説明

画像表示部温度分布推定方法、画像表示部温度分布推定装置、画像表示装置、プログラム及び記録媒体

【課題】発熱の状態に応じた劣化が生じ、輝度が低下する性質を有する発光素子から成る画素が複数、配列されて成る画像表示部の画像表示部温度分布推定方法を提供する。
【解決手段】複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定方法は、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示部温度分布推定方法、係る画像表示部温度分布推定方法の実行に適した画像表示部温度分布推定装置、係る画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置、画像表示部温度分布推定方法を実行するためのプログラム、及び、係るプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル表示装置(FP表示装置)として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、『有機EL表示装置』と略称する場合がある)に関心が高まっている。現在、FP表示装置として液晶表示装置(LCD)が主流を占めているが、自発光デバイスではなく、バックライトや偏光板等の部材を必要とする。それ故、FD表示装置の厚さが増す、輝度が不足するなどの問題点がある。一方、有機EL表示装置は自発光デバイスであり、バックライト等の部材が原理的に不要であり、薄型化、高輝度であるなど、LCDと比較して多数の利点を有する。特に、各画素にスイッチング素子を配したアクティブマトリクス型有機EL表示装置は、各画素をホールド点灯させることで消費電流を低く抑えることができ、しかも、大画面化及び高精細化が比較的容易に行えることから、各社で開発が進められており、次世代FP表示装置の主流になると期待されている。
【0003】
ところで、有機EL表示装置の各画素を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、『有機EL素子』と略称する場合がある)は、通電する電流の積算量に応じて劣化し、輝度が低下する場合があるといった問題を有する。即ち、画像表示部において明るい画像表示を行う領域に属する有機EL素子は発熱量が多く、劣化し易い。そして、表示すべき画像に依存して、画像表示部の面内での劣化状態に差異が生じる場合がある。テレビジョン受像機の画像表示部に有機EL表示装置を用いた場合、例えば、受信チャンネル情報や時刻、文字データを含む各種データ等が画像表示部のコーナー部や下部に屡々表示され続けるが、このような状態にあっては、その部分だけ劣化が早まる。有機EL素子の通電による劣化は非可逆性であることが知られており、一度劣化した有機EL素子は元に戻ることは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−351403
【特許文献2】特開2008−58446
【特許文献3】WO06/046196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような有機EL素子の劣化を評価するために、特開2002−351403には、画像表示部の表示領域外にダミー画素(ダミー有機EL素子)を設け、ダミー画素(ダミー有機EL素子)の発光時の端子電圧を検出することでダミー画素の劣化度合いを評価し、その結果に基づき映像信号を補正する方法が開示されている。しかしながら、ダミー画素(ダミー有機EL素子)の端子電圧の情報を基にした有機EL素子の劣化の評価は、有機EL素子の輝度の経時劣化と必ずしも対応しない。また、特開2008−58446や国際公開番号WO06/046196には、各画素内に光センサーを配置し、発光輝度をフィードバックする技術が開示されている。しかしながら、これらの方法では、各画素内の光センサーの光電変換効率がばらつくため、同一輝度を表示している画素間でもフィードバック量が異なるといった問題を有する。
【0006】
従って、本発明の目的は、発熱の状態に応じた劣化が生じ、輝度が低下する性質を有する発光素子から成る画素が複数、配列されて成る画像表示部の画像表示部温度分布推定方法、係る画像表示部温度分布推定方法の実行に適した画像表示部温度分布推定装置、係る画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置、係る画像表示部温度分布推定方法を実行するためのプログラム、及び、係るプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定方法は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する温度分布推定方法であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定方法は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する温度分布推定方法であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する温度分布推定装置であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する温度分布推定装置であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る画像表示装置は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置であって、
画像表示部温度分布推定装置は、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る画像表示装置は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置であって、
画像表示部温度分布推定装置は、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明のプログラムは、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させる。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させるプログラムを記録している。
