説明

画像記録装置、画像記録装置の制御方法、及びプログラム

【課題】複数のジョブ情報に基づき順次実行される画像記録処理を中断させる中断事象によって待機を余儀なくされる画像記録処理を減らすことが可能な画像記録装置、画像記録装置の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像記録部15は、上位装置より通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を記録媒体に対し順次行う。順位設定制御部21は、この記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、通知された複数のジョブ情報および前記画像記録装置の情報に基づき判定すると共に、その判定結果に基づいて、当該複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理の処理順序の設定を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフィルム等の記録媒体に画像を記録する画像記録技術に関し、特に画像記録処理を中断させる事象の発生に対処する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の記録媒体に対して画像を記録する画像記録装置のひとつとしては、インクジェット方式のフルライン型カラープリンタが知られている。フルライン型カラープリンタでは、記録ヘッドを、記録媒体を搬送する方向(副走査方向)に所定の間隔に離間させて、インク色毎に配設している。この記録ヘッドは、インク吐出のための複数のノズルが当該副走査方向に対して直交する方向(主走査方向)に記録媒体の幅以上の長さに亘って形成した、ノズル列を有する。
【0003】
このようなカラープリンタでは、例えば記録ヘッドを駆動せずに長時間放置した場合や、所定の枚数以上の記録媒体に対し画像記録処理を行った場合に、インクの吐出不安定や不吐出が記録ヘッドで生じるようになる。そこで、インクの吐出動作を回復させるために、記録ヘッドに対する回復処理を行うことが一般に知られている。この回復処理は、たとえ記録処理の途中であっても行うことがある。
【0004】
このような回復処理の技術に関し、例えば特許文献1には、インクジェットプリンタにおいて、直近に実行した回復処理後の経過時間若しくは印刷枚数が予め設定した閾値以上となったときに、ノズルヘッドの回復処理を実行するという技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−314378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、記録処理の実行中に回復処理の実行タイミングが到来すると、その記録処理を中断して回復処理を実行し、その回復処理の終了後に、残りの記録処理を再開させている。ここで、例えば異なるユーザから複数のジョブ情報(記録処理要求指定情報)が上位装置から通知され、そのジョブ情報の1つに回復処理を開始させる記録枚数の指示が含まれていた場合を想定する。この場合、特許文献1の技術では、その指示を含むジョブ情報についてのジョブ(画像記録処理)において回復処理が実行されるため、このジョブに後続して実行される他のジョブについてのジョブ情報を通知したユーザは、この回復処理が終了する時間まで、自己のジョブの実行を待たされてしまうことになる。
【0006】
そこで本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、複数のジョブ情報に基づき順次実行される画像記録処理を中断させる中断事象によって待機を余儀なくされる画像記録処理を減らすことが可能な画像記録装置、画像記録装置の制御方法、及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明の態様のひとつである画像記録装置は、画像記録処理を行う画像記録部を有し、通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置において、画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、通知された複数のジョブ情報に基づき判定すると共に、当該判定の結果に基づいて、複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理の処理順序の設定を変更する順位設定制御部を少なくとも備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様のひとつである画像記録装置の制御方法は、画像記録処理を行う画像記録部を有し、通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置の制御方法であって、画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、通知された複数のジョブ情報に基づき判定することと、判定の結果に基づいて、複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理の処理順序の設定を変更することと、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の更なる別の態様のひとつであるプログラムは、画像記録処理を行う画像記録部を有し、通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置の制御を演算処理装置に行わせるためのプログラムであって、画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、通知された複数のジョブ情報に基づき判定する処理と、判定の結果に基づいて、複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理の処理順序の設定を変更する処理と、演算処理装置に行わせる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以上のようにすることにより、複数のジョブ情報に基づき順次実行される画像記録処理を中断させる中断事象によって待機を余儀なくされる画像記録処理を減らすことが可能な画像記録装置、画像記録装置の制御方法、及びプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向を副走査方向とし、この搬送方向に対し直交する方向を主走査方向と定義する。
【0012】
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置を概念的なブロック構成で示している。また、図2は、本発明の実施形態に係る画像記録装置の給送部、搬送機構、昇降機構、回復機構、突き当て部、画像記録部及び回収部の配置例を示している。更に、図3は、本発明の実施形態に係る画像記録装置の回復動作時の搬送機構、昇降機構、回復機構、突き当て部、及び画像記録部の配置例を示している。
