説明

画像投射装置

【課題】投射レンズのシフト機能を有しながらも温度ピント補正を良好に行う。
【解決手段】画像投射装置1は、光軸方向に移動可能なフォーカス素子104を含む投射光学系105を通して画像を投射する。該装置は、投射光学系を光軸方向に対して直交する方向にシフトさせて画像の投射位置を移動させるシフト機構103と、投射光学系のシフト位置を検出するシフト位置検出手段107と、温度を検出する温度検出手段106と、該温度検出手段により検出された温度の変化に応じてフォーカス素子を移動させる制御手段308とを有する。制御手段は、シフト位置検出手段により検出されたシフト位置に応じて、温度検出手段により検出された温度の変化に対するフォーカス素子の移動量を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ等の画像投射装置に関し、特に投射光学系のシフト機能と温度ピント補正機能を有する画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投射装置は、光源からの光を、液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス等の光変調素子を介して投射レンズ(投射光学系)に導き、該投射レンズを通してスクリーン等の被投射面に画像を投射する。
【0003】
このような画像投射装置において、温度の変化によって投射レンズにピント変動が生じ、それまでピントが合っていた投射画像がぼけてしまう場合がある。このため、画像投射装置には、温度変化に伴う投射レンズのピント変動を補正する温度ピント補正機能が搭載される場合がある。特許文献1には、温度センサにより検出された温度に基づいて投射レンズのフォーカスレンズの位置を制御することで、投射レンズの温度ピント補正を行う画像投射装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2にて開示されているように、画像投射装置には、被投射面に対する画像の投射位置を調節可能とするために、光変調素子に対して投射レンズをその光軸に直交する方向にシフトさせるレンズシフト機構を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−241260号公報
【特許文献2】特開平05−027324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レンズシフトによって、投射レンズにて光変調素子からの光が通過する領域が変化する。そして、投射レンズにおける光通過領域が変化することによって、温度変化量が同じであっても、投射レンズのピント変動量(被投射面に投射された画像に表れるぼけ量)が異なる。
【0007】
図9(A)には、投射レンズ105が、光変調素子102からの光が投射レンズ105の中心部を通過して被投射面401に至るレンズシフト位置にある場合を示している。また、図9(B)には、投射レンズ105が、光変調素子102からの光が投射レンズ105の周辺部を通過して被投射面401に至るレンズシフト位置にある場合を示している。402はレンズシフト量であり、403は被投射面401における投射画像のシフト量である。101は光源ランプである。これらの2つの場合では、投射レンズ105から被投射面401に至る光路の長さが異なるため、温度変化量が同じであっても、被投射面401に投射された画像のぼけ量が異なる。
【0008】
そして、このような投射レンズのレンズシフト位置(レンズシフト量)に応じた投射画像のぼけを、特許文献1にて開示されているような温度ピント補正だけで低減することができない。
【0009】
本発明は、投射レンズのシフト機能を有しながらも温度ピント補正を良好に行えるようにした画像投射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての画像投射装置は、光軸方向に移動可能なフォーカス素子を含む投射光学系を通して画像を投射する。該画像投射装置は、投射光学系を光軸方向に対して直交する方向にシフトさせて画像の投射位置を移動させるシフト機構と、投射光学系のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された温度の変化に応じてフォーカス素子を移動させる制御手段とを有する。そして、制御手段は、シフト位置検出手段により検出されたシフト位置に応じて、温度検出手段により検出された温度の変化に対するフォーカス素子の移動量を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一側面としての画像投射装置は、光軸方向に移動可能なフォーカス素子を含む投射光学系を通して画像を投射する。該画像投射装置は、投射光学系を光軸方向に対して直交する方向にシフトさせて画像の投射位置を移動させるシフト機構と、投射光学系のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された温度の変化に応じてフォーカス素子を移動させる制御手段とを有する。