説明

画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体

【課題】小さな処理負荷で画像における明るさを適切に表現することができる画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体を提供すること。
【解決手段】画像の明るさを調整するための画像生成システムである。この画像生成システムは、画像を構成する画素の色に基づいて画像の明るさを検出する明るさ検出部124と、画像の明るさに応じた調整倍率を設定する調整倍率設定部126と、調整倍率に基づいて、画像を構成する画素の色を調整する色調整部128とを含み、調整倍率設定部126が、画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、画素の色を暗くするように調整倍率を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間において仮想カメラ(所与の視点)から見える画像を生成する画像生成システム(ゲームシステム)が知られており、いわゆる仮想現実を体験できるものとして人気が高い。格闘ゲームを楽しむことができる画像生成システムを例に取れば、プレーヤは、操作部(ゲームコントローラ等)を用いて移動体(キャラクタ等)に関する操作(攻撃操作、防御操作、移動操作等)を行い、他のプレーヤ(コンピュータプレーヤも含まれる)の移動体と格闘するゲームを楽しむ。
【0003】
ところで、上述した画像生成システムには、ディスプレイで表示できる明るさ(ローダイナミックレンジ(LDR)の明るさ)よりも明るい明るさ(ハイダイナミックレンジ(HDR)の明るさ)の情報を記録できるようにしておき、HDRの明るさ情報の中で最も明るい情報に合わせて、HDRの明るさ情報に基づいてLDRの画像を生成するものがある。
【0004】
そしてこのような画像生成システムには、HDRの明るさ情報をLDRの画像に変換することにより画素の階調が失われないように、HDRに固有の明るさの画素とHDRに固有の明るさではない画素とで異なる変換式を用いるものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−345509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法では、フレーム毎に各画素の明るさ情報を判定しなければならないため処理負荷が大きく、移動体や仮想カメラの移動頻度が多くフレーム毎の画像の計算量が多い画像生成システムには適用しにくいという問題があった。
【0006】
本出願は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小さな処理負荷で画像における明るさを適切に表現することができる画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、
画像の明るさを調整するための画像生成システムであって、
前記画像を構成する画素の色に基づいて画像の明るさを検出する明るさ検出部と、
前記画像の明るさに応じた調整倍率を設定する調整倍率設定部と、
前記調整倍率に基づいて、前記画像を構成する画素の色を調整する色調整部とを含み、
前記調整倍率設定部が、
前記画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、前記画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、前記画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、前記画素の色を暗くするように調整倍率を設定することを特徴とする画像生成システムに関するものである。また本発明は、上記各部としてコンピュータを機能させるプログラム及びそのようなプログラムを記憶するコンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体に関するものである。
【0008】
本発明によれば、画像が全体として暗い画像である場合には、画像が明るくなるような調整倍率を設定し、画像が全体として明るい画像である場合には、画像が暗くなるような調整倍率を設定することができるので、幅広い範囲の明るさの画像を生成しつつ、画素毎の調整処理を必要とせずに小さな処理負荷で適切な明るさの画像に調整することができる。
【0009】
(2)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、
前記明るさ検出部が、
前記画像の所定領域を構成する複数の画素を抽出して、当該複数の画素の色を補間することによって、当該所定領域を構成する各画素の色を補間した色に基づいて、前記画像の明るさを検出するようにしてもよい。
【0010】
このようにすれば、画像の明るさを検出する際の処理負荷を小さくすることができ、より小さな処理負荷で適切な明るさの画像を生成することができる。
【0011】
(3)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、
前記画像が、3次元オブジェクトが配置されたオブジェクト空間を所与の視点から見た画像であって、
前記明るさ検出部が、
前記画像における前記視点の注視点を含む画像領域を前記所定領域として特定するようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、画像の中心付近の明るさに応じて調整倍率を設定することができ、画像の見やすさを損なわずに処理負荷をより小さくすることができる。
【0013】
(4)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、
第1の範囲で画素の色を決定する描画部と、
所定の縮小倍率に基づいて、前記第1の範囲で決定された画素の色を前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲の色に変換する色変換部とを含み、
前記色調整部は、
前記調整倍率と前記所定の縮小倍率に応じた所定の拡大倍率とに基づいて、前記第2の範囲に変換された画素の色を調整するようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、より幅広い範囲の明るさの画像を生成しつつ、画素毎の調整処理を必要とせずに小さな処理負荷で適切な明るさの画像に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.構成
図1に本実施形態の画像生成システム(ゲームシステム)の機能ブロック図の例を示す。なお本実施形態の画像生成システムは図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0017】
操作部160は、プレーヤがプレーヤオブジェクト(移動体オブジェクトの一例、プレーヤが操作するプレーヤキャラクタなど)の操作データを入力するためのものであり、その機能は、レバー、ボタン、ステアリング、マイク、タッチパネル型ディスプレイ、或いは筺体などにより実現できる。記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能はRAM(メインメモリ172)、VRAM(ビデオメモリ174)などにより実現できる。