【発明の効果】
【0015】
一般に、輝度が高い画素(発光素子)ほど、発熱が多く、温度が高くなる。そして、輝度が高い画素(発光素子)に隣接した画素(発光素子)の輝度がたとえ低いとしても、係る画素(発光素子)には、発熱の多い画素(発光素子)からの熱が流入してくる。本発明にあっては、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データ(画像信号)における輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素、あるいは、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する。このように、画素領域に対応する画像データ(画像信号)における輝度情報に基づき画素領域を占める画素の温度を推定するだけでなく、画素領域の周辺領域を占める画素あるいは画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定するので、画像表示部における温度分布をより高い精度で推定することが可能となる。そして、画像表示部における温度分布を推定することで、画像表示部を構成する画素(発光素子)の熱による劣化を推定することが可能となり、更には、劣化した画素(発光素子)の輝度の補償(補正)を的確に行うことが可能となり、高品質、高品位の表示画像を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例1において、画像表示装置の画像表示部に表示した画像、この画像をサーモグラフィによって撮像して得られたサーモグラフィ画像、更には、この画像に基づき温度を推定した結果(温度分布推定結果・画像)を示す図である。
【図2】図2は、ガウシアンフィルタ(2次元ガウシアンフィルタ)の概念図である。
【図3】図3は、画像表示装置の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、実施例1における画像表示装置の概念図である。
【図5】図5は、実施例2における画素領域と周辺画素領域を模式的に示す図である。
【図6】図6に、実施例3における画像表示装置の概念図である。
【図7】図7の(A)、(B)及び(C)は、実施例3の輝度情報(輝度信号)に対して行う処理を説明するための画像表示部の模式図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、それぞれ、ノート型パーソナルコンピュータ及び携帯電話の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の画像表示部温度分布推定方法、画像表示部温度分布推定装置、画像表示装置、プログラム及び記録媒体、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の画像表示部温度分布推定方法、画像表示部温度分布推定装置、画像表示装置、プログラム及び記録媒体)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1及び実施例2の変形)、その他
【0018】
[本発明の画像表示部温度分布推定方法、画像表示部温度分布推定装置、画像表示装置、プログラム及び記録媒体、全般に関する説明]
本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定方法、本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定装置、本発明の第1の態様に係る画像表示装置、本発明のプログラム、あるいは又、本発明の記録媒体(以下、これらを総称して、単に『第1の態様に係る本発明』と呼ぶ場合がある)にあっては、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定し(本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定方法、本発明の第1の態様に係る画像表示部温度分布推定装置、本発明のプログラム、あるいは又、本発明の記録媒体)、あるいは又、画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定する(本発明の第1の態様に係る画像表示装置)形態とすることができる。そして、これらの形態にあっては、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定し、更に、畳み込み関数に基づき、該複数の画素領域及び周辺領域を占める画素の全体の温度を推定する構成とすることができる。
【0019】
あるいは又、本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定方法、本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置、本発明の第2の態様に係る画像表示装置、本発明のプログラム、あるいは又、本発明の記録媒体(以下、これらを総称して、単に『第2の態様に係る本発明』と呼ぶ場合がある)にあっては、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定し(本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定方法、本発明の第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置、本発明のプログラム、あるいは又、本発明の記録媒体)、あるいは又、画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定する(本発明の第2の態様に係る画像表示装置)形態とすることができる。そして、これらの形態にあっては、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定し、更に、畳み込み関数に基づき、該複数の画素領域を占める画素及びそれ以外の画素の温度を推定する構成とすることができる。
