説明

画像検査装置及び画像形成装置

【課題】被計測対象物の全域において濃度分布及び光沢分布を高精度で検査可能でありながら、低コストな画像検査装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】光沢用照明装置14と濃度用照明装置15とを同時に点灯させて給紙装置13によって出力画像を搬送させる。また、被検査対象物22の画像の表面からの不可視光の正反射光のみを受光して光量に基づいて光沢分布を出力する撮像素子ライン11a、及び被検査対象物22の画像の内部に透過した後に反射する可視光の拡散反射光のみを受光して光量に基づいて濃度分布を出力する撮像素子ライン11bを設ける。これにより、被検査対象物の全域の光沢分布及び濃度分布を同時に検査できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査対象物の画像を検査する画像検査装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、形成されたトナー像が熱定着器によって紙上で溶かされて固着するため、そのトナー像の光沢度はトナー付着量に応じて上がる。ところが、正確なトナーの付着量分布で画像を形成できたとしても、上記熱定着器の不具合などにより、トナー像の定着状態が不均一になってスジ状に定着状態が変化する場合がある。このような場合、画像を形成するトナーの濃度分布はほとんど変化が無いが、斜めから観察するとスジ状に変化が見られ、いわゆる定着スジと呼ばれる画像不良と判断される。そこで、この定着スジを検出するため被検査対象物の光沢分布を検出する。また、電子写真方式の画像形成装置をデジタル印刷機として活用する場合、透明トナーを用いたことでの出力画像への光沢形成や、高光沢用紙を用いての画像形成などが試みられ、光沢に関わる画像品質への要求も高まっている。
【0003】
出力画像を検査する検査装置として、電子写真方式の画像形成装置から出力された画像をオンデマンドに検査でき、かつ出力画像の全域を濃度分布のみならず光沢分布まで検査できる画像検査装置が望まれている。濃度分布の計測は、JISの光学分野(JIS Z 8722−2000「色の測定方法―反射及び透過物体色」)に記載されているように、照明光を所定の角度で被検査対象物に照射させる。各色のトナーで形成された被検査対象物上の画像内に透過した照射光は各色のトナーにおいて一部吸収され、その残りの照射光が拡散反射し、この拡散反射光の光量を計測することで行われる。また、光沢分布の計測は、JISの光学分野(JIS Z 8741−1997「鏡面光沢度測定方法」)にて詳しく記載されているように、照明光を一定の角度で被検査対象物に照射させ、被検査対象物から正反射した出射光の光量を計測することで行われる。この場合、照射光の入射角度と反射光の出射角度とは一致しておりその角度は被検査対象物に応じて設定される。
【0004】
出力画像の光沢分布を計測する方法として特許文献1に記載されたものが知られ、出力画像の光沢分布及び濃度分布をそれぞれ計測する方法として特許文献2に記載されたものが知られている。上記特許文献1の方法では、被検査対象物に対して所定の入射角度から平行照明光を照射して、被検査対象物から正反射する方向に配置された2次元撮像の撮像部によって画像の2次元光沢分布を取得するものである。しかし、上記特許文献1では、2次元の撮像部では所定の領域の局所的な光沢分布しか取得できない。
【0005】
上記特許文献2の方法は、1つの光沢分布検査用照明手段である反射用線状光源、2つの濃度分布検査用照明手段である拡散反射用線状光源、ハーフミラー、及び光学読取手段であるラインセンサカメラを用いる。反射用線状光源から照射された照射光はハーフミラーで反射されて被検査対象物に照射され、被検査対象物から反射されてくる反射光はハーフミラーを通過してラインセンサカメラに受光される。一方、各拡散反射用線状光源から照射された照射光は先ず被検査対象物に照射され、被検査対象物から反射されてくる反射光はハーフミラーを通過してラインセンサカメラに受光される。そして、反射用線状光源と各拡散反射用線状光源とを交互に点灯させて被検査対象物を一方向に走査する。これにより、ラインセンサカメラで被検査対象物からの反射光を一次元に受光して出力画像全域の光沢分布及び濃度分布をそれぞれ取得することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の方法では、ハーフミラーを用いたことでラインセンサカメラに到達した各反射光の光量は照射光の光量に比して非常に減少することになる。