説明

画像表示装置

【課題】温湿度変化又は長期使用によって、偏光板のクロスニコル配置がずれることに起因して生じる光漏れが軽減された画像表示装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2の基板(12a,12b)と、第1及び第2の基板の間に配置され、黒表示時にλ/2波長になる液晶層(10)とを含む液晶セル(LC)、ならびに前記第1及び第2の基板にそれぞれ隣接して配置された、少なくとも偏光子(14a,14b)を含むとともに、互いに異なる第1及び第2の積層体(ML1,ML2)を有する画像表示装置であって、前記第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションが互いに等しいことを特徴とする画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ディスプレイ等の画像表示装置に関する。とりわけ、パソコン用モニター、テレビ等に用いられる液晶表示装置として有用な画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等の多くの種類の画像表示装置が開発されている。透過型液晶表示装置を例にとると、透過型液晶表示装置は、ガラス基板に液晶を封入した液晶セルと、その両側に偏光を作り出す偏光板とを有し、必要に応じて、液晶セルの複屈折を補償する光学補償フィルムを、偏光板と液晶セルとの間に有する。上下の偏光板は、その偏光軸を互いに直交にして配置され、即ち、クロスニコル配置になっているが、クロスニコル配置からの光軸のずれに起因する光漏れが問題となっている。
特許文献1には、偏光板の信頼性試験後の光軸のずれを軽減するのに寄与する粘着剤組成物が提案されている。
また、特許文献2には、長時間使用時の偏光板の収縮現象による応力を減少させて、光漏れを減少させるのに寄与する偏光板用アクリル系感圧接着剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特開平9−137143号公報
【特許文献2】特表2004−516359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来提案されている上記特許文献1及び2に記載の接着剤組成物を用いても、偏光板のクロスニコル配置からの軸ずれによる光漏れを完全に解消することはできない。特に、大画面用の画像表示装置では、わずかな光漏れが、表示ムラとなって顕在化するので、偏光板のクロスニコル配置からの軸ずれをより正確に補償する技術が必要である。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものでああって、温湿度変化又は長期使用によって、偏光板のクロスニコル配置がずれることに起因して生じる光漏れが軽減された画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、温湿度変化又は長期使用によって画面周辺部に生じる光漏れについてその原因を種々検討したところ、表示装置内の種々の部材のうち温湿度変化等によって収縮し易い部材、例えば偏光子、が収縮し、そのことによって、その部材に隣接する他の部材及びさらに該他の部材に隣接する他の部材等が歪み、それによってレターデーションが発生する(本明細書では、部材が歪むことによって発生したレターデーションを「歪みレターデーション」という)こと、しかもそのレターデーションが、偏光子の軸とは一致しないずれた方向に発生していることが原因であるとの知見を得た。この知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0005】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 少なくとも黒表示時にλ/2波長のレターデーションを示すλ/2位相差領域と、該位相差領域に隣接して表示面側及びバックライト側にそれぞれ配置される、少なくとも偏光子を含むとともに、互いに異なる第1及び第2の積層体を有する画像表示装置であって、前記第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションが互いに等しいことを特徴とする画像表示装置。
[2] 前記第1及び第2の積層体にそれぞれ発生する歪みレターデーションの遅相軸と、前記λ/2層の遅相軸とが45°又は135°で交差していることを特徴とする[1]の画像表示装置。
[3] 前記第1及び第2の積層体をそれぞれ熱処理Aした後に、画面面内の輝度が互いに均一であることを特徴とする[1]の画像表示装置:
但し、熱処理Aは、温度80℃・相対湿度10%に1000間放置する処理である。
[4] 前記第1及び第2の積層体が、互いに異なる保持力の粘着剤層を含み、それによって前記第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションの差が軽減されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの画像表示装置。