【0020】
そして、上述した好ましい形態、構成を含む第1の態様に係る本発明においては、画素領域に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する構成とすることができるし、上述した好ましい形態、構成を含む第2の態様に係る本発明においては、画素領域に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素以外の画素の温度を推定する構成とすることができる。輝度情報と温度分布推定関数とに基づき画素の温度を推定するが、具体的には、輝度信号に対して温度分布推定関数を作用させる(演算する)ことで画素の温度の推定を行う。そして、これらの場合、被対象物(被写体)の温度分布測定結果と、被対象物(被写体)を撮影することで得られた画像データとに基づき、予め、温度分布推定関数を求めておくことができる。被対象物(被写体)の温度分布測定は、例えば、周知のサーモグラフィを用いて行えばよい。また、これらの場合、温度分布推定関数は、周知のガウシアンフィルタ(2次元ガウシアンフィルタ)、あるいは、或る種の適切な画像暈かし(モザイク)フィルタ、あるいは、実測にて求めた関数から成る構成とすることができる。
【0021】
尚、温度分布推定関数は、例えば、画像表示部温度分布推定装置において記憶しておけばよく、被対象物の温度分布測定結果と、被対象物を撮影することで得られた画像データとの間に良い相関が得られるように、温度分布推定関数の各種パラメータを決定すればよい。温度分布推定関数は、少なくとも1つの画素から成る画素領域の輝度(最高輝度あるいは平均輝度)に依存して変化し、及び/又は、画素領域の大きさ(面積)に依存して変化する。また、温度分布推定関数は、画像表示部の構造や、画像表示部における画像表示位置に依存しても変化することがある。具体的には、例えば、画像表示部において熱がこもり易い部分と放熱し易い部分とで、温度分布推定関数を変えてもよい。ここで、温度分布推定関数は、例えば、画像表示装置の製造時、1回、求めておけばよいし、あるいは又、画像表示装置の諸元に依存して、画像表示装置の機種に対応して、予め決められた温度分布推定関数を与えればよい。
【0022】
第1の態様あるいは第2の態様に係る本発明における「少なくとも1つの画素から成る画素領域」を、以下、単に、『画素領域』と呼ぶ場合がある。また、第1の態様に係る本発明における画素領域の周辺領域を占める画素、及び、第2の態様に係る本発明における画素領域を占める画素以外の画素を総称して、以下、『周辺画素』と呼ぶ場合がある。更には、画素領域の周辺領域、及び、画素領域を占める画素以外の画素が占める領域を総称して、以下、『周辺画素領域』と呼ぶ場合がある。
【0023】
本発明において、画像表示部に入力される画像データは、周知の構成、構造を有する画像データとすればよいし、輝度情報は、周知の方法に基づき画像データから求めることができる。また、画素領域は、少なくとも1つの画素あるいは後述する画素ユニットから成るが、具体的には、画素領域を、1つの画素から構成してもよいし、例えば、m×n(m,nは2以上の自然数であり、例えば、3×3、6×6、9×9等)から構成してもよいし、あるいは又、所定の輝度データ値以上の輝度データを有する連続した画素の集合から構成してもよい。画像表示部の温度分布とは、具体的には、画像データに基づき画像表示部において表示される画像の輝度に依存して画像表示部を構成する画素(より具体的には、画素を構成する発光素子)に生じる温度分布である。また、画素領域に対応する画像データとは、画素領域に含まれる画素に入力される画像データを意味する。
【0024】
周辺画素の数は、複数であり、画像表示部の大きさ(M×N)等に依存して、適宜、決定すればよいし、あるいは又、(M/m,N/n)の値に依存して、適宜、決定すればよいし、あるいは又、画素領域の輝度(あるいは平均輝度。符号LMで表す)を「1」としたとき、或る割合(例えば、0.7×LM,0.8×LM等)の輝度で画像を表示すべき画素が外縁を占める領域内を周辺画素領域とすればよいし、あるいは又、温度分布推定関数に基づき、都度、決定してもよいし、これらを組み合わせてもよい。また、第1の態様あるいは第2の態様に係る本発明の好ましい形態にあっては、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、周辺画素の温度を推定するが、ここで、複数の画素領域とは、2以上の画素領域を意味し、周辺画素領域が重複している画素領域の集合を指す。更には、畳み込み関数に基づき、画素領域及び周辺画素領域を占める画素の全体の温度を推定するが、畳み込み関数それ自体は、周知の畳み込み関数とすればよい。
【0025】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置は、具体的には、独立した回路構成とすることもできるが、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置を制御する例えば制御回路に含まれる構成、構造とすることが、装置全体の簡素化といった観点から好ましい。画像表示装置、及び、画像表示装置を制御する制御回路それ自体は、周知の画像表示装置、制御回路とすることができる。
【0026】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置あるいは画像表示装置にあっては、推定された画素の温度に基づき、画素の劣化度合い(具体的には、発熱に依る発光素子の劣化度合い)を推定し、推定された劣化度合いに基づき、画素への輝度情報(輝度信号)を補償(補正)する輝度補償回路を備えていてもよい。尚、劣化度合いとして、例えば、推定された画素の温度に関する積算量(積算値)を挙げることができる。画素への輝度情報(輝度信号)の補償(補正)は、1画素毎に行うことが好ましい。
【0027】
画素の温度推定は、1画像表示フレーム毎に行ってもよいし、数画像表示フレーム毎に行ってもよいし、所望の時間毎に行ってもよい。