【0013】
まず、本発明の実施形態に係る画像記録装置1の記録処理について説明する。この画像記録装置1は、記録媒体31が搬送経路を搬送される過程で、複数のノズルを有する記録ヘッド17から記録媒体31へインクを吐出して記録処理を行う。
【0014】
画像記録装置1は、制御部20と、給送部2と、搬送機構3と、昇降機構6と、回復機構10と、突き当て部12と、画像記録部15と、入力部18及び回収部19とを備えている。ここで、制御部20は、画像記録装置1全体の制御を行う。給送部2は、記録媒体31を給送して搬送する。搬送機構3は、給送部2から受け渡された記録媒体31を搬送する。昇降機構6は、搬送機構3を画像記録位置及び待避位置に昇降する。突き当て部12は、昇降機構6が上昇させる搬送機構3を画像記録位置に留めるためのものである。回復機構10は、記録媒体31に対して行われる画像記録処理の品位を回復させる回復処理を画像記録部15に対して実施する。画像記録部15は、記録媒体31への画像記録処理を行う。回収部19は、記録処理された記録媒体31を排出して収納する。
【0015】
次に、画像記録装置1の各構成要素について更に説明する。
制御部20は、制御機能及び演算機能を有する演算処理装置における例えばMicro Processor Unit(MPU)と制御プログラムを記憶するRead Only Memory(ROM)やMPUのワークメモリとなるRandom Access Memory(RAM)等とからなる図示しない処理回路と、画像記録装置1の制御に関する設定値等を記憶している図示しない不揮発性メモリと、を少なくとも有している。
【0016】
制御部20は、順位設定制御部21と、記憶部22と、を少なくとも備えている。なお、制御部20では、記録処理要求指定情報を一時的に記憶しておく記憶部22を例えばRAMにより構成する。また、制御部20は、MPUが制御プログラムをROMから読み出して実行することにより、画像記録装置1の各構成要素の制御を行い、このとき、制御部20は、ジョブの処理順序を設定する順位設定制御部21としても機能する。
【0017】
なお、MPUに制御プログラムを実行させることで制御部20を順位設定制御部21として機能させる代わりに、MPUによって制御される信号処理回路(ハードウェア)として順位設定制御部21を構成して制御部20に備えるようにしてもよい。
【0018】
給送部2は、給送トレイ2a−1乃至2a−n(nは1以上の整数)と、給送駆動部2b−1乃至2b−nと、給送媒体検出部2cとを有している。
給送トレイ2a−1乃至2a−nは、シート状の記録媒体31を収容するものであり、いわゆる給送カセット等で構成されている。
【0019】
給送駆動部2b−1乃至2b−nは、給送トレイ2a−1乃至2a−nに収容された最上面の記録媒体31に当接して1枚ずつ取り出し、搬送機構3側に受け渡すものであり、例えば給送ローラで構成されている。
【0020】
給送媒体検出部2cは、記録媒体31が給送されたことを検出するものである。給送媒体検出部2cは、例えば光学式の透過センサ、光学式の反射型センサ、又は静電容量型センサ等のいずれかを備えて構成されており、副走査方向における記録媒体31の例えば先端を検出する。
【0021】
搬送機構3は、図2に示されているように、記録媒体31の搬送面を複数の記録ヘッド17のインク吐出口に対向させて設けられている。搬送機構3のフレーム内には副走査方向に離間して駆動ローラ32と従動ローラ33とが設けられており、この駆動ローラ32及び従動ローラ33には無端の搬送ベルト34が回動可能に架設されている。また、搬送機構3には、駆動ローラ32の回転軸に接続されている搬送駆動部4と、従動ローラ33の回転軸に接続されている搬送情報生成部5と、図示しない少なくとも1つの吸引ファンとが設けられている。ここで、搬送情報生成部5は、例えばロータリエンコーダを備えて構成されており、搬送ベルト34の所定量の移動の度にパルス信号を搬送情報として生成して制御部20へ出力する。また、吸引ファンは、制御部20の指示に従って負圧を発生させて記録媒体31を搬送ベルト34上に吸着させる。なお、搬送機構3は、この他に被突き当て部材14が設けられているが、被突き当て部材14については後述する。
【0022】
搬送機構3は昇降機構6によって昇降させることができる。昇降機構6は、図2に示すように、昇降台35、巻き取りローラ36、昇降駆動部9、昇降従動ローラ37、索条38、昇降情報生成部8、及び待避位置検出部7を備えて構成されている。ここで、昇降台35には搬送機構3が搭載されている。また、巻き取りローラ36は索条38の巻き取りを行うものであり、昇降駆動部9によって制御部20からの制御信号に基づき駆動される。昇降従動ローラ37は、昇降台35の四隅及び給送側上方に配置されており、索条38を懸架している。なお、索条38は、搬送機構3と昇降台35とを、昇降従動ローラ37を介して吊り下げるものであり、例えばワイヤで構成されている。この索条38の一方の端部は巻き取りローラ36に接続されており、他方の索条端部38aは、画像記録装置1の図示しないフレームに接続されている。
【0023】
待避位置検出部7は、昇降台35が待避位置まで下降したことを検知するものである。待避位置検出部7は、例えば光学式の透過センサや光学式の反射型センサ等により構成されており、昇降台35の待避位置への到達をエッジ変化情報として検出して制御部20へ通知する。
【0024】
昇降情報生成部8は、エンコーダ等により構成されており、巻き取りローラ36の軸に取り付けられている。昇降情報生成部8は、巻き取りローラ36が所定量回転する毎にパルス信号を生成し、昇降情報として制御部20へ通知する。
【0025】
回復機構10は、ワイプ部材39と、インク受け部材40と、サイドフレーム41と、回復機構駆動部11によって構成されている。
ワイプ部材39は、記録ヘッド17のノズル面に付着したインクやゴミを拭き取るものであり、インク受け部材40は、ワイプ部材39が拭き取ったインクやゴミを受け取るものである。このワイプ部材39及びインク受け部材40は、記録処理の妨げにならないように、図2に示すように、記録処理中には記録ヘッド17の間に待避する。
【0026】
サイドフレーム41は、ワイプ部材39及びインク受け部材40を支持するものであり、記録媒体31の搬送方向に対する両側端のそれぞれに長円形状のスリット42によって構成されている。
【0027】
なお、不図示の回復機構駆動部11は、回復機構10を記録媒体31の搬送方向に移動させるものである。
突き当て部12は、突き当て部材13と被突き当て部材14とを備えている。ここで、突き当て部材13は回復機構10に固定されており、被突き当て部材14は搬送機構3に固定されている。昇降機構6が搬送機構3を上昇させると、突き当て部材13と被突き当て部材14とが嵌合する。ここで、搬送機構3が記録位置に達したときにこの両者が嵌合するように、突き当て部材13と被突き当て部材14とを形成しておく。なお、本明細書では、昇降機構6を制御して搬送機構3を上昇させることで、突き当て部材13と被突き当て部材14とが嵌合して搬送機構3が記録位置に停止する動作制御処理を、突き当て処理と称することとする。
