画像記録装置
【課題】画像記録装置において、複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止する。
【解決手段】画像記録装置1は、複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッド4と、副走査方向に記録ヘッドを移動させるリニアモータ5と、記録ヘッドによるレーザ光の出射および移動手段による記録ヘッドの移動を制御する装置制御部12とを備え、装置制御部は、ドラムの回転に応じて刷版の主走査方向に対する記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成とする。
【解決手段】画像記録装置1は、複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッド4と、副走査方向に記録ヘッドを移動させるリニアモータ5と、記録ヘッドによるレーザ光の出射および移動手段による記録ヘッドの移動を制御する装置制御部12とを備え、装置制御部は、ドラムの回転に応じて刷版の主走査方向に対する記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムに巻き付けたプレート等の記録媒体に対してレーザ光を照射して画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CTP(Computer to Plate)印刷に用いられる刷版(フレキソ版、レタープレス版等)に画像を確実に記録することを目的として、刷版の記録部位に照射するレーザ光の記録強度を向上させる技術が存在する。
【0003】
この種の従来技術として、例えば、レーザ光源を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向(ドラム周方向)および副走査方向(ドラム軸方向)に相対移動させる移動手段と、この移動手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、主走査方向への1回の走査につき記録幅の1/N倍(Nはレーザ光源の数とは異なる2以上の整数)ずつ副走査方向に記録ヘッドが移動するように制御し、これにより、記録媒体上の同一位置に対して記録ヘッドでN回繰り返し記録を行うようにした画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図12に示すように、熱反応型の刷版P(サーマルCTP版、フレキソCTP版等)に対して、所定の間隔で列設された複数のレーザ光源を有する記録ヘッド(図示せず)を用いて画像記録を行う場合、記録ヘッドの副走査方向(すなわち、図12中の刷版Pに照射されるレーザ光(チャンネル(ch)番号1〜n)の配列方向)の両端部Peでは、レーザ光が隣接する中央部Pcに比べて記録強度(すなわち、熱エネルギ)が低くなるため、刷版Pの表面に形成される凹凸が小さくなって印刷画像にバンディングが発生する場合がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術は、記録幅の1/N倍ずつ記録ヘッドを移動させて記録媒体上の同一位置に対してN回繰り返し記録を行うことにより、記録部位の全域においてレーザ光の記録強度を向上させる構成であるため、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下に起因するバンディングの発生を効果的に抑制することは難しいという問題があった。また、上記従来技術では、副走査方向に延びるボールねじを移動手段として用いるため、記録ヘッドの移動動作の制約により、その両端部におけるレーザ光の記録強度を適切に制御することは難しいという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制する画像記録装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像記録装置は、ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段とを備え、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る画像記録装置1の構成図
【図2】第1実施形態に係る記録ヘッド4およびレーザユニット18周辺の詳細構成を示す模式図
【図3】第1実施形態に係るファイバアレイユニット22構成を示す断面図
【図4】第1実施形態に係る記録ヘッド4のレーザ出力部における光ファイバ群の配置を示す模式図
【図5】図4に示す光ファイバ群の配置の変形例を示す模式図
【図6】第1実施形態に係る画像記録装置1の動作を示すタイミングチャート((A)第1の記録モード、(B)第2の記録モード)
【図7】第1実施形態に係る記録ヘッド4の移動動作の説明図
【図8】第1実施形態に係る刷版Pに対するレーザ光照射の様子を示す説明図
【図9】第1実施形態に係る画像記録装置1の動作を示すフロー図
【図10】第1実施形態に係る画像記録装置1の制御情報の説明図
【図11】第2実施形態に係る画像記録装置1における記録ヘッド4の移動動作の説明図
【図12】従来技術における刷版Pの露光の様子を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段とを備え、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる構成とする。
【0012】
これによると、記録ヘッドによる主走査方向の1回の走査が完了する毎に、副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成としたため、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、第2の発明では、前記移動手段は、リニアモータにより前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に移動させる構成とする。
【0014】
これによると、移動速度と位置決め精度に優れるリニアモータを移動手段として利用することにより、記録幅よりも小さい任意の移動量にて記録ヘッドを速やかに移動させることが可能となる。その結果、記録処理速度の低下を抑制しつつ、記録媒体において隣接する記録領域の重なり量を任意に設定することが可能となり、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を効果的に防止することができる。
【0015】
また、第3の発明では、前記ドラムは、その周方向に所定の長さで設定された非記録領域を有し、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転時において前記非記録領域が前記記録ヘッドの照射位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる構成とする。
【0016】
これによると、非記録領域が記録ヘッドの照射位置にある場合に、記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成としたため、記録ヘッドの移動により記録処理速度が低下することを防止できる。
【0017】
また、第4の発明では、前記記録制御手段は、前記移動量の累計が前記記録幅に満たない範囲にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、当該第1の移動動作の後に、前記移動量の累計を前記記録幅から差し引いた距離だけ前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2の移動動作とを繰り返し実行する構成とする。
【0018】
これによると、画像記録領域の変更を複数回繰り返して記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止しつつ、記録媒体の略全域における記録強度を高めることができる。
【0019】
また、第5の発明では、前記複数のレーザ出射部は、前記前記副走査方向に対して傾斜して列設された構成とする。
【0020】
