説明

画像記録装置および画像記録方法

【課題】ドラム等の搬送機構の任意の位置に記録媒体を固定してマルチパスによる画像記録を行う画像記録技術において、記録媒体の記録状態に影響されることなく、安価な反射式の記録媒体検知技術を用いて精度良く画像記録を行う。
【解決手段】ドラムの任意の位置に吸着保持される記録媒体にマルチパス記録を行う画像記録装置において、1パス目で、反射方式で記録媒体を検出する記録媒体検知情報15aに基づいて記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStと媒体後端トリガSbを検出して画像記録のタイミング制御を行うとともにドラムの回転量を示す用紙搬送情報パルス12aのカウント値として記憶し、2パス目以降は、記録媒体検知情報15aを参照せず、用紙搬送情報パルス12aのカウント値のみに基づいて媒体先端トリガStおよび媒体後端トリガSbを生成して画像記録のタイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置および画像記録方法に関し、特にマルチパス記録を行う画像記録装置および画像記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙等の記録媒体に対して文字や画像等のデータを記録する画像記録装置としては、例えばインクジェット方式のフルライン型画像記録装置が知られている。
【0003】
このフルライン型画像記録装置では、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に記録媒体の幅以上の長さに亘って形成された、インクの液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列(記録ヘッド)が、インク色毎に配設されている。これらインク色毎のノズル列は、副走査方向に所定の間隔に離間し、且つ記録媒体に対しノズルが対向するように配設されている。
【0004】
このような画像記録装置では、記録媒体と、ノズル列を有するラインヘッドと、をノズルの配列方向と略直交する副走査方向に相対的に移動させるだけで、記録媒体の全面に記録処理を行うことができる。
【0005】
従って、このようなフルライン型画像記録装置では、迅速に、且つキャリッジの移動や記録媒体の間欠的な搬送等を行わない簡易な動作で、記録処理を行うことができる。
しかし、その一方、単独で記録媒体の幅を超える長尺なラインヘッドには、短尺な記録ヘッドに比べ、コストが高い、歩留りが悪い、信頼性が低い等の課題がある。
【0006】
これらの課題の対策として、複数の短尺ノズル列を、各々の両端部が副走査方向からみて重複するように配列して擬似的に長尺なラインヘッドを形成することが知られている。このような短尺ノズル列からなるラインヘッドは、コスト、歩留り、信頼性等に優れた短尺ノズル列の利点を生かしつつ、長尺なラインヘッドの利点をも併せ持っている。
【0007】
しかし、これらのフルライン型画像記録装置としてのインクジェットラインプリンタでは、記録素子である個々のノズルのインク吐出口から吐出されるインクの体積(吐出量)、及びインク滴が吐出される方向にばらつきが有り、結果として記録したドットの大きさ、及びドットの位置にばらつきが生じる。このようなばらつきは、隣接ドット間の距離の不均一となり、ドット間の距離が近い箇所では濃度が高く、離れている所では低くなり、白すじ等が生じて画質の劣化が生じ、濃度のむらや滲み等による画質の劣化が生じる可能性がある。
【0008】
このような用紙上で濃度のむらやインク滲み等による画質の劣化が生じるのを防止して、画像形成時の画質を向上させるために種々の提案が行なわれており、インクジェットラインプリンタによるインクジェット記録方法でも、複数回に分けて間引いた画像を、記録ヘッドを主走査方向に移動させて少しずつ遅れて記録するマルチパス方式のドット記録方法が提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、周方向に所定の間隔で配置された複数のくわえ爪を介して複数(N)枚のシート状被印刷物を装着可能なドラム回転面に対して被印刷物を(N−1)枚装着し、被印刷物を装着しないブランク区間を形成し、その被印刷物を装着しないブランク区間内にラインヘッドを主走査方向へ移動させて高画質で高速印刷を可能にしようとするマルチパス印刷の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−69177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の特許文献1では、ドラム回転面に設置されたくわえ爪に対して被印刷物である用紙を固定する構造であるため、ドラム回転面に固定される用紙の位置やサイズが制約される。
【0012】
さらに、用紙の先端位置やブランク区間の検出は、ドラムに設けられたエンコーダとくわえ爪との位置関係に基づいて行われるため、くわえ爪に対する用紙の固定状態のばらつきによって、用紙の先端位置やブランク区間の検出精度が低下し、印刷される画像の品質低下等の懸念がある。
【0013】
一方、静電吸着等のようにドラム上の任意の位置に用紙が装置可能な方式では用紙の先端位置をドラムの1回転原点に対する固定位置として検知することはできない。
【0014】
そして、静電吸着方式や吸引吸着方式等によるドラム表面の任意の位置への用紙装着方式において、安価な光学式反射型センサを用いた場合、ドラム面と用紙面との反射レベルの差で用紙有無を識別するが、マルチパス方式では2パス目以降、用紙の印字状態が影響し、用紙とドラム面の反射状態の相違による識別結果がパス毎にばらつき、パス毎に先端、後端を正確に捕捉することができない。特に縁無し印刷をする場合はこの技術的課題が顕著となる。
【0015】
さらに、パス毎の用紙先端のセンシングのばらつきによって吐出タイミングがずれ、搬送方向に直交する方向に一列に正確にインク滴を着弾させることができない、という技術的課題もある。
【0016】
本発明の目的は、ドラム等の搬送機構の任意の位置に記録媒体を固定してマルチパスによる画像記録を行う画像記録技術において、記録媒体の記録状態に影響されることなく、安価な反射式の記録媒体検知技術を用いて精度良く画像記録を行うことが可能な画像記録技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点は、外周部の任意の位置に記録媒体を保持して搬送する回転搬送手段と、
前記回転搬送手段による前記記録媒体の搬送方向である副走査方向に交差する主走査方向に前記回転搬送手段に対向して配置され、前記記録媒体に対して画像を記録する記録手段と、
前記回転搬送手段の搬送位置情報を出力する搬送情報生成手段と、
前記回転搬送手段に保持された前記記録媒体の前記搬送方向における先端位置情報および後端位置情報を検出する記録媒体検出手段と、
前記画像の記録前の前記記録媒体から前記記録媒体検出手段によって検出された前記先端位置情報および前記後端位置情報の各々に対応して前記搬送情報生成手段から検出される第1搬送位置情報および第2搬送位置情報と、前記回転搬送手段の1回転に対応する第3搬送位置情報とに基づいて、前記記録手段における前記記録媒体に対する前記画像の記録タイミングを制御する制御手段と、
を含む画像記録装置を提供する。
【0018】
本発明の第2の観点は、外周部の任意の位置に記録媒体を保持して回転搬送する回転搬送手段と、前記回転搬送手段による前記記録媒体の搬送方向である副走査方向に交差する主走査方向に前記回転搬送手段に対向して配置され、前記記録媒体に対して画像を記録する記録手段と、を含む画像記録装置の制御方法において、
前記回転搬送手段の任意の位置に保持された前記記録媒体の先端位置情報および後端位置情報を検出する第1ステップと、
前記先端位置情報および前記後端位置情報の各々に対応した前記回転搬送手段の第1搬送位置情報および第2搬送位置情報を記憶する第2ステップと、
前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報と、前記回転搬送手段の1回転に対応する第3搬送位置情報とに基づいて、前記記録手段における前記記録媒体に対する前記画像の記録タイミングを制御する第3ステップと、
を含む画像記録装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドラム等の搬送機構の任意の位置に記録媒体を固定してマルチパスによる画像記録を行う画像記録技術において、記録媒体の記録状態に影響されることなく、安価な反射式の記録媒体検知技術を用いて精度良く画像記録を行うことが可能な画像記録技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置の構成の一例を概念的に示したブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る画像記録装置の各構成要素の配置の一例を示す概念図である。