【0028】
画像記録部15は、突き当て部材13、記録ヘッド駆動部16、記録ヘッド17、スリット43、及び接続部材44を備えている。
突き当て部材13は、前述したように、記録処理時における画像記録部15と搬送機構3との距離を一定に保つために、搬送機構3の被突き当て部材14と嵌合させる部材である。
【0029】
記録ヘッド駆動部16は、制御部20から送られてくる、記録データに基づいた制御信号に基づき、記録ヘッド17の各ノズルを個々に駆動する駆動信号を生成して記録ヘッド17に出力する。
【0030】
記録ヘッド17は、インクを吐出する複数のノズルを直線状に、且つ画像記録装置1の設計に基づく最大幅の記録媒体31を越える長さに亘って配設されており、駆動信号により当該複数ノズルからそれぞれインク滴を吐出して記録媒体31に対し記録処理を行う。
【0031】
スリット43は、回復機構10を支持するためのものであり、スリット42と直交する上下方向に形成されている。また、接続部材44は、スリット42とスリット43とを重ね合わせて接続するものであり、例えばビスで構成されている。
【0032】
入力部18は、いわゆる操作パネルであり、画像記録装置1のユーザによる指示操作によって入力された記録処理に関係する各種情報を取得して制御部20に通知する。例えば、回復処理を実施するための累計枚数または供給トレイの満杯時の枚数などを設定する。
【0033】
回収部19は、例えば収納トレイ19aと、排出駆動部19bと、排出媒体検出部19cとを有して構成されている。
収納トレイ19aは、排出された記録媒体31を収容するものであり、いわゆる回収トレイ等で構成されている。
【0034】
排出駆動部19bは、搬送機構3により搬送された記録媒体31を排出するものであり、例えば排出ローラ対で構成されている。
排出媒体検出部19cは、記録媒体31が排出されたことを検出するものである。例えば光学式の透過センサ、光学式の反射型センサ、又は静電容量型センサ等で構成され、排出された記録媒体31の例えば後端を検出する。なお、排出媒体検出部19cは、必要に応じて記録媒体31の後端以外の位置を検出してもよい。
【0035】
制御部20は、給送部2と、搬送機構3と、昇降機構6と、回復機構10と、画像記録部15と、回収部19とをそれぞれ制御して、記録媒体31への記録処理を行わせる。また、制御部20は、順位設定制御部21と、記憶部22とを少なくとも備えている。
【0036】
順位設定制御部21は、直近に発生した記録処理の中断事象以降に実行した記録処理の回数(画像記録処理を行ったカットシートである記録媒体31の累計枚数)を、記録処理累計枚数として計数する。更に、順位設定制御部21は、計数した記録処理累計枚数と、予め設定された記録処理可能枚数に基づいて算出した記録処理の中断事象の開始指示値と、記憶部22に記憶された記録処理要求指定情報とに基づいて、記録処理順序を変更する。これについての詳細は後述する。
【0037】
記憶部22は、記録データを含む記録処理要求指定情報を一時的に記憶しておく。
上位装置23は、本発明の実施形態に係る画像記録装置1の外部機器として、例えばLocal Area Network(LAN)等を介して接続される。この上位装置23は、この画像記録装置1に記録処理を行わせるユーザによって操作されるコンピュータに相当し、画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報としてジョブ情報を通知する。
【0038】
通知されるこのジョブ情報には、記録処理を行う際の記録データと、記録媒体31のサイズ指定情報と、記録処理を行う際の搬送方向における余白値の指定情報と、記録処理を行う記録媒体31の枚数の指定情報と、が含まれる。画像記録装置1の制御部20は、上位装置23から通知されたジョブ情報を受け取ると、このジョブ情報を、記録処理要求指定情報として記憶部22に記憶させておく。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る画像記録装置1の記録媒体31の搬送動作と記録処理動作とについて詳細に説明する。
制御部20は、上位装置23より記録処理開始の指示を受け取ると、搬送機構3の搬送駆動部4を制御して搬送ベルト34の回動を開始させる。次に、制御部20は、給送部2の例えば給送駆動部2b−1を制御して、給送トレイ2a−1に積載された記録媒体31を1枚ずつピックアップさせて搬送機構3へ受け渡し搬送させる。
【0040】
搬送経路中を搬送された記録媒体31は、搬送経路の上流側に配設された給送媒体検出部2cによってその先端が検出される。給送媒体検出部2cは、検出したエッジ信号を制御部20へ出力する。制御部20は、このエッジ信号を受信すると、当該エッジ信号を、記録処理タイミングを生成するためのトリガ信号として利用して制御処理を進める。
【0041】
その後、記録媒体31は、この搬送経路の下流側へ搬送されると、やがて搬送機構3の搬送ベルト34上に吸着される。
ところで、搬送情報生成部5におけるロータリエンコーダのパルス信号は、搬送情報であるが、記録ヘッド17によって記録処理される際の同期信号としてもこの信号は用いられる。制御部20は、記録ヘッド17のノズルからのインク吐出を開始させるためのタイミングを、パルス信号数の累積値として予め不揮発性メモリに記憶している。制御部20は、このパルス信号数が、搬送情報生成部5により生成されたロータリエンコーダのパルス信号数と一致したタイミングで画像記録部15の記録ヘッド駆動部16を制御し、搬送ベルト34上に吸着されている記録媒体31へ、記録ヘッド17のノズルからインクを吐出させる。
【0042】
制御部20は、予め不揮発性メモリに記憶させておいた記録ヘッド17の記録処理タイミング(前述したパルス信号数の累積値)を記録ヘッド駆動部16に設定する。更に、制御部20は、記憶部22に記憶させておいた記録処理要求指定情報に基づき、記録処理する際の1ライン毎の記録データ(1ライン〜kライン、kは2以上の整数)を記録ヘッド駆動部16に出力して記録媒体31への記録処理を行わせる。
【0043】
このようにして記録処理がされた後の記録媒体31は、搬送機構3の下流側に設けられた回収部19へ受け渡される。すると、記録媒体31は、排出駆動部19bに挟持されて搬送経路の更に下流側に搬送される。この後、記録媒体31は、その後端部を排出媒体検出部19cによりエッジ検出されて、収納トレイ19aに収納される。
【0044】
以上のように、画像記録装置1は、上位装置23より通知されるジョブ情報に基づいた画像記録処理を記録媒体31に対し行うものである。
次に、本発明の実施形態に係る昇降機構6と、回復機構10と、画像記録部15による回復処理方法について説明する。
【0045】
制御部20は、前述した記録処理累計枚数が、記録処理の中断事象のひとつである、回復処理の開始指示値に一致したことを検出すると、回復処理を開始する。制御部20は、記録処理を実行中の場合には、この時点において記録媒体31の給送を行っている給送部2の例えば給紙駆動部2b−1を停止する。その後、制御部20は、記録処理が既に開始されていた記録媒体31が記録処理を終えて回収部19の収納トレイ19aに全て収納されるまで待機し、その後、搬送機構3の搬送駆動部4を停止させる。
