説明

画像表示装置及びその駆動方法

【課題】高精細・高画質を実現する画像表示装置及びその駆動方法を提案する。また、駆動トランジスタのヒステリシス特性による画質の悪化を抑制する。
【解決手段】表示素子と、表示領域と、画素回路と、データ線と、を含む画像表示装置であって、画素回路は、ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタと、駆動トランジスタの前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続する第1スイッチング素子と、駆動トランジスタの前記ゲート電極に、一電極が接続される第1キャパシタと、第1キャパシタの他電極と電源を接続する第2スイッチング素子と、データ線に、一電極が接続される第2キャパシタと、第1キャパシタの他電極と第2キャパシタの他電極を接続する第3スイッチング素子と、駆動トランジスタの前記ドレイン電極と表示素子を接続する第4スイッチング素子と、を含むことを特徴とする画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその駆動方法に関し、特に有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス型有機EL表示装置の表示領域には有機EL素子がマトリックス状に配置されて、各有機EL素子に対応する薄膜トランジスタ(TFT)で構成された画素回路によって、有機EL素子が制御されて表示が行われる。各画素回路を制御する駆動回路は表示領域の周辺部に設けられ、画素領域周辺にはその他に、電源配線、信号配線といった配線が形成される。有機EL素子は、2つの電極の間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの機能を有する有機層が積層された構造をとる。
【0003】
アクティブマトリックス型有機EL表示装置に用いられるTFTは、全画素回路において同一の特性となるように製造することは難しい。そのため、TFTの閾値電圧(Vth)は画素毎にばらついてしまう。各画素回路のTFTのVthがばらつくと有機EL素子に流す駆動電流も画素毎にばらついてしまうため、ざらつき・スジむら等の画質低下となってしまう。
【0004】
このようなTFTのVthのばらつきを補償して画質の改善を図ったアクティブマトリックス型有機EL表示装置の一例として、特許文献1に記載の表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−157283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の有機EL表示装置では、Vthのばらつきを補償しながら少ない選択信号で画素回路を駆動することができるものの、画素回路に用いられるTFT数が多いため、表示領域の高精細化の妨げになる。また、Vthのばらつきを補償するために、画素回路のTFTのゲート電極とドレイン電極とを接続した状態で、キャパシタの電圧をVthとなるよう充電する。その充電時間を十分に確保するには各画素回路を制御する周辺駆動回路が複雑になってしまい、額縁領域を大きくしてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、より少ないTFT数で構成された画素回路によって、Vthのばらつきを補償し、かつ、Vthのばらつきを補償する充電時間を十分に確保することで、高精細・高画質を実現する画像表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。また、本発明は、プログラミング期間中、データ線におけるデータ電圧の変動が駆動トランジスタのゲートに与える影響を抑え、駆動トランジスタのヒステリシス特性による画質の悪化を抑制する画像表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、印加される電流を制御することで表示を行う複数の表示素子と、前記複数の表示素子をマトリックス状に配列形成してなる表示領域と、前記複数の表示素子に接続して配置された複数の画素回路と、前記複数の画素回路に接続され、かつ前記複数の画素回路に画像信号に対応するデータ電圧を供給する複数のデータ線と、を含む画像表示装置であって、前記画素回路は、ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタの前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続する第1スイッチング素子と、前記駆動トランジスタの前記ゲート電極に、一電極が接続される第1キャパシタと、前記第1キャパシタの他電極と電源を接続する第2スイッチング素子と、前記データ線に、一電極が接続される第2キャパシタと、前記第1キャパシタの他電極と前記第2キャパシタの他電極を接続する第3スイッチング素子と、前記駆動トランジスタの前記ドレイン電極と前記表示素子を接続する第4スイッチング素子と、を含むことを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、印加される電流を制御することで表示を行う複数の表示素子と、前記複数の表示素子をマトリックス状に配列形成してなる表示領域と、前記複数の表示素子に接続して配置された複数の画素回路と、前記複数の画素回路に接続され、かつ前記複数の画素回路に画像信号に対応するデータ電圧を供給する複数のデータ線と、を含む画像表示装置の駆動方法であって、前記画素回路は、ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタの前記ゲート電極に、一電極が接続される第1キャパシタと、前記データ線に、一電極が接続される第2キャパシタと、を有する画素回路であり、前記複数の画素回路の全てにおいて、前記駆動トランジスタの前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続して前記駆動トランジスタの閾値電圧を前記第1キャパシタに保持させる第1動作と、1ラインずつ順次、データ電圧を第2キャパシタに保持させる第2動作と、前記第1キャパシタの他電極と前記第2キャパシタの他電極を接続した後、前記第2キャパシタの一電極に前記データ線より基準電圧を供給し、前記表示素子に電流を流す第3動作と、を含み、1フレーム期間は、第1期間と、第2期間と、の2つの期間に分離されており、前記第1期間において前記第1動作及び第2動作を実施し、前記第2期間において第3動作を実施することを特徴とする画像表示装置の駆動方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より少ないTFT数で構成された画素回路によって、Vthのばらつきを補償し、かつ、Vthのばらつきを補償する充電時間を十分に確保することで、高精細・高画質を実現できる。また、本発明によれば、プログラミング期間中、データ線におけるデータ電圧の変動が駆動トランジスタのゲート電極に与える影響を抑え、駆動トランジスタのヒステリシス特性による画質の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における画素回路の等価回路図である。
【図2】第1の実施形態における有機EL表示装置を概略的に示した図である。
【図3】図1の画素回路を駆動するためのタイミングチャートである。
【図4】図3の各タイミングにおける画素回路の等価回路を示した図である。
【図5】第1の実施形態における選択信号、データ電圧の動作を示す図である。
【図6】第2の実施形態における画素回路の等価回路図である。
【図7】図6の画素回路を駆動するためのタイミングチャートである。
【図8】第2の実施形態における選択信号、データ電圧の動作を示す図である。
【図9】デジタルスチルカメラシステムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の画像表示装置の実施形態について説明するが、それぞれの実施形態は、本発明の概念が最適に適用された実施形態に関するもので、本発明が以下に記載する実施形態に限定されるわけではない。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態について、以下、図1〜図4(c)の図面を用いて説明する。図面では、説明全般にわたって類似する部分については同じ参照符号を付けている。また、ある部分が他の部分に連結されているとする時、これは直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に他の素子をおいて電気的に連結されている場合も含む。
【0014】
図1は、本実施形態の画像表示装置が有する画素回路の等価回路図である。図1に示すように、本実施形態における画素回路4は、トランジスタM1−M5、及びキャパシタC1、C2を含み、画素回路4には有機EL素子OLEDが接続されている。
【0015】
図1の画素回路は、説明の便宜上、m番目のデータ線DLmとn番目の走査線SL1n、SL2nとに連結された画素回路のみを示した。
【0016】
トランジスタM1は、電源VOLEDと有機EL素子OLEDとの間に接続され、有機EL素子OLEDに流れる電流を制御する。即ち、ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタである。具体的には、駆動トランジスタM1のソース電極が電源VOLEDに接続され、駆動トランジスタM1のドレイン電極がトランジスタM4(第4スイッチング素子)を通じて有機EL素子OLEDのアノードに電気的に接続される。有機EL素子OLEDのカソードは、電源VCOMに接続される。図1では、駆動トランジスタM1がPタイプのチャンネルを有するトランジスタで実現されるので、電源VCOMは、電源VOLEDより低い電圧とし、例えば、グラウンド電圧とする。
