説明

画像記録装置

【課題】メンテナンス動作の前後で搬送精度にばらつきを生じることなく常に高品質な画像を記録するインクジェット式のラインヘッド型の画像記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置1は給紙部20、搬送部30、画像記録部40、排出部50を具備する。搬送部30の搬送ベルト31を駆動するベルトローラ32a及び32bと画像記録部40は本体装置フレーム11に保持されて相互の位置関係は不動である。また、搬送部30は、搬送ベルト31の内側にプラテンユニット60を備える。このプラテンユニット60は、ベルトローラ32a、32bよりも画像記録部側で搬送ベルト31と当接するプラテンローラ64a、64bと、ベルトローラ32a、32bを介してプラテンローラ64a、64bとは反対側で搬送ベルト31と当接するテンションローラ65と、搬送ベルト31の張力を調整する張力調整機構37とを有し、搬送ベルト31の内側を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス動作の前後で搬送精度にばらつきを生じることなく常に高品質な画像を記録することのできるインクジェット式のラインヘッド型の画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像記録装置として、例えばインクジェットプリンタは、搬送手段により保持搬送される記録媒体に、記録ヘッドの複数のノズルよりインク滴を吐出することによって画像記録を行っている。
【0003】
このインクジェットプリンタは、例えばカットシート状の記録媒体(用紙)に画像を記録するオフィス用途として幅広く使用されている。
また、近年では、多数の記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に固定配置した所謂ラインヘッドを構成して、高速に画像記録を行うことが出来るラインヘッド型のインクジェットプリンタもある。
【0004】
このようなラインヘッド型のインクジェットプリンタは、記録媒体の搬送には、例えば搬送ベルトを用い、この搬送ベルトによって記録媒体がラインヘッド直下に到達すると、ラインヘッドからインクが吐出され、1パス(記録媒体がラインヘッドを1回通過するだけ)で所定の画像が記録される。
【0005】
ここで、一般的にインクジェットプリンタでは、良好な画像を得るためには、その記録ヘッドに設けられた微細なノズルから吐出されるインクの吐出状態を良好に保つことが必要である。
【0006】
このためには、記録ヘッド内部のインク流路に存在する異物あるいは気泡を排出するために、インクをノズルから排出するパージ動作を行う必要が生じる。
更には、ノズルのインク吐出口が配設されているインク吐出面に付着している余分なインク滴や異物を除去するために、インク吐出面を払拭する吐出面ワイピング動作なども必要となる。
【0007】
これらのパージ動作や吐出面ワイピング動作を行うことは、一般にメンテナンス動作と称され、インクジェットプリンタには、そのようなメンテナンス動作を行うメンテナンス機構が設けられている。
【0008】
メンテナンス機構がメンテナンス動作を行うためにはラインヘッドの下方にメンテナンス機構が配置される空間を形成する必要があるが、通常、ラインヘッド型プリンタでは、記録媒体を搬送する搬送ベルトがラインヘッドの直下に設けられている。このため、メンテナンス動作時には、搬送ベルトをラインヘッドの直下から退避させ、ラインヘッドの下方にメンテナンス機構が配置できる空間を形成する。
【0009】
特許文献1には、そのようなラインヘッドのメンテナンス動作を行うインクジェットプリンタが開示されている。
特許文献1開示されているインクジェットプリンタにおいて、搬送ベルトは第1ローラと第2ローラとの間に張力を与えられて架け渡され、画像記録時には、搬送ベルトは、ラインヘッドと対向する位置に配置されている。
【0010】
そして、メンテナンス動作を行う際には、第1ローラが動作位置から退避位置へ移動することによって搬送ベルトが屈曲されてラインヘッドの下方から退避する。これにより、ラインヘッドの下方には空間が形成され、この空間にメンテナンス機構が移動してメンテナンス動作が行われる。
【特許文献1】特開2006−321239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、インクジェットプリンタで高品質な画像を得るためには、搬送ベルトの搬送精度を常に同じに維持しなければならない。
ところが、特許文献1記載のインクジェットプリンタにおいては、第1ローラを退避位置へ移動させ、搬送ベルトを屈曲させてメンテナンス動作を行っている。そして、メンテナンス動作が終了すると、第1ローラを記録動作位置へ移動させ、搬送ベルトを元の張接状態に戻している。