【図3】本発明の一実施の形態である画像記録装置における画像記録部の記録ユニット70の構成例を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施の形態である画像記録装置の記録ユニットに設けられた記録ユニット移動機構の一例を示す側面図である。
【図5A】本発明の一実施の形態である画像記録装置100におけるマルチパス記録動作の一例を示す概念図である。
【図5B】本発明の一実施の形態である画像記録装置100におけるマルチパス記録動作の一例を示す概念図である。
【図6A】本発明の一実施の形態である画像記録装置におけるマルチパス記録における記録ユニットの移動タイミングを説明する概念図である。
【図6B】本発明の一実施の形態である画像記録装置におけるマルチパス記録における記録ユニットの移動タイミングを説明する概念図である。
【図7A】本発明の一実施の形態である画像記録装置によって解決される技術的課題を説明する概念図である。
【図7B】本発明の一実施の形態である画像記録装置によって解決される技術的課題を説明する概念図である。
【図8A】本発明の一実施の形態である画像記録装置によって解決される技術的課題を説明する概念図である。
【図8B】本発明の一実施の形態である画像記録装置によって解決される技術的課題を説明する概念図である。
【図9】本発明の一実施の形態である画像記録装置において用いられる媒体位置管理テーブルの構成例を示す概念図である。
【図10】本発明の一実施の形態である画像記録装置の作用を説明するタイミングチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態である画像記録装置の作用を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態である画像記録装置において用いられる媒体位置管理テーブルの構成例を示す概念図である。
【図13】本発明の一実施の形態である画像記録装置の作用を説明するタイミングチャートである。
【図14】本発明の一実施の形態である画像記録装置の作用を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態では、一態様として、マルチパスによる画像記録を行う場合に、ドラムの任意の位置に吸着固定された記録媒体の先端および後端を光学式の反射型のセンサで検出し、この検出位置をドラムのエンコーダのパルス数として記憶し、以後はセンサ出力に関係なく、このパルス数と、ドラムの1周分のパルス数とに基づいて媒体の先頭および後端の検出結果を画像記録部に与えて画像記録のタイミングを制御することでマルチパスによる画像記録を行う。
【0022】
また、複数の記録媒体をドラム上に順次固定する場合、先行する記録媒体の固定位置の範囲を、後続の新たな記録媒体における反射方式のセンサの検出範囲から除外する。
【0023】
これにより、例えば、ドラム上の任意の位置に用紙等の媒体が固定される場合において、マルチパス印刷中の記録媒体の記録状態によらず、安価な光学式の反射型のセンサの検知方法を用いて所望の位置に精度良く印字を可能とする画像記録装置および画像記録装置の制御方法を提供できる。
【0024】
また、本態様では、一例として、短尺記録ヘッド(短尺ノズル列)を組み合わせたラインヘッドでマルチパス記録する際に、マルチパスのための主走査方向におけるヘッド移動を、搬送方向の同一位置の短尺記録ヘッド群からなるヘッド列(短尺ノズル列)単位で独立に行う。
【0025】
例えば、ラインヘッドを長さ方向に6分割した短尺記録ヘッドを搬送方向に直交する主走査方向に2列に千鳥に配置したヘッド並びを想定した場合、各色は搬送方向の上流側に3個のヘッドが横に並び、それと互い違いに下流側に3個のヘッドが横並びに配置される。
【0026】
マルチパス記録に際しては、主走査方向の同一位置にある横並び3個の短尺記録ヘッドの組を移動単位とし、当該短尺記録ヘッドの組と記録媒体が対向しない記録媒体のブランク区間の通過時において順次移動させる制御を行う。
【0027】
そのため記録媒体の間隔を搬送方向における短尺記録ヘッドの1個相当の幅寸法である間隔L1(ノズル間隔)まで縮小することができる。
【0028】
この場合、ドラム周長LDは、マルチパス記録のためのヘッド移動が実施される媒体間隔をL1、それ以外の媒体間隔を間隔L2、媒体枚数をK、定型紙のサイズ等の媒体サイズLpとすると、以下の式(1)で決定される。
LD=Lp×K+L1+L2×(K−1) ・・・(1)
【0029】
すなわち、K枚の媒体をドラムに保持した場合のK個の媒体間隔のうち1つの間隔L1でヘッドマルチパス移動を実施し、残りのK−1個の間隔L2は媒体の剥離などに必要な最小の媒体間隔とする。
【0030】
例えば、A4横の2枚で媒体間隔が2個で、一方の間隔L1でマルチパス移動を行い、他方の間隔L2を媒体の剥離可能な間隔とするドラム周長LDに構成すれば、プリントスループットを最大にすることができる。
【0031】
このように構成することで、マルチパスプリントのスループットを最大にすることができる。換言すれば、必要なドラム周長を削減して小形化することができる。
【0032】
本態様によれば、短尺記録ヘッドをノズル配列方向に複数配列して形成されているラインヘッドによってマルチパス方式で記録する場合に、マルチパス方式により高画質の画像を形成できるとともに、画像記録のスループットを向上させ、画像記録装置を小型化することができる。
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向をY方向または副走査方向と記し、この搬送方向に対し直交する方向をX方向または主走査方向と記し、X方向およびY方向のどちらにも直交する方向をZ方向と記すこととする。
【0034】
まず、本発明の実施の形態に係る画像記録装置100の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である画像記録方法を実施する画像記録装置の構成の一例を概念的に示したブロック図である。
また、図2は、本実施の形態に係る画像記録装置の各構成要素の配置の一例を示す概念図である。
【0035】
本実施の形態に係る画像記録装置100は、給送部20と、搬送機構10と、回収部30と、画像記録部60(記録手段)と、制御部50と、図示しないクリーニング部と、を備えている。
【0036】
ここで、給送部20は、記録媒体40を搬送機構10に供給する。搬送機構10は、給送部20から受け渡された記録媒体40を画像記録部60に対して相対的に搬送する。回収部30は、画像記録されて搬送機構10から排出される記録媒体40を回収して収納する。画像記録部60は、記録媒体40が搬送経路を搬送される過程で画像を記録する記録処理を行う。制御部50は、画像記録装置100の全体の制御を行う。図示しないクリーニング部は、安定して記録するために画像記録部60のクリーニングを行う。
【0037】
次に、画像記録装置100の各構成要素についてさらに説明する。
給送部20は、給送トレイ21と、給送駆動部22とを備えている。ここで、給送トレイ21は、記録媒体40を収容するものであり、いわゆる給送カセット等で構成されている。給送駆動部22は、給送トレイ21に収容された最上面の記録媒体40に当接して1枚ずつ取り出し、搬送機構10側へ受け渡すものであり、例えば給送ローラで構成されている。
【0038】
搬送機構10は、ドラム11(回転搬送手段)と、記録媒体検出部15(記録媒体検出手段)と、剥離部13と、図示しない帯電ローラおよび徐電器とを有している。
帯電ローラは、記録媒体40をドラム11の表面に案内するとともに、記録媒体40に電荷を与えることで記録媒体40をドラム11の表面に吸着させる働きをする。
【0039】
ドラム11は、記録媒体40を巻き付けて画像記録部60に対して相対的に搬送するのに用いられ、図2の矢印で図示した方向に一定速度で回転が可能なモータ等の搬送駆動部14により駆動される。ドラム11の回転軸には、ドラム11の相対的回転角を検出する搬送情報生成部12(搬送情報生成手段)を有している。
【0040】
この搬送情報生成部12は、例えばロータリエンコーダを備えて構成されており、記録媒体40の搬送位置情報としてのパルス信号を、ドラム11が所定量回動する毎に生成して制御部50へ出力する。従って、このパルス信号は記録媒体40の搬送距離を示している。
【0041】
ドラム11は中空アルミ円筒と両側面のフランジとからなり、円筒表面は絶縁コート処理されている。また、ドラム11自体はスラスト方向(主走査方向)の遊動が発生しないように構成されている。