そして、制御手段は、シフト位置検出手段により検出されたシフト位置に応じて、温度検出手段により検出された温度または該温度の変化量を変更し、該変更後の温度または温度変化量に応じてフォーカス素子を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、投射光学系のシフト位置に応じて、検出された温度の変化に対するフォーカス素子の移動量を変更したり、検出された温度または温度変化量を変更して該変更後の温度または温度変化量を用いてフォーカス素子を移動させたりする。このため、本発明によれば、投射光学系をシフトさせても、温度変化に伴う投射光学系のピント変動の補正、つまりは投射画像のぼけの補正を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1である画像投射装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施例1における温度ピント補正処理の流れを示すフローチャート。
【図3】実施例1における温度変動量とフォーカス補正量との関係を示すグラフ。
【図4】実施例1におけるレンズシフト位置を考慮した温度変動量とフォーカス補正量との関係を示すグラフ。
【図5】実施例1における投射レンズのシフト可能範囲を示す図。
【図6】本発明の実施例2の画像投射装置における温度変動量とレンズシフト量に応じたフォーカス補正量を記述したテーブルデータを示す図。
【図7】本発明の実施例3の画像投射装置における温度ピント補正処理の流れを示すフローチャート。
【図8】実施例3におけるレンズシフト位置を考慮した温度変動量とフォーカス補正量との関係を示すグラフ。
【図9】レンズシフトによるピント変動量の違いを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1には、本発明の実施例1である液晶プロジェクタ(画像投射装置)1の構成を示している。
【0016】
光源ランプ101から射出された光は、光変調素子としての液晶パネル102に入射する。液晶パネル102には、プロジェクタ1に入力された映像信号に応じた原画が形成されており、液晶パネル102に入射した光は該原画に応じて変調されて変調光112となる。
【0017】
変調光112は、光軸方向に移動可能なフォーカスレンズ(フォーカス素子)104を含む投射レンズ(投射光学系)105を通って投射光113として、スクリーン等の被投射面(図示せず)に投射される。これにより、被投射面上に投射画像が表示される。
【0018】
プロジェクタ1は、被投射面上における画像の投射位置を、投射レンズ105の光軸方向に対して直交する方向である水平方向および垂直方向に移動させるレンズシフト機構103を有する。レンズシフト機構103は、2つのシフトモータ109を有し、一方のシフトモータ109からの駆動力によって投射レンズ105を水平方向にシフトさせ、他方のシフトモータ109からの駆動力によって投射レンズ105を垂直方向にシフトさせる。
【0019】
レンズシフト機構103は、投射レンズ105の水平方向および垂直方向でのシフト位置(以下、レンズシフト位置という)を検出するためのリニアエンコーダ107を有する。リニアエンコーダ107は、所定の基準レンズシフト位置に対する投射レンズ105のシフト量に応じた信号を出力する。
【0020】
投射レンズ105に含まれるフォーカスレンズ104は、フォーカスモータ108からの駆動力によって投射レンズ105の光軸方向に移動する。フォーカスレンズ104を移動させることによって、投射画像のピント状態を変化させることができる。
【0021】
プロジェクタ1の内部には、温度センサ106が設けられている。温度センサ106により検出された温度を用いて後述する温度ピント補正処理を行う。温度センサ106の設置位置は、投射レンズ105の近くが望ましいが、温度センサ106の出力値の変動量と投射画像のピント状態の変化量との相関がとれる位置であれば投射レンズ105から離れた位置に設けられてもよい。また、温度センサを複数設けて、それらの検出温度の平均値を温度ピント補正処理に利用してもよい。
【0022】
プロジェクタ1は、電子回路としての制御部300を有する。制御部300において、操作部301は、スイッチ、ボタン、ダイヤル等の操作部材を備え、ユーザによる該操作部材の操作に応じた操作信号をランプ制御部304、画像処理回路303、レンズシフト制御部306およびフォーカス制御部308に出力する。
【0023】
ランプ制御部304は、操作部301からのランプオン/オフ操作信号に応じて、光源ランプ101のオン/オフを切り替える。映像信号入力部302は、外部からの映像信号を受け取って画像処理回路303へ送る。画像処理回路303は、受け取った映像信号のスケーリング、変形および色変換処理を行い、これら処理後の画像データをパネル駆動部305へと転送する。また、画像処理回路303は、メニュー画像等のOSD画像も生成し、パネル駆動部305へと転送する。
【0024】
パネル駆動部305は、画像処理回路303から転送された画像データに応じて液晶パネル102を駆動して、液晶パネル102上に原画を形成させる。
【0025】
レンズシフト制御部306は、操作部301からの水平/垂直レンズシフト操作信号に応じて上述した2つのシフトモータ109を駆動し、レンズシフト機構103を動作させ、水平方向および垂直方向に投射レンズ105をシフトさせる。
【0026】