【0012】
このように、メンテナンス動作前後で第1ローラの位置が異なるため、記録動作位置への復元で第1ローラの位置にばらつきが生じるだけでなく、記録動作位置とメンテナンス動作時の退避位置とで搬送ベルトに加わる張力が変化するので、搬送ベルトにかかる緊張度にもばらつきが生じてしまう。
【0013】
つまり、このように搬送ベルトにかかる緊張度にばらつきが生じると、メンテナンス動作を行うたびに搬送精度にばらつきが生じるため、高品質な画質を得ることができないという問題が発生する。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、メンテナンス動作の前後で搬送精度にばらつきを生じることなく常に高品質な画像を記録することのできるインクジェット式のラインヘッド型の画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するために、画像記録装置は、装置本体フレームに回転可能に支持されたベルトローラと、該ベルトローラに掛け渡された搬送ベルトと、該搬送ベルトの内側に移動可能に配設されたプラテンユニットと、を有し、記録媒体を下流側へと搬送する搬送部と、搬送部によって搬送される記録媒体の搬送方向と直交する方向に該記録媒体の幅以上に亘って配設される記録ヘッド部からインクを吐出して画像記録を行う画像記録部と、記録ヘッド部のメンテナンスを行うメンテナンス機構と、プラテンユニットを記録媒体に画像記録を行う画像記録位置と記録ヘッド部のメンテナンスを行うメンテナンス位置とに移動させるプラテンユニット移動機構と、を備え、プラテンユニットは、少なくともプラテンローラと、テンションローラと、搬送ベルトの張力を調整する張力調整機構と、を有し、プラテンユニットが画像記録位置に位置する際、プラテンローラは、ベルトローラよりも画像記録部側で搬送ベルトと当接し、テンションローラは、ベルトローラを介してプラテンローラとは反対側で搬送ベルトと当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メンテナンス動作の前後で搬送精度にばらつきを生じることなく常に高品質な画像を記録することのできるインクジェット式のラインヘッド型の画像記録装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像記録装置を示す概略的な側面図である。図1に示すように、画像記録装置1は、給紙部20と、搬送部30と、画像記録部40と、排出部50とを具備している。
【0018】
図2は、上記の搬送部30を示す概略的な上面図である。なお、以下の説明の図中において、記録媒体の搬送方向に沿った軸心をY軸とし、画像記録時の記録媒体21aの画像が形成される面において、Y軸と直交する軸心をX軸とし、X軸及びY軸と直交する軸心をZ軸とする。
【0019】
まず、図1の給紙部20について説明する。
この給紙部20は、給紙トレイ21と、ピックアップローラ22と、レジストレーションローラ対23と、を有している。
【0020】
給紙トレイ21は、少なくとも1枚の記録媒体21aを収納する媒体収容部である。本実施の形態において、媒体収容部には、記録媒体21aとして、カットシート状の複数枚の紙が収容されている。
【0021】
ピックアップローラ22は、給紙トレイ21中の記録媒体21aを1枚ずつ取り出す記録媒体取り出し機構である。このピックアップローラ22は、図2に示す装置フレーム11により、回転可能に支持されている。
【0022】
レジストレーションローラ対23は、ピックアップローラ22により取り出された記録媒体21aを、画像記録時の搬送方向に対して位置合わせを行う搬送方向調整部である。
このレジストレーションローラ対23は、装置フレーム11により回転可能に支持されている。また、このレジストレーションローラ対23は、位置合わせ後の記録媒体21aを、搬送部30に給送する役割を担っている。
【0023】
続いて、搬送部30について説明する。
搬送部30は、給紙部20から送られてきた記録媒体21aを、画像記録時に搬送する搬送装置である。
【0024】
この搬送部30は、図1中に示されるように、搬送ベルト31と、ベルトローラ32a及び32bと、プラテンユニット60とを具備している。
搬送ベルト31は、帯状でかつ無端のリング状に形成されている。この搬送ベルト31には、図2に示すように、複数のエアー吸引用の吸引孔31aが例えば縦横方向に所定間隔毎に設けられている。
【0025】
この搬送ベルト31は、ベルトローラ32a及び32bとプラテンユニット60とに架け渡されており、プラテンユニット60のテンションローラ65によってテンションを掛けられている。
【0026】
