説明

画像表示装置及びその駆動方法

【課題】駆動トランジスタをnチャネルTFTで構成した画素回路を有する画像表示装置は、画素回路を制御する制御信号線が増え、画素開口率が低下する。
【解決手段】スイッチ72は、一方端子をデータ線50に接続され他方端子を駆動トランジスタ62のゲートに接続されるキャパシタ64に直列に接続される。スイッチ74は、駆動トランジスタ62のソースと接地電位GNDとの間に接続される。画素回路40の行毎に制御信号線52bが配線される。制御信号線52bはそれが配線された行の画素回路40内にてスイッチ72,74それぞれに制御信号を供給する。2つのスイッチ72,74に対する制御信号線を共通化することで、画素回路が配列された画面内の制御信号線の面積が少なくなり、開口率の増加が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子とその動作を制御する複数のスイッチとを有した画素回路がマトリクス状に配列された画像表示装置、及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL(Electro-Luminescence)素子を用いた表示装置である有機ELディスプレイが提案されている。有機EL素子は自発光素子であるため、液晶表示装置では必要となるバックライトが不要であり薄型化に適すると共に、視野角が180°に近いという特長を有する。そのため、有機ELディスプレイは次世代の表示装置としてその実用化が大きく期待されている。
【0003】
現在、提案されている有機ELディスプレイは主として、発光層に注入された正孔と電子とが再結合する際に光を生じる現象を利用する電流制御型の有機EL素子を用いたものである。有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)と同様、アクティブマトリックス方式を採用することができ、画素に対応して複数の画素回路が配列される。画素回路は例えば、アモルファスシリコンや多結晶シリコン等で形成される薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を用いて構成される。各画素回路には有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)などの有機EL素子が設けられ、有機EL素子に流れる電流に応じて各画素の輝度を制御することができる。
【0004】
アクティブマトリックス型の画像表示装置では、画素回路それぞれに駆動トランジスタを設けて、当該画素回路の発光素子を駆動する。駆動トランジスタのドレイン−ソース間電流IDSはゲート−ソース間電圧VGSに応じて変化し、ゲートに画素値に応じた電位を印加することにより画素の階調に応じた階調電流が得られる。この階調電流が有機EL素子に駆動電流として供給される。
【0005】
図9は、下記特許文献1に記載される画素回路の回路図である。この画素回路の駆動トランジスタQ01はpチャネルのTFTにより構成されている。Q01はダイオード型の発光素子である有機EL素子OLEDのアノードと所定の正電圧を供給する駆動電圧源VOLEDとの間に配置される。OLEDのカソードは接地電位GNDに接続される。Q01のソースはVOLEDに接続され、Q01のドレインはスイッチ2を介してOLEDのアノードに接続される。Q01のゲートは容量4及びスイッチ6を介してデータ線8に接続され、データ線8に印加されるデータ信号の電圧とVOLEDとに応じたVGSが設定され、当該VGSに応じたIDSがOLEDに供給される。
【0006】
さて、駆動トランジスタをnチャネルのTFTで構成することができれば、TFT作製において従来のアモルファスシリコンプロセスを用いることができるようになる(特許文献2)。また、高速駆動も可能となる。
【0007】
図10は、下記特許文献2に記載される、駆動トランジスタQ02をnチャネルTFTで構成した画素回路の回路図である。Q02をnチャネルとした場合、そのドレインがスイッチ2を介してVOLEDに接続され、ソースがOLEDのアノードに接続される。ソース電位はOLEDの電流−電圧(I−V)特性の経時変化などにより変動し、これに伴い、データ線8にデータ信号を印加したときに設定されるVGSを変化させ、OLEDの発光輝度も変化するという不都合を生じる。この不都合は、Q02のソースとGNDとの間にスイッチ10を設け、VGSの設定に際して当該スイッチ10をオンしソース電位をGNDに設定することで回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,229,506号明細書
