説明

画像表示装置用保護フィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】ポリエステルフィルムの表面にハードコート層が形成されてなる画像表示装置用保護フィルムであって、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性に優れる保護フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムとして、その少なくとも一方の表面の対水接触角が60°〜75°であるものを用い、当該表面にハードコート層を形成することにより得られるハードコートフィルムを、画像表示装置用保護フィルムとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムの表面にハードコート層が形成されてなる画像表示装置用保護フィルム、並びにこの保護フィルムを用いてなる偏光板及び画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置の表示面には、表面の引っ掻き傷を防止するため、高硬度性能を有する保護フィルム層が一般に設けられている。また、画像表示装置の表示面に外光が映り込むと視認性が損なわれるため、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話等においては、保護フィルム層に外光の映り込みを防止する機能を付与することもあり、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理技術や、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理技術が用いられている。特に、後者の防眩処理技術は、比較的安価であるので、大型モニターやパーソナルコンピュータ等の用途に好ましく用いられている。
【0003】
また、大画面画像表示装置用途、例えば壁掛けテレビ用途においては、画像表示装置のさらなる薄型化及び軽量化のニーズが顕在化しており、保護フィルムにも、画像表示素子の薄型大画面化に対応して、画像表示素子の強度を補強する機能が求められたり、保護フィルム自体の薄肉化が求められたりしている。これらの要求に適う保護フィルムとしては、機械的強度に優れ、コスト面でも優れることから、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとして用い、その表面にハードコート層を形成してなるものが考えられるが、ポリエステルフィルムは、一般に不活性で接着性に乏しいため、ハードコート層との間で剥離が生じ易いという問題がある。このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、ポリエステルフィルムの表面に、所定のメタアクリレート共重合体の易接着性プライマー層を設けることが提案されている。また、特許文献2には、ポリエステルフィルムの表面に、架橋性官能基を有するアクリル樹脂とシランカップリング剤とを主たる構成成分とする易接着性塗膜を形成することが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特公平3−62551号公報
【特許文献2】特開平5−318678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の保護フィルムでは、画像表示装置、特に液晶表示装置に配置して使用すると、環境光、特にその中の紫外線に曝されたことに起因して、ポリエステルフィルムとハードコート層との密着性が、短期間のうちに低下することがある。そこで、本発明の目的は、ポリエステルフィルムの表面にハードコート層が形成されてなる画像表示装置用保護フィルムであって、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性に優れる保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエステルフィルムとして、その少なくとも一方の表面の対水接触角が特定の範囲にあるものを採用し、当該表面にハードコート層を形成することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層が形成されてなる画像表示装置用保護フィルムであって、ポリエステルフィルムのハードコート層が形成される表面の対水接触角が60°〜75°であることを特徴とする保護フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明によれば、ポリエステルフィルムの一方の表面にハードコート層が形成されてなる上記保護フィルムと、偏光フィルムとを貼り合せてなる偏光板であって、偏光フィルムが保護フィルムのポリエステルフィルム側に配置されている偏光板が提供され、さらに、上記保護フィルム又は上記偏光板と、画像表示素子とを備え、保護フィルム又は偏光板がそのハードコート層側を外側にして画像表示装置の視認側に配置されている画像表示装置も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保護フィルムは、その基材フィルムであるポリエステルフィルムと、その表面に形成されたハードコート層との密着性の点で、環境光に対する耐久性が高い。また、かかる本発明の保護フィルムを偏光フィルムと組み合わせた偏光板も、同様の効果を発現する。そして、本発明の保護フィルム又は偏光板を配置した本発明の画像表示装置は、環境光に対する耐久性が高いうえ、保護フィルムの基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いているので、画像表示素子の強度が補強され、画像表示素子の反りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<保護フィルム>
本発明の保護フィルムは、画像表示装置用途、特に表示面の保護用途に用いられる保護フィルムであって、ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、その少なくとも一方の表面にハードコート層が形成されてなるものである。そして、ポリエステルフィルムの両表面のうち、少なくともハードコート層が形成される表面は、その対水接触角が60°〜75°である。
【0010】
<ポリエステルフィルム>
