画像表示装置及び画像表示方法
【課題】テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色における黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現する画像表示装置及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【解決手段】入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置で、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことで上記課題を解決する。
【解決手段】入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置で、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことで上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及び画像表示方法に関し、特に、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現する画像表示装置及び画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログのCRTテレビにおいて、スキャン速度の制御により画像エッジの特性を改善する方法がある。エッジエリアにおいてその黒側にスキャン速度を速くすることで、エッジの黒幅を太くすることができる。例えば、図10のような黒から白へ変化するエッジに対して点Aまでは定速でスキャンし、AとBの間で定速より速い速度でスキャンし、点Bを過ぎる時点で再び定速に戻ることで、エッジの黒幅を太くすることができる。曲線i0は速度変調なしの画像エッジで、曲線i1は速度変調より得た画像エッジである。この方法は特許文献1と特許文献2に提案されている。
【0003】
また、特許文献1と特許文献2の提案方法は、図11に示す効果を得ることができる。しかし、OvershootとUndershootが付くことがよく分かる。図11の曲線i0は速度変調無しの画像エッジである。曲線i2は図10の曲線i1と同じ速度変調で得た効果であるが、点Aは真っ黒ではない。この時、速いスキャン速度で電子銃はCRTに十分な電子与えないので、A点の右側にA点より暗くなり、Undershootが生じた。
【0004】
図11の曲線i3は、点Aと点Bの間においてもスキャン速度を変えることによって、実現できる。点Aと点Bの間に点Cがある。点Aと点Cの間で定速より速いスキャン速度で、点Cと点Bの間で遅いスキャン速度でスキャンする。得られた曲線i3に点Aと点Cの間に曲線i2と同じようにUndershootが生じている。また、曲線i3の点Cと点Bの間でスキャン速度は遅いため、電子銃から出された電子が多くなる。これで、点Cと点Bの間に輝度が明るくなり、Overshootが生じている。
【0005】
また、液晶のようなマトリックスパネルに対しては、同出願人が出願した、特許文献3において、デジタル画像に対する速度変調効果を実現する画像表示装置及び画像表示方法が提案されている。そのブロック図は図8に示す。
【特許文献1】米国特許第3980819号明細書
【特許文献2】米国特許第5587745号明細書
【特許文献3】特願2005−297769号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の方法では、図8のように色差Cb/Crとは独立して輝度信号のみに処理を施す。この場合、色の付いたエッジには不自然な効果が生じる。例えば、赤色は輝度値が小さいので、赤色と白色との境目において、輝度値が赤色側では小さく、白側では大きいため、輝度の変化は図9の曲線i10で示す。このようなエッジに速度変調処理をすると、曲線i11の効果が得られる。曲線i11は赤と白との境目に不自然な暗いエッジが見える。色のあるエッジには効果は曲線i11でなく、曲線i12のような形が望まれる。
【0007】
本発明は、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置であって、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、画像のエッジにおける黒幅の補正の抑制は、色差から彩度を計算し、彩度の値が大きい程、値が小さくなるように設定した抑制係数により行い、無彩色エッジの場合には、抑制係数を1に設定し、黒幅の補正の抑制は行わず、フル補正をし、あらかじめ定めた閾値より大きい彩度の値を持つエッジの場合には、抑制係数を0に設定し、黒幅の補正をすべて抑制し、黒幅の補正はしないことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、彩度の計算は、一定のエリア内で行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、タップ数の少ないバンドパスフィルタとローパスフィルタの2種類のフィルタを有し、該フィルタの組み合わせで画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、水平と垂直の両方向で画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、Overshoot制御付きの画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、コアリング処理を行った画像エッジの補正を行ってノイズ防止することを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、ゲインが正負設定可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像表示方法は、入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する方法であって、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の内容を実施するシステム構成である。