説明

画像表示装置及び撮像装置

【課題】 簡単な構成で画像表示装置に付着する汚れを除去する。
【解決手段】 画像を表示する表示部と、表示部の前面に形成された光触媒層と、表示部を介して光触媒層を照明することが可能な照明光を発する発光部とを備え、発光部は、光触媒層を照明することで光触媒層を光活性させる機能と、表示部における画像表示の際に表示部を照明する機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する画像表示装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置においては、撮影前に取り込まれる画像(スルー画像)及び撮影により得られた画像を表示する画像表示装置や、撮影下でスルー画像を表示するファインダ(電子ビューファインダ)として機能する画像表示装置が利用されている。
【0003】
ところで、上述した撮像装置においては、内部を浮遊する有機物、埃や塵等が画像表示装置や撮像素子の表面に付着し、それら表面が汚れるという欠点がある。このような欠点を防止する方法として、例えば撮像素子に設けられる光学ローパスフィルタの表面に光触媒物質をコーティングし、紫外線を光学ローパスフィルタの表面に照射することで、光触媒物質を光活性させる方法(特許文献1参照)や、これに加えて、光学ローパスフィルタを振動させる方法(特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−17273号公報
【特許文献2】特開2008−122792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法を、電子ビューファインダなどの画像表示装置に適用した場合、紫外光を照射する光源を新たに組み込む必要がある。また、特許文献2の場合、外部からの入射光に含まれる紫外光により光活性物質を光活性させていることから、電子ビューファインダなどの外部からの入射光を必要としない場合には適用できず、この場合も、紫外光を照射する光源を新たに組み込む必要がある。
【0006】
本発明は、新たな構成を追加することなしに画像表示装置に付着する汚れを容易に除去することができる画像表示装置や撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、画像を表示する表示部と、前記表示部の前面に形成された光触媒層と、前記表示部を介して前記光触媒層を照明することが可能な照明光を発する発光部とを備え、前記発光部は、前記光触媒層を照明することで前記光触媒層を光活性させる機能と、前記表示部における画像表示の際に前記表示部を照明する機能を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記発光部と前記表示部との間に前記発光部からの照明光の指向性を高める構造を備えていることが好ましい。
【0009】
この場合、前記発光部からの前記照明光の指向性を高める構造は、微小レンズを二次元に配置した微小レンズアレイ構造からなるものである。また、前記発光部からの前記照明光の指向性を高める構造は、多層膜構造で、且つ特定の波長域の光を共振増幅する構造からなるものである。
【0010】
また、前記表示部と前記発光部との間に、又は前記表示部と前記光触媒層との間に、前記発光部からの前記照明光を蓄積可能で、且つ、可視光となる波長域の光を透過させる蓄光物質からなる薄膜層を備えていることが好ましい。
【0011】
また、前記表示部は、液晶パネルからなるとともに、前記発光部は、前記液晶パネルを背面側から照明するバックライトからなることが好ましい。
【0012】
さらに、前記発光部は、無機LED素子、又は有機LED素子のいずれかからなることが好ましい。また、前記光触媒層は、光触媒物質として酸化チタンを用いた薄膜層からなり、前記発光部は、380nm以下の波長域を有する照明光を発することが好ましい。
【0013】
また、本発明の撮像装置は、上述した画像表示装置がファインダとして組み込まれることを特徴とする。この場合、前記ファインダとして組み込まれる前記画像表示装置は、該画像表示装置の前面が撮像装置本体を基準としたときの鉛直方向が含まれる平面と略平行となるように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成で画像表示装置に付着する汚れを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子カメラの構成の概略を示す図である。