【0018】
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)が記憶される。
【0019】
表示部190は、本実施形態により生成された画像を出力するものであり、その機能は、CRT、LCD、タッチパネル型ディスプレイ、或いはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などにより実現できる。音出力部192は、本実施形態により生成された音を出力するものであり、その機能は、スピーカ、或いはヘッドフォンなどにより実現できる。
【0020】
携帯型情報記憶装置194は、プレーヤの個人データやゲームのセーブデータなどが記憶されるものであり、この携帯型情報記憶装置194としては、メモリカードや携帯型ゲーム装置などがある。通信部196は外部(例えばホスト装置や他の画像生成システム)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0021】
なお本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ)は、ホスト装置(サーバー)が有する情報記憶媒体からネットワーク及び通信部196を介して情報記憶媒体180(あるいは記憶部170のメインメモリ172)に配信してもよい。このようなホスト装置(サーバー)の情報記憶媒体の使用も本発明の範囲内に含めることができる。
【0022】
処理部100(プロセッサ)は、操作部160からの操作データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。ここでゲーム処理としては、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、キャラクタやマップなどのオブジェクトを配置する処理、オブジェクトを表示する処理、ゲーム結果を演算する処理、或いはゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などがある。この処理部100は記憶部170内のメインメモリ172をワーク領域として各種処理を行う。処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU(メインプロセッサ)、GPU(描画プロセッサ)、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0023】
処理部100は、オブジェクト空間設定部110、移動・動作処理部112、仮想カメラ制御部114、描画部120、色変換部122、明るさ検出部124、調整倍率設定部126、色調整部128、音生成部130を含む。なおこれらの一部を省略する構成としてもよい。
【0024】
オブジェクト空間設定部110は、オブジェクトデータ記憶部172に記憶されているオブジェクトデータに基づいて、キャラクタ、車、建物、樹木、柱、壁、コース(道路)、マップ(地形)などの表示物を表す各種オブジェクト(ポリゴン、自由曲面又はサブディビジョンサーフェスなどのプリミティブで構成されるオブジェクト)や、光が進行する方向や強さや色を示す光源をオブジェクト空間に配置設定する処理を行う。即ちワールド座標系でのオブジェクトの位置や回転角度(向き、方向と同義)を決定し、決定された位置(X、Y、Z)に決定された回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)でオブジェクトを配置する。
【0025】
移動・動作処理部112は、オブジェクト(キャラクタ、車、又は飛行機等)の移動・動作演算(移動・動作シミュレーション)を行う。すなわち操作部160によりプレーヤが入力した操作データや、プログラム(移動・動作アルゴリズム)や、各種データ(モーションデータ)などに基づいて、オブジェクトをオブジェクト空間内で移動させたり、オブジェクトを動作(モーション、アニメーション)させる処理を行う。具体的には、オブジェクトの移動情報(位置、回転角度、速度、或いは加速度)や動作情報(オブジェクトを構成する各パーツの位置、或いは回転角度)を、1フレーム(1/60秒)毎に順次求めるシミュレーション処理を行う。なおフレームは、オブジェクトの移動・動作処理(シミュレーション処理)や画像生成処理を行う時間の単位である。
【0026】
仮想カメラ制御部114は、オブジェクト空間内の所与(任意)の視点から見える画像を生成するための仮想カメラ(視点)の制御処理を行う。具体的には、仮想カメラの位置(X、Y、Z)又は回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)を制御する処理(視点位置、視線方向あるいは画角を制御する処理)を行う。
【0027】
例えば仮想カメラによりオブジェクト(例えばキャラクタ、車)を後方から撮影する場合には、オブジェクトの位置又は回転の変化に仮想カメラが追従するように、仮想カメラの位置又は回転角度(仮想カメラの向き)を制御する。この場合には、移動・動作処理部112で得られたオブジェクトの位置、回転角度又は速度などの情報(所定の制御情報の一例)に基づいて、仮想カメラを制御できる。或いは、仮想カメラを、予め決められた回転角度で回転させたり、予め決められた移動経路で移動させたりする制御を行ってもよい。この場合には、仮想カメラの位置(移動経路)又は回転角度を特定するための仮想カメラデータ(所定の制御情報の一例)に基づいて仮想カメラを制御する。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラについて上記の制御処理が行われる。
【0028】
描画部120は、処理部100で行われる種々の処理(ゲーム処理)の結果に基づいて描画処理を行い、これにより画像を生成し、表示部190に出力する。いわゆる3次元ゲーム画像を生成する場合には、まずオブジェクト(モデル)の各頂点の頂点データ(頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ、法線ベクトル或いはα値等)を含むオブジェクトデータ(モデルデータ)がオブジェクトデータ記憶部172Bから入力され、入力されたオブジェクトデータに含まれる頂点データに基づいて、頂点処理(頂点シェーダによるシェーディング)が行われる。なお頂点処理を行うに際して、必要に応じてポリゴンを再分割するための頂点生成処理(テッセレーション、曲面分割、ポリゴン分割)を行うようにしてもよい。頂点処理では、頂点処理プログラム(頂点シェーダプログラム、第1のシェーダプログラム)に従って、頂点の移動処理や、座標変換(ワールド座標変換、カメラ座標変換)、クリッピング処理、あるいは透視変換等のジオメトリ処理が行われ、その処理結果に基づいて、オブジェクトを構成する頂点群について与えられた頂点データを変更(更新、調整)する。そして、頂点処理後の頂点データに基づいてラスタライズ(走査変換)が行われ、ポリゴン(プリミティブ)の面とピクセル(画素)とが対応づけられる。