【0028】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む、第1の態様あるいは第2の態様に係る本発明(以下、これらを総称して、単に『本発明』と呼ぶ場合がある)において、画素は自発光型の発光素子から構成され、あるいは又、画像表示装置は有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)から構成され、画素は有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)から構成されている形態とすることができる。尚、画像表示装置が単色表示の画像表示装置である場合、画素は1種類である。一方、画像表示装置がカラー表示の画像表示装置である場合、1つの画素ユニットを、3種類(例えば、赤色を発光する赤色発光画素、緑色を発光する緑色発光画素、青色を発光する青色発光画素)の画素から構成することができるし、これらの3種の画素に加え、輝度向上のために白色光を発光する画素、色再現範囲を拡大するために補色を発光する画素、色再現範囲を拡大するためにイエローを発光する画素、色再現範囲を拡大するためにイエロー及びシアンを発光する画素等、4種、あるいはそれ以上の画素から構成することもできる。尚、これらの場合の画素は、場合によっては『副画素』とも呼ばれる。
【0029】
本発明において、発光素子を有機EL素子から構成する場合、有機EL素子を構成する有機層(発光部)は有機発光材料から成る発光層を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。また、電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を『タンデムユニット』とする場合、有機層は、第1のタンデムユニット、接続層、及び、第2のタンデムユニットが積層された2段のタンデム構造も有していてもよく、更には、3つ以上のタンデムユニットが積層された3段以上のタンデム構造も有していてもよく、これらの場合、発光色を赤色、緑色、青色と各タンデムユニットで変えることで、全体として白色を発光する有機層を得ることができる。
【0030】
有機層の厚さの最適化を図ることで、例えば、第1電極と第2電極との間で発光層において発光した光を共振させ、この光の一部を第2電極を介して外部に出射する構成とすることもできる。
【0031】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明において、画像表示部を有機EL表示装置から構成する場合、画像表示部は、
(a)第1基板、
(b)第1基板上に設けられた駆動回路、
(c)駆動回路を覆う層間絶縁層、
(d)層間絶縁層上に設けられた発光部、
(e)発光部上に設けられた保護層、
(f)保護層上に設けられた遮光層、及び、
(g)保護層及び遮光層を覆う第2基板、
を備えており、
各画素は、該駆動回路及び該発光部を備えている形態とすることができる。
【0032】
ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。駆動回路は、例えば、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)等から構成すればよい。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。画素を有機EL素子から構成する場合、発光部は上述したとおりである。保護膜を構成する材料として、発光部で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al23を挙げることができる。遮光膜(ブラックマトリクス)は周知の材料から構成すればよい。必要に応じて、カラーフィルターを設けてもよい。
【0033】
画像表示部は、画素あるいは画素ユニットを複数配置して成るが、ここで、画素あるいは画素ユニットの数を(M,N)で表したとき、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(1920,1035)、(720,480)、(854,480)、(1280,960)等、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。また、画素の配列として、例えば、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列を挙げることができる。
【0034】
本発明の画像表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータを構成するモニター装置として使用することができるし、テレビジョン受像機や携帯電話、PDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)、ゲーム機器に組み込まれたモニター装置として使用することができる。
【実施例1】
【0035】
実施例1は、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る画像表示部温度分布推定方法、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る画像表示部温度分布推定装置、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る画像表示装置、プログラム及び記録媒体に関する。画像表示装置の模式的な一部断面図を図3に示し、画像表示装置の概念図を図4に示す。
【0036】
実施例1の画像表示部温度分布推定装置30は、複数の画素が配列されて成る画像表示部[発光素子を含む画素11(11R,11G,11B)を複数配置して成る画像表示部]10の温度分布を画像データ(入力画像信号)に基づき推定する温度分布推定装置である。また、実施例1の画像表示装置20は、係る画像表示部温度分布推定装置30を備えた画像表示装置である。更には、実施例1の画像表示部温度分布推定方法は、複数の画素が配列されて成る画像表示部10の温度分布を画像データ(入力画像信号)に基づき推定する温度分布推定方法である。そして、少なくとも1つの画素11から成る画素領域(画素領域12)に対応する画像データ(入力画像信号)における輝度情報(輝度信号)に基づき、画素領域12を占める画素13の温度、及び、画素領域12の周辺領域(周辺画素領域14)を占める画素(周辺画素15)の温度、あるいは、画素領域12を占める画素13以外の画素(周辺画素15)の温度を推定する。
