説明

画像表示装置及び画像表示方法

【課題】 MIP画像データを観察する際の好適な参照用画像データを効率よく生成する。
【解決手段】 画像表示装置100のボリュームデータ記憶部1は、ネットワーク10を介して画像診断装置から供給される複数スライス断面の2次元データを保存してボリュームデータを形成し、MIP画像データ生成部2は、このボリュームデータの画素値を所定の投影面に投影してMIP画像データを生成する。次いで、スライス断面特定部3は、このMIP画像データの画素値に対応した画素値を有するボリュームデータのスライス断面を特定し、リスト作成部4は、スライス断面毎に集計された特定頻度に基づいてスライスリストを作成する。そして、参照用画像データ生成部5は、このスライスリストに基づいて選択されたスライス断面(参照用スライス断面)における2次元データを用いて参照用画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及び画像表示方法に係り、特に3次元的な画像データの投影値に基づいて2次元画像データの生成と表示を行なう画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断技術は、近年のコンピュータ技術の発展に伴って実用化されたX線CT装置やMRI装置などによって急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に、MRI装置やX線CT装置では、生体情報の検出部や演算処理部の高速化、高性能化に伴なって画像データのリアルタイム表示が可能となり、更に、3次元的なボリュームデータ(例えば、連続する複数スライス面における2次元データ)の生成も比較的容易に行なわれるようになった。
【0003】
このような医用画像診断装置によって生成されたボリュームデータに基づいて所望の2次元画像データを生成する方法として最大値投影法(以下では、MIP(Maximum Intensity Projection)法と呼ぶ。)が開発されている。MIP法では、ボリュームデータの近傍に配置された投影面(MIP画像面)の各画素からこの投影面に対して略垂直な複数の投影軸を設定し、これらの投影軸の各々と交差する前記ボリュームデータの複数画素(ボクセル)の画素値の中から最大画素値を検出して投影面の画素値としている。
【0004】
この方法によれば、広範囲なボリュームデータの特定領域に大きな画素値を有する画素が存在する場合、その3次元情報を比較的簡単な処理により2次元情報に変換することが可能となる。例えば、複数枚の2次元データあるいは3次元のボリュームデータを用いて2次元の血管画像を得る際に上述のMIP法を適用することにより、強度情報あるいは位相情報に基づいて収集された血管の3次元的な画素値は他の静止組織の画素値に対し高い値を示すため、投影面では3次元的な血管データが効果的に投影された2次元画像データ(以下では、MIP画像データと呼ぶ。)が生成される。
【0005】
そして、担当医等(以下では、操作者と呼ぶ。)は、このような方法によって得られたMIP画像データを観察することにより、被検体の比較的広範囲な3次元領域における診断対象部位を効率よく診断することが可能となる。
【0006】
しかしながら、投影軸が複数の血管と交差している場合にはその前後関係をMIP画像データにおいて把握することは困難であり、又、投影軸上において大きな画素値を有する静止組織等の画素が存在する場合には、この画素値より小さな値の画素値を有する血管をMIP画像データにおいて表示することはできない。このため、MIP画像データを用いて診断する際には、このMIP画像データの生成に用いた複数枚の2次元データ(原画像データ)の何れかを参照用画像データとして観察することが望ましいとされている。
【0007】
特に、MRI装置における原画像データは、例えば、200枚乃至500枚の2次元データによって構成されており、表示部において順次表示されるこれらの2次元データの中から所望の2次元データを参照用画像データとして選択する場合、その選択作業に多大な時間を要し、更に、その選択精度は操作者の経験や知識に大きく依存していた。
【0008】
一方、MIP画像データにおける血管情報に対応した血管情報が含まれているボリュームデータのスライス断面を効率よく設定する方法として、MIP画像データ上の血管壁における関心点(例えば、血流計測点)を基準に血管の走行方向を示す血管近似直線を配置し、関心点を含み血管近似直線を法線とする平面をスライス断面として設定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−327647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1の方法によれば、操作者によって設定されたMIP画像データ上の関心点に基づき、この関心点を含むスライス断面を自動的に設定することができる。しかしながら、このとき設定されるスライス断面は血管の走行方向に垂直な断面(血管の横断面)に限定される。又、所望のスライス断面を決定する血管近似直線を得るためには血管の走行方向を正確に検出する必要があるが、投影方向に対し位置情報を有しないMIP画像データにおいて血管走行方向を検出することは通常困難である。更に、上述の方法は、3次元的な血管情報あるいは血流情報を含んだMIP画像データに限定され、走行方向を有さない通常の臓器等に対して生成されたMIP画像データに適用することはできない。