これによると、列設されたレーザ出射部の傾斜角度を変更することにより、記録媒体に対する画像の記録密度を容易に変更することが可能となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、図1に示す刷版Pにおけるドラム2に対する巻き付け方向(ドラム2の回転方向)を主走査方向とし、これと直交するドラム2の軸方向(記録ヘッド4の移動方向)を副走査方向とする。
【0022】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る画像記録装置1の概略構成を示す構成図である。画像記録装置1は、CTP印刷に用いられる刷版(記録媒体)Pに対してレーザ光を照射して画像を記録するものである。刷版Pは、熱反応型のサーマルCTP版やフレキソCTP版等からなり、円筒形をなすドラム2の胴部に巻き付けられた状態で図示しないクランプ機構によって固定される。画像記録装置1では、ドラム2の回転軸2aをドラムモータ3により回転駆動しながら、マルチチャンネルの記録ヘッド4から出射される複数のレーザ光により刷版Pに画像を記録する。刷版Pにおける画像の記録位置は、記録ヘッド4をリニアモータ(移動手段)5によりドラム2の軸方向に平行に間欠的に移動させるこにより順次変更される。
【0023】
画像記録装置1には、ユーザ操作端末として用いられ、記録処理の制御に供されるPC(Personal Computer)11が通信可能に接続されている。PC11には、画像記録装置1を制御するためのアプリケーションプログラムが組み込まれており、刷版Pに記録される画像データを含む画情報と、画像記録装置1の記録動作を制御するための装置制御情報とが格納されている。画像記録装置1では、複数の半導体レーザLD1〜LDn(後述する図2参照)から個別に出力されるレーザ光により、ドラム2の回転にともない主走査方向の所定ライン分の画像が刷版Pに記録される構成であるため、画情報にはそのライン数に対応する画像データが含まれる。
【0024】
また、画像記録装置1は、PC11から画情報および装置制御情報を取得すると共に、これらの情報に基づきPC11と協働して画像記録装置1の各部を統括的に制御する装置制御部(記録制御手段)12と、記録ヘッド4から出射されるレーザの光源である複数の半導体レーザLD1〜LDnの出力を制御するLD(Laser Diode)制御部15と、半導体レーザLD1〜LDnおよびその駆動部を備えたレーザユニット18とを備えている。
【0025】
装置制御部12は、所定の制御プログラムに基づき演算・制御を行うCPU(Central Processing Unit)13と、PC11から取得した画情報を適宜格納するバッファメモリとして機能する画像メモリ14とから主として構成されている。また、装置制御部12は、PC11からの装置制御情報に基づき、ドラム2の回転速度を制御するためのドラム回転制御信号をドラムモータ3の駆動制御部(図示せず)に対して出力し、また、リニアモータ5の走行動作を制御するための走行制御信号をリニアモータ5の駆動制御部(図示せず)に対して出力する。さらに、装置制御部12は、PC11からの画情報に基づき、記録ヘッド4からのレーザ光の出射(より厳密には、各半導体レーザLD1〜LDnによるレーザ光の出射)を制御するための制御情報を含む画信号をLD制御部15に対して出力する。
【0026】
LD制御部15は、ドラムモータ3に付設されたエンコーダ(図示せず)からの回転信号を取得して基準クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路16を有しており、この基準クロック信号に同期させて画像メモリ14からの画信号をD・A変換回路17を介してLD制御信号としてファイバ出力形のレーザユニット18に対して出力する。
【0027】
レーザユニット18は、LD制御信号(電流)に基づく出力値および出力タイミングにて各半導体レーザLD1〜LDn(図2参照)からレーザ光を出射し、出射されたレーザ光は光ファイバF1〜Fnを介してそれぞれ記録ヘッド4に送られる。
【0028】
図2は記録ヘッド4およびレーザユニット18周辺の詳細構成を示す模式図であり、図3はファイバアレイユニット22の構成を示す断面図であり、図4は記録ヘッド4のレーザ出力部における光ファイバ群の配置を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、レーザユニット18は複数の半導体レーザLD1〜LDn(ここでは、チャンネル数n=40)を有しており、これら半導体レーザLD1〜LDnの出力部はそれぞれ光コネクタC1〜Cnを介して個別の光ファイバF1〜Fnに接続されている。
【0030】
光ファイバF1〜Fnの先端部は、記録ヘッド4に設けられたファイバアレイユニット22にてアレイ状に配置された状態で固定される。ファイバアレイユニット22では、図3に示すように、各光ファイバFが、基板23上に形成された複数のV溝24に嵌め込まれると共に、この基板23と蓋板25との間に挟持された状態で固定される。ここで、V溝24は60°の角度を有するV形を呈しており、光ファイバF1〜Fnの延在方向(図2中の左右方向)に沿って形成されている。基板23および蓋板25とは、例えば、500μm以上の厚みを有する石英ガラス製の板材から形成される。光ファイバFとしては、周知の構成のものを用いることができるが、例えば、中心部のコア27の径が60〜105μmであり、その周囲を覆うクラッド28の径が125μmである。
【0031】
このような構成により、光ファイバF1〜Fnの先端部はV溝24によって高精度に調心され、その出射端面をなすレーザ出射部は、図4に示すように、均一の間隔W1で一列に列設される。ここで、記録画像の解像度を2400dpiとする場合、隣接配置された光ファイバの間隔(中心間距離)W1は127μmであり、各光ファイバF1〜Fnの中心を結ぶ線によって定められる列設方向Xの副走査方向に対する傾斜角度θは75.52°である。また、各光ファイバF1〜Fnの主走査方向の間隔W2は122.97μmであり、副走査方向の間隔W3は31.74μmである。
【0032】
なお、光ファイバF1〜Fnの列設方向Xの傾斜角度θを変更することにより、主走査方向および副走査方向の間隔W2、W3をそれぞれ変更することが可能であり、これにより、記録画像の解像度(記録密度)を容易に変更することができる。例えば、図4に示した構成において解像度を2540dpiとする場合、θ=76.33(W2=123.39、W3=30)に設定することができる。また、光ファイバF1〜Fnの配置は図4に示したものに限らず、後述する図5に示すように複数列に配置してもよい。
【0033】
再び図2を参照すると、光ファイバF1〜Fnのレーザ出射部の前方(刷版P方向)には、コリメータレンズや結像レンズ等の複数の光学レンズからなる光学レンズ群31が設けられており、光ファイバF1〜Fnからの各レーザ光は互いに光路が重なることなく光学レンズ群31によってドラム2に巻き付けられた刷版Pの画像記録面に結像される。これら各レーザ光の刷版Pに対する照射部位は記録される画像の画素に対応する。ここでは、図4に示した光ファイバF1〜Fnの副走査方向の間隔W2(30μm)に対し、刷版Pの画像記録面に照射される各レーザ光の副走査方向の間隔は光学レンズ群31によって1/3の大きさ(10μm)に縮小(倍率変更)される。同様に、記録ヘッド4の記録幅(刷版Pに照射される一群のレーザ光の副走査方向の幅)Wrは、図4に示した一群の光ファイバF1〜Fnの副走査方向の幅W4(1230μm)の1/3の大きさ(410μm)となる。
【0034】
ファイバアレイユニット22および光学レンズ群31は、レーザ光の焦点調整を行うためのフォーカスステージ41上に支持される。また、フォーカスステージ41は、リニアモータ5(図1参照)の可動子に連結されて図示しないガイドレールに沿って副走査方向に移動可能移動ステージ42上に支持される。
【0035】
図5は図4に示す光ファイバ群の配置の変形例を示す模式図である。図5では、光ファイバF1〜Fn(ここでは、チャンネル数n=64)の先端部を互いに平行に32チャンネルずつ2列に配置した例を示している。隣接配置された光ファイバの副走査方向の間隔W3は31.74μmであり、第1の光ファイバ群Gaの最下部に位置するチャンネル番号32の光ファイバと第1の光ファイバ群Gbの最上部に位置するチャンネル番号33の光ファイバとの間隔W3も同様に設定される。刷版Pの画像記録面に照射される各レーザ光の副走査方向の間隔は光学レンズ群31によって10.58μmに縮小される。このような光ファイバの配置は、図3中に実線で示した構成に対し、図3中に2点鎖線で示すように光ファイバFが嵌め込まれたV溝24を有する基板23を更に下層に重ねることにより実現可能である。なお、光ファイバFおよび基板23を下層に複数段重ねた構成(3列以上)も可能である。
