画像表示装置
【課題】簡単な構成により投写角度を机上の載置面より上側に向けることができるようにする。
【解決手段】ノートパソコンに内蔵される画像表示装置に設けられた投射レンズ28を、凹凸レンズの組合せにより物体側テレセントリックになるようにしたレンズ部分101と、その投射方向に設けられたプリズム部分102とにより構成し、プリズム部分を台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズム103,104により構成し、プリズム部分で投射方向をレンズ部分の光軸Cに対して傾ける。その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、画像表示装置を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化できる。
【解決手段】ノートパソコンに内蔵される画像表示装置に設けられた投射レンズ28を、凹凸レンズの組合せにより物体側テレセントリックになるようにしたレンズ部分101と、その投射方向に設けられたプリズム部分102とにより構成し、プリズム部分を台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズム103,104により構成し、プリズム部分で投射方向をレンズ部分の光軸Cに対して傾ける。その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、画像表示装置を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電子機器に内蔵される画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような半導体レーザを用いた画像表示装置の利点は、携帯型の電子機器に内蔵する場合に都合が良く、例えば半導体レーザを用いた画像表示装置を携帯電話端末に内蔵する技術が知られている(特許文献1参照)。このように画像表示装置を携帯型の電子機器に内蔵すると、必要に応じて画面をスクリーンに拡大表示することができることから、利便性を高めることができる。
【0004】
上記したように、光源に半導体レーザを用いた画像表示装置は、携帯型情報処理装置(いわゆるノートパソコン)に内蔵しても利便性を高めることができ、この場合、キーボードが配設される本体部の筐体の内部に画像表示装置を収容することが考えられる。画像表示装置をノートパソコンに上記したように内蔵する場合には、筐体を扁平に形成することになり、投写画像はノートパソコンの側面から側方に向けて出射される。
【0005】
そのようなノートパソコンを机上に載置すると、画像表示装置が机上の載置面に近接した状態となり、画像表示装置から出射されるレーザ光の一部(下側)が載置面で遮られることがある。このような状態では、スクリーン上に表示される画面の下側部分が欠けた状態となり、画面をスクリーン上に適切に表示させることができないという問題が生じる。
【0006】
そこで、画像表示装置が内蔵された電子機器を机上に載置して使用する場合に、机上の載置面でレーザ光が遮られてスクリーン上で画面が欠けた状態で表示されることを避けることができるようにしたものとして、例えばシフト機構やチルト機構を設けて、投射方向を変えられるようにしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−316393号公報
【特許文献2】特開平2−195386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、上記シフト機構やチルト機構等を設ける場合には、機構を設けることによる他の部品へのレイアウトの制約が生じる。また、チルト機構の場合には、画像表示装置の筐体をチルトアップした位置で保持する必要があるが、レンズや制御装置等が重いため、保持装置の強度を高めることにより、部品コストが高騰化するという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、画像表示装置が内蔵された電子機器を机上に載置して使用する場合に、簡単な構成により投写角度を机上の載置面より上側に向けることができるように構成された画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなる構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズ部分から出射される出射光がレンズ部分の光軸に対して傾いて出射されるようにプリズムを設けたことから、その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、ノートパソコンの側面から側方に向けて投射するように設けられた画像表示装置において、中間部を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化でき、画像表示装置をコンパクト化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による画像表示装置を携帯型情報処理装置に内蔵した例を示す斜視図。
【図2】光学エンジンユニットに内蔵される光学エンジン部の概略構成図。
【図3】緑色レーザ光源装置におけるレーザ光の状況を示す模式図。
【図4】投射レンズの各レンズ成分の構成図。
【図5】図4におけるレンズの各諸元を示す表。
【図6】像高,物体高を示す説明図。
【図7】球面収差を示す図。
【図8】非点収差を示す図。
【図9】歪曲収差を示す図。
【図10】色収差を示す図。
【図11】(a)は図4のP1、(b)は図4のP2、(c)は図4のP3、(d)は図4のP4のコマ収差を示す横収差図。
【図12】投射レンズのレンズ部分及びプリズム部分を示す側面図。
【図13】プリズム部分による色収差抑制要領を示す図。
【図14】第2実施形態を示す図12に対応する図。
【図15】第2実施形態の投射方向を変える要領を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなる構成とする。
【0014】
これによると、レンズ部分から出射される出射光がレンズ部分の光軸に対して傾いて出射されるようにプリズムを設けたことから、その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、ノートパソコンの側面から側方に向けて投射するように設けられた画像表示装置において、中間部を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化でき、画像表示装置をコンパクト化し得る。
【0015】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記レンズ部分が、物体側(光変調器25側)テレセントリックになるように少なくとも3つ以上のレンズ成分を備えると共に、前記レンズ部分の共役点(スクリーンSと光変調器25)に面する両外側に配置された各外側レンズ成分はプラスチックレンズであり、前記レンズ部分の絞り位置が各前記外側レンズ成分間にあり、前記レンズ部分の前記外側レンズ成分以外のレンズ成分で少なくとも前記絞り位置に最も近いものがガラスレンズである構成とする。
【0016】
これによると、レンズ部分の両外側のレンズ成分をプラスチックレンズとしていることから、そのレンズ形状を容易に自由な形状にすることができるため、投射側のレンズ成分を非球面レンズにして広い視野を確保すると共に、相反する最外側のレンズ成分も非球面レンズとしてテレセントリックで長バックフォーカスを確保するように、両外側レンズ成分を容易に加工することができる。そして、光のエネルギ密度が高くなる主光線が集光する絞り位置に近いレンズ成分をガラスレンズで構成することにより、大きな耐光性(特に青色レーザ光の耐光性)を確保すると共に、比較的エネルギ密度の小さな位置(スクリーンSと光変調器25側)のレンズ成分をプラスチックレンズで構成して非球面等の複雑な形状に容易に対応し得るため、高解像度化、高輝度化、長焦点距離を可能にする投射レンズを少ない数のレンズ成分で構成することができる。
【0017】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記プリズム部分が、前記レンズ部分の光軸周りに回動自在に設けられている構成とする。
【0018】
これによると、レンズ部分の光軸が例えば載置面に水平な方向の場合、光軸に対して傾いた軸を出射方向として光軸周りの360度の任意の方向に斜めに投射することができ、画像表示装置を動かすことなく任意の位置に映像を映し出すことができ、使い勝手が良い。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置(例えばノートパソコン)2は、CPUやメモリなどが実装された制御基板(図示せず)などが内蔵された本体部3と、液晶パネルを備えた表示部4とを有し、本体部3と表示部4とがヒンジ部5で連結され、本体部3と表示部4とを重ね合わせた折りたたみ状態として携帯性を高めるようにしている。
【0021】
本体部3の筐体8の上面8aには、キーボード6およびタッチパッド7が設けられている。また、本体部3の筐体8におけるキーボード6の裏面側には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が取り付けられている。
【0022】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12と、を有している。可動体12は、レーザ光による映像ImをスクリーンSに投写するための光学部品が収容された光学エンジンユニット(第1のユニット)13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット(第2のユニット)14とで構成されている。
【0023】