そしてラスタライズに続いて、画像を構成するピクセル(表示画面を構成するフラグメント)を描画するピクセル処理(ピクセルシェーダによるシェーディング、フラグメント処理)が行われる。ピクセル処理では、ピクセル処理プログラム(ピクセルシェーダプログラム、第2のシェーダプログラム)に従って、テクスチャの読出し(テクスチャマッピング)、色データの設定/変更、半透明合成、アンチエイリアス等の各種処理を行って、画像を構成するピクセルの最終的な描画色を決定し、透視変換されたオブジェクトの描画色をレンダリングターゲット(ピクセル単位で画像情報を記憶できるバッファ。メインメモリ172のフレームバッファ172B、ビデオメモリ174のワークバッファ174Cやフレームバッファ174D)に出力(描画)する。すなわち、ピクセル処理では、画像情報(色(色値、輝度値)、法線、α値等)をピクセル単位で設定あるいは変更するパーピクセル処理を行う。これにより、オブジェクト空間内において仮想カメラ(所与の視点)から見える画像が生成される。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラから見える画像を分割画像として1画面に表示できるように画像を生成することができる。
【0029】
なお頂点処理やピクセル処理は、シェーディング言語によって記述されたシェーダプログラムによって、ポリゴン(プリミティブ)の描画処理をプログラム可能にするハードウェア、いわゆるプログラマブルシェーダ(頂点シェーダやピクセルシェーダ)により実現される。プログラマブルシェーダでは、頂点単位の処理やピクセル単位の処理がプログラム可能になることで描画処理内容の自由度が高く、従来のハードウェアによる固定的な描画処理に比べて表現力を大幅に向上させることができる。
【0030】
そして描画部120は、オブジェクトを描画する際に、ジオメトリ処理、テクスチャマッピング、隠面消去処理、αブレンディング等を行う。
【0031】
ジオメトリ処理では、オブジェクトに対して、座標変換、クリッピング処理、透視投影変換、或いは光源計算等の処理が行われる。そして、ジオメトリ処理後(透視投影変換後)のオブジェクトデータ(オブジェクトの頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ(輝度データ)、法線ベクトル、或いはα値等)は、メインメモリ172のオブジェクトデータ記憶部172Aに保存される。
【0032】
テクスチャマッピングは、ビデオメモリ174のデカールテクスチャ記憶部174Aに記憶されるデカールテクスチャ(テクセル値)をオブジェクトにマッピングするための処理である。具体的には、オブジェクトの頂点に設定(付与)されるテクスチャ座標等を用いてビデオメモリ174のデカールテクスチャ記憶部174Aからテクスチャ(色(RGB)、α値などの表面プロパティ)を読み出す。そして、2次元の画像であるテクスチャをオブジェクトにマッピングする。この場合に、ピクセルとテクセルとを対応づける処理や、テクセルの補間としてバイリニア補間、トライリニア補間などを行う。
【0033】
隠面消去処理としては、描画ピクセルのZ値(奥行き情報)が格納されるZバッファ174B(奥行きバッファ)を用いたZバッファ法(奥行き比較法、Zテスト)による隠面消去処理を行うことができる。すなわちオブジェクトのプリミティブに対応する描画ピクセルを描画する際に、Zバッファ174Bに格納されるZ値を参照する。そして参照されたZバッファのZ値と、プリミティブの描画ピクセルでのZ値とを比較し、描画ピクセルでのZ値が、仮想カメラから見て手前側となるZ値(例えば小さなZ値)である場合には、その描画ピクセルの描画処理を行うとともにZバッファ174BのZ値を新たなZ値に更新する。
【0034】
αブレンディングとしては、α値(A値)に基づく半透明合成処理(通常αブレンディング、加算αブレンディング又は減算αブレンディング等)を行う。例えば通常αブレンディングの場合には下式(1)〜(3)の処理を行う。
【0035】
=(1−α)×R+α×R (1)
=(1−α)×G+α×G (2)
=(1−α)×B+α×B (3)
また、加算αブレンディングの場合には下式(4)〜(6)の処理を行う。なお単純加算の場合はα=1として下式(4)〜(6)の処理を行う。
【0036】
=R+α×R (4)
=G+α×G (5)
=B+α×B (6)
また、減算αブレンディングの場合には下式(7)〜(9)の処理を行う。なお単純減算の場合はα=1として下式(7)〜(9)の処理を行う。
【0037】
=R−α×R (7)
=G−α×G (8)
=B−α×B (9)
ここで、R、G、Bは、フレームバッファ172Bあるいはフレームバッファ174Dに既に描画されている画像(原画像)のRGB成分であり、R、G、Bは、フレームバッファ172Bあるいはフレームバッファ174Dに描画すべき画像のRGB成分である。また、R、G、Bは、αブレンディングにより得られる画像のRGB成分である。なお、α値は、各ピクセル(テクセル、ドット)に関連づけて記憶できる情報であり、例えば色情報以外のプラスアルファの情報である。α値は、マスク情報、半透明度(透明度、不透明度と等価)、バンプ情報などとして使用できる。
【0038】
そして描画部120は、表示部190が表示することができる色調範囲(LDR、色が取り得る第2の範囲の一例)よりも広い色調範囲(HDR、色が取り得る第1の範囲の一例)でピクセルの色を記録することができるようになっている。本実施形態では、描画部120が記録できる色調範囲が、表示部190が表示できる色調範囲の1.2倍(第2の範囲に対する第1の範囲の比の一例)となっており、詳細には表示部190が表示することができる色調範囲が、RGBの各輝度値が256階調(1677万7216色)となっているのに対し、描画部120が記録することができる色調範囲は、RGBの各輝度値が307階調(2893万4443色)となっている。特に本実施形態では、描画部120は、表示部190が表示することができる色調範囲よりも明るい色の色調範囲(輝度が高い色調範囲)を記録することができるようになっている。
【0039】
色変換部122は、所定の縮小倍率に基づいて、第1の範囲で決定された画素の色を第1の範囲よりも狭い第2の範囲の色に変換する。本実施形態では色変換部122は、描画部120が記録した各画素のRGBそれぞれの輝度値に、第2の範囲に対する第1の範囲の比の逆数である1/1.2(所定の縮小倍率の一例)を乗算して端数を切り捨てることにより、307階調の輝度値を256階調の輝度値に変換する。すなわち色変換部122は、HDRの輝度値をLDRの輝度値に変換して、LDRの画像として出力(描画、コピー)する。
【0040】
明るさ検出部124は、画像を構成する画素の色に基づいて画像の明るさを検出する。本実施形態では明るさ検出部124は、メインメモリ172のフレームバッファ172Bや、ビデオメモリ174のフレームバッファ174Dに出力(描画、コピー)されたフレーム画像の所定領域を構成する複数の画素を抽出して、当該複数の画素の色を補間することによって、当該所定領域を構成する各画素の色を補間した色に基づいて、画像の明るさを検出する。特に本実施形態では明るさ検出部124は、フレーム画像における視点の注視点を含む画像領域を所定領域として特定する。具体的には明るさ検出部124は、フレーム画像における視点の注視点を中心とした画像領域や、スクリーン座標系の中心を中心とした画像領域を所定領域として特定する。