レンズシフト位置検知部307は、レンズシフト機構103に設けられたリニアエンコーダ107からの出力を読み取ってレンズシフト位置を取得する。そして、取得したレンズシフト位置の情報をフォーカス制御部308に送る。リニアエンコーダ107とレンズシフト位置検知部307とにより、シフト位置検出手段が構成される。
【0027】
温度センサ制御部309は、所定の時間間隔で温度センサ106によって検出された温度を取得し、取得した温度の情報をフォーカス制御部308に送る。温度センサ106と温度センサ制御部309とにより温度検出手段が構成される。
【0028】
フォーカス制御部(制御手段)308は、操作部301からのフォーカス操作信号に応じてフォーカスモータ108を駆動し、フォーカスレンズ104を移動させる。また、フォーカス制御部308は、レンズシフト位置検知部307からのレンズシフト位置の情報と、温度センサ制御部309からの温度の情報とを用いて温度ピント補正処理を行う。
【0029】
次に、図2のフローチャートを用いて、フォーカス制御部308により行われる温度ピント補正処理について説明する。この処理は、フォーカス制御部308がコンピュータプログラムに従って実行する。
【0030】
まず、プロジェクタ1の電源が投入されると、フォーカス制御部308は、温度ピント補正処理の初期化を実行する。この初期化では、フォーカス制御部308は、ステップ40にて、温度センサ制御部309から現在(電源投入時)の温度の情報を取得して、不図示のメモリにおける変数Toに格納する。
【0031】
温度ピント補正処理の初期化が終了した後、操作部301を通じて温度ピント補正処理の開始が指示されたり、自動的にカウントされた所定のタイミングが到来したりすることに応じて、フォーカス制御部308は、温度ピント補正処理を開始する。
【0032】
まず、ステップ41では、フォーカス制御部308は、温度センサ制御部309から現在(ステップ41の実行時)の温度の情報を取得して、メモリにおける変数Tnに格納する。
【0033】
次に、ステップ42では、フォーカス制御部308は、変数Toと変数Tnとの差(To−Td)である温度変動量(温度変化量)を求め、該温度変動量をメモリの変数Tdに格納する。
【0034】
次に、ステップ43では、フォーカス制御部308は、変数Tdに格納された温度変動量を所定のしきい値と比較する。温度変動量(Td)がしきい値より大きければ、ステップ44に進む。温度変動量(Td)がしきい値以下であれば、ステップ46に進む。
【0035】
ステップ44では、フォーカス制御部308は、温度変動量(Td)をパラメータとする関数fによって、フォーカスレンズ104の移動量(以下、フォーカス補正量という)を求め、これをメモリの変数Dに格納する。フォーカス補正量には方向も含まれる。関数fについては後に詳しく説明する。
【0036】
次にステップ45では、フォーカス制御部308は、フォーカス補正量(D)だけフォーカスレンズ104を移動させるようフォーカスモータ108を駆動する。そして、ステップ46で、フォーカス制御部308は、変数Tnの値を変数Toに格納し、温度ピント補正処理の1回のルーチンを終了する。
【0037】
そして、フォーカス制御部308は、このような温度ピント補正処理(ステップ41からの処理)を、所定の時間間隔(例えば、1分間隔)で定期的に行う。
【0038】
次に、関数fについて説明する。この関数fは、温度変動量に対するフォーカス補正量を計算するための関数である。本実施例では、一例として、温度変動量x(=To−Td)に対するフォーカス補正量f(x)を次式(1)で定義する。
【0039】
f(x)=Ax+Bx+C …(1)
式(1)を図3に示す。図3では、横軸に温度変動量xを、縦軸にフォーカス補正量f(x)を示している。
【0040】
そして、本実施例では、レンズシフト位置に応じて式(1)中の係数A,B,Cを異ならせる。これにより、温度変動量xが同じであっても、レンズシフト位置に応じてフォーカス補正量f(x)が変化する。
【0041】
ここで、水平方向のレンズシフト位置をsxとし、垂直方向のレンズシフト位置をsyとする。ただし、(sx+sy)≦1である。また、液晶パネル102上の原画中心が投射レンズ105の光軸と一致するレンズシフト位置を、sx=sy=0とする。
【0042】
sxおよびsyの値と投射レンズ105のシフト位置との関係を図5に示す。図5では、投射レンズ105を光軸方向から見て示している。液晶パネル102からの変調光(投射光)は、投射レンズ105の有効領域51内を通さなければならない。投射レンズ105をシフトさせると、有効領域51内において変調光が通過する領域が変化する。
【0043】
光通過領域54は、原画の中心と投射レンズ105の光軸とが一致し(以下、このときの投射レンズ105のシフト位置を基準シフト位置という)、投射レンズ105の光軸と投射画像の中心とが一致する場合に変調光が有効領域51内を通過する領域である。また、光通過領域53は、投射レンズ105が基準シフト位置から水平方向のシフト端までシフトしたときに変調光が有効領域51内を通過する領域である。光通過領域55は、投射レンズ105が基準シフト位置から垂直方向のシフト端までシフトしたときに変調光が有効領域51内を通過する領域である。
【0044】