基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするフィルムであり、ポリエステルを主成分とする単層フィルムであってもよいし、ポリエステルを主成分とする層を有する多層フィルムであってもよい。また、これら単層フィルム又は多層フィルムの両面又は片面に表面処理が施されたものであってもよく、この表面処理は、コロナ処理、ケン化処理、熱処理、紫外線照射、電子線照射等による表面改質であってもよいし、高分子や金属等の塗布や蒸着等による薄膜形成であってもよい。ポリエステルフィルム全体に占めるポリエステルの重量割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0011】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0012】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する構成単位と、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する構成単位とを有するポリエステルであり、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるのがよく、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニール、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分や、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が用いられていてもよい。ポリエチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸及び/又は他のジオールを直接反応させるいわゆる直接重合法や、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステル及び/又は他のジオールをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。
【0013】
ポリエステルには、必要に応じて公知の添加剤を配合してもよく、その例としては、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤が挙げられる。ただし、ポリエステルフィルムを防眩フィルムの基材フィルムとして用いる場合は、一般に透明性が必要とされるため、添加剤の添加量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0014】
また、ポリエステルフィルムにヘイズを付与するために、ポリエステルに無機微粒子又は有機微粒子を配合してもよい。無機微粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、及びこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものを代表的なものとして挙げることができる。また、有機微粒子としては、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)等の樹脂粒子を用いることができる。
【0015】
ポリエステルフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されていることが好ましい(このように一軸延伸又は二軸延伸されたポリエステルフィルムを以下単に「延伸ポリエステルフィルム」とも記す)。延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等に優れたフィルムであり、このようなポリエステルフィルムを用いた保護フィルムは、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。
【0016】
ポリエステルをフィルム状に成形し、一軸延伸処理又は二軸延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエステルフィルムを作製することができる。延伸処理を行うことにより、機械的強度の高いポリエステルフィルムを得ることができる。延伸されたポリエステルフィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、例えば一軸延伸ポリエステルフィルムとしては、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。また、二軸延伸ポリエステルフィルムでは、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで縦延伸後、熱固定処理を施し、次いで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。この場合、延伸温度は通常80〜130℃、好ましくは90〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜6倍、好ましくは3〜5.5倍である。延伸倍率が低いと、ポリエステルフィルムが十分な透明性を示さない傾向にある。
【0017】
また、配向主軸の歪みを低減するために、延伸後熱固定処理を行う前に、ポリエステルフィルムを弛緩処理することが望ましい。弛緩処理時の温度は通常90〜200℃、好ましくは120〜180℃である。弛緩量は、延伸条件によって異なり、弛緩処理後のポリエステルフィルムの、150℃における熱収縮率が2%以下になるように弛緩量及び弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
【0018】
熱固定処理温度は180〜250℃とすることができ、好ましくは200〜245℃である。熱固定処理においては、まず定長で熱固定処理を行った後、配向主軸の歪みが低減され、耐熱性等の強度を向上させるために、さらに幅方向の弛緩処理を行うことが好ましい。この場合の弛緩量は、弛緩処理後のポリエステルフィルムの、150℃における熱収縮率が1〜10%となるように調整されることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。本発明において用いられる延伸ポリエステルフィルムの配向主軸の歪みの最大値は、通常10度以下、好ましくは8度以下、さらに好ましくは5度以下である。配向主軸の最大値が10度より大きいと、液晶表示画面に貼合したときに色付不良が大きくなる傾向にある。なお、延伸ポリエステルフィルムの「配向主軸の歪みの最大値」は、たとえば、大塚電子株式会社製の位相差フィルム検査装置RETSシステムにより測定することができる。
【0019】
延伸ポリエステルフィルムの面内位相差値Rは、1000nm以上であることが好ましく、より好ましくは3000nm以上である。面内位相差値Rが1000nm未満であると、正面からの色つきが目立つ傾向にある。なお、延伸ポリエステルフィルムの面内位相差値Rは、下記式(1)で表される。
【0020】
R=(na−nb)×d ・・・(1)
【0021】
ここで、naは延伸ポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率であり、nbは延伸ポリエステルフィルムの面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率であり、dは延伸ポリエステルフィルムの厚みである。
【0022】