【0036】
次に、上記構成の画像記録装置1における画像記録動作について説明する。図1に示した画像記録装置1では、ドラム2を所定の速度で回転駆動するとともに、所定位置で停止した記録ヘッド4から刷版Pの画像記録面に向けてレーザ光が出射されることにより画像の記録処理が実施される。
【0037】
記録ヘッド4から出射される複数チャンネルのレーザ光は、上述のように所定の記録幅Wrを有しており、ドラム2が1回転する(すなわち、記録ヘッド4による主走査方向の1回の走査が行われる)ことにより、その記録幅Wrで刷版Pの主走査方向に画像が記録される。ドラム2の1回転分の記録が完了すると、記録ヘッド4は、リニアモータ5により次の記録位置まで副走査方向に移動した後、次にドラム2が1回転する間に同様の記録動作を行う。このように、画像記録装置1では、ドラム2の1回転分の画像記録と、記録ヘッド4の副走査方向への移動を繰り返し実行することにより、刷版P全域に画像を記録する。
【0038】
図6は画像記録装置1の動作を示すタイミングチャートである。図6(A)はドラム2が1回転する間に画像記録と記録ヘッド4の移動とを行う第1の記録モードを示しており、図6(B)はドラム2が1回転する間に画像記録を実施した後に、次のドラム2の回転で記録ヘッド4の移動を行う第2の記録モードを示している。
【0039】
図2に示したように、主走査方向(ドラム2の周方向)において、刷版Pは画像を記録可能な所定の記録領域を有する一方、ドラム2において刷版Pが巻き付けられていない部分(刷版Pのクランプ部を含む)は、画像が記録されない非記録領域となる。したがって、ドラム2の回転時において非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある(すなわち、レーザ光の結像位置が非記録領域を通過する)間の時間T1が記録ヘッド4の副走査方向への1回の移動時間T2よりも大きい場合には、第1の記録モードを実施可能である。一方、時間T1が移動時間T2よりも小さい場合(例えば、ドラム2の略全周に刷版Pが巻き付けられていて非記録領域が小さい場合)には、第2の記録モードが実施される。なお、時間T1はドラム2の回転速度や非記録領域の大きさ(周方向長さ)等の変更によって変化する。
【0040】
第1の記録モードでは、図6(A)に示すように、ドラム2の1回転目において、記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に画像記録を実施し、その後、非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある時間T1の間で、記録ヘッド4を副走査方向に移動させる(すなわち、時間T1≧時間T2)。ドラム2の2回転目以降においても同様の動作が実行される。このように、非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に、記録ヘッド4を副走査方向に移動させることにより、記録ヘッド4の移動によりる記録処理速度の低下を防止できる。
【0041】
一方、第2の記録モードでは、図6(B)に示すように、ドラム2の1回転目において、記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に画像記録が実施される。その後の非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある時間T1では、記録ヘッド4の移動ができないため(すなわち、時間T1<時間T2)、ドラム2の2回転目において、記録ヘッド4を副走査方向に移動させる。ドラム2の3回転目以降においても同様に画像記録と副走査方向への移動が交互に繰り返される。
【0042】
記録処理を実行する際には、時間T1と時間T2との比較により上記第1、第2の記録モードの一方が選択される。ただし、同一の刷版Pの記録処理において時間T1が変化する場合には、ドラム2が1回転する(主走査方向へ1回走査する)毎に第1、第2の記録モードを選択的に実行することもできる。
【0043】
図7は記録ヘッド4の移動動作の説明図であり、図8は刷版Pに対するレーザ光照射の様子を示す説明図である。図7では、説明の便宜上、ドラム2の異なる回転において記録処理の対象となる各画像記録領域を紙面の上下方向にずらして示してあるが、実際の各画像記録領域は刷版Pの主走査方向の略全域にわたるものとなる。
【0044】
上述のように、ドラム2の回転に応じて、刷版Pの主走査方向に対する記録ヘッド4の1回の画像記録(主走査方向への走査)が完了する毎に、記録ヘッド4は副走査方向に移動する。図7に示すように、記録ヘッド4の移動量Lmは、記録幅Wrよりも小さく設定されているため、ドラム2の1回転目における画像記録領域(レーザ照射領域)の副走査方向の後端部は、所定の重複幅Lo(Wr−Lm)でドラム2の2回転目における画像記録領域の副走査方向の前端部と重なる。同様に、ドラム2の2回転目以降においても、画像記録領域の副走査方向の後端部は、次のドラム2の回転における画像記録領域の副走査方向の前端部と所定の重複幅Loで重なる。
【0045】
したがって、ドラム2の1回転目と記録処理が完了する最後の回転とにおける画像記録領域を除けば、全ての画像記録領域の両端部は、隣接する画像記録領域の端部と所定の重複幅Loをもって重なることになる。重複幅Loは、リニアモータの移動量Lmを制御することにより任意の大きさに設定することが可能である。重複幅Loをレーザ光の1チャンネル分(ここでは、10μm)に設定した場合、例えば、図8に示すように、ドラム2のK−1回転目(K:2以上の整数)におけるnチャンネルのレーザ光の照射位置と、ドラム2のK回転目における1チャンネルのレーザ光の照射位置とが重なり、画像記録領域の両端部に相当する重複領域Peにおける記録強度の低下を防止することが可能となる。なお、ここでは、記録ヘッド4の移動量Lm(すなわち、重複幅Lo)を一定としたが、ドラム2の回転毎に移動量Lmを変更することも可能である。
【0046】
図9は図1に示した画像記録装置1の動作を示すフロー図であり、図10はPC11から送信される画像記録装置1の制御情報の説明図である。
【0047】
図9に示すように、PC11は、ユーザの操作にしたがって画情報およびユーザ設定パラメータをそれぞれ取得して保存する(ST101、ST102)。ユーザ設定パラメータには、画像記録装置1の記録動作を制御するためにユーザがPC11において設定する各種パラメータ(例えば、ドラム2の回転速度、レーザ光による露光エネルギ階調、露光エネルギ最大値、主走査長(ライン長)、副走査長(ライン数)、プリントバンド数(刷版Pに形成される画像記録領域の数)、記録ヘッド4の移動量等)が含まれる。ここで、レーザ光による露光エネルギ階調は、オンオフのみの2値のデータに限定されるものではなく、例えば、256階調とすると、1画素あたり8ビットのデータとして記録される。その後、PC11は、記録画像変換処理を実施して、記録ヘッド4から出射されるレーザ光のチャンネル数に対応する所定ライン分のデータを含む画情報をプリントバンド数に応じて複数生成する(ST103)。
【0048】
次に、PC11は画像記録装置1に対して制御情報を送信する。より詳細には、図10にも示すように、ユーザ設定パラメータ(ここでは、記録ヘッド4の移動量を除く)を含む装置制御情報を画像記録装置1に対して送信し(ST104)、続いて、プリントバンド数に応じて生成した画情報の各々に対して記録ヘッド4の移動量の情報を付加したプリントバンドデータ1〜N(Nはプリントバンド数)を生成し、これを画像記録装置1に対して順次送信する(ST105)。全てのプリントバンドデータの送信が完了すると(ST106:Yes)、PC11の動作は終了する。このように、画情報の各々に対して記録ヘッド4の移動量の情報を付加することにより、ドラム2の回転毎に記録ヘッド4移動量を容易に変更することができる。
【0049】