【特許文献2】特開2004−361640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
駆動トランジスタをnチャネルTFTで構成した場合、駆動トランジスタをpチャネルTFTで構成した場合には不要であるスイッチ10が必要になる分、画素回路中のスイッチが増える。スイッチが多くなり当該スイッチへの制御信号を供給する信号線が増加すると、当該信号線が画素回路のマトリクス配列上に占める面積が増加し、その結果、OLEDを配置して発光させることができる開口面積が減少するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、駆動トランジスタと発光素子との接続点を基準電圧源に接続するスイッチを備えた画素回路を有する画像表示装置において画素開口率の向上を図ると共に、当該画像表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像表示装置は、マトリクス状に配列された複数の画素回路と、前記画素回路のマトリクス配列の各列に配置され、輝度値に応じた電圧を有するデータ信号を前記画素回路に供給するデータ線と、前記画素回路のマトリクス配列の各行に配置され、前記画素回路に設けられる複数のスイッチに制御信号を供給する制御信号線と、第1、第2及び第3の基準電圧源と、を有し、前記画素回路が、一方端子を前記第1の基準電圧源に接続され、他方端子に供給される駆動電流に応じた強度で発光する発光素子と、前記データ信号に応じた電圧を印加される制御端子と、前記発光素子の他方端子に接続される第1の電流端子と、前記第2の基準電圧源に接続される第2の電流端子とを有し、前記データ信号に応じた前記駆動電流を前記電流端子間に発生させる駆動トランジスタと、前記データ線と前記制御端子との間に接続された第1のキャパシタと、前記第1の電流端子と前記制御端子との間に接続された第2のキャパシタと、前記第2の電流端子と前記第2の基準電圧源との間を断続可能な第1のスイッチと、前記制御端子と前記第2の電流端子との間を断続可能な第2のスイッチと、前記第1のキャパシタに直列に接続され、前記データ線と前記制御端子との間の容量的な結合及び分離を切り換え可能な第3のスイッチと、前記第1の電流端子と前記第3の基準電圧源との間を断続可能な第4のスイッチと、を有し、前記第3及び第4のスイッチに対応して前記各行に設けられる前記制御信号線が、当該両スイッチに共通の単一の配線であるものである。
【0012】
本発明の好適な態様は、前記第1のキャパシタが、その一方端子を前記データ線に接続され、他方端子を前記第3のスイッチを介して前記制御端子に接続され、前記第2のキャパシタが、その一方端子を前記第1の電流端子に接続され、他方端子を前記制御端子に接続された画像表示装置である。
【0013】
本発明の他の好適な態様は、前記第1のキャパシタが、その一方端子を前記第3のスイッチを介して前記データ線に接続され、他方端子を前記制御端子に接続され、前記第2のキャパシタが、その一方端子を前記第1の電流端子に接続され、他方端子を前記第1のキャパシタの前記一方端子に接続されて前記第1の電流端子と前記制御端子との間に前記第1のキャパシタと直列に接続された画像表示装置である。
【0014】
本発明に係る画像表示装置の駆動方法は、前記画素回路を行単位で順次選択して、選択された行の前記画素回路に前記データ信号に応じた輝度情報を書き込む書き込み動作と、書き込んだ前記輝度情報に応じた強度で前記発光素子を発光させる発光動作とにおいて、前記選択された行に対する前記書き込み動作が、前記第1から第4のスイッチを導通状態とし、前記輝度値の基準レベルを定める所定の電圧を前記データ線に印加する第1ステップと、前記第1ステップに続いて前記第1のスイッチを非導通状態に切り換える第2ステップと、前記第2ステップに続いて前記第2のスイッチを非導通状態に切り換え、前記データ信号を前記データ線に印加して前記制御端子を当該データ信号に応じた電位に設定する第3ステップと、前記第3ステップに続いて前記第3及び第4のスイッチを非導通状態に切り換える第4ステップと、を有し、前記発光動作が、前記第4ステップ後の状態にて前記第1のスイッチを導通状態にするステップを有する方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第3のスイッチと第4のスイッチとを共通の制御信号線で制御する画素回路の構造と駆動方法とが実現され、画像表示装置において制御信号線の配線スペースの低減により画素開口率が向上し、また当該画像表示装置において、データ信号に対する発光輝度の特性が安定する駆動が可能であることにより画質の確保が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの概略の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態の画素回路を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態における画素回路の、プリチャージ期間での状態を模式的に示す回路図である。