【図2】本発明を用いたLCDの概略を示す断面図である。
【図3】微小レンズアレイ構造を備えたLCDの概略を示す断面図である。
【図4】オプティカルキャビティ構造を備えたLCDの概略を示す断面図である。
【図5】蓄光層を備えたLCDの概略を示す断面図である。
【図6】光学ファインダを備えた電子カメラの構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態の撮像装置の一例としての電子カメラ10の概略を示す。なお、図1においては、図の煩雑さを解消するために電子カメラ10の要部のみを示してある。
【0017】
電子カメラ10は、レンズユニット11と、該レンズユニット11が着脱されるカメラ本体12とから構成される。レンズユニット11とカメラ本体12とのそれぞれには、雄雌の関係をなす一対のマウント13,14がそれぞれ設けられる。レンズユニット11をカメラ本体12に装着する際には、レンズユニット11に設けられたマウント13をバヨネット機構等でカメラ本体12のマウント14に結合する。また、これらマウント13,14にはそれぞれ電気接点が設けられる。レンズユニット11をカメラ本体12に装着したときには、それぞれのマウント13,14に設けられた電気接点が接触し、両者の電気的な接続が確立される。なお、これらマウント13,14の電気的な接続により、後述するレンズマイコン26と、カメラ本体12に設けられたコントローラ35とが電気的に接続され、これらの間で各種信号の送受信が実行される。
【0018】
なお、本実施形態では、レンズユニット11がカメラ本体12に着脱自在な、所謂一眼レフタイプの電子カメラ10の例を取り上げているが、これに限定する必要はなく、レンズユニット11がカメラ本体12に設けられた、所謂コンパクトタイプの電子カメラ10であってもよい。
【0019】
レンズユニット11は、撮像光学系21、ズームエンコーダ22、レンズ駆動部23、絞り24、絞り駆動部25及びレンズマイコン26等を備えている。なお、ズームエンコーダ22、レンズ駆動部23及び絞り駆動部25は、それぞれレンズマイコン26により駆動制御される。
【0020】
撮像光学系21は、ズームレンズ21aやフォーカスレンズ21b等の複数のレンズから構成される。ズームレンズ21aは焦点距離を調整するためのレンズであって、例えばユーザによるズーム環の操作に応じて光軸L1方向に移動可能となる。ズームエンコーダ21aはズームレンズ21aに取り付けられ、ズームレンズ21aの光軸L1方向の位置を検出する。フォーカスレンズ21bは合焦位置を調節するためのレンズであって、光軸L1方向に移動可能となる。レンズ駆動部23はフォーカスレンズ21bを光軸L1方向に駆動させる。このフォーカスレンズ21bには、光軸L1方向の位置を検出する距離エンコーダが取り付けられている。ズームエンコーダ22や距離エンコーダからの検出信号はレンズマイコン26に出力される。レンズマイコン26は、これら検出信号を受けて、撮影時の撮影距離や焦点距離を算出する。算出された撮影距離や焦点距離などの値は、カメラ本体12に出力される。なお、ズームレンズ21aはユーザによるズーム環の操作によって光軸L1方向に移動可能としているが、これに限定される必要はなく、レンズ駆動部23により光軸L1方向に移動させてもよい。
【0021】
絞り24は、カメラ本体12への入射光量を絞り羽根の開閉で調整する。絞り駆動部25は、絞り24の開口度を制御する。レンズマイコン26は、マウント13,14の電気接点を介してカメラ本体12との通信を行うとともに、レンズユニット11での各種制御を実行する。また、レンズマイコン26は、ROM(図示省略)に記録されたレンズデータなどをカメラ本体12に送信する。
【0022】
なお、図1に示すレンズユニット11は一般的なズームレンズユニットの構成の一例にすぎない。そのため、カメラ本体12には、上記のレンズユニット11の他にも、例えばレンズマイコンを備えていないレンズユニットや、単焦点レンズのレンズユニットなどを装着することが可能である。
【0023】