一方、画像記録装置1では、PC11から装置制御情報を受信すると(ST201:Yes)、装置制御部12が装置制御情報に基づき装置各部を制御するための記録パラメータをセットする(ST202)。これにより、ドラム2、記録ヘッド4およびリニアモータ5等はユーザ設定パラメータに基づく所定の動作を実行可能となる。
【0050】
その後、画像記録装置1では、PC11からプリントバンドデータの受信を開始する。装置制御部12は、プリントバンドデータを受信すると(ST203:Yes)、画像メモリ14に適宜格納する。その後、プリントバンドデータに基づきドラム2の1回転分の主走査方向の画像記録が実行される(ST204)。そして、ドラム2の1回転分の画像記録が完了すると、記録ヘッド4の副走査方向への移動が実行される(ST205)。
【0051】
このとき、装置制御部12では、プリントバンドデータ中のドラム2の回転速度の情報に基づきドラムモータ3に対するドラム回転制御信号が生成され、記録ヘッド4の移動量の情報に基づきリニアモータ5に対する走行制御信号が生成され、画情報に基づきLD制御部15に対する画信号が生成される。
【0052】
上記ステップST203〜ST205は、全てのプリントバンドデータに基づく記録処理が完了するまで繰り返し実施される。最終的に、全てのプリントバンドデータの記録処理が完了すると(ST206:Yes)、画像記録装置1の動作は終了する。
【0053】
上記画像記録装置1では、記録ヘッド4による主走査方向の1回の走査が完了する毎に、副走査方向の記録幅Wrよりも小さい移動量Lmにて記録ヘッド4を副走査方向に移動させる構成としたため、画像の記録動作の複雑な制御(例えば、半導体レーザの出力をチャネル毎に制御する等)を必要とすることなく、記録ヘッド4(画像記録領域)の両端部における記録強度の低下を防止することができ、その結果、印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができる。
【0054】
また、画像記録装置1では、記録ヘッド4を副走査方向に移動させるための手段として移動速度と位置決め精度に優れるリニアモータ5を用いたため、記録幅Wrよりも小さい任意の移動量Lmにて記録ヘッド4を速やかに移動させることが可能となる。その結果、記録処理速度の低下を抑制しつつ、刷版Pにおいて隣接する記録領域の重なり量を任意に設定することが可能となり、記録ヘッド4の両端部における記録強度の低下を効果的に防止することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図11は第2実施形態に係る画像記録装置1における記録ヘッド4の移動動作の説明図であり、上述の第1実施形態における図7に対応するものである。第2実施形態に係る画像記録装置1については、以下で特に言及する動作に関する事項を除いて上述の第1実施形態の場合と同様であり、その他の詳細な説明は省略する。
【0056】
第2実施形態に係る画像記録装置1では、ドラム2の1回転分の画像記録と、記録ヘッド4の副走査方向への移動を繰り返し実行する点については第1実施形態と同様であるが、移動動作が第1実施形態の場合とは異なる。第2実施形態では、記録ヘッド4移動量の累計がその記録幅に満たない範囲にて記録ヘッド4を副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、この第1の移動動作の後に、移動量の累計を記録幅から差し引いた距離だけ記録ヘッド4を副走査方向に移動させる第2の移動動作とを交互に繰り返し実行する。
【0057】
例えば、図11に示すように、画像記録装置1の第1の移動動作では、ドラム2の1回転分の記録処理が終了した後の記録ヘッド4の副走査方向の移動量をLmとすると、ドラム2の1回転目の画像記録領域に対し、ドラム2の2回転目の画像記録領域は、副走査方向にLmだけずれた位置となる。続いて、ドラム2の2回転目の画像記録領域に対する3回転目の画像記録領域の位置と、ドラム2の3回転目の画像記録領域に対する4回転目の画像記録領域の位置とは、同様にLmだけずれた位置となる。
【0058】
ここでは、第1の移動動作において記録ヘッド4を副走査方向に間欠的に3回移動させる場合を示したが、記録ヘッド4の移動量Lmおよび移動回数は任意に設定することができる。ただし、第1の移動動作における記録ヘッド4の移動量の累計(ここでは、3×Lm)が記録幅Wrよりも小さい値となるように、記録ヘッド4の移動量Lmおよび移動回数を設定する必要がある。なお、第1の移動動作における移動量Lmは必ずしも全て同一である必要はない。
【0059】
続いて実施される画像記録装置1の第2の移動動作では、ドラム2の4回転目の画像記録が終了した後に、移動量の累計を記録幅Wrから差し引いた距離(Wr−3×Lm)だけ記録ヘッド4を副走査方向に移動させる。これにより、ドラム2の5回転目における画像記録領域の左端位置は、ドラム2の1回転目における画像記録領域の右端位置に一致する。その後、ドラム2の5〜7回転目の画像記録の後は、上述の2〜4回転目と同様に再び第1の移動動作が実行され、8回転目の画像記録の後に再び第2の移動動作が実行される。
【0060】
この第2実施形態では、記録ヘッド4を副走査方向に位置をずらしながら主走査方向に複数回走査することにより、記録ヘッド4の両端部(画像記録領域の両端部)における記録強度の低下を防止しつつ、刷版Pの略全域における記録強度を高めることが可能となる。
【0061】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、記録ヘッドにおけるレーザ出射部(光ファイバの出力端)のチャンネル数や配置は種々の変更が可能である。また、上記実施形態では、ドラムが1回転する毎に記録ヘッドを必ず副走査方向に移動させる構成としたが、記録ヘッドが同一位置でドラムの複数回転分の記録処理を行うことを必ずしも排除するものではない。また、複数のレーザ出射部は、副走査方向と平行(傾斜角度θ=0)に列設されてもよい。なお、上記実施形態に示した本発明に係る画像記録装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る画像記録装置は、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止することにより印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することを可能とし、ドラムに巻き付けたプレート等の記録媒体に対してレーザ光を照射して画像記録を行う画像記録装置として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 画像記録装置
2 ドラム
3 ドラムモータ
4 記録ヘッド
5 リニアモータ(移動手段)
11 PC
12 装置制御部(記録制御手段)
23 基板
24 V溝
25 蓋板
31 光学レンズ群
F1〜Fn 光ファイバ
LD1〜LDn 半導体レーザ(レーザ光源)
P 刷版(記録媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムに巻き付けたプレート等の記録媒体に対してレーザ光を照射して画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CTP(Computer to Plate)印刷に用いられる刷版(フレキソ版、レタープレス版等)に画像を確実に記録することを目的として、刷版の記録部位に照射するレーザ光の記録強度を向上させる技術が存在する。
【0003】
