説明

画像表示装置および画像表示装置の駆動方法

【課題】立体表示に利用される眼鏡式の画像表示装置において、パネル温度などの要因によって変化する液晶応答時間に応じて、クロストークを抑えた最適な立体表示を行う。
【解決手段】液晶パネル37に送信される画像データを画像符号回路16で圧縮して符号化し、画像復号化回路35で復号化することで、画像データの転送レートを上げ、表示パネルにおける走査期間を短縮する。上記符号化を行う際の圧縮率は、温度センサー31によって検出されたパネル温度に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示に利用される眼鏡式の画像表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルを利用した立体視用の特殊眼鏡を装着させて観察者の両眼に視差のある別々の画像を見せることで、立体視を実現する眼鏡式の立体表示装置が知られている。立体視を実現するためには、左眼と右眼とに異なる視差画像を見せる必要があるため、左眼画像と右眼用画像との二つの視差画像が必要となる。
【0003】
眼鏡式の立体表示装置では、2次元パネルに時分割で左眼用画像と右眼用画像とを交互に表示して、その表示タイミングに同期させてシャッター眼鏡のシャッターを左右交互にオン/オフ制御することで立体視を実現する。ただ、液晶表示パネルの場合、液晶の応答時間の問題があり、パネル上部からパネル下部にむかって液晶を駆動していく場合に、パネル下部の液晶の応答が完了する前に、次フレームのパネル上部の液晶駆動が開始されるので、クロストーク(左眼画像と右眼画像が混ざる)が発生する。
【0004】
クロストークを解消するために、たとえば左眼用画像をL、右眼用画像をRとすると、60Hzのフレーム周期内でL,L,R,Rの順に画像表示する方法がある。この場合には同じ画像を2度書きするので、左右の画像表示1枚ずつ表示する場合に比べて、クロストークを低減することはできる。さらに液晶パネルを利用した画像表示装置で、立体視する際のクロストーク低減のために、バックライトを常時点灯するのではなく、液晶の応答が安定した時間のみに点灯させるという方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−75668号公報(2011年4月14日公開)
【特許文献2】特開2010−286555号公報(2010年12月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立体表示時のクロストークを抑制するために、特許文献1では、第1の駆動モードと、それよりも走査期間の短い第2の駆動モードとを備え、温度が所定の温度より高くなった場合に第2の駆動モードを選択することで、低温以外の環境下において最適な立体表示を可能にしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の画像表示装置では、低温環境下においてクロストークを抑制することはできない。通常の液晶表示パネルでは、低温環境下での書き込みを保証するため、低温環境下で適切な書き込みが行えるよう走査期間を設定している。このため、低温環境以外では走査期間に余裕が生じており、特許文献1では、低温以外の環境下でのみ上記余裕分の走査期間を短縮して、第2の駆動モードを実現している。
【0008】
また、液晶の応答時間は、温度だけでなく、液晶の特性、トランジスタ特性に依存するので、それらを鑑みて、2種類以上の最適な走査期間を選択する必要がある。
【0009】
また、特許文献1では、第2の駆動モードにおいて走査期間を短くするには、タイミングコントローラとソースドライバとの間の転送レートがボトルネックとなるので、画像圧縮を用いて転送量を削減する必要がある。特許文献1で採用されているYUV変換(RGBの画像信号を輝度信号Yと色差信号UVに変換する)では、圧縮率を可変にすることができないという問題点がある。
【0010】
また、特許文献2では、クロストークを抑制する方法として、左眼画像と右眼画像との視差量やコントラストを用いて、バックライト点灯期間を最適化するという手段が提示されているが、根本的に左眼画像と右眼画像とが混ざる期間をなくさないとクロストークをなくすことはできない。