図2は、光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部15の概略構成図である。この光学エンジン部15は、光源として、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24とをそれぞれ備える。また、光学エンジン部15には、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の光変調器25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて光変調器25に照射させるとともに光変調器25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光による映像ImをスクリーンSに投射する投射レンズ(投射光学系)28とが設けられている。なお、各レーザ光源装置22〜24は半導体レーザを用いたものであってよい。
【0024】
この光学エンジン部15は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0025】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34,35と、ダイクロイックミラー34,35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37と、を備えている。
【0026】
投射レンズ28からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34,35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0027】
第1および第2のダイクロイックミラー34,35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0028】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0029】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0030】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45,46に開設された取付孔47,48に圧入するなどしてホルダ45,46に対して固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45,46を介して筐体41に伝達されて放熱され、各ホルダ45,46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0031】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0032】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0033】
図3は、緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ51のレーザチップ61は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ52は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ53は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0034】
固体レーザ素子54は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ53を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子54は、Y(イットリウム)VO4(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVO4のYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0035】
固体レーザ素子54におけるロッドレンズ53に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜62が形成されている。固体レーザ素子54における波長変換素子55に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜63が形成されている。
【0036】
波長変換素子55は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子54から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0037】
波長変換素子55における固体レーザ素子54に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜64が形成されている。波長変換素子55における凹面ミラー56に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜65が形成されている。
【0038】
凹面ミラー56は、波長変換素子55に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜66が形成されている。これにより、固体レーザ素子54の膜62と凹面ミラー56の膜66との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0039】
波長変換素子55では、固体レーザ素子54から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子55を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー56で反射されて波長変換素子55に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子55の膜64で反射されて波長変換素子55から出射される。
【0040】
ここで、固体レーザ素子54から波長変換素子55に入射して波長変換素子55で波長変換されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー56で一旦反射されて波長変換素子55に入射して膜64で反射されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0041】
そこでここでは、波長変換素子55を光軸方向に対して傾斜させて、入射面および出射面での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0042】
なお、図2に示したガラスカバー57には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0043】
また、可動体12を構成する光学エンジンユニット13および制御ユニット14の各筐体は、高さ方向の寸法が短い扁平な箱形状をなしている。光学エンジンユニット13および制御ユニット14の各筐体の両側縁には、筐体11内に設けられたガイドレールに沿ってスライドするスライダが設けられており(図示省略)、使用者による押し引き操作で、矢印Aで示すように、筐体11に対して可動体12が出し入れされる。そして、光学エンジンユニット13におけるノートパソコン2の側面に対応する側の端部には出射窓74が設けられており、この出射窓74から光学エンジン部15の投射レンズ28(図2参照)を通過したレーザ光が出射される。
【0044】
次に、図4を参照して、本発明が適用された投射レンズ28の第1実施形態を示す各レンズ成分の具体的構成を説明する。なお、各レンズ成分は断面図で示されているが、見易さからハッチングを省略している。また、図4における右側の偏光ビームスプリッタ26から出射される変調出射光が、投射レンズ28を介して図の左側に配設されているスクリーンSに向けて投射される。
【0045】
投射レンズ28は、投射側(図4の左側)の第1共役点側から順に、第1レンズ(第1レンズ成分)L1,第2レンズ(第2レンズ成分)L2,第3レンズ(第3レンズ成分)L3,第4レンズ(第4レンズ成分)L4が同軸に配置されている。第1,第4レンズL1,L4は合成樹脂材で形成されたプラスチックレンズであり、第2,第3レンズL2,L3はガラス材質で形成されたガラスレンズである。
【0046】
また、第1レンズL1は、その中央部が投射側に突出した擬似的な凹メニスカス形状に形成されかつ負の屈折力を有する。第2レンズL2は両凸形状の球面レンズであり、第3レンズL3は両凹形状の球面レンズである。第4レンズL4は、擬似的な両凸形状に形成されかつ正の屈折力を有する。
【0047】
図5に示す表1に、図4におけるレンズの各諸元を示す。表1のレンズデータを設定する条件としては、F値が2.8、焦点距離が7.3mm、光変調器25の像高が2.794mm、スクリーンS上の投影映像Imの物体高が385.064mm、第1レンズL1のスクリーンS側のレンズ面の中心とスクリーンSとの間の距離が1000mmとする。なお、像高は、図6に示されるように光変調器25の矩形の照射面の中心Pcから角部Peに向かう対角線上の像の高さHであり、上記数値はその最大値であり、物体高は同様にスクリーンS上の矩形の投影面(Im)の中心Pcから角部Peに向かう対角線上の像の高さHであり、上記数値はその最大値である。また、各色レーザ光の重みづけは、青色レーザ光と赤色レーザ光とを1として、それに対して緑色レーザ光を2としている。
【0048】