【0042】
記録媒体40は、画像記録部60に対向する位置に搬送された後、除電器に対向する位置に搬送される。除電器は、記録媒体40に帯電した電荷を除去することでドラム11に吸着された状態にある記録媒体40の吸着力をなくす働きをする。
【0043】
剥離部13は、記録媒体40の先端部がドラム11の表面に対して記録媒体40の厚みに最小限の余裕をもたせた僅かな間隙を有して配置され、吸着力が失われてドラム11上から僅かに浮き上がった記録媒体40を、ドラム11から剥離するとともに、剥離した記録媒体40を回収部30へ案内する働きをする。
【0044】
記録媒体検出部15は、記録媒体40の搬送経路において画像記録部60よりも上流に設けられ、記録媒体40の先端/後端位置検出部として機能し、副走査方向に搬送される記録媒体40における例えば先端と後端を検出するものであり、例えば光学式の反射型センサ、または静電容量型センサ等のいずれかをその一部分に備えて構成されている。記録媒体検出部15は、記録媒体40の先端および後端検出情報を制御部50へ通知する。
【0045】
回収部30は、例えば収納トレイ31と、排出駆動部32とを有して構成される。ここで、収納トレイ31は、搬送機構10から排出された記録媒体40を収納するものである。排出駆動部32は、搬送機構10が搬送してくる記録媒体40を排出するものであり、例えば排出ローラ対で構成されている。
【0046】
画像記録部60は、副走査方向の異なる位置に配置された複数の記録ユニット70(記録ユニット70−1〜記録ユニット70−n)を備えている。
複数の記録ユニット70−1〜記録ユニット70−nの各々は、副走査方向の位置の異なる後述のヘッド列h1〜ヘッド列hnを構成している。
【0047】
記録ユニット70−1〜記録ユニット70−nの各々は、複数の短尺記録ヘッド71(記録ヘッド)(ノズル列72−1〜ノズル列72−m)(ただし、n,mは2以上の整数)と、ノズル列駆動部80(ノズル列駆動部80−1〜ノズル列駆動部80−m)とを備えている。
【0048】
すなわち、個々の記録ユニット70には、後述のように、複数の短尺記録ヘッド71が、当該短尺記録ヘッド71に設けられたノズル列72の副走査方向の位置を揃えて、主走査方向に所定の間隔で配置されている。
【0049】
ノズル列72−1〜ノズル列72−mには、インクを吐出する複数のノズル73が、X方向(主走査方向)に直線状に形成されている。
【0050】
短尺記録ヘッド71の各々に設けられたノズル列72−1〜ノズル列72−mは、画像記録装置100の設計に基づく記録媒体40の最大幅Wを越える長さに亘って主走査方向に配設されており、ノズル列駆動部80−1〜ノズル列駆動部80−mによる駆動信号に従って当該複数のノズル73からインク滴74をそれぞれ吐出して記録媒体40へ記録処理を行う。
【0051】
ノズル列駆動部80−1〜ノズル列駆動部80−mは、制御部50から記録データ情報に基づいて送られてくる制御信号に従って、各ノズル73を駆動する駆動信号をノズル列72−1〜ノズル列72−mへ出力する。
図3は、本実施の形態の画像記録装置における画像記録部の記録ユニット70の構成例を示す概念図である。
【0052】
図3に例示されるように、本実施の形態の記録ユニット70では、例えば1色のインクに対応する記録ユニット70−1と記録ユニット70−2の各々に設けられた短尺記録ヘッド71(ノズル列72)の主走査方向の端部を一部重複させ、副走査方向に沿って、ヘッド列配列間隔La(ヘッド列h1とヘッド列h2の間隔)だけそれぞれ離間して配設されている。
【0053】
これにより、隣り合う記録ユニット70−1と記録ユニット70−2の短尺記録ヘッド71(ノズル列72)を組み合わせることにより、記録媒体40の搬送方向(副走査方向)から見た場合に、全体として、記録媒体40の主走査方向における最大幅Wよりも大きな一つのラインヘッドを構成している。
【0054】
本実施の形態の場合、個々の記録ユニット70は、後述の記録ユニット移動機構90(移動手段)によって独立に主走査方向(X方向)に移動される。
例えば、図3の例では、記録ユニット70−1は記録ユニット移動機構90−1によって駆動され、記録ユニット70−2は記録ユニット移動機構90−2によって駆動される。
【0055】
すなわち、本実施の形態の場合、個々の記録ユニット70には、副走査方向におけるノズル列72の位置が揃うように、複数の短尺記録ヘッド71が主走査方向にヘッド列hnをなして配列され、このヘッド列hn単位(すなわち、記録ユニット70に搭載され、副走査方向の同一位置にある複数のノズル列72のグループ単位)で、記録ユニット移動機構90によって独立に、主走査方向における移動制御が行われる。
【0056】
本実施の形態の場合、複数の記録ユニット70の各々には、当該記録ユニット70と同じ数の記録ユニット移動機構90(記録ユニット移動機構90−1〜記録ユニット移動機構90−n)が設けられ、複数の記録ユニット70−1と記録ユニット70−nは、それぞれ独立に主走査方向に移動可能に設置されている。本実施の形態の複数の記録ユニット70の主走査方向移動とマルチパス記録については後述する。
【0057】
記録ユニット70−1〜記録ユニット70−nは、複数のノズル列72−1〜ノズル列72−mを例えば図2に示すように配置して構成されている。なお、図2では、例えば4色のインクに対応する態様として、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、およびY(イエロー)の色毎の記録ユニット70を各色それぞれ2個配設した場合を示している。
【0058】
ここで、nは記録ユニット70の総数を表しており、図2の場合、n=8である。また、mはインク色に拘りなく数えたノズル列72の総数を表しており、図3の場合では1色あたり6個のノズル列72を配置しており、各色で同じく6個のノズル列72を配置すれば、m=4×6=24である。
【0059】
隣り合う二つで各色に対応した記録ユニット70−1(ヘッド列h1)〜記録ユニット70−8(ヘッド列h8)は、副走査方向に沿ってそれぞれ離間して配設されており、搬送経路の前後に配設された位置に対応したタイミングでノズル列72−1〜ノズル列72−24を各々駆動させることで、記録媒体40への記録処理を行う。
【0060】
記録媒体検出部15で検出されてからノズル列72−1〜ノズル列72−24の各々までの記録媒体40の移動距離は、搬送情報生成部12により搬送情報として生成される。
【0061】
この搬送情報は、搬送情報生成部12における例えばロータリエンコーダによって生成される、記録媒体40の搬送距離に応じたパルス信号数である。このパルス信号を例えば、600dpi(≒42μm)などの間隔で発生するように設定することで、記録するドットの配置間隔を決定することができる。
【0062】
ノズル列駆動部80−1〜ノズル列駆動部80−mは、上位装置200からの記録情報に基づきノズル73を選択し、選択したノズル73を、制御部50のノズル列記録制御部52が生成するインク吐出タイミング制御信号により決定されるタイミングで駆動してインク吐出を行わせる。
【0063】
クリーニング部は、画像記録部60の複数の記録ユニット70をクリーニングする。そのため、特には図示しないが、記録ユニット70をクリーニングするためのワイプブレードや吸引機構等の既知のクリーニング機構を有している。
【0064】
制御部50は、給送部20と、搬送機構10と、回収部30と、画像記録部60とをそれぞれ制御して、記録媒体40への記録処理(画像記録)を行わせる。
【0065】
制御部50は、制御機能および演算機能を有する演算処理装置における例えばMicroprocessor Unit (MPU)を含む図示しない処理回路と、記憶部55と、ノズル列記録制御部52と、画像記録制御部51と、記録ユニット移動制御部53(制御手段)と、用紙搬送制御部54と、記録処理トリガ生成部57(制御手段)、を少なくとも有している。
【0066】
記憶部55は、制御プログラムを記憶しているとともに、画像記録装置100の制御に関する設定値等と画像記録情報とを記憶しておく。
【0067】
ノズル列記録制御部52は、記憶部55から読み出した設定値に基づきノズル列72−1〜ノズル列72−mの制御を行う。なお、制御部50は、MPUが制御プログラムを記憶部55から読み出して実行することによって、画像記録装置100の各構成要素を制御する。
【0068】
記録処理トリガ生成部57は、記録媒体検出部15から得られる記録媒体検知情報15aと、搬送機構10の搬送情報生成部12から得られるエンコーダのカウント値等からなる用紙搬送情報パルス12a(搬送位置情報)に基づいて、画像記録制御部51に対して記録タイミングを示すトリガを生成する。