【0011】
本発明の実施形態は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。
【0012】
その目的は、画像診断装置によるボリュームデータを用いて生成したMIP画像データを観察する際、このMIP画像データの画素値に対応した画素値を有する前記ボリュームデータのスライス断面を検出し、このスライス断面における画素に基づいて生成した2次元データをMIP画像データの参照用画像データとして観察可能な画像表示装置及び画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の画像表示装置は、被検体に対して画像診断装置が生成したボリュームデータに基づいてMIP(最大値投影)画像データの生成と表示を行なう画像表示装置において、前記MIP画像データの画素値に対応した前記ボリュームデータの画素値の画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定するスライス断面設定手段と、設定された前記スライス断面における前記ボリュームデータの画素値に基づいて参照用画像データを生成する参照用画像データ生成手段と、前記参照用画像データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
一方、請求項6に係る本発明の画像表示方法は、被検体に対して画像診断装置が生成した複数スライス断面の2次元データによって構成されるボリュームデータに基づいてMIP(最大値投影)画像データとその参照用画像データを表示するための画像表示方法であって、ボリュームデータ記憶手段が、前記ボリュームデータを収集するステップと、MIP画像データ生成手段が、前記ボリュームデータに対して設定された投影方向における最大画素値を検出してMIP画像データを生成するステップと、スライス断面設定手段が、前記MIP画像データの画素値に対応した前記ボリュームデータの画素値の画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定するステップと、参照用画像データ生成手段が、設定された前記ボリュームデータの前記スライス断面における画素値に基づいて参照用画像データを生成するステップと、表示手段が、前記MIP画像データ及び前記参照用画像データを表示するステップとを有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例における画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図2】同実施例の画像表示装置と接続された画像診断装置において生成される2次元データのスライス断面を示す図。
【図3】同実施例におけるMIP画像データ生成部の機能を説明するための図。
【図4】同実施例のリスト作成部が作成するスライスリストの具体例を示す図。
【図5】同実施例におけるMIP画像データ及び参照用画像データの生成と表示の手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施例における画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図7】同実施例のスライス断面設定部による参照用スライス断面の設定方法を説明するための図。
【図8】同実施例におけるMIP画像データ及び参照用画像データの生成と表示の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に述べる本発明の第1の実施例における画像表示装置では、被検体の体軸方向における所定間隔のスライス断面において生成された複数枚の2次元データをボリュームデータとして収集し、このボリュームデータの画素値を所定の投影面に投影してMIP画像データを生成する。
【0018】
次いで、このMIP画像データの画素値に対応した画素値を有するボリュームデータのスライス断面を特定する。このようなスライス断面の特定をMIP画像データの特定領域(関心領域)を構成する画素の各々に対して行ない、スライス断面毎に集計された特定頻度に基づいてスライス断面のリスト(以下では、スライスリストと呼ぶ。)を作成する。そして、操作者は、このスライスリストに基づき、例えば、特定頻度の大きなスライス断面を優先的に選択し、選択したスライス断面における2次元データを用いて参照用画像データを生成する。
【0019】