【0011】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パネル温度などの要因によって変化する液晶応答時間に応じて、クロストークを抑えた最適な立体表示が可能となる画像表示装置およびその駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、表示パネルとバックライトとを有する画像表示装置において、上記表示パネルに送信される画像データを符号化するものであり、該データ符号化を行う際の圧縮率が可変である画像符号化手段と、上記画像符号化手段によって符号化された画像データを、元の画像データに復号化する画像復号化手段と、上記表示パネルのパネル温度を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段によって検出されたパネル温度に基づいて、上記画像符号化手段でデータ符号化を行う際の圧縮率を決定する圧縮率決定手段と、上記圧縮率決定手段によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルにおける走査期間を算出する走査期間算出手段と、上記バックライトの点灯期間を制御するバックライト制御手段とを備えており、上記圧縮率決定手段は、上記パネル温度に対応する液晶応答時間と、上記走査期間との合計が1フレーム期間を超えないように、上記圧縮率を決定するものであり、上記バックライト制御手段は、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行うことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、表示パネルに送信される画像データを圧縮して符号化し、表示パネル側で符号化された画像データを、元の画像データに復号化することで、画像データの転送レートを上げ、表示パネルにおける走査期間を短縮することができる。上記符号化を行う際の圧縮率は可変であり、該圧縮率は、上記温度検出手段によって検出されたパネル温度に基づいて決定される。これにより、表示パネルのパネル温度に応じて、表示パネルにおける走査期間が適切に短縮され、1フレーム内で液晶応答を完了させ(同一フレーム内でL画像とR画像とが混じることを避け)クロストークの発生を防止できる。
【0014】
この時、上記表示パネルにおける走査期間は、上記圧縮率に基づいて算出され、上記バックライト制御手段は、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行う。
【0015】
また、上記画像表示装置では、上記圧縮率決定手段は、設定可能な複数の圧縮率の中から、最も低い圧縮率を選択するものであり、上記走査期間算出回路は、上記圧縮率に基づいて走査期間を算出するものであり、上記バックライト制御手段は、1フレーム期間から液晶応答時間と走査期間とを引いた期間を、上記バックライトの点灯期間とする構成とすることができる。
【0016】
また、上記画像表示装置では、上記バックライト制御手段は、予め定められた所定の期間をバックライトの点灯期間とするものであり、上記走査期間算出回路は、1フレーム期間から液晶応答時間と上記バックライト点灯期間とを引いた期間を、上記走査期間として算出するものであり、上記圧縮率決定手段は、上記走査期間を達成できるように、上記圧縮率を決定する構成とすることができる。
【0017】
また、上記の課題を解決するために、本発明の画像表示装置の駆動方法は、表示パネルとバックライトとを有する画像表示装置の駆動方法において、上記表示パネルのパネル温度を検出する温度検出工程と、上記温度検出工程によって検出されたパネル温度に基づいて、上記表示パネルに送信される画像データを符号化する際の圧縮率を決定する圧縮率決定工程と、上記圧縮率決定工程によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルに送信される画像データを符号化する画像符号化工程と、上記圧縮率決定工程によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルにおける走査期間を算出する走査期間算出工程と、上記画像符号化工程によって符号化された画像データを、元の画像データに復号化する画像復号化工程と、上記バックライトの点灯期間を制御するバックライト制御工程とを有しており、上記圧縮率決定工程では、上記パネル温度に対応する液晶応答時間と、上記走査期間との合計が1フレーム期間を超えないように、上記圧縮率を決定し、上記バックライト制御工程では、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行うことを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、上述した画像表示装置と同様に、表示パネルのパネル温度に応じて、表示パネルにおける走査期間が適切に短縮され、1フレーム内で液晶応答を完了させ(同一フレーム内でL画像とR画像とが混じることを避け)クロストークの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、表示パネルとバックライトとを有する画像表示装置において、上記表示パネルに送信される画像データを符号化するものであり、該データ符号化を行う際の圧縮率が可変である画像符号化手段と、上記画像符号化手段によって符号化された画像データを、元の画像データに復号化する画像復号化手段と、上記表示パネルのパネル温度を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段によって検出されたパネル温度に基づいて、上記画像符号化手段でデータ符号化を行う際の圧縮率を決定する圧縮率決定手段と、上記圧縮率決定手段によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルにおける走査期間を算出する走査期間算出手段と、上記バックライトの点灯期間を制御するバックライト制御手段とを備えており、上記圧縮率決定手段は、上記パネル温度に対応する液晶応答時間と、上記走査期間との合計が1フレーム期間を超えないように、上記圧縮率を決定するものであり、上記バックライト制御手段は、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行う構成である。
【0020】
それゆえ、表示パネルのパネル温度に応じて、表示パネルにおける走査期間が適切に短縮され、1フレーム内で液晶応答を完了させ(同一フレーム内でL画像とR画像とが混じることを避け)クロストークの発生を防止できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】120Hzのフレームレートで画像を出力する場合であって、画像データの圧縮を行わない場合の、液晶パネルの走査期間および液晶応答時間を示す図である。
【図3】液晶応答時間情報の1例を示す図である。
【図4】実施例1における液晶パネルの走査期間および液晶応答時間、並びにバックライト点灯タイミングを示す図である。
【図5】240Hzのフレームレートで同じ画像を2回出力する場合であって、画像データの圧縮を行わない場合の、液晶パネルの走査期間および液晶応答時間を示す図である。
【図6】実施例2における液晶パネルの走査期間および液晶応答時間、並びにバックライト点灯タイミングを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態を示すものであり、実施例3に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施例3における液晶パネルの走査期間および液晶応答時間、並びにバックライト点灯タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔画像表示装置の構成〕
図1は、本実施の形態に係る画像表示装置の全体構成を示す図である。この画像表示装置は、タイミングコントローラ(TCON)10、外部ROM(Read Only Memory)30、温度センサー31、シャッター眼鏡32、ゲートドライバ33、ソースドライバ34、バックライト36、および液晶パネル37を備えて構成されている。
【0023】
タイミングコントローラ10は、受信部11、ガンマ補正回路12、オーバードライブ回路13、画像符号化回路16、液晶応答時間情報記憶部17、圧縮率決定回路18、走査期間算出回路27、温度データ測定回路19、フレームメモリ14,15、フォーマット部20、送信部21、およびタイミングジェネレータ22を備えて構成されている。
【0024】
また、タイミングジェネレータ22は、バックライト制御回路23、眼鏡制御回路24、ゲート制御回路25、およびソース制御回路26から構成される。さらに、ソースドライバ34は、画像復号化回路35を有している。
【0025】
受信部11は、外部から転送された入力画像信号を受信するものである。ガンマ補正回路12は、上記入力画像をLUT(Look Up Table)により変換することによりガンマ特性を補正するものである。オーバードライブ回路13は、フレーメモリ15に格納した前フレームの画像データと現在フレームの画像データとをLUTに入力し、現在フレームの画像データを変換するものである。画像符号化回路16は、圧縮率決定回路18により決定された圧縮率により、画像データを符号化データに変換するものである。
【0026】
フォーマット部20は、ソースドライバ34の伝送形式に従って、符号化データの配列を変換するものである。送信部21は、ソースドライバ34の伝送方式に従って信号転送を行うものである。