【0017】
駆動トランジスタM1は、Nタイプのチャンネルを有するトランジスタで実現しても良い。この場合、駆動トランジスタM1のソース電極が電源VCOMに接続され、駆動トランジスタM1のドレイン電極がトランジスタM4を通じて有機EL素子OLEDのカソードに電気的に接続される。有機EL素子OLEDのアノードは、電源VOLEDに接続される。
【0018】
なお、以下、駆動トランジスタM1が電界効果トランジスタの場合について説明するが、本発明は、バイポーラトランジスタなど、3つの電極を備え同様の機能を有する全ての能動素子で実現することができる。
【0019】
トランジスタM2(第1スイッチング素子)は、走査線SL2nからの選択信号に応答して駆動トランジスタM1のゲート電極とドレイン電極とを接続する。以下、簡略化のため、駆動トランジスタのゲート電極とドレイン電極との接続を、ダイオード接続と表記する。図1では、トランジスタM2を一つのゲート電極を有するトランジスタで示したが、デュアルゲート方式を利用して形成することもできる。
【0020】
キャパシタC1(第1キャパシタ)の一電極は、駆動トランジスタM1のゲート電極に接続される。トランジスタM5(第2スイッチング素子)は、走査線SL2nに印加される選択信号に応答してキャパシタC1の他電極と電源VOLEDとを接続する。
【0021】
図1では、走査線SL2nが接続されるトランジスタM2、M5は、互いに同一なタイプのチャンネルを有するトランジスタで実現され、トランジスタM4は、他のタイプのチャンネルを有するトランジスタで実現される。これにより、トランジスタM2、M5が導通する場合に、トランジスタM4は、遮断されるように制御される。つまり、トランジスタM2、M5がNタイプのチャンネルを有し、トランジスタM4がPタイプのチャンネルを有する場合、ハイレベル(H)の選択信号が走査線SL2nに印加されると、トランジスタM2、M5が導通すると同時にトランジスタM4が遮断される。したがって、一つの選択信号で3個のスイッチングトランジスタを制御する構成となっている。トランジスタM2、M5をPタイプのチャンネルを有するトランジスタとし、トランジスタM4をNタイプのチャンネルを有するトランジスタとして実現しても良い。
【0022】
キャパシタC2(第2キャパシタ)の一電極は、データ線DLmに接続される。トランジスタM3(第3スイッチング素子)は、走査線SL1nに印加される選択信号に応答してキャパシタC2の他電極とキャパシタC1の他電極とを接続する。図1では、トランジスタM3をNタイプのチャンネルを有するトランジスタとしたが、Pタイプのチャンネルを有するトランジスタで実現しても良い。
【0023】
トランジスタM2−M5と走査線との接続について説明すると、トランジスタM3のゲートには、走査線SL1nが接続されており、トランジスタM2、M5及びM4のゲートには、走査線SL2nが接続されている。つまり、トランジスタM3は走査線SL1nからの制御信号(第1制御信号)で制御され、トランジスタM2、M5及びM4は走査線SL2nからの制御信号(第2制御信号)で制御される。
【0024】
また、トランジスタM2−M5は、印加される制御信号に応答して接続される両端をスイッチングするための素子であれば良い。本実施形態の図1及び後述の第2の実施形態の図6に示された特定の素子に限定されないことは、当業者には、自明なことである。
【0025】
なお、トランジスタM1−M5としては、基板上に形成される薄膜トランジスタ(TFT)が好適に用いられる。本発明の画像表示装置で使用される表示素子としては、有機EL素子に限定されるわけではなく、電流を制御することで表示を行うものであれば、好適に用いられる。
【0026】
図2は、本実施形態における有機EL表示装置を概略的に示した図である。
【0027】
図2に示すように、本実施形態の有機EL表示装置は、表示領域1、走査駆動部2、及びデータ駆動部3を含む。
【0028】
表示領域1は、複数の有機EL素子がマトリックス状に配列形成された領域のことである。表示領域1には、列方向に伸びている複数のデータ線DL1−DLm、行方向に伸びている複数の走査線SL11−SL1n、SL21−SL2n、及び複数の画素回路4も配置されている。データ線DL1−DLmは、複数の画素回路4に接続され、画像信号に対応するデータ電圧を複数の画素回路4に供給する。走査線SL11−SL1n、SL21−SL2nは、複数の画素回路4に接続され、選択信号を複数の画素回路4に供給する。画素回路4は、データ線DL1−DLmと走査線SL11−SL1n、SL21−SL2nとが交差する位置に対応して配置されている。また、画素回路4には、印加される電流を制御することで表示を行う表示素子である有機EL素子が接続され、複数の画素回路4は複数の有機EL素子に接続して配置される。
【0029】