次に、カメラ本体12の構成を説明する。カメラ本体12は、メカニカルシャッタ31、撮像素子32、画像表示装置33、電子ビューファインダ34、コントローラ35などを備えている。なお、図1においては、カメラ本体12に組み込まれる電気的構成やレリーズボタンなどの操作部材の構成については省略してある。
【0024】
メカニカルシャッタ31及び撮像素子32は、レンズユニット11に設けられた撮像光学系21の光軸L1上に、レンズユニット11側から、メカニカルシャッタ31、撮像素子32の順で配置される。メカニカルシャッタ31としては、例えばフォーカルプレーンシャッタが用いられる。また、撮像素子32としては、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられる。
【0025】
例えば電子カメラ10が撮影待機状態となるときには、メカニカルシャッタ31は開放され、撮像光学系21を介して取り込まれた被写体光が撮像素子32に照射される。この撮影待機状態において、撮像素子32は、受光される被写体光に基づく画像信号を所定時間間隔毎に出力する。なお、撮像素子32から所定時間間隔毎に出力される画像信号はスルー画像の基になる画像信号である。そして、レリーズボタンが全押し操作されることに伴って、メカニカルシャッタ31は一旦遮蔽される。このメカニカルシャッタ31が遮蔽されたときに、撮像素子32に対してリセット処理が行われる。その後、メカニカルシャッタ31が開放され、設定されたシャッタ速度に基づいた時間経過すると、該メカニカルシャッタ31が再度遮蔽される。このとき、撮像素子32は、メカニカルシャッタ31が開放されていた期間(露光時間)にて受光した被写体光に基づいた画像信号を出力する。なお、このときに撮像素子32から出力される画像信号が、撮影時に得られる記録用の画像信号となる。
【0026】
なお、本実施形態ではメカニカルシャッタ31を用いた場合について説明しているが、これに限定される必要はなく、メカニカルシャッタ31の代わりに電子シャッタを用いる、又はメカニカルシャッタ31と電子シャッタとを併用することも可能である。
【0027】
画像表示装置33は、撮像素子32から出力される画像信号に基づく画像(スルー画像など)を表示する他に、電子カメラ10の設定を行う際の設定画像を表示する。なお、この画像表示装置33としては、例えば液晶表示装置(LCD)が用いられる。
【0028】
電子ビューファインダ34は、画像表示装置41及び接眼レンズ42から構成される。この電子ビューファインダ34を構成する画像表示装置41及び接眼レンズ42は、電子ビューファインダ34の光軸L2が撮像光学系21の光軸L1と平行となるように配置される。このとき、画像表示装置41の前面(表示面)は、電子ビューファインダ34の光軸L2と直交するように配置される。この配置状態に保持することで、後述する光触媒層54の光活性による汚れの除去ができない大きさの塵や埃を画像表示装置41の前面に付着させることが防止される。
【0029】
なお、電子ビューファインダ34は、その光軸L2が撮像光学系21の光軸L1と平行となるように配置される場合について説明しているが、これに限定される必要はなく、例えば電子ビューファインダ34の光軸L2が、一点鎖線に示す状態から時計方向に角度θ傾斜させた、点線に示す状態(符号L2’)となるように、電子ビューファインダ34を配置することも可能である。この場合、画像表示装置41の前面の上端部がカメラ本体12の背面側(図中右方)に、表示装置41の前面の下端部がカメラ本体12の前面側(図中左方)に、それぞれ位置する傾斜状態となる。このような配置状態であっても、上述した塵や埃を画像表示装置41の前面に付着させることが防止される。
【0030】
画像表示装置41は、撮影待機状態において撮像素子32から所定間隔毎に出力される画像信号に基づいた画像(スルー画像)を表示する。この表示にあわせて、例えば露光条件に係る値(露出値など)やフォーカスエリアなどが重畳表示される。この画像表示装置41としては、画像表示装置31と同様にLCDが用いられる。なお、この画像表示装置31として用いられるLCDは、画像表示装置41として用いられるLCDの解像度よりも低い解像度からなるLCDが挙げられる。この画像表示装置41により表示される画像は、接眼レンズ42を介して観察される。図1中、符号43はファインダ窓である。なお、画像表示装置41としてLCDを例に挙げて説明するが、これに限定される必要はなく、ELパネルなどの他の画像表示装置であってもよい。