【0069】
この記録処理トリガ生成部57が記録タイミングを示すトリガを生成するために、制御部50には、媒体位置管理テーブル58が設けられている。この媒体位置管理テーブル58について後述する。
【0070】
記憶部55は、制御プログラムを記憶するRead Only Memory(ROM)と、MPUのワークメモリとなるRandom Access Memory(RAM)と、記録処理の指定情報を記憶しておく不揮発性メモリとを有して構成されている。
【0071】
本実施の形態の場合、この記憶部55の不揮発メモリ領域にはヘッド移動制御テーブル56が設けられていて、記録ユニット移動制御部53等による記録ユニット70の移動制御に用いられる情報が格納されている。
【0072】
ノズル列記録制御部52は、上位装置200からのジョブ情報に基づき個々のノズル列72(ノズル73)におけるインク吐出タイミングを制御し、記録媒体40に記録処理を行う時の副走査方向の記録位置を決定する。
【0073】
画像記録制御部51は、上位装置200から受信した画像データを、ジョブ情報と、予め記憶部55に記憶されているジョブ情報に対応した設定値とに基づいて、記録処理可能な記録データへと変換する処理を行って、画像記録部60へ転送する。ここでの画像データ変換処理は、短尺記録ヘッド71のノズル列72毎のデータ分配やデータ位置合わせ、記録濃度変換などを含んでいる。
【0074】
上位装置200は、本実施の形態に係る画像記録装置100に記録処理を行わせるユーザによって操作される、例えばコンピュータである。この上位装置200は、本実施の形態に係る画像記録装置100の外部機器として、例えばLocal Area Network(LAN)等を介して接続されている。上位装置200は、本実施の形態に係る画像記録装置100に対し、記録処理に関する情報としてジョブ情報を通知する。
【0075】
ここで、ジョブ情報には、記録媒体40に対し記録処理を行う際の画像記録情報が含まれる。この画像記録情報には、記録媒体サイズ、記録速度、マルチパス記録回数、記録画像サイズ情報、解像度、濃度、色情報、上位装置200のメモリに保持した画像データのアドレス情報等が含まれる。
【0076】
また、上位装置200は、R(レッド)、G(グリーン)、およびB(ブルー)の光の三原色からなる多階調画像データを、K並びにC、M、およびYの色からなる画像記録装置100の出力可能な階調値に変換する擬似階調変換処理などの画像データ処理を行う。上位装置200は、この画像データを画像記録装置100へ転送する。
【0077】
画像記録装置100の制御部50は、上位装置200から通知されたジョブ情報を受け取ると、記憶部55に記憶させる。
【0078】
記録ユニット移動制御部53は、後述のように、記録媒体検出部15により記録媒体40の間隔L1が検出されているタイミングから数えて、搬送情報生成部12から出力される搬送情報のカウント数が、予め記憶部55に記憶されている記録媒体検出部15の検出位置から個々の記録ユニット70の記録位置までの搬送に必要な搬送情報の数に達したタイミングで、記録ユニット移動機構90を制御し、それによって、個々の記録ユニット70の記録位置に間隔L1が来たタイミングでの記録ユニット70の移動を実行する。
【0079】
用紙搬送制御部54は、搬送機構10、給送部20、回収部30の動作を制御する。
【0080】
制御部50は、記録処理開始の指示を上位装置200から受け取ると、用紙搬送制御部54により搬送機構10の搬送駆動部14を制御してドラム11の回動を開始させる。続いて、制御部50は、給送部20の給送駆動部22を制御して、給送トレイ21に積載された記録媒体40を1枚ずつピックアップさせて搬送機構10へ受け渡し搬送させる。
【0081】
搬送機構10へ受け渡された記録媒体40は、帯電ローラによって帯電され、ドラム11に吸着され、ドラム11の回転にともなって搬送される。搬送経路上を搬送されている記録媒体40は、やがて、記録媒体検出部15により、例えばその先端が検出される。すると、記録媒体検出部15は、その先端を検出したことを示す先端エッジ信号を制御部50へ出力する。制御部50は、この先端エッジ信号を、記録処理タイミングを生成するためのトリガ信号として利用する。
【0082】
制御部50は、ノズル列72−1〜ノズル列72−mによるインク吐出を開始させるためのタイミングの情報として、記録媒体検出部15の先端/後端位置検出部から例えば図2に示される記録ユニット70−1〜記録ユニット70−8の距離に対応する、搬送情報生成部12で生成される搬送情報であるロータリエンコーダのパルス信号数の値を、記憶部55に予め記憶している。
【0083】
制御部50は、記録媒体40の先端エッジ信号を受信した時点から、以後のこのパルス信号を計数する。制御部50のノズル列記録制御部52は、このパルス信号数計数値と、予め記憶している距離に対応するパルス信号数値とを比較する。そして、パルス信号数計数値と、予め記憶している距離に対応するパルス信号数値が一致したタイミングで画像記録部60のノズル列駆動部80−1〜ノズル列駆動部80−mを制御してノズル列72−1〜ノズル列72−mからインクを吐出させて、ドラム11上に吸着されている記録媒体40への記録処理を行わせる。
【0084】
この後、ジョブ情報に含まれるマルチパス記録回数を示すパスカウントNに応じてN回転数だけドラム11を回転させ、N回のマルチパス記録を行う。マルチパス記録については後に説明する。
【0085】
このようにして記録処理された後の記録媒体40は、除電器に対向する位置に搬送される。除電器にて吸着力が無くなりドラム11上から僅かに浮き上がった記録媒体40を、剥離部13にてドラム11から剥離し、回収部30へ記録媒体40を案内する。
【0086】
搬送機構10の下流側に設けられた回収部30へ受け渡された記録媒体40は、排出駆動部32に挟持されて搬送経路のさらに下流側に搬送され、やがて収納トレイ31に収納される。
【0087】
なお、ドラム11へのカット媒体の吸着手段として、上記の例では帯電ローラで発生される静電気を利用したが、絶縁されたドラム11の表面に網目上の電位の印加される配線を施し、この網目に電位を与え、電荷によりカット紙等の記録媒体40を吸着するようにしてもよい。あるいはドラム11の円周に多数の貫通穴を設け、ドラム11内を負圧にしてカット紙等の記録媒体40をドラム11の円周面に吸着させるようにしてもよい。
【0088】
次に図4を参照して、本実施の形態の個々の記録ユニット70に設けられた記録ユニット移動機構90等について説明する。
【0089】
図4は、マルチパス記録での記録ユニット70の主走査方向の移動を行うための記録ユニット移動機構90を示し、画像記録装置100を、記録媒体40の搬送方向からから見た図である。
【0090】
記録ユニット70のドラム11に対向する位置には、各々がノズル列72を備えた複数の短尺記録ヘッド71が、記録媒体40の幅方向(主走査方向)に配置され、ドラム11に吸着された記録媒体40は、記録ユニット70対向して搬送される。
【0091】
ここで、説明の簡略化のため、図4では一つの記録ユニット70と一つの記録ユニット移動機構90の組のみを図示しているが、他の記録ユニット70および記録ユニット移動機構90の組も同様に、ドラム11の周方向に並列に配置されている。
【0092】
本実施の形態の場合、複数の記録ユニット70(記録ユニット70−1〜記録ユニット70−n)の各々には、記録ユニット移動機構90(記録ユニット移動機構90−1〜記録ユニット移動機構90−n)が設けられ、記録ユニット70−1〜記録ユニット70−nの各々は、互いに独立に、主走査方向における変位が制御可能になっている。
【0093】
複数の記録ユニット移動機構90(記録ユニット移動機構90−1〜記録ユニット移動機構90−n)の各々は、記録ユニットホルダ91、リニアモータ92を備えている。
記録ユニットホルダ91は、図示しない装置筐体に対して主走査方向に移動自在に設けられ、この記録ユニットホルダ91に記録ユニット70が支持されている。
【0094】
記録ユニットホルダ91の一端は、リニアモータ92に接続され、このリニアモータ92による主走査方向の直線的な駆動動作によって、記録ユニットホルダ91に支持された記録ユニット70は、主走査方向の任意の位置に水平移動および位置決めされる。
【0095】
リニアモータ92による記録ユニット70の主走査方向における移動方向および移動量は、制御部50の記録ユニット移動制御部53によって制御される。
次に図5Aおよび図5Bを参照して、本実施の形態におけるマルチパス記録について説明する。
【0096】
なお、図5Aおよび図5Bでは、簡単のため、ノズル列72が主走査方向に1列に揃えて図示されているが、本実施の形態の場合には、隣り合う二つの記録ユニット70の各々に搭載された複数の短尺記録ヘッド71のノズル列72の組合せによって、1色分の記録媒体40の主走査方向の幅全体にわたるノズル列72(ノズル73の配列)が実現されている。