走査駆動部2は、走査線SL11−SL1n、SL21−SL2nに選択信号を印加し、データ駆動部3は、データ線DL1−DLmに画像信号に対応するデータ電圧を印加する。走査駆動部2及び/またはデータ駆動部3は、基板上に走査線、データ線、及び画素回路と同時にTFTで形成されてもよく、チップの形態で基板上に接着されて電気的に連結されても良い。
【0030】
以下、本実施形態における画素回路の動作について詳細に説明する。
【0031】
図3は、図1の画素回路を駆動するためのタイミングチャートである。図3によれば、本実施形態における画素回路の動作は、1フレーム期間(1Frame)において、プログラミング期間(Programming)、及び発光期間(Emitting)の2つの期間から構成される。
【0032】
プログラミング期間(第1期間)は、第1区間(t1)〜第3区間(t3)であり、発光期間(第2期間)は、第4区間(t4)に対応している。
【0033】
まず、第1動作として、第1区間(t1)で走査線SL1nにローレベル(L)、走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加されると、トランジスタM2、M5が導通し、トランジスタM3、M4が遮断される。
【0034】
したがって、図4(a)に示すように、キャパシタC1がトランジスタM5によって電源VOLEDに連結され、駆動トランジスタM1は、トランジスタM2によってダイオード接続される。それゆえ、キャパシタC1には、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される。
【0035】
一方、キャパシタC2の一電極はデータ線DLmに接続されているが、他電極はフローティング状態であるため、データ線DLmがいかなる電圧であろうと、キャパシタC2の充電状態は変化しない。
【0036】
次に、第2動作として、第2区間(t2)で走査線SL1n、及び走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加されると、トランジスタM2、M5に加えトランジスタM3が導通する。トランジスタM4は遮断された状態である。
【0037】
したがって、図4(b)に示すように、キャパシタC2はデータ線DLmと電源VOLEDの間に接続された状態になり、キャパシタC2にはデータ電圧が充電される。1ラインずつ順次、データ線からのデータ電圧がキャパシタC2に充電される。
【0038】
一方、トランジスタM2、及びキャパシタC1の接続状態は、第1区間(t1)と同一であり、キャパシタC1がトランジスタM5によって電源VOLEDに連結され、駆動トランジスタM1は、トランジスタM2によってダイオード接続される。したがって、キャパシタC1には、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される。
【0039】
次の第3区間(t3)は、第1区間(t1)と同一状態であり、走査線SL1nにローレベル(L)、走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加され、トランジスタM2、M5が導通し、トランジスタM3、M4が遮断されている。つまり、第3区間(t3)では第1動作を実施している。
【0040】
したがって、図4(a)に示すように、キャパシタC1がトランジスタM5によって電源VOLEDに連結され、駆動トランジスタM1は、トランジスタM2によってダイオード接続される。したがって、キャパシタC1には、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される。
【0041】
一方、キャパシタC2の一電極はデータ線DLmに接続されているが、他電極はフローティング状態であるため、データ線DLmがいかなる電圧であろうと、キャパシタC2の充電状態は変化せず、第2区間(t2)で充電されたデータ電圧が保持される。
【0042】
駆動トランジスタM1がダイオード接続され、キャパシタC1にトランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される動作は、第1区間(t1)〜第3区間(t3)内で走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加される間は継続して行われる。
【0043】
次に、第3動作として、第4区間(t4)で走査線SL1nにハイレベル(H)、走査線SL2nにローレベル(L)の選択信号が印加され、トランジスタM3、M4が導通し、トランジスタM2、M5が遮断される。その後、キャパシタC2の一電極にデータ線より基準電圧を供給する。
【0044】
つまり、図4(c)に示すように、キャパシタC1の他電極がトランジスタM3によってキャパシタC2の他電極に接続された後、キャパシタC2の一電極にデータ線より基準電圧が供給される。したがって、キャパシタC1、C2は、互いに直列に接続されるので、駆動トランジスタM1のゲート電極に印加される電圧は、キャパシタC1に充電された電圧とキャパシタC2に充電された電圧と、データ線DLmの電圧(基準電圧)で決定する。全データ線は同一の電圧が印加される。