尚、以下に述べる本実施例のボリュームデータは、当該被検体に対してMRI装置やX線CT装置等の画像診断装置が生成する複数枚の2次元データによって構成される場合について述べるが、これに限定されるものではなく、超音波診断装置等の他の画像診断装置が生成した複数枚の2次元データによって構成されていてもよい。
【0020】
又、本実施例におけるボリュームデータは、被検体の体軸方向に垂直な複数のスライス断面(アキシャル断面)において得られる2次元データによって構成される場合について述べるが、アキシャル断面に垂直なコロナル断面やサジタル断面、あるいは、任意の断面(オブリーク断面)において得られた複数枚の2次元データによって構成されていてもよい。
【0021】
(装置の構成)
以下、本発明の第1の実施例における画像表示装置の構成につき図1を用いて説明する。
【0022】
図1は、本実施例における画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図であり、この画像表示装置100は、ネットワーク10を介して接続された図示しない画像診断装置により、当該被検体の隣接する複数スライス断面において生成された2次元データをボリュームデータとして保存するボリュームデータ記憶部1と、このボリュームデータを用いてMIP画像データを生成するMIP画像データ生成部2と、得られたMIP画像データの画素値に対応した画素値を有する2次元データのスライス断面を特定するスライス断面特定部3と、スライス断面の各々に対して集計した特定頻度(特定回数)に基づいてスライスリストを作成するリスト作成部4と、このスライスリストに基づいて選択されたスライス断面の2次元データを収集して参照用画像データを生成する参照用画像データ生成部5と、MIP画像データや参照用画像データ等の表示を行なう表示部6と、被検体情報の入力、投影方向(視線方向)の設定、関心領域の設定、参照用スライス断面の選択、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部7と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部8を備えている。
【0023】
図2は、ネットワーク10を介して画像表示装置100と接続された画像診断装置において生成される2次元データのスライス断面を示したものであり、例えば、被検体30の体軸方向(z方向)に対し、この体軸方向に垂直なスライス断面(アキシャル断面)G1乃至GMが所定間隔ΔZで設定され、これらのスライス断面の各々において2次元データP1乃至PMが生成される。
【0024】
そして、生成された2次元データP1乃至PMは、ネットワーク10を介して画像表示装置100のボリュームデータ記憶部1にボリュームデータとして適時保存される。このとき、2次元データP1乃至PMが生成されたスライス断面G1乃至GMの識別情報も2次元データP1乃至PMの付帯情報として、ボリュームデータ記憶部1に保存される。
【0025】
図1に戻って、MIP画像データ生成部2は、最大画素値検出部21と最大画素値記憶部22を有している。最大画素値検出部21は、入力部7から供給される投影方向の情報に基づきボリュームデータ記憶部1のボリュームデータに対して複数本の投影軸を設定し、これらの投影軸の各々と交差したボリュームデータの複数画素における画素値の中から最大画素値を検出する。そして、検出した最大画素値を上述の投影軸に対応させて最大画素値記憶部22の所定領域に保存しMIP画像データを生成する。
【0026】
上述のMIP画像データ生成部2の機能につき図3の模式図を用いて更に詳しく説明する。但し、図3では説明を判り易くするために、投影軸A1乃至A4を含むボリュームデータVd及び投影面Dpの切断面(y−z平面)を示している。更に、ここでは2次元データの枚数を6枚(M=6)とし、更に、これら2次元データの各々におけるy方向画素数を6としているが、実際のボリュームデータVdは、更に多くの2次元データや画素によって構成される。
【0027】
即ち、図3において、画像診断装置によって生成された2次元データP1乃至P6は、ボリュームデータ記憶部1において保存されボリュームデータVdを形成している。尚、ボリュームデータVdに示されたB11乃至B16は2次元データP1の画素値を示し、同様にして、B21乃至B26、B31乃至B36、・・・は2次元データP2、P3、・・・の各々における画素値を示している。
【0028】
上述の方法によりボリュームデータ記憶部1に保管されたボリュームデータVdに対し、MIP画像データ生成部2の最大画素値検出部21は、入力部7から供給される投影方向の情報に基づき、この投影方向に垂直な投影面(MIP画像面)DpをボリュームデータVdの後方に設定し、更に、この投影面Dpにおいて所定間隔Δhの画素(図3のC1乃至C4)をMIP画像データの画素として形成する。
【0029】