表1における面番号は図4に示されるf2〜f11に対応し、投射側からのレンズ面の順序(f1はスクリーンSに対応し、f12は光変調器25に対応)に対応し、STOは絞りを示す。なお、絞りSTOは焦点位置に設けられている。また、面形状はレンズ面が球面であるか非球面であるかを、rは各レンズ面の曲率半径を、dは各光学面f(n)から次の光学面f(n+1)までの光軸上の距離を(nは1〜10)、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、νdはd線を基準とするアッベ数を、Dは開口直径を、Coは非球面レンズのconic数をそれぞれ示す。なお、長さの単位は特に断らない限り「mm」である。
【0049】
次に、非球面データを記す。非球面係数CEnの4次,6次,8次,10次,12次の各係数をそれぞれCE4,CE6,CE8,CE10,CE12で表す。
【0050】
面番号f2では、
CE4=−0.00019292138
CE6=1.7519259e−5
CE8=−2.633344e−7
CE10=−2.8972131e−8
CE12=1.0282375e−9
である。
【0051】
面番号f3では、
CE4=0.00048703321
CE6=−0.00021337964
CE8=9.3720993e−6
CE10=2.0665982e−6
CE12=−3.532074e−7
である。
【0052】
面番号f8では、
CE4=−0.0014457748
CE6=5.699218e−5
CE8=−9.9412743e−7
CE10=−4.3846295e−8
CE12=2.2483199e−9
である。
【0053】
面番号f9では、
CE4=−6.1165958e−5
CE6=7.5395918e−6
CE8=−6.155347e−8
CE10=−6.908151e−9
CE12=6.0456066e−10
である。
【0054】
この第1実施形態において、図4に示されるように、光軸Cを通る主光線と、最高画角の主光線が各レンズL1〜L4を通過する各ポイントとの距離R1〜R4を半径とする円の面積が、各レンズL1〜L4における照射範囲とすると、例えばW1のワット数のレーザ光が照射されたとして、各レンズL1〜L4のエネルギ密度E1〜E4は、nを1〜4として、En=W1/(π×Rn×Rn)となる。
【0055】
ここで、図4に示されるように各R1〜R4の大きさは、R4>R1>R3>R2である。したがって、第2レンズL2のエネルギ密度が最も高い。上記したように第2レンズL2はガラスレンズであり、エネルギ密度が高い位置に配置されているレンズ成分である第2レンズL2をガラスレンズとすることにより、第2レンズL2の大きな耐光性が確保される。
【0056】
近年のプロジェクタにおいて、より明るい画像を投射するという要求に対応して光源の光量を大きくした場合にそれに伴ってエネルギ密度(光パワー密度)が高くなり、絞りSTO付近で光照射面積が絞られることによりエネルギ密度が高くなるのに加えて、プロジェクタ光学系において光源の共役の位置に絞りSTOが位置し、レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の光量が集中する部分が絞りSTOの位置に現れる。
【0057】
青色レーザ光の場合、ファーフィールドパターンとしてガウス分布により絞りSTO位置での中央部のエネルギ密度すなわち投射レンズ28での主光線部分のエネルギ密度が大きくなってしまう。このような場合、絞りSTOの付近にプラスチックレンズが配置されていると、そのレンズ中央部のエネルギ密度が大きくなってしまい、レンズの樹脂の光劣化を加速させることになる。光劣化により樹脂の黄変色などの透過率が低下あるいは樹脂自体が焦げ付きが生じると、レンズとしての機能が大きく低下してしまう。
【0058】
それに対して、絞りSTO付近から大きく離れた位置のレンズでは主光線が大きく広がるためレーザ光の光量分布が広げられ、より均一に近い光量分布となり、レンズに入射するエネルギ密度が小さくなるという利点がある。そのような位置に各プラスチックレンズからなる第1,第4レンズL1,L4を配置しており、それら第1,第4レンズL1,L4の樹脂材の劣化が抑制される。なお、光源は半導体レーザに限るものではなく、LED(発光ダイオード)OLED(有機EL)など、光変調器25を照明させる機能を有する光源であればなんでもよい。
【0059】
また、樹脂材の劣化に大きく影響する青色レーザ光に対しては限られた樹脂材のみがレンズ材料として使用可能である。しかしながら、そのレンズ材料で加工したレンズでは屈折率およびアッベ数(分散)の組合せに制限が生じ、色収差を低減するためのレンズいわゆる色消しレンズを目的とするレンズを得ることができない。さらに、将来的に光源の光量を増大していく要求が考えられる。
【0060】
そのため、色消しレンズをガラスレンズで構成することは有効である。また、このガラスで構成された色消しレンズはプラスチックレンズのように光耐性を気にしないで使用できるため、投射レンズ28の絞りSTOに近い位置(エネルギ密度が大きい)に配置することが可能である。そして、上記したように絞りSTOに近い位置にガラスレンズからなる第3レンズL3を配置し、かつもう1枚のガラスレンズからなる第4レンズL4を用いて2枚組み構成の色消しレンズを設けている。
【0061】
次に、上記第1実施形態における投射レンズ28の各収差について説明する。
【0062】
先ず、図7に球面収差を示す。図において、縦軸が像高Hの位置を示し、横軸がずれの大きさであり、球面収差無しを0として、実線が青色レーザ光であり、二点鎖線が緑色レーザ光であり、破線が赤色レーザ光である。これら図の説明は他の同様の図でも同じであり、その説明を省略する。図7の球面収差は、各色の各波長における像高の関数として表している。
【0063】
図8は像面湾曲および非点収差を示す図である。図における左側の各曲線がサジタルデータ(図のSd)であり、右側の各曲線がタンジェンシャルデータTdであり、S−Tが非点収差となる。図では、像面から近軸像面までの距離を視野座標の関数として表している。
【0064】
また、図9は歪曲収差を示す図である。図では横軸に歪曲の大きさDyを百分率で表している。歪曲の大きさDyは、実際の主光線の高さをYcとし、基準光線の高さをYrとすると、次式となる。
Dy=100×(Yc−Yr)/Yr
【0065】
図10は倍率色収差を示す図である。図では、倍率色収差を視野の関数として表し、緑色レーザ光を基準(ずれが0)にした場合の青色,赤色レーザ光の各倍率色収差を示している。
【0066】
図11はコマ収差を示す横収差図である。図では、中心は主光線を表し、横軸が入射瞳座標(最大±20μm)、縦軸が各入射瞳座標における横収差の値を示す。横収差は、光線の収差を瞳関数として表わしている。また、図11の(a),(b),(c),(d)はそれぞれ図6の各ポイントP1(中心),P2(中心を通る縦軸上の像高最高位置),P3(中心を通る横軸上の像高最高位置),P4(角部)に対応している。なお、具体的には、P1を0mmとすると、各像高は、P2=1.44mm、P3=2.4mm、P4=2.794mmである。
【0067】
このようにして構成された投射レンズ28によれば、図7〜11に示されるように各収差が小さく、小型プロジェクタに何等問題なく適用し得る。
【0068】
なお、投射レンズ28を全てプラスチックレンズとすることにより、最小枚数のレンズ構成が可能となるが、上記したようにプラスチックレンズのような樹脂レンズでは屈折率とアッベ数のバリエーションが少ないという問題がある。さらに、青色レーザ光に対する耐光性を有する材質のものは少なく、採用するとレンズのコストが高騰化する。したがって、プラスチックレンズのみで小型プロジェクタの投射レンズを構成した場合には、高解像度化、高輝度化、かつ長焦点距離を実現実現することは困難である。また、長所点距離での収差低減には色収差低減が必要であり、少なすぎるレンズ枚数では十分な色収差を取ることが困難である。
【0069】
それに対して、上記したように両外側の第1,第4レンズL1,L4をプラスチックレンズとし、それらに挟まれた中間の第2,第3レンズL2,L3をガラスレンズとしてプラスチックレンズの上記問題点を解消し、4枚のレンズ(L1〜L4)というほぼ最少となる少ないレンズ枚数で構成できた。
【0070】
また、ガラスレンズからなる第2,第3レンズL2,L3を、互いに隣接する各レンズ面(f6)の曲率を同一として互いに密着状態に接合された複合レンズとして構成し、かつ全体として正の屈折力としている。これにより、第1レンズL1と第2レンズL2との間に位置する絞りSTOの位置をガラスレンズからなる第2レンズL2に近づけることができ、プラスチックレンズからなる第1レンズL1に対するエネルギ密度をより一層低減し得る。
【0071】
また、プラスチックレンズのような樹脂レンズでは屈折率とアッベ数のバリエーションが少ないという問題があるが、それに対してもガラスレンズからなる第2,第3レンズL2,L3で対応している。また、絞りSTOに近い方の第2レンズL2のアッベ数が遠い方の第3レンズL3のアッベ数よりも大きくしている。これにより、上記と同様に絞りSTOの位置を第2レンズL2に近づける効果に加えて、異なるアッベ数の組合せにより色収差を好適に低減できる。
【0072】
また、両外側の第1,第4レンズL1,L4をプラスチックレンズとしていることから、そのレンズ形状を容易に自由な形状にすることができる。投射側の第1レンズL1を非球面レンズにして広い視野を確保すると共に、相反する最外側の第4レンズL4も非球面レンズとしてテレセントリックで長バックフォーカスを確保するように、第1および第4レンズL1,L4を容易に加工することができる。このようにして、上記したように4枚のレンズ(L1〜L4)というほぼ最少となる少ないレンズ枚数で構成することができる。
【0073】
このようにして、4枚のレンズ(L1〜L4)によりレンズ部分101が構成されている。図12に示されるように、そのレンズ部分101の投射側(第1レンズL1の投射側)にはプリズム部分102が設けられている。
【0074】