【図4】第1の実施形態における画素回路の、Vth書き込み期間での状態を模式的に示す回路図である。
【図5】第1の実施形態における画素回路の、Vth書き込み期間での状態を模式的に示す回路図である。
【図6】第1の実施形態における画素回路の、発光期間の発光期間での状態を模式的に示す回路図である。
【図7】本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの駆動方法における各種信号の変化を示す信号波形図である。
【図8】第2の実施形態の画素回路を示す回路図である。
【図9】従来の画素回路の回路図である。
【図10】駆動トランジスタをnチャネルTFTで構成した従来の画素回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である有機ELディスプレイ20について、図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
有機ELディスプレイ20は、アクティブマトリックス型表示装置であり、テレビ、パソコン、携帯端末、携帯電話等に表示パネルとして搭載される。図1は、有機ELディスプレイ20の概略の構成を示す模式図である。有機ELディスプレイ20は表示部22、データ電極駆動回路24、走査電極駆動回路26、制御回路28及び駆動電圧源30を含んでいる。
【0019】
表示部22には、画素に対応して複数の画素回路40がマトリクス状に配置される。さらに、表示部22には、データ電極駆動回路24及び走査電極駆動回路26から各画素回路40への信号線や、基準電圧源から各画素回路40への電源線が形成される。具体的には、データ電極駆動回路24から画素回路40のマトリクス配列の列毎にデータ線50が配線される。また、走査電極駆動回路26から画素回路40のマトリクス配列の行毎に複数の制御信号線52が配線される。接地電位GND及び駆動電圧源30から各画素回路40にそれぞれ電源線54,56が配線される。画素回路40はこれら信号線、電源線を介して各種信号及び電源を印加されアクティブマトリックス駆動される。
【0020】
データ電極駆動回路24は、画素回路40への画像信号の書き込み期間にて、画像信号に基づいて輝度値に応じた電圧を有するデータ信号をデータ線50へ出力し、データ信号はデータ線50を介して画素回路40に供給される。
【0021】
走査電極駆動回路26は、画素回路40内の各種スイッチを構成する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)のゲート電極に対する制御信号を生成する。制御信号は制御信号線52を介して画素回路40に供給される。
【0022】
制御回路28は、有機ELディスプレイ20に入力されるクロック信号や、垂直同期信号、水平同期信号等の同期信号に基づいて動作し、有機ELディスプレイ20の各部の動作を制御する。例えば、制御回路28は有機ELディスプレイ20へ入力される画像信号をメモリ(図示せず)にバッファし、画素回路40への書き込み期間にメモリから画像信号を1ラインずつ読み出してデータ電極駆動回路24へ供給する。また、制御回路28は、走査電極駆動回路26と協働して、書き込み期間にて画素回路40を行単位で選択して制御したり、発光期間にて画素回路40の動作を制御する。
【0023】
駆動電圧源30は正電圧VOLEDを供給する。
【0024】
図2は画素回路40を示す回路図である。画素回路40は、OLED60、駆動トランジスタ62、第1及び第2のキャパシタ64,66、第1〜第4のスイッチ68,70,72,74を有する。
【0025】
OLED60は駆動電流に応じた強度で発光する発光素子であり、OLED60のカソード電極は電源線56を介して第1の基準電圧源である接地電位GNDに接続される。また、アノード電極は、駆動トランジスタ62等を介して第2の基準電圧源である駆動電圧源30に接続され、駆動電流を供給される。
【0026】