こうして得られるポリエステルフィルムの厚みは、20〜100μmとすることが好ましく、30〜50μmとすることがより好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが100μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。
【0023】
そして、本発明では、以上説明したようなポリエステルフィルムの中から、少なくとも一方の表面の対水接触角が60°〜75°であるものを選択し、当該表面にハードコート層を形成することにより、本発明の保護フィルムを作製する。このようにハードコート層を特定の対水接触角を有するポリエステルフィルムの表面に形成することにより、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性を高めることができる。上記対水接触角は、好ましくは65°〜75°であり、より好ましくは70°〜75°である。なお、ポリエステルフィルムの両表面の対水接触角がいずれも60°〜75°である場合、両表面の対水接触角の値は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、ハードコート層は、両表面に形成してもよいし、一方の表面のみに形成してもよい。ポリエステルフィルムの表面の対水接触角を60°〜75°とするには、ポリエステルフィルムの材質や表面状態等に応じて、先に述べたような表面処理を、その種類や条件を適宜選択して、施すのがよい。
【0024】
<ハードコート層>
ハードコート層を形成するための材料としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることができるが、生産性、硬度等の観点から紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートの単独又は2種以上と、「イルガキュアー 907」、「イルガキュアー 184」(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、「ルシリン TPO」(BASF社製)等の光重合開始剤との混合物を、紫外線硬化性樹脂とすることができる。
【0025】
ハードコート層を、表面に微細な凹凸形状を有する防眩性のハードコート層とすることにより、得られる保護フィルムを、外光の映り込みを防止する防眩フィルムとして用いることができる。ハードコート層を防眩性ハードコート層とするには、ハードコート層の内部にフィラーを分散させて表面凹凸形状を形成することも可能であり、ハードコート層にエンボス法等で表面凹凸形状を形成することも可能である。例えば紫外線硬化性樹脂を用いて防眩性ハードコート層を形成する場合は、紫外線硬化性樹脂にフィラーを分散した後、該樹脂組成物をポリエステルフィルムに塗布し、紫外線を照射してもよいし、紫外線硬化性樹脂をポリエステル樹脂フィルムに塗布し、その塗膜を金型の凹凸面に密着させた状態で、紫外線を照射してもよい。ハードコート層の厚みは、通常2μm以上20μm以下である。なお、ポリエステルフィルムの両表面にハードコート層を形成する場合、両ハードコート層は、その組成や厚みが互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、例えば、一方のハードコート層を防眩性ハードコート層とし、もう一方のハードコート層を防眩性を有しないいわゆるクリアハードコート層としてもよい。
【0026】
<低反射膜>
ハードコート層の表面には、低反射膜を有していてもよい。最表面に低反射膜を設けることにより、反射による外光の映り込みを低減することができる。低反射膜は、ハードコート層の上に、それよりも屈折率の低い低屈折率材料の層を設けることにより形成できる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、氷晶石(3NaF・AlF3又はNa3AlF6)等の無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料;フッ素系又はシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
【0027】
このような低反射膜の厚みは、通常0.01〜0.2μm、好ましくは0.08〜0.12μmである。
【0028】
<偏光板>
本発明の保護フィルムは、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性に優れ、機械的強度にも優れることから、これを偏光フィルムの保護フィルムとして用いることにより、上記同様、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性に優れ、機械的強度にも優れる偏光板となる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合された形のものが多いが、その少なくとも一方の保護フィルム、好ましくは一方の保護フィルムとして、本発明の保護フィルムを用いる。この場合、本発明の保護フィルムとしては、そのハードコート層がポリエステルフィルムの一方の表面に形成されてなるものが用いられるのが通常であり、また、ハードコート層が防眩性ハードコート層であるものが好ましく用いられる。そして、偏光フィルムと、本発明の保護フィルムとを、その保護フィルムのハードコート層側とは反対側に、すなわちポリエステルフィルム側に、偏光フィルムが配置されるようにして貼り合わせるのがよい。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、本発明の保護フィルム又は別の保護フィルムが積層されていてもよく、また画像表示素子に貼合するための粘着剤層が形成されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されてなる偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の保護フィルムをそのハードコート層側とは反対側、すなわちポリエステルフィルム側の面側で貼合して、偏光板とすることもできる。さらに、少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されてなる偏光板において、当該保護フィルムとして上記特定のポリエステルフィルムを偏光フィルムに貼合した後、ポリエステルフィルム上に上記ハードコート層を形成することにより、偏光板とすることもできる。なお、偏光フィルムと本発明の保護フィルムとは、直接接するように貼り合わされていてもよいし、他のフィルムを介して貼り合わされていてもよい。