【0046】
次に、制御部20は、回復処理を実行するため、昇降機構6の昇降駆動部9を駆動し、昇降機構6の昇降台35が待避位置検出部7により検出されるまで昇降機構6を降下させる。このとき、搬送機構3及び回復機構10も昇降機構6とともに降下する。但し、回復機構10のワイプ部材39及びインク受け部材40が、回復処理のため搬送方向上流側に移動しても記録ヘッド17と接触しない位置まで降下すると、回復機構10は、接続部材44と画像記録部15に対して固定されているスリット43とによって、画像記録部15に吊り下げられた状態となる。
【0047】
次に、制御部20は、回復機構10の回復機構駆動部11を駆動して、回復機構10を搬送方向上流側に移動させる。その後、スリット42の端に接続部材44が十分に突き当たったタイミングで、制御部20は、回復機構駆動部11を停止させる。このとき、ワイプ部材39及びインク受け部材40は、記録ヘッド17の真下の離間した位置に到達する。
【0048】
ここで、制御部20は、インクを加圧して記録ヘッド17から吐出させる。更に、制御部20は、昇降機構6の昇降駆動部9を駆動して昇降機構6を上昇させる。昇降機構6の上昇に伴い、搬送機構3及び回復機構10が上昇し、やがてワイプ部材39と記録ヘッド17とが当接する。このとき、制御部20は、図示されないワイプ部材駆動部を駆動して、ワイプ部材39を搬送方向と直交する方向に移動させ、記録ヘッド17のノズル面に付着したインクやゴミを取り除く。
【0049】
以上のようにして記録ヘッド17の回復処理が行われる。
次に、本第一実施形態に係る順位設定制御部21により行われる、画像記録処理の中断事象のひとつである、回復処理の開始時期に応じた画像記録処理の順序の制御について、図4を用いて説明する。
【0050】
図4は、ジョブ51乃至55の各ジョブ(画像記録処理)における記録処理要求枚数と、回復処理の開始指示との関係を示している。なお、以降の図4の説明においては、ジョブ51乃至ジョブ55を、それぞれJa−1乃至Ja−5と称することとする。
【0051】
図4においては、Ja−1乃至Ja−5の各ジョブにおける記録処理要求枚数を、それぞれ、60枚、20枚、50枚、20枚、70枚としている。また、回復処理を直近に実施してから現時点までに画像記録処理を行った記録媒体31の累計枚数(すなわち、前述した記録処理累計枚数)をX枚とする。更に、現時点から次回の回復処理を実施するまでに画像記録処理を行うことの可能な記録媒体31の枚数(記録可能残り枚数と称することとする)を50枚としている。
【0052】
この図4の場合において、制御部20は、回復処理の実施後にα枚の記録媒体31に対し画像記録処理を行う度に、このタイミングで回復処理のための制御処理の実行を開始するものとする。この値αを回復処理開始指示値と称することとする。従って、このとき、下記の式
α=X+50
が成立する。なお、本実施形態においては、この回復処理開始指示値αは、予め設定されている固定値とする。但し、この回復処理開始指示値αをユーザが任意に設定するようにしてもよい。
【0053】
図4において、(a)は、順位設定制御部21による制御が行われる前の各ジョブの処理順序を示している。すなわち、(a)は、上位装置23から通知されたJa−1乃至Ja−5が、処理順位の初期設定として、この順序(上位装置23から通知された順序)で処理待ちであることを表している。
【0054】
ここで、Ja−1の記録処理要求枚数は60枚である。従って、この(a)の順序通りに画像記録処理を順次行うのであれば、Ja−1についての画像記録処理の途中(α枚の記録媒体31に対する記録処理を終えた時点)で、記録媒体31の処理枚数が回復処理開始指示値αに到達することになる。制御部20は、このタイミングで回復処理を開始させるので、Ja−1についての画像記録処理の完了時刻は、この回復処理の実施時間分だけ当然遅くなる。しかも、この(a)の順序通りに画像記録処理を実行する場合には、この回復処理の実施により、Ja−1についてのみならず、以降のJa−2乃至Ja−5の全てについてまでも、画像記録処理の完了を遅らせることになる。
【0055】
順位設定制御部21は、この(a)の処理順序で画像記録処理を実施すると、中断事象である回復処理が、Ja−1についての画像記録処理の実行途中で発生することを、Ja−1のジョブ情報に含まれている記録処理要求枚数に基づき判定する。そして、この中断事象の発生を検出したときには、Ja−2乃至Ja−5のうちから、回復処理開始指示値αを超えることなく画像記録処理を終了できる記録処理要求枚数を持つジョブの検索を行う。
【0056】
図4において、(b)は、順位設定制御部21による制御が行われた後の各ジョブの処理順序を示している。すなわち、(b)は、順位設定制御部21により行われた、回復処理開始指示値αを超えないで記録処理が終了できるジョブの検索結果を反映したものである。
【0057】
前述したように、図4において、Ja−2及びJa−4の記録処理要求枚数はどちらも20枚である。従って、この両者についての記録処理を続けて実行しても、その合計の記録処理要求枚数は40枚であり、回復処理開始指示値αには到達しない。しかし、それ以外のジョブの組み合わせでは、合計の記録処理要求枚数が回復処理開始指示値αを超えてしまう。例えば、Ja−2とJa−3との組み合わせにおける合計の記録処理要求枚数は70枚であり、回復処理開始指示値αを超えてしまう。
【0058】
このように、順位設定制御部21は、(a)の場合においてJa−1よりも後の処理順であったジョブから、回復処理開始指示値αを超えることなく画像記録処理を終了できる記録処理要求枚数を持つジョブの検索を、(a)の順序で行う。そして、この検索により発見されたジョブを、その発見順に並べ替える。すると、この結果として、(b)に示したように、順位設定制御部21は、Ja−2の記録処理順位を1番にし、更に、Ja−4の記録処理順位を2番にする。なお、これ以降の順序は上位装置23から通知された順序(初期設定の順序)に従うようにする。順位設定制御部21は、このようにして、各ジョブの記録処理順位を、その初期設定から変更する。
【0059】
順位設定制御部21により以上のようにして各ジョブについての画像記録処理の順序が変更されることにより、Ja−2及びJa−4についての画像記録処理は、回復処理開始指示値αのタイミングで実施される回復処理よりも前に完了させることができる。従って、回復処理の実施による回画像記録処理の完了の遅延が回避される。
【0060】
なお、前述したように、制御部20は、記録処理累計枚数Xが回復処理開始指示値αに到達したタイミングで回復処理を開始させる。順位設定制御部21は、この回復処理が終了したときに、記録処理累計枚数Xの値をゼロクリアし、以降に画像記録処理を行う記録媒体31の枚数の計数を開始する。
【0061】
次に図5について説明する。図5は、本第一実施形態においてジョブ処理順位の制御のために制御部20が行う制御処理の処理内容をフローチャートで示している。