[5] 前記第2の積層体に含まれる粘着剤層の数が、前記第1の積層体に含まれる粘着剤層の数より多く、且つ前記第2の積層体に含まれる粘着剤層のうち少なくとも一つの粘着剤層の保持力が、前記第1の積層体に含まれる少なくとも一つの粘着剤層の保持力よりも大きいことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの画像表示装置。
[6] 前記少なくとも黒表示時にλ/2波長のレターデーションを示すλ/2位相差領域が、第1及び第2の基板を含む画像表示セルであり、前記第1及び第2の積層体がそれぞれ前記第1及び第2の基板に接触していることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの画像表示装置。
[7] 前記画像表示セルが、IPSモード液晶セルであることを特徴とする[6]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温湿度変化又は長期使用によって、偏光板のクロスニコル配置がずれることに起因して生じる光漏れが軽減された画像表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0007】
以下において、本発明の画像表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
【0008】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(21)及び式(22)よりRthを算出することもできる。
【0009】
【数1】

式中、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0010】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
【0011】
なお、本明細書において、レターデーションの測定波長について特に断りない場合は、測定波長は550nmとする。また、本明細書において「λ/2波長」とは、波長550nmにおけるλ/2波長をいい、厳密には275nmになるが、本明細書では、本発明の効果が得られることを前提として、許容誤差を含む230〜350nmをいうものとする。また、「λ/2板」、「λ/2層」及び「λ/2位相差領域」の意義についても同様であり、波長550nmにおいて、上記範囲のレターデーションを示す位相差板等を意味するものとする。
【0012】
本発明の画像表示装置は、部材の歪みによって生じる歪みレターデーションを相殺する自己補償機構を備えていることを特徴とする。なお、本明細書において、「歪みレターデーション」とは、温湿度の変化や長期使用によって、画像表示装置内の少なくとも一つの部材又は部材を接着する粘着剤に応力がかかり、それによって生じるRe及び/又はRthの変動をいうものとする。
まず、本発明の歪みレターデーションを相殺する自己補償機構の原理について、IPSモード液晶表示装置を例として説明する。図1に、本発明の一実施形態であるIPSモード液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。図1中、上を表示面側及び下をバックライト側とする。なお、図1は、模式図であり、実際の液晶表示装置の各部材の厚みの相対関係を正確に示すものではない。以下のいずれの図面についても同様である。
図1に示すIPSモード液晶表示装置は、外部から電界を与えられることによって複屈折性が変化する液晶層10、及び液晶層10を挟んで配置されるガラス板等からなる一対の基板12a、12bを含む、IPSモード液晶セルLCを有する。基板12aに対して、より表示面側に配置される部材の積層体ML1、及び基板12bに対して、よりバックライト側に配置される部材の積層体ML2は、それぞれ自然光を直線偏光に変化させる偏光子を含んでいる。積層体ML1及びML2は、偏光子とともに、その表面に配置される保護フィルムや、液晶層の複屈折性を光学的に補償する光学補償フィルムや、反射防止層、輝度向上層等、種々の機能層を含んでいてもよい。また、積層体ML1及びML2はそれぞれ、各層を接着する粘着剤層を含んでいる。
【0013】
IPSモード液晶表示装置では、上下の偏光子の偏光軸を直交にして、クロスニコル配置にし、黒表示時には、液晶層10中の液晶分子は、その長軸を、積層体ML1及びML2のいずれかの偏光軸と一致させて配向させる。積層体ML1及びML2が、Re及びRthという光学的特性の観点、及び弾性体としての特性の観点においても等価であるならば、仮に、温湿度変化や長期使用によって積層体ML1及びML2に歪みレターデーションが発生しても、それを相殺することができる。その原理は、ポアンカレ球上に示すと図2の通りである。積層体ML2に入射した光は、ML2中の偏光子によって直線偏光状態になる。その状態は、ポアンカレ球の赤道上の点として表される。図2では、白抜きの丸印「○」で示している。積層体ML2の歪みによってレターデーションが発生すると、その積層体ML2の歪みレターデーションによって、直線偏光は楕円偏光に変換される。図3に軸関係を示すが、ML2に含まれる偏光子の偏光軸は、通常、画面左右方向を0°、上下方向を90°とした場合は、0°又は90°の方向にある。一方、歪みレターデーションは、主に画面の四隅において中心方向に向かって、即ち画面45°方向及び135°方向に沿って発生する。すなわち、歪みレターデーションの遅相軸は、45°及び135°の方向になる。従って、積層体ML2に生じた歪みレターデーションによる偏光状態の変換は、ポアンカレ球上の動きとしては、図2に示す通り、S1軸を回転軸とする歪みレターデーションの絶対値に比例する角度の回転として表され、赤道から北半球に向かう矢印として表される。図2中、積層体ML2の歪みレターデーションによって変換された後の偏光状態を、ML2を付記した丸印で示している。
