説明

画像表示装置

【課題】 蛍光体層の帯電を防止でき、蛍光体層の発光強度を増大させるとともに、コントラストを向上させる。
【解決手段】 光透過性のフェースプレート2の内面に形成された蛍光体層8と、フェースプレート2の内面に蛍光体層8を各色蛍光体層8r,8g,8bに区画して形成されたブラックマトリクス膜6と、蛍光体層8に対向して配置され、且つ蛍光体層8に電子線13を出射する電子線源12と、フェースプレート2の画像表示側から見たブラックマトリクス膜6の面積占有率を60%乃至95%の範囲に設定することにより、各色蛍光体層8r,8g,8bとブラックマトリクス膜6との接触面積を増大させることで、各色蛍光体層8r,8g,8bの電子線13の照射に起因する帯電が抑制される。また、好ましくは、ブラックマトリクス膜6の表面に金属層7を積層させることにより、各色蛍光体層8r,8g,8bと金属層7との接触面積をより増大させることで、各色蛍光体層8r,8g,8bの電子線13の照射に起因する帯電がさらに抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係り、特にフェースプレートの内面に形成したブラックマトリクス膜により、蛍光体層の帯電を抑制し、高輝度化,高コントラスト化及び長寿命化を図った画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に画像表示装置に代表される例えばカラー陰極線管は、外囲器の前面部を構成するフェースプレートの内面にはブラックマトリクス膜,蛍光面,メタルバック膜,シャドウマスクなどが順次配設されている。また、外囲器のネック部には内部に電子銃が配設され、さらに、その外部には偏向ヨークが配設され、電子銃から放出される電子ビームを偏向ヨークによる磁界によって偏向させ、シャドウマスクを介して蛍光面を走査させることにより、蛍光面上に画像を表示するように構成されている。
【0003】
近年、このように構成されるカラー陰極線管の輝度及びコントラスト等の画像特性を向上させる手段として、下記「特許文献1」には、フェースプレートのパネル内面に光学フィルタ層を有するカラー陰極線管において、このフィルタ層と蛍光体層との間にITO(酸化インジウム錫)またはATO(酸化アンチモン錫)等の透明導電性膜を配設することによって、蛍光体層の帯電に起因する発光輝度の低下を防止し、輝度及びコントラスト等の表示特性を向上させたカラー陰極線管が開示されている。
【0004】
また、下記「特許文献2」には、フェースプレートのパネル内面にブラックマトリクス膜を有する蛍光面と、メタルバック膜と、シャドウマスクとが配設されたカラー陰極線管において、パネル内面に密着してSnO2(酸化錫)等の透明導電性膜を配設することによって、蛍光体層表面の帯電性を改善し、輝度及びコントラスト等の表示特性を向上させたカラー陰極線管が開示されている。
【0005】
また、下記「特許文献3」には、パネル内面に相当する基板上にストライプ状に形成された透明電極と、この透明電極上にストライプ状に形成された蛍光体薄膜と、この蛍光体薄膜上に形成された帯電防止膜とを備え、透明電極及び蛍光体薄膜をストライプ状の無発光壁により分離させることにより、高精細な蛍光体薄膜を容易に形成可能とし、これによって、小型,高精細の電界放出型蛍光表示装置を実現可能とする蛍光体薄膜及びその製造方法が開示されている。
【0006】
また、下記「特許文献4」には、蛍光体スクリーンを構成する一画素領域の蛍光体形成部を、基板側から見たときの投影面積よりも大きな表示面となるように凹んだ形状を形成するために、ブラックマトリクス膜を黒鉛とアルミナとの二層構造で構成した画像表示装置が開示されている。
【0007】
さらに、下記「特許文献5」には、ブラックマトリクス膜と、このブラックマトリクス膜上に設けられた光反射膜と、ブラックマトリクス膜の間隙を埋めるように設けられた多数の蛍光体膜と、光反射膜及び蛍光体膜上に設けられた背面光反射膜とからなる蛍光体スクリーン面がパネル内面に形成され、背面光反射膜は蛍光体膜と隣接する蛍光体膜とを隔離するように蛍光体膜を覆い、蛍光体膜と接する側の表面に微細な凹凸を形成し、蛍光体発光取り出し効率を向上させた陰極線管及びその製造方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−224616号公報
【特許文献2】特開平8−315748号公報
【特許文献3】特開平10−116568号公報
【特許文献4】特開2001−216925号公報
【特許文献5】特開平11−339683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」及び「特許文献2」に記載のカラー陰極線管では、透明導電性膜はITO(酸化インジウム錫),ATO(酸化アンチモン錫)またはSnO2(酸化錫)等を主成分としているので、これらの物質は電子線照射により、褐色の着色が顕著に発生し、その着色部分が着色層に変現する。この着色層はそのフィルタ効果によって使用時間の増大に伴って蛍光体層の発光輝度を減少させてしまうという課題があった。