図5に示した処理は、制御部20の不図示の不揮発性メモリに予め記憶しておいた制御プログラムをMPUが読み出して実行することにより実現される。制御部20は、この制御プログラムをMPUが実行することで、順位設定制御部21として機能する。
【0062】
制御部20は、上位装置23から複数のジョブ情報が通知された後、記憶部22に記憶されたジョブ情報に基づく画像記録処理を順次読み出して実行する毎に、その実行開始前に、この図5の制御処理を実行する。また、制御部20は、その画像記録処理の実行対象であるジョブJ−n(nは、その通知順を示す1以上の整数)に対し、この図5の制御処理を実行する。
【0063】
まず、制御部20は、ステップS1において、直近に実行された画像記録処理が終了して、次の画像記録処理の実行を開始するタイミングとなったか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部20は、画像記録処理の実行開始タイミングとなったと判定した場合(判定結果がYES)、ステップS2に処理を移す。一方、制御部20は、画像記録処理の実行開始タイミングに未だ達していないと判定した場合(判定結果がNO)、判定結果がYESとなるまでステップS1の処理を繰り返す。
【0064】
次に、制御部20は、ステップS2において、前述した記録処理累計枚数と、ジョブJ−nについての記録処理要求枚数とを加算した枚数が、前述した回復処理開始指示値α以下であるか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部20は、この枚数が回復処理開始指示値α以下と判定した場合(判定結果がYES)、この制御処理を終了する。すなわち、この場合には、ジョブJ−nに基づく画像記録処理の処理順位の変更は行われない。一方、制御部20は、この枚数が回復処理開始指示値αよりも大きいと判定した場合(判定結果がNO)、ステップS3に処理を移す。制御部20は、このステップS2の判定結果がNOとなることによって、ジョブJ−nに基づく画像記録処理を実行するとその途中で画像記録処理を中断して回復処理を実施することになるとの判定を下している。つまり、制御部20は、このステップS2の判定処理によって、ジョブJ−nに基づく画像記録処理を中断事象の発生前に終了できるか否かの判定を行っているのである。
【0065】
次に、制御部20は、ステップS3において、検索カウンタmを「1」に初期化すると共に、処理順位カウンタpを「0」に初期化する処理を行い、ステップS4に処理を移す。
【0066】
次に、制御部20は、ステップS4において、ジョブJ−(n+m)が記憶部22に存在するか否かを判定する処理を行う。制御部20は、このステップS4の処理によって、回復処理が途中で実施されることになる特定画像記録処理(ここではジョブJ−nに基づく画像記録処理)よりも後の画像記録処理の検索を行っている。ここで、制御部20は、ジョブJ−(n+m)が存在すると判定した場合(判定結果がYES)、ステップS5に処理を移す。一方、制御部20は、ジョブJ−(n+m)が存在しないと判定した場合(判定結果がNO)、ステップS9に処理を移す。
【0067】
次に、制御部20は、ステップS5において、前述した記録処理累計枚数と、ジョブJ−(n+m)についての記録処理要求枚数とを加算した枚数が、前述した回復処理開始指示値α以下であるか否かを判定する処理を行う。制御部20は、このステップS5の処理によって、ジョブJ−(n+m)についての画像記録処理により記録処理される記録媒体31の枚数が、次の回復処理の実施開始までに処理することのできるものであるか否かの判定を行っている。つまり、制御部20は、このステップS5の判定処理によって、ジョブJ−(n+m)に基づく画像記録処理を中断事象の発生前に終了できるか否かの判定を行っているのである。
【0068】
制御部20は、このステップS5の判定処理において、加算した枚数が回復処理開始指示値α以下であると判定した場合(判定結果がYES)、ステップS6に処理を移す。一方、制御部20は、加算した枚数が回復処理開始指示値よりも大きいと判定した場合(判定結果がNO)、ステップS8に処理を移す。
【0069】
次に、制御部20は、ステップS6において、処理順位カウンタpを1だけ進める処理を行い、ステップS7に処理を移す。
次に、制御部20は、ステップS7において、ジョブJ−(n+m)の記録処理順位を、処理順位カウンタpの値に変更する処理を行い、ステップS8に処理を移す。
【0070】
次に、制御部20は、ステップS8において、検索カウンタmを1だけ進める処理を行い、ステップS4に処理を移す。
また、制御部20は、ステップS9において、ジョブJ−nの記録処理順位を、処理順位カウンタpの値に1を加算した値に変更する処理を行い、その後、この制御処理を終了する。従って、処理順位カウンタpの値が0である場合、すなわち、ステップS3に続き初めて行われたステップS4の判定結果がNOの場合には、ジョブJ−nに基づく画像記録処理の処理順位は、結局「1」となり、その変更は行われない。
【0071】
以上の制御処理が制御部20で実行されることにより、前述したジョブ処理順位の制御が制御部20で行われる。
以上説明したように、本発明の第一実施形態によれば、順位設定制御部21により、記録処理中断事象のひとつである回復処理の発生時期を判定し、その判定結果に基づいてジョブの処理順序を変更する。この結果、回復処理開始指示値αで示されるタイミングで画像記録処理を完了できるジョブについては優先的にその処理が行われるので、そのジョブに基づく画像記録処理については、その完了が回復処理により遅延することが回避される。
【0072】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、本第二実施形態の説明においては、前述した本発明の第一実施形態と共通の構成要素には同一符号を付すこととする。
本第二実施形態に係る画像記録装置1の構成は、図1に示した本発明の第一実施形態におけるものと同一であり、本第二実施形態に係る画像記録装置1の各構成要素の配置も、図2及び図3に示した第一実施形態における配置例と同一である。更に、本第二実施形態に係る画像記録装置1における記録媒体31の搬送動作と記録処理動作とについても、第一実施形態におけるものと同一である。
【0073】
前述した本発明の第一実施形態に係る画像記録装置1では、順位設定制御部21が、回復処理の開始時期に応じて画像記録処理の順序を制御するというものであった。これに対し、本第二実施形態に係る画像記録装置1では、順位設定制御部21が、給送トレイ2a−1乃至2a−nに装填されている記録媒体31の残量に応じて画像記録処理の順序を変更する。こうすることで、画像記録処理の中断事象のひとつである、給送トレイ2a−1乃至2a−nのひとつから記録媒体31が尽きても、記録媒体31が残存しているものに対する画像記録処理の完了にまで遅延が生じることを回避する。
【0074】
本第二実施形態に係る順位設定制御部21により行われる、画像記録処理の中断事象のひとつである、記録媒体31の補充作業の実施時期に応じた画像記録処理の順序の制御について、図6を用いて説明する。