【0031】
コントローラ35は、メカニカルシャッタ31、撮像素子32、画像表示装置33、電子ビューファインダ34などを統括的に制御する。例えば撮像時には、コントローラ35は、撮像素子32から出力される画像信号を用いたAE処理やAF処理を実行する他に、該画像信号に対する画像処理を行う。なお、ここで示す画像処理としては、ホワイトバランス処理、補間処理、階調変換処理及び輝度強調処理などが挙げられる。また、撮影待機状態の場合には、撮像素子から出力される画像信号に対して画像処理を施した後、この画像処理済みの画像信号に対して、画像表示装置33及び電子ビューファインダ34の画像表示装置41のそれぞれに対応した解像度となるように解像度変換処理を実行し、画像表示装置33及び電子ビューファインダ34の画像表示装置41に出力する。これにより、画像表示装置33及び電子ビューファインダ34の画像表示装置41には、それぞれの解像度に合わせたスルー画像が表示される。
【0032】
次に、電子ビューファインダ34として組み込まれる画像表示装置41の構成について説明する。上述したように、画像表示装置41としては、LCDが用いられる。以下、画像表示装置41として用いられるLCDに対して符号51を付して説明する。図2に示すように、LCD51は、液晶パネル52と光源(バックライト)53とを備える。液晶パネル52は、例えば透過型の液晶パネルであり、赤、緑、青のフィルタが形成された複数の画素を備えている。この液晶パネル52は、コントローラ35からの駆動信号に応じて不図示のLCD駆動回路により電圧が印加され、LCD駆動回路を介して入力した画像信号に対応する画像を生成する。このとき、コントローラ35は、表示する画像信号の色情報に対してマトリックス変換を施し、液晶パネル52の色特性に基づいた色域に適合させる。その結果、液晶パネル52は、光源53が発する照明光により表示素子としての機能を実現して、撮像素子32から出力された画像信号に基づく画像(スルー画像)を観察可能に表示する。なお、液晶パネル52に印加される電圧の値は、後述する光源51へ印加される基準電圧に対応して設定されている。
【0033】
光源53は、例えば有機LED素子や無機LED素子などが用いられる。この光源53としては、上述したLED素子の他に、有機EL素子や無機EL素子を用いてもよい。この光源53から発する照明光は液晶パネル52に照射される。この液晶パネル52を透過した光は、光触媒層54に照射される。
【0034】
上述した液晶パネル52の前面には、光触媒物質からなる薄膜の層54が設けられる。以下、この光触媒物質からなる薄膜の層54を光触媒層54と称する。この光触媒層54は、例えばディップコート、スピンコートなどの薄膜コーティング技術、PVDやCVDなどの蒸着技術やスパッタリングなどの技術を用いることで、液晶パネル52の表面に形成される。なお、光触媒層54は、その厚みが100〜200nmの範囲で形成されることが好ましい。
【0035】
この光触媒層54は、液晶パネル52を透過した照明光が照射されたときに、光触媒層54の周辺の化学反応を促進する物質層である。この光触媒層54に用いられる光触媒物質としては、例えば酸化チタン(TiO)が一般的に用いられる。光触媒物質として酸化チタンを用いる場合、上述した光源53としては、少なくとも紫外線の波長帯域(380nm以下の波長帯域)を含む照明光を発する光源が用いられる。以下、光触媒物質として酸化チタンを用いることで形成される光触媒層54について説明する。
【0036】
光源53が照明光を発すると、照明光は液晶パネル52を透過し、光触媒層54に到達する。この光触媒層54に到達する光のうち、例えば紫外線の波長帯域(380nmを超過する波長帯域)以外の光は、そのまま光触媒層54を透過する。一方、紫外線の波長帯域(380nm以下の波長帯域)の光が光触媒層54に到達すると、光触媒物質に含まれるエレクトロンという電子(e)の活動が活発になり励起状態となる。これを受けて、ホール(h)が発生する。このエレクトロンは酸素をスーパーオキサイドイオン(O)に、ホールは水を水酸基ラジカル(・OH)に変化させる。これらスーパーオキサイドイオン(O)と水酸基ラジカル(・OH)とが活性酸素であり、これら活性炭素がカメラ本体12の内部に存在する有機物や有機ガスに接触したときに、有機物や有機ガスを構成している「炭素−酸素結合」や「炭素−水素結合」を切断して、最終的に二酸化炭素と水に変化させる。これにより、例えば撮影時に電子ビューファインダ34を使用する場合には、上述した光触媒層54において活性酸素が生成され、光触媒層54の表面に付着した汚れが除去される。