プリズム部分102は、2枚のプリズム103,104をレンズ部分の光軸Cに沿う向きに互いに重ね合わせかつ並べて構成されている。各プリズム103,104は、光軸Cに直交する方向(図12の紙面の表裏方向)から見てそれぞれ台形断面形状をなすウェッジプリズムであってよく、各上底及び下底が互いに相反する方向になるように配設されている。なお、図ではノートパソコン2を例えば机上に載置して投射する場合が示されており、その場合には投射の下側部分が載置面により遮られないようにするべく投射方向を上向きにする必要があり、プリズム部分102により、図に示されるように投射方向を上向きに変えている。
【0075】
その投射方向を上向きにするために、投射側のプリズム103はその下底側を上にする向きに設けられていると共に、そのウェッジ角(両レンズ面間の角度)θ1は、第1レンズL1に近い方のプリズム104のウェッジ角θ2よりも大きい(θ1>θ2)。
【0076】
これにより、図12に示されるように、光変調器25の光軸Cと一致する点Pcからの光線は、図の一点鎖線に示されるようにレンズ部分101では光軸C上を進み、プリズム104で若干下側に向けられるが、プリズム103で上側に向きを変えられ、投射レンズ28の出射光としては光軸Cに対して上向きの角度で出射され、スクリーンSに投射される。光変調器25の上縁の中点(図6のP2に対応)Puからの光線(図の二点鎖線)と、下縁の中点Pdからの光線(図の実線)とにおいても同様である。それぞれ、図に示されるように3枚のレンズL2〜L4により焦点(絞りSTO近傍)を通り、第1レンズL1を介してプリズム部分102に至り、プリズム部分102により光軸Cに対して上向きの角度となって出射される。
【0077】
また、上記したように2枚のプリズム103,104を互い違いになるように重ね合わせることにより、色収差を抑制することができる。図13を参照して、本実施形態における両プリズム103,104による色収差の抑制要領について説明する。図13では光変調器25の任意の点(図12のPd)から出た赤色レーザ光(640nm)の赤色光線Lr及び青色レーザ光(445nm)の青色光線Lbを代表して示し、赤色光線Lrを破線で、青色光線Lbを実線で示している。なお、模式図で示しており、光線の傾きの変化等を大きく強調している。
【0078】
上記した構成の各レンズL1〜L4を用いて、スクリーンSの任意の1点を基準にして、各色レーザ光Lr,Lbがプリズム部分102及びレンズ部分101を介して光変調器25の1点に集光するように各プリズム103,104を求めることができる。図13に示されるように、スクリーンSの1点からの赤色光線Lrと青色光線Lbとがプリズム103の投射側(スクリーンS側)の面103aに至る点をそれぞれPa,Pbとすると、プリズム103では、赤色光線Lrは両プリズム103,104同士の合わせ面103b(104a)の点Pcに至るように屈折し、青色光線Lbは面103b(104a)の点Pdに至るように赤色光線Lrより大きく屈折する。
【0079】
そして、プリズム104では、赤色光線Lrが点Pcからプリズム104の光変調器25側の面104bの点Peに至るように屈折し、青色光線Lbは点Pdから面104bの点Pfに至るように屈折する。この面104bでは、赤色光線Lrと青色光線Lbとが図における上下で逆転しているが、青色光線Lbは面104bで大きく屈折するため、光変調器25に至るところでは赤色光線Lrと青色光線Lbとは1点に一致し得る。なお、緑色光線は、赤色光線Lrと青色光線Lbとの間に位置するようになり、その図示を省略している。
【0080】
このように各色光線がプリズム103,104で屈折するように、各プリズム103,104の形状と光変調器25およびスクリーンSまでの距離とを設計することにより、光変調器25の任意の1点からの光線をスクリーンS上の1点に合焦させることができる。各プリズム103,104の設計はそれぞれのプリズムを形成するガラスや樹脂材料の分散値あるいは屈折率を適正化することで実現できる。そして、2つのプリズム103,104を、各厚さが互いに相反する向きに増減するように互いに重ね合わせることにより、一方のプリズムで生じる色収差を他方のプリズムで修正することができる。これにより、プリズム部分101による投射方向の変更を行うことができると共に色収差も抑制され、何等問題なくスクリーンSに鮮明な映像Imの投射を行うことができる。
【0081】
また、このような投射レンズ28の構成により、ヒンジ機構やシフト機構等の構造物を設けることなく、ノートパソコン2の側面から上に傾けた方向に投射させる画像表示装置1を設けることができ、その光学エンジンユニット13の厚さをノートパソコン2の筐体内に収めることができるように6.9mm以内にすることができる。ノートパソコン2のドライブベイは一般的に9.5mmの高さであり、その9.5mmの高さのドライブベイ内に収めるためには、光学系の厚さを6.9mm以下にすることで対応し得る。上記したようにプラスチックレンズからなる第1,第4レンズL1,L4に非球面レンズを用いることにより、枚数を低減すると共に光軸方向長さを短くすることができ、例えば光変調器25が0.22インチのサイズのものであった場合でも十分対応できると共に、2つのプリズム103,104を重ね合わせるという簡単な構造により、光軸方向に長くなることを抑制し得る。また、第1レンズL1の第1共役点側(投射側)の面から光変調器25までの距離である全光学長も40mm以下にすることができ、上記ノートパソコン2の筐体内に収めることに支障を来すことがない。
【0082】
また、樹脂材により構成される第1および第4レンズL1,L4のレンズ成分としては、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーにより構成されるとよい。これにより、プラスチックレンズからなる第1および第4レンズL1,L4のレンズ成分の耐光性(特に青色レーザ光の耐光性)をさらに高めることができる。
【0083】
次に、図15を参照して第2実施形態について説明する。なお、図15は上記した図12に対応する図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0084】
この第2実施形態では、レンズ部分102の各レンズL1〜L4を保持する鏡筒105と、プリズム部分103の各プリズム103,104を保持するホルダ106とが同軸的に接離可能にそれぞれ別体に形成されている。鏡筒105とホルダ106との分離面は、第1レンズL1を外囲しかつ光軸C方向に臨む円環状端面形状になり、鏡筒105側の分離面には光軸Cと同軸の円環状溝107が設けられていると共に、ホルダ106側の分離面には光軸Cと同軸かつ溝107に没入する円環状凸部108が設けられている。図示例の円環状凸部108は、ホルダ106とは別の円筒形状の部材からなり、かつホルダ106に軸線方向に一部埋没させて一体化した形状であるが、ホルダ106と一体になるように、例えば成形や削り出しにより形成してもよい。
【0085】
このように別々に形成した鏡筒105とホルダ106とを、円環状凸部108を円環状溝107に嵌め込んで組み付ける。また、円環状凸部108と円環状溝107とは軸線周りに相対的に摺動可能となる凹凸断面形状に形成され、鏡筒105とホルダ106との間には図示省略の抜け止め機構が設けられており、このようにして鏡筒105とホルダ106とが同軸に回動自在に設けられている。なお、鏡筒105は、投射レンズ28の筐体に固定されている。
【0086】
これにより、ホルダ106を回すことにより光軸Cに対して所定の角度で投射される映像を、図15にIm1〜Im4で示されるように任意の位置に映し出すことができる。図では4箇所(Im1〜Im4)で示しているが、光軸C周りの360度の任意の方向に投射することができる。
【0087】
なお、上記各実施形態では画像表示装置1の可動体12をノートパソコン2から引き出して投射するとして説明したが、必ずしもノートパソコンから引き出す必要はなく、出射窓74がノートパソコン2の側面に固定されていてもよい。その場合に、上記第2実施形態のようにプリズム部分101を回動可能にする場合にはホルダ106の外周部の一部をノートパソコン2のケースの一部から外に臨ませるようにして、指先でホルダ106を回せるようにすればよい。
【0088】
また、可動体12の光学エンジンユニット13と制御ユニット14との間にヒンジ機構を設けてもよい。それにより、引き出した状態で制御ユニット14に対して光学エンジンユニット13を傾動させることができ、上方側への投射角度をより一層大きくすることができる。
【0089】
以上、本発明を、その好適形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかる画像表示装置は、簡単な構成で光軸に対して角度を有する方向に投射することができ、画像表示装置をコンパクト化でき、小型プロジェクタ等として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 画像表示装置
22 緑色レーザ光源装置
23 赤色レーザ光源装置
24 青色レーザ光源装置
28 投射レンズ
101 レンズ部分
102 プリズム部分
103,104 プリズム
105 鏡筒
106 ホルダ
L1〜L4 第1レンズ〜第4レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電子機器に内蔵される画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような半導体レーザを用いた画像表示装置の利点は、携帯型の電子機器に内蔵する場合に都合が良く、例えば半導体レーザを用いた画像表示装置を携帯電話端末に内蔵する技術が知られている(特許文献1参照)。このように画像表示装置を携帯型の電子機器に内蔵すると、必要に応じて画面をスクリーンに拡大表示することができることから、利便性を高めることができる。
【0004】