速度変調補正の際に色差信号を考慮することで、色のあるエッジに補正を抑制する。色差Cb/Crから彩度信号を計算し、計算した彩度信号の強度に応じてその抑制係数を生成する。抑制係数は彩度の強度に反比例する。無彩色エッジに係数を1に設定し、フル補正を行う。ある閾値より大きい彩度を持つエッジに係数を0に設定して、補正無しにする。
【0013】
彩度計算は計算エリアを3×3と仮定して図2で説明する。Pijは各画素の位置を示す。現在の画像位置は図2のP22である。各画素の彩度は次式で計算する。
【数1】
彩度計算部は各画素の彩度を平均して出力する(次式参照)。
【数2】
抑制係数生成部は次式から抑制係数を算出する。
【数3】
ここでは、S0は予め設定した彩度の閾値である。画像データが8ビットの場合に、色差信号Cb/Crの範囲は[−128,127]で、彩度Sの範囲は[0,127]となる。例えば、閾値S0=32に設定すると、彩度S≧32であれば、Ks=0となり、補正はしなくなる。無彩色S=0に近づくに連れて係数Ksが大きくなり、速度変調補正が強く行われる。
【0014】
上記のように、彩度計算は現在のピクセルだけでなく、あるエリア内で行うことで、自然な抑制効果を引き出すことができる。
【0015】
図1に示すように、速度変調は水平と垂直の両方向において行う。図1でBPFは、バンドパスフィルタであり、LPFは、ローパスフィルタである。画像エッジの抽出は1つのフィルタでなく、2つのフィルタを組み合わせて実現する。画像エッジは直流以外の高周波数成分からなる。図3にデジタルFIRフィルタの周波数特性を示す。曲線f0はバンドパスフィルタの周波数特性である。曲線f0のような特性は短いタップ数のフィルタで実現できる。しかし、曲線f0に正規化周波数1.0まで非常に高い周波数成分が含まれており、これは主にノイズ成分である。このノイズ成分を除去するために、もう1つローパスフィルタを使う。このローパスフィルタの周波数特性は曲線f1である。曲線f1のようなローパスフィルタも短いタップ数で実現することができる。曲線f0と曲線f1を足し合わせると、曲線f2が得られる。曲線f2の周波数特性を使えば、ノイズを除去したエッジ情報を検出することができる。注意すべき点は曲線f2の特性は1つのフィルタで直接に実現するには長いタップ数が必要である。
【0016】
図3の縦座標はlog目盛りで単位はdBである。曲線f2は曲線f0と曲線f1の加算結果である。目盛りのlogを無くすと、曲線f2は曲線f0と曲線f1の乗算結果になる。
【0017】
図4に曲線c0は原画像の輝度データ値を示す。曲線d0はバンドパスフィルタのフィルタリング結果で、曲線d1はローパスフィルタの出力結果である。曲線d2は曲線d0と曲線d1の乗算結果(d2=d0×d1)である。曲線d2は検出したエッジの情報で、速度変調効果を実現するための補正信号でもある。
【0018】
図5は図4の補正信号d2を使って速度変調効果を実現する方法を示す。曲線c0は原画像の輝度データ値で、曲線c1+,曲線c2+と曲線c1−,曲線c2−は実現した速度変調の効果である。
c=c0+k×d2×Ks
ここで、k<0の時に曲線c1−,曲線c2−が得られる。k>0の時に曲線c1+,曲線c2+が得られる。曲線c1−,曲線c2−はエッジ黒幅が太くなる場合で、曲線c1+,曲線c2+はエッジの黒幅は狭くなる場合である。そして、曲線c1−,曲線c1+は無彩色(Ks=1)の補正結果で、曲線c2−,曲線c2+はカラーエッジ(Ks<1)の補正結果である。
【0019】
また、図6の方法でOvershootとUndershootを無くす。曲線c0は原画像の輝度データ値で、破線の曲線c1は得られた速度変調の効果である。max/minは現在画素の近傍から求められた輝度信号の最大値と最小値である。このmax/minを持って、曲線c1をクリップ処理すれば、画像データのOvershootとUndershootがなくなる。クリップの結果として、曲線c1のUndershoot部分はminに対応する水平直線になり、Overshoot部分はmaxに対応する水平直線になる。
【0020】
max/minは、垂直方向または水平方向だけの場合は現在画素の上下または左右にあるn個画素の中(自分を含む)から求められる。nは奇数である。垂直方向と水平方向の2次元の場合は、自分を含む左右と上下の十字上の画素から求められる。また、入力画素位置と出力画素位置を合わせるために、ここでデジタルフィルタは奇数タップとする。例えば、5タップや15タップのFIRフィルタ。
【0021】
1例としてデジタルフィルタ(5タップ)の係数を以下に示す。
バンドパスフィルタBPF:{0.07,−0.99,0.00,−0.99,0.07}。
ローパスフィルタLPF:{0.03,0.31,0.32,0.31,0.03}。
【0022】
コアリング処理はノイズ防止のためで、原理は図7に示す。入力値は閾値tより小さいとき、出力をゼロにする。入力値は閾値tより大きいとき、入力をそのまま出力する。
【0023】
水平ゲイン/垂直ゲインは速度変調効果の強度を制御する。ゲインは正負両方の値を設定することが可能である。負の時に、エッジの黒幅は太くなる。正の時はエッジの黒幅は狭くなる。