IPSモード液晶層では、黒表示時には液晶層10中の液晶分子は、その長軸を、積層体ML2と一致させて配向し、且つ液晶層10はλ/2波長となっているので、積層体ML2を通過した楕円偏光が、液晶セルLCを通過することによる偏光状態の変換は、ポアンカレ球上の動きとしては、図2に示す通り、S2軸を回転軸とするπの回転として表され、北半球から南半球への回転として表される。図2中、黒表示時の液晶セルLCのRe(λ/2)によって変換された後の偏光状態を、LCを付記した丸印で示している。
【0014】
次に、積層体ML1に入射した光は、ML1に発生した歪みレターデーションによって偏光状態が変換されるが、積層体ML1とML2とは、光学特性及び弾性体としての特性の観点で等価であるので、積層体ML1に発生する歪みレターデーションの遅相軸方向、及び歪みレターデーションの絶対値は等しい。従って、積層体ML1に発生した歪みレターデーションによる偏光状態の変換は、積層体ML2の歪みレターデーションによる変換と同様、ポアンカレ球上の動きとしては、図2に示す通り、S1軸を回転軸とする歪みレターデーションの絶対値に比例する角度の回転として表され、南半球から赤道に向かう矢印として表される。図2中、積層体ML1の歪みレターデーションによって変換された後の偏光状態を、ML1を付記した丸印で示している。図2に示す通り、積層体ML1の歪みレターデーションによって変換された後の光の偏光状態は、積層体ML2に含まれる偏光子を通過した直線偏光状態と同一である。
【0015】
この様に、IPSモード液晶セルの上下に、それぞれ偏光子を含む全く同一の積層体を配置すると、それぞれの積層体に歪みレターデーションが発生しても、それは相殺されるので、黒表示時に入射する光の偏光状態に影響を与えず、光漏れや表示ムラなどは生じない。本発明では、この自己補償の原理を利用して、上下の積層体ML1及びML2が同一でない画像表示装置においても、前記第1及び第2の積層体の歪みレターデーションを同一にすることで、それを相殺している。例えば、図4に示す通り、第1及び第2の積層体ML1、ML2が、それぞれ、偏光子14a、14bと、その両面を保護する保護フィルム15a、15b及び16a、16bとからなる偏光板のみからそれぞれなる態様であっても、保護フィルム15aと15b及び/又は保護フィルム16aと16bとして、互いに異なる光学特性又は保持力のポリマーフィルムを用いると、積層体ML1及びML2中に発生する歪みレターデーションが異なる場合がある。また、図5に示す通り、第2の積層体ML2のみが、液晶層12の複屈折の光学補償のための光学異方性層17を含む態様でも、積層体ML1及びML2で発生する歪みレターデーションが異なる場合がある。また、積層体ML1及びML2に含まれる部材のレターデーションが全く同一であっても、即ち、光学特性の観点では、積層体ML1及びML2が等しい態様であっても、各部材の材質の違いによっては、収縮の程度に差が生じ、積層体ML1及びML2中に発生する歪みレターデーションが異なる場合がある。本発明は、この様に、第1及び第2の積層体が、光学特性として、及び/又は保持力等の弾性体の特性として異なる態様のいずれにおいても、効果を奏する。
【0016】
本発明では、積層体ML1及びML2中に発生する歪みレターデーションの程度に影響を与える種々の因子をコントロールすることで、図2に示す自己補償の原理を利用して、歪みレターデーションに起因する光漏れ及び表示ムラを軽減する。歪みレターデーションに影響を与える因子として、粘着剤層の保持力及び光弾性係数が挙げられる。粘着剤層は、比較的軟らかい材料からなるので、温湿度変化によって、粘着剤層の面内の四隅が面内中心方向に収縮しやすく、歪みレターデーション発生の原因になっている。また、光弾性係数は応力によって発生するレターデーションの大きさに直接関わる物性である。特に、液晶セル等の画像表示セル基板に接触する粘着剤層は、セル基板が、一般的にガラス基板等の硬質の部材であり変形しないため、該粘着剤層に負荷がかかりやすく、温湿度変化等による変形が著しく、歪みレターデーション発生の主原因になる。
【0017】