ベルトローラ32a及び32bは、図2に示すように、装置フレーム11に回転可能に支持されている。これによりベルトローラ32a及び32bは、印刷時やメンテナンス時に移動せず、図1に示す画像記録部40に対して常に同じ位置関係を維持している。
【0027】
また、ベルトローラ32bには、ベルト31を回転させるための駆動源であるベルトローラ駆動モータ12が接続されている。このベルトローラ駆動モータ12も装置フレー11に固設されている。
【0028】
このように、搬送ベルト31は、ベルトローラ駆動モータ12によって回転駆動されることにより、記録媒体21aをY軸に沿って運ぶためのベルトコンベヤを構成している。これにより、画像記録時の記録媒体21aの搬送方向が設定される。
【0029】
次に、プラテンユニット60の詳細について説明する。
図3は、プラテンユニット60を詳細に示す斜視図である。以下、この図3と、図1及び図2も参照しながらプラテンユニット60について説明する。
【0030】
プラテンユニット60は、プラテン61と、プラテン61の下方に設けられた吸引ユニット63と、プラテン61及び吸引ユニット63を保持するプラテンフレーム62と、プラテンフレーム62に回転可能に支持されたプラテンローラ64a、64b及びテンションローラ65と、搬送ベルト31の張力を常に一定の状態に保つための張力調整機構37とで構成されている。
【0031】
プラテン61は、搬送ベルト31と対向する領域全体に渡って、Y方向に延在する複数の溝61aが形成されている。各溝61aの略中央部には、吸引孔61bが設けられている。この吸引孔61bは、吸引ユニット63と連通している。
【0032】
吸引ユニット63は、搬送ベルト31の搬送面に記録媒体21aを吸着させるための負圧を発生させる負圧発生装置である。この吸引ユニット63は、プラテンフレーム62に固定されている。
【0033】
この吸引ユニット63には、特には図示しないが、プラテンチャンバーが設けられ、このプラテンチャンバーは、それ自身のチャンバー内を負圧にするための負圧発生源を有している。負圧発生源は、例えばファンなどの公知の負圧発生装置である。
【0034】
プラテンチャンバーは、負圧発生源の負圧により、吸引孔61bから空気を吸引する。この吸引力により、搬送ベルト31の吸引孔31aを介して、搬送中の記録媒体21aが搬送ベルト面に吸引されるように構成されている。
【0035】
これにより、搬送ベルト31からの記録媒体21aの浮き上がりを防止すると共に、記録媒体21aを確実に搬送ベルト31へ吸着させる。
また、プラテン61の四隅には、後述する画像記録部40の位置決めピン43と嵌合することで搬送部30と画像記録部40との位置決めを行なう位置決め穴62cが設けられている。
【0036】
プラテンローラ64a及び64bは、図1に示すように、ベルトローラ32a及び32bよりも上方で、プラテンフレーム62に回転可能に保持されている。搬送方向上流側に設けられたプラテンローラ64aの上方には、搬送ベルト31を介して従動して回転する従動ローラ33が設けられている。この従動ローラ33は、記録媒体21aを搬送ベルト31へ確実に密着させるために設けられている。
【0037】
また、プラテンローラ64a及び64bとプラテン61とで、少なくとも画像記録部40と対向する領域において、図1に示す記録媒体搬送領域67を形成している。この記録媒体搬送領域67は、画像記録部40と搬送ベルト31とがX軸及びY軸と平行になるような平面度を有している。そして記録媒体21aは、搬送ベルト21により記録媒体搬送領域67上を搬送される。上述したように搬送ベルト31により記録媒体21aを搬送する。
【0038】
テンションローラ65は、図1に示すように、ベルトローラ32a及び32bより下方でプラテンフレーム62に回転可能に保持されている。このようにベルトローラ32a及び32bを上下から挟むようにして、プラテンローラ64a及び64bと、テンションローラ65とを設けることにより、プラテンユニット60によって搬送ベルト31を常に張設しておくことができる。
【0039】
張力調整機構37は、プラテンユニット60が移動する範囲内で搬送ベルト31に常に一定の緊張度を維持させるために、テンションローラ65を介して搬送ベルト31に与える張力を調整している。
【0040】
この張力は、図1に示すように、例えば先ずプラテンフレーム62のテンションローラ支持部にテンションローラ摺動長孔68を形成してテンションローラ65の回転軸の両端部が上下に摺動可能なように支持されるように構成する。
【0041】
次に、テンションローラ65の回転軸の両端部を下端部で固定的に支持するシャフト69を設ける。そして、このシャフト69を上下に分断した中間部に、バネ機構又はエアサスペンションのような押し付勢部材66を設ける。
【0042】
そして、シャフト69の上端部を、プラテンフレーム62に固設されたシャフト保持部62dに固定する。