次いで、最大画素値検出部21は、画素C1乃至C4の各々の中心を通り投影面Dpに垂直(即ち、投影方向に並行)な投影軸A1乃至A4を設定し、投影軸A1乃至A4の各々と交差するボリュームデータVdの画素の画素値を読み出す。そして、各々の投影軸に対して得られた複数の画素値の中から最大画素値を検出し、その値を最大画素値記憶部22の所定領域に保存する。このとき、上述の最大画素値が帰属する(即ち、前記最大画素値を有する画素が含まれている)スライス断面の識別情報も最大画素値の付帯情報としてMIP画像データ記憶部22に保存される。
【0030】
例えば、最大画素値検出部21は、投影面Dpの画素C1に対して設定された投影軸A1と交差するボリュームデータVpの画素の画素値B31、B22、B13の中から最大画素値(例えばB22)を検出する。そして、検出した最大画素値とこの最大画素値を有するスライス断面の識別情報G2を最大画素値記憶部22の所定記憶領域に保存する。
【0031】
同様にして、最大画素値検出部21は、投影面Dpの画素C2乃至C4に設定された投影軸A2乃至A4の各々と交差するボリュームデータVdの画素の画素値の中から検出した最大画素値と、この最大画素値を有するスライス断面の識別情報(例えば、B33とG3、B35とG3、B46とG4)を最大画素値記憶部22の所定記憶領域に保存する。
【0032】
即ち、最大画素値記憶部22には、投影面Dpの2次元的な画素の各々に対して投影されたボリュームデータVdの最大画素値が順次保存されてMIP画像データが生成される。
【0033】
再び図1に戻って、スライス断面特定部3は、MIP画像データ生成部2の最大画素値記憶部22に保存されたMIP画像データの画素値、(即ち、上述の最大画素値)の各々に付帯されているスライス断面の識別情報を順次読み出し、この識別情報に基づいてMIP画像データの画素値に対応した画素値を有するスライス断面を特定する。例えば、MIP画像データの画素C1における画素値B22に対応するスライス断面G2を特定し、同様にして、画素C2の画素値B33に対応するスライス断面G3、画素C3の画素値B35に対応するスライス断面G3、画素C4の画素値B45に対応するスライス断面G4を夫々特定する。
【0034】
リスト作成部4は、スライス断面特定部3から供給される特定結果をスライス断面毎に累積して特定頻度を算出し、この特定頻度に基づいてスライスリストを作成する。図4は、リスト作成部4によって作成されたスライスリストの具体例であり、図3と対応させて示している。即ち、図4では、特定頻度Nxが2のスライス断面G3が最上段に示され、次いで、頻度Nxが1のスライス断面G2とスライス断面G4がスライス断面G3に後続して示される。
【0035】
次に、図1の参照用画像データ生成部5は、表示部6に表示された上述のスライスリストに基づいて入力部7から供給されるスライス断面の選択情報を受信し、操作者によって選択されたスライス断面(例えば、特定頻度が最も大きいスライス断面G3)における2次元データをボリュームデータ記憶部1から読み出して参照用画像データを生成する。
【0036】
一方、表示部6は、図示しない表示データ生成部、変換部及びモニタを備え、MIP画像データ生成部2が生成したMIP画像データや参照用画像データ生成部5が生成した参照用画像データ、更には、リスト作成部4が作成したスライスリストは、前記表示データ生成部において被検体情報等と合成された後、前記変換回路にてD/A変換とテレビフォーマット変換がなされ前記モニタに表示される。
【0037】
入力部7は、キーボード、切り替えスイッチ、選択ボタン、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備えたインターラクティブなインターフェースであり、被検体名や被検体ID等の被検体情報を入力する被検体情報入力部71と、MIP画像データの生成における投影方向を設定する投影方向設定部72と、MIP画像データに対し関心領域を設定する関心領域設定部73と、表示部6のモニタに表示されたスライスリストに基づいて参照用スライス断面を選択するスライス断面選択部74を備え、更に、MIP画像データや参照用画像データの生成と表示に必要な各種コマンド信号の入力等が行なわれる。
【0038】
そして、システム制御部8は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部7から供給される上述の入力/設定/選択情報を自己の記憶回路に保存する。そして、これらの情報や入力部7から直接入力されるコマンド信号に従って、上述の各ユニットを統括的に制御する。
【0039】
(画像データの表示手順)
次に、本発明の第1の実施例におけるMIP画像データ及び参照用画像データの生成と表示の手順につき図5のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