【0041】
調整倍率設定部126は、画像の明るさに応じた調整倍率を設定する。本実施形態では調整倍率設定部126が、フレーム画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、フレーム画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、画素の色を暗くするように調整倍率を設定する。
【0042】
色調整部128は、前回フレームのフレーム画像の明るさに応じて設定された調整倍率に基づいて、今回フレームのフレーム画像を構成する画素の色を調整する。本実施形態では色調整部128は、前回フレームのフレーム画像の明るさに応じて設定された調整倍率と、所定の縮小倍率の逆数である1.2倍(所定の縮小倍率に応じた所定の拡大倍率)とを、LDR画像を構成する画素のRGBそれぞれの輝度値に乗算する。
【0043】
音生成部130は、処理部100で行われる種々の処理の結果に基づいて音処理を行い、BGM、効果音、又は音声などのゲーム音を生成し、音出力部192に出力する。
【0044】
なお、本実施形態の画像生成システムは、1人のプレーヤのみがプレイできるシングルプレーヤモード専用のシステムにしてもよいし、複数のプレーヤがプレイできるマルチプレーヤモードも備えるシステムにしてもよい。また複数のプレーヤがプレイする場合に、これらの複数のプレーヤに提供するゲーム画像やゲーム音を、1つの端末を用いて生成してもよいし、ネットワーク(伝送ライン、通信回線)などで接続された複数の端末(ゲーム機、携帯電話)を用いて分散処理により生成してもよい。
【0045】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。本実施形態では、今回(第N回)フレームの画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、次回(第N+1回)フレームの画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、今回フレームの画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、次回フレームの画素の色を暗くするように調整倍率を設定する手法を採用している。これにより本実施形態では、暗い画像から明るい画像まで幅広い範囲の明るさの画像を生成しつつ、一定範囲の明るさの画像が多く表示されるように色を調整し、画像の色調を豊かなものにしつつ視認性が高い画像表現を実現している。
【0046】
2−1.明るさ検出
図2は、今回フレームにおいてフレームバッファに描画された画像の明るさを検出する手法を説明するための図である。本実施形態では図2に示すように、まずフレームバッファの1280*720ピクセルの画像のうち、その中心を中心とする640*640ピクセルの画像が抽出される。すなわち仮想カメラの注視点を含む所定範囲の画像が抽出される。
【0047】
そして、図2のa1に示すように、640*640ピクセルの画像において10行10列で隣り合う100個のピクセルの輝度値(画素の色の一例)が補間されて1個のピクセルの輝度値とされることにより、640*640ピクセルの画像が64*64ピクセルの画像に縮小される。本実施形態では、隣り合う100個のピクセルのRGBそれぞれの輝度値の平均値が算出され、それぞれの平均値が1個のピクセルのRGBそれぞれの輝度値とされることにより、解像度が100分の1の画像に縮小される。
【0048】
すると、図2のa2に示すように、64*64ピクセルの画像において2行2列で隣り合う4個のピクセルの輝度値が補間されて1個のピクセルの輝度値とされることにより、64*64ピクセルの画像が32*32ピクセルの画像に縮小される。本実施形態では、隣り合う4個のピクセルのRGBそれぞれの輝度値の平均値が算出され、それぞれの平均値が1個のピクセルのRGBそれぞれの輝度値とされることにより、解像度が4分の1の画像に縮小される。そして図2のa3、a4、a5に示すように、図2のa2と同様の処理が繰り返し行われることにより画像が順次4分の1に縮小され、最終的には図2のa6に示すように、1*1ピクセルのRGBそれぞれの輝度値が算出される。
【0049】
そして図2のa7に示すように、1*1ピクセルのグレースケール値Aが、RGBそれぞれの人の目による見え方を考慮した重み付けにより、A=0.3R+0.6G+0.1Bとして算出され、このグレースケール値Aが今回フレームにおいてフレームバッファに描画された画像の明るさAとして検出される。なお、1*1ピクセルのグレースケール値Aが、A=(R+G+B)/3として算出されるようにしてもよい。
【0050】
このように本実施形態では、フレームバッファの画像の中心付近の画像から画像の明るさが検出されるので、明るさを検出する処理の対象とする画像の範囲を狭くしつつも観者が注目する範囲の画像が処理対象とされる。さらに本実施形態では、まずはフレームバッファの画像の解像度が100分の1に縮小されてから順次4分の1に縮小されてフレームバッファの画像の明るさAが検出される。従って本実施形態では、明るさを検出する処理の負荷を小さくしつつも、フレームバッファの画像の明るさAとして適切な値が検出されるようにすることができる。
【0051】
2−2.調整倍率の算出
図3は、今回フレームのフレームバッファの画像の明るさと、次回フレームの画素の色の調整倍率との関係を表すグラフを示す図である。図3に示すグラフでは、横軸に今回フレームのフレームバッファの画像の明るさAが表されており、縦軸に次回フレームの画素の色の調整倍率Bが表されている。
【0052】
図3に示すように本実施形態では、明るさAが0≦A<0.2である場合、すなわち今回フレームのフレームバッファの画像の明るさが相対的に最も暗い範囲である場合には、画素の色を明るく変化させる調整倍率であって最も高い調整倍率である2.0が調整倍率Bとして設定される。また、明るさAが0.2≦A<0.5(第1のしきい値の一例)である場合、すなわち今回フレームのフレームバッファの画像の明るさが相対的にやや暗い範囲である場合には、画素の色を明るく変化させる調整倍率が、B=−10A/3+8/3のようにして求められ、調整倍率Bとして設定される。例えば明るさAが、0.2≦A<0.5の中間点である0.35である場合には、B=1.5となり、画素の色を明るく変化させる調整倍率が調整倍率Bとして設定される。
【0053】
そして本実施形態では、明るさAが0.5≦A<0.7である場合、すなわち今回フレームのフレームバッファの画像の明るさが相対的にやや明るい範囲である場合には、画素の色を変化させない調整倍率である1.0が調整倍率Bとして設定される。
【0054】