この種の従来技術として、例えば、レーザ光源を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向(ドラム周方向)および副走査方向(ドラム軸方向)に相対移動させる移動手段と、この移動手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、主走査方向への1回の走査につき記録幅の1/N倍(Nはレーザ光源の数とは異なる2以上の整数)ずつ副走査方向に記録ヘッドが移動するように制御し、これにより、記録媒体上の同一位置に対して記録ヘッドでN回繰り返し記録を行うようにした画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図12に示すように、熱反応型の刷版P(サーマルCTP版、フレキソCTP版等)に対して、所定の間隔で列設された複数のレーザ光源を有する記録ヘッド(図示せず)を用いて画像記録を行う場合、記録ヘッドの副走査方向(すなわち、図12中の刷版Pに照射されるレーザ光(チャンネル(ch)番号1〜n)の配列方向)の両端部Peでは、レーザ光が隣接する中央部Pcに比べて記録強度(すなわち、熱エネルギ)が低くなるため、刷版Pの表面に形成される凹凸が小さくなって印刷画像にバンディングが発生する場合がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術は、記録幅の1/N倍ずつ記録ヘッドを移動させて記録媒体上の同一位置に対してN回繰り返し記録を行うことにより、記録部位の全域においてレーザ光の記録強度を向上させる構成であるため、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下に起因するバンディングの発生を効果的に抑制することは難しいという問題があった。また、上記従来技術では、副走査方向に延びるボールねじを移動手段として用いるため、記録ヘッドの移動動作の制約により、その両端部におけるレーザ光の記録強度を適切に制御することは難しいという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制する画像記録装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像記録装置は、ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段とを備え、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る画像記録装置1の構成図
【図2】第1実施形態に係る記録ヘッド4およびレーザユニット18周辺の詳細構成を示す模式図
【図3】第1実施形態に係るファイバアレイユニット22構成を示す断面図
【図4】第1実施形態に係る記録ヘッド4のレーザ出力部における光ファイバ群の配置を示す模式図
【図5】図4に示す光ファイバ群の配置の変形例を示す模式図
【図6】第1実施形態に係る画像記録装置1の動作を示すタイミングチャート((A)第1の記録モード、(B)第2の記録モード)
【図7】第1実施形態に係る記録ヘッド4の移動動作の説明図
【図8】第1実施形態に係る刷版Pに対するレーザ光照射の様子を示す説明図
【図9】第1実施形態に係る画像記録装置1の動作を示すフロー図
【図10】第1実施形態に係る画像記録装置1の制御情報の説明図
【図11】第2実施形態に係る画像記録装置1における記録ヘッド4の移動動作の説明図
【図12】従来技術における刷版Pの露光の様子を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段とを備え、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる構成とする。
【0012】
これによると、記録ヘッドによる主走査方向の1回の走査が完了する毎に、副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成としたため、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止して印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、第2の発明では、前記移動手段は、リニアモータにより前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に移動させる構成とする。
【0014】
これによると、移動速度と位置決め精度に優れるリニアモータを移動手段として利用することにより、記録幅よりも小さい任意の移動量にて記録ヘッドを速やかに移動させることが可能となる。その結果、記録処理速度の低下を抑制しつつ、記録媒体において隣接する記録領域の重なり量を任意に設定することが可能となり、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を効果的に防止することができる。
【0015】
また、第3の発明では、前記ドラムは、その周方向に所定の長さで設定された非記録領域を有し、前記記録制御手段は、前記ドラムの回転時において前記非記録領域が前記記録ヘッドの照射位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる構成とする。
【0016】
これによると、非記録領域が記録ヘッドの照射位置にある場合に、記録ヘッドを副走査方向に移動させる構成としたため、記録ヘッドの移動により記録処理速度が低下することを防止できる。
【0017】
また、第4の発明では、前記記録制御手段は、前記移動量の累計が前記記録幅に満たない範囲にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、当該第1の移動動作の後に、前記移動量の累計を前記記録幅から差し引いた距離だけ前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2の移動動作とを繰り返し実行する構成とする。
【0018】
これによると、画像記録領域の変更を複数回繰り返して記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止しつつ、記録媒体の略全域における記録強度を高めることができる。
【0019】
また、第5の発明では、前記複数のレーザ出射部は、前記前記副走査方向に対して傾斜して列設された構成とする。
【0020】
これによると、列設されたレーザ出射部の傾斜角度を変更することにより、記録媒体に対する画像の記録密度を容易に変更することが可能となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、図1に示す刷版Pにおけるドラム2に対する巻き付け方向(ドラム2の回転方向)を主走査方向とし、これと直交するドラム2の軸方向(記録ヘッド4の移動方向)を副走査方向とする。
【0022】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る画像記録装置1の概略構成を示す構成図である。画像記録装置1は、CTP印刷に用いられる刷版(記録媒体)Pに対してレーザ光を照射して画像を記録するものである。刷版Pは、熱反応型のサーマルCTP版やフレキソCTP版等からなり、円筒形をなすドラム2の胴部に巻き付けられた状態で図示しないクランプ機構によって固定される。画像記録装置1では、ドラム2の回転軸2aをドラムモータ3により回転駆動しながら、マルチチャンネルの記録ヘッド4から出射される複数のレーザ光により刷版Pに画像を記録する。刷版Pにおける画像の記録位置は、記録ヘッド4をリニアモータ(移動手段)5によりドラム2の軸方向に平行に間欠的に移動させるこにより順次変更される。
【0023】
画像記録装置1には、ユーザ操作端末として用いられ、記録処理の制御に供されるPC(Personal Computer)11が通信可能に接続されている。PC11には、画像記録装置1を制御するためのアプリケーションプログラムが組み込まれており、刷版Pに記録される画像データを含む画情報と、画像記録装置1の記録動作を制御するための装置制御情報とが格納されている。画像記録装置1では、複数の半導体レーザLD1〜LDn(後述する図2参照)から個別に出力されるレーザ光により、ドラム2の回転にともない主走査方向の所定ライン分の画像が刷版Pに記録される構成であるため、画情報にはそのライン数に対応する画像データが含まれる。
【0024】
また、画像記録装置1は、PC11から画情報および装置制御情報を取得すると共に、これらの情報に基づきPC11と協働して画像記録装置1の各部を統括的に制御する装置制御部(記録制御手段)12と、記録ヘッド4から出射されるレーザの光源である複数の半導体レーザLD1〜LDnの出力を制御するLD(Laser Diode)制御部15と、半導体レーザLD1〜LDnおよびその駆動部を備えたレーザユニット18とを備えている。
【0025】