【0024】
水平と垂直の補正信号を輝度Yに足し合わせ、Overshoot制御ブロックに送る。Overshoot制御ブロックは輝度信号Yからmax/minを求めて補正後の輝度信号をクリップして出力する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】速度変調処理回路図。
【図2】彩度計算エリア。
【図3】速度変調フィルタの周波数特性。
【図4】フィルタの出力。
【図5】エッジの補正結果。
【図6】Overshootのクリッピング処理。
【図7】コアリング処理。
【図8】速度変調処理ブロック図(例3)。
【図9】速度変調原理(例3)。
【図10】速度変調原理(例1)。
【図11】速度変調原理(例2)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及び画像表示方法に関し、特に、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現する画像表示装置及び画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログのCRTテレビにおいて、スキャン速度の制御により画像エッジの特性を改善する方法がある。エッジエリアにおいてその黒側にスキャン速度を速くすることで、エッジの黒幅を太くすることができる。例えば、図10のような黒から白へ変化するエッジに対して点Aまでは定速でスキャンし、AとBの間で定速より速い速度でスキャンし、点Bを過ぎる時点で再び定速に戻ることで、エッジの黒幅を太くすることができる。曲線i0は速度変調なしの画像エッジで、曲線i1は速度変調より得た画像エッジである。この方法は特許文献1と特許文献2に提案されている。
【0003】
また、特許文献1と特許文献2の提案方法は、図11に示す効果を得ることができる。しかし、OvershootとUndershootが付くことがよく分かる。図11の曲線i0は速度変調無しの画像エッジである。曲線i2は図10の曲線i1と同じ速度変調で得た効果であるが、点Aは真っ黒ではない。この時、速いスキャン速度で電子銃はCRTに十分な電子与えないので、A点の右側にA点より暗くなり、Undershootが生じた。
【0004】
図11の曲線i3は、点Aと点Bの間においてもスキャン速度を変えることによって、実現できる。点Aと点Bの間に点Cがある。点Aと点Cの間で定速より速いスキャン速度で、点Cと点Bの間で遅いスキャン速度でスキャンする。得られた曲線i3に点Aと点Cの間に曲線i2と同じようにUndershootが生じている。また、曲線i3の点Cと点Bの間でスキャン速度は遅いため、電子銃から出された電子が多くなる。これで、点Cと点Bの間に輝度が明るくなり、Overshootが生じている。
【0005】
また、液晶のようなマトリックスパネルに対しては、同出願人が出願した、特許文献3において、デジタル画像に対する速度変調効果を実現する画像表示装置及び画像表示方法が提案されている。そのブロック図は図8に示す。
【特許文献1】米国特許第3980819号明細書
【特許文献2】米国特許第5587745号明細書
【特許文献3】特願2005−297769号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の方法では、図8のように色差Cb/Crとは独立して輝度信号のみに処理を施す。この場合、色の付いたエッジには不自然な効果が生じる。例えば、赤色は輝度値が小さいので、赤色と白色との境目において、輝度値が赤色側では小さく、白側では大きいため、輝度の変化は図9の曲線i10で示す。このようなエッジに速度変調処理をすると、曲線i11の効果が得られる。曲線i11は赤と白との境目に不自然な暗いエッジが見える。色のあるエッジには効果は曲線i11でなく、曲線i12のような形が望まれる。
【0007】
本発明は、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置であって、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、画像のエッジにおける黒幅の補正の抑制は、色差から彩度を計算し、彩度の値が大きい程、値が小さくなるように設定した抑制係数により行い、無彩色エッジの場合には、抑制係数を1に設定し、黒幅の補正の抑制は行わず、フル補正をし、あらかじめ定めた閾値より大きい彩度の値を持つエッジの場合には、抑制係数を0に設定し、黒幅の補正をすべて抑制し、黒幅の補正はしないことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、彩度の計算は、一定のエリア内で行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、タップ数の少ないバンドパスフィルタとローパスフィルタの2種類のフィルタを有し、該フィルタの組み合わせで画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、水平と垂直の両方向で画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、Overshoot制御付きの画像エッジの補正を行うことを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、コアリング処理を行った画像エッジの補正を行ってノイズ防止することを特徴とする。