例えば、図5に示す通り、第2の積層体ML2のみが、ポリマーフィルムからなる光学異方性層17を含む場合は、第2の積層体ML2は、第1の積層体ML1より多くの粘着剤層を含み、そのことが、積層体ML1及びML2に発生する歪みレターデーションに差を生じさせている。このことを、図6を用いてより詳細に説明する。図6は、図5に示す構成の液晶表示装置について、さらに粘着剤層も示した断面模式図である。図6に示す液晶表示装置は、第1の積層体ML1の基板12aと接触する層として、粘着剤層18aを、及び第2の積層体ML2の基板12bと接触する層として粘着剤層18bを有する。さらに、第2の積層体ML2は、光学異方性層17と保護フィルム15bとを接着するための粘着剤層19を含み、第1の積層体ML1より多くの粘着剤層を含んでいる。仮に、偏光子14a及び14bの収縮が同程度であるとすると、第2の積層体ML2には、光学異方性層17と保護フィルム15bとを接着するための粘着剤層19が余計に存在するため、その粘着剤層19が収縮することによって、基板12bに接触する粘着剤層18bにかかる負荷は、基板12aに接触する粘着剤層18aにかかる負荷より小さくなる。その結果、粘着剤層18bの収縮は粘着剤層18aの収縮よりも格段に小さくなり、積層体ML1とML2中に発生する歪みレターデーションに差が生じる。この差を軽減するためには、光学異方性層17と保護フィルム15bとを接着するための粘着剤層19を、比較的大きい保持力の粘着剤層とし、偏光子14bの収縮の作用が粘着剤層19で緩和されないようにし、偏光子14a及び14bの収縮による負荷が、粘着剤層18a及び18bに同程度かかる構成とするのが好ましい。
【0018】
粘着剤層の保持力の大小は、粘着剤層に含まれる高分子材料の分子量、架橋の程度、架橋剤の種類、可塑剤等の添加の有無及びその添加量等によって調整することができる。例えば、粘着剤の保持力を、同一の高分子材料の分子量によって、コントロールする場合は、より分子量の大きい高分子材料を用いたほうが、保持力が大きくなる。同一の架橋剤による架橋の程度でコントロールする場合は、架橋度が高いほど、即ち架橋剤の添加量が多いほど、保持力は大きくなる。また、同一の可塑剤の添加によってコントロールする場合は、可塑剤の添加量が多いほど、保持力は小さくなる。この様な方法で、粘着剤層の保持力をコントロールして、第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションを等しくすることで、図2に示す自己補償機構により、本発明の効果が得られる。好ましい例としては、粘着剤層18aと粘着剤層18bとは、ゲル分が小さく保持力の小さい粘着剤から形成し、粘着剤層19は、ゲル分が大きく保持力の大きな粘着剤から形成する例が挙げられる。
なお、保持力はJIS Z 1541にしたがって、測定することができる。
【0019】
また、図6に示す液晶表示装置において、積層体ML1とML2中に発生する歪みレターデーションの差を、それぞれの粘着剤層をそれぞれ、光弾性係数が異なる材料を用いて形成することで、軽減することもできる。
【0020】
第1及び第2の積層体の歪みレターデーションが等しいことは、以下の方法で確認することができる。例えば、図6に示す液晶表示装置では、まず、基板12a及び12bに接着させる粘着剤層18aおよび18bを含む、第1及び第2の積層体ML1、ML2をそれぞれ作製する。積層体ML1及びML2の粘着剤層18a及び18bの面を接着面として、それぞれをガラス板に貼り付けて、その状態で、温度80℃・相対湿度10%の雰囲気下に1000時間放置する。その後室温に戻した後、前記加熱処理を施していない、第1及び第2の積層体ML1、ML2とそれぞれ組合せて、それぞれに含まれる偏光子の偏光軸が直交するように、いわゆるクロスニコル配置として、法線方向から光を入射して輝度を測定する。熱処理によって各積層体になんら歪みレターデーションが発生していなければ、クロスニコル状態では、輝度は低くなるが、歪みレターデーションが発生していると、光漏れが発生し、輝度が上昇する。従って、この方法によって測定された積層体の面内に生じる輝度差(例えば、画面中心部と画面コーナー部との輝度差)が同一であれば、熱処理によって発生した歪みレターデーションが互いに均一であるといえる。
なお、上記熱処理条件は、一般的な使用環境における温湿度変化によって又は長期間使用によって発生する部材の収縮を生じさせるのに充分な条件である。またこれ以上長期間熱処理をしても、測定される輝度はほとんど変化しないことを確認している。
【0021】
本発明の液晶表示装置は、歪みレターデーションを相殺する自己補償機構を有していればよく、各部材の特性、作製に用いられる材料及び作製方法について特に制限はない。
以下、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材について説明する。
・偏光子
本発明の液晶表示装置は、液晶セルの上下に配置される第1及び第2の積層体がそれぞれ偏光子を含む。ここでいう「偏光子」は、直線偏光膜である。直線偏光膜の例には、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、及びバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が含まれる。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。本発明でもこの一般的な偏光子を使用することができる。
【0022】