【0027】
ソース制御回路26は、ソースドライバ34の制御信号を生成するものである。ゲート制御回路25は、ゲートドライバ33の制御信号を生成するものである。眼鏡制御回路24は、シャッター眼鏡32のシャッターのOn/Offを制御するものである。
【0028】
外部ROM30は、タイミングコントローラ10の動作を決定する情報が格納されているものである。格納されている情報は、ガンマ補正回路12のLUT、オーバードライブ回路13のLUT、温度別の液晶応答時間情報17などである。液晶応答時間情報17は、LUTとして具備されているものである。
【0029】
温度データ測定回路19は、温度センサー31を用いて液晶パネル37のパネル温度データを定期的に測定し、測定された温度データを格納するものである。測定されたパネル温度データは、液晶応答時間情報17への入力とされ、液晶応答時間情報17のなかの該当する温度の液晶応答時間が選択される。
【0030】
圧縮率決定回路18は、選択された温度データにより選択された液晶応答時間と、走査時間との合計が、フレーム周期(フレームレートが120Hzの場合、8.3ms)以下となるように圧縮率を決定するものである。この圧縮率は、画像符号化回路16において画像データを符号化データに変換する際の圧縮率である。圧縮率決定回路18で決定された圧縮率は、画像符号化回路16、走査期間算出回路27および画像復号化回路35に転送される。走査期間算出回路27は、上記圧縮率から走査期間を算出するものである。走査期間は、画像データを圧縮しない場合の走査期間(出力の水平クロック数と内部クロック周期および垂直ライン数から求まる)に圧縮率を乗算することにより算出される。
【0031】
バックライト制御回路23は、バックライト36の点灯開始タイミングおよび点灯期間を制御するものである。バックライト制御回路23は、上述のようにして求まった液晶応答時間および走査期間から、バックライト36の点灯開始タイミングおよび点灯期間を決定する。
【0032】
〔実施例1〕
図2は、フレームレートが120Hz(フレーム周期は8.3ms)の場合で画像データを圧縮しない場合の走査期間および液晶応答時間の一例を示している。パネル上部の走査開始から、パネル下部の走査開始までの時間が走査期間とり、走査を開始してから、液晶の応答が完了するまでの時間が液晶応答時間となる。図2の場合では、L画像のパネル下部の液晶の応答時間がR画像のパネル上部の走査期間開始と重なるために、L画像とR画像とが混じって見えてしまうクロストークが発生する。
【0033】
図3は、液晶応答時間情報17の1例を示している。液晶応答時間情報17には、温度別に液晶応答時間が格納されており、温度センサーより読み出された温度から、該当の液晶応答時間が選択される。
【0034】
図4は、本実施例1における走査期間および液晶応答時間を示している。この時のパネル温度は20℃とする。また、圧縮を行わない場合の走査期間は8.0msであるとする。図3に示される液晶応答時間情報17に現時点のパネル温度20℃を入力すれば、液晶応答時間は4.0msであることが出力される。フレーム周期は8.3msなので、この時、1フレーム内で液晶応答を完了させるためには、走査期間は4.3ms以下とする必要がある。圧縮をしない場合の走査期間は8.0msであるから、圧縮率を50%に設定すれば走査期間は4.0msとなり、図4に示すように、1フレーム内で液晶応答を完了させ(同一フレーム内でL画像とR画像とが混じることを避け)クロストークの発生を防止できる。
【0035】
また、1フレーム期間8.3msから、走査期間4.0msおよび液晶応答時間4.0msを引いた残りは0.3msとなり、これがバックライト点灯期間となる。したがって、バックライト制御回路23は、パネル上部の捜査開始時間から8.0ms後に点灯を開始し、その点灯時間が0.3msとなるように、バックライト36を制御する。
【0036】
本実施例1における圧縮率は、設定可能な複数の圧縮率の中から、クロストークの低減が実現でき、かつ、最も低い圧縮率が選択されるように設定されるものとする。これは、一般的に圧縮率が高いと画質が劣化するので、なるべく圧縮率は低いほうが望ましいためである。例えば、上記の例では、走査期間を4.3ms以下とするためには圧縮率は50%ではなく例えば40%でも良いが、圧縮率をできるだけ低くするため、50%の圧縮率が選択される。
【0037】