装置制御部12は、所定の制御プログラムに基づき演算・制御を行うCPU(Central Processing Unit)13と、PC11から取得した画情報を適宜格納するバッファメモリとして機能する画像メモリ14とから主として構成されている。また、装置制御部12は、PC11からの装置制御情報に基づき、ドラム2の回転速度を制御するためのドラム回転制御信号をドラムモータ3の駆動制御部(図示せず)に対して出力し、また、リニアモータ5の走行動作を制御するための走行制御信号をリニアモータ5の駆動制御部(図示せず)に対して出力する。さらに、装置制御部12は、PC11からの画情報に基づき、記録ヘッド4からのレーザ光の出射(より厳密には、各半導体レーザLD1〜LDnによるレーザ光の出射)を制御するための制御情報を含む画信号をLD制御部15に対して出力する。
【0026】
LD制御部15は、ドラムモータ3に付設されたエンコーダ(図示せず)からの回転信号を取得して基準クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路16を有しており、この基準クロック信号に同期させて画像メモリ14からの画信号をD・A変換回路17を介してLD制御信号としてファイバ出力形のレーザユニット18に対して出力する。
【0027】
レーザユニット18は、LD制御信号(電流)に基づく出力値および出力タイミングにて各半導体レーザLD1〜LDn(図2参照)からレーザ光を出射し、出射されたレーザ光は光ファイバF1〜Fnを介してそれぞれ記録ヘッド4に送られる。
【0028】
図2は記録ヘッド4およびレーザユニット18周辺の詳細構成を示す模式図であり、図3はファイバアレイユニット22の構成を示す断面図であり、図4は記録ヘッド4のレーザ出力部における光ファイバ群の配置を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、レーザユニット18は複数の半導体レーザLD1〜LDn(ここでは、チャンネル数n=40)を有しており、これら半導体レーザLD1〜LDnの出力部はそれぞれ光コネクタC1〜Cnを介して個別の光ファイバF1〜Fnに接続されている。
【0030】
光ファイバF1〜Fnの先端部は、記録ヘッド4に設けられたファイバアレイユニット22にてアレイ状に配置された状態で固定される。ファイバアレイユニット22では、図3に示すように、各光ファイバFが、基板23上に形成された複数のV溝24に嵌め込まれると共に、この基板23と蓋板25との間に挟持された状態で固定される。ここで、V溝24は60°の角度を有するV形を呈しており、光ファイバF1〜Fnの延在方向(図2中の左右方向)に沿って形成されている。基板23および蓋板25とは、例えば、500μm以上の厚みを有する石英ガラス製の板材から形成される。光ファイバFとしては、周知の構成のものを用いることができるが、例えば、中心部のコア27の径が60〜105μmであり、その周囲を覆うクラッド28の径が125μmである。
【0031】
このような構成により、光ファイバF1〜Fnの先端部はV溝24によって高精度に調心され、その出射端面をなすレーザ出射部は、図4に示すように、均一の間隔W1で一列に列設される。ここで、記録画像の解像度を2400dpiとする場合、隣接配置された光ファイバの間隔(中心間距離)W1は127μmであり、各光ファイバF1〜Fnの中心を結ぶ線によって定められる列設方向Xの副走査方向に対する傾斜角度θは75.52°である。また、各光ファイバF1〜Fnの主走査方向の間隔W2は122.97μmであり、副走査方向の間隔W3は31.74μmである。
【0032】
なお、光ファイバF1〜Fnの列設方向Xの傾斜角度θを変更することにより、主走査方向および副走査方向の間隔W2、W3をそれぞれ変更することが可能であり、これにより、記録画像の解像度(記録密度)を容易に変更することができる。例えば、図4に示した構成において解像度を2540dpiとする場合、θ=76.33(W2=123.39、W3=30)に設定することができる。また、光ファイバF1〜Fnの配置は図4に示したものに限らず、後述する図5に示すように複数列に配置してもよい。
【0033】
再び図2を参照すると、光ファイバF1〜Fnのレーザ出射部の前方(刷版P方向)には、コリメータレンズや結像レンズ等の複数の光学レンズからなる光学レンズ群31が設けられており、光ファイバF1〜Fnからの各レーザ光は互いに光路が重なることなく光学レンズ群31によってドラム2に巻き付けられた刷版Pの画像記録面に結像される。これら各レーザ光の刷版Pに対する照射部位は記録される画像の画素に対応する。ここでは、図4に示した光ファイバF1〜Fnの副走査方向の間隔W2(30μm)に対し、刷版Pの画像記録面に照射される各レーザ光の副走査方向の間隔は光学レンズ群31によって1/3の大きさ(10μm)に縮小(倍率変更)される。同様に、記録ヘッド4の記録幅(刷版Pに照射される一群のレーザ光の副走査方向の幅)Wrは、図4に示した一群の光ファイバF1〜Fnの副走査方向の幅W4(1230μm)の1/3の大きさ(410μm)となる。
【0034】
ファイバアレイユニット22および光学レンズ群31は、レーザ光の焦点調整を行うためのフォーカスステージ41上に支持される。また、フォーカスステージ41は、リニアモータ5(図1参照)の可動子に連結されて図示しないガイドレールに沿って副走査方向に移動可能移動ステージ42上に支持される。
【0035】
図5は図4に示す光ファイバ群の配置の変形例を示す模式図である。図5では、光ファイバF1〜Fn(ここでは、チャンネル数n=64)の先端部を互いに平行に32チャンネルずつ2列に配置した例を示している。隣接配置された光ファイバの副走査方向の間隔W3は31.74μmであり、第1の光ファイバ群Gaの最下部に位置するチャンネル番号32の光ファイバと第1の光ファイバ群Gbの最上部に位置するチャンネル番号33の光ファイバとの間隔W3も同様に設定される。刷版Pの画像記録面に照射される各レーザ光の副走査方向の間隔は光学レンズ群31によって10.58μmに縮小される。このような光ファイバの配置は、図3中に実線で示した構成に対し、図3中に2点鎖線で示すように光ファイバFが嵌め込まれたV溝24を有する基板23を更に下層に重ねることにより実現可能である。なお、光ファイバFおよび基板23を下層に複数段重ねた構成(3列以上)も可能である。
【0036】
次に、上記構成の画像記録装置1における画像記録動作について説明する。図1に示した画像記録装置1では、ドラム2を所定の速度で回転駆動するとともに、所定位置で停止した記録ヘッド4から刷版Pの画像記録面に向けてレーザ光が出射されることにより画像の記録処理が実施される。
【0037】
記録ヘッド4から出射される複数チャンネルのレーザ光は、上述のように所定の記録幅Wrを有しており、ドラム2が1回転する(すなわち、記録ヘッド4による主走査方向の1回の走査が行われる)ことにより、その記録幅Wrで刷版Pの主走査方向に画像が記録される。ドラム2の1回転分の記録が完了すると、記録ヘッド4は、リニアモータ5により次の記録位置まで副走査方向に移動した後、次にドラム2が1回転する間に同様の記録動作を行う。このように、画像記録装置1では、ドラム2の1回転分の画像記録と、記録ヘッド4の副走査方向への移動を繰り返し実行することにより、刷版P全域に画像を記録する。
【0038】
図6は画像記録装置1の動作を示すタイミングチャートである。図6(A)はドラム2が1回転する間に画像記録と記録ヘッド4の移動とを行う第1の記録モードを示しており、図6(B)はドラム2が1回転する間に画像記録を実施した後に、次のドラム2の回転で記録ヘッド4の移動を行う第2の記録モードを示している。
【0039】
図2に示したように、主走査方向(ドラム2の周方向)において、刷版Pは画像を記録可能な所定の記録領域を有する一方、ドラム2において刷版Pが巻き付けられていない部分(刷版Pのクランプ部を含む)は、画像が記録されない非記録領域となる。したがって、ドラム2の回転時において非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある(すなわち、レーザ光の結像位置が非記録領域を通過する)間の時間T1が記録ヘッド4の副走査方向への1回の移動時間T2よりも大きい場合には、第1の記録モードを実施可能である。一方、時間T1が移動時間T2よりも小さい場合(例えば、ドラム2の略全周に刷版Pが巻き付けられていて非記録領域が小さい場合)には、第2の記録モードが実施される。なお、時間T1はドラム2の回転速度や非記録領域の大きさ(周方向長さ)等の変更によって変化する。
【0040】