さらに、本発明の画像表示装置は、ゲインが正負設定可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像表示方法は、入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する方法であって、画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テレビやカメラ等のデジタル画像に対して、画像のカラーエッジを維持しながら無彩色エッジにおける黒幅を自由に制御し、CRTテレビの速度変調効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の内容を実施するシステム構成である。速度変調補正の際に色差信号を考慮することで、色のあるエッジに補正を抑制する。色差Cb/Crから彩度信号を計算し、計算した彩度信号の強度に応じてその抑制係数を生成する。抑制係数は彩度の強度に反比例する。無彩色エッジに係数を1に設定し、フル補正を行う。ある閾値より大きい彩度を持つエッジに係数を0に設定して、補正無しにする。
【0013】
彩度計算は計算エリアを3×3と仮定して図2で説明する。Pijは各画素の位置を示す。現在の画像位置は図2のP22である。各画素の彩度は次式で計算する。
【数1】
彩度計算部は各画素の彩度を平均して出力する(次式参照)。
【数2】
抑制係数生成部は次式から抑制係数を算出する。
【数3】
ここでは、S0は予め設定した彩度の閾値である。画像データが8ビットの場合に、色差信号Cb/Crの範囲は[−128,127]で、彩度Sの範囲は[0,127]となる。例えば、閾値S0=32に設定すると、彩度S≧32であれば、Ks=0となり、補正はしなくなる。無彩色S=0に近づくに連れて係数Ksが大きくなり、速度変調補正が強く行われる。
【0014】
上記のように、彩度計算は現在のピクセルだけでなく、あるエリア内で行うことで、自然な抑制効果を引き出すことができる。
【0015】
図1に示すように、速度変調は水平と垂直の両方向において行う。図1でBPFは、バンドパスフィルタであり、LPFは、ローパスフィルタである。画像エッジの抽出は1つのフィルタでなく、2つのフィルタを組み合わせて実現する。画像エッジは直流以外の高周波数成分からなる。図3にデジタルFIRフィルタの周波数特性を示す。曲線f0はバンドパスフィルタの周波数特性である。曲線f0のような特性は短いタップ数のフィルタで実現できる。しかし、曲線f0に正規化周波数1.0まで非常に高い周波数成分が含まれており、これは主にノイズ成分である。このノイズ成分を除去するために、もう1つローパスフィルタを使う。このローパスフィルタの周波数特性は曲線f1である。曲線f1のようなローパスフィルタも短いタップ数で実現することができる。曲線f0と曲線f1を足し合わせると、曲線f2が得られる。曲線f2の周波数特性を使えば、ノイズを除去したエッジ情報を検出することができる。注意すべき点は曲線f2の特性は1つのフィルタで直接に実現するには長いタップ数が必要である。
【0016】
図3の縦座標はlog目盛りで単位はdBである。曲線f2は曲線f0と曲線f1の加算結果である。目盛りのlogを無くすと、曲線f2は曲線f0と曲線f1の乗算結果になる。
【0017】
図4に曲線c0は原画像の輝度データ値を示す。曲線d0はバンドパスフィルタのフィルタリング結果で、曲線d1はローパスフィルタの出力結果である。曲線d2は曲線d0と曲線d1の乗算結果(d2=d0×d1)である。曲線d2は検出したエッジの情報で、速度変調効果を実現するための補正信号でもある。
【0018】
図5は図4の補正信号d2を使って速度変調効果を実現する方法を示す。曲線c0は原画像の輝度データ値で、曲線c1+,曲線c2+と曲線c1−,曲線c2−は実現した速度変調の効果である。
c=c0+k×d2×Ks
ここで、k<0の時に曲線c1−,曲線c2−が得られる。k>0の時に曲線c1+,曲線c2+が得られる。曲線c1−,曲線c2−はエッジ黒幅が太くなる場合で、曲線c1+,曲線c2+はエッジの黒幅は狭くなる場合である。そして、曲線c1−,曲線c1+は無彩色(Ks=1)の補正結果で、曲線c2−,曲線c2+はカラーエッジ(Ks<1)の補正結果である。
【0019】
また、図6の方法でOvershootとUndershootを無くす。曲線c0は原画像の輝度データ値で、破線の曲線c1は得られた速度変調の効果である。max/minは現在画素の近傍から求められた輝度信号の最大値と最小値である。このmax/minを持って、曲線c1をクリップ処理すれば、画像データのOvershootとUndershootがなくなる。クリップの結果として、曲線c1のUndershoot部分はminに対応する水平直線になり、Overshoot部分はmaxに対応する水平直線になる。
【0020】
max/minは、垂直方向または水平方向だけの場合は現在画素の上下または左右にあるn個画素の中(自分を含む)から求められる。nは奇数である。垂直方向と水平方向の2次元の場合は、自分を含む左右と上下の十字上の画素から求められる。また、入力画素位置と出力画素位置を合わせるために、ここでデジタルフィルタは奇数タップとする。例えば、5タップや15タップのFIRフィルタ。
【0021】
1例としてデジタルフィルタ(5タップ)の係数を以下に示す。
バンドパスフィルタBPF:{0.07,−0.99,0.00,−0.99,0.07}。
ローパスフィルタLPF:{0.03,0.31,0.32,0.31,0.03}。
【0022】
コアリング処理はノイズ防止のためで、原理は図7に示す。入力値は閾値tより小さいとき、出力をゼロにする。入力値は閾値tより大きいとき、入力をそのまま出力する。
【0023】
水平ゲイン/垂直ゲインは速度変調効果の強度を制御する。ゲインは正負両方の値を設定することが可能である。負の時に、エッジの黒幅は太くなる。正の時はエッジの黒幅は狭くなる。
【0024】