また、画像符号化および画像復号化に用いる手法としては、圧縮率を可変にできるのであれば、どのような手法でも用いることができる。例えば、隣接画素の差分値により、DPCM(Differential Pulse Code Modulation)とPCM(Pulse Code Modulation)とを切り替えるような固定長符号化手法を用いることができる。この圧縮方法を使えば圧縮率の種別として、以下のようなバリエーションが存在することになり、そのバリエーションの中から圧縮率を選択することになる。以下の例では、元の画像データが30bit(RGB各10bit)であるとする。
28/30:量子化データ27bit(RGB各9bit)+符号化モード1bit
25/30:量子化データ24bit(RGB各8bit)+符号化モード1bit
22/30:量子化データ21bit(RGB各7bit)+符号化モード1bit
19/30:量子化データ18bit(RGB各6bit)+符号化モード1bit
16/30:量子化データ15bit(RGB各5bit)+符号化モード1bit
13/30:量子化データ12bit(RGB各4bit)+符号化モード1bit
また、本実施例1では、画像データの圧縮率に応じてバックライト点灯時間が設定されるため、圧縮率によってバックライト点灯時間に差が出る可能性がある。このため、バックライトの輝度が一定であれば、同じ画像表示が表示される場合であっても、画像の明るさに差が生じる可能性がある。これを回避するためには、バックライトをアクティブバックライトとし、バックライト点灯時間に応じてバックライト輝度を調整する構成とすれば良い。バックライトの光源としてLEDを用いれば、電流値で明るさを調整することも可能であり、バックライト点灯時間が変化しても、これによる表示画像の明るさの変化を、バックライト輝度の調整によって補償することができる。
【0038】
〔実施例2〕
図5は、フレームレートが240Hzの場合(同じ画像を2度出力する場合)で画像データを圧縮しない場合の走査期間および液晶応答時間の一例を示している。図5の場合では、L画像のパネル下部の液晶応答時間がR画像のパネル上部の走査期間開始と重なるために、L画像とR画像とが混じって見えてしまうクロストークが発生する。
【0039】
図6は、本実施例2における走査期間および液晶応答時間を示している。この時のパネル温度は10℃とする。また、圧縮を行わない場合の走査期間は4.0msであるとする。図3に示される液晶応答時間情報17に現時点のパネル温度10℃を入力すれば、液晶応答時間は4.4msであることが出力される。フレーム周期は8.3msなので、この時、1フレーム内で液晶応答を完了させるためには、走査期間は3.9ms以下とする必要がある。圧縮をしない場合の走査期間は8.0msであるから、圧縮率を80%に設定すれば走査期間は3.2msとなり、図6に示すように、1フレーム内で液晶応答を完了させ(同一フレーム内でL画像とR画像とが混じることを避け)クロストークの発生を防止できる。
【0040】
また、1フレーム期間8.3msから、走査期間3.2msおよび液晶応答時間4.4msを引いた残りは0.7msとなり、これがバックライト点灯期間となる。したがって、バックライト制御回路23は、パネル上部の捜査開始時間から7.6ms後に点灯を開始し、その点灯時間が0.7msとなるように、バックライト36を制御する。
【0041】
〔実施例3〕
図7は、本実施例3に係る画像表示装置の全体構成を示す図である。図7に示される画像表示装置の構成は、図1の構成とほぼ同じであるため、相違点のみを説明し、図1と同一の構成については説明を省略する。
【0042】
本実施例3の画像表示装置では、バックライトの点灯期間の情報はバックライト制御回路22にあらかじめ与えられている。そして、走査期間は、バックライトの点灯時間と計測された温度データに該当する液晶応答時間から算出される。圧縮率決定回路18は、算出された走査期間を満たすように圧縮率を決定する。
【0043】
図5は、フレームレートが240Hzの場合(同じ画像を2度出力する場合)で画像データを圧縮しない場合の走査期間および液晶応答時間の一例を示している。図5の場合では、L画像のパネル下部の液晶応答時間がR画像のパネル上部の走査期間開始と重なるために、L画像とR画像とが混じって見えてしまうクロストークが発生する。
【0044】
図8は、フレームレートが240Hzの場合(同じ画像を2度出力する場合)で、あらかじめバックライトの点灯時間が1.6msと決められている場合の走査期間および液晶応答時間の一例を示している。この時の液晶応答時間は、実施例2と同じ4.4ms(パネル温度10℃)とする。この時、バックライトの点灯時間が1.6msに決まっているので、走査期間を2.4msにする必要がある。その結果、圧縮率は60%に設定される。