このようなテンションローラ摺動長孔68、シャフト69、押し付勢部材66、及びシャフト保持部62dから成る張力調整機構37によって、テンションローラ65は、テンションローラ摺動長孔68を摺動しながらZ軸方向に移動し、搬送ベルト31に常に一定の張力を与えることができる。
【0043】
また、例えば、環境温度が高くなったり、搬送ベルト31の磨耗等により搬送ベルト31の周長が長くなるような変化を起きた場合でも、張力調整機構37がテンションローラ65を介して搬送ベルト31に常にZ軸のマイナス方向への張力を与えているため、搬送ベルト31が緩むことはなく、常に一定の張力でベルトローラ32a及び32bとプラテンユニット60とに架け渡すことができる。
【0044】
また、プラテンフレーム62の四隅には、ワイヤ70の一端を固定するワイヤ固定板62aが設けられている。これらワイヤ70の他端は、図2に示す装置フレーム11に固設された不図示の巻取り機構に連結されている。
【0045】
巻取り機構は、その巻取部に四本のワイヤ70の他端をそれぞれ巻回して保持し、そのワイヤ70の他端を緩め又は巻き戻すことにより、プラテンユニット60を上下動させる。このワイヤ70と不図示の巻取り機構とは、プラテンユニット60を昇降させるためのプラテンユニット移動機構を構成している。
【0046】
続いて、画像記録部40について説明する。画像記録部40は、記録媒体21aに対してインクを吐出するためのインク吐出装置である。この画像記録部40は、記録ヘッド部41と、ヘッド保持部42と、で構成されている。
【0047】
記録ヘッド部41は、各色毎に設けられており、例えばブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。
記録ヘッド部41は、使用される記録媒体21aの最大の幅と同一、又はそれ以上の寸法となるように、1つの長尺ヘッド、又は複数の短尺ヘッドによりラインヘッドを構成している。本実施例では、複数の短尺ヘッドを搬送方向と直交する方向に千鳥状に並べて配設し、ラインヘッドを構成している。
【0048】
即ち、画像記録装置1がA3判の記録媒体21aに対する記録に対応していた場合、記録ヘッド部41の幅(図1の紙面奥行き方向の長さ)は、A3判の記録媒体21aの幅以上に設定される。これらの記録ヘッド部41は、ヘッド保持部42に支持されている。ヘッド保持部42は、装置フレーム11に固定されている。
【0049】
また、ヘッド保持部42には、上述したプラテン61に設けられた位置決め穴62cと対応する位置に、位置決めピン43が設けられている。この位置決めピン43は、画像記録時にプラテン61に設けられた位置決め穴62cと嵌合する。これにより、搬送部30と画像記録部40との位置決めを行なうことができる。なお、本実施の形態では、位置決めピン43をヘッド保持部42に設け、位置決め穴62cをプラテン61に設けたが、位置決めピン43をプラテン61、位置決め穴62cをヘッド保持部42に設けてもよい。
【0050】
次にメンテナンス機構44について説明する。メンテナンス機構44は、各記録ヘッド部41に対応して設けられ、画像記録時は待機位置である各記録ヘッド部41間に配置されている。
【0051】
このメンテナンス機構44には、周知のブレード機構やキャップ機構が設けられており、これらの機構により各記録ヘッド部41のメンテナンスを行う。
続いて、排出部50について説明する。排出部50は、画像記録部40により画像が記録された記録媒体21aを、排出する機構である。この排出部50は、図1中に示されるように、排出部搬送ローラ対51と、排出部排出ローラ対52と、排出トレイ53と、を具備している。
【0052】
排出部搬送ローラ対51は、搬送部30より搬送された記録媒体21aを、この排出部50中に搬送する役割を担う。排出部排出ローラ対52は、排出部搬送ローラ対51から搬送されてきた記録媒体21aを、排出トレイ53に搬送するための搬送ローラである。
【0053】
このように、排出部排出ローラ対52は、排出部搬送ローラ対51にて搬送される記録媒体21aの搬送を引き継いで、その記録媒体21aを排出トレイ53に排出する。
次に搬送ベルト31と記録ヘッド部41との間隔の調整方法を説明する。
【0054】
図4は、搬送ベルト31と記録ヘッド部41とが狭い間隔d1で維持される画像記録時における状態を示す図である。
図4に示す画像記録時の間隔d1のときは、プラテンユニット60のプラテンローラ64a及び64bを、ベルトローラ32a及び32bよりもZ軸方向の上方位置に配置し、テンションローラ65を、ベルトローラ32a及び32bよりもZ軸方向の下方位置に配置する。つまり、プラテンローラ64a及び64bはベルトローラ32a及び32bよりも画像記録部40側で搬送ベルト31と当接し、テンションローラ65は記録ヘッド部41から吐出されるインクの吐出方向におけるベルトローラ32a及び32bを介してプラテンローラ64a及び64bとは反対側で搬送ベルト31と当接している。これにより、プラテンユニット60は、搬送ベルト31に一定のテンションを与えている。