偏光膜のバインダーの例としては、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号及び同9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
偏光膜のバインダーは、架橋していてもよい。例えば、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。バインダーへの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。
【0023】
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例としては、例えば、前記の公技番号2001−1745号の58頁に記載の化合物が挙げられる。
【0024】
・保護フィルム
偏光子は、一般的に、その両面に偏光子を保護するための保護フィルムを有する。本発明の液晶表示装置も偏光子用保護フィルムを有していてもよい。該保護フィルムとしては、セルロースエステル(例、セルロースのモノ、ジ及びトリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ラクトン環含有重合体等の種々のポリマーからなるフィルムを使用することができる。勿論、市販のポリマーフィルム、例えば、ノルボルネン系ポリマーフィルムでは、アートン及びゼオネックス(いずれも商品名)、及びセルロースアシレートフィルムでは、Z−TACフィルム及びT80UZ(いずれも商品名)等を用いることができる。特に、IPSモード液晶表示装置では、液晶セル側に配置される保護フィルムとしては、Re及びRthの双方が0に近い、低レターデーションのフィルムを使用するのが好ましく、市販品としては、上記Z−TACが好ましい。
【0025】
本発明の液晶表示装置では、前記第1及び第2の積層体が、偏光子とその両面に保護フィルムを有する偏光板を含んでいるのが好ましい。第1及び第2の積層体が含む偏光板は、同一であるのが好ましく、即ち、偏光子、保護フィルム、及びそれを接着するための粘着剤層が全て同一であるのが好ましい。但し、この態様に限定されるものではない。粘着剤層は、偏光子がポリビニルアルコール系フィルムである場合は、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いるのが好ましい。
【0026】
・光学補償フィルム
本発明の液晶表示装置は、液晶層の複屈折性を光学補償するための光学補償フィルムを有していてもよい。IPSモード液晶表示装置の光学補償フィルムとしては、一例として、Reが150nm程度で、Nz(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が、0.5程度の光学補償フィルムが挙げられる。前記光学補償フィルムは、複屈折性ポリマーフィルムから作製してもよいし、硬化性液晶組成物を利用して作製してもよいし、これらの組み合わせであってもよい。複屈折性ポリマーフィルムの例としては、偏光子の保護フィルムの例と同様である、より高い複屈折性を示すポリマーフィルムとするために、一軸もしくは二軸延伸処理を施してもよい。
【0027】
前記硬化性液晶組成物は、少なくとも液晶性化合物を含有するとともに、硬化するための重合性成分を含む。前記液晶性化合物が重合性基を有する重合性成分であってもよい。液晶性化合物は、その分子の形状から棒状液晶及び円盤状液晶に分類されるが、前記硬化性液晶組成物が含有する液晶性化合物は、いずれであってもよい。硬化性液晶組成物から光学異方性層を形成する場合は、硬化性液晶組成物を表面(例えば、配向膜表面)に塗布し、必要により加熱下で、所望の配向状態にした後、光及び/熱を照射して、重合反応を進行させて硬化させる。形成される光学異方性層のレターデーションは、液晶分子の配向状態、層の厚み等によって調整することができる。硬化性液晶組成物をポリマーフィルムの表面上に形成し、該ポリマーフィルムの裏面(光学異方性層を形成していない側の表面)を偏光子と貼り合せて、光学異方性層の支持体であるポリマーフィルムを、偏光子の保護フィルムとしても利用してもよい。
【0028】
・粘着剤層
各部材を接着するための粘着剤層の材料については特に制限はない。具体的には、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル系ポリマー等の粘着剤が挙げられる。また、上記特許文献1及び2で提案されている粘着剤組成物から選択しても勿論よい。但し、上記した通り、粘着剤層の保持力は、歪みレターデーションの程度に大きく影響するので、本発明の効果を得るためには、第1及び第2の積層体のそれぞれに利用する粘着剤層の材料を、各積層体の構成や、各積層体に含まれる部材の性質等に応じて、選択する。上記した通り、第1及び第2の積層体のうち、一方だけが光学補償フィルム等を含み、粘着剤層の数に違いがある場合は、粘着剤層の数の多い積層体の少なくとも一つの粘着剤層は、例えば、同一の材料であるならば、架橋剤の添加量を大きくしたり、高分子材料として高分子量がより高いものを使用する等により、比較的保持力の大きい粘着剤層として、歪みレターデーションの発生が不均一となるのを軽減するのが好ましい。比較的保持力の大きい粘着剤層とするのは、前記光学補償フィルムに接触し、且つ液晶セル基板には接触しない粘着剤層であるのが好ましい。