【0045】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、眼鏡式の立体表示に利用される画像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 タイミングコントローラ
14,15 フレームメモリ
16 画像符号化回路(画像符号化手段)
17 液晶応答時間情報
18 圧縮率決定回路(圧縮率決定手段)
19 温度データ測定回路(温度検出手段)
22 タイミングジェネレータ
23 バックライト制御回路(バックライト制御手段)
27 走査期間算出回路(走査期間算出手段)
31 温度センサー(温度検出手段)
33 ゲートドライバ
34 ソースドライバ
35 画像復号化回路(画像復号化手段)
36 バックライト
37 液晶パネル(表示パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルとバックライトとを有する画像表示装置において、
上記表示パネルに送信される画像データを符号化するものであり、該データ符号化を行う際の圧縮率が可変である画像符号化手段と、
上記画像符号化手段によって符号化された画像データを、元の画像データに復号化する画像復号化手段と、
上記表示パネルのパネル温度を検出する温度検出手段と、
上記温度検出手段によって検出されたパネル温度に基づいて、上記画像符号化手段でデータ符号化を行う際の圧縮率を決定する圧縮率決定手段と、
上記圧縮率決定手段によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルにおける走査期間を算出する走査期間算出手段と、
上記バックライトの点灯期間を制御するバックライト制御手段とを備えており、
上記圧縮率決定手段は、上記パネル温度に対応する液晶応答時間と、上記走査期間との合計が1フレーム期間を超えないように、上記圧縮率を決定するものであり、
上記バックライト制御手段は、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行う、画像表示装置。
【請求項2】
上記圧縮率決定手段は、設定可能な複数の圧縮率の中から、最も低い圧縮率を選択するものであり、
上記走査期間算出回路は、上記圧縮率に基づいて走査期間を算出するものであり、
上記バックライト制御手段は、1フレーム期間から液晶応答時間と走査期間とを引いた期間を、上記バックライトの点灯期間とする、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
上記バックライト制御手段は、予め定められた所定の期間をバックライトの点灯期間とするものであり、
上記走査期間算出回路は、1フレーム期間から液晶応答時間と上記バックライト点灯期間とを引いた期間を、上記走査期間として算出するものであり、
上記圧縮率決定手段は、上記走査期間を達成できるように、上記圧縮率を決定する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
表示パネルとバックライトとを有する画像表示装置の駆動方法において、
上記表示パネルのパネル温度を検出する温度検出工程と、
上記温度検出工程によって検出されたパネル温度に基づいて、上記表示パネルに送信される画像データを符号化する際の圧縮率を決定する圧縮率決定工程と、
上記圧縮率決定工程によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルに送信される画像データを符号化する画像符号化工程と、
上記圧縮率決定工程によって決定された圧縮率に基づいて、上記表示パネルにおける走査期間を算出する走査期間算出工程と、
上記画像符号化工程によって符号化された画像データを、元の画像データに復号化する画像復号化工程と、
上記バックライトの点灯期間を制御するバックライト制御工程とを有しており、
上記圧縮率決定工程では、上記パネル温度に対応する液晶応答時間と、上記走査期間との合計が1フレーム期間を超えないように、上記圧縮率を決定し、
上記バックライト制御工程では、上記表示パネルにおける全ての画素で液晶応答が完了している状態でバックライトを点灯するように、バックライトの点灯制御を行う、画像表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88483(P2013−88483A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226145(P2011−226145)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】