上記したように、光源に半導体レーザを用いた画像表示装置は、携帯型情報処理装置(いわゆるノートパソコン)に内蔵しても利便性を高めることができ、この場合、キーボードが配設される本体部の筐体の内部に画像表示装置を収容することが考えられる。画像表示装置をノートパソコンに上記したように内蔵する場合には、筐体を扁平に形成することになり、投写画像はノートパソコンの側面から側方に向けて出射される。
【0005】
そのようなノートパソコンを机上に載置すると、画像表示装置が机上の載置面に近接した状態となり、画像表示装置から出射されるレーザ光の一部(下側)が載置面で遮られることがある。このような状態では、スクリーン上に表示される画面の下側部分が欠けた状態となり、画面をスクリーン上に適切に表示させることができないという問題が生じる。
【0006】
そこで、画像表示装置が内蔵された電子機器を机上に載置して使用する場合に、机上の載置面でレーザ光が遮られてスクリーン上で画面が欠けた状態で表示されることを避けることができるようにしたものとして、例えばシフト機構やチルト機構を設けて、投射方向を変えられるようにしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−316393号公報
【特許文献2】特開平2−195386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、上記シフト機構やチルト機構等を設ける場合には、機構を設けることによる他の部品へのレイアウトの制約が生じる。また、チルト機構の場合には、画像表示装置の筐体をチルトアップした位置で保持する必要があるが、レンズや制御装置等が重いため、保持装置の強度を高めることにより、部品コストが高騰化するという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、画像表示装置が内蔵された電子機器を机上に載置して使用する場合に、簡単な構成により投写角度を机上の載置面より上側に向けることができるように構成された画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなる構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズ部分から出射される出射光がレンズ部分の光軸に対して傾いて出射されるようにプリズムを設けたことから、その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、ノートパソコンの側面から側方に向けて投射するように設けられた画像表示装置において、中間部を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化でき、画像表示装置をコンパクト化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による画像表示装置を携帯型情報処理装置に内蔵した例を示す斜視図。
【図2】光学エンジンユニットに内蔵される光学エンジン部の概略構成図。
【図3】緑色レーザ光源装置におけるレーザ光の状況を示す模式図。
【図4】投射レンズの各レンズ成分の構成図。
【図5】図4におけるレンズの各諸元を示す表。
【図6】像高,物体高を示す説明図。
【図7】球面収差を示す図。
【図8】非点収差を示す図。
【図9】歪曲収差を示す図。
【図10】色収差を示す図。
【図11】(a)は図4のP1、(b)は図4のP2、(c)は図4のP3、(d)は図4のP4のコマ収差を示す横収差図。
【図12】投射レンズのレンズ部分及びプリズム部分を示す側面図。
【図13】プリズム部分による色収差抑制要領を示す図。
【図14】第2実施形態を示す図12に対応する図。
【図15】第2実施形態の投射方向を変える要領を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなる構成とする。
【0014】
これによると、レンズ部分から出射される出射光がレンズ部分の光軸に対して傾いて出射されるようにプリズムを設けたことから、その傾きをレンズ部分の光軸よりも上側とすることにより、ノートパソコンの側面から側方に向けて投射するように設けられた画像表示装置において、中間部を中折れさせて出射窓を上に向けるようなヒンジ機構を設けることなく、側面からの出射光を上に向けることができるため、斜め上に向けて投射可能にする画像表示装置の機構を簡素化でき、画像表示装置をコンパクト化し得る。
【0015】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記レンズ部分が、物体側(光変調器25側)テレセントリックになるように少なくとも3つ以上のレンズ成分を備えると共に、前記レンズ部分の共役点(スクリーンSと光変調器25)に面する両外側に配置された各外側レンズ成分はプラスチックレンズであり、前記レンズ部分の絞り位置が各前記外側レンズ成分間にあり、前記レンズ部分の前記外側レンズ成分以外のレンズ成分で少なくとも前記絞り位置に最も近いものがガラスレンズである構成とする。
【0016】
これによると、レンズ部分の両外側のレンズ成分をプラスチックレンズとしていることから、そのレンズ形状を容易に自由な形状にすることができるため、投射側のレンズ成分を非球面レンズにして広い視野を確保すると共に、相反する最外側のレンズ成分も非球面レンズとしてテレセントリックで長バックフォーカスを確保するように、両外側レンズ成分を容易に加工することができる。そして、光のエネルギ密度が高くなる主光線が集光する絞り位置に近いレンズ成分をガラスレンズで構成することにより、大きな耐光性(特に青色レーザ光の耐光性)を確保すると共に、比較的エネルギ密度の小さな位置(スクリーンSと光変調器25側)のレンズ成分をプラスチックレンズで構成して非球面等の複雑な形状に容易に対応し得るため、高解像度化、高輝度化、長焦点距離を可能にする投射レンズを少ない数のレンズ成分で構成することができる。
【0017】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記プリズム部分が、前記レンズ部分の光軸周りに回動自在に設けられている構成とする。
【0018】
これによると、レンズ部分の光軸が例えば載置面に水平な方向の場合、光軸に対して傾いた軸を出射方向として光軸周りの360度の任意の方向に斜めに投射することができ、画像表示装置を動かすことなく任意の位置に映像を映し出すことができ、使い勝手が良い。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置(例えばノートパソコン)2は、CPUやメモリなどが実装された制御基板(図示せず)などが内蔵された本体部3と、液晶パネルを備えた表示部4とを有し、本体部3と表示部4とがヒンジ部5で連結され、本体部3と表示部4とを重ね合わせた折りたたみ状態として携帯性を高めるようにしている。
【0021】
本体部3の筐体8の上面8aには、キーボード6およびタッチパッド7が設けられている。また、本体部3の筐体8におけるキーボード6の裏面側には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が取り付けられている。
【0022】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12と、を有している。可動体12は、レーザ光による映像ImをスクリーンSに投写するための光学部品が収容された光学エンジンユニット(第1のユニット)13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット(第2のユニット)14とで構成されている。
【0023】
図2は、光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部15の概略構成図である。この光学エンジン部15は、光源として、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24とをそれぞれ備える。また、光学エンジン部15には、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の光変調器25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて光変調器25に照射させるとともに光変調器25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光による映像ImをスクリーンSに投射する投射レンズ(投射光学系)28とが設けられている。なお、各レーザ光源装置22〜24は半導体レーザを用いたものであってよい。
【0024】
この光学エンジン部15は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0025】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34,35と、ダイクロイックミラー34,35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37と、を備えている。
【0026】
投射レンズ28からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34,35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0027】