第1の記録モードでは、図6(A)に示すように、ドラム2の1回転目において、記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に画像記録を実施し、その後、非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある時間T1の間で、記録ヘッド4を副走査方向に移動させる(すなわち、時間T1≧時間T2)。ドラム2の2回転目以降においても同様の動作が実行される。このように、非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に、記録ヘッド4を副走査方向に移動させることにより、記録ヘッド4の移動によりる記録処理速度の低下を防止できる。
【0041】
一方、第2の記録モードでは、図6(B)に示すように、ドラム2の1回転目において、記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある場合に画像記録が実施される。その後の非記録領域が記録ヘッド4の照射位置にある時間T1では、記録ヘッド4の移動ができないため(すなわち、時間T1<時間T2)、ドラム2の2回転目において、記録ヘッド4を副走査方向に移動させる。ドラム2の3回転目以降においても同様に画像記録と副走査方向への移動が交互に繰り返される。
【0042】
記録処理を実行する際には、時間T1と時間T2との比較により上記第1、第2の記録モードの一方が選択される。ただし、同一の刷版Pの記録処理において時間T1が変化する場合には、ドラム2が1回転する(主走査方向へ1回走査する)毎に第1、第2の記録モードを選択的に実行することもできる。
【0043】
図7は記録ヘッド4の移動動作の説明図であり、図8は刷版Pに対するレーザ光照射の様子を示す説明図である。図7では、説明の便宜上、ドラム2の異なる回転において記録処理の対象となる各画像記録領域を紙面の上下方向にずらして示してあるが、実際の各画像記録領域は刷版Pの主走査方向の略全域にわたるものとなる。
【0044】
上述のように、ドラム2の回転に応じて、刷版Pの主走査方向に対する記録ヘッド4の1回の画像記録(主走査方向への走査)が完了する毎に、記録ヘッド4は副走査方向に移動する。図7に示すように、記録ヘッド4の移動量Lmは、記録幅Wrよりも小さく設定されているため、ドラム2の1回転目における画像記録領域(レーザ照射領域)の副走査方向の後端部は、所定の重複幅Lo(Wr−Lm)でドラム2の2回転目における画像記録領域の副走査方向の前端部と重なる。同様に、ドラム2の2回転目以降においても、画像記録領域の副走査方向の後端部は、次のドラム2の回転における画像記録領域の副走査方向の前端部と所定の重複幅Loで重なる。
【0045】
したがって、ドラム2の1回転目と記録処理が完了する最後の回転とにおける画像記録領域を除けば、全ての画像記録領域の両端部は、隣接する画像記録領域の端部と所定の重複幅Loをもって重なることになる。重複幅Loは、リニアモータの移動量Lmを制御することにより任意の大きさに設定することが可能である。重複幅Loをレーザ光の1チャンネル分(ここでは、10μm)に設定した場合、例えば、図8に示すように、ドラム2のK−1回転目(K:2以上の整数)におけるnチャンネルのレーザ光の照射位置と、ドラム2のK回転目における1チャンネルのレーザ光の照射位置とが重なり、画像記録領域の両端部に相当する重複領域Peにおける記録強度の低下を防止することが可能となる。なお、ここでは、記録ヘッド4の移動量Lm(すなわち、重複幅Lo)を一定としたが、ドラム2の回転毎に移動量Lmを変更することも可能である。
【0046】
図9は図1に示した画像記録装置1の動作を示すフロー図であり、図10はPC11から送信される画像記録装置1の制御情報の説明図である。
【0047】
図9に示すように、PC11は、ユーザの操作にしたがって画情報およびユーザ設定パラメータをそれぞれ取得して保存する(ST101、ST102)。ユーザ設定パラメータには、画像記録装置1の記録動作を制御するためにユーザがPC11において設定する各種パラメータ(例えば、ドラム2の回転速度、レーザ光による露光エネルギ階調、露光エネルギ最大値、主走査長(ライン長)、副走査長(ライン数)、プリントバンド数(刷版Pに形成される画像記録領域の数)、記録ヘッド4の移動量等)が含まれる。ここで、レーザ光による露光エネルギ階調は、オンオフのみの2値のデータに限定されるものではなく、例えば、256階調とすると、1画素あたり8ビットのデータとして記録される。その後、PC11は、記録画像変換処理を実施して、記録ヘッド4から出射されるレーザ光のチャンネル数に対応する所定ライン分のデータを含む画情報をプリントバンド数に応じて複数生成する(ST103)。
【0048】
次に、PC11は画像記録装置1に対して制御情報を送信する。より詳細には、図10にも示すように、ユーザ設定パラメータ(ここでは、記録ヘッド4の移動量を除く)を含む装置制御情報を画像記録装置1に対して送信し(ST104)、続いて、プリントバンド数に応じて生成した画情報の各々に対して記録ヘッド4の移動量の情報を付加したプリントバンドデータ1〜N(Nはプリントバンド数)を生成し、これを画像記録装置1に対して順次送信する(ST105)。全てのプリントバンドデータの送信が完了すると(ST106:Yes)、PC11の動作は終了する。このように、画情報の各々に対して記録ヘッド4の移動量の情報を付加することにより、ドラム2の回転毎に記録ヘッド4移動量を容易に変更することができる。
【0049】
一方、画像記録装置1では、PC11から装置制御情報を受信すると(ST201:Yes)、装置制御部12が装置制御情報に基づき装置各部を制御するための記録パラメータをセットする(ST202)。これにより、ドラム2、記録ヘッド4およびリニアモータ5等はユーザ設定パラメータに基づく所定の動作を実行可能となる。
【0050】
その後、画像記録装置1では、PC11からプリントバンドデータの受信を開始する。装置制御部12は、プリントバンドデータを受信すると(ST203:Yes)、画像メモリ14に適宜格納する。その後、プリントバンドデータに基づきドラム2の1回転分の主走査方向の画像記録が実行される(ST204)。そして、ドラム2の1回転分の画像記録が完了すると、記録ヘッド4の副走査方向への移動が実行される(ST205)。
【0051】
このとき、装置制御部12では、プリントバンドデータ中のドラム2の回転速度の情報に基づきドラムモータ3に対するドラム回転制御信号が生成され、記録ヘッド4の移動量の情報に基づきリニアモータ5に対する走行制御信号が生成され、画情報に基づきLD制御部15に対する画信号が生成される。
【0052】
上記ステップST203〜ST205は、全てのプリントバンドデータに基づく記録処理が完了するまで繰り返し実施される。最終的に、全てのプリントバンドデータの記録処理が完了すると(ST206:Yes)、画像記録装置1の動作は終了する。
【0053】
上記画像記録装置1では、記録ヘッド4による主走査方向の1回の走査が完了する毎に、副走査方向の記録幅Wrよりも小さい移動量Lmにて記録ヘッド4を副走査方向に移動させる構成としたため、画像の記録動作の複雑な制御(例えば、半導体レーザの出力をチャネル毎に制御する等)を必要とすることなく、記録ヘッド4(画像記録領域)の両端部における記録強度の低下を防止することができ、その結果、印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することができる。
【0054】
また、画像記録装置1では、記録ヘッド4を副走査方向に移動させるための手段として移動速度と位置決め精度に優れるリニアモータ5を用いたため、記録幅Wrよりも小さい任意の移動量Lmにて記録ヘッド4を速やかに移動させることが可能となる。その結果、記録処理速度の低下を抑制しつつ、刷版Pにおいて隣接する記録領域の重なり量を任意に設定することが可能となり、記録ヘッド4の両端部における記録強度の低下を効果的に防止することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図11は第2実施形態に係る画像記録装置1における記録ヘッド4の移動動作の説明図であり、上述の第1実施形態における図7に対応するものである。第2実施形態に係る画像記録装置1については、以下で特に言及する動作に関する事項を除いて上述の第1実施形態の場合と同様であり、その他の詳細な説明は省略する。