【0010】
また、「特許文献3」に記載の蛍光体薄膜では、通常用いられる印刷技術による蛍光体薄膜は、蛍光体パターン幅を小さく形成することは困難であるとともに、蛍光体パターン幅を精密に制御することが困難である。例えば約10μm以下のパターン幅を形成することは困難であった。一般的な低速電子線用蛍光体は、その粒径は数μm以上の大きさを有しているので、蛍光体粉末粒子の微細化に伴う発光効率の低下及び不純物が発生し易いという課題があった。さらに電子線照射による蛍光体薄膜の帯電が発生し易いという課題があった。
【0011】
したがって、本発明は、前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、フェースプレートの画像表示面側から見たブラックマトリクス膜の面積占有率を設定し、蛍光体層とブラックマトリクス膜との接触面積を増大させることにより、蛍光体層の帯電を抑制し、輝度及びコントラスト等の表示特性を向上させることができる画像表示装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ブラックマトリクス膜の表面に面抵抗値の小さい金属層を設けることにより、電子線を有効に利用し、輝度及びコントラスト等の表示特性を向上させることができる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために本発明による画像表示装置は、光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、フェースプレートの内面に形成された蛍光体層と、フェースプレートの内面に蛍光体層を区画して形成されたブラックマトリクス膜と、真空外囲器内に蛍光体層に対向して配置され、且つ蛍光体層に電子線を出射する電子線源と、フェースプレートの画像表示面側から見たブラックマトリクス膜の面積占有率を60%乃至95%の範囲に設定することにより、蛍光体層とブラックマトリクス膜との接触面積を増大させることで、電子線照射に起因する蛍光体層の帯電が抑制されるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0014】
また、本発明による他の画像表示装置は、蛍光体発光光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、フェースプレートの内面に形成された蛍光体層と、フェースプレートの内面に蛍光体層を区画して形成されたブラックマトリクス膜と、真空外囲器内に蛍光体層に対向して配置され、且つ蛍光体層に電子線を出射する電子線源と、フェースプレートの画像表示側から見たブラックマトリクス膜の面積占有率を83%乃至94%の範囲に設定することにより、蛍光体層とブラックマトリクス膜との接触面積を増大させることで、電子線照射に起因する蛍光体層の帯電が抑制されるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
また、好ましくは、上記構成において、ブラックマトリクス膜の少なくとも一面に金属層が形成され、蛍光体層の上面にメタルバック膜が形成されていることにより、蛍光体層とブラックマトリクス膜との接触面積をより増大させることで、電子線照射に起因する蛍光体層の帯電がさらに抑制されるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0016】
また、好ましくは、上記構成において、金属層の面抵抗値をメタルバック膜の面抵抗値よりも小さくすることで、金属層の電圧降下が少なくなり、電子はフェースプレートの内面側に引き付けられて蛍光体層の奥深くまで侵入することになり、電子を有効に利用できるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0017】
また、好ましくは、上記構成において、金属層の面抵抗値がメタルバック膜の面抵抗値の50%以下とすることで、金属層の電圧降下が少なくなり、電子はフェースプレートの内面側に引き付けられて蛍光体層の奥深くまで侵入することになり、電子を有効に利用できるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0018】
また、上記構成において、電子源側に形成されたメタルバック膜の厚さがブラックマトリクス膜上に形成された金属層の厚さよりも薄くすることで、金属層の電圧降下が少なくなり、電子はフェースプレートの内面側に引き付けられて蛍光体層の奥深くまで侵入することになり、電子を有効に利用できるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0019】