MIP画像データの生成に先立って、ネットワーク10を介して画像表示装置100と接続された画像診断装置は、当該被検体の体軸方向に複数(M)のスライス断面G1乃至GMを設定し、これらのスライス断面において2次元データP1乃至PMを原画像データとして生成する。そして、これらの2次元データP1乃至PMは、その付帯情報であるスライス断面G1乃至GMの識別情報と共に画像表示装置100のボリュームデータ記憶部1に適時保存されてボリュームデータが形成される(図5のステップS1)。
【0041】
一方、画像表示装置100の操作者は、上述のボリュームデータをMIP処理するための投影方向を入力部7の投影方向設定部72において設定する(図5のステップS2)。そして、入力部7から投影方向の情報を受信したMIP画像データ生成部2の最大画素値検出部21は、この投影方向に垂直な投影面をボリュームデータの後方に設定し、更に、この投影面においてMIP画像データの画素を所定間隔で形成する。
【0042】
次いで、最大画素値検出部21は、投影面(即ち、MPI画像データ)における各画素の中心を通り投影面に垂直な複数の投影軸を設定し、これらの投影軸と交差するボリュームデータの画素の画素値を読み出す。そして、各々の投影軸に対して得られた複数の画素値の中から最大画素値を検出し、その値を最大画素値記憶部22の所定領域に保存する。このとき、上述の最大画素値を有するスライス断面の識別情報も最大画素値の付帯情報としてMIP画像データ記憶部22に保存する(図5のステップS3)。即ち、最大画素値記憶部22には、投影面上に形成されている画素の各々に投影されたボリュームデータの最大画素値が順次保存されてMIP画像データが生成され、このMIP画像データは表示部6のモニタに表示される(図5のステップS4)。
【0043】
一方、表示部6に表示されたMIP画像データを観察した操作者は、このMIP画像データに対して所望の関心領域を設定するための領域設定信号を入力部7の入力デバイスを用いて入力し、入力部7の関心領域設定部73は、入力された領域設定信号に基づきMIP画像データに対して関心領域を設定する。このとき、関心領域の情報はシステム制御部8を介して表示部6に供給され、自己のモニタにおいてMIP画像データに重畳表示される(図5のステップS5)。
【0044】
次に、スライス断面特定部3は、MIP画像データの関心領域における複数の画素値とこれらの画素値の各々に付帯されているスライス断面の識別情報を最大画素値記憶部22から順次読み出す。そして、これらの識別情報に基づいて前記関心領域における画素値の各々に対応した画素値を有するスライス断面を特定し、その特定結果をリスト作成部4へ供給する(図5のステップS6)。
【0045】
一方、リスト作成部4は、スライス断面特定部3から供給された特定結果をスライス断面毎に累積して特定頻度を算出し、この特定頻度に基づいてスライスリストを作成する。そして、得られたスライスリストは表示部6のモニタに表示される(図5のステップS7)。このスライスリストを観察した画像表示装置100の操作者は、入力部7のスライス断面選択部74において、例えば、特定頻度が最も高いスライス断面を参照用スライス断面として選択し、その選択情報を、システム制御部8を介して参照用画像データ生成部5へ供給する(図5のステップS8)。
【0046】
スライス断面の選択情報を入力部7から供給された参照用画像データ生成部5は、操作者が選択したスライス断面における2次元データをボリュームデータ記憶部1から読み出して参照用画像データを生成し、表示部6のモニタに表示する(図5のステップS9)。
【0047】
尚、上述の第1の実施例では、MIP画像データの各画素値にスライス断面の識別情報をその付帯情報として付加する場合について述べたが、このスライス断面において生成された2次元データの識別情報を付加しても構わない。この場合、スライス断面特定部3は、MIP画像データ生成部2の最大画素値記憶部22に保存されたMIP画像データの画素値、(即ち、上述の最大画素値)の各々に付帯されている2次元データの識別情報を順次読み出し、この識別情報に基づいてMIP画像データの画素値に対応した画素値を有するスライス断面あるいは2次元データを特定する。
【0048】
一方、上述の実施例では、リスト作成部4が作成したスライスリストを表示部6のモニタに表示する場合について述べたが、入力部7が備える表示パネルに表示してもよい。
【0049】
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、当該被検体の複数スライス断面における2次元データ(原画像データ)から構成されたボリュームデータに基づくMIP画像データの観察に際し、このMIP画像データの生成に大きく関与したスライス断面(参照用スライス断面)における2次元データを参照用画像データとして前記MIP画像データと共に観察することができるため診断精度が向上する。
【0050】