一方、明るさAが0.7(第2のしきい値の一例)≦A<1.0である場合、すなわち今回フレームのフレームバッファの画像の明るさが相対的に最も明るい範囲である場合には、画素の色を暗く変化させる調整倍率が、B=−A+1.7のようにして求められ、調整倍率Bとして設定される。例えば明るさAが、0.7≦A<1.0の中間点である0.85である場合には、B=0.85となり、画素の色を暗く変化させる調整倍率が調整倍率Bとして設定される。
【0055】
このように本実施形態では、今回フレームの画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、その暗さに応じて次回フレームの画素の色を明るくするように調整倍率が設定され、今回フレームの画像の明るさが第1のしきい値と第2のしきい値の間である場合に、次回フレームの画素の色を変化させない調整倍率が設定され、今回フレームの画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、その明るさに応じて次回フレームの画素の色を暗くするように調整倍率が設定される。
【0056】
特に本実施形態では、今回フレームの画像の明るさが暗いほどあるいは明るいほど変化率が大きな(1.0から離れた)調整倍率が設定される。従って本実施形態では、図4(A)に示すように、今回フレームの画像の明るさが暗いほど(A=0.17)、大きな変化率(B=2.0)で次回フレームの画像が明るくなるように調整され、次回フレームの画像の明るさが相対的にやや明るい範囲の明るさ(0.5≦A<0.7)に近づくにつれ(A=0.35)、少ない変化率(B=1.5)で次々回フレームの画像が明るくなるように調整される。また図4(B)に示すように、今回フレームの画像の明るさが明るいほど(A=0.9)、大きな変化率(B=0.8)で次回フレームの画像が暗くなるように調整され、次回フレームの画像の明るさが相対的にやや明るい範囲の明るさ(0.5≦A<0.7)に近づくにつれ(A=0.72)、少ない変化率(B=0.98)で次々回フレームの画像が暗くなるように調整される。
【0057】
こうして本実施形態では、複数回のフレームに渡ってフレームバッファの画像が一定範囲の明るさの画像に調整されることにより、現実の人間の目が暗さに慣れる暗順応や明るさに慣れる明順応を、小さな処理負荷で擬似的に表現することができる。これにより本実施形態では、暗い画像から明るい画像まで幅広い範囲の明るさの画像を生成しつつ、一定範囲の明るさの画像が多く表示されるように色を調整し、画像の色調を豊かなものにしつつ視認性が高い画像表現を実現している。
【0058】
2−3.画像変換
本実施形態では、シェーダプログラムに従って、画像を構成するピクセルの描画色が決定されるが、表示部190が表示することができるLDR(RGBの各輝度値が256階調、1677万7216色)よりも広いHDR(RGBの各輝度値が307階調、2893万4443色)の輝度値によってピクセルの描画色が決定される。特に本実施形態では、HDRの輝度値が取り得る最大の明るさがLDRの輝度値が取り得る最大の明るさの1.2倍となるように、HDRの輝度値によってピクセルの描画色が決定される。すなわち本実施形態では、HDRの輝度値のうち0〜255まではLDRの輝度値の0〜255までと同一の明るさを示し、HDRの輝度値のうち256〜307まではLDRの輝度値よりも明るい明るさを示すようになっている。これにより本実施形態では、LDRの輝度値よりも明るい輝度値が、RGBのそれぞれで51階調、1215万7227色で記録されるので、光源からの直接光や反射光などによる輝きが反映された領域の色調が適切に記録されるようにすることができる。
【0059】
しかし本実施形態の表示部190が表示することができる輝度値はLDRの輝度値なので、最終的な描画色がフレームバッファに出力(描画)される際には、HDRの輝度値がLDRの輝度値に変換される必要がある。そこで本実施形態では、LDRの輝度値よりも明るい輝度値の階調が保存されるようにするため、全てのピクセルに対応するHDRの輝度値に、LDRに対するHDRの比(1.2)の逆数である1.2分の1(所定の縮小倍率の一例)が乗算されることにより、HDRの輝度値がLDRの輝度値に変換される。具体的には本実施形態では、図5のB1に示すように、描画部120が、ピクセルの描画色をまずはワークバッファに描画するが、全ての頂点データに(1/1.2,1/1.2,1/1.2)のカラーベクトルが設定された画面サイズのスプライトにピクセルの描画色を描画することにより、HDRの輝度値をLDRの輝度値に変換する。
【0060】
しかし、全てのピクセルに対応するHDRの輝度値に1.2分の1が乗算されることによりHDRの輝度値がLDRの輝度値に変換されると、図6に示すように、画像の明るさが全体として暗くなってしまう。すなわち明るさが0.0〜1.2の範囲で記録されたHDRの輝度値が、明るさが0.0〜1.0の範囲のLDRの輝度値に変換されることにより、HDRの輝度値で1.0の明るさ(白)であったものが、LDRの輝度値では1.2分の1が乗算され0.833の明るさ(グレー)になってしまう。
【0061】
そこで本実施形態では、ワークバッファの画像の全てのピクセルの輝度値に、LDRに対するHDRの比である1.2(所定の拡大倍率の一例)が乗算されることにより、ワークバッファの画像がLDRの輝度値の範囲内(0.0〜1.0)でHDRの輝度値の明るさに戻るように変換される。ここで本実施形態では、かかる変換が行われる際に、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じて設定された調整倍率Bも、ワークバッファの画像の全てのピクセルの輝度値に乗算される。具体的には本実施形態では、図5のB2に示すように、描画部120が、ワークバッファに描画した画像をフレームバッファにコピーするようにしておき、その際に全ての頂点データに(1.2B,1.2B,1.2B)のカラーベクトルが設定された画面サイズのスプライトにピクセルの描画色を描画することにより、ワークバッファの画像をフレームバッファの画像に変換する。
【0062】
図7(A)〜(E)は、今回フレームのワークバッファの画像が今回フレームのフレームバッファの画像に変換される際の輝度値の対応関係が、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じて変化する様子を示す図である。図7(A)の例では、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAが最も暗い範囲に属する0.2であったため、調整倍率Bが2.0に設定され、フレームバッファの画像に変換する際の変換倍率1.2Bは2.4となる。ここでワークバッファの画像の輝度値に2.4が乗算されると、ワークバッファの画像の輝度値のうち0.0〜0.42(≒1/2.4)にある範囲の輝度値の階調は保存されるが、0.42よりも明るい範囲の輝度値の階調は1.0に変換されてしまうため階調は保存されない。
【0063】