なお、粘着剤層は、接着する部材の表面に直接、塗布等により形成してもよいし、一旦、剥離フィルムの表面に形成した後、剥離して、対象の部材の表面に貼り付けて形成してもよい。
【0029】
IPSモード液晶表示装置以外の態様について:
なお、上記では、IPSモード液晶表示装置の態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。黒表示時に液晶層がλ/2波長となるモードであれば、本発明の効果を得ることができる。また、上記では、液晶層が、歪みレターデーションの自己補償のために必要なλ/2波長を提供する態様を示したが、歪みレターデーションの自己補償のために必要なλ/2板を、別途配置することでも、同様の効果が得られる。別途配置したλ/2板によって、図2に示した原理により歪みレターデーションの自己補償を可能とするためには、λ/2板を中心として、その上下に配置される、少なくとも偏光子を含む第1及び第2の積層体中に発生する歪みレターデーションの値が同一となる位置にλ/2板を配置し、且つ第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションの遅相軸と、前記λ/2板の遅相軸とが45°又は135°で交差する配置にする。別途λ/2板を配置する本態様では、液晶表示装置のみならず、液晶セルと同様の構成、具体的には、一対の基板間に、電界等の外部からの刺激によって少なくとも光学特性が変化する層を配置した画像表示セルを有し、該表示セルを挟んで、一対の偏光子をクロスニコルで配置する画像表示装置であれば、その画像表示の原理によらず、いずれも本発明の効果を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例等に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0031】
[積層体の作製]
<光学補償フィルムFの作製>
厚さ80μmでReが0nmであるポリカーボネートの両面に165度での寸法変化率(MD/TD)が1.15のポリエステルフィルムをアクリル系粘着層を介し接着し、ロール延伸機にてロール速比0.96の条件で、かつロールの温度を165度とした常温雰囲気で処理してポリカーボネートを収縮させた後、ポリエステルフィルムを剥離した。この位相差板を163度の雰囲気下で幅方向に1.06倍に延伸した。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定し、光学特性を算出したところ、Reが150nm、Nzが0.5であり、遅相軸が長手方向とは直交方向にあることを確認した。
この位相差板を、光学補償フィルムFとして用いた。
【0032】
<粘着剤の調製>
・粘着剤1の調製
アクリル酸n−ブチル100質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 2質量部、及び開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル0.3質量部を酢酸エチル200質量部中に添加し、65℃で17時間攪拌することにより、質量平均分子量100万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。得られた共重合体100質量部に対し、トリレンジイソシアナート系ポリイソシアナート化合物よりなる架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)0.1質量部及びシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.5質量部を加え、トルエンにて約20質量%の溶液となるように希釈した。これを粘着剤1として用いた。
【0033】
・粘着剤2の調製
アクリル酸n−ブチル 100質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 2質量部、及び開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル0.3質量部を酢酸エチル200質量部中に添加し、65℃で20時間攪拌することにより、質量平均分子量100万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。得られた共重合体100質量部に対し、トリレンジイソシアナート系ポリイソシアナート化合物よりなる架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)0.5質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.5質量部、下記化合物LC3 1.0質量部を加え、トルエンにて約20質量%の溶液となるように希釈した。これを粘着剤2として用いた。
【0034】
【化1】

【0035】
・粘着剤3の調製