又、このMIP画像データの画素値の各々に対応した画素値を有する前記ボリュームデータのスライス断面を特定し、その特定頻度に基づいて作成したスライスリストを用いて参照用スライス断面の絞り込みを行なうことができるため、操作者の経験や知識に依存することなく常に正確かつ客観的な絞り込みが可能となる。従って、診断効率が向上するのみならず操作者の負担を低減することができる。
【実施例2】
【0051】
次に、本発明の第2の実施例について述べる。この第2の実施例における画像表示装置では、被検体の体軸方向における所定間隔のスライス断面にて生成された複数枚の2次元データをボリュームデータとして収集し、このボリュームデータの画素値を所定の投影面に投影してMIP画像データを生成する。次いで、このMIP画像データの画素値の各々に対応した画素値が含まれる参照用スライス断面をボリュームデータに対して設定し、この参照用スライス断面に含まれたボリュームデータの画素値に基づいて参照用画像データを生成する。
【0052】
(装置の構成)
以下、本発明の第2の実施例における画像表示装置につき図6の機能ブロック図を用いて説明する。但し、図6において、図1に示した画像表示装置100の各ユニットと同様の構成と機能を有するユニットは同一の符号を付加し説明を省略する。
【0053】
図6に示した本実施例の画像表示装置200は、ネットワーク10を介して接続された図示しない画像診断装置により、当該被検体の隣接する複数スライス断面において生成された2次元データをボリュームデータとして保存するボリュームデータ記憶部1と、このボリュームデータを用いてMIP画像データを生成するMIP画像データ生成部11と、得られたMIP画像データの関心領域における画素値の各々に対応した画素値が含まれるスライス断面を参照用スライス断面として設定するスライス断面設定部12と、この参照用スライス断面における画素値に基づいて参照用画像データを生成する参照用画像データ生成部13と、MIP画像データや参照用画像データを表示する表示部6と、被検体情報の入力、投影方向の設定、関心領域の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部7と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部8を備えている。
【0054】
MIP画像データ生成部11は、最大画素値検出部111と最大画素値記憶部112を有している。最大画素値検出部111は、入力部7から供給される投影方向の情報に基づきボリュームデータ記憶部1のボリュームデータに対して複数本の投影軸を設定し、これらの投影軸の各々と交差したボリュームデータの画素における画素値の中から最大画素値を検出する。そして、検出した最大画素値を上述の投影軸に対応させて最大画素値記憶部112の所定領域に保存しMIP画像データを生成する。このとき、最大画素値の画素位置情報も上記最大画素値の付帯情報としてMIP画像データ記憶部112に保存される。
【0055】
一方、スライス断面設定部12は、MIP画像データ生成部11の最大画素値記憶部112に保存されたMIP画像データの画素値の各々に付帯されている上述の画素位置情報を順次読み出し、この画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定する。
【0056】
次に、スライス断面設定部12による参照用スライス断面の設定方法につき図7の模式図を用いて更に詳しく説明する。図7は、上述の第1の実施例の説明にて示した図3と同様にして、画像診断装置から収集した当該被検体のボリュームデータVdとこのボリュームデータVdの投影方向における最大画素値を投影面Dpに投影することによって生成されたMIP画像データの切断面を示している。
【0057】
そして、スライス断面設定部12は、例えば、MIP画像データ生成部11の最大画素値記憶部112に保存されたMIP画像データの画素値B22、B33、B35及びB46の各々に付帯されている画素位置情報を順次読み出し、この画素位置情報に基づいて参照用スライス断面Sを設定する。この場合、スライス断面設定部12は、ボリュームデータVdの画素値B22、B33、B35及びB46が最小のスライス厚Wに含まれるように参照用スライス断面Sの方向を設定する。但し、MIP画像データの画素値に対応したボリュームデータVdの画素値の全てが含まれるスライス厚Wが予め設定された閾値より大きい場合には、所定割合の画素値が含まれる参照用スライス断面のスライス厚と方向を設定してもよい。
【0058】
図6に戻って、参照用画像データ生成部13は、スライス断面設定部12から供給される参照用スライス断面の設定情報に基づき、この参照用スライス断面に含まれるボリュームデータの画素値を用いたMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データを参照用画像データとして生成する。尚、参照用スライス断面の厚み方向に複数の画素値が存在する場合には、通常、これら複数の画素値を加算平均して2次元的な参照用画像データの生成が行なわれるが、この方法に限定されるものではなく、例えば、厚み方向の画素値の中から検出した最大画素値を用いて参照用画像データを生成してもよい。
