説明

画像評価方法および画像評価装置並びにプログラム

【課題】空間周波数と関係した画質を評価する画像評価装置において、背景ノイズの影響を受けずに視感と対応の取れた評価値を算出できるようにする。
【解決手段】特徴量取得部22は、前処理部210で処理された入力画像データに基づいて空間周波数と関わりを持つ特徴量Pの一例であるすじ特徴量Peを算出する。すじ空間周波数帯域分割部286は、前処理部210で処理された入力画像データを複数の空間周波数帯域の画像データに分割する。すじ補正量算出部288は、空間周波数帯域分割部286で周波数展開された複数の空間周波数帯域の画像データに基づいてすじ補正量Beを算出する。すじ評価値算出部290は、すじ特徴量算出部270により算出されたすじ特徴量Peおよびすじ補正量取得部280のすじ補正量算出部288により算出されたすじ補正量Beに基づいて、注目している空間周波数帯域のすじ欠陥の強さに関する評価値Qeを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラープリンタなどの画像出力装置(画像形成装置)より出力された画像の画像品質を評価する画像評価方法および画像評価装置、並びに画像評価処理を電子計算機(コンピュータ)を用いて実行するための画像評価プログラムに関する。より詳細には、粒状性や鮮鋭性やすじ欠陥などの空間周波数と関係した画質を評価するための評価値を求める仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
カラープリンタや複写装置などの画像形成装置やカラーディスプレイ装置などの画像表示装置(画像形成装置と画像表示装置とを纏めて画像出力装置ともいう)により出力または表示される画像の画像品質を決定する要因については、階調再現性、色再現性、鮮鋭性、解像性、粒状性、光沢、画像欠陥などが知られている。
【0003】
本来、均一な明度や色で出力または表示される均一色画像内に生じた一定方向に延びる明度や色の帯状のむら(縦すじや横すじといわれる、いわゆるすじ欠陥)は、装置固有の技術に依存して発生した画像欠陥の1つであり、品質管理を行う上での重要項目の1つとして用いられている。注目する画像要素についての粒状性や鮮鋭性やすじ欠陥に関する特徴量や評価値は、何れも空間周波数と関わりを持つものである。
【0004】
画像出力装置より出力された画像におけるすじ欠陥などの画像品質を評価する方法としては、画像品質に対し人間の視覚を通して主観的な判断によって評価する主観的評価と、測定器を通して画像品質の特徴量を算出する客観的評価がある。主観的評価は、人による判断のため評価結果にばらつきが生じるなど、評価精度の問題があり、近年では客観的評価方法が数多く提案されている。
【0005】
たとえば特許文献1〜3には、すじ欠陥についての画像品質を客観的に評価する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平09−037310号公報
【特許文献2】特開2000−004313号公報
【特許文献3】特開2002−139404号公報
【0007】
たとえば特許文献1に記載の技術では、カラーブラウン管の輝度むらを検査する方法として、発光面をテレビカメラで撮像し、撮像した画像の輝度値に対し、投影処理を行なって1次元データにした後、2次微分値を求めて、すじの強さを評価するようにしている。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、画像品質に関する欠陥の一種であるバンディングについて、人間が観察する際に知覚する心理量を予測する。具体的には、被評価画像の物理特性量を空間周波数に変換し、予め設定されている物理特性量とこの物理特性量に対応するバンディング知覚特性関数の関係から得られた関数を空間周波数に関して積分し、複数の空間周波数成分を含むバンディング知覚予測値を算出するようにしている。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術では、カラーディプレイ装置の輝度むらを評価する方法として、画像を空間周波数スペクトル画像に変換し、1次元化した輝度平均値に周波数の変化で増減する補正係数を乗算して補正された輝度平均値を算出し、補正された輝度平均値から抽出した特徴量と所定の基準とを比較することによって輝度むらを評価するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、画像内の注目している空間周波数帯域のすじ欠陥を評価する場合、視感と対応の取れた評価値を算出することができない。具体的には、カラープリンタなどの画像出力装置により出力された画像のすじ欠陥を視感で評価する場合、注目しているすじ欠陥の位置以外に多くのノイズがあり、これら背景ノイズの影響、特に背景ノイズの空間周波数の影響を受けるため、この影響を考慮していない従来技術では、視感と対応の取れた評価値を算出することができない。
【0011】
たとえば、特許文献1に記載の技術では、すじの強さのみに注目して評価値を算出しているため、すじ以外の背景ノイズの影響を考慮できず、視感と対応の取れたすじ評価値を算出することができない。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術では、複数の空間周波数成分を含む画像欠陥の総合的な評価値を算出しているため、注目している空間周波数帯域の画像欠陥と注目している画像欠陥以外の背景ノイズを分離できず、視感と対応の取れたすじ評価値を算出することができない。