【0056】
第2実施形態に係る画像記録装置1では、ドラム2の1回転分の画像記録と、記録ヘッド4の副走査方向への移動を繰り返し実行する点については第1実施形態と同様であるが、移動動作が第1実施形態の場合とは異なる。第2実施形態では、記録ヘッド4移動量の累計がその記録幅に満たない範囲にて記録ヘッド4を副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、この第1の移動動作の後に、移動量の累計を記録幅から差し引いた距離だけ記録ヘッド4を副走査方向に移動させる第2の移動動作とを交互に繰り返し実行する。
【0057】
例えば、図11に示すように、画像記録装置1の第1の移動動作では、ドラム2の1回転分の記録処理が終了した後の記録ヘッド4の副走査方向の移動量をLmとすると、ドラム2の1回転目の画像記録領域に対し、ドラム2の2回転目の画像記録領域は、副走査方向にLmだけずれた位置となる。続いて、ドラム2の2回転目の画像記録領域に対する3回転目の画像記録領域の位置と、ドラム2の3回転目の画像記録領域に対する4回転目の画像記録領域の位置とは、同様にLmだけずれた位置となる。
【0058】
ここでは、第1の移動動作において記録ヘッド4を副走査方向に間欠的に3回移動させる場合を示したが、記録ヘッド4の移動量Lmおよび移動回数は任意に設定することができる。ただし、第1の移動動作における記録ヘッド4の移動量の累計(ここでは、3×Lm)が記録幅Wrよりも小さい値となるように、記録ヘッド4の移動量Lmおよび移動回数を設定する必要がある。なお、第1の移動動作における移動量Lmは必ずしも全て同一である必要はない。
【0059】
続いて実施される画像記録装置1の第2の移動動作では、ドラム2の4回転目の画像記録が終了した後に、移動量の累計を記録幅Wrから差し引いた距離(Wr−3×Lm)だけ記録ヘッド4を副走査方向に移動させる。これにより、ドラム2の5回転目における画像記録領域の左端位置は、ドラム2の1回転目における画像記録領域の右端位置に一致する。その後、ドラム2の5〜7回転目の画像記録の後は、上述の2〜4回転目と同様に再び第1の移動動作が実行され、8回転目の画像記録の後に再び第2の移動動作が実行される。
【0060】
この第2実施形態では、記録ヘッド4を副走査方向に位置をずらしながら主走査方向に複数回走査することにより、記録ヘッド4の両端部(画像記録領域の両端部)における記録強度の低下を防止しつつ、刷版Pの略全域における記録強度を高めることが可能となる。
【0061】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、記録ヘッドにおけるレーザ出射部(光ファイバの出力端)のチャンネル数や配置は種々の変更が可能である。また、上記実施形態では、ドラムが1回転する毎に記録ヘッドを必ず副走査方向に移動させる構成としたが、記録ヘッドが同一位置でドラムの複数回転分の記録処理を行うことを必ずしも排除するものではない。また、複数のレーザ出射部は、副走査方向と平行(傾斜角度θ=0)に列設されてもよい。なお、上記実施形態に示した本発明に係る画像記録装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る画像記録装置は、画像の記録動作の複雑な制御を必要とすることなく、記録ヘッドの両端部における記録強度の低下を防止することにより印刷画像におけるバンディングの発生を効果的に抑制することを可能とし、ドラムに巻き付けたプレート等の記録媒体に対してレーザ光を照射して画像記録を行う画像記録装置として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 画像記録装置
2 ドラム
3 ドラムモータ
4 記録ヘッド
5 リニアモータ(移動手段)
11 PC
12 装置制御部(記録制御手段)
23 基板
24 V溝
25 蓋板
31 光学レンズ群
F1〜Fn 光ファイバ
LD1〜LDn 半導体レーザ(レーザ光源)
P 刷版(記録媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、
前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、
前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、
前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段と
を備え、
前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記移動手段は、リニアモータにより前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ドラムは、その周方向に所定の長さで設定された非記録領域を有し、
前記記録制御手段は、前記ドラムの回転時において前記非記録領域が前記記録ヘッドの照射位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録制御手段は、前記移動量の累計が前記記録幅に満たない範囲にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、当該第1の移動動作の後に、前記移動量の累計を前記記録幅から差し引いた距離だけ前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2の移動動作とを繰り返し実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記複数のレーザ出射部は、前記副走査方向に対して傾斜して列設されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項1】
ドラムに巻き付けた熱反応型の記録媒体に対してレーザ光を照射することにより画像記録を行う画像記録装置であって、
前記レーザ光を出射する複数のレーザ出射部が列設された記録ヘッドと、
前記記録媒体における前記ドラムに対する巻き付け方向である主走査方向と交差する副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる移動手段と、
前記記録ヘッドによる前記レーザ光の出射および前記記録ヘッドの移動を制御する記録制御手段と
を備え、
前記記録制御手段は、前記ドラムの回転に応じて前記記録媒体の主走査方向に対する前記記録ヘッドの1回の走査が完了する毎に、前記複数のレーザ出射部から出射されるレーザ光による前記副走査方向の記録幅よりも小さい移動量にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記移動手段は、リニアモータにより前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ドラムは、その周方向に所定の長さで設定された非記録領域を有し、
前記記録制御手段は、前記ドラムの回転時において前記非記録領域が前記記録ヘッドの照射位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録制御手段は、前記移動量の累計が前記記録幅に満たない範囲にて前記記録ヘッドを前記副走査方向に間欠的に複数回移動させる第1の移動動作と、当該第1の移動動作の後に、前記移動量の累計を前記記録幅から差し引いた距離だけ前記記録ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2の移動動作とを繰り返し実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記複数のレーザ出射部は、前記副走査方向に対して傾斜して列設されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−242446(P2012−242446A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109634(P2011−109634)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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