水平と垂直の補正信号を輝度Yに足し合わせ、Overshoot制御ブロックに送る。Overshoot制御ブロックは輝度信号Yからmax/minを求めて補正後の輝度信号をクリップして出力する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】速度変調処理回路図。
【図2】彩度計算エリア。
【図3】速度変調フィルタの周波数特性。
【図4】フィルタの出力。
【図5】エッジの補正結果。
【図6】Overshootのクリッピング処理。
【図7】コアリング処理。
【図8】速度変調処理ブロック図(例3)。
【図9】速度変調原理(例3)。
【図10】速度変調原理(例1)。
【図11】速度変調原理(例2)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置であって、
画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、画像のエッジにおける黒幅の補正の抑制は、色差から彩度を計算し、彩度の値が大きい程、値が小さくなるように設定した抑制係数により行い、無彩色エッジの場合には、抑制係数を1に設定し、黒幅の補正の抑制は行わず、フル補正をし、あらかじめ定めた閾値より大きい彩度の値を持つエッジの場合には、抑制係数を0に設定し、黒幅の補正をすべて抑制し、黒幅の補正はしないことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置において、彩度の計算は、一定のエリア内で行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像表示装置において、タップ数の少ないバンドパスフィルタとローパスフィルタの2種類のフィルタを有し、該フィルタの組み合わせで画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像表示装置において、水平と垂直の両方向で画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像表示装置において、Overshoot制御付きの画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像表示装置において、コアリング処理を行った画像エッジの補正を行ってノイズ防止することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像表示装置において、ゲインが正負設定可能であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する方法であって、
画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする画像表示方法。
【請求項1】
入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する装置であって、
画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、画像のエッジにおける黒幅の補正の抑制は、色差から彩度を計算し、彩度の値が大きい程、値が小さくなるように設定した抑制係数により行い、無彩色エッジの場合には、抑制係数を1に設定し、黒幅の補正の抑制は行わず、フル補正をし、あらかじめ定めた閾値より大きい彩度の値を持つエッジの場合には、抑制係数を0に設定し、黒幅の補正をすべて抑制し、黒幅の補正はしないことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置において、彩度の計算は、一定のエリア内で行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像表示装置において、タップ数の少ないバンドパスフィルタとローパスフィルタの2種類のフィルタを有し、該フィルタの組み合わせで画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像表示装置において、水平と垂直の両方向で画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像表示装置において、Overshoot制御付きの画像エッジの補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像表示装置において、コアリング処理を行った画像エッジの補正を行ってノイズ防止することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像表示装置において、ゲインが正負設定可能であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
入力されたデジタル画像に対し、画像のエッジにおける黒幅を補正して速度変調効果を実現し、画像を表示する方法であって、
画像のエッジにおける黒幅の補正は、彩度の強度に応じて速度変調の効果を適応に調整し、カラーエッジの場合は黒幅の補正を抑制し、無彩色エッジの場合は黒幅の補正を抑制しないことを特徴とする画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−42442(P2008−42442A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213074(P2006−213074)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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