【0037】
なお、上述した光活性が行われている過程で光触媒層54の表面は超親水性となることから、例えば光触媒層54の表面に水分が付着した場合には、該水分が光触媒層54の表面に広がり、光触媒層54の表面に付着した汚れの下方に入り込む。これにより、光触媒層54の表面に付着した汚れが光触媒層54の表面に付着した水分ととともに除去される。また、光触媒層54の表面に付着した水分は該光触媒層54の表面に広がり、水膜を作ることになるので、LCD51表面の曇りや結露の発生を防止することが可能となる。
【0038】
また、光触媒層54を光活性させるための照明光は、本来、LCD51による画像の表示の際に用いられる光源53からの照明光であることから、光触媒層54を光活性させるための光源を新たに設ける必要がないという利点がある。つまり、このような構成のLCD51を電子ビューファインダ34の画像表示装置41として用いることで、電子ビューファインダ34の使用時に(スルー画像を表示する際に)、画像表示装置41の表面に付着する汚れを除去することができるので、光触媒層54を光活性させる光源を電子カメラ10に新たに設ける必要はない。なお、画像表示装置41における画像表示としてスルー画像の表示を例に取り上げているが、これに限定される必要はなく、例えば電源のオンオフ時に、画像表示装置41において、酸化チタンからなる光触媒層を光活性させるための青色の画像を表示してもよい。
【0039】
上述した実施形態では、画像表示装置41として、液晶パネル52の前面に光触媒層54を形成したLCD51を用いた実施形態としているが、これに加えて、光源が発する照明光の光指向性を高める構造を備えたLCDであってもよい。なお、この照明光の光指向性を高める構造としては、例えば微小レンズを二次元状に配列した微小レンズアレイ構造や、多層膜を用いた多重反射による共振増幅構造(オプティカルキャビティ構造)が挙げられる。
【0040】
図3は、微小レンズアレイ構造を有するLCD61の構成を示す。図3に示すように、微小レンズアレイ構造64は、LCD61の液晶パネル62と光源63との間に設けられる。周知のように、微小レンズアレイ構造64は、微小レンズが二次元状に配列された構造である。この微小レンズとしては、例えば円錐や三角錐、四角錐などの多角錐レンズや、ドーム型レンズなどの凹凸の形態のレンズが挙げられる。このような微小レンズアレイ構造64を液晶パネル62と光源63との間に設けることで、光源63にて発する照明光が集光され、液晶パネル62に照射することができる。また、液晶パネル62に照射される照明光は、液晶パネル62を透過した後に光触媒層65に照射される。このように、微小レンズアレイ構造64を設けることで、光源63が発する照明光を液晶パネル62や光触媒層65に効率的に照明することができる。なお、電子ビューファインダ34においては、その視野角が10〜20°であれば良いことから、このような構成のLCD61を電子ビューファインダ34における画像表示装置41として用いたとしても、電子ビューファインダ34の機能を損ねることはない。
【0041】
一方、図4は、多層膜を用いた多重反射による共振増幅構造(以下、オプティカルキャビティ構造)を備えたLCDの概略を示す。図4に示すように、このLCD71においても、オプティカルキャビティ構造74が液晶パネル72と光源73との間に設けられる。このオプティカルキャビティ構造74は、透過膜と反射膜とが交互に積層された構造からなる。なお、各反射膜の間隔、言い換えれば透過膜の厚さは、光触媒層75を光活性させる波長の光路長となる。このように、透過膜の厚さ(各反射膜の間隔)を設定することで、オプティカルキャビティ構造を透過する照明光のうち、例えば光触媒層75を光活性させる紫外線の波長帯域(380nm以下の波長帯域)の光が増幅される。これによれば、効率的に紫外線の波長帯域の光を光触媒層75に照射することができるので、光触媒層75の光活性をより高めることが可能となる。この場合も、微小レンズアレイ構造64を備えたLCD61と同様に、電子ビューファインダ34の視野角が10〜20°であれば良いことを考えると、このような構成のLCD71を電子ビューファインダ34における画像表示装置41として用いたとしても、電子ビューファインダ34の機能を損ねることはない。
【0042】
上述した実施形態では、光源が照明光を発する場合にのみ、言い換えれば、電子ビューファインダ34を使用しているときにのみ、画像表示装置41の表面に形成された光触媒層を光活性させて、画像表示装置41の表面の汚れを除去しているが、これに限定される必要はなく、電子ビューファインダ34を使用していない場合であっても、画像表示装置41の表面の汚れを除去することも可能である。以下、画像表示装置41として、蓄光物質からなる薄膜の層を備えたLCDを用いる場合について説明する。
【0043】
この場合、図5に示すように、LCD81の液晶パネル82と光源83との間に蓄光物質の薄膜の層84(以下、蓄光層84)を設ける。この蓄光層84は、光源83からの照明光が照射されたときに照明光を透過させるとともに、照射される照明光を蓄光する。また、この蓄光層84は、光源83が照明光を発しない場合に、特定の波長帯域の光を発する。なお、特定の波長帯域としては、紫外線の波長帯域(380nm以下の波長帯域)が挙げられる。この蓄光層84に用いられる物質としては、例えばZnSiO/PB/Mn,BaSi、ZnSiO/Mn、(Zn,Be)SiO/Mn、Ca(POなどの酸素系の蓄光物質や、例えばCaS/Zn、SrS/Sm/Ce、ZnO/Znなどの硫化物系の蓄光物質、或いは、SrAlに代表されるアルミ系の蓄光材が挙げられる。
【0044】
このような蓄光層84を設けることで、光源82にて照明光を発していない場合には、蓄光層84から一定時間、光触媒層85に光活性させる波長帯域(紫外線の波長帯域)の光を照射することが可能となる。これにより、光源82が照明光を発していない、言い換えれば、電子ビューファインダ34を使用していないときであっても、光触媒層85にて光活性させることが可能となり、画像表示装置41の前面の汚れを除去することができる。
【0045】
なお、蓄光層84を設ける代わりに、光触媒物質と蓄光物質との混合させた層(混合層)を液晶パネル82の前面に形成することも可能である。
【0046】
なお、この蓄光層84は、上述した照明光の指向性を高める構造(微小レンズアレイ構造64や、オプティカルキャビティ構造74)と組み合わせることが可能である。これら場合、蓄光層は、光源と微小レンズアレイ構造やオプティカルキャビティ構造との間、又は微小レンズアレイ構造やオプティカルキャビティ構造と液晶パネルとの間に設ければよい。
【0047】
上述した実施形態では、液晶パネルの前面に光触媒層を形成した実施形態としているが、これに限定する必要はなく、例えば光触媒物質とシリカゲルなどの吸着物質との混合層を液晶パネルの前面に形成することも可能である。この場合、光触媒物質の光活性により生成される水分(HO)をシリカゲルなどの吸着物質によって吸着させることができるので、光触媒層の光活性によりLCDの表面の汚れを除去することできると同時に、光触媒層の光活性により生成される水分を吸着でき、結果的にLCDの表面に生じる結露を防止することができる。また、混合層としては、光触媒物質及び吸着物質の混合層だけでなく、光触媒物質、吸着物質及び蓄光物質を混合した混合層であってもよい。
【0048】
本実施形態では、光触媒物質として酸化チタンを用いた例を取り上げているが、光触媒物質としては、酸化チタンに限定されるものではない。光触媒物質としては、酸化チタンの他に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)又は酸化鉄(Fe)などの物質が挙げられる。なお、光触媒物質として、酸化チタンを除く他の光触媒物質を用いる場合には、使用する光触媒物質が光活性を生じる波長帯域の光を含む照明光を発する光源を用いればよい。
【0049】
本実施形態では、電子ビューファインダを備えた電子カメラを例に取り上げているが、これに限定される必要はなく、例えば光学ファインダを備えた電子カメラであってもよい。
【0050】
