説明

画像表示装置

【課題】 生成された画像と体位情報がずれている場合の補正を容易にする。
【解決手段】 医用画像撮影装置4によって得られる被検体1の画像データを基に生成された二次元画像または三次元画像を、被検体の体位情報とともにモニタ5に表示する画像表示装置において、モニタに表示される被検体の体位情報に対して、当該画像がずれて表示されているときに、そのずれを解消させるように画像と体位情報の関係を補正する機能を備えた。
これにより、診断や手術計画の策定に際し、表示されている画像と体位情報との関係が即座に判断できるので、観察者の負担が軽減されるともに効率的な作業を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影装置によって得られる被検体の画像データを基に生成される二次元画像または三次元画像を、被検体の体位情報とともにモニタに表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮影装置として、例えばX線診断装置、X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置などが良く知られている。これらの医用画像撮影装置は、外からは見ることのできない体内の様子を画像として表示するものであり、疾病の状況や怪我の状況などが正確に観察できるので、治療方針や手術計画の策定が確実に行えるなど、医療施設にとっては欠くことのできないものとなっている。また、コンピュータ技術にも支えられて、X線CT装置や磁気共鳴イメージング装置で収集したデータを基に、リアルタイムで画像を再構成してモニタに表示することが可能であり、さらに二次元画像を表示するのみではなく、画像を任意多断面変換画像(MPR画像)など三次元的に表示することも可能である。このように画像を三次元的に表示することによって、病変の位置が特定し易くなるので手術計画などの策定に極めて効果を発揮することとなって、その進展はとどまることがない。
【0003】
ところで、X線CT装置や磁気共鳴イメージング装置などの医用画像撮影装置によって被検体の医用画像を得ようとする場合は、図6に模式的に示すように、通常被検体1を寝台装置2の天板3に水平に寝かせておき、そのままの状態で天板3とともに被検体1を矢印方向へスライドさせて、医用画像撮影装置4の所定の撮影位置へ送り込み画像データを収集する。この画像データを収集することを通常「撮影」と呼んでいる。ここで、被検体1の体位情報の表し方として、図7に示すように、被検体1を正面(矢印方向)から見て、観察者の左側をR、右側をLと表示し、また、被検体1の背中側をP、腹側をAと表示する。
【0004】
そして、図6で説明したように、医用画像撮影装置4によって被検体1の例えば頭部を撮影し、収集した画像データを基に、図示しない画像処理装置において画像再構成を行って、形成した横断層像を画像表示装置のモニタ5に表示しようとすると、このモニタ5に表示される画像は、模式的に示すと図8のようなものとなる。すなわち、ここで1aは頭部の断面画像であり、この断面画像1aとともにその脇に体位情報としてA、R、P、Lの文字が表示される。
【0005】
なお、体位情報は厳密な角度情報を表すものではなく、大まかな方向を示すものである。さらに、点線で示した座標軸は画面の説明用として示したものであり、通常この座標軸はモニタ5には表示されない。また、体位情報としては通常RとPが表示されAとLは省略されることが多い。その理由は、左右の一方または腹と背の一方がわかれば他方は明らかなことから、モニタ5の画面にはいろいろな参考情報が表示されるので、できるだけ画面が見易くなるように表示項目をシンプルにするためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、モニタ5に表示される画像と被検体1との関係を示すA、R、P、Lなどの体位情報は、画像撮影時の寝台装置2で決まる座標や方向余弦に基づき一義的に計算されることになる。そのため、被検体1が天板3の上に水平に寝られる場合は問題ないものの、被検体1の病気や怪我の状況によっては、天板3上に斜めに寝ざるをえない場合もある。このようなときには、生成された画像と体位情報がずれてしまうことになる。
【0007】
図9は、天板3に対して例えば40度程度傾いた状態で撮影された被検体1の頭部の断面画像1aを模式的に示したものである。なおこの図9でも、点線で示した座標軸は説明用として示したものであり、通常この座標軸は表示されるものではない。この図から明らかなように、実際に表示された断面画像1aに対し、画面に表示される体位情報の関係にかなりのずれが生じている。そのため、この画像を観察する医師などの観察者は、診断や手術計画を行う際に自分の頭の中で、表示されている画像と位置情報とを補正して確認する必要があり、観察者に大きな負担を強いるものとなっていた。
【0008】
本発明は、このような観察者の負担を軽減することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、医用画像撮影手段によって得られる被検体の画像データを基に生成された二次元画像または三次元画像を、前記被検体の体位情報とともにモニタに表示する画像表示装置において、前記モニタに表示される被検体の体位情報に対して、前記二次元画像または三次元画像がずれて表示されているときに、そのずれを解消させるように前記二次元画像または三次元画像を回転させるとともに、画像回転後の体位情報を計算し直して新たな体位情報として前記モニタに表示させる機能を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像表示装置において、前記回転された二次元画像または三次元画像とともに前記モニタに表示する