なお、本発明は、前記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明による画像表示装置によれば、蛍光体層とブラックマトリクス膜との接触面積を増大させることにより、電子線照射に起因する蛍光体層の帯電を防止でき、蛍光体層の発光強度を増大させることができるとともに、コントラストも同時に向上させることができるので、高輝度、且つ高コントラストの表示画像が得られるなどの極めて優れた効果を有する。
【0021】
また、本発明による画像表示装置によれば、ブラックマトリクス膜の少なくとも一面に金属層を設けたことにより、蛍光体層の帯電防止効果をさらに向上させることができるので、より高輝度、且つ高コントラストの表示画像が得られるなどの極めて優れた効果を有する。
【0022】
また、本発明による画像表示装置によれば、金属層の面抵抗値をメタルバック膜の面抵抗値よりも低くすることにより、金属層の電圧降下が少なくなり、電子線が蛍光体層の奥深くまで侵入し、電子拡散させることができるので、電子線を有効に利用でき、これによって高輝度、且つ高コントラストの表示画像が得られるなどの極めて優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明による画像表示装置の実施例1による電界放出型ディスプレイパネルの構成を説明する概略断面図である、図1において、1は前面ガラスパネル部、2はフェースプレート、3は背面パネル部、4は封着枠部、5は蛍光面、6はブラックマトリクス膜、7は金属層、8は蛍光体層、9はメタルバック膜、10は封着部材、11は電子放出素子群、12は電子線源、13は電子線源12から投射される電子線、14は電界放射型ディスプレイパネルである。
【0025】
この電界放射型ディスプレイパネル14を構成するガラス製の真空外囲器(バルブ)は、蛍光体発光光透過性のフェースプレート2を有する前面ガラスパネル部1と、内部に電子線源12を形成した背面パネル部3と、前面パネル部1と背面パネル部3とを連接する封着枠部4とから構成されている。
【0026】
前面ガラスパネル部1は、フェースプレート2のパネル内面に形成されたブラックマトリクス膜6,金属層7及び蛍光体層8の3層構造からなる蛍光面5と、この蛍光面5上に形成されたメタルバック膜9とを有して形成されている。
【0027】
また、背面パネル部3の内側には、電子放出素子群11が形成され、電子線源12から放射された電子線13は蛍光面5に衝突する。
【0028】
図2〜図4は、図1に示した電界放出型ディスプレイパネルのフェースプレート2のパネル内面に形成された蛍光面5の一部Aの具体的構造を示す図であり、図2はその拡大断面図,図3は画像表示面側から見た拡大平面図,図4は電子線源側から見た拡大平面図である。前述した図1と同一部分には同一符号を付してある。図2において、蛍光面5が形成されるフェースプレート2のパネル内面上には、後述する各色蛍光層の発光光取り出し口とする開口幅W1=約20μmのストライプ状の開口6oを有するブラックマトリクス膜6がW2=約150μmの幅で交互に繰り返して形成されている。
【0029】
このブラックマトリクス膜6は、図3に示すようにフェースプレート2の画像表示領域内に面積占有率で60%〜98%の範囲に設定されて形成されている。また、このブラックマトリクス膜6上には図2及び図4に示すように導電性の高いアルミニウム材からなる金属層7が約100nmの厚さで被着形成されている。この場合、ブラックマトリクス膜6の各開口6o内にはフェースプレート2のガラスパネル内面が露出されており、金属層7が形成されていない。したがって、金属層7の各開口もブラックマトリクス膜6の各開口6oにアライメントされて同一形状で形成されている構造となっている。
【0030】
また、この金属層7上には、図4に示すように幅W1=約20μmの各開口6oを広範囲に覆うようにW3=約120μmの幅で赤,緑,青の各色蛍光体層8r,8g,8bがストライプ状に配列して形成され、各蛍光体層8r,8g,8bに電子ビーム13が衝突することにより、蛍光面5の各色蛍光体層8r,8g,8bがそれぞれ対応する色を発光させて画像表示が行われる。
【0031】
次にこのように構成される蛍光面5の形成方法について詳細に説明する。まず、フェースプレート2のガラスパネル内面上にポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウムとを主成分とする感光剤を塗布して感光膜を形成する。次にマスクを用いて幅W1=約20μmの感光硬化層がW2=約150μmの間隔でストライプ状に配置されるように紫外線を照射し、現像する。次にガラスパネル内面上に黒鉛スラリーを塗布し、乾燥させてブラックマトリクス膜6を形成した。