【0075】
図6は、ジョブ61乃至64の各ジョブ(画像記録処理)における記録媒体31のサイズ指定及び記録処理要求枚数と、記録媒体31のサイズ毎の記録可能枚数との関係を示している。
【0076】
なお、以降の図6の説明においては、ジョブ情報における記録媒体31のサイズ指定が「A3サイズ」であるジョブ61及び64をそれぞれJa−1及びJa−2と称することとする。また、ジョブ情報における記録媒体31のサイズ指定が「A4サイズ」であるジョブ62及び63をそれぞれJb−1及びJb−2と称することとする。更に、「A3サイズ」である記録媒体31は給送トレイ2a−1に積載し、「A4サイズ」である記録媒体31は給送トレイ2a−2に積載するものとする。
【0077】
また、図6においては、記録媒体31のサイズ指定が「A3サイズ」であるJa−1及びJa−2における記録処理要求枚数を、それぞれ50枚及び60枚としている。また、記録媒体31のサイズ指定が「A4サイズ」であるJb−1及びJb−2における記録処理要求枚数を、それぞれ20枚及び40枚としている。更に、直近に記録媒体31を給送トレイ2a−1及び2a−2に補充してから現時点までに画像記録処理を行った記録媒体31の累計枚数(すなわち、前述した記録処理累計枚数)をそれぞれXa枚及びXb枚とする。なお、この直近の記録媒体31の補充時では、例えば、給送トレイ2a−1及び2a−2の両方に記録媒体31をそれぞれ満杯に補充したものとする。
【0078】
更に、図6においては、現時点において、給送トレイ2a−1に残存している「A3サイズ」である記録媒体31の残存枚数(補充を新たに行うことなく画像記録処理を行うことの可能な記録媒体31の枚数)を40枚としている。また、現時点において、給送トレイ2a−2に残存している「A4サイズ」である記録媒体31の残存枚数を70枚としている。
【0079】
なお、残存枚数は満杯補充枚数と補充してから現時点までに画像記録処理を行った記録媒体31の累計枚数との差となる。
この図6の場合では、補充直後では、給送トレイ2a−1における「A3サイズ」の記録媒体31の積載枚数が常に満杯枚数のα枚となり、給送トレイ2a−2における「A4サイズ」の記録媒体31の積載枚数が常に満杯枚数のβ枚となるように記録媒体31を補充するものとする。従って、記録媒体31の補充後に、画像記録処理を、「A3サイズ」の記録媒体31に対しα枚行ったとき若しくは「A4サイズ」の記録媒体31に対しβ枚行ったときに、「A3サイズ」若しくは「A4サイズ」の記録媒体31のどちらかが尽きることになる。以下、これらの値α及びβを、それぞれ、A3サイズ記録可能指示値及びA4サイズ記録可能指示値と称することとする。従って、このとき、下記の式
α=Xa+40
β=Xb+70
が成立する。なお、本実施形態においては、これらの値α及びβは、予め設定されている固定値とする。但し、これらの値α及びβをユーザが任意に設定するようにしてもよい。
【0080】
図6において、(a)は、順位設定制御部21による制御が行われる前の各ジョブの処理順序を示している。すなわち、(a)は、上位装置23から通知されたJa−1及びJa−2並びにJb−1及びJb−2が、処理順位の初期設定として、Ja−1、Jb−1、Jb−2、Ja−2の順序(上位装置23から通知された順序)で処理待ちであることを表している。
【0081】
次に、図6において、(b)は、Ja−1のジョブ情報とサイズ指定情報が同一であるジョブについての、順位設定制御部21による制御が行われる前の処理順序を示している。すなわち、(b)は、ジョブ情報に含まれるサイズ指定情報が「A3サイズ」であるJa−1及びJa−2が、処理順位の初期設定として、Ja−1、Ja−2の順序で処理待ちであることを表している。
【0082】
また、図6において、(c)は、Ja−1のジョブ情報とサイズ指定情報が異なる(ここでは、Jb−1のジョブ情報とサイズ指定情報が同一である)ジョブについての、順位設定制御部21による制御が行われる前の処理順序を示している。すなわち、(c)は、ジョブ情報に含まれるサイズ指定情報が「A4サイズ」であるJb−1及びJb−2が、処理順位の初期設定として、Jb−1、Jb−2の順序で処理待ちであることを表している。
【0083】
ここで、Ja−1の記録処理要求枚数は50枚である。従って、(a)の順序通りに画像記録処理を行うのであれば、Ja−1についての画像記録処理の途中(α枚の記録媒体31に対する記録処理を終えた時点)で、「A3サイズ」である記録媒体31の処理枚数がA3サイズ記録可能指示値αに到達することになる。このとき、Ja−1についての画像記録処理を完了させるためには、「A3サイズ」である記録媒体31を給送トレイ2a−1に補充しなければならない。従って、Ja−1についての画像記録処理の完了時刻は、この記録媒体31の補充作業の実施時間分だけ当然遅くなる。しかも、この(a)の順序通りに画像記録処理を実行する場合には、この補充作業の実施により、Ja−1についてのみならず、以降のJa−2についてはもちろんのこと、Jb−1及びJb−2についてまでも、画像記録処理の完了を遅らせることになる。
【0084】
順位設定制御部21は、この(a)の処理順序で画像記録処理を実施すると、中断事象である記録媒体31の補充作業が、Ja−1についての画像記録処理の実行途中で発生することを、Ja−1のジョブ情報に含まれている記録処理要求枚数に基づき判定する。ここで、この中断事象の発生を検出したときには、Ja−1についての画像記録処理の対象とは異なる、「A4サイズ」の記録媒体31をサイズ指定情報としてジョブ情報に有しているジョブを検索する。そして、このようにして発見されるジョブのうちから、A4サイズ記録可能指示値βを超えることなく画像記録処理を終了できる記録処理要求枚数を持つジョブの検索を行う。
【0085】
図6において、(d)は、順位設定制御部21による制御が行われた後の各ジョブの処理順序を示している。すなわち、(d)は、順位設定制御部21により行われた、A4サイズ記録可能指示値βを超えないで記録処理が終了できるジョブの検索結果を反映したものである。
【0086】
前述したように、図6において、「A4サイズ」の記録媒体31をサイズ指定情報としてジョブ情報に有しているJb−1及びJb−2の記録処理要求枚数はそれぞれ20枚及び40枚である。従って、この両者についての記録処理を続けて実行しても、その合計の記録処理要求枚数は60枚であり、A4サイズ記録可能指示値βには到達しない。しかし、「A3サイズ」の記録媒体31をサイズ指定情報としてジョブ情報に有しているJa−2は、記録媒体31を補充しない限り、その画像記録処理を完了させることはできない。
【0087】
このように、順位設定制御部21は、(a)の場合においてJa−1よりも後の処理順であったジョブから、記録可能指示値を超えることなく画像記録処理を終了できる記録処理要求枚数を持つジョブの検索を、(a)の順序で記録媒体31の指定サイズ毎に行う。そして、この検索により発見されたジョブを、その発見順に並べ替える。すると、この結果として、(d)に示したように、順位設定制御部21は、Jb−1の記録処理順位を1番にし、更に、Jb−2の記録処理順位を2番にする。なお、これ以降の順序は上位装置23から通知された順序(初期設定の順序)に従うようにする。順位設定制御部21は、このようにして、各ジョブの記録処理順位を、その初期設定から変更する。