このため、ラインセンサカメラの出力信号の電圧値が低くなり正確な検査結果を得ることができないという問題があった。また、上記特許文献2の方法のように、濃度画像と光沢画像を一ライン毎順次読み取って高解像度で画像読取を行うため、高い動作クロックのラインセンサカメラが必要となって高コストとなる。更に、反射用線状光源と各拡散反射用線状光源とをラインセンサカメラの動作クロックと同期して交互に点灯させる、いわゆる順次点滅を行っており、この順次点滅の制御が必要となり更なる高コストとなる。また、被検査対象物は副走査方向に一定の速度で搬送されて一ライン毎順次読み取る処理となっているので、先行した読取ポイントと後続の読取ポイントは同一とならない。このため、濃度画像と光沢画像の読取ポイントは完全に同一ではなく、副走査方向に1/2画素分ずれる。これにより、この1/2画素分のずれを修正するための画像処理が必要となり高速処理に不利となる。
【0007】
本出願人は、特願2010−96931号(以下先願という)において、光沢分布検査用照明手段である光沢用照明装置と、濃度分布検査用照明手段である濃度用照明装置と、撮像素子とを設けている画像検査装置を提案している。この先願の画像検査装置では、光沢用照明装置から照射された照射光が被検査対象物から直接に正反射してくる位置に撮像素子を配置し、配置した撮像素子によって光沢用照明装置から照射された照明光に対する正反射光と濃度用照明装置から照射された照明光に対する拡散反射光とに基づいて取得した光沢分布及び濃度分布を検査する。濃度用照明装置から照射された照明光は被検査対象物の画像から拡散反射されるため撮像素子の位置は任意でよい。この先願の画像検査装置によれば、上記特許文献2のハーフミラーを用いることなく、十分な光量の正反射光や拡散反射光に基づいて1ライン(1次元)の光沢分布及び濃度分布の各計測を行い、搬送装置によって出力画像を搬送させることにより被検査対象物の全域において光沢分布及び濃度分布を高精度で検査できる。
【0008】
しかしながら、上記先願の画像検査装置では、光沢用照明装置を点灯し、濃度用照明装置を消灯させて1ラインの読取領域に光沢用照明光を照射することで撮像素子によって読取領域からの正反射光の光量を取得する。そして、取得した正反射光の光量に基づいて読取領域の光沢分布を計測している。次に、光沢用照明装置を消灯し、濃度用照明装置を点灯させて1ラインの読取領域に濃度用照明光を照射することで撮像素子によって読取領域からの拡散反射光の光量を取得する。そして、取得した拡散反射光の光量に基づいて読取領域の濃度分布を計測している。つまり、先願の画像検査装置でも、撮像素子の動作クロックに合わせて光沢用照明装置と濃度用照明装置とを順次、点灯と消灯との制御を行う制御装置が必要となり、装置の高コスト化となる。また、光沢分布と濃度分布の取得画像位置が搬送方向で1動作クロック分ずれてしまい、濃度画像と光沢画像の読取ポイントは完全に同一ではなく副走査方向に1/2画素分ずれる。このため、このずれを補正するための画像処理を行う画像処理装置が必要となり、装置の高コスト化となる。更に、濃度分布と光沢分布の両方の搬送方向における読取解像度を確保するために、各分布読取毎の動作クロックが必要となりその結果2倍の動作クロックで読み取らなければならず、高価な撮像素子が必要となる。このように、先願の画像検査装置でも、上記特許文献2の課題の一部である、装置の高コスト化を解決できていなかった。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、被計測対象物の全域において濃度分布及び光沢分布を高精度で検査可能でありながら、低コストな画像検査装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像が形成された被検査対象物に対して濃度分布検査用照明光を照射する濃度分布検査用照明手段と、前記被検査対象物に対して光沢分布検査前照明光を照射する光沢分布検査用照明手段と、記被検査対象物から反射されてくる拡散反射光及び正反射光を受光する光学読取手段と、を有し、前記光学読取手段の受光した前記拡散反射光の光量及び前記正反射光の光量に基づいて取得した前記被検査対象物上の画像の濃度分布及び光沢分布を検査する画像検査装置において、前記濃度分布検査用照明手段は可視光である前記濃度分布検査用照明光を照射し、前記光沢分布用照明手段は不可視光である前記光沢分布検査用照明光を照射し、前記光学読取手段は、前記濃度分布検査用照明手段と前記光沢分布用照明手段とを同時に点灯し、前記被検査対象物上の画像内部に透過した後に画像形成物で拡散反射された可視光の前記拡散反射光のみを受光して