【0097】
図5Aおよび図5Bは、本実施の形態の画像記録装置100におけるマルチパス記録動作の一例を示す概念図である。
【0098】
ドラム11に吸着されて、記録ユニット70に対向した位置に搬送された記録媒体40は、ドラム11の1回転目に、図5A示すように1パス目の記録が行われる。1パス目の記録においては、ノズル73のノズル間隔dに等しい間隔で主走査方向にインク滴74(インク滴74a)によるドットが記録される。
【0099】
記録媒体40は、他の記録ユニット70の同様な動作によって4色分の記録が行われたのち、ドラム11に吸着されたまま、ドラム11をさらに1回転させて再び記録ユニット70に対向する位置に搬送される。
【0100】
記録媒体40への1パス目の記録終了後、再び記録ユニット70に対向する位置に搬送される以前に、記録ユニット移動制御部53によって、ノズル間隔dの半分となるd/2相当の距離だけ、個々の記録ユニット70を主走査方向に移動させる。
【0101】
続いて、図5Bに示すように、インク滴74aの間にインク滴74(インク滴74b)を吐出して、同一の記録媒体40に2パス目の記録が行われる。このようにして、ノズル73のノズル間隔dの2倍の解像度で記録を行うことが可能となる。
【0102】
なお、d/2の整数倍(移動ピッチ数Np)だけ大きく移動させ、個々のノズル73の特性のばらつきに等に起因する画像の濃淡のばらつきを軽減することもできる。
【0103】
ここで、例えば、ノズル間隔dが300dpi(≒85μm)相当とすれば、記録画像は、2パスのマルチパス記録によって、主走査方向に600dpi(≒42μm)で記録することが可能となる。同様に、1回あたりの主走査方向の移動量をノズル間隔のd/n、1枚あたりの記録回数をn回(nは2以上の任意の整数)とすることで、ノズル間隔dのn倍の解像度の補間記録を行うことも可能である。
【0104】
図6Aおよび図6Bは、上述の本実施の形態のマルチパス記録における記録ユニット70の移動タイミングを示している。
【0105】
ドラム11の回転搬送方向に配列された複数のヘッド列h1、ヘッド列h2において、先行する記録媒体40(40−2)の記録完了直後に、まず、図6Aのように、記録媒体40の後端位置40bと次の記録媒体40(40−1)の先端位置40aの間隔L1を通過する間にヘッド列h1が主走査における変位を完了して、後続の記録媒体40(40−1)の記録を開始し、さらに、ヘッド列h2が、間隔L1を通過する間に主走査に変位して、後続の記録媒体40(40−1)の記録を開始する。
【0106】
このように、ヘッド列h1とヘッド列h2が独立に主走査に変位することにより、変位の時間を賄う間隔L1を短縮して、ドラム11の小形化を実現できる。
このドラム11に保持された記録媒体40の先端位置40aおよび後端位置40bの検知は、本実施の形態の場合、一例として、以下のようにして実現される。
【0107】
[作用例1]
本実施の形態の場合、画像記録制御部51における制御タイミングの基準となる記録媒体40の先端位置40aや後端位置40bの検出は以下のようにして行われる。
本作用例1における記録処理トリガ生成部57による記録処理タイミングのトリガ信号の生成例について説明する。
【0108】
図7A、図7B、および図8A、図8Bは、本実施の形態の作用例によって解決される技術的課題を説明する概念図である。
図9は、本作用例1において用いられる媒体位置管理テーブルの構成例を示す概念図である。
【0109】
図10は、本作用例1の作用を説明するタイミングチャートである。図11は、本作用例1の作用を説明するフローチャートである。
【0110】
記録媒体40の先端位置40aの検知は、記録媒体検出部15が行う。記録媒体40のドラム11面上への固定方法が例えば静電吸着などのドラム11面上の任意の位置に固定する方式の場合、ドラム11回転軸上に設けた1回転信号などでは検知できない。そのため記録媒体検出部15は、光学式反射センサなどドラム11面上の状態を識別できる手段で構成される。
【0111】
記録媒体検出部15が例えば光学反射式のセンサであった場合、記録媒体とドラム面上との反射率に差を設けるためにドラム面に黒色系の表面処理を施し、この表面処理の反射率等に基づいてセンサの出力値に閾値を設け、閾値以上であれば記録媒体40を検知、閾値以下であればドラム11面であると判別する。これにより記録媒体検出部15の出力を、閾値を境にして2値化し(記録媒体検知情報15a)、変化点において記録媒体40の先端位置40a、後端位置40bを検知することができる。
【0112】
マルチパス印刷の場合、1パス目の記録媒体検出時には、記録媒体40上には何も記録されていないため、記録媒体40上を検知している間の読み取り出力値は確実に設定された閾値以上であるため、図7Aの1パス目の部分の記録媒体検知情報15aで示すように良好に検知できる。
【0113】
しかし、1パス目の画像記録がなされ、2パス目以降の記録媒体40の検知を行った場合、図7Aの2パス目の部分で示すように既に記録された記録媒体40の状態も検知するため、記録媒体40を検知している間であってもセンサ出力値が変化する。
【0114】
具体的な例を図7Bに示す。記録媒体40がセンサの直下に到達する前は、ドラム面を検知しているため、センサ出力は閾値未満となる。記録媒体40が記録媒体検出部直下に到達すると、記録媒体40の先端位置40a部分を検知し、センサ出力は閾値以上になる。さらに記録媒体40の搬送が進み、センサ直下に画像記録された部分が到達すると、センサはその画像記録された部分を検知し、再びセンサ出力は閾値未満になる。また画像記録がされていない区間がセンサ直下に到達するとセンサ出力が閾値以上になる。以降、記録媒体40の後端位置40bがセンサ直下を通過するまで、画像記録された内容(濃淡等)に応じ、出力レベルが変化し続けることになる。
【0115】
最も顕著な例は、縁無しの黒ベタなどの高い印字率の画像記録を1パス目で行った場合である。このような場合、記録媒体検出部15からの出力では、ドラム11の表面なのか、記録媒体40中の画像記録結果をとらえたものなのかが識別できず、2パス目以降の記録媒体40の先端位置40aが正確に検知できないという課題がある。
【0116】
さらに、記録媒体40の先端位置40aを検知できたとしても、記録媒体検出部15そのものの検知ばらつきを考慮しなくてはならない。
【0117】
マルチパスの画像記録は、各パスにおいてドラム11の1周上における同一位置で画像記録が行われなければ、搬送方向のドット単位での整列性が得られない。つまり、各パスの画像記録タイミングは厳密に搬送情報生成部12におけるドラム11の1周毎のタイミングでなければならない。
【0118】
しかし、画像記録のタイミングを決定している記録媒体検出部15が生成する記録媒体40の先端位置40aの情報と、搬送情報生成部12の搬送情報は同期していない場合は、図8Aに示すように、記録媒体40の先端位置40aを示す記録媒体検出信号の立ち上がりから1周後の記録媒体40の先端位置40aを示す次の立ち上がりまでの間の搬送情報のカウント値にばらつきが生じてしまう。つまり、記録媒体40が1周するに要する搬送情報のカウント値が周毎に異なるということになる。
【0119】
制御部50内の画像記録制御部51は、先端位置情報としての記録媒体検知情報15aを記録処理のタイミング生成のためのトリガ信号として利用しているため、このばらつきは図8Bに示すように各パスにおいて、画像記録の着弾ずれにつながってしまう。
なお、図8Bでは、○印がインク液滴の着弾位置を示し、○印の中の数字はパス数を示している。
【0120】
そのため、本作用例1では、一例として、記録媒体40の先端位置情報である記録媒体検知情報15aをそのまま記録処理のタイミングに使用するのではなく、以下の方法で先端位置情報である記録媒体検知情報15aから、画像記録制御部51に与える記録処理トリガ信号S(記録タイミング)を生成し、所望の位置に精度良く印字できるようにする。
【0121】
この作用例1では、図9に例示されるように、媒体位置管理テーブル58は、ドラム周長パルス数R(第3搬送位置情報)を記憶するための定数記憶領域58aと、先端位置パルス数C0(第1搬送位置情報)および後端位置パルス数C1(第2搬送位置情報)を記憶するためのカウント値記憶領域58bを備えている。
ドラム周長パルス数Rは、ドラム11の物理的な大きさに応じて設定される固定値である。
【0122】