【0055】
図5は、搬送ベルト31と記録ヘッド部41とが広い間隔d2で離間されるメンテナンス時の状態を示す図である。
図5に示すメンテナンス時の間隔d2は、図3で説明したように、不図示の巻取り機構が、その巻取部に巻回して保持している四本のワイヤ70の他端の巻き取りを緩めることにより、搬送部30と画像記録部40との間隔がd2となるように、プラテンユニット60をZ軸方向に下降させる。
【0056】
このとき、本実施例では、プラテンユニット60の下降範囲は、プラテン61及びプラテンローラ64a及び64bが、ベルトローラ32a及び32bと同等の高さ位置、若しくはベルトローラ32a及び32bよりも上方の位置となるような範囲で下降する。
【0057】
プラテンユニット60が、図4に示す記録位置から図5に示すメンテナンス位置に下降するまでの間で、搬送ベルト31には張力調整機構37によってテンションローラ65を介して常に同じ張力が加えられている状態で下降する。
【0058】
搬送部30と画像記録部40との間隔がd2となると、不図示のメンテナンス移動機構が駆動され、メンテナンス機構44が、図5に破線で示す待機位置から実線で示す各記録ヘッド部41と対向する位置まで移動する。これにより、各記録ヘッド部41のメンテナンス動作が行われる。なお、メンテナンス機構44は、図6に示すように、各記録ヘッド部41よりも記録媒体搬送方向下流側にまとめて配置し、破線で示す待機位置から実線で示す各記録ヘッド部41と対向する位置まで移動させてもよい。
【0059】
メンテナンス動作が終了すると、メンテナンス機構44を、図4に示す待機位置まで戻し、さらに巻取り機構が巻き取りを緩めた四本のワイヤ70の他端を巻き戻してプラテンユニット60を上昇させ、図4に示す記録位置の状態とする。
【0060】
図4及び図5において、ベルトローラ32a及び32bと画像記録部40は、共に装置フレーム11に設置されているため、図4に示す画像記録時でも、図5に示すメンテナンス時でも、ベルトローラ32a及び32bと画像記録部40との位置関係は変化しない。
【0061】
また、搬送ベルト31には、プラテンユニット60によって常に一定の張力が加えられている。つまり、プラテンフレーム62に保持されるプラテンローラ64a、64b及びプラテン61をベルトローラ32a及び32bよりも上方に配設し、テンションローラ65をベルトローラ32a及び32bよりも下方に配設し、且つ張力調整機構37を設けることで、プラテンユニット60が記録位置とメンテナンス位置との間を移動する際、搬送ベルト31に常に同じ張力を与えた状態で移動させることが可能となる。
【0062】
なお、プラテンフレーム62内のプラテンローラ64a、64b及びテンションローラ65の位置関係は、組み立て時に搬送ベルト31の走行方向が安定する位置に調整されている。
【0063】
高画質な画像を確保するためには、各ベルトローラ32の位置関係や搬送ベルト31に与える張力、プラテンユニット60と画像記録部40との位置関係をクリーニング前と同一の状態にする必要がある。
【0064】
本例の画像記録装置1では、ベルトローラ32a、32bと画像記録部40は装置フレーム11に固定し、搬送部30と画像記録部40は位置決め穴62cと位置決めピン43とで位置決めする。そして、搬送ベルト31に与える張力は、テンションローラ65と張力調整機構37とによって一定に保たれている。
【0065】
これにより、搬送部30による画像記録部40に対する記録媒体搬送方向には変化が生じず、高画質な画像を確保することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、ベルトローラ32a、32bを装置フレーム11に固定し、プラテンユニット60が搬送ベルト31にかかる張力を常に同じにしながら記録位置とメンテナンス位置との間を移動するため、メンテナンス前後における搬送精度のばらつきを抑えることができ、高画質な画像記録を行うことができる。
【0066】
なお、間隔d1は、記録媒体21aの種類や厚さ等によって調整する必要があるが、本実施の形態では、位置決めピン43が位置決め穴62cと嵌合する高さ位置を可変させることで間隔d1の調整を行なうことができる。
【0067】
このときも、プラテンユニット60内の位置関係、つまりプラテンローラ64a、64b及びテンションローラ65の位置関係は変化せず、プラテンユニット60全体が移動するため、搬送ベルト31にかかる張力は変化しない。
【0068】
また、搬送部30と画像記録部40の各々の位置関係が変化しないため、搬送ベルトの走行方向は常に同じ方向で安定し、高画質の画像を確保することが可能となる。