【0037】
また、実施例1のプログラムは、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させる。更には、実施例1のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させるプログラムを記録している。尚、記録媒体は、周知の記録媒体から構成することができるし、プログラムの記録も、記録媒体に適した周知の方法に基づき行えばよい。
【0038】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3において、発光素子は、自発光型の発光素子、具体的には、有機EL素子から成り、画像表示部10は、カラー表示のXGAタイプの有機EL表示装置から成る。即ち、画素ユニットの数を(M,N)で表したとき、(1024,768)である。また、1つの画素ユニットは、赤色を発光する赤色発光画素11R、緑色を発光する緑色発光画素11G、及び、青色を発光する青色発光画素11Bの3つの画素から構成されている。また、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3において、画像表示装置20には、各走査線22を制御(駆動)する走査線制御回路21、及び、信号線24を介して画素(発光素子11)に画像データ及び輝度情報(画像信号及び輝度信号)を供給する信号線制御回路23が備えられている。走査線制御回路21及び信号線制御回路23の動作は、制御回路25によって制御される。また、画像表示部温度分布推定装置30は、制御回路25に含まれる。画像表示装置20、並びに、画像表示装置20を制御する制御回路25、走査線制御回路21及び信号線制御回路23それ自体は、周知の画像表示装置、制御回路、走査線制御回路、信号線制御回路とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3において、具体的には、図4に示すように、画像表示部10は、
(a)第1基板40、
(b)第1基板40上に設けられた駆動回路、
(c)駆動回路を覆う層間絶縁層41、
(d)層間絶縁層41上に設けられた発光部(有機層63)、
(e)発光部(有機層63)上に設けられた保護層64、
(f)保護層64上に設けられた遮光層65、及び、
(g)保護層64及び遮光層65を覆う第2基板67、
を備えている。
【0040】
より具体的には、ソーダガラスから成る第1基板40上には駆動回路が設けられている。駆動回路は、複数のTFTから構成されている。TFTは、第1基板40上に形成されたゲート電極51、第1基板40及びゲート電極51上に形成されたゲート絶縁膜52、ゲート絶縁膜52上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域53、並びに、ソース/ドレイン領域53の間であって、ゲート電極51の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域54から構成されている。図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極51は、走査線(図4には図示せず)に接続されている。そして、層間絶縁層41(41A,41B)が、第1基板40及び駆動回路を覆っている。また、有機EL素子を構成する第1電極61は、SiOXやSiNY、ポリイミド樹脂等から成る層間絶縁層41B上に設けられている。TFTと第1電極61とは、層間絶縁層41Aに設けられたコンタクトプラグ42、配線43、コンタクトプラグ44を介して電気的に接続されている。図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。
【0041】
層間絶縁層41上には、開口46を有し、開口46の底部に第1電極61が露出した絶縁層45が形成されている。絶縁層45は、平坦性に優れ、しかも、有機層63の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。開口46の底部に露出した第1電極61の部分の上から、開口46を取り囲む絶縁層45の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層63が形成されている。有機層63は、例えば、正孔輸送層、及び、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す。第2電極62上には、有機層63への水分の到達防止を目的として、プラズマCVD法に基づき、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)から成る絶縁性の保護層64が設けられている。保護層64の上には、黒色のポリイミド樹脂から成る遮光層65が形成されており、保護層64及び遮光層65上にはソーダガラスから成る第2基板67が配されている。保護層64及び遮光層65と第2基板67とは、アクリル系接着剤から成る接着層66によって接着されている。第1電極61をアノード電極として用い、第2電極62をカソード電極として用いる。具体的には、第1電極61は、厚さ0.2μm〜0.5μmのアルミニウム(Al)、銀(Ag)、あるいは、これらの合金で構成される光反射材料から成り、第2電極62は、厚さ0.1μmのITOやIZOといった透明導電材料や、厚さ5nm程度の銀(Ag)、マグネシウム(Mg)等の光を或る程度透過する金属薄膜(半透明金属薄膜)から成る。第2電極62はパターニングされておらず、1枚のシート状に形成されている。場合によっては、有機層63と第2電極62との間に、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)を形成してもよい。
【0042】
以上、纏めると、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3の発光素子の詳しい構成は、以下の表1のとおりである。