制御部50の記録処理トリガ生成部57は、図10に示すように、記録媒体40に何も記録されていない1パス目の記録媒体検出部15の記録媒体検知情報15aの良好な出力の変化点である立ち上がり(センシングの方式によっては立ち下がり)を検知して、記録媒体40の先端位置40aと認識し、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt1)としてそのタイミングを通知する。
【0123】
それと同時に、先端位置パルス数C0=0として記憶し、搬送情報生成部12から出力される搬送情報(エンコーダパルス)としての用紙搬送情報パルス12aのカウントを開始する。
【0124】
次の出力の変化点である立ち下がり(センシングの方式によっては立ち上がり)を記録媒体40の後端位置40bとして認識し、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号の立ち下がり(媒体後端トリガSb1)としてそのタイミングを通知する。
【0125】
また、その時の搬送情報のカウント値を、記録媒体40の後端位置40bを示す後端位置パルス数C1として媒体位置管理テーブル58に記憶する。先端位置パルス数C0=0の場合、1パス目の搬送情報における記録媒体40の長さLm(=C1−C0)は搬送情報のカウント値である後端位置パルス数C1に対応するため記録媒体長をC1個のパルス数として媒体位置管理テーブル58に記憶する。
【0126】
2パス目の記録処理トリガ信号は、記録媒体検出部15の出力を使用せず、搬送情報と同期して出力する。制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報のカウント値を監視し、(先端位置パルス数C0=0なので)搬送情報のカウント値がドラム11の1周分の搬送情報であるドラム周長パルス数R(積算したパルス数)と一致した時に画像記録制御部51にそのタイミングを記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt2)として通知する。
【0127】
そして、2パス目の後端は、1パス目で取得した記録媒体40の長さLmをC1個のパルス数として取得しているため、制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報のカウント値を監視し、搬送情報のカウント値がC0+R+C1(パルス)と一致した時に画像記録制御部51にそのタイミングを画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち下がり(媒体後端トリガSb2)として通知する。
【0128】
以降、同様に、Nパス目の記録媒体40の先端位置40aの搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのカウント値Tnは、
Tn=C0+R×N(パルス) ………(2)
Nパス目の記録媒体40の後端位置40bの位置Bnは
Bn=C0+R×N+C1(パルス) ………(3)
となる。
【0129】
このようにすることで、マルチパス印刷中の記録媒体40の印字状態による反射率のばらつき等に影響されることなく、安価な光学式の反射型検知方法を採用した記録媒体検出部15を用いて、ドラム11の任意の位置に配置される記録媒体40の所望の位置に精度良く印字できるような記録媒体40の位置検出技術を実現できる。
【0130】
上述のように、ドラム11に一枚の記録媒体40を配置して搬送する場合の作用を、図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、記録処理トリガ生成部57は、パスカウントN、先端位置パルス数C0、後端位置パルス数C1、長さLm等の記憶領域や制御変数を初期化する(ステップ301)。
【0131】
その後、記録媒体検出部15からの記録媒体検知情報15aおよび搬送情報生成部12からの用紙搬送情報パルス12aの監視を開始する(ステップ302)。
【0132】
そして、記録媒体検知情報15aの立ち上がりを検知すると(ステップ303(第1ステップ))、用紙搬送情報パルス12aのカウントを開始するとともに(ステップ304)、用紙搬送情報パルス12aのカウント値(この場合、記録媒体40が1枚の最も単純な例なので0)を先端位置パルス数C0に記憶し(ステップ305(第2ステップ))、さらに、記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStを画像記録制御部51に通知する(ステップ306)。
【0133】
その後、記録媒体検知情報15aの立ち下がりを検出すると(ステップ307(第1ステップ))、後端位置パルス数C1に用紙搬送情報パルス12aのカウント値を格納し(ステップ308(第2ステップ))、記録処理トリガ信号Sの媒体後端トリガSbを画像記録制御部51に通知する(ステップ309)。
【0134】
その後、パスカウントNをインクリメントし(ステップ310)、さらに、パスカウントNが最終パス数を超過した(すなわち記録完了)か否かを判別する(ステップ311)。
【0135】
そして、記録未完の場合には、用紙搬送情報パルス12aのカウント値TnがC0+R×Nに一致するまで待ち(ステップ312(第3ステップ))、一致したら(すなわち、記録媒体40の先端位置40aを検出したら)、記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStを画像記録制御部51に通知する(ステップ313)。
【0136】
その後、Bnが、C0+R×N+C1に一致するまで待ち(ステップ314(第3ステップ))、一致したら(すなわち、記録媒体40の後端位置40bを検出したら)、画像記録制御部51に、記録処理トリガ信号Sの媒体後端トリガSbを出力して(ステップ315)、上述のステップ310に戻る。
【0137】
上述のステップ311で、記録完了と判定された場合には、当該記録媒体40をドラム11から剥離して排出し、記録を終了する。
【0138】
このように、本実施の形態の作用例1では、記録媒体40がドラム11に配置された直後の記録前に、記録媒体検出部15の記録媒体検知情報15aで検出される記録媒体40の先端位置40aおよび後端位置40bを、先端位置パルス数C0、後端位置パルス数C1として、用紙搬送情報パルス12aのパルス数で記憶し、以後は、記録媒体検知情報15aを用いることなく、この先端位置パルス数C0および後端位置パルス数C1と、ドラム周長パルス数Rに基づいて記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStおよび媒体後端トリガSbを生成して画像記録制御部51に与えることにより、記録媒体40に対するマルチパス記録が行われる。
【0139】
このため、ドラム11等の搬送機構の任意の位置に記録媒体40を固定してマルチパスによる画像記録を行う画像記録技術において、記録媒体40の記録状態に影響されることなく、安価な反射式の記録媒体検出部15を用いて精度良く画像記録を行うことが可能となる。
【0140】
[作用例2]
図12は、本作用例2において用いられる媒体位置管理テーブル58の構成例を示す概念図である。
図13は、本作用例1の作用を説明するタイミングチャートである。図14は、本作用例1の作用を説明するフローチャートである。
【0141】
この作用例2では、ドラム11の表面上に複数枚の記録媒体40が吸着搬送されている場合の制御例を説明する。この説明では原理がわかりやすいように2枚の記録媒体40の吸着搬送を例にとって説明する。
また、本制御例では奇数枚目の吸着後、ドラム11の1回転後に偶数枚目の給紙と吸着を行う形態を例に取って説明する。
【0142】
このため、図12に例示されるように、媒体位置管理テーブル58には、ドラム周長パルス数Rが格納される定数記憶領域58aの他に、ドラム11に配置される複数の記録媒体40を管理するための複数のカウント値記憶領域58bおよび媒体長さ情報58dと、個々のカウント値記憶領域58bを識別するためのページ数記憶領域58cが設けられている。
【0143】
制御部50の記録処理トリガ生成部57は、上述の作用例1と同様に図13に示すように、記録媒体40に何も記録されていない1枚目の1パス目の記録媒体検出部15の良好な出力の変化点である立ち上がり(センシングの方式によっては立ち下がり)を検知して、記録媒体40の先端位置40aと認識し、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt)としてそのタイミングを通知する。それと同時に搬送情報生成部12から出力される搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのカウントを開始する。この開始時のカウント値を記録媒体40の先端位置40aを示す先端位置パルス数C0(パルス)として媒体位置管理テーブル58に記憶する。
【0144】