【0088】
順位設定制御部21により以上のようにして各ジョブについての画像記録処理の順序が変更されることにより、Jb−1及びJb−2についての画像記録処理は、A3サイズの記録媒体31の残量とは無関係に画像記録処理を完了させることができる。従って、記録媒体31の補充作業の実施により画像記録処理の完了にまでに遅延が生じることが回避される。
【0089】
なお、本第二実施形態においてジョブ処理順位の制御のために制御部20が行う制御処理の処理内容は、図5にフローチャートで示した本発明の第一実施形態におけるものと基本的には同様であるので、詳細な説明は省略する。但し、図5の制御処理を本第二実施形態に適用する場合には、以下の点に留意する必要がある。
【0090】
まず、上位装置23から通知されたジョブ情報に対応するジョブに付す名称は、ジョブ情報における記録媒体31のサイズ指定とは無関係に、その通知順にJ−n(nは1以上の整数)とする。例えば、図6に示した例においては、その通知順にJa−1、Jb−1、Jb−2、Ja−2との名称を付した各ジョブに対し、それぞれ、J−1、J−2、J−3、J−4の名称を付すようにする。
【0091】
また、図5のステップS2の判定処理においては、制御部20は、前述した記録処理累計枚数と、ジョブJ−nについての記録処理要求枚数とを加算した枚数が、ジョブJ−nが記録対象とする記録媒体31のサイズについての記録可能指示値以下であるか否かを判定する処理を行うようにする。更に、図5のステップS5の判定処理においても、制御部20は、前述した記録処理累計枚数と、ジョブJ−(n+m)についての記録処理要求枚数とを加算した枚数が、ジョブJ−(n+m)が記録対象とする記録媒体31のサイズについての記録可能指示値以下であるか否かを判定する処理を行うようにする。
【0092】
以上の点に留意した上で図5に示した制御処理を制御部20に行わせることにより、本第二実施形態に係る記録媒体31の補充作業の実施時期に応じた画像記録処理の順序の制御が制御部20で行われる。
【0093】
以上説明したように、本発明の第二実施形態によれば、順位設定制御部21により、記録処理中断事象のひとつである記録媒体31の補充作業の実施時期を判定し、その判定結果に基づいてジョブの処理順序を変更する。この結果、記録媒体31のサイズによってその残数に余裕のあるものを対象として画像記録処理を行うジョブについては優先的にその処理が行われるので、そのジョブに基づく画像記録処理については、その完了が補充作業の実施により遅延することが回避される。
【0094】
なお、本発明は、第一若しくは第二実施形態及び変形例のそれぞれに開示されている複数の構成要素の適宜組み合わせることで種々の実施形態を形成できる。例えば、第一若しくは第二実施形態に示される全体構成から幾つかの構成要素を削除してもよいし、更に異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0095】
また、本発明の実施形態は、第一若しくは第二実施形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の段階では、その要否を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0096】
例えば、記録媒体31への記録処理を途中で中断させる中断事象として、前述した第一及び第二実施形態においては、それぞれ、画像記録部15に対する回復処理、及び記録媒体31の補充作業を例として示して説明した。この他にも、例えば、インク切れやインク温度の過度の上昇などといった、インクの障害発生に対する障害解消のための作業の実施時期を判定し、その判定結果に基づいてジョブの処理順序を変更するために、本発明を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係る画像記録装置を概念的なブロック構成で示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像記録装置の給送部、搬送機構、昇降機構、回復機構、突き当て部、画像記録部及び回収部の配置例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像記録装置の回復動作時の搬送機構、昇降機構、回復機構、突き当て部、及び画像記録部の配置例を示す図である。
【図4】回復処理の開始時期に応じた画像記録処理の順序の制御を説明する図である。
【図5】ジョブ処理順位の制御のために制御部が行う制御処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図6】記録媒体の補充作業の実施時期に応じた画像記録処理の順序の制御を説明する図である。
【符号の説明】
【0098】
1 画像記録装置
2 給送部
2a−1乃至2a−n 給送トレイ
2b−1乃至2b−n 給送駆動部
2c 給送媒体検出部
3 搬送機構
4 搬送駆動部
5 搬送情報生成部
6 昇降機構
7 待避位置検出部
8 昇降情報生成部
9 昇降駆動部
10 回復機構
11 回復機構駆動部
12 突き当て部
13 突き当て部材
14 被突き当て部材
15 画像記録部
16 記録ヘッド駆動部
17 記録ヘッド
18 入力部
19 回収部
19a 収納トレイ
19b 排出駆動部
19c 排出媒体検出部
20 制御部
21 順位設定制御部
22 記憶部
23 上位装置
31 記録媒体
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
34 搬送ベルト
35 昇降台
36 巻き取りローラ
37 昇降従動ローラ
38 索条
38a 索条端部
39 ワイプ部材
40 インク受け部材
41 サイドフレーム
42、43 スリット
44 接続部材
51乃至55、61乃至64 ジョブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録処理を行う画像記録部を有し、上位装置より通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置において、
前記画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、前記通知された複数の前記ジョブ情報および前記画像記録装置の情報に基づき判定すると共に、当該判定の結果に基づいて、前記複数のジョブ情報に基づいた前記画像記録処理の処理順序の設定を変更する順位設定制御部を少なくとも備える、ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記画像記録部に対して前記画像記録処理の品位を回復させる回復処理を実施する回復機構を更に有し、