【0043】
[表1]
第2基板67 :ソーダガラス
接着層66 :アクリル系接着剤
遮光層65 :黒色のポリイミド樹脂
保護層64 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極(カソード電極)62:ITO層(厚さ:0.1μm)あるいは半透明金属薄膜
電子注入層 :LiF層(厚さ:0.3nm)
有機層63 :上述したとおり
第1電極(アノード電極)61:Al−Nd層(厚さ:0.2μm)
層間絶縁層41 :SiO2
TFT :駆動回路を構成
第1基板40 :ソーダガラス
【0044】
実施例1において、画像表示部10に入力される画像データは、例えば、放送局から送信されてくるテレビジョン放送における映像信号であり、輝度情報(輝度信号Y)は、周知の方法に基づき画像データから求めることができる。また、画素領域12は、少なくとも1つの画素から成るが、具体的には、画素領域12を、所定の輝度データ値(例えば、最高輝度値の50%の輝度データ値)以上の輝度データを有する連続した画素の集合から構成する。周辺画素15の数は、複数であり、温度分布推定関数(温度分布フィルタ)に基づき、画像表示フレーム毎に、都度、決定される。画素13,15の温度推定は、1画像表示フレーム毎に行われる。
【0045】
ここで、画像表示部10の温度分布とは、具体的には、画像データに基づき画像表示部10において表示される画像の輝度に依存して画像表示部10を構成する画素(より具体的には、画素を構成する発光素子11)に生じる温度分布である。画像が高輝度である程、発光素子に多くの電流が流れ、発光素子の温度は高くなる。
【0046】
実施例1にあっては、画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、画素領域12を占める画素13の温度及び周辺画素15の温度を推定する。具体的には、輝度信号Yに対して温度分布推定関数を作用させる(演算する)ことで画素13,15の温度の推定を行う。尚、被対象物(被写体)の温度分布測定結果と、被対象物(被写体)を撮影することで得られた画像データとに基づき、予め、温度分布推定関数を求めておく。ここで、被対象物の温度分布測定は、例えば、周知のサーモグラフィを用いて行えばよい。また、温度分布推定関数(温度分布フィルタ)は、図2に概念図を示す周知のガウシアンフィルタ(2次元ガウシアンフィルタ)から成る。被対象物(被写体)は任意であり、適当なものを選択すればよい。温度分布推定関数は、画像表示部温度分布推定装置30において記憶しておけばよく、被対象物の温度分布測定結果と、被対象物を撮影することで得られた画像データとの間に良い相関が得られるように、温度分布推定関数の各種パラメータを決定しておく。また、温度分布推定関数は、画素領域12の輝度(例えば、最高輝度)に依存して変化し、及び/又は、画素領域12の大きさ(面積)に依存して変化する。更には、画像表示部10の構造や画像表示部10における画像の表示位置に依存しても変化する。
【0047】
画素ユニットの数を(M,N)としているので、画素の数は(3M,N)である。ここで、第(i,j)番目の画素Pxi,jから成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、画素領域を占める画素Pxi,jの温度、及び、画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する。尚、画素Pxi,jの発熱量をQi,jとする。更には、1つの発熱源に基づいた周囲の温度分布を求めるための温度分布推定関数をfi,j(x,y)とする。温度分布推定関数fi,j(x,y)は、上述したとおり、周知のガウシアンフィルタ(2次元ガウシアンフィルタ)とすることもできるし、実測にて求めてもよい。そして、発熱量Qi,jに基づく周辺画素の温度分布をDi,j(x,y)とすると、Di,j(x,y)は、例えば、以下の式(A)で表すことができる。
【0048】
i,j(x,y)=Qi,j・fi,j(x−i,y−j) (A)
【0049】
尚、次に説明する実施例2にあっては、複数の画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、複数の画素領域12のそれぞれを占める画素13の温度、及び、複数の画素領域12のそれぞれの周辺領域を占める画素(周辺画素15)の温度、あるいは又、複数の画素領域12のそれぞれを占める画素13以外の画素(周辺画素15)の温度を推定するので、上記の式(A)の(i,j)が画素領域12の数だけ存在することになる。それ故、画素領域12の数だけ、Di,j(x,y)を求め、これらのDi,j(x,y)と畳み込み関数とから、複数の画素領域12及び周辺画素領域14を占める画素13,15の全体の温度を推定すればよい。
【0050】
図1の(A)に示す画像を、画像表示装置20の画像表示部10に表示した。そして、この画像をサーモグラフィによって撮像して得られたサーモグラフィ画像を図1の(B)に示す。更に、この画像に基づき、画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、画素領域12を占める画素13の温度及び周辺画素15の温度を推定した結果(温度分布推定結果・画像)を、便宜上、画像表示装置の画像表示部に表示した結果を、図1の(C)に示す。サーモグラフィ画像(図1の(B)参照)と温度分布推定結果・画像(図1の(C)参照)とは、ほど良く一致していることが判る。
【0051】