しかし今回フレームのワークバッファの画像の明るさは、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさから大きく変化していることは希であり、今回フレームのワークバッファの画像も、前回フレームのフレームバッファの画像のようにおよそA=0.2となるような暗いものとなることが多い。すなわち、前回フレームのフレームバッファの画像が暗い場合には、今回フレームのワークバッファの画像には相対的に明るい輝度値が設定されたピクセルは少ないことが多いため、0.42よりも明るい範囲の輝度値の階調が失われたとしても大きな影響は発生しない。対してワークバッファの画像のうち、多くのピクセルに設定されていると考えられる0.0〜0.42にある範囲の輝度値は、図7(A)に示すように、その階調が保存されたまま今回フレームのフレームバッファの画像において0.0〜1.0の範囲の輝度値に変換されることにより、HDRの輝度値に戻されるとともに、暗順応したかのように観者が見やすい範囲の明るさの画像に調整される。
【0064】
また図7(B)の例では、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAがやや暗い範囲に属する0.35であったため、調整倍率Bが1.5に設定され、フレームバッファの画像に変換する際の変換倍率1.2Bは1.8となる。ここでワークバッファの画像の輝度値に1.8が乗算されると、ワークバッファの画像の輝度値のうち0.0〜0.55(≒1/1.8)にある範囲の輝度値の階調は保存されるが、0.55よりも明るい範囲の輝度値の階調は1.0に変換されてしまうため階調は保存されない。
【0065】
しかし今回フレームのワークバッファの画像も、前回フレームのフレームバッファの画像のようにおよそA=0.35となるようなやや暗いものとなることが多い。すなわち、今回フレームのワークバッファの画像には相対的に明るい輝度値が設定されたピクセルは少ないことが多いため、0.55よりも明るい範囲の輝度値の階調が失われたとしても大きな影響は発生しない。対してワークバッファの画像のうち、多くのピクセルに設定されていると考えられる0.0〜0.55にある範囲の輝度値は、図7(B)に示すように、その階調が保存されたまま今回フレームのフレームバッファの画像において0.0〜1.0の範囲の輝度値に変換されることにより、HDRの輝度値に戻されるとともに、暗順応したかのように観者が見やすい範囲の明るさの画像に調整される。
【0066】
また図7(C)の例では、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAがやや明るい範囲に属する0.6であったため、調整倍率Bが1.0に設定され、フレームバッファの画像に変換する際の変換倍率1.2Bは1.2となる。ここでワークバッファの画像の輝度値に1.2が乗算されると、ワークバッファの画像の輝度値のうち0.0〜0.83(≒1/1.2)にある範囲の輝度値の階調は保存されるが、0.83よりも明るい範囲の輝度値の階調は1.0に変換されてしまうため階調は保存されない。
【0067】
しかし今回フレームのワークバッファの画像も、前回フレームのフレームバッファの画像のようにおよそA=0.6となるようなやや明るいものとなることが多いため、0.83よりも明るい範囲の輝度値の階調が失われたとしても大きな影響は発生しない。対してワークバッファの画像のうち、多くのピクセルに設定されていると考えられる0.0〜0.83にある範囲の輝度値は、図7(C)に示すように、その階調が保存されたまま今回フレームのフレームバッファの画像において0.0〜1.0の範囲の輝度値に変換されることにより、HDRの輝度値に戻される。
【0068】
また図7(D)の例では、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAがかなり明るい範囲に属する0.85であったため、調整倍率Bが0.85に設定され、フレームバッファの画像に変換する際の変換倍率1.2Bは1.02となる。ここでワークバッファの画像の輝度値に1.02が乗算されると、ワークバッファの画像の輝度値のうち0.0〜0.98(≒1/1.02)にある範囲、すなわちほぼ全範囲の輝度値の階調が保存されたまま、今回フレームのフレームバッファの画像において0.0〜1.0の範囲の輝度値に変換されることにより、HDRの輝度値に戻されるとともに、明順応したかのように観者が見やすい範囲の明るさの画像に調整される。従って図7(D)の例では、ワークバッファの画像の輝度値のうち、HDRの1.0〜1.2の輝度値が変換された0.83〜1.0までの階調がほぼ保存されるので、例えば色が白い部分と光により輝いている部分との違いなど、HDRの輝度値が反映された階調を表現することができる。
【0069】
また図7(E)の例では、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAが最も明るい1.0であったため、調整倍率Bが0.7に設定され、フレームバッファの画像に変換する際の変換倍率1.2Bは0.84となる。ここでワークバッファの画像の輝度値に0.84が乗算されると、ワークバッファの画像の輝度値の階調は圧縮されるが、HDRの輝度値に戻されるとともに、明順応したかのように観者が見やすい範囲の明るさの画像に調整される。従って図7(E)の例では、ワークバッファの画像の輝度値のうち、HDRの1.0〜1.2の輝度値が変換された0.83〜1.0までの階調が圧縮されつつも保存されるので、HDRの輝度値が反映された階調を表現することができる。
【0070】
このように本実施形態では、LDRの範囲内でLDRの輝度値をHDRの輝度値に戻す際に、LDRに対するHDRの比である所定の拡大倍率(1.2)が乗算されるだけでなく、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じた調整倍率Bも同時に乗算される。これにより本実施形態では、LDRの輝度値に単に所定の拡大倍率を乗算した場合には、輝度値がLDRの範囲を超えることにより失われる階調を、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じて適切な範囲で表現することができる。
【0071】
3.本実施形態の処理
次に、本実施形態の処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。図8は、フレーム毎に行われる処理の概略を示すフローチャートである。図8に示すように本実施形態では、まず、頂点シェーダ処理、ピクセルシェーダ処理を含むシェーダ処理が行われ、ピクセルの輝度値がHDRで決定されると(ステップS10)、HDRの輝度値が変換、調整されてフレーム画像が生成される(ステップS12)。すると、生成されたフレーム画像に基づいて、次回フレーム用の調整倍率が演算される(ステップS14)。
【0072】
図9は、図8のステップS12の画像変換処理の詳細を示すフローチャートである。図9に示すように画像変換処理では、まず、シェーダ処理によって決定されたHDRの輝度値に所定の縮小倍率が乗算されながらワークバッファに画像が描画されることにより、HDRの輝度値がLDRの輝度値に変換される(ステップS20)。すると、ワークバッファの画像のLDRの輝度値に所定の拡大倍率1.2と調整倍率Bとが乗算されながら、ワークバッファの画像がフレームバッファにコピーされることにより、フレーム画像が生成される(ステップS22)。