前記中断事象は、前記回復機構により行われる前記回復処理である、ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記回復処理は、前記画像記録処理が所定の枚数の前記記録媒体に対して行われる度に実施され、
前記ジョブ情報は、当該ジョブ情報に基づいた前記画像記録処理が施される前記記録媒体の枚数を示している記録処理要求枚数の情報を各々有し、
前記順位設定制御部は、前記ジョブ情報の各々についての前記画像記録処理要求枚数の情報と、前記所定の枚数と、直近に発生した前記回復処理以降に実行された前記記録媒体の記録処理累計枚数とに基づいて、前記中断事象の発生時期を判定する、ことを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記順位設定制御部は、前記ジョブ情報に基づいた画像記録処理が当該画像記録処理に対し初期設定された処理順位に従った順序で行われた場合、その途中で前記回復処理が実施されることになる画像記録処理を特定することで、前記中断事象の発生時期の判定を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記順位設定制御部は、前記処理順位の初期設定に従った処理順序において前記回復処理が途中で実施されることになる前記特定画像記録処理よりも後の画像記録処理順位であって、且つ、前記画像記録処理要求枚数の情報が、前記回復処理の実施開始までに処理することのできる枚数を示しているジョブ情報に基づいた画像記録処理についての前記処理順位を、前記特定画像記録処理について初期設定されているものに変更することで、前記処理順序の設定の変更を行う、ことを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記画像記録部へ給送される前記記録媒体をそのサイズ毎に複数枚収納しておく複数の給送部を更に有し、
前記中断事象は、複数の前記給送部のうちのいずれかに対して実施される前記記録媒体の補充作業である、ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記補充作業は、同一のサイズである前記記録媒体に対する前記画像記録処理が所定の枚数の前記記録媒体に対して行われる度に実施され、
前記ジョブ情報は、当該ジョブ情報に基づいた前記画像記録処理が施される前記記録媒体のサイズを示しているサイズ指定の情報と、当該ジョブ情報に基づいた前記画像記録処理が施される前記記録媒体の枚数を示している記録処理要求枚数の情報とを各々有し、
前記順位設定制御部は、前記ジョブ情報の各々についての前記サイズ指定の情報及び前記画像記録処理要求枚数の情報と、前記所定の枚数と、前記補充作業以降に実行された前記記録媒体の記録処理累計枚数とに基づいて、前記中断事象の発生時期を判定する、ことを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記順位設定制御部は、前記ジョブ情報に基づいた画像記録処理が当該画像記録処理に対し初期設定された前記処理順位に従った順序で行われた場合、その途中で前記補充作業が実施されることになる画像記録処理を特定することで、前記中断事象の発生時期の判定を行う、ことを特徴とする請求項7に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記順位設定制御部は、前記処理順位の初期設定に従った順序で行われると、その途中で前記補充作業が実施されることになる特定画像記録処理よりも後の画像記録処理についての処理順位であって、且つ、前記特定画像記録処理が対象としているものとは異なるサイズが前記サイズ指定の情報に示されているジョブ情報に基づいた画像記録処理についての前記処理順位を、前記特定画像記録処理について初期設定されているものに変更することで、前記処理順序の設定の変更を行う、ことを特徴とする請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
画像記録処理を行う画像記録部を有し、上位装置より通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置の制御方法であって、
前記画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、前記通知された複数の前記ジョブ情報および前記画像記録装置の情報に基づき判定することと、
前記判定の結果に基づいて、前記複数のジョブ情報に基づいた前記画像記録処理の処理順序の設定を変更することと、を含む、ことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記画像記録装置は、前記画像記録部に対して前記画像記録処理の品位を回復させる回復処理を実施する回復機構を更に有し、
前記中断事象は、前記回復機構により行われる前記回復処理である、ことを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項12】
前記画像記録装置は、前記画像記録部へ給送される前記記録媒体をそのサイズ毎に複数枚収納しておく複数の給送部を更に有し、
前記中断事象は、複数の前記給送部のうちのいずれかに対して実施される前記記録媒体の補充作業である、ことを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置の制御方法。
【請求項13】
画像記録処理を行う画像記録部を有し、上位装置より通知される複数のジョブ情報に基づいた画像記録処理を当該画像記録部が記録媒体に対し順次行う画像記録装置の制御を演算処理装置に行わせるためのプログラムであって、
前記画像記録処理を途中で中断させる中断事象の発生時期を、前記通知された複数の前記ジョブ情報に基づき判定する処理と、
前記判定の結果に基づいて、前記複数のジョブ情報に基づいた前記画像記録処理の処理順序の設定を変更する処理と、前記演算処理装置に行わせる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
前記画像記録装置は、前記画像記録部に対して前記画像記録処理の品位を回復させる回復処理を実施する回復機構を更に有し、
前記中断事象は、前記回復機構により行われる前記回復処理である、ことを特徴とする請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記画像記録装置は、前記画像記録部へ給送される前記記録媒体をそのサイズ毎に複数枚収納しておく複数の給送部を更に有し、
前記中断事象は、複数の前記給送部のうちのいずれかに対して実施される前記記録媒体の補充作業である、ことを特徴とする請求項13に記載の画像記録装置のプログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269343(P2009−269343A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123503(P2008−123503)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】