そして、記録媒体検出部15の次の出力の変化点である立ち下がり(センシングの方式によっては立ち上がり)を記録媒体40の後端位置40bとして認識し、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち下がり(媒体後端トリガSb)としてそのタイミングを通知する。
【0145】
また、その時の搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのパルスカウント値である後端位置パルス数C1を記録媒体40の後端位置40bとして媒体位置管理テーブル58に記憶する。1パス目の搬送情報における1枚目の記録媒体40の長さLm1=C1−C0は、先端位置パルス数C0が0であるため、後端位置パルス数C1と対応し、記録媒体40の長さLm1は、C1のパルス数として媒体位置管理テーブル58の媒体長さ情報58dに記憶される。
【0146】
2パス目の記録処理トリガ信号Sは、記録媒体検出部15の出力である記録媒体検知情報15aを使用せず、搬送情報である用紙搬送情報パルス12aを積算して所定のカウント値になった時点で出力する。
【0147】
制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのカウント値を監視し、ドラム11の1周分の搬送情報であるドラム周長パルス数Rと一致した時に画像記録制御部51にそのタイミングを記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt)として通知する。
【0148】
さらに1パス目で取得した記録媒体40の長さLmをC1のパルス数として取得しているため、制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのカウント値を監視し、(R+C1)パルスと一致した時に画像記録制御部51に記録処理トリガ信号の立ち下がり(媒体後端トリガSb)として通知する。
【0149】
以降、同様に、Nパス目の記録媒体40の先端位置40aの搬送情報のカウント値T1nは、
T1n=R×N(パルス) ………(4)
Nパス目の記録媒体40の後端の位置B1nは
B1n=R×N+C1(パルス) ………(5)
となる。
【0150】
全てのパスの画像記録が終了したら、カウントを停止するとともに1枚目の記録媒体40の長さLm1、先端位置パルス数C0および後端位置パルス数C1の情報も媒体位置管理テーブル58から消去し、記録媒体40が、ドラム11上に無い状態にする。
【0151】
一方、2枚目の画像記録用の記録媒体40の先端位置40aは、2枚目の給紙時(1枚目の排紙前)に既に1枚目の記録媒体40の先端位置40a(先端位置パルス数C0)と記録媒体40の長さLm1(C1パルス)が確定しているため、搬送情報のT1nからB1nの区間の記録媒体検出部15の記録媒体検知情報15aをマスク(無視)し、1枚目の2パス目以降の先端位置40aおよび後端位置40bの情報を、2枚目の記録媒体40の先端位置40aおよび後端位置40b検出処理から排除する。
【0152】
ただし、媒体位置管理テーブル58に1枚目の記録媒体40の先端位置パルス数C0(パルス)と長さLm1の情報が記憶されていない状態(排紙後)の場合は、ドラム11の面上に先行する記録媒体40が吸着していないと判断して記録媒体検知情報15aのマスクを行わない。
【0153】
以上の条件のもとで、2枚目の記録媒体40の記録媒体検知情報15aのみを参照して、2枚目の先端位置を検出することができる。
【0154】
すなわち、2枚目の記録媒体検知情報15aのみを参照することにより、1枚目と同様に、記録媒体40に何も記録されていない1パス目の記録媒体検出部15の記録媒体検知情報15aの良好な出力の変化点である立ち上がり(センシングの方式によっては立ち下がり)を検知して、記録媒体40の先端位置40aと認識し、記録処理トリガ信号Sとして画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt)としてそのタイミングを通知する。また、その時の用紙搬送情報パルス12aのカウント値を先端位置パルス数C2として媒体位置管理テーブル58のページ数記憶領域58cの2頁目の領域に記憶する。
【0155】
それと同時に搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのカウントを開始する。
次の出力の変化点である立ち下がり(センシングの方式によっては立ち上がり)を記録媒体40の後端位置40bとして認識し、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち下がり(媒体後端トリガSb)としてそのタイミングを通知する。
【0156】
また、その時の搬送情報のカウント値である後端位置パルス数C3を記録媒体の後端位置40bとして媒体位置管理テーブル58に記憶する。1パス目の搬送情報における記録媒体40の長さLm2はC3−C2(後端位置パルス数C3と先端位置パルス数C2との差)と同値のため記録媒体40の長さLmを演算して媒体位置管理テーブル58の媒体長さ情報58dに記憶する。
【0157】
2パス目の記録処理トリガ信号Sは、記録媒体検出部15の記録媒体検知情報15aの出力を使用せず、搬送情報である用紙搬送情報パルス12aと同期して出力する。
【0158】
制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報のカウント値を監視し、ドラム11の1周分のドラム周長パルス数Rを加算したC2+Rと一致した時に画像記録制御部51にそのタイミングを記録処理トリガ信号Sの立ち上がり(媒体先端トリガSt)として通知する。
【0159】
さらに1パス目で取得した記録媒体40の長さLm2を(C3−C2パルス)として取得しているため、制御部50の記録処理トリガ生成部57は搬送情報のカウント値を監視し、C2+R+(C3−C2)と一致した時に画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの立ち下がり(媒体後端トリガSb)として通知する。
【0160】
以降、同様に、Nパス目の記録媒体40の先端位置40aの搬送情報のカウント値T2nは、
【0161】
T2n=C2+R×N ………(6)
Nパス目の記録媒体40の後端の位置B2nは
【0162】
B2n=C2+R×N+(C3−C2) ………(7)
となる。
全てのパスの画像記録が終了したら、用紙搬送情報パルス12aのカウントを停止するとともに記録媒体40の長さLm2(C3−C2パルス)の情報も媒体位置管理テーブル58から消去し、2枚目の記録媒体40がドラム11上に無い状態にする。
【0163】
2枚目の記録媒体40が給紙、画像記録されている最中に、1枚目の記録媒体40の排紙と、3枚目の記録媒体40の給紙が行われる。3枚目の記録媒体40の位置検出が必要となるが、2枚目の記録媒体40の記録媒体検知情報15aも記録媒体検出部15から出力されているため、3枚目の記録媒体40の検知処理においては、T2nとB2nの情報を使用して、記録媒体40の搬送情報である用紙搬送情報パルス12aのT2nからB2nの区間の記録媒体40の先端位置情報をマスクし、2枚目の記録媒体40の先端位置情報を排除する。
【0164】
ただし、媒体位置管理テーブル58に2枚目の記録媒体40の先端位置と記録媒体40の長さ情報が記憶されていない状態の場合は、ドラム11面上に2枚目の記録媒体40が吸着していないとして記録媒体40の先端位置情報のマスクを行わない。
【0165】
これにより3枚目の給紙時の記録媒体40の先端位置40aの搬送情報値である先端位置パルス数C4,後端の搬送情報値である後端位置パルス数C5の取得が可能になる。
以降、同様に記録媒体40の奇数枚目、偶数枚目で同様の処理を行って行く。
【0166】
図14のフローチャートは、上述のように、複数の記録媒体40をドラム11に配置してマルチパス記録を行う場合に、2枚目以降の記録媒体40で、先行する記録媒体40から発生する記録媒体検知情報15aをマスクし、用紙搬送情報パルス12aにより、媒体先端トリガStおよび媒体後端トリガSbを生成する処理例を示している。
【0167】
すなわち、2枚目以降のj枚目のNパス目の先端位置パルス数Tjnは、k=j×2−2として、
Tjn=C+R×N ………(8)
後端位置パルス数Bjnは、
Bjn=C+R×N+(Ck+1−C) ………(9)
となる。
【0168】
すなわち、制御部50の記録処理トリガ生成部57は、2枚目以降のj枚目の記録媒体40の処理のたびに、まず、k=j×2−2、パスカウントN、先端位置パルス数C、後端位置パルス数Ck+1、長さLmjを初期化し(ステップ321)、記録媒体検知情報15a、用紙搬送情報パルス12aの監視を開始する(ステップ322)。