【0045】
この時、トランジスタM4が導通するので、駆動トランジスタM1に流れる電流は、有機EL素子OLEDを流れ、有機EL素子OLEDは、印加される電流に対応して発光する。
【0046】
有機EL素子OLEDに流れる電流の量IOLEDは、下記の式1の通りである。
IOLED=(β/2)・(Vgs−Vth)2 (式1)
【0047】
ここで、IOLEDは、有機EL素子OLEDに流れる電流、Vgsは駆動トランジスタM1のソース電極とゲート電極との間の電圧、Vthは駆動トランジスタM1の閾値電圧、βは定数値である。さらに、下記の式2の電圧関係が成り立つ。
Vref+(VOLED−Vdata)−Vth+Vgs=VOLED (式2)
【0048】
ここで、Vdataはデータ電圧、Vrefは発光期間中のデータ線の電圧(基準電圧)を示す。式1と式2より、式3のように表現することができ、有機EL素子OLEDに流れる電流IOLEDは、駆動トランジスタM1の閾値電圧の影響を受けないことが分かる。
IOLED=(β/2)・(Vdata−Vref)2 (式3)
【0049】
図5は走査線の選択信号、データ線のデータ電圧の動作を詳細に説明するタイミングチャートである。
【0050】
図5によれば、プログラミング期間において、走査線SL11−SL1nにおけるハイレベル(H)の選択信号が1ラインからnラインまで順次シフトして印加される。選択信号がハイレベル(H)の期間がライン選択期間であり、選択期間に同期してデータ線のデータ電圧が切り替わる。走査線SL21−SL2nの選択信号は全ライン同一信号となっている。
【0051】
発光期間においては、走査線SL11−SL1n、SL21−SL2nの全ライン同一信号となっており、ハイレベル(H)の選択信号が印加される。全データ線も同一のデータ電圧となっている。
【0052】
本実施形態によると、駆動トランジスタM1はプログラミング期間中ずっとダイオード接続状態にできるので、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに十分漸近させた電圧をキャパシタC1に充電することができる。よって、トランジスタの閾値電圧Vthのバラツキの補償を非常に正確に実施することが可能となる。
【0053】
また、駆動トランジスタM1はプログラミング期間中ずっとダイオード接続状態にあり、かつトランジスタM3が遮断状態であるため、データ線におけるデータ電圧の変動が駆動トランジスタM1のゲート電極に与える影響はほとんど無い。よって、駆動トランジスタM1のヒステリシス特性による画質の悪化を抑制することが可能となる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態について、以下、図面を用いて説明する。
【0055】
図6は、本実施形態の画像表示装置が有する画素回路を示した図面であり、図7は、図6に示された画素回路を駆動するためのタイミングチャートである。
【0056】
本実施形態における画素回路は、トランジスタM2、M5に印加される選択信号とトランジスタM4に印加される選択信号とが分離されて実現されるという点で、第1の実施形態における画素回路と異なる。具体的には、トランジスタM4には、別途の走査線SL3nからの選択信号が印加される。図6ではトランジスタM4はNタイプのチャンネルを有するトランジスタとしたが、Pタイプのチャンネルで実現しても良い。
【0057】
トランジスタM2−M5と走査線との接続について説明すると、トランジスタM3のゲート電極には、走査線SL1nが接続されており、トランジスタM2及びM5のゲート電極には、走査線SL2nが接続されている。トランジスタM4のゲート電極には、走査線SL3nが接続されている。つまり、トランジスタM3は走査線SL1nからの制御信号(第1制御信号)で制御され、トランジスタM2及びM5は走査線SL2nからの制御信号(第2制御信号)で制御される。トランジスタM4は走査線SL3nからの制御信号(第3制御信号)で制御される。
【0058】
本実施形態における駆動トランジスタ、スイッチング素子、キャパシタ、表示素子としては、第1の実施形態に挙げた部材が好適に用いられる。
【0059】
以下、本実施形態における画素回路の動作について図7を参照して詳細に説明する。
【0060】
まず、第0区間(t0)で走査線SL2n、SL3nからの選択信号がハイレベル(H)になると、トランジスタM2が導通して駆動トランジスタM1がダイオード接続され、キャパシタC1がトランジスタM5によって電源VOLEDに連結される。さらに、トランジスタM4が導通して、駆動トランジスタM1と有機EL素子OLEDが接続される。この動作によって駆動トランジスタM1と有機EL素子OLEDに電流が流れて、駆動トランジスタM1のゲート電極とソース電極間電圧がVth以上になって状態をリセットできるので安定な動作を実現できる。後述の第1動作の開始時には、ダイオード接続された駆動トランジスタM1と有機EL素子OLEDが接続されており、有機EL素子OLEDに電流が流れる。