【0032】
続いて真空蒸着法によりブラックマトリクス膜6上にアルミニウム材からなる金属層7を約100nmの厚さに形成する。次にこのフェースプレート2を過酸化水素水に浸して感光硬化層を膨潤させて温水スプレーにより洗い流す。この際、感光硬化層上に形成されているブラックマトリクス膜6及び金属層7は感光硬化層とともに洗い流される。したがって、フェースプレート2のガラスパネル内面上にはブラックマトリクス膜6と金属層7とが積層された層がW2=約150μmの幅,W1=約20μmの間隔で残っており、間隙であるW1=約20μmの部分はフェースプレート2のパネル内面が剥き出しとなって開口6oが形成されている。
【0033】
続いて各色蛍光体ペーストを印刷法により幅W1=約20μmの開口6oを中心としてW3=約120μmの幅で印刷した。この場合、開口6oの両端部から幅約50μmの部分には金属層7上に蛍光体層8(8r,8g,8b)が積層される構造となる。続いてアクリルエマルジョンを蛍光体層8上に塗布し、フィルミング膜を形成し、乾燥させる。この際、アクリルエマルジョンの粘度及び乾燥速度を制御して蛍光体層8が存在していない金属層7上の少なくとも一部分にはアクリルエマルジョンが到達しないようにする。
【0034】
次に真空蒸着法によりアルミニウム製のメタルバック膜9をフィルミング膜及び金属層7上に形成した後、パネルベークを行い、前面ガラスパネル部1を得る。この場合、表示面側から見たブラックマトリクス膜6の面積占有率は、幅W2/(幅W1+幅W2)=88.2%となる。このようにして得られた前面ガラスパネル部1は封着枠部4及び電子線源12を形成した背面パネル部3と接合して、真空排気が行われて電界放射型ディスプレイパネルが完成した。
【0035】
図5及び図6は、比較例として現行のディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の具体的構造を示す図であり、図5はその要部拡大断面図,図6は電子銃側から見た拡大平面図である。前述した図と同一部分には同一符号を付してある。これらの図において、蛍光面を形成するフェースプレート2のパネル内面上には、各色蛍光体層8r,8g,8bの発光光取り出し口とする開口幅W1=約120μmのストライプ状の開口6oを有するブラックマトリクス膜6がW2=約50μmの幅で交互に繰り返して形成された前面ガラスパネル部1を作製する。
【0036】
なお、各色蛍光体層8r,8g,8bの幅W4は約140μmであり、各色蛍光体8r,8g,8bの両端部の約10μmがブラックマトリクス膜6上に乗り上げて形成されている。この場合、画像表示面側から見たブラックマトリクス膜6の面積占有率は、幅W2/(幅W1+幅W2)=29.4%となる。このようにして得られた前面ガラスパネル部1は封着枠部4及び電子線源12を形成した背面パネル部3と接合して、真空排気が行われてディスプレイパネルが完成した。
【0037】
実施例1で作製したディスプレイパネル及び比較用に作製した現行のディスプレイパネルを駆動させ、輝度を測定した結果、実施例1のディスプレイパネルは、現行のディスプレイパネルの輝度を100%とすると、約102%となっていた。また、実施例1のディスプレイパネルは、コントラストも飛躍的に向上し、現行のディスプレイパネルのコントラストを1.0とすると、約2.4倍となっていた。実施例1によるディスプレイパネルのコントラストが向上した理由は、画像表示面側から見たブラックマトリクス膜6の面積占有率が増大したことに起因している。また、輝度が向上した理由は、蛍光体層8の帯電が抑制され、より有効に電子線13が利用されたことに起因していることが明らかとなった。
【0038】
なお、前述した実施例1において、フェースプレート2のパネル内面上にストライプ状の開口6oを有するブラックマトリクス膜6を形成した後、さらにこのブラックマトリクス膜6上に金属層7を形成し、この金属層7の開口上に各蛍光体層8r,8g,8bを形成した場合について説明したが、図7の要部拡大断面図に示すようにストライプ状の開口6oを有するブラックマトリクス膜6の各開口6o上に各蛍光体層8r,8g,8bを形成することにより、各蛍光体層8r,8g,8bとブラックマトリクス膜6とが接する接触面積が増大されるので、電子線13の照射による蛍光体層8r,8g,8bの帯電を抑制することができる。この場合、ブラックマトリクス膜6は導電性の高い黒鉛等の光吸収物質を用いて形成される。
【0039】
また、前述した実施例1において、ブラックマトリクス膜6の形成はフォトリソグラフィー法を利用したが、印刷法による形成も可能である。また、このブラックマトリクス膜6はストライプ状に形成した場合について説明したが、ドット抜け状または格子状に形成しても良い。
【実施例2】
【0040】