駆動トランジスタ62はTFTであり、制御端子であるゲート電極はデータ信号に応じた電圧を印加され、ゲート−ソース間電圧VGSに応じた電流(階調電流)をドレイン−ソース間に生じる。このドレイン−ソース間電流IDSが駆動電流としてOLED60に供給される。ここで駆動トランジスタ62はnチャネルTFTで構成され、この場合、ソース電極がOLED60のアノード電極に接続される第1の電流端子となり、ドレイン電極が駆動電圧源30に接続される第2の電流端子となる。
【0027】
キャパシタ64は、データ線50と駆動トランジスタ62のゲート電極との間に接続される。より具体的には、キャパシタ64は、その一方端子をデータ線50に接続され、他方端子を第3のスイッチ72を介して駆動トランジスタ62のゲート電極に接続される。
【0028】
キャパシタ66は、一方端子を駆動トランジスタ62のソース電極に接続され、他方端子を駆動トランジスタ62のゲート電極に接続される。
【0029】
第1のスイッチ68は、駆動トランジスタ62のドレイン電極と駆動電圧源30との間に設けられ、それらの間を断続可能とする。
【0030】
第2のスイッチ70は、駆動トランジスタ62のゲート電極とドレイン電極との間に接続され、それらの間を断続可能とする。
【0031】
第3のスイッチ72は、キャパシタ64に直列に接続され、データ線50と駆動トランジスタ62のゲート電極との間の容量的な結合及び分離を切り換え可能である。本実施形態ではスイッチ72は一方端子をキャパシタ64に接続され、他方端子を駆動トランジスタ62のゲート電極に接続される。
【0032】
第4のスイッチ74は、駆動トランジスタ62のソース電極と第3の基準電圧源との間に接続され、それらの間を断続可能とする。本実施形態では第3の基準電圧源として接地電位GNDを用いる。なお、第3の基準電圧源の電圧VREFは基本的には、これをOLED60のアノード電極に印加したときにOLED60がオンしない範囲で設定可能である。よって、必ずしも接地電位GNDでなくてもよいが、第1の基準電圧源と共通化した場合には電源線が共通化されるメリットがある。
【0033】
各スイッチ68,70,72,74はTFTを用いて構成され、それらのオン/オフは制御信号線52を介して走査電極駆動回路26から当該TFTのゲート電極に印加される制御信号により制御される。各画素回路40に設けられる4つのスイッチに対して、3本の制御信号線52a,52b,52cが設けられる。各制御信号線52a,52b,52cは表示部22を行方向に延びる。各行の制御信号線52は対応する行の画素回路40にてそれぞれ対応するスイッチに接続される。画素回路40内にて制御信号線52aはスイッチ68に接続され、制御信号線52bはスイッチ70に接続される。また、画素回路40内にて制御信号線52cはスイッチ72とスイッチ74とに接続され、これらスイッチ72,74に共通の制御信号を印加する。
【0034】
図3から図6は、有機ELディスプレイ20の動作における画素回路40の状態を模式的に示す回路図である。図3から図6は動作の主要過程における各スイッチのオン/オフ状態を示している。また、図7は当該動作における各種信号の変化を示す信号波形図である。図7の横軸は時間、縦軸は電圧であり、同図には各制御信号線52に印加される制御信号S,S,S、データ線50に印加されるデータ信号S、及び駆動トランジスタ62のゲート−ソース間電圧VGSを縦方向に並べて示している。ここで、制御信号S,S,Sはそれぞれ制御信号線52a,52b,52cに印加される信号であり、各スイッチは対応する制御信号がHigh(H)レベルの時、オンし、Low(L)レベルの時、オフする。輝度値が大きくなるほど、データ信号Sの電圧は高くなるように構成されている。図3から図7を用いて画素回路40の動作を説明する。
【0035】
有機ELディスプレイ20の動作では画素回路40の行毎に書き込み期間Twrtを順次ずらして設定し、当該期間Twrtにおいて、画素回路40に画像信号の書き込みを行う。そして、書き込み期間Twrtに続いて発光期間Tilmが設定され、当該期間Tilmにおいて、先行する書き込み期間Twrtにて書き込んだ画像信号に応じた強度でOLED60を発光させる。
【0036】
書き込み期間Twrtではプリチャージ動作、Vth書き込み動作、データ書き込み動作が順番に行われる。
【0037】