(プラテンユニットの昇降動作の変形例)
図7は、プラテンユニット60をZ軸方向へ昇降動作させる機構の変形例を示す図である。プラテンユニット移動機構71は、四本の案内シャフト72と、移動用駆動機構73と、移動用駆動機構73の駆動力を四本の案内シャフト72に伝達する図示しない伝達機構からなる。
【0069】
案内シャフト72は、その表面に、プラテンユニット60の四隅に設けられたメネジ孔に係合するようにボルト状のオネジが形成されている。この案内シャフト72は、その軸方向が鉛直になるように設けられている。
【0070】
移動用駆動機構73は、案内シャフト72をその軸周りに回転させるための駆動力を供給する。この駆動力は、歯車等から構成される上記伝達機構により案内シャフトに伝達される。
【0071】
図7に示すプラテンユニット移動機構71は、移動用駆動機構73が正回転することによって案内シャフト72が正回転し、そのボルト状のオネジ部分がプラテンユニット60のメネジ孔と螺合して摺動することによって、プラテンユニット60を上昇させる。一方、移動用駆動機構73が逆転すると、プラテンユニット60は下降する。
(テンションローラの変形例)
上述した実施の形態では、プラテンユニット60のテンションローラ65は1本のみの配設で構成されているが、テンションローラの配設形態はこれに限るものではない。
【0072】
図8は、テンションローラの配設形態の変形例を示す図である。なお、図8には、図1乃至図6に示した構成又は機能と同一な構成又は機能部分には、図1乃至図6と同一の番号を付与して示している。
【0073】
図8に示すように、本例のプラテンユニット60には、複数(図8に示す例では2個)のテンションローラ65(65a、65b)が配設されている。これら複数のテンションローラ65は、吸引ユニット63の下方で吸引ユニット63に対向して水平に配置されるアーム部材62eの両端部に保持されている。
【0074】
アーム部材62eは、複数個のテンションローラ65をアーム部材62eの中心に対して均等に支持している。例えば、テンションローラ65が3個の場合は、3個目のテンションローラ65はアーム部材62eの中央に配置される。
【0075】
このアーム部材62eとプラテンフレーム62との間に張力調整機構37を介装されている。この張力調整機構37も、バネ機構又はエアサスペンションのような押し付勢部材66を備えている。
【0076】
また、この場合も、搬送部30と画像記録部40の位置関係が、画像記録時における間隔d1のときも、メンテナンス時の間隔d2のときも、プラテンユニット60は、プラテンローラ64a及び64bが少なくともベルトローラ32a及び32bよりもZ軸方向の上方に位置し、複数のテンションローラ65がベルトローラ32a及び32bよりもZ軸方向の下方に位置する範囲で上下する。
【0077】
これにより、本例の場合も、搬送ベルト31には画像記録時の間隔d1のときにかかる張力と同じ張力のままでメンテナンス時の間隔d2まで下降させることができ、メンテナンス位置から画像記録位置に戻るときも、同じ張力のままで上昇させることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像記録装置を示す概略的な側面図である。
【図2】第1の実施形態における画像記録装置の搬送部を示す概略的な上面図である。
【図3】第1の実施形態における画像記録装置のプラテンユニットを詳細に示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態における画像記録装置の搬送ベルトと記録ヘッド部とが狭い間隔d1で維持される画像記録時における状態を示す図である。
【図5】第1の実施形態における画像記録装置の搬送ベルトと記録ヘッド部とが広い間隔d2で離間されるメンテナンス時の状態を示す図である。
【図6】メンテナンス機構の待機位置を各記録ヘッド部よりも記録媒体搬送方向下流側にまとめて配置した例を示す図である。
【図7】プラテンユニットをZ軸方向へ昇降動作させる機構の変形例を示す図である。
【図8】テンションローラの配設形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 画像記録装置
11 装置フレーム
12 ベルトローラ駆動モータ
20 給紙部
21 給紙トレイ
21a 記録媒体
22 ピックアップローラ
23 レジストレーションローラ対
30 搬送部
31 搬送ベルト
31a 吸引孔
32(32a、32b) ベルトローラ
33 従動ローラ
37 張力付加機構
40 画像記録部
41 記録ヘッド部
42 ヘッド保持部
43 位置決めピン
44 メンテナンス機構
50 排出部
51 排出部搬送ローラ対
52 排出部排出ローラ対
53 排出トレイ
60 プラテンユニット
61 プラテン