前記拡散反射光の光量に基づいて濃度分布を出力する第1の光学読取手段と、前記被検査対象物上の画像の表面から正反射された不可視光の前記正反射光のみを受光して前記正反射光の光量に基づいて光沢分布を出力する第2の光学読取手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の画像検査装置において、前記第1の光学読取手段は前記可視光の拡散反射光に感度を有する撮像素子をライン状に配列する撮像素子ラインを具備し、前記第1の光学読取手段は前記可視光のRGBのそれぞれに感度を有する撮像素子をライン状に配列するRGB毎の各撮像素子ラインを具備することを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項2記載の画像検査装置において、前記可視光は白色光であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像検査装置において、前記光沢分布用照明手段と前記被検査対象物との間に、かつ前記被検査対象物と前記第2の光学読取手段との間に、それぞれ偏光フィルタを設け、前記光沢分布用照明手段から照射された不可視光の前記光沢分布検査用照明光のうち前記被検査対象物の表面で反射した光成分のみが前記第2の光学読取手段に受光するように前記各偏光フィルタの偏光角度を設定することを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像検査装置を搭載し、該画像検査装置によって記録媒体に形成された画像を検査し、検査結果に基づいて画像形成を制御することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、画像形成装置によって形成された画像に照明光を照射すると、画像を構成する例えば多色トナーなどの画像成分の色と同じ照明光の色成分は当該画像成分に吸収され、吸収された残りの照明光の色成分は反射する。よって、被検査対象物上の画像の濃度は、照射光の一部が吸収され残りが反射してくる反射光である拡散反射光の光量から求められる。つまり、濃度が高い色の画像成分では当該色と同じ照明光の色成分を多く吸収するため、拡散反射光の光量は減る。逆に、濃度が低い色の画像成分では照明光の色成分の吸収が少なく拡散反射光の光量は多くなる。よって、各色の拡散反射光の光量を計測し、この光量に基づいて画像の濃度を計測することで、画像の濃度分布が得られる。このことから、被検査対象物に照射される濃度分布検査用照明光は、画像を構成する画像成分に吸収される光であり例えばRGBなどの各色成分を有する可視光となる。一方、被検査対象物上の画像の光沢分布は、画像の表面から正反射された正反射光の光量分布に相当する。そのため、被検査対象物に照射される光沢分布検査用照明光は、被検査対象物上の画像に反射する光であればよく、可視光又は不可視光のいずれでもよい。被検査対象物に可視光のみを照射して濃度分布と光沢分布を検査する場合画像の濃度に相当する光成分に光沢度に相当する光成分が混在してしまい正確に濃度分布を計測できない。これらにより、画像の濃度分布を計測するために被検査対象物に照射する濃度分布検査用照明光は可視光とし、光沢分布を計測するために被検査対象物に照射する光沢分布検査用照明光は不可視光とする。また、被検査対象物上の画像に同時に可視光及び不可視光を照射しても互いに光波長が異なり干渉しないため濃度分布及び光沢分布の各検査結果には影響しない。よって、濃度分布検査用照明手段及び光沢分布検査用照明手段を同時に点灯して被検査対象物の画像に同時に可視光及び不可視光を照射し、可視光によって濃度分布及び不可視光によって光沢分布を同時にそれぞれ計測することができる。これにより、順次に点灯と消灯との制御を行う必要がなくなり、同時に計測するため光沢分布と濃度分布の読取ポイントも同一となるので位置ずれを補正する画像処理を行う必要がなくなる。また、濃度分布と光沢分布の読取も同時であるために等倍の動作クロックの撮像素子でよい。よって、各照明装置の点灯と消灯の制御装置、画像処理装置及び高速出力の撮像素子が不要となり、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、被計測対象物の全域において濃度分布及び光沢分布を高精度で検査可能でありながら、低コストな画像検査装置及び画像形成装置を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の画像検査装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態の画像検査装置の構成を示す側面図である。