第1および第2のダイクロイックミラー34,35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0028】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0029】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0030】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45,46に開設された取付孔47,48に圧入するなどしてホルダ45,46に対して固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45,46を介して筐体41に伝達されて放熱され、各ホルダ45,46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0031】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0032】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0033】
図3は、緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ51のレーザチップ61は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ52は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ53は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0034】
固体レーザ素子54は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ53を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子54は、Y(イットリウム)VO4(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVO4のYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0035】
固体レーザ素子54におけるロッドレンズ53に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜62が形成されている。固体レーザ素子54における波長変換素子55に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜63が形成されている。
【0036】
波長変換素子55は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子54から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0037】
波長変換素子55における固体レーザ素子54に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜64が形成されている。波長変換素子55における凹面ミラー56に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜65が形成されている。
【0038】
凹面ミラー56は、波長変換素子55に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜66が形成されている。これにより、固体レーザ素子54の膜62と凹面ミラー56の膜66との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0039】
波長変換素子55では、固体レーザ素子54から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子55を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー56で反射されて波長変換素子55に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子55の膜64で反射されて波長変換素子55から出射される。
【0040】
ここで、固体レーザ素子54から波長変換素子55に入射して波長変換素子55で波長変換されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー56で一旦反射されて波長変換素子55に入射して膜64で反射されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0041】
そこでここでは、波長変換素子55を光軸方向に対して傾斜させて、入射面および出射面での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0042】
なお、図2に示したガラスカバー57には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0043】
また、可動体12を構成する光学エンジンユニット13および制御ユニット14の各筐体は、高さ方向の寸法が短い扁平な箱形状をなしている。光学エンジンユニット13および制御ユニット14の各筐体の両側縁には、筐体11内に設けられたガイドレールに沿ってスライドするスライダが設けられており(図示省略)、使用者による押し引き操作で、矢印Aで示すように、筐体11に対して可動体12が出し入れされる。そして、光学エンジンユニット13におけるノートパソコン2の側面に対応する側の端部には出射窓74が設けられており、この出射窓74から光学エンジン部15の投射レンズ28(図2参照)を通過したレーザ光が出射される。
【0044】
次に、図4を参照して、本発明が適用された投射レンズ28の第1実施形態を示す各レンズ成分の具体的構成を説明する。なお、各レンズ成分は断面図で示されているが、見易さからハッチングを省略している。また、図4における右側の偏光ビームスプリッタ26から出射される変調出射光が、投射レンズ28を介して図の左側に配設されているスクリーンSに向けて投射される。
【0045】
投射レンズ28は、投射側(図4の左側)の第1共役点側から順に、第1レンズ(第1レンズ成分)L1,第2レンズ(第2レンズ成分)L2,第3レンズ(第3レンズ成分)L3,第4レンズ(第4レンズ成分)L4が同軸に配置されている。第1,第4レンズL1,L4は合成樹脂材で形成されたプラスチックレンズであり、第2,第3レンズL2,L3はガラス材質で形成されたガラスレンズである。
【0046】
また、第1レンズL1は、その中央部が投射側に突出した擬似的な凹メニスカス形状に形成されかつ負の屈折力を有する。第2レンズL2は両凸形状の球面レンズであり、第3レンズL3は両凹形状の球面レンズである。第4レンズL4は、擬似的な両凸形状に形成されかつ正の屈折力を有する。
【0047】
図5に示す表1に、図4におけるレンズの各諸元を示す。表1のレンズデータを設定する条件としては、F値が2.8、焦点距離が7.3mm、光変調器25の像高が2.794mm、スクリーンS上の投影映像Imの物体高が385.064mm、第1レンズL1のスクリーンS側のレンズ面の中心とスクリーンSとの間の距離が1000mmとする。なお、像高は、図6に示されるように光変調器25の矩形の照射面の中心Pcから角部Peに向かう対角線上の像の高さHであり、上記数値はその最大値であり、物体高は同様にスクリーンS上の矩形の投影面(Im)の中心Pcから角部Peに向かう対角線上の像の高さHであり、上記数値はその最大値である。また、各色レーザ光の重みづけは、青色レーザ光と赤色レーザ光とを1として、それに対して緑色レーザ光を2としている。
【0048】
表1における面番号は図4に示されるf2〜f11に対応し、投射側からのレンズ面の順序(f1はスクリーンSに対応し、f12は光変調器25に対応)に対応し、STOは絞りを示す。なお、絞りSTOは焦点位置に設けられている。また、面形状はレンズ面が球面であるか非球面であるかを、rは各レンズ面の曲率半径を、dは各光学面f(n)から次の光学面f(n+1)までの光軸上の距離を(nは1〜10)、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、νdはd線を基準とするアッベ数を、Dは開口直径を、Coは非球面レンズのconic数をそれぞれ示す。なお、長さの単位は特に断らない限り「mm」である。
【0049】
次に、非球面データを記す。非球面係数CEnの4次,6次,8次,10次,12次の各係数をそれぞれCE4,CE6,CE8,CE10,CE12で表す。
【0050】
面番号f2では、
CE4=−0.00019292138
CE6=1.7519259e−5
CE8=−2.633344e−7
CE10=−2.8972131e−8
CE12=1.0282375e−9
である。
【0051】
面番号f3では、
CE4=0.00048703321
CE6=−0.00021337964
CE8=9.3720993e−6
CE10=2.0665982e−6
CE12=−3.532074e−7
である。
【0052】
面番号f8では、
CE4=−0.0014457748
CE6=5.699218e−5
CE8=−9.9412743e−7
CE10=−4.3846295e−8
CE12=2.2483199e−9
である。
【0053】
面番号f9では、
CE4=−6.1165958e−5
CE6=7.5395918e−6
CE8=−6.155347e−8
CE10=−6.908151e−9
CE12=6.0456066e−10
である。
【0054】
この第1実施形態において、図4に示されるように、光軸Cを通る主光線と、最高画角の主光線が各レンズL1〜L4を通過する各ポイントとの距離R1〜R4を半径とする円の面積が、各レンズL1〜L4における照射範囲とすると、例えばW1のワット数のレーザ光が照射されたとして、各レンズL1〜L4のエネルギ密度E1〜E4は、nを1〜4として、En=W1/(π×Rn×Rn)となる。
【0055】