プリチャージ動作の期間Tpreでは、画素回路40は図3に示す状態に設定される。プリチャージ期間Tpreでは制御信号S,S,SはHレベルとされ、スイッチ68,70,72,74がオン状態に設定される。この状態では、駆動トランジスタ62はゲート電極とドレイン電極とが接続されたダイオード接続になり、前のフレームでキャパシタ66によって保持されていた駆動トランジスタ62のゲート電位が駆動電圧源30の電圧VOLEDにリセットされる。また、駆動トランジスタ62のソース電極はスイッチ74を介して接地電位GNDに設定される。なお、プリチャージ動作時の引抜き電流は、スイッチ74を介して接地電位GNDへ流れ込むので、OLED60を発光させない。
【0038】
Vth書き込み動作の期間Tvthでは、画素回路40は図4に示す状態に設定される。Vth書き込み期間Tvthでは制御信号S,SはHレベルを維持したまま、制御信号SがLレベルに切り替わり、スイッチ70,72,74がオン状態、スイッチ68がオフ状態に設定される。駆動トランジスタ62のゲート電極とドレイン電極とはスイッチ70で短絡されているため、VGSは駆動トランジスタ62の閾値電圧(Vth)に自動的に設定される。画素回路40はスイッチ74を備えることで、このときの駆動トランジスタ62のソース電位を一定の電位に設定することができる。すなわち、スイッチ74がオン状態であることにより、駆動トランジスタ62のソース電位は接地電位GNDに設定される。これにより、駆動トランジスタ62のゲート電位はVthに設定される。なお、期間Tpre,Tvthでは、データ線50に画像の黒に対応する電圧S(black)を印加する。
【0039】
データ書き込み動作の期間Tdataでは、画素回路40は図5に示す状態に設定される。データ書き込み期間Tdataでは、まずデータ線50にS(black)を印加した状態で、制御信号SをLレベルに切り替えスイッチ70をオフにする。すなわち、スイッチ72,74がオン状態、スイッチ70がオフ状態に設定される。しかる後、データ線50に画素の輝度値に応じた階調電圧S(data)を印加する。すると、データ線50の電圧変化に応じてキャパシタ64,66にて電荷の移動が起こり、駆動トランジスタ62のゲート電極の電位が階調電圧S(data)に応じた値へ向けて変化する。期間Tdataはデータ線50の電位変化が十分に駆動トランジスタ62のゲート電極に伝達される長さに設定される。なお、駆動トランジスタ62のソース電位はスイッチ74を介して接地電位GNDに設定されている。
【0040】
期間Tdataの最後では、制御信号SをLレベルに切り替えることで、スイッチ70,72,74がオフ状態になる。この時点で駆動トランジスタ62のゲート電極はデータ線50から切り離され、ゲート電極の電位はその後のデータ線50の電位変化の影響を受けなくなり、このときのVGSはキャパシタ66によって保持される。
【0041】
期間Tdataにて画像信号の書き込みが完了すると、発光期間Tilmに移行する。発光期間Tilmでは、画素回路40は図6に示す状態に設定される。発光期間Tilmに入ると、制御信号SがHレベルに切り換えられ、スイッチ68がオン、スイッチ70,72,74がオフの状態になる。駆動トランジスタ62は、期間Tdataにて設定されたゲート−ソース間電圧VGSに応じたドレイン−ソース間電流IDSをOLED60に供給し、OLED60は当該電流量に応じた明るさで発光する。
【0042】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る有機ELディスプレイは、画素回路に第1の実施形態との違いを有する。その他の構成、及び駆動方法は基本的に第1の実施形態で述べた内容と同様である。そこで、本実施形態において、第1の実施形態と共通する機能を有する構成要素には第1の実施形態と同じ符号を付すことにより第1の実施形態での説明を援用し、ここでは主に相違点を説明する。
【0043】
図8は画素回路80を示す回路図である。画素回路80は、OLED60、駆動トランジスタ62、第1及び第2のキャパシタ64,66、第1〜第4のスイッチ68,70,72,74を有する。
【0044】
画素回路80が画素回路40と異なる点は、キャパシタ64,66及びスイッチ72の相互の接続関係にある。画素回路80において、キャパシタ64は、その一方端子をスイッチ72を介してデータ線50に接続され、他方端子を駆動トランジスタ62のゲート電極に接続される。スイッチ72は一方端子をデータ線50に接続され、他方端子をキャパシタ64に接続される。また、キャパシタ66は、一方端子を駆動トランジスタ62のソース電極に直接接続され、他方端子をキャパシタ64とスイッチ72との接続点に接続される。すなわち、キャパシタ66は、駆動トランジスタ62のゲート電極とソース電極との間にキャパシタ64と直列に接続される。
【0045】