【0059】
(画像データの表示手順)
次に、本発明の第2の実施例におけるMIP画像データ及び参照用画像データの生成と表示の手順につき図8のフローチャートを用いて説明する。但し、図8において、図5に示した第1の実施例の各ステップと同様のステップは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0060】
MIP画像データの生成に先立ち、ネットワーク10を介して画像表示装置200と接続された画像診断装置は、当該被検体の体軸方向に設定されたスライス断面において複数枚の2次元データを生成し画像表示装置200のボリュームデータ記憶部1に適時保存してボリュームデータを形成する(図8のステップS1)。
【0061】
一方、画像表示装置200の操作者は、入力部7の投影方向設定部72においてボリュームデータに対する投影方向を設定し(図8のステップS2)、MIP画像データ生成部11の最大画素値検出部111は、この投影方向に垂直な投影面(MIP画像面)をボリュームデータの後方に設定すると共にこの投影面において所定間隔の画素を形成する。
【0062】
次いで、最大画素値検出部111は、投影面上の各画素における中心を通り投影面に垂直な複数の投影軸を設定し、これらの投影軸と交差するボリュームデータの画素の画素値を読み出す。そして、各々の投影軸に対して得られた複数の画素値の中から最大画素値を検出し、その値を最大画素値記憶部112の所定領域に保存する。このとき、最大画素値を有するボリュームデータの画素位置情報も最大画素値の付帯情報としてMIP画像データ記憶部112に保存される(図8のステップS13)。
【0063】
即ち、最大画素値記憶部112には、投影面上の複数画素の各々に対して投影されたボリュームデータの最大画素値が順次保存されてMIP画像データが生成される。そして、得られたMIP画像データは表示部6のモニタに表示される(図8のステップS4)。
【0064】
一方、表示部6において表示されたMIP画像データを観察した操作者は、このMIP画像データに対して関心領域を設定するための領域設定信号を入力部7の入力デバイスを用いて入力し、入力部7の関心領域設定部73は、この領域設定信号に基づきMIP画像データに対して関心領域を設定する(図8のステップS5)。
【0065】
次に、スライス断面設定部12は、MIP画像データ生成部11の最大画素値記憶部112に保存されたMIP画像データにおける関心領域内の画素値の各々に付帯されている画素位置情報を順次読み出し、この画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定する(図8のステップS16)。そして、参照用画像データ生成部13は、スライス断面設定部12が設定した参照用スライス断面の設定情報に基づき、この参照用スライス断面におけるボリュームデータの画素値を用いて参照用画像データを生成し表示部6のモニタに表示する(図8のステップS17)。
【0066】
以上述べた本発明の第2の実施例によれば、当該被検体のボリュームデータに基づいて生成されたMIP画像データの観察に際し、このMIP画像データの生成に関与した全てあるいは所定割合の画素を含むボリュームデータのスライス断面にて生成した参照用画像データを前記MIP画像データと共に観察することができるため診断精度が向上する。
【0067】
又、スライス断面の設定は自動的に行なうことができるため、好適なスライス断面を操作者の経験や知識に依存することなく短時間で設定することができる。従がって、効率のよいMIP画像データ及び参照用画像データの観察が可能となり、診断効率が向上するのみならず操作者の負担を低減することができる。
【0068】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものでは無く、変形して実施してもよい。例えば、上述の実施例におけるボリュームデータは、当該被検体に対してMRI装置やX線CT装置等の画像診断装置が生成する複数枚の2次元データによって構成される場合について述べたが、超音波診断装置等の他の画像診断装置が生成した複数枚の2次元データによって構成されていてもよい。
【0069】
又、上述の実施例におけるボリュームデータは、被検体の体軸方向に垂直な複数のスライス断面(アキシャル断面)において得られる2次元データによって構成される場合について述べたが、アキシャル断面に垂直なコロナル断面やサジタル断面、あるいは、任意の断面(オブリーク断面)において得られた複数枚の2次元データによって構成されていてもよい。
【0070】
一方、ボリュームデータを構成する複数枚の2次元データを、ネットワーク10を介して画像表示装置100あるいは画像表示装置200へ供給する場合について述べたが、MO(光磁気ディスク)等の記憶媒体を介して供給してもよい。
【0071】