ここで、図4に示されるように各R1〜R4の大きさは、R4>R1>R3>R2である。したがって、第2レンズL2のエネルギ密度が最も高い。上記したように第2レンズL2はガラスレンズであり、エネルギ密度が高い位置に配置されているレンズ成分である第2レンズL2をガラスレンズとすることにより、第2レンズL2の大きな耐光性が確保される。
【0056】
近年のプロジェクタにおいて、より明るい画像を投射するという要求に対応して光源の光量を大きくした場合にそれに伴ってエネルギ密度(光パワー密度)が高くなり、絞りSTO付近で光照射面積が絞られることによりエネルギ密度が高くなるのに加えて、プロジェクタ光学系において光源の共役の位置に絞りSTOが位置し、レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の光量が集中する部分が絞りSTOの位置に現れる。
【0057】
青色レーザ光の場合、ファーフィールドパターンとしてガウス分布により絞りSTO位置での中央部のエネルギ密度すなわち投射レンズ28での主光線部分のエネルギ密度が大きくなってしまう。このような場合、絞りSTOの付近にプラスチックレンズが配置されていると、そのレンズ中央部のエネルギ密度が大きくなってしまい、レンズの樹脂の光劣化を加速させることになる。光劣化により樹脂の黄変色などの透過率が低下あるいは樹脂自体が焦げ付きが生じると、レンズとしての機能が大きく低下してしまう。
【0058】
それに対して、絞りSTO付近から大きく離れた位置のレンズでは主光線が大きく広がるためレーザ光の光量分布が広げられ、より均一に近い光量分布となり、レンズに入射するエネルギ密度が小さくなるという利点がある。そのような位置に各プラスチックレンズからなる第1,第4レンズL1,L4を配置しており、それら第1,第4レンズL1,L4の樹脂材の劣化が抑制される。なお、光源は半導体レーザに限るものではなく、LED(発光ダイオード)OLED(有機EL)など、光変調器25を照明させる機能を有する光源であればなんでもよい。
【0059】
また、樹脂材の劣化に大きく影響する青色レーザ光に対しては限られた樹脂材のみがレンズ材料として使用可能である。しかしながら、そのレンズ材料で加工したレンズでは屈折率およびアッベ数(分散)の組合せに制限が生じ、色収差を低減するためのレンズいわゆる色消しレンズを目的とするレンズを得ることができない。さらに、将来的に光源の光量を増大していく要求が考えられる。
【0060】
そのため、色消しレンズをガラスレンズで構成することは有効である。また、このガラスで構成された色消しレンズはプラスチックレンズのように光耐性を気にしないで使用できるため、投射レンズ28の絞りSTOに近い位置(エネルギ密度が大きい)に配置することが可能である。そして、上記したように絞りSTOに近い位置にガラスレンズからなる第3レンズL3を配置し、かつもう1枚のガラスレンズからなる第4レンズL4を用いて2枚組み構成の色消しレンズを設けている。
【0061】
次に、上記第1実施形態における投射レンズ28の各収差について説明する。
【0062】
先ず、図7に球面収差を示す。図において、縦軸が像高Hの位置を示し、横軸がずれの大きさであり、球面収差無しを0として、実線が青色レーザ光であり、二点鎖線が緑色レーザ光であり、破線が赤色レーザ光である。これら図の説明は他の同様の図でも同じであり、その説明を省略する。図7の球面収差は、各色の各波長における像高の関数として表している。
【0063】
図8は像面湾曲および非点収差を示す図である。図における左側の各曲線がサジタルデータ(図のSd)であり、右側の各曲線がタンジェンシャルデータTdであり、S−Tが非点収差となる。図では、像面から近軸像面までの距離を視野座標の関数として表している。
【0064】
また、図9は歪曲収差を示す図である。図では横軸に歪曲の大きさDyを百分率で表している。歪曲の大きさDyは、実際の主光線の高さをYcとし、基準光線の高さをYrとすると、次式となる。
Dy=100×(Yc−Yr)/Yr
【0065】
図10は倍率色収差を示す図である。図では、倍率色収差を視野の関数として表し、緑色レーザ光を基準(ずれが0)にした場合の青色,赤色レーザ光の各倍率色収差を示している。
【0066】
図11はコマ収差を示す横収差図である。図では、中心は主光線を表し、横軸が入射瞳座標(最大±20μm)、縦軸が各入射瞳座標における横収差の値を示す。横収差は、光線の収差を瞳関数として表わしている。また、図11の(a),(b),(c),(d)はそれぞれ図6の各ポイントP1(中心),P2(中心を通る縦軸上の像高最高位置),P3(中心を通る横軸上の像高最高位置),P4(角部)に対応している。なお、具体的には、P1を0mmとすると、各像高は、P2=1.44mm、P3=2.4mm、P4=2.794mmである。
【0067】
このようにして構成された投射レンズ28によれば、図7〜11に示されるように各収差が小さく、小型プロジェクタに何等問題なく適用し得る。
【0068】
なお、投射レンズ28を全てプラスチックレンズとすることにより、最小枚数のレンズ構成が可能となるが、上記したようにプラスチックレンズのような樹脂レンズでは屈折率とアッベ数のバリエーションが少ないという問題がある。さらに、青色レーザ光に対する耐光性を有する材質のものは少なく、採用するとレンズのコストが高騰化する。したがって、プラスチックレンズのみで小型プロジェクタの投射レンズを構成した場合には、高解像度化、高輝度化、かつ長焦点距離を実現実現することは困難である。また、長所点距離での収差低減には色収差低減が必要であり、少なすぎるレンズ枚数では十分な色収差を取ることが困難である。
【0069】
それに対して、上記したように両外側の第1,第4レンズL1,L4をプラスチックレンズとし、それらに挟まれた中間の第2,第3レンズL2,L3をガラスレンズとしてプラスチックレンズの上記問題点を解消し、4枚のレンズ(L1〜L4)というほぼ最少となる少ないレンズ枚数で構成できた。
【0070】
また、ガラスレンズからなる第2,第3レンズL2,L3を、互いに隣接する各レンズ面(f6)の曲率を同一として互いに密着状態に接合された複合レンズとして構成し、かつ全体として正の屈折力としている。これにより、第1レンズL1と第2レンズL2との間に位置する絞りSTOの位置をガラスレンズからなる第2レンズL2に近づけることができ、プラスチックレンズからなる第1レンズL1に対するエネルギ密度をより一層低減し得る。
【0071】
また、プラスチックレンズのような樹脂レンズでは屈折率とアッベ数のバリエーションが少ないという問題があるが、それに対してもガラスレンズからなる第2,第3レンズL2,L3で対応している。また、絞りSTOに近い方の第2レンズL2のアッベ数が遠い方の第3レンズL3のアッベ数よりも大きくしている。これにより、上記と同様に絞りSTOの位置を第2レンズL2に近づける効果に加えて、異なるアッベ数の組合せにより色収差を好適に低減できる。
【0072】
また、両外側の第1,第4レンズL1,L4をプラスチックレンズとしていることから、そのレンズ形状を容易に自由な形状にすることができる。投射側の第1レンズL1を非球面レンズにして広い視野を確保すると共に、相反する最外側の第4レンズL4も非球面レンズとしてテレセントリックで長バックフォーカスを確保するように、第1および第4レンズL1,L4を容易に加工することができる。このようにして、上記したように4枚のレンズ(L1〜L4)というほぼ最少となる少ないレンズ枚数で構成することができる。
【0073】
このようにして、4枚のレンズ(L1〜L4)によりレンズ部分101が構成されている。図12に示されるように、そのレンズ部分101の投射側(第1レンズL1の投射側)にはプリズム部分102が設けられている。
【0074】
プリズム部分102は、2枚のプリズム103,104をレンズ部分の光軸Cに沿う向きに互いに重ね合わせかつ並べて構成されている。各プリズム103,104は、光軸Cに直交する方向(図12の紙面の表裏方向)から見てそれぞれ台形断面形状をなすウェッジプリズムであってよく、各上底及び下底が互いに相反する方向になるように配設されている。なお、図ではノートパソコン2を例えば机上に載置して投射する場合が示されており、その場合には投射の下側部分が載置面により遮られないようにするべく投射方向を上向きにする必要があり、プリズム部分102により、図に示されるように投射方向を上向きに変えている。
【0075】
その投射方向を上向きにするために、投射側のプリズム103はその下底側を上にする向きに設けられていると共に、そのウェッジ角(両レンズ面間の角度)θ1は、第1レンズL1に近い方のプリズム104のウェッジ角θ2よりも大きい(θ1>θ2)。
【0076】
これにより、図12に示されるように、光変調器25の光軸Cと一致する点Pcからの光線は、図の一点鎖線に示されるようにレンズ部分101では光軸C上を進み、プリズム104で若干下側に向けられるが、プリズム103で上側に向きを変えられ、投射レンズ28の出射光としては光軸Cに対して上向きの角度で出射され、スクリーンSに投射される。光変調器25の上縁の中点(図6のP2に対応)Puからの光線(図の二点鎖線)と、下縁の中点Pdからの光線(図の実線)とにおいても同様である。それぞれ、図に示されるように3枚のレンズL2〜L4により焦点(絞りSTO近傍)を通り、第1レンズL1を介してプリズム部分102に至り、プリズム部分102により光軸Cに対して上向きの角度となって出射される。
【0077】
また、上記したように2枚のプリズム103,104を互い違いになるように重ね合わせることにより、色収差を抑制することができる。図13を参照して、本実施形態における両プリズム103,104による色収差の抑制要領について説明する。図13では光変調器25の任意の点(図12のPd)から出た赤色レーザ光(640nm)の赤色光線Lr及び青色レーザ光(445nm)の青色光線Lbを代表して示し、赤色光線Lrを破線で、青色光線Lbを実線で示している。なお、模式図で示しており、光線の傾きの変化等を大きく強調している。
