを判定する処理を繰り返し実施した後、画像の全領域における個々の優秀部分領域の位置に基づいて、画像の全領域の中から、上記被検対象の候補となる候補領域を選択し、前記候補領域に含まれる全ての部分領域の中から所定数の部分領域を選択して組み合わせる場合に成立し得る互いに異なる複数の組合せについてそれぞれ、各部分領域の空間分散度を算出してから、各部分領域の前記平坦度、色純度、及び空間分散度に基づいて被検対象とするか否かを判断するための指標値を算出し、算出結果に基づいて、複数の前記組合せの中から、画質の良否判定の被検対象とする組合せを決定することを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【公開番号】特開2011−119843(P2011−119843A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273507(P2009−273507)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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