各スイッチ68,70,72,74に制御信号を供給する制御信号線52は第1の実施形態と同様であり、特に、スイッチ72,74に対して共通の制御信号線52bが設けられる点も同様である。
【符号の説明】
【0046】
20 有機ELディスプレイ、22 表示部、24 データ電極駆動回路、26 走査電極駆動回路、28 制御回路、30 駆動電圧源、40,80 画素回路、50 データ線、52,52a,52b,52c 制御信号線、54,56 電源線、60 OLED、62 駆動トランジスタ、64,66 キャパシタ、68,70,72,74 スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の画素回路と、
前記画素回路のマトリクス配列の各列に配置され、輝度値に応じた電圧を有するデータ信号を前記画素回路に供給するデータ線と、
前記画素回路のマトリクス配列の各行に配置され、前記画素回路に設けられる複数のスイッチに制御信号を供給する制御信号線と、
第1、第2及び第3の基準電圧源と、
を有し、
前記画素回路は、
一方端子を前記第1の基準電圧源に接続され、他方端子に供給される駆動電流に応じた強度で発光する発光素子と、
前記データ信号に応じた電圧を印加される制御端子と、前記発光素子の他方端子に接続される第1の電流端子と、前記第2の基準電圧源に接続される第2の電流端子とを有し、前記データ信号に応じた前記駆動電流を前記電流端子間に生じる駆動トランジスタと、
前記データ線と前記制御端子との間に接続された第1のキャパシタと、
前記第1の電流端子と前記制御端子との間に接続された第2のキャパシタと、
前記第2の電流端子と前記第2の基準電圧源との間を断続可能な第1のスイッチと、
前記制御端子と前記第2の電流端子との間を断続可能な第2のスイッチと、
前記第1のキャパシタに直列に接続され、前記データ線と前記制御端子との間の容量的な結合及び分離を切り換え可能な第3のスイッチと、
前記第1の電流端子と前記第3の基準電圧源との間を断続可能な第4のスイッチと、
を有し、
前記第3及び第4のスイッチに対応して前記各行に設けられる前記制御信号線は、当該両スイッチに共通の単一の配線であること、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記第1のキャパシタは、その一方端子を前記データ線に接続され、他方端子を前記第3のスイッチを介して前記制御端子に接続され、
前記第2のキャパシタは、その一方端子を前記第1の電流端子に接続され、他方端子を前記制御端子に接続されること、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記第1のキャパシタは、その一方端子を前記第3のスイッチを介して前記データ線に接続され、他方端子を前記制御端子に接続され、
前記第2のキャパシタは、その一方端子を前記第1の電流端子に接続され、他方端子を前記第1のキャパシタの前記一方端子に接続されて前記第1の電流端子と前記制御端子との間に前記第1のキャパシタと直列に接続されること、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の画像表示装置を駆動する駆動方法であって、前記画素回路を行単位で順次選択して、選択された行の前記画素回路に前記データ信号に応じた輝度情報を書き込む書き込み動作と、書き込んだ前記輝度情報に応じた強度で前記発光素子を発光させる発光動作とにおいて、
前記選択された行に対する前記書き込み動作は、
前記第1から第4のスイッチを導通状態とし、前記輝度値の基準レベルを定める所定の電圧を前記データ線に印加する第1ステップと、
前記第1ステップに続いて前記第1のスイッチを非導通状態に切り換える第2ステップと、
前記第2ステップに続いて前記第2のスイッチを非導通状態に切り換え、前記データ信号を前記データ線に印加して前記制御端子を当該データ信号に応じた電位に設定する第3ステップと、
前記第3ステップに続いて前記第3及び第4のスイッチを非導通状態に切り換える第4ステップと、
を有し、
前記発光動作は、前記第4ステップ後の状態にて前記第1のスイッチを導通状態にするステップを有すること、
を特徴とする画像表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−180552(P2011−180552A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47517(P2010−47517)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】