図6は、光学ファインダを備えた電子カメラ100の構成の概略を示す図である。この場合、電子カメラ100は、レンズユニット101及びレンズユニット101が着脱されるカメラ本体102とから構成される。なお、レンズユニット101は、撮像光学系111、ズームエンコーダ112、レンズ駆動部113、絞り114、絞り駆動部115及びレンズマイコン116等を備えている。なお、レンズユニット101の構成は、レンズユニット11の構成と同一であることから、レンズユニット101の各部の構成に対する説明は省略する。
【0051】
一方、カメラ本体102は、クイックリターンミラー121、メカニカルシャッタ122、撮像素子123、サブミラー124、焦点検出部125、ファインダ光学系、画像表示装置126及びコントローラ127等を備えている。なお、図6においても、カメラ本体102に組み込まれる電気的構成やレリーズボタンなどの操作部材の構成については省略してある。
【0052】
クイックリターンミラー121、メカニカルシャッタ122及び撮像素子123は、撮像光学系111の光軸L3に沿って配置される。クイックリターンミラー121の後方にはサブミラー124が配置される。また、カメラ本体102の上部にはファインダ光学系が配置される。さらに、カメラ本体102の下部領域には焦点検出部125が配置される。
【0053】
クイックリターンミラー121は、回動軸121aを中心にして回動可能に軸支されており、実線に示す観察状態と、光軸L3から退避した退避状態との間で切り替え可能となっている。観察状態のクイックリターンミラー121は、メカニカルシャッタ122及び撮像素子123の前方で傾斜配置される。この観察状態にあるクイックリターンミラー121は、撮像光学系111を通過した光束を光軸L4方向に反射してファインダ光学系に導く。このクイックリターンミラー121の中央部はハーフミラーとなっており、このクイックリターンミラー121を透過した一部の光束は、サブミラー124によって光軸L5方向に反射し、焦点検出部125に導かれる。なお、焦点検出部125は、不図示のセパレータレンズで分割された被写体像の像ズレ量を各々のAFエリア毎に検出する、いわゆる位相差検出式の焦点検出を行う。
【0054】
一方、退避状態のクイックリターンミラー121は、サブミラー124とともに上方に跳ね上げられて撮影光路から外れた位置まで回動する。クイックリターンミラーが退避状態にあるときは、撮像光学系111を通過した光束がメカニカルシャッタ122及び撮像素子123に導かれる。
【0055】
ファインダ光学系は、ファインダスクリーン131、コンデンサレンズ132、ペンタプリズム133及び接眼レンズ134を備えている。なお、ファインダスクリーン131はクイックリターンミラー121の上方に位置する。このファインダスクリーン131には観察状態のクイックリターンミラー121で反射された光束が結像される。このファインダスクリーン131にて結像した光束はコンデンサレンズ132及びペンタプリズム133を通過し、ペンタプリズム133の入射面に対して90°の角度を有する射出面に導かれる。そして、ペンタプリズム133の射出面からの光束は、接眼レンズ134を透過した後、接眼窓135を介してユーザの目に到達する。これにより、光学ファインダを介してスルー画像が観察される。
【0056】
このような光学ファインダを備えた電子カメラ100においては、例えばファインダスクリーン131をEL素子(有機EL素子及び無機EL素子を含む)などの透過型の画像表示装置から構成する。このファインダスクリーン131の光入射面及び光出射面にそれぞれ光触媒層を形成する。このような光学ファインダを備えた電子カメラ100の場合には、レンズユニット101を介して取り込まれる被写体光が光学ファインダまで到達することから、ファインダスクリーン131の光入射面及び光出射面のそれぞれに光触媒層を形成すれば、入射される被写体光に含まれる紫外線など、380nm以下の波長帯域の光によって光触媒層が光活性される。これにより、ファインダスクリーン131の光入射面及び光出射面に付着する汚れを除去することができる。
【0057】
なお、ファインダスクリーン131としてEL素子を用いた場合も、その表面に光触媒層を形成する他に、透明電極層と光触媒層との間に蓄光層を設けることも可能である。また、光触媒物質及び吸着物質の混合層、光触媒物質及び蓄光物質の混合層、或いは光触媒物質、吸着物質及び蓄光物質の混合層を、EL素子の表面に形成することも可能である。