新たな体位情報は、画像回転後の体位情報であることが識別可能のように表示することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像表示装置において、前記回転された前記二次元画像または三次元画像とともに前記モニタに表示する新たな体位情報と一緒に元の体位情報を表示可能とし、或いは新たな体位情報と元の体位情報とを切替えて表示可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置において、前記回転された前記二次元画像または三次元画像に対して補正された新たな体位情報は、DICOMの画像付帯情報として保存することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置において、前記二次元画像または三次元画像を回転させる範囲は、プラス45度とマイナス45度の間の所望範囲内に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、診断や手術計画を行うときに、画像と体位情報とのずれた画面を見ながら、観察者の頭の中で体位を補正する必要がなくなり、表示されている体位情報から即座に判断できるので、観察者の負担が軽減されるともに効率的な作業を実現できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、画像回転後の体位情報であることが容易に識別できるので、観察者に誤解を与えるのを防止して、精度の高い診断や手術計画の策定を行うことができるとともに、勘違いなどによるミスの発生を防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、画像回転後の体位情報と元の体位情報との対比が容易となり、体位情報の判断がより容易となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、他の画像処理ワークステーションに体位補正後の画像を転送したような場合でも、転送されて来た画像処理ワークステーションででも、同様の表示が可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、過大に画像を回転させることが防止できる。よって、体位情報を間違って補正することが防止され、手術計画策定におけるミスも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る画像表示装置の一実施例について、図1ないし図5を参照して詳細に説明する。なお、図1は、本発明を段階的に動作を追って説明するために示したフローチャートであり、図2ないし図5は、主要動作ステップにおいて、画像表示装置のモニタに表示される画面の状態を説明するために示した図である。これらの図において、図6ないし図9と同一部分には同一符号を附して示してある。
【0021】
先ず、天板3に寝ている被検体1の例えば頭部を、X線CT装置や磁気共鳴イメージング装置などの医用画像撮影装置4によって撮影して画像データを取得するものとする(ステップ1)。このとき、被検体1が怪我や病気などのために、頭部を天板3に対して例えば40度程度傾いた状態でしか寝かせることができず、その状態で撮影が行われたものとする。そして、撮影により得られたデータを画像再構成した結果の断面画像1aが、モニタ5に表示される(ステップ2)。このモニタ5に表示される断面画像1aは、図9と同様の図2に示すとおりであり、モニタ5には断面画像1aとともに仮想的に点線で示した座標軸に対応して体位情報R、Pも表示される。なお、図2には、座標軸を説明の便宜上点線で表示したが、実際の画面にこの座標軸は表示されない。
【0022】
次に、図2のままだと、実際に表示された断面画像1aと体位情報R、Pとの関係がかなりずれていて診断がし難いので、診断時に通常医師などの観察者が画像を観察する向きになるように、断面画像1aを矢印6で示すように反時計方向へ回転させて画面上正しい位置になるように調整する(ステップ3)。すなわち、この実施例では、顔の正面が上を向くように調整しており、モニタ5に表示されている断面画像1aを見ながら、操作つまみなどを操作して、頭部が傾いていた角度分だけ、矢印6で示すように反時計方向へ断面画像1aを回転させる。この画像を回転させる技術は当業者にはよく知られている技術である。なお、この画像を回転することのできる角度を、例えばプラス45度〜マイナス45度の範囲のように、ある範囲内に限るようにしておけば、体位情報を間違って補正することが防止され、手術計画策定におけるミスも防止できる。
【0023】
図3は、断面画像1aを回転させることにより、被検体の顔の正面が上を向くようにしたときの、モニタ5に表示される断面画像1aを示したものである。この状態における体位情報は、図3に例示するように、画像の下方向は実際にはPとRのほぼ中間なのでPR、画像の右方向はRとAのほぼ中間なのでRAとなるはずである。同様に、画像の上方向はAL、右方向はLPとなるはずである。
【0024】
そこで、ステップ3により画像を回転させた後、対話画面を使って体位補正操作を行う。すなわち、断面画像1aを回転させて所望の向きにした後で、例えば画像表示装置の対話画面上などにある体位補正ボタン(ゼロクリアボタン)をクリックすることによって、回転後の画像と原画像との体位情報のずれを計算して、新たな体位情報を得る(ステップ4)。そしてその結果として、図4に示すように、表示される画像と体位情報とが正しくなるように、新しい体位情報が断面画像1aの下側にはP窒ニ表示され、断面画像1aの左側にはR窒ニ表示される。
【0025】