【0078】
上記した構成の各レンズL1〜L4を用いて、スクリーンSの任意の1点を基準にして、各色レーザ光Lr,Lbがプリズム部分102及びレンズ部分101を介して光変調器25の1点に集光するように各プリズム103,104を求めることができる。図13に示されるように、スクリーンSの1点からの赤色光線Lrと青色光線Lbとがプリズム103の投射側(スクリーンS側)の面103aに至る点をそれぞれPa,Pbとすると、プリズム103では、赤色光線Lrは両プリズム103,104同士の合わせ面103b(104a)の点Pcに至るように屈折し、青色光線Lbは面103b(104a)の点Pdに至るように赤色光線Lrより大きく屈折する。
【0079】
そして、プリズム104では、赤色光線Lrが点Pcからプリズム104の光変調器25側の面104bの点Peに至るように屈折し、青色光線Lbは点Pdから面104bの点Pfに至るように屈折する。この面104bでは、赤色光線Lrと青色光線Lbとが図における上下で逆転しているが、青色光線Lbは面104bで大きく屈折するため、光変調器25に至るところでは赤色光線Lrと青色光線Lbとは1点に一致し得る。なお、緑色光線は、赤色光線Lrと青色光線Lbとの間に位置するようになり、その図示を省略している。
【0080】
このように各色光線がプリズム103,104で屈折するように、各プリズム103,104の形状と光変調器25およびスクリーンSまでの距離とを設計することにより、光変調器25の任意の1点からの光線をスクリーンS上の1点に合焦させることができる。各プリズム103,104の設計はそれぞれのプリズムを形成するガラスや樹脂材料の分散値あるいは屈折率を適正化することで実現できる。そして、2つのプリズム103,104を、各厚さが互いに相反する向きに増減するように互いに重ね合わせることにより、一方のプリズムで生じる色収差を他方のプリズムで修正することができる。これにより、プリズム部分101による投射方向の変更を行うことができると共に色収差も抑制され、何等問題なくスクリーンSに鮮明な映像Imの投射を行うことができる。
【0081】
また、このような投射レンズ28の構成により、ヒンジ機構やシフト機構等の構造物を設けることなく、ノートパソコン2の側面から上に傾けた方向に投射させる画像表示装置1を設けることができ、その光学エンジンユニット13の厚さをノートパソコン2の筐体内に収めることができるように6.9mm以内にすることができる。ノートパソコン2のドライブベイは一般的に9.5mmの高さであり、その9.5mmの高さのドライブベイ内に収めるためには、光学系の厚さを6.9mm以下にすることで対応し得る。上記したようにプラスチックレンズからなる第1,第4レンズL1,L4に非球面レンズを用いることにより、枚数を低減すると共に光軸方向長さを短くすることができ、例えば光変調器25が0.22インチのサイズのものであった場合でも十分対応できると共に、2つのプリズム103,104を重ね合わせるという簡単な構造により、光軸方向に長くなることを抑制し得る。また、第1レンズL1の第1共役点側(投射側)の面から光変調器25までの距離である全光学長も40mm以下にすることができ、上記ノートパソコン2の筐体内に収めることに支障を来すことがない。
【0082】
また、樹脂材により構成される第1および第4レンズL1,L4のレンズ成分としては、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーにより構成されるとよい。これにより、プラスチックレンズからなる第1および第4レンズL1,L4のレンズ成分の耐光性(特に青色レーザ光の耐光性)をさらに高めることができる。
【0083】
次に、図15を参照して第2実施形態について説明する。なお、図15は上記した図12に対応する図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0084】
この第2実施形態では、レンズ部分102の各レンズL1〜L4を保持する鏡筒105と、プリズム部分103の各プリズム103,104を保持するホルダ106とが同軸的に接離可能にそれぞれ別体に形成されている。鏡筒105とホルダ106との分離面は、第1レンズL1を外囲しかつ光軸C方向に臨む円環状端面形状になり、鏡筒105側の分離面には光軸Cと同軸の円環状溝107が設けられていると共に、ホルダ106側の分離面には光軸Cと同軸かつ溝107に没入する円環状凸部108が設けられている。図示例の円環状凸部108は、ホルダ106とは別の円筒形状の部材からなり、かつホルダ106に軸線方向に一部埋没させて一体化した形状であるが、ホルダ106と一体になるように、例えば成形や削り出しにより形成してもよい。
【0085】
このように別々に形成した鏡筒105とホルダ106とを、円環状凸部108を円環状溝107に嵌め込んで組み付ける。また、円環状凸部108と円環状溝107とは軸線周りに相対的に摺動可能となる凹凸断面形状に形成され、鏡筒105とホルダ106との間には図示省略の抜け止め機構が設けられており、このようにして鏡筒105とホルダ106とが同軸に回動自在に設けられている。なお、鏡筒105は、投射レンズ28の筐体に固定されている。
【0086】
これにより、ホルダ106を回すことにより光軸Cに対して所定の角度で投射される映像を、図15にIm1〜Im4で示されるように任意の位置に映し出すことができる。図では4箇所(Im1〜Im4)で示しているが、光軸C周りの360度の任意の方向に投射することができる。
【0087】
なお、上記各実施形態では画像表示装置1の可動体12をノートパソコン2から引き出して投射するとして説明したが、必ずしもノートパソコンから引き出す必要はなく、出射窓74がノートパソコン2の側面に固定されていてもよい。その場合に、上記第2実施形態のようにプリズム部分101を回動可能にする場合にはホルダ106の外周部の一部をノートパソコン2のケースの一部から外に臨ませるようにして、指先でホルダ106を回せるようにすればよい。
【0088】
また、可動体12の光学エンジンユニット13と制御ユニット14との間にヒンジ機構を設けてもよい。それにより、引き出した状態で制御ユニット14に対して光学エンジンユニット13を傾動させることができ、上方側への投射角度をより一層大きくすることができる。
【0089】
以上、本発明を、その好適形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかる画像表示装置は、簡単な構成で光軸に対して角度を有する方向に投射することができ、画像表示装置をコンパクト化でき、小型プロジェクタ等として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 画像表示装置
22 緑色レーザ光源装置
23 赤色レーザ光源装置
24 青色レーザ光源装置
28 投射レンズ
101 レンズ部分
102 プリズム部分
103,104 プリズム
105 鏡筒
106 ホルダ
L1〜L4 第1レンズ〜第4レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、
前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、
前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記レンズ部分が、物体側テレセントリックになるように少なくとも3つ以上のレンズ成分を備えると共に、前記レンズ部分の共役点に面する両外側に配置された各外側レンズ成分はプラスチックレンズであり、
前記レンズ部分の絞り位置が各前記外側レンズ成分間にあり、
前記レンズ部分の前記外側レンズ成分以外のレンズ成分で少なくとも前記絞り位置に最も近いものがガラスレンズであることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記プリズム部分が、前記レンズ部分の光軸周りに回動自在に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項1】
光源から出射されるレーザ光をスクリーン手段に向けて投射するための投射レンズを備えた画像表示装置であって、
前記投射レンズが、前記レーザ光の映像を拡大するべく凹レンズおよび凸レンズを組み合わせたレンズ部分と、前記レンズ部分から出射されるレーザ光の投射方向を前記レンズ部分の光軸に対して傾けるためのプリズム部分とを有し、
前記プリズム部分が、前記光軸に直交する向きから見た台形断面が互いに相反する向きに組み合わされた2つのプリズムからなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記レンズ部分が、物体側テレセントリックになるように少なくとも3つ以上のレンズ成分を備えると共に、前記レンズ部分の共役点に面する両外側に配置された各外側レンズ成分はプラスチックレンズであり、
前記レンズ部分の絞り位置が各前記外側レンズ成分間にあり、
前記レンズ部分の前記外側レンズ成分以外のレンズ成分で少なくとも前記絞り位置に最も近いものがガラスレンズであることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記プリズム部分が、前記レンズ部分の光軸周りに回動自在に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−45043(P2013−45043A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184507(P2011−184507)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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