本実施例では、水平方向の長さよりも垂直方向の長さが短い画像を投射するため、垂直方向でのレンズシフト可能量が水平方向でのレンズシフト可能量より大きい。この大きい方の垂直方向での基準シフト位置からのレンズシフト可能量を1とすると、sxとsyの可変範囲を表すレンズシフト可能範囲53は、図5に示すように楕円になる。
【0045】
図4には、sx=sy=0のときの関数f(係数をA,B,Cとする)と、基準シフト位置からの距離が1、つまりはsx+sy=1のときの関数f(係数をA,B,Cとする)とを示している。さらに、sxとsyがこれら以外のときの関数f(係数をA,B,Cとする)も併せて示している。この図から分かるように、温度変動量が大きいほどフォーカス補正量を大きくするだけでなく、投射レンズ105のシフト位置が基準シフト位置から離れるほど(レンズシフト量が大きいほど)、同じ温度変動量に対するフォーカス補正量を大きくしている。
【0046】
係数A,B,CとA,B,Cを設計上または実験によって決定することで、以下の計算により各レンズシフト位置に対応する係数A,B,Cを求めることができる。Kは投射レンズ105の基準シフト位置からのシフト量としてのレンズシフト量である。
【0047】
K=√(sx+sy) …(2)
A=KA+(1−K)A…(3)
B=KB+(1−K)B…(4)
C=KC+(1−K)C…(5)
そして、上記式(3)〜(5)により求めた係数A,B,Cを式(1)に適用することで、レンズシフト位置に応じた温度変動量xに対するフォーカス補正量f(x)を求めることができる。
【0048】
本実施例によれば、レンズシフト位置に応じて温度変動量に対するフォーカス補正量を補正(変更)する。このため、投射レンズ105がいずれのシフト位置にあっても温度変化に伴う投射光学系のピント変動の補正、つまりは投射画像のぼけの補正を良好に行うことができる。
【0049】
なお、本実施例では、関数fを二次式で定義したが、温度変動量に対するフォーカス補正量を良好に近似できる関数であれば、一次関数、三次関数、指数関数等の他の関数を用いてもよい。このことは、後述する実施例3でも同じである。
【実施例2】
【0050】
実施例1では、図2に示した温度ピント補正処理のステップ44において、温度変動量をパラメータとする関数fを用いてフォーカス補正量を求める場合について説明したが、フォーカス補正量を予めメモリに格納されたデータテーブルから読み出してもよい。
【0051】
図6には、代表的なレンズシフト量(基準シフト位置からのシフト量)Kと代表的な温度変動量xに応じたフォーカス補正量のデータを含むデータテーブルを示している。レンズシフト量Kは、実施例1で示した式(2)により計算されたものである。該データテーブルでは、代表温度変動量xが−40℃〜+40℃までの範囲にて1℃刻みで設定され、代表レンズシフト量Kは0.0〜1.0までの範囲にて0.2刻みで設定されており、81×6=486個のフォーカス補正量が格納されている。代表温度変動量と代表レンズシフト量の範囲や刻み幅は、任意に変更できる。
【0052】
検出された温度変動量やレンズシフト量が隣り合う2つの代表値(代表温度変動量、代表レンズシフト量)の間の値である場合には、該2つの代表値のうち検出値に近い方の代表値に対応するフォーカス補正量を使用してもよい。また、該2つの代表値を用いた補間演算により使用するフォーカス補正量を求めることもできる。
【0053】
そして、このようなデータテーブルを用いて決定したフォーカス補正量(D)だけフォーカスレンズ104を移動させるように、図2に示したステップ45でフォーカスモータ108を駆動する。これにより、投射レンズ105のシフト位置に応じた温度ピント補正を行うことができる。
【実施例3】
【0054】
実施例1,2では、検出したレンズシフト位置(レンズシフト量)と温度変動量に応じたフォーカス補正量を計算により求めたりデータテーブルから読み出したりする場合について説明した。これに対し、本発明の実施例3では、検出した温度変動量をレンズシフト位置(レンズシフト量)に応じて補正(変更)をした上で、該補正後(変更後)の温度変動量に応じたフォーカス補正量を求める。
【0055】
図7のフローチャートには、本実施例における温度ピント補正処理の流れを示している。図7のフローチャートのうち、実施例1において図2に示したフローチャートと共通するステップについては図2中の符号と同符号を付して説明に代える。
【0056】
本実施例では、ステップ42の次にステップ71を追加している。このステップ71では、フォーカス制御部308は、ステップ42で求められた温度変動量の検出値Td(To−Tn:以下、検出温度変動量という)を、該Tdをパラメータとする関数gによって補正し、補正後温度変動量としてメモリの変数Tdに格納しなおす。
【0057】
そして、次のステップ43′において、補正後温度変動量(Td)としきい値とを比較し、補正後温度変動量(Td)がしきい値より大きければ、ステップ44′に、そうでなければステップ46に進む。
【0058】
ステップ44′では、フォーカス制御部308は、補正後温度変動量(Td)をパラメータとする関数f′によって、フォーカス補正量を求め、これをメモリの変数Dに格納する。関数f′については後に詳しく説明する。
【0059】