【0029】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の保護フィルム又は本発明の偏光板と、画像表示素子とを備えるものである。ここで、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の保護フィルム又は本発明の偏光板を適用することができる。本発明の画像表示装置においては、保護フィルム又は偏光板は、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子よりも視認側に配置される。保護フィルムは、画像表示素子の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを画像表示素子とする場合は、例えば先述のように、偏光フィルムを介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。このように、本発明の保護フィルムを画像表示装置に適用した場合には、環境光に対するポリエステルフィルムとハードコート層との密着耐久性に優れるうえ、従来の保護フィルムを用いた場合よりも画像表示素子の強度が補強され、画像表示素子の反りを防止することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各例で用いたポリエステルフィルムの表面の対水接触角の測定方法、及び各例で得られた保護フィルムの密着性の評価方法は、次のとおりである。
【0031】
<ポリエステルフィルムの表面の対水接触角>
ポリエステルフィルムを、その対水接触角を測定したい表面とは逆の面で、粘着剤を用いてガラス基板に貼合し、接触角計(協和界面科学(株)製 画像処理式接触角計 FACE CA−X型)に、ガラス基板に貼合したポリエステルフィルムを、ポリエステルフィルムが上面になるようにセットし、純水を1ピコリットル滴下して接触角を測定した。この時、測定サンプルが傾いていないことを確認して行った。
【0032】
<保護フィルムの密着性>
(1)初期密着性
保護フィルムを3cm×3cmに切り出し、そのハードコート層側とは反対側の面で、粘着剤を用いてガラス基板に貼合し、ハードコート面に、カッターナイフにより1mm×1mmのマスが10個×10個となるように、切り込みを入れた。この時、切り込みがハードコート層とポリエステルフィルムとの界面に到達するようにし、また、切り込みがポリエステルフィルムの内部深くまで入らないように注意した。こうして作製した10個×10個のマス目部分にセロハンテープを貼り付け、これを剥離することによりハードコート層の剥離の有無によって密着性を評価した。剥離の際にはセロハンテープを引く角度が45°となるように引いた。こうしてクロスハッチ法によるテープ剥離試験を3回行い、全く剥離が発生しないものを○、僅かでも剥離が発生するものを×とした。
【0033】
(2)密着耐久性
保護フィルムを3cm×3cmに切り出し、そのハードコート層側とは反対側の面で、粘着剤を用いてガラス基板に貼合し、JIS B7751に準拠した紫外線ロングライフカーボンアークランプ(スガ試験機(株)製の紫外線オートフェードメーターU48SB)を用いて、JIS A1415に準拠した耐候性促進試験を行った。その際、紫外線はハードコート層側から照射し、照射時間は96時間とした。試験後の保護フィルムについて、上記(1)と同様のクロスハッチ法によるテープ剥離試験を3回行い、全く剥離が発生しないものを○、僅かでも剥離が発生するものを×とした。
【0034】
<実施例1>
ポリエステルフィルムとして、両表面の対水接触角がいずれも74°であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)社製 ルミラーU34)を用い、その一方の表面に、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)を主成分とする紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線により硬化させることにより、ハードコート層を形成した。こうして得られた保護フィルムについて、密着性の評価を行い、結果を表1に示した。なお、ハードコート層表面の対水接触角を測定したところ、86°であった。
【0035】
<比較例1>
ポリエステルフィルムとして、両表面の対水接触角がいずれも59°であるポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン(株)社製 テイジンテトロンフィルムO3PF8W)を用い、その一方の面に、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。こうして得られた保護フィルムについて、密着性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0036】
<比較例2>
ポリエステルフィルムとして、一方の表面の対水接触角が79°であり、もう一方の表面の対水接触角が58°であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)社製 E5100)を用い、その対水接触角が79°である表面に、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。こうして得られた保護フィルムについて、密着性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層が形成されてなる画像表示装置用保護フィルムであって、ポリエステルフィルムのハードコート層が形成される表面の対水接触角が、60°〜75°であることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムのハードコート層が形成される表面に表面処理が施されている請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1又は2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
ハードコート層が防眩性ハードコート層である請求項1〜3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルムの一方の表面にハードコート層が形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の保護フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる偏光板であって、偏光フィルムが保護フィルムのポリエステルフィルム側に配置されている防眩性偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の保護フィルム又は請求項6に記載の偏光板と、画像表示素子とを備え、保護フィルム又は偏光板がそのハードコート層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置されている画像表示装置。

【公開番号】特開2010−54913(P2010−54913A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221081(P2008−221081)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】