アクリル酸n−ブチル100質量部、アクリル酸4質量部、及び開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル0.3質量部を酢酸エチル200質量部中に添加し、65℃で20時間攪拌することにより、質量平均分子量100万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。得られた共重合体100質量部に対し、トリレンジイソシアナート系ポリイソシアナート化合物よりなる架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)0.5質量部、アルミキレート化合物よりなる架橋剤(川研ファインケミカル社製、商品名:ALCH−TR)1質量部及びシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.5質量部を加え、トルエンにて約20質量%の溶液となるように希釈した。これを粘着剤3として用いた。
【0036】
<粘着剤層の形成>
38μmのPET製の剥離フィルムに、乾燥厚み25μmとなるように粘着剤1及び2をそれぞれ塗工し、温度90℃で1分間乾燥して、各粘着剤からなる粘着層を形成した。下記では、剥離フィルムから剥離した各粘着層を使用している。なお、各粘着層を偏光板に貼合した後は、温度25℃・相対湿度50%で7日間熟成した。
粘着剤1、2及び3からなる粘着層(厚み及び形成方法は同一)の保持力をJIS Z 1541により調べたところ、粘着剤3からなる粘着層が一番大きい保持力を示し、粘着剤1及び2は同等の保持力であった。又以下の方法で測定した光弾性係数を測定したところそれぞれ−500×10-5nm/Pa、−400×10-5nm/Pa、−500×10-5nm/Paであった。
(光弾性係数の測定)
25℃60%の環境温湿度において日本分光製エリプソメーター M−220 を用い厚み0.5μm、2cm角の粘着剤サンプルに両端部より0〜10Nの範囲で引っ張り力をかけることにより波長630nmにおいて測定した。サンプルが変形により荷重面積が変化した場合には変形量をメジャーで測定し面積の補正を行い正確な応力を算出した。
【0037】
<偏光板の作製>
・偏光子
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、及びホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、温度50℃で4倍に延伸し、偏光子を作製した。
・保護フィルム
偏光子の液晶セル側に配置する保護フィルムとしては、市販のトリアセチルセルロースフィルムであるZ−TACフィルム(富士フイルム(株)製)を使用した。また、表示面側又はバックライト側に配置される保護フィルムとしては、市販のトリアセチルセルロースフィルムであるTD80(富士フイルム(株)製)を使用した。
【0038】
・IPS用フロント偏光板1
フィルムTD80を、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に120℃で十分に乾燥させた。
Z−TACについても同様の処理を行った。
以上のように鹸化処理を行ったTD80及びZ−TACの各フィルムを、偏光子を挟んで、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いて貼り合せた。さらに、Z−TACフィルム上に、粘着剤1からなる粘着層を貼り合わせ、IPS用フロント偏光板1を作製した。
【0039】
・IPS用リア偏光板1
IPS用フロント偏光板1と同様にして、フィルムTD80及びZ−TACを処理し、その後、同様に、偏光子を挟んで、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いて貼り合せた。さらに、Z−TAC上に、粘着剤3からなる粘着層を貼り合わせ、その粘着層の表面に、光学補償フィルムFを接着し、さらに光学補償フィルムFの表面に、粘着剤1からなる粘着層を貼り合わせ、IPS用リア偏光板1を作製した。
【0040】
・IPS用リア偏光板2
IPS用リア偏光板1の作製において、Z−TAC上に貼り合わせる粘着剤層を、粘着剤2からなる粘着剤層にした以外は、同様にしてIPS用リア偏光板2を作製した。
【0041】
<歪みレターデーションの測定>
歪みレターデーションは、以下の方法で測定した。
まず、上記で作製した各偏光板をそれぞれ二枚用意し、一枚はガラス板(コーニング#1737)に貼り合わせ、温度80℃・相対湿度10%の雰囲気下に、1000時間放置し、その後室温に戻した。この熱処理後の各偏光板を、熱処理していない各偏光板とともに、クロスニコル状態にし、法線方向から光を入射し、輝度を測定し、図7中に、丸印で示した、画面中心部と画面コーナー部(画面左右上下端から1cmの点)との輝度の差(‘コーナー部の輝度‘−’中心部の輝度‘)を求めた。
結果を下記表に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
上記表に示す結果から、IPS用フロント偏光板1及びIPS用リア偏光板の輝度は同一であり、即ち、IPSリア偏光板1は、光学補償フィルムFを含んでいる点で、IPS用フロント偏光板1とは異なるが、上記熱処理によって生じた歪みレターデーションは、等しいことが理解できる。一方、IPS用リア偏光板2の輝度は、IPS用フロント偏光板1とは異なっていた。