【図3】本実施形態の画像検査装置に用いる撮像素子の構成を示す正面図である。
【図4】本実施形態の画像検査装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態の画像検査装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像形成装置100は、本実施形態の画像検査装置10を搭載し、更に給紙カセット101a、101b、給紙ローラ102a、102b、コントローラ103、光走査光学系104、感光体105、中間転写体106、定着ローラ107及び排紙ローラ108を含んで構成されている。このような画像形成装置100において、給紙カセット101a、101bから給紙ローラ102a、102bにより搬送された画像担持媒体200上に、走査光学系104により感光体105に露光され、色材が付与されて現像された画像が中間転写体106上に、次いで中間転写体106から転写される。画像担持媒体200上に転写された画像は定着ローラ107により定着され、画像担持媒体200は排紙ローラ108により排紙される。後述する本実施形態の画像検査装置10は、定着ローラ107の後段に設置されている。
【0015】
このような構成を有する画像形成装置100によれば、画像形成装置100の所定の位置である定着ローラ107の後段に設置された本実施形態の画像検査装置10により、画像形成された画像担持媒体200の光沢分布を高精度で検査でき、更に濃度分布も検査できる。そして、光沢分布や濃度分布の検査結果を画像形成部にフィードバックすることにより、画像担持媒体200上に高品質な画像を形成できる。
【0016】
図2は本実施形態の画像検査装置の構成を示す側面図である。同図に示す本実施形態の画像検査装置10は、撮像素子11、結像レンズ12、給紙装置13、光沢用照明装置14及び濃度用照明装置15を含んで構成されている。撮像素子11は、CCD方式やCMOS方式の撮像素子であり、特に1次元で読み取るタイプの撮像素子を用いる。結像レンズ12は、画像検査装置10にて光沢分布及び濃度分布を読み取る読取領域21からの反射光を撮像素子11に導く結像レンズである。給紙装置13は出力画像が形成されている被検査対象物22を1方向の図中矢印Aの搬送方向に移動させる。光沢用照明装置14は被検査対象物22の読取領域21を入射角度θで入射して照明し、その照明光14aはLEDアレイ照明などから照射された赤外光もしくは紫外光などの不可視光である。ここで、この不可視光は波長が360[nm]〜830[nm]の範囲外である光であり、また可視光は具体的にはRGBの各光を指し、波長が450[nm]〜750[nm]の光である。その光沢用照明装置14から出射される照明光14aは、読取領域21に入射される入射角度θと、撮像素子11と結像レンズ12とから定められる出射角度θとが正確に一致するように入射されている。光沢用照明装置14からの照明光14aは平行光ではなく、読取領域21に到達した出射光が正反射した場合、それぞれ結像レンズ21の瞳に向くよう指向されている。
【0017】
物体の表面反射成分、すなわち光沢成分は光の波長に依存しないため、可視光又は不可視光の違いは生じない。それに対して、画像濃度成分、すなわち物体の内部に透過した後反射された光の成分は波長によってその吸収される割合が異なるので、可視光の濃度分布を取得したい場合は他波長光で置き換えることはできない。そこで、本実施形態によれば、濃度用照明装置15は読取領域21に対する入射角度と出射角度とが一致しない位置に設定され、被検査対象物22の読取領域21に所定の角度で入射する照明光15aを照射する。ここでの所定の角度は入射角度θ1と異なる角度であれば任意でよく、例えば90[deg]とすることもできる。濃度用照明装置15としては、例えば通常のキセノンランプ照明やLEDアレイ照明などの拡散照明装置を用いることができる。
【0018】
そして、撮像素子11は、後述する図3に示すように、光沢用照明装置14の不可視光のみに感度を有する撮像素子ライン11aと、濃度用照明装置15の可視光のみに感度を有する撮像素子ライン11bとを備えている。光沢用照明装置14の設置位置から、不可視光のみに感度を有する撮像素子ライン11aは、出力画像の正反射光、すなわち光沢成分を主に検出することとなり、濃度用照明装置15の照明光の可視光には影響されない。一方、濃度用照明装置15の設置位置から、可視光のみに感度を有する撮像素子ライン11bは、出力画像の拡散反射光、すなわち画像濃度成分を主に検出することとなり、光沢用照明装置14の照明光には影響されない。