【0073】
図10は、図8のステップS14の次回フレーム用の調整倍率演算処理の詳細を示すフローチャートである。図10に示すように調整倍率演算処理では、まず、フレームバッファの画像のうち中心付近の画像が抽出され(ステップS30)、抽出された画像が100分の1の画像に縮小される(ステップS32)。そして100分の1に縮小された画像が更に4分の1の画像に縮小される(ステップS34)。そして画像が1ピクセルになっていない場合には(ステップS36でN)、更に4分の1の画像に縮小され(ステップS34)、画像が1ピクセルになった場合には(ステップS36でY)、その1ピクセルの輝度値をグレースケールに変換し、フレームバッファの画像の明るさAを求める(ステップS38)。
【0074】
そしてA<0.2である場合には(ステップS40でY)、B=2.0として調整倍率Bが設定され(ステップS42)、0.2≦A<0.5である場合には(ステップS44でY)、B=−10A/3+8/3のようにして求められた調整倍率Bが設定され(ステップS46)、0.5≦A<0.7である場合には(ステップS48Y)、B=1.0として調整倍率Bが設定され(ステップS50)、0.7≦A<1.0である場合には(ステップS50でN)、B=−A+1.7のようにして求められた調整倍率Bが設定される(ステップS52)。
【0075】
4.ハードウェア構成例
本実施形態の画像生成システムを実現するハードウェアの構成の一例について図11を用いて説明する。なお図11では、主要な構成のみを図示しており、図11に示されていないハードウェア(メモリコントローラやスピーカなど)を必要に応じて設けることができる。
【0076】
メインプロセッサ10は、光ディスク72(CD、DVD、ブルーレイディスク等の情報記憶媒体)に格納されたプログラム、通信インターフェース80を介して転送されたプログラム、或いはハードディスク60に格納されたプログラムなどに基づき動作し、内部バスb4を介してアクセス可能なメインメモリ40を作業領域(ワーク領域)としてゲーム処理、画像処理、音処理などの種々の処理を実行する。
【0077】
メインプロセッサ10は、1基のプロセッサ12と複数のベクトルプロセッサ14で構成される。プロセッサ12は、OSの実行、ハードウェアリソースの管理、ゲーム処理、ベクトルプロセッサ14の動作管理などの種々の処理を実行する。またベクトルプロセッサ14は、ベクトル演算に特化したプロセッサであり、主にジオメトリ処理、画像データや音データのコーデック処理などの処理を実行する。
【0078】
描画プロセッサ20は、内部バスb1(第1の内部バス)を介してビデオメモリ30にアクセス可能に形成されている。また描画プロセッサ20は、描画プロセッサ20とメインプロセッサ10を接続する内部バスb2(第2の内部バス)と、メインプロセッサ10内部のバスb3と、メインプロセッサ10とメインメモリ40を接続する内部バスb4を介してメインメモリ40にアクセス可能に形成されている。すなわち描画プロセッサ20はビデオメモリ30と、メインメモリ40とをレンダリングターゲットとして利用することができる。
【0079】
描画プロセッサ20は、座標変換、透視変換、光源計算、曲面生成などのジオメトリ処理を行うものであり、高速並列演算が可能な積和算器や除算器を有し、マトリクス演算(ベクトル演算)を高速に実行する。例えば、座標変換、透視変換、光源計算などの処理を行う場合には、メインプロセッサ10で動作するプログラムが、その処理を描画プロセッサ20に指示する。
【0080】
また描画プロセッサ20は、ジオメトリ処理後のオブジェクト(ポリゴンや曲面などのプリミティブ面で構成されるオブジェクト)の画像のレンダリング処理を高速に実行するものである。マルチパスレンダリング処理の際には、描画プロセッサ20は、描画データ(頂点データや他のパラメータ)等に基づいて、Zバッファ34などを利用した陰面消去を行いながら、画像をビデオメモリ30又はメインメモリ40の一方のメモリにレンダリングする。そしてビデオメモリ30又はメインメモリ40の一方のメモリに記憶された画像に基づき他方のメモリに新たな画像をレンダリングする処理を必要なレンダリングパスの回数だけ行う。描画プロセッサ20は、上記マルチパスレンダリング処理として、グレアフィルタ処理、モーションブラー処理、被写界深度処理、フォグ処理等のフィルタ処理を行うことができる。
【0081】
そして、最後のレンダリングパスで画像がビデオメモリ30に設けられたフレームバッファ32にレンダリングされると、その画像をディスプレイ50に出力する。また最後のレンダリングパスで画像がメインメモリ40にレンダリングされた場合には当該画像をフレームバッファ32にコピー(書き込み)した上でディスプレイ50に出力する。
【0082】
ハードディスク60にはシステムプログラム、セーブデータ、個人データなどが格納される。
【0083】
光学ドライブ70は、プログラム、画像データ、或いは音データなどが格納される光ディスク72(情報記憶媒体)を駆動し、これらのプログラム、データへのアクセスを可能にする。
【0084】
通信インターフェース80は、ネットワークを介して外部との間でデータ転送を行うためのインターフェースである。この場合に、通信インターフェース170に接続されるネットワークとしては、通信回線(アナログ電話回線、ISDN)、高速シリアルバスなどを考えることができる。そして、通信回線を利用することでインターネットを介したデータ転送が可能になる。また、高速シリアルバスを利用することで、他の画像生成システムとの間でのデータ転送が可能になる。
【0085】
上述したように本実施形態の画像生成システム(コンピュータ)は、内部バスb1(第1の内部バス)を介してビデオメモリ30にアクセス可能であるとともに、内部バスb2(第2の内部バス)を介してメインメモリ40にアクセス可能である描画プロセッサ20を含んで構成されており、描画プロセッサ20は、光ディスク72(情報記憶媒体の一例)あるいはハードディスク60(情報記憶媒体の一例)に格納されているシェーダプログラムに従って種々のシェーダ処理を実行する。
【0086】
なお、本実施形態の各部(各手段)は、その全てを、ハードウェアのみにより実現してもよいし、情報記憶媒体に格納されるプログラムや通信インターフェースを介して配信されるプログラムのみにより実現してもよい。或いは、ハードウェアとプログラムの両方により実現してもよい。
【0087】
そして、本実施形態の各部をハードウェアとプログラムの両方により実現する場合には、情報記憶媒体には、ハードウェア(コンピュータ)を本実施形態の各部として機能させるためのプログラムが格納されることになる。より具体的には、上記プログラムが、ハードウェアである各プロセッサ10、20等に処理を指示すると共に、必要であればデータを渡す。そして、各プロセッサ10、20等は、その指示と渡されたデータとに基づいて、本発明の各部を実現することになる。
【0088】