更に、画像診断装置によって生成されたボリュームデータをネットワーク10あるいは記憶媒体を介して画像表示装置100あるいは画像表示装置200へ供給しても構わない。又、ボリュームデータの投影方向における最大画素値に基づいてMIP画像データを生成する場合について述べたが、最小画素値に基づいて生成してもよい。尚、上述の参照用画像データは、通常、MIP画像データと並列表示されることが望ましいが、これらの画像データを夫々独立して表示してもよく、その表示方法については特に限定されない。
【符号の説明】
【0072】
1…ボリュームデータ記憶部
2、11…MIP画像データ生成部
21、111…最大画素値検出部
22、112…最大画素値記憶部
3…スライス断面特定部
4…リスト作成部
5、13…参照用画像データ生成部
6…表示部
7…入力部
71…被検体情報入力部
72…投影方向設定部
73…関心領域設定部
74…スライス断面選択部
8…システム制御部
12…スライス断面設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して画像診断装置が生成したボリュームデータに基づいてMIP(最大値投影)画像データの生成と表示を行なう画像表示装置において、
前記MIP画像データの画素値に対応した前記ボリュームデータの画素値の画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定するスライス断面設定手段と、
設定された前記スライス断面における前記ボリュームデータの画素値に基づいて参照用画像データを生成する参照用画像データ生成手段と、
前記参照用画像データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記MIP画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段を備え、前記スライス断面設定手段は、前記MIP画像データの前記関心領域における画素値の各々に対応した前記ボリュームデータの画素値の画素位置情報に基づいて前記参照用スライス断面を設定することを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記MIP画像データの画素値として検出された所定の投影方向における前記ボリュームデータの最大画素値とこの最大画素値の画素位置情報を保存する最大画素値記憶手段を備え、前記スライス断面設定手段は、前記MIP画像データの画素値に対応した画素値を有する前記ボリュームデータのスライス断面を、前記最大画素値記憶手段に保存された前記画素位置情報に基づいて設定することを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記スライス断面設定手段は、前記MIP画像データの前記関心領域における画素値に対応した前記ボリュームデータの全ての画素あるいは所定割合の画素を
含むスライス断面を設定することを特徴とする請求項2記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記スライス断面設定手段は、前記MIP画像データの前記関心領域における画素値に対応した前記ボリュームデータの全ての画素あるいは所定割合の画素が最小のスライス厚に含まれるように前記スライス断面の方向を設定することを特徴とする請求項4記載の画像表示装置。
【請求項6】
被検体に対して画像診断装置が生成した複数スライス断面の2次元データによって構成されるボリュームデータに基づいてMIP(最大値投影)画像データとその参照用画像データを表示するための画像表示方法であって、
ボリュームデータ記憶手段が、前記ボリュームデータを収集するステップと、
MIP画像データ生成手段が、前記ボリュームデータに対して設定された投影方向における最大画素値を検出してMIP画像データを生成するステップと、
スライス断面設定手段が、前記MIP画像データの画素値に対応した前記ボリュームデータの画素値の画素位置情報に基づいて参照用スライス断面を設定するステップと、
参照用画像データ生成手段が、設定された前記ボリュームデータの前記スライス断面における画素値に基づいて参照用画像データを生成するステップと、
表示手段が、前記MIP画像データ及び前記参照用画像データを表示するステップとを
有することを特徴とする画像表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−240163(P2011−240163A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182030(P2011−182030)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【分割の表示】特願2006−191534(P2006−191534)の分割
【原出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】