【0019】
画像検査装置10における光沢分布及び濃度分布の各検査は以下のように行われる。すなわち、画像検査装置10は、光沢用照明装置14及び濃度用照明装置15を同時に点灯し、1ラインの読取領域21に照明光14a及び照明光15aを照射する。そして、撮像素子14で読取領域21からの正反射光14b及び拡散反射光15bの光量を取得する。そして、取得した正反射光14bの光量に基づいて読取領域21の光沢分布、かつ拡散反射光15bの光量に基づいて読取領域21の濃度分布をそれぞれ検査する。これで、1ライン(1次元)の光沢分布及び濃度分布の検査が終了する。このような検査を、給紙装置13によって被検査対象物22を順次送りながら撮像素子11によって撮影することで被計測画像全域の濃度画像及び光沢画像を取得する。光沢用照明装置14の照明光の波長は、まずは撮像素子11に感度があって、さらに画像機器や出力画像、これを取り扱う人に対する悪影響の無いものとする必要がある。一般に、CCDなどは近赤外光に感度を有し、また紫外光に比べて人への悪影響も小さいことから、波長が0.7[μm]〜2.5[μm]である近赤外光が望ましい。
【0020】
図3は本実施形態の画像検査装置に用いる撮像素子の構成を示す正面図である。同図において、撮像素子11は光沢用照明装置14の不可視光に感度を有する撮像素子ライン11aであって、その表面に不可視光をバンドパスしさらに可視光をカットするフィルタを形成している。撮像素子そのものに不可視光の感度があることが前提となる。また、撮像素子11は濃度用照明装置15の可視光に感度を有する撮像素子である撮像素子ライン11b−R、11b−G、11b−BがRGBの光(波長が450[nm]〜750[nm]の光)にそれぞれ感度を持つことで、出力画像のカラー画像の濃度分布を検出することができる。前述のRGB光に感度を有する撮像素子には、RGBのバンドパスフィルタが不可視光を通してしまう場合、これを通さないカットフィルタも併せて形成する必要がある。また、濃度用照明装置15が、白色光などの可視光、つまり不可視光を含まない光を照射させるようにする。このことで、濃度用照明装置15から照射され被検査対象物22から拡散反射光15bはRGBの撮像素子ライン11b−R、11b−G、11b−Bのみに検出される。そして、光沢用照明装置14が不可視光であって白色光を含まない光を照射させることで、光沢用照明装置14の照明光は不可視光用の撮像素子ライン11−aのみに検出されることになる。すなわち、両照明光を同時に照射しても、互いに影響することなく、出力画像を反射した照明光を各撮像素子ラインがそれぞれ検出することができる。
【0021】
図4は本実施形態の画像検査装置の変形例を示す側面図である。同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示すように、光沢用照明装置14の射出側には偏光フィルタ31が設置され、また不可視光に感度を有する撮像素子ライン11aの前面にも偏光フィルタ32が設置されている。これらの偏光フィルタ31、32は、その偏光角度を一致させるように設定する。光沢用照明装置14から出射された照明光は不可視光であると同時に、偏光フィルタ31の作用によってある偏光角度のみの光成分となる。この照明光が被検査対象物22上のトナー付着部33に到達した場合、その表面で反射した表面反射光34の成分、すなわち光沢成分はその光の偏光角度が変わることがなく、撮像素子の直前の偏光フィルタ32も通過して撮像素子ライン11aによって検出される。一方、トナー付着部33の内部にまで到達した照明光の場合、内部透過反射光35である濃度成分の光はトナー付着部33の内部で偏光角度が変化する。そのため、内部透過反射光35は撮像素子11における撮像素子ライン11aの直前に設置された偏光フィルタ32によって排除されるので、濃度成分は検出されない。
【0022】
以上説明したように、実施形態によれば、図2に示すように、光沢用照明装置14と濃度用照明装置15とを同時に点灯させて給紙装置13によって出力画像を搬送させることにより、被検査対象物の全域の光沢分布に相当する光量及び濃度分布に相当する光量を同時に計測できる。特に、撮像素子の動作クロックに合わせて光沢用照明装置と濃度用照明装置とを順次、点灯と消灯との制御を行う必要があり、そのための制御装置が必要であった従来技術に対して、本実施形態では連続点灯で良いため、点滅制御や動作クロック同期制御など装置が不要となって安価となる。また、従来技術では、光沢分布と濃度分布の取得画像位置が搬送方向で1動作クロック分ずれてしまう。このため、これを補正するための画像処理が必要であったのに対して、本実施形態では同時読み取りであるので補正するための画像処理が不要となる。また、従来の方法では濃度分布と光沢分布の両方の搬送方向読み取り解像度を確保するために2倍の動作クロックで1撮像素子を読み取らなければならなかったが、本実施形態では同時読み取りであるため等倍の動作クロックでよく、撮像素子や動作回路をより安価にすることができる。