【0061】
次に、第1動作として、第1区間(t1)で走査線SL3nからの選択信号がローレベル(L)になると、図4(a)に示すように、トランジスタM4が遮断される。このとき駆動トランジスタM1がトランジスタM2によってダイオード接続されている。それゆえ、キャパシタC1には、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される。
【0062】
続いて、第2動作として、第2区間(t2)で走査線SL1nからの選択信号がハイレベル(H)になると、トランジスタM3が導通して、図4(b)に示すように、キャパシタC2はデータ線DLmと電源VOLEDの間に接続された状態になる。この動作によりキャパシタC2にはデータ電圧が充電される。1ラインずつ順次、データ線からのデータ電圧がキャパシタC2に充電される。
【0063】
第3区間(t3)は、第1区間(t1)と同一状態であり、走査線SL1nにローレベル(L)、走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加され、トランジスタM2、M5が導通し、トランジスタM3、M4が遮断されている。
【0064】
駆動トランジスタM1がダイオード接続され、キャパシタC1にトランジスタM1の閾値電圧Vthに漸近するように充電される動作は、第1区間(t1)〜第3区間(t3)内で走査線SL2nにハイレベル(H)の選択信号が印加される間は継続して行われる。つまり、第3区間(t3)では第1動作を実施している。
【0065】
次に、第3動作として、第4区間(t4)で走査線SL1n、SL3nにハイレベル(H)、走査線SL2nにローレベル(L)の選択信号が印加されると、キャパシタC1及びC2は、図4(c)に示すように、直列に接続される。その後、キャパシタC2の一電極にデータ線より基準電圧を供給する。この動作により有機EL素子OLEDにはデータ電圧に対応する電流が流れる。
【0066】
図8は走査線の選択信号、データ線のデータ電圧の動作を詳細に説明するタイミングチャートである。
【0067】
図8によれば、プログラミング期間において、図5と同様に、走査線SL11−SL1nにおけるハイレベル(H)の選択信号が1ラインからnラインまで順次シフトして印加される。選択信号がハイレベル(H)の期間がライン選択期間であり、選択期間に同期してデータ線のデータ電圧が切り替わる。走査線SL21−SL2nの選択信号は全ライン同一信号となっているが、必ずしもプログラミング期間中ずっとハイレベル(H)にする必要はなく、駆動トランジスタM1の閾値電圧VthをキャパシタC1に十分充電できれば任意の期間に設定できる。走査線SL31−SL3nの選択信号も全ライン同一信号となっている。
【0068】
発光期間においては、走査線SL11−SL1n、SL21−SL2n、SL31−SL3nの全ライン同一信号となっている。走査線SL11−SL1n、SL31−SL3nはハイレベル(H)の選択信号が印加され、走査線SL21−SL2nはローレベル(L)の選択信号が印加される。全データ線も同一のデータ電圧となっている。
【0069】
本実施形態によると、駆動トランジスタM1はプログラミング期間であれば任意の期間ダイオード接続状態にできるので、駆動トランジスタM1の閾値電圧Vthに十分漸近させた電圧をキャパシタC1に充電することができる。よって、トランジスタの閾値電圧Vthのバラツキの補償を非常に正確に実施することが可能となる。さらに、プログラミング期間開始時に、駆動トランジスタM1の状態をリセットできるので安定な動作を実現できる。
【0070】
また、第1の実施形態と同様に、駆動トランジスタM1はプログラミング期間ずっとダイオード接続状態にあり、かつトランジスタM3が遮断状態であるため、データ線におけるデータ電圧の変動が駆動トランジスタM1のゲート電極に与える影響はほとんど無い。よって、駆動トランジスタM1のヒステリシス特性による画質の悪化を抑制することが可能となる。
【0071】
(第3の実施形態)
上述した各実施形態で説明した表示装置は各種電子機器に適用できる。
【0072】
図9は、本発明が用いられる電子機器としてのデジタルスチルカメラシステムのブロック図である。図中、10はデジタルスチルカメラシステム、11は撮影部、12は映像信号処理回路、13は表示パネル、14はメモリ、15はCPU、16は操作部を示す。
【0073】