【0169】
そして、まず、先行する記録媒体40の存在の有無に応じてマスク処理の要否を判別し(ステップ323)、マスク処理が必要と判断した場合には、搬送情報生成部12から出力される用紙搬送情報パルス12aがマスク範囲外になるまで待ち(ステップ324)、その後、記録媒体検知情報15aの検知を待つ(ステップ325)。
【0170】
一方、上述のステップ323で、先行する記録媒体40がなく、マスク処理が不要と判断された場合には、直ちにステップ325に移行する。
【0171】
そして、ステップ325で記録媒体検知情報15aが検出されると、用紙搬送情報パルス12aのカウントを開始し(ステップ326)、同時に、その時の用紙搬送情報パルス12aを先端位置パルス数Cとして媒体位置管理テーブル58に記憶するとともに(ステップ327)、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStを通知する(ステップ328)。
【0172】
その後、記録媒体検知情報15aの立ち下がり検知を待ち(ステップ329)、立ち下がりが検知されたら、その時の用紙搬送情報パルス12aを後端位置パルス数Ck+1として媒体位置管理テーブル58に記憶するとともに(ステップ330)、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの媒体後端トリガSbを通知し(ステップ331)、パスカウントNをインクリメントする(ステップ332)。
【0173】
そして、パスカウントNが最終パス数を超過したか判別し(ステップ333)、超過していない場合には、用紙搬送情報パルス12aがC+R×Nと一致するまで待ち(ステップ334)、一致したら、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの媒体先端トリガStを通知する(ステップ335)。
【0174】
その後、記録処理トリガ生成部57は、用紙搬送情報パルス12aが、C+R×N+(Ck+1 − C)に一致するまで待ち(ステップ336)、一致したら、画像記録制御部51に記録処理トリガ信号Sの媒体後端トリガSbを通知して(ステップ337)、ステップ332に戻る。
【0175】
一方、上述のステップ333でパスカウントNが最終パス数を超過したと判断されたら、当該記録媒体40に対するマルチパス記録の完了として、ドラム11から剥離して排出するとともに、媒体位置管理テーブル58のC,Ck+1のデータを消去する(ステップ338)。
【0176】
以上により、複数の記録媒体40をドラム11上に吸着配置してマルチパス記録を行う場合においても、ドラム11上の周方向の任意の位置に記録媒体40が配置される媒体固定方式において、マルチパス記録中の記録媒体40の記録状態に影響されることなく、例えば、安価な反射式の記録媒体検出部15を用いて所望の位置に精度良く印字できるような画像記録技術を提供できる。
【0177】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0178】
10 搬送機構
11 ドラム
12 搬送情報生成部
12a 用紙搬送情報パルス
13 剥離部
14 搬送駆動部
15 記録媒体検出部
15a 記録媒体検知情報
20 給送部
21 給送トレイ
22 給送駆動部
30 回収部
31 収納トレイ
32 排出駆動部
40 記録媒体
40a 先端位置
40b 後端位置
50 制御部
51 画像記録制御部
52 ノズル列記録制御部
53 記録ユニット移動制御部
54 用紙搬送制御部
55 記憶部
56 ヘッド移動制御テーブル
57 記録処理トリガ生成部
58 媒体位置管理テーブル
58a 定数記憶領域
58b カウント値記憶領域
58c ページ数記憶領域
58d 媒体長さ情報
60 画像記録部
70 記録ユニット
71 短尺記録ヘッド
72 ノズル列
73 ノズル
74 インク滴
74a インク滴
74b インク滴
80 ノズル列駆動部
90 記録ユニット移動機構
91 記録ユニットホルダ
92 リニアモータ
100 画像記録装置
200 上位装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部の任意の位置に記録媒体を保持して搬送する回転搬送手段と、
前記回転搬送手段による前記記録媒体の搬送方向である副走査方向に交差する主走査方向に前記回転搬送手段に対向して配置され、前記記録媒体に対して画像を記録する記録手段と、
前記回転搬送手段の搬送位置情報を出力する搬送情報生成手段と、
前記回転搬送手段に保持された前記記録媒体の前記搬送方向における先端位置情報および後端位置情報を検出する記録媒体検出手段と、
前記画像の記録前の前記記録媒体から前記記録媒体検出手段によって検出された前記先端位置情報および前記後端位置情報の各々に対応して前記搬送情報生成手段から検出される第1搬送位置情報および第2搬送位置情報と、前記回転搬送手段の1回転に対応する第3搬送位置情報とに基づいて、前記記録手段における前記記録媒体に対する前記画像の記録タイミングを制御する制御手段と、
を含むことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像記録装置において、
複数の前記記録媒体が前記回転搬送手段の前記外周部に順次装着および排出可能にされ、前記制御手段は、先行する前記記録媒体に対応した前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報の範囲内で前記記録媒体検出手段から出力される前記先端位置情報および前記後端位置情報の検出をマスクして、後続の前記記録媒体に関する前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報の検出を行うことを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像記録装置において、
さらに、前記回転搬送手段に対して前記記録手段を前記主走査方向に相対的に変位させる移動機構を備え、
前記回転搬送手段の1回転毎に前記主走査方向における前記記録手段の位置を変化させるマルチパス記録が行われることを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
外周部の任意の位置に記録媒体を保持して回転搬送する回転搬送手段と、前記回転搬送手段による前記記録媒体の搬送方向である副走査方向に交差する主走査方向に前記回転搬送手段に対向して配置され、前記記録媒体に対して画像を記録する記録手段と、を含む画像記録装置の制御方法において、
前記回転搬送手段の任意の位置に保持された前記記録媒体の先端位置情報および後端位置情報を検出する第1ステップと、
前記先端位置情報および前記後端位置情報の各々に対応した前記回転搬送手段の第1搬送位置情報および第2搬送位置情報を記憶する第2ステップと、
前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報と、前記回転搬送手段の1回転に対応する第3搬送位置情報とに基づいて、前記記録手段における前記記録媒体に対する前記画像の記録タイミングを制御する第3ステップと、
を含むことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の画像記録装置の制御方法において、
複数の前記記録媒体が前記回転搬送手段の前記外周部に順次装着および排出されるとき、
前記第2ステップでは、先行する前記記録媒体に対応した前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報の範囲内で検出される前記先端位置情報および前記後端位置情報をマスクして、後続の前記記録媒体に関する前記第1搬送位置情報および前記第2搬送位置情報を記憶することを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の画像記録装置の制御方法において、
前記第3ステップでは、前記回転搬送手段の1回転毎に前記主走査方向における前記記録手段の位置を相対的変化させるマルチパス記録が行われることを特徴とする画像記録装置の制御方法。

【図1】
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【図3】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−152950(P2012−152950A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12094(P2011−12094)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】