【0023】
また、実施形態によれば、図3に示すように、光沢画像と画像濃度を完全に独立して同時に取得できるので、特にフルカラー画像の検査を高精度に実施できる。
【0024】
更に、実施形態によれば、図4に示すように、光沢画像の取得において、偏光フィルタ31、32によって正反射成分以外の照明光をカットできるので、画像濃度の影響は受けない。特に被検査画像の画像部内部に透過して反射された拡散反射光の影響を受けないため、より高品位に画像の光沢分布を検査できる。
【符号の説明】
【0025】
10 画像検査装置
11 撮像素子
11a 撮像素子ライン
11b 撮像素子ライン
12 結像レンズ
13 給紙装置
14 光沢用照明装置
15 濃度用照明装置
21 読取領域
22 被検査対象物
31 偏光フィルタ
32 偏光フィルタ
33 トナー付着部
34 表面反射光
35 内部透過反射光
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2006−284550号公報
【特許文献2】特開2000−123152号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された被検査対象物に対して濃度分布検査用照明光を照射する濃度分布検査用照明手段と、前記被検査対象物に対して光沢分布検査前照明光を照射する光沢分布検査用照明手段と、記被検査対象物から反射されてくる拡散反射光及び正反射光を受光する光学読取手段と、を有し、前記光学読取手段の受光した前記拡散反射光の光量及び前記正反射光の光量に基づいて取得した前記被検査対象物上の画像の濃度分布及び光沢分布を検査する画像検査装置において、
前記濃度分布検査用照明手段は可視光である前記濃度分布検査用照明光を照射し、
前記光沢分布用照明手段は不可視光である前記光沢分布検査用照明光を照射し、
前記光学読取手段は、前記濃度分布検査用照明手段と前記光沢分布用照明手段とを同時に点灯し、前記被検査対象物上の画像内部に透過した後に画像形成物で拡散反射された可視光の前記拡散反射光のみを受光して前記拡散反射光の光量に基づいて濃度分布を出力する第1の光学読取手段と、前記被検査対象物上の画像の表面から正反射された不可視光の前記正反射光のみを受光して前記正反射光の光量に基づいて光沢分布を出力する第2の光学読取手段とを有することを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像検査装置において、
前記第1の光学読取手段は前記可視光の拡散反射光に感度を有する撮像素子をライン状に配列する撮像素子ラインを具備し、前記第1の光学読取手段は前記可視光のRGBのそれぞれに感度を有する撮像素子をライン状に配列するRGB毎の各撮像素子ラインを具備することを特徴とする画像検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像検査装置において、
前記可視光は白色光であることを特徴とする画像検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像検査装置において、
前記光沢分布用照明手段と前記被検査対象物との間に、かつ前記被検査対象物と前記第2の光学読取手段との間に、それぞれ偏光フィルタを設け、前記光沢分布用照明手段から照射された不可視光の前記光沢分布検査用照明光のうち前記被検査対象物の表面で反射した光成分のみが前記第2の光学読取手段に受光するように前記各偏光フィルタの偏光角度を設定することを特徴とする画像検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像検査装置を搭載し、該画像検査装置によって記録媒体に形成された画像を検査し、検査結果に基づいて画像形成を制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247280(P2012−247280A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118657(P2011−118657)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】