図9において、撮影部11で撮影した映像または、メモリ14に記録された映像を、映像信号処理回路12で信号処理し、表示パネル13で見ることができる。CPU15では、操作部16からの入力によって、撮影部11、メモリ14、映像信号処理回路12などを制御して、状況に適した撮影、記録、再生、表示を行う。また、表示パネル13は、この他にも各種電子機器の表示部として利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1:表示領域、4:画素回路、DL1−DLm:データ線、M1−M5:トランジスタ、C1、C2:キャパシタ、VCOM、VOLED:電源、OLED:表示素子(有機EL素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電流を制御することで表示を行う複数の表示素子と、
前記複数の表示素子をマトリックス状に配列形成してなる表示領域と、
前記複数の表示素子に接続して配置された複数の画素回路と、
前記複数の画素回路に接続され、かつ前記複数の画素回路に画像信号に対応するデータ電圧を供給する複数のデータ線と、
を含む画像表示装置であって、
前記画素回路は、
ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタの前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続する第1スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタの前記ゲート電極に、一電極が接続される第1キャパシタと、
前記第1キャパシタの他電極と電源を接続する第2スイッチング素子と、
前記データ線に、一電極が接続される第2キャパシタと、
前記第1キャパシタの他電極と前記第2キャパシタの他電極を接続する第3スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタの前記ドレイン電極と前記表示素子を接続する第4スイッチング素子と、
を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第3スイッチング素子は第1制御信号で制御され、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、及び前記第4スイッチング素子は第2制御信号で制御されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第3スイッチング素子は第1制御信号で制御され、
前記第1スイッチング素子、及び前記第2スイッチング素子は第2制御信号で制御され、
前記第4スイッチング素子は第3制御信号で制御されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示素子は有機EL素子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
印加される電流を制御することで表示を行う複数の表示素子と、
前記複数の表示素子をマトリックス状に配列形成してなる表示領域と、
前記複数の表示素子に接続して配置された複数の画素回路と、
前記複数の画素回路に接続され、かつ前記複数の画素回路に画像信号に対応するデータ電圧を供給する複数のデータ線と、
を含む画像表示装置の駆動方法であって、
前記画素回路は、
ゲート電極とソース電極との間に印加される電圧に応じてドレイン電極に電流を流す駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタの前記ゲート電極に、一電極が接続される第1キャパシタと、
前記データ線に、一電極が接続される第2キャパシタと、
を有する画素回路であり、
前記複数の画素回路の全てにおいて、
前記駆動トランジスタの前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続して前記駆動トランジスタの閾値電圧を前記第1キャパシタに保持させる第1動作と、
1ラインずつ順次、データ電圧を第2キャパシタに保持させる第2動作と、
前記第1キャパシタの他電極と前記第2キャパシタの他電極を接続した後、前記第2キャパシタの一電極に前記データ線より基準電圧を供給し、前記表示素子に電流を流す第3動作と、
を含み、
1フレーム期間は、
第1期間と、第2期間と、の2つの期間に分離されており、
前記第1期間において前記第1動作及び第2動作を実施し、
前記第2期間において第3動作を実施することを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記第1動作の開始時、前記ゲート電極と前記ドレイン電極とを接続した前記駆動トランジスタと前記表示素子とを接続して前記表示素子に電流を流すことを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−107441(P2011−107441A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262696(P2009−262696)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】