フェースプレート2のパネル内面上に形成するブラックマトリクス膜6の幅W2を下記表1に示すように約50μmから約167μmまでの範囲まで変化させた前面ガラスパネル部1を実施例1と同様の手法で作製し、ディスプレイパネルとして完成させた。完成した各ディスプレイパネルの輝度及びコントラストの測定値を表1に示す。表1から明らかなようにコントラストはブラックマトリクス膜6の面積占有率の増加に伴って増加した。また、輝度は面積占有率約60%以上で約95%以下の領域内で向上し、特に約82.4%以上で約94.1%以下の領域内ではその度合いが大きいことが確認された。
【0041】
【表1】

【実施例3】
【0042】
フェースプレート2のパネル内面上に実施例1の記載の手順によりブラックマトリクス膜6を形成した。続いてこのブラックマトリクス膜6上にアルミニウム材の金属層7を真空蒸着法により形成したが、その際、金属層7の厚さが約50μm,約100μm,約150μm,約200μm,約300μm,約500μmである6種類の前面ガラスパネル部1を作製した。これらの前面ガラスパネル部1を封着枠部4及び電子線源12を形成した背面パネル部3と接合させ、真空排気を行ってディスプレイパネルとして完成させ、その評価を実施例1に準じて行った。その比較結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から明らかなように金属層7の厚さの増加に伴い、輝度が上昇した。これは金属層7の厚さを増大させ、その抵抗値を少なくすることで金属層7の形成する電位がよりパネル内面印加電位に近くなり、照射される電子線13がより前面ガラスパネル部1側に拡散され易くなる。
【0045】
図8は、前述した金属層7を形成したことによる蛍光体層8内への電子線13の拡散性向上効果が得られる理由について説明する前面ガラスパネル部1の要部拡大断面図であり、図8(a),(b)は従来構成を、図8(c)は本発明による構成をそれぞれ示している。なお、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図8において、金属層7の面抵抗値R7、蛍光体層8の面抵抗値をR8、メタルバック膜9の面抵抗値をR9、透明導電膜15の面抵抗値をR15とする。
【0046】
また、金属層7の一端から一定の距離まで離れた点Aに流れる電流をI7、蛍光体8の同じく点Aに流れる電流をI8、透明導電膜15の同じく点Aに流れる電流をI15、メタルバック膜9に流れる電流をI9、各点Aにおける電位をVaとし、ブラックマトリクス膜6にはアノード電圧E(E>0)が印加されている。
【0047】
なお、参考までにブラックマトリクス膜6の面抵抗値R6は膜厚約1μmで1000〜100000Ω、メタルバック膜9の面抵抗値R9は膜厚100nmで約0.5Ω、透明導電膜15の面抵抗値R15は膜厚約150nmで約10Ω程度である。
【0048】
フェースプレート2のパネル内面上に形成された金属層7の面抵抗値R7をメタルバック膜9の面抵抗値R9よりも低く設定させている。これによって電子線13が照射された時には、金属層7に電流I7が、メタルバック膜9に電流I9がそれぞれ流れる。その際に金属層7及びメタルバック膜9の何れにも電圧降下が発生し、実効アノード電圧Eが低下するが、金属層7の抵抗値R7を低く設定することで金属層7の電圧降下の方が少なくなり、金属層7の電位をメタルバック膜9の電位よりも高電位に保つことができるので、電子e-がパネル内面側に引き付けられて図8(c)に示すように蛍光体8の膜厚の奥深くまで侵入し、拡散されることになり、電子e-をより有効に利用することができる。その比較結果を下記表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
なお、金属層7とメタルバック膜9への電流分配は、蛍光体層8の抵抗値R8が金属層7の抵抗値R7及びメタルバック膜9の抵抗値R9に比べて極めて高いので、蛍光体層8内への電子拡散分布により支配される。
【0051】
図9は、本発明に係る電界放射型ディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面のさらに他の実施例による構成を示す要部拡大断面図であり、前述した図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図9において、図2と異なる点は、各蛍光体層8r,8g,8bが接触する金属膜7及びブラックマトリクス膜6の2層構造にはこの2層構造を貫通する開口径の小さい複数の小穴6hが穿設されている。
【0052】
なお、これらの複数の小孔6hは、ブラックマトリクス膜6に形成されるストライプ状の開口6oの形成工程と同時工程で形成することができる。このような構成においては、複数の小孔6hを設けたことにより、各小孔6hを通過する各蛍光体層8r,8g,8bの発光光量が増大するので、輝度をさらに向上させることができる。