一般に、輝度が高い画素(発光素子)ほど、発熱が多く、温度が高くなる。そして、輝度が高い画素(発光素子)の周囲の画素(発光素子)の輝度がたとえ低いとしても、周囲の画素(発光素子)には、発熱の多い画素(発光素子)からの熱が流入してくる。実施例1にあっては、画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、画素領域12を占める画素13の温度及び周辺画素15の温度を推定する。このように、画素領域12を占める画素13の温度を推定するだけでなく、周辺画素15の温度を推定するので、画像表示部10における温度分布をより高い精度で推定することが可能となる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、複数の画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、複数の画素領域12のそれぞれを占める画素13の温度、及び、複数の画素領域12のそれぞれの周辺領域を占める画素(周辺画素15)の温度、あるいは又、複数の画素領域12のそれぞれを占める画素13以外の画素(周辺画素15)の温度を推定する。更には、複数の画素領域12に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、複数の画素領域12のそれぞれを占める画素13の温度、及び、周辺画素15の温度を推定し、更に、周知の畳み込み関数に基づき、複数の画素領域12及び周辺画素領域14を占める画素13,15の全体の温度を推定する。尚、複数の画素領域12とは、2以上の画素領域12を意味し、周辺画素領域14が重複している画素領域12の集合を指す。
【0053】
実施例2においても、画像表示部10に入力される画像データは、例えば、放送局から送信されてくるテレビジョン放送における映像信号であり、輝度情報(輝度信号Y)は、周知の方法に基づき画像データから求めることができる。また、画素領域12は、少なくとも1つの画素から成るが、具体的には、画素領域12を、実施例1と同様に、所定の輝度データ値以上の輝度データを有する連続した画素の集合から構成する。周辺画素15の数は、複数であり、温度分布推定関数に基づき、画像表示フレーム毎に、都度、決定される。画素13,15の温度推定は、1画像表示フレーム毎に行われる。図5に模式的に図示するように、或る画素領域12Aの周辺画素領域14Aが、この或る画素領域12Aに隣接する画素領域12Bの周辺画素領域14Bと重なり合った場合、複数の画素領域12A,12Bが存在するとして、複数の画素領域12A,12B及び周辺画素領域14A,14B(周辺画素領域14Aと周辺画素領域14Bの和集合の周辺画素領域14)を占める画素13,15の全体の温度を、周知の畳み込み関数に基づき推定する。このように、複数の画素領域12A,12B及び周辺画素領域14A,14Bを占める画素13,15の全体の温度を、周知の畳み込み関数に基づき推定するので、広い画像表示部10の領域(部分)において、一層高い精度で温度分布を推定することが可能となる。
【実施例3】
【0054】
実施例3は、実施例1及び実施例2の変形である。実施例3にあっては、推定された画素13,15の温度に基づき、画素の劣化度合い(具体的には、発熱に依る発光素子の劣化度合い)を推定し、推定された劣化度合いに基づき、画素の輝度を補償(補正)する輝度補償回路が画像表示部温度分布推定装置30に備えられている。ここで、劣化度合いとして、推定された画素の温度に基づく積算量(積算値)を挙げることができる。画素の輝度の補償(補正)は、1画素毎に行う。
【0055】
図6に、実施例3における画像表示装置の概念図を示す。尚、輝度補償回路は、積算計算回路31及び劣化算出回路32から構成される。
【0056】
実施例3にあっては、実施例1あるいは実施例2に基づき画像表示部温度分布推定装置30によって得られた各画素における温度推定値が、積算計算回路31に入力され、温度推定値に関する積算値が求められる。尚、画素13,15以外の画素における温度推定値は、所定の値(一定値)とすればよい。一方、劣化算出回路32には、温度推定値に関する積算値をパラメータとした、輝度劣化カーブに基づく輝度信号補正係数が記憶されている。そして、積算計算回路31では、温度推定値に関する積算値に基づく輝度信号補正係数と、入力画像データ(画像信号)とから、各画素における信号補正量が計算され、入力画像信号(入力映像信号)を補正した輝度補正信号が制御回路25を介して信号線制御回路23に送出され、更に画素に送出される。
【0057】
このような処理を、図7の概念図に示す。図7の(A)に模式的に示す表示画像において、温度分布を推定した状態を模式的に図7の(B)に示す。この状態においては、小さな四角で囲んだ画素領域及び周辺画素領域にあっては、小さな四角の中央部に位置する画素(便宜上、『画素A』と呼ぶ)の温度が高く、周辺に近づくに従い、画素の温度は低くなる。このような表示状態が長時間続くと、小さな四角の中央部に位置する画素A(発光素子)の温度による劣化が、周辺に位置する画素(発光素子)(便宜上、『画素B』と呼ぶ)の温度による劣化よりも激しくなる。それ故、画素に同じ値の輝度情報(輝度信号Y)が入力されても、画素Aは画素Bよりも暗くなる。それ故、輝度補償回路では、信号補正量を計算し、画素Aに送出する輝度信号の値を、画素Bに送出する輝度信号の値よりも高くする(図7(C)参照)。これによって、画素Aと画素Bとは同じ輝度の画像を表示することができる。
【0058】
このように、実施例3にあっては、画像表示部10における温度分布を推定することで、画像表示部10を構成する画素(発光素子)の熱による劣化を推定することが可能となり、更には、劣化した画素(発光素子)の輝度の補償(補正)を的確に行うことが可能となり、高品質、高品位の表示画像を提供することが可能となる。
【0059】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。本発明の画像表示装置は、ノート型パーソナルコンピュータ(図8の(A)参照)に組み込まれたモニター装置として使用することができるし、携帯電話(図8の(B)参照)やPDA、ゲーム機器に組み込まれたモニター装置、テレビジョン受像機として使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10・・・画像表示部、11,11R,11G,11B・・・画素、12,12A,12B・・・画素領域、13・・・画素領域を占める画素、14,14A,14B・・・周辺画素領域、15・・・周辺画素、20・・・画像表示装置、21・・・走査線制御回路、22・・・走査線、23・・・信号線制御回路、24・・・信号線、25・・・制御回路、30・・・画像表示部温度分布推定装置、31・・・積算計算回路、32・・・劣化算出回路、40・・・第1基板、41・・・層間絶縁層、42,44・・・コンタクトプラグ、43・・・配線、45・・・絶縁層、46・・・開口、51・・・ゲート電極、52・・・ゲート絶縁膜、53・・・ソース/ドレイン領域、54・・・チャネル形成領域、61・・・第1電極、62・・・第2電極、63・・・有機層、64・・・保護層、65・・・遮光層、66・・・接着層、67・・・第2基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定方法であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する画像表示部温度分布推定方法。