なお本発明は、上記実施形態で説明したものに限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、明細書又は図面中の記載において広義や同義な用語として引用された用語は、明細書又は図面中の他の記載においても広義や同義な用語に置き換えることができる。またグレアフィルタの手法は、本実施形態で説明したものに限定されず、これらと均等な手法も本発明の範囲に含まれる。
【0089】
また本発明は種々のゲーム(格闘ゲーム、シューティングゲーム、ロボット対戦ゲーム、スポーツゲーム、競争ゲーム、ロールプレイングゲーム、音楽演奏ゲーム、ダンスゲーム等)に適用できる。また本発明は、業務用ゲームシステム、家庭用ゲームシステム、多数のプレーヤが参加する大型アトラクションシステム、シミュレータ、マルチメディア端末、ゲーム画像を生成するシステムボード、携帯電話等の種々の画像生成システムに適用できる。
【0090】
また上記実施形態では、図5に示したように、ワークバッファの画像の全てのピクセルの輝度値に、LDRに対するHDRの比である1.2と、前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じて設定された調整倍率Bとが、同時に乗算される例を挙げて説明したが、図12に示すように、ワークバッファの画像の全てのピクセルの輝度値に、LDRに対するHDRの比である1.2が乗算されてから、その結果に対して前回フレームのフレームバッファの画像の明るさAに応じて設定された調整倍率Bが乗算されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施形態の画像生成システムの機能ブロック図。
【図2】本実施形態の画像の明るさを検出する手法の説明図。
【図3】本実施形態の画像の調整倍率を決定する手法の説明図。
【図4】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図5】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図6】本実施形態の画像変換手法の説明図。
【図7A】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図7B】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図7C】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図7D】本実施形態の画像調整手法の説明図。
【図8】本実施形態の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】本実施形態の処理の流れを示すフローチャート。
【図10】本実施形態の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】本実施形態の画像生成システムのハードウェア構成例。
【図12】変形実施形態の画像調整手法の説明図。
【符号の説明】
【0092】
100 処理部、110 オブジェクト空間設定部、112 移動・動作処理部、
114 仮想カメラ制御部、120 描画部、122 色変換部、
124 明るさ検出部、126 調整倍率設定部、128 色調整部、
130 音生成部、160 操作部、170 記憶部、172 メインメモリ、
172A オブジェクトデータ記憶部、172B フレームバッファ、
174 ビデオメモリ、174A デカールテクスチャ記憶部、174B Zバッファ、
174C ワークバッファ、174D フレームバッファ、
180 情報記憶媒体、190 表示部、192 音出力部、
194 携帯型情報記憶装置、196 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の明るさを調整するためのプログラムであって、
前記画像を構成する画素の色に基づいて画像の明るさを検出する明るさ検出部と、
前記画像の明るさに応じた調整倍率を設定する調整倍率設定部と、
前記調整倍率に基づいて、前記画像を構成する画素の色を調整する色調整部としてコンピュータを機能させ、
前記調整倍率設定部が、
前記画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、前記画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、前記画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、前記画素の色を暗くするように調整倍率を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記明るさ検出部が、
前記画像の所定領域を構成する複数の画素を抽出して、当該複数の画素の色を補間することによって、当該所定領域を構成する各画素の色を補間した色に基づいて、前記画像の明るさを検出することを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記画像が、3次元オブジェクトが配置されたオブジェクト空間を所与の視点から見た画像であって、
前記明るさ検出部が、
前記画像における前記視点の注視点を含む画像領域を前記所定領域として特定することを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
第1の範囲で画素の色を決定する描画部と、
所定の縮小倍率に基づいて、前記第1の範囲で決定された画素の色を前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲の色に変換する色変換部としてコンピュータを更に機能させ、
前記色調整部は、
前記調整倍率と前記所定の縮小倍率に応じた所定の拡大倍率とに基づいて、前記第2の範囲に変換された画素の色を調整することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
コンピュータにより読み取り可能な情報記憶媒体であって、請求項1〜4のいずれかに記載されたプログラムを記憶することを特徴とする情報記憶媒体。
【請求項6】
画像の明るさを調整するための画像生成システムであって、
前記画像を構成する画素の色に基づいて画像の明るさを検出する明るさ検出部と、
前記画像の明るさに応じた調整倍率を設定する調整倍率設定部と、
前記調整倍率に基づいて、前記画像を構成する画素の色を調整する色調整部とを含み、
前記調整倍率設定部が、
前記画像の明るさが第1のしきい値より暗い場合に、前記画素の色を明るくするように調整倍率を設定し、前記画像の明るさが第2のしきい値より明るい場合に、前記画素の色を暗くするように調整倍率を設定することを特徴とする画像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−33302(P2010−33302A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194226(P2008−194226)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000134855)株式会社バンダイナムコゲームス (1,157)
【Fターム(参考)】