なおこの実施例では、補正後の体位情報を従来の体位情報R、Pに「秩v記号を付して表すことにより、観察者に対して補正後の体位情報であることを分かり易くしている。ただし、文字を変える他に文字の色変えて表示するようにしてもよい。このように、補正後の体位情報を、原画像の体位情報の表示とは異なる形で表示することにより、画像を観察して診断や手術計画をする医師に対して、補正後の画像であることの注意を促すようにしたので、精度の高い診断や手術計画の策定を行うことができるとともに、勘違いなどによるミスの発生を防止することができる。
【0026】
また、ステップ4にて得た新しい体位情報に変更しようとするときは、登録操作が必要となる。そのときは、観察者(操作者)が登録ボタンをクリックする(ステップ5)ことになるが、登録ボタンがクリックされると、例えば図5に示すような対話画面を表示し、観察者(操作者)に対して変更を登録するか否かの意思を確認するようにしている(ステップ6)。従って、ステップ6としてOKボタンが押されれば登録操作を実行(ステップ7)して終了となり、キャンセルボタンが押されたときは登録操作の実行が中止され、ステップ3へ戻って画像の回転をやり直す。このようにして、間違えた登録がされないようにより一層の注意が払われている。
【0027】
本発明は上述の実施例に限定されることなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することができる。例えば、表示される画像が二次元画像に限られることはなく、三次元画像であっても良い。すなわち、原画像が基準座標に対して三次元的に傾いたものであるときに、その画像を三次元的に回転させることによって傾きを補正して通常の向きに変え、その後原画の体位情報を計算し直すことによって、補正後の画像に対する体位情報を得ることができる。また、補正された体位情報は、DICOM(医療におけるデジタル画像と通信規格)の画像付帯情報として保存すれば、他の画像処理ワークステーションに体位補正後の画像を転送したような場合でも、転送されたその画像処理ワークステーションででも、同様の表示が可能となる。
【0028】
さらに、画像回転手段によって回転された二次元画像または三次元画像とともに表示する体位情報として、画像回転後の体位情報と元の体位情報とを、一緒にまたは切替えて表示できるようにしても良い。これにより、画像回転後の体位情報と元の体位情報との対比が容易となり、観察者が体位情報に疑問を感じたような場合でも、その確認や判断がより容易となる。
【0029】
さらにまた、本発明において取扱われる画像は、医用画像撮影装置で取得した後ほぼリアルタイムに処理されたものに限られるものではなく、記憶装置などの画像保管装置に記録されている画像を読み出して処理することも可能なことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像表示装置の一実施例の動作を段階的に説明するために示したフローチャートである。
【図2】原画像の一例を示した説明図である。
【図3】原画像を正しい方向へ回転させた様子を示した説明図である。
【図4】体位補正後の表示画像の一例を示した説明図である。
【図5】登録のための確認対話画面の一例を示した説明図である。
【図6】医用画像撮影装置によって被検体の医用画像を得る場合の様子を模式的に示した説明図である。
【図7】被検体の体位情報の表し方を示した説明図である。
【図8】被検体の頭部の断面画像の一例を模式的に示した説明図である。
【図9】傾いた状態で撮影された被検体の頭部の断面画像の一例を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 被検体
1a 断面画像
5 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮影手段によって得られる被検体の画像データを基に生成された二次元画像または三次元画像を、前記被検体の体位情報とともにモニタに表示する画像表示装置において、
前記モニタに表示される被検体の体位情報に対して、前記二次元画像または三次元画像がずれて表示されているときに、そのずれを解消させるように前記二次元画像または三次元画像を回転させるとともに、画像回転後の体位情報を計算し直して新たな体位情報として前記モニタに表示させる機能を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記回転された二次元画像または三次元画像とともに前記モニタに表示する新たな体位情報は、画像回転後の体位情報であることが識別可能のように表示することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記回転された前記二次元画像または三次元画像とともに前記モニタに表示する新たな体位情報と一緒に元の体位情報を表示可能とし、或いは新たな体位情報と元の体位情報とを切替えて表示可能としたことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記回転された前記二次元画像または三次元画像に対して補正された新たな体位情報は、DICOMの画像付帯情報として保存することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記二次元画像または三次元画像を回転させる範囲は、プラス45度とマイナス45度の間の所望範囲内に制限することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246937(P2006−246937A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63855(P2005−63855)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】