【0058】
本実施形態では、電子ビューファインダ34に用いられる画像表示装置41や、光学ファインダを備えた電子カメラ100のファインダスクリーン131として用いられる画像表示装置について説明しているが、この他に、スルー画像や記録用の画像を表示する画像表示装置33,126に対しても、本発明を実施することが可能である。
【0059】
本発明の一例として電子カメラを例に取り上げているが、これに限定される必要はない。例えばカメラ機能を備えた携帯電話機の他、例えば、ヘッドマウントディスプレイなど、機器の内部に画像表示装置が組み込まれる構成の電子機器であれば、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…電子カメラ、11…レンズユニット、12…カメラ本体、33,41…画像表示装置、34…電子ビューファインダ、51,61,71,81…LCD、52,62,72,82…液晶パネル、53,63,73,83…光源、54,65,75,85…光触媒層、64…微小レンズアレイ構造、74…オプティカルキャビティ構造、84…蓄光層、131…ファインダスクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、
前記表示部の前面に形成された光触媒層と、
前記表示部を介して前記光触媒層を照明することが可能な照明光を発する発光部とを備え、
前記発光部は、前記光触媒層を照明することで前記光触媒層を光活性させる機能と、前記表示部における画像表示の際に前記表示部を照明する機能を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記発光部と前記表示部との間に前記発光部からの照明光の指向性を高める構造を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記発光部からの前記照明光の指向性を高める構造は、微小レンズを二次元に配置した微小レンズアレイ構造からなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記発光部からの前記照明光の指向性を高める構造は、多層膜構造で、且つ特定の波長域の光を共振増幅する構造からなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置において、
前記表示部と前記発光部との間に、又は前記表示部と前記光触媒層との間に、前記発光部からの前記照明光を蓄積可能で、且つ、可視光となる波長域の光を透過させる蓄光物質からなる薄膜層を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像表示装置において、
前記表示部は、液晶パネルからなるとともに、
前記発光部は、前記液晶パネルを背面側から照明するバックライトからなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像表示装置において、
前記発光部は、無機LED素子、又は有機LED素子のいずれかからなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像表示装置において、
前記光触媒層は、光触媒物質として酸化チタンを用いた薄膜層からなり、
前記発光部は、380nm以下の波長域を有する照明光を発することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像表示装置がファインダとして組み込まれることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項9に記載の撮像装置において、
前記ファインダとして組み込まれる前記画像表示装置は、該画像表示装置の前面が撮像装置本体を基準としたときの鉛直方向が含まれる平面と略平行となるように配置されることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37717(P2012−37717A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177493(P2010−177493)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】