61b 吸引孔
62 プラテンフレーム
62a ワイヤー固定板
62c 位置決め穴
62d シャフト保持部
62e アーム部材
63 吸引ユニット
64a、64b プラテンローラ
65 テンションローラ
66 付勢部材
67 記録媒体搬送領域
68 テンションローラ摺動長孔
69 シャフト
70 ワイヤ
71 プラテンユニット移動機構
72 案内シャフト
73 移動用駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体フレームに回転可能に支持されたベルトローラと、該ベルトローラに掛け渡された搬送ベルトと、該搬送ベルトの内側に移動可能に配設されたプラテンユニットと、を有し、記録媒体を下流側へと搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に該記録媒体の幅以上に亘って配設される記録ヘッド部からインクを吐出して画像記録を行う画像記録部と、
前記記録ヘッド部のメンテナンスを行うメンテナンス機構と、
前記プラテンユニットを前記記録媒体に画像記録を行う画像記録位置と前記記録ヘッド部のメンテナンスを行うメンテナンス位置とに移動させるプラテンユニット移動機構と、
を備え、
前記プラテンユニットは、少なくともプラテンローラと、テンションローラと、前記搬送ベルトの張力を調整する張力調整機構と、を有し、前記プラテンユニットが前記画像記録位置に位置する際、前記プラテンローラは前記ベルトローラよりも前記画像記録部側で前記搬送ベルトと当接し、前記テンションローラは前記ベルトローラを介して前記プラテンローラとは反対側で前記搬送ベルトと当接することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記プラテンユニットは、少なくとも前記画像記録部と対向する領域にプラテンを有し、前記プラテンローラと前記プラテンとで前記記録媒体を下流側へ搬送させるための記録媒体搬送領域を形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記プラテンユニットは、少なくとも前記画像記録部と対向するプラテンと、該プラテンに負圧を発生させる吸引ユニットと、を備え、
前記プラテン及び前記吸引ユニットはプラテンフレームによって保持されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記プラテンフレームと前記プラテンは一体成形されている、ことを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記プラテンフレームは、前記プラテンローラと前記テンションローラを回転可能に保持している、ことを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記プラテンユニット移動機構によって前記プラテンユニットを移動させる際の当該プラテンユニットの移動範囲は、前記プラテンローラが前記ベルトローラと同等の高さ位置、または前記プラテンローラが前記ベルトローラより前記画像記録部側の位置範囲内で移動することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記張力調整機構は、付勢部材を有し、前記プラテンユニットが前記搬送ベルトの内側を移動する際、前記付勢部材は、前記テンションローラを介して前記搬送ベルトを付勢し、前記搬送ベルトにかかる張力を一定の張力に維持した状態で移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、バネ機構、又はエアサスペンション機構から成る、ことを特徴とする請求項7記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記プラテンユニット移動機構は、前記プラテンユニットの四隅に一端を固定された四本のワイヤと、該四本のワイヤの他端を巻回して保持し該四本のワイヤを緩め又は巻き戻す巻取部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記プラテンユニット移動機構は、前記プラテンユニットの四隅にそれぞれ設けられたメネジ孔と、該4箇所のメネジ孔にそれぞれ螺合する四本のオネジ付きシャフトと、該四本のオネジ付きシャフトを順逆両方向に回転駆動する駆動機構と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−12909(P2009−12909A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175451(P2007−175451)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】