【請求項2】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定する請求項1に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項3】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定し、更に、畳み込み関数に基づき、該複数の画素領域及び周辺領域を占める画素の全体の温度を推定する請求項2に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項4】
画素領域に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項5】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定方法であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する画像表示部温度分布推定方法。
【請求項6】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定する請求項5に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項7】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定し、更に、畳み込み関数に基づき、該複数の画素領域を占める画素及びそれ以外の画素の温度を推定する請求項6に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項8】
画素領域に対応する画像データにおける輝度情報と温度分布推定関数とに基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素以外の画素の温度を推定する請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項9】
被対象物の温度分布測定結果と、被対象物を撮影することで得られた画像データとに基づき、予め、温度分布推定関数を求めておく請求項4又は請求項8に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項10】
温度分布推定関数はガウシアンフィルタから成る請求項4又は請求項8に記載の画像表示部温度分布推定方法。
【請求項11】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する画像表示部温度分布推定装置。
【請求項12】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定する請求項11に記載の画像表示部温度分布推定装置。
【請求項13】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置であって、
少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する画像表示部温度分布推定装置。
【請求項14】
複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定する請求項13に記載の画像表示部温度分布推定装置。
【請求項15】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置であって、
画像表示部温度分布推定装置は、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度を推定する画像表示装置。
【請求項16】
画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれの周辺領域を占める画素の温度を推定する請求項15に記載の画像表示装置。
【請求項17】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定する画像表示部温度分布推定装置を備えた画像表示装置であって、
画像表示部温度分布推定装置は、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する画像表示装置。
【請求項18】
画像表示部温度分布推定装置は、複数の画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素の温度、及び、該複数の画素領域のそれぞれを占める画素以外の画素の温度を推定する請求項17に記載の画像表示装置。
【請求項19】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させるプログラム。
【請求項20】
複数の画素が配列されて成る画像表示部の温度分布を画像データに基づき推定するために、少なくとも1つの画素から成る画素領域に対応する画像データにおける輝度情報に基づき、該画素領域を占める画素の温度、及び、該画素領域の周辺領域を占める画素の温度、あるいは又、該画素領域を占める画素以外の画素の温度を推定する処理を実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203314(P2011−203314A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67979(P2010−67979)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】