【0053】
なお、前述した各実施例においては、画像表示装置として電界放射型ディスプレイパネルを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カラー陰極線管(CRT)などに適用しても前述と全く同等の効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による画像表示装置の一実施例による電界放出型ディスプレイパネルの構成を示す要部断面図である。
【図2】図1の電界放射型ディスプレイパネルのA部を示す拡大断面図である。
【図3】図1の電界放射型ディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の画像表示面側から見た拡大平面図である。
【図4】図1の電界放射型ディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の構成を示す電子源側から見た拡大平面図である。
【図5】現状のディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の構成を示す要部拡大断面図である。
【図6】現状のディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の構成を示す電子源側から見た拡大平面図である。
【図7】本発明に係る電界放射型ディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面の他の実施例による構成を示す要部拡大断面図である。
【図8】金属層を形成した蛍光体内への電子線の拡散性向上効果が得られる理由を説明するガラスパネル部の要部拡大断面図である。
【図9】本発明に係る電界放射型ディスプレイパネルのフェースプレートの内面に形成された蛍光面のさらに他の実施例による構成を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・前面パネル部、2・・・フェースプレート、3・・・背面パネル部、4・・・封着部、5・・・蛍光面、6・・・ブラックマトリクス膜、6o・・・開口、6h・・・小孔、7・・・金属層、8・・・蛍光体層、8r・・・赤色発光蛍光体層、8g・・・緑色発光蛍光体層、8b・・・青色発光蛍光体層、9・・・メタルバック膜、10・・・封着部材、11・・・電子放出素子群、12・・・電子線源、13・・・電子線、14・・・電界放射型ディスプレイパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に形成された蛍光体層と、
前記フェースプレートの内面に前記蛍光体層を区画して形成されたブラックマトリクス膜と、
前記真空外囲器内に前記蛍光体層に対向して配置され、且つ当該蛍光体層に電子線を出射する電子線源と、
を備え、
前記フェースプレートの画像表示面側から見た前記ブラックマトリクス膜の面積占有率を60%乃至95%の範囲とすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
光透過性のフェースプレートを有する真空外囲器と、
前記フェースプレートの内面に形成された蛍光体層と、
前記フェースプレートの内面に前記蛍光体層を区画して形成されたブラックマトリクス膜と、
前記真空外囲器内に前記蛍光体層に対向して配置され、且つ当該蛍光体層に電子線を出射する電子線源と、
を備え、
前記フェースプレートの画像表示面側から見た前記ブラックマトリクス膜の面積占有率を83%乃至94%の範囲とすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記ブラックマトリクス膜の少なくとも一面に金属層が形成され、前記蛍光体層の上面にメタルバック膜が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記金属層の面抵抗値が前記メタルバック膜の面抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記金属層の面抵抗値が前記メタルバック膜の面抵抗値の50%以下とすることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記金属層の厚さが前記メタルバック膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−4804(P2006−4804A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180925(P2004−180925)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】