【0044】
[実施例1]
市販のIPS型液晶TVを(松下製 TH22LH10)を用いた。このTVの液晶セルの黒表示時のレターデーションは260nmであった。
この液晶TVを分解し、裏側の偏光板より液晶セル側の保護フィルム及び位相差フィルムを剥がし取り、代わりに上記で作製したIPS用フロント偏光板1及びリア偏光板1を貼合わせた。具体的には、各偏光板を、画面サイズにカットし、フロント偏光板1の偏光子の吸収軸が0°、リア偏光板1の偏光子の吸収軸が90°(但し、パネル面の左右方向が0°方向、上下方向が90°方向)にして、即ち、フロント及びリアの偏光子の吸収軸を直交させてパネルの両面に貼り付けた。次に、温度50℃、圧力0.5MPaで30分間オートクレーブ処理を行った。その後、温度80℃・相対湿度10%にて、1000時間処理した後、室温に戻して1時間放置した。これを評価用の液晶表示装置とした。
【0045】
この液晶表示装置を黒表示させその際の表示面内の光漏れの観察を行った。
光漏れは観察されず、表示面内においてムラはなく、均一な黒表示状態であることが確認された。
【0046】
[比較例1]
実施例1の液晶表示装置の作製において、IPS用リア偏光板1をリア偏光板2に代えた以外は、同様にして評価用のIPS型液晶TVを作製し、同様にして光漏れの観察を行った。
表示面の四隅に、光漏れが発生し、それがムラとなって、ムラのある黒表示状態であった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の歪みレターデーションの自己補償機構の原理を説明するために使用したポアンカレ球の模式図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例における光軸の関係を説明するために使用した画面表示面の模式図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図7】実施例で測定したモレ光の輝度差の測定方法を説明するために用いた模式図である。
【符号の説明】
【0048】
10 液晶層
12a、12b セル基板
14a、14b 偏光子
15a、15b、16a、16b 偏光子の保護フィルム
17 光学補償フィルム
18a、18b、19 粘着剤層
LC 液晶セル
ML1、ML2 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも黒表示時にλ/2波長のレターデーションを示すλ/2位相差領域と、該位相差領域に隣接して表示面側及びバックライト側にそれぞれ配置される、少なくとも偏光子を含むとともに、互いに異なる第1及び第2の積層体を有する画像表示装置であって、前記第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションが互いに等しいことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の積層体にそれぞれ発生する歪みレターデーションの遅相軸と、前記λ/2層の遅相軸とが45°又は135°で交差していることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の積層体をそれぞれ熱処理Aした後に、画面面内の輝度が互いに均一であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置:
但し、熱処理Aは、温度80℃・相対湿度10%に1000間放置する処理である。
【請求項4】
前記第1及び第2の積層体が、互いに異なる保持力の粘着剤層を含み、それによって前記第1及び第2の積層体に発生する歪みレターデーションの差が軽減されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第2の積層体に含まれる粘着剤層の数が、前記第1の積層体に含まれる粘着剤層の数より多く、且つ前記第2の積層体に含まれる粘着剤層のうち少なくとも一つの粘着剤層の保持力が、前記第1の積層体に含まれる少なくとも一つの粘着剤層の保持力よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記少なくとも黒表示時にλ/2波長のレターデーションを示すλ/2位相差領域が、第1及び第2の基板を含む画像表示セルであり、前記第1及び第2の積層体がそれぞれ前記第1及び第2の基板に接触していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像表示セルが、IPSモード液晶セルであることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−122151(P2009−122151A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292783(P2007−292783)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】