ステップ71で用いる関数gについて説明する。この関数gは、レンズシフト量に応じて検出温度変動量を補正する関数である。本実施例では、検出温度変動量をxとしたときの補正後温度変動量g(x)を次のように定義する。
【0060】
g(x)=(RK+1)x …(6)
Rは任意の係数であり、設計上または実験等により決定される。Kはレンズシフト量であり、実施例1に示した式(2)によって定義される。
【0061】
例えば、Rを+0.5としたときの補正後温度変動量g(x)の変化を図8に示す。図8に示すように、レンズシフト量Kに応じて、同じ検出温度変動量xに対する補正後温度変動量g(x)が変化する。具体的には、レンズシフト量Kが大きいほど、同じ検出温度変動量xに対する補正後温度変動量g(x)が大きくなる。
【0062】
次に、ステップ44′で用いる関数f′について説明する。関数f′は、補正後温度変動量xに対するフォーカス補正量を計算する関数である。本実施例では、関数f′として、レンズシフト量に関わらず係数A,B,Cを固定した式(1)を用いる(図3参照)。関数f′は、投射レンズ105が基準シフト位置(sx=sy=0)にあるときのフォーカス補正量を示すようにその係数A,B,Cが設計上または実験等によって決定される。
【0063】
本実施例でも、レンズシフト位置に応じて温度変動量に対するフォーカス補正量を変更するので、投射レンズ105がいずれのシフト位置にあっても温度変化に伴う投射光学系のピント変動の補正、つまりは投射画像のぼけの補正を良好に行うことができる。
【0064】
さらに、実施例1と比較して、フォーカス補正量を算出する際の演算量を減らすことができる。
【0065】
なお、本実施例では、検出された温度変動量(To−Tn)をレンズシフト位置に応じて補正する場合について説明した。しかし、検出された温度であるTo,Tnをそれぞれレンズシフト位置に応じて補正(変更)し、該補正後の検出温度の差として補正後温度変動量を求めてもよい。
【0066】
上記各実施例では、液晶プロジェクタについて説明したが、本発明は、デジタルマイクロミラーデバイスやレーザー光走査デバイスを用いた、液晶プロジェクタ以外の画像投射装置にも適用することができる。
【0067】
また、投射光学系は、レンズ系に限らず、プリズムやミラー等の他の光学素子を用いて構成された光学系であってもよい。
【0068】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
レンズシフト機能を有しながらも温度ピント補正を良好に行える画像投射装置を提供できる。
【符号の説明】
【0070】
1 液晶プロジェクタ
103 レンズシフト機構
104 フォーカスレンズ
105 投射レンズ
106 温度センサ
107 リニアエンコーダ
308 フォーカス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に移動可能なフォーカス素子を含む投射光学系を通して画像を投射する画像投射装置であって、
前記投射光学系を前記光軸方向に対して直交する方向にシフトさせて前記画像の投射位置を移動させるシフト機構と、
前記投射光学系のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、
温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段により検出された温度の変化に応じて前記フォーカス素子を移動させる制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記シフト位置検出手段により検出された前記シフト位置に応じて、前記温度検出手段により検出された前記温度の変化に対する前記フォーカス素子の移動量を変更することを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
光軸方向に移動可能なフォーカス素子を含む投射光学系を通して画像を投射する画像投射装置であって、
前記投射光学系を前記光軸方向に対して直交する方向にシフトさせて前記画像の投射位置を移動させるシフト機構と、
前記投射光学系のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、
温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段により検出された温度の変化に応じて前記フォーカス素子を移動させる制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記シフト位置検出手段により検出された前記シフト位置に応じて、前記温度検出手段により検出された前記温度または該温度の変化量を変更し、該変更後の温度または温度変化量に応じて前記フォーカス素子を移動させることを特徴とする画像投射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−237482(P2011−237482A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106413(P2010−106413)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】