【0013】
また、特許文献3に記載の技術では、検査対象物の輝度分布から予め登録されている良品周波数パターンの輝度分布を減算して不良品周波数パターンの輝度分布を求め輝度むらを検査しているため、注目している空間周波数帯域の画像欠陥とそれ以外の背景ノイズを分離できるが、注目している画像欠陥の空間周波数帯域と背景ノイズの空間周波数帯域との関わりを考慮していないので、必ずしも、視感と対応の取れたすじ評価値を算出することができない。
【0014】
なお、注目している画質要素の空間周波数帯域と背景ノイズの空間周波数帯域との関わりを考慮していないことに起因して視感と対応の取れた評価値を算出することができないという問題は、すじ欠陥に限らず、粒状性や鮮鋭性など、その他の空間周波数と関わりを持つ画質要素についても言えることである。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空間周波数と関わりを持つ画質をある空間周波数に注目して評価する場合であっても、背景ノイズの影響を受けずに、視感と対応の取れた評価値を算出することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明者の実験によれば、空間周波数と関わりを持つ画質をある空間周波数に注目して評価する場合に、背景ノイズの空間周波数が注目している空間周波数に近いほど視感評価に与える影響が大きくなるということが分かった。この点においては、空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量(たとえば実空間上のデータに基づいて取得される特徴量)に対して背景ノイズの補正を加えるに当たり、注目している空間周波数の成分を考慮して補正に使用する背景ノイズの成分を取得することが肝要であるということになる。本願発明はこの点に着目してなされたものである。
【0017】
すなわち、本発明に係る仕組みにおいては、入力画像データに基づいて注目する画像要素の空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量を取得し、入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開し、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて注目する画像要素に対しての背景成分を抽出し、特徴量と背景成分とに基づいて注目する画像要素の画質を評価するための評価値を客観的に求めるようにした。
【0018】
要するに、空間周波数と関係した画質を評価する際に、評価値のベースとなる特徴量に対しての背景ノイズの補正に使用される成分に関して、背景成分を複数の帯域成分に周波数展開して、その解析結果に基づいて、より適正な補正量を求める点に特徴を有するのである。
【0019】
周波数展開して求めた複数の帯域成分の解析結果に基づいて、より適正な補正量を求めるに当たっては、各帯域成分の内、注目する空間周波数を含む帯域の成分ほど補正量が強くなるように所定の重み付け演算を行なうのがよい。つまり、背景ノイズの補正に使用される補正成分を、注目する空間周波数に対する重み付けを考慮して取得する点に大きな特徴を有するのである。
【0020】
また従属項に記載された発明は、本発明に係る画像評価の仕組みのさらなる有利な具体例を規定する。さらに、本発明に係るプログラムは、本発明に係る画像評価の仕組みを、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現するために好適なものである。なお、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介した配信により提供されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、注目する画像要素の空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量に対しての背景ノイズの補正に使用される補正成分を、入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開し、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて抽出するようにしたので、注目する空間周波数に対する重み付けを考慮して補正成分を取得することができるようになり、注目している空間周波数の画質要因が背景ノイズの影響を受け難くい評価値、あるいは受けないような評価値を取得することができる。結果として、粒状性や鮮鋭性やすじ欠陥などの空間周波数と関係した画質を評価するための評価値を、視感と対応が取れるようにして求めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
<システム構成;第1実施形態>
図1は、本発明に係る画像評価装置の第1実施形態を備えた画像評価システム1の概略構成を示すブロック図である。ここでは、処理手順に従った機能ブロック図により示している。
【0024】
図示するように、画像評価システム1は、被評価画像の画像品質を評価する画像評価装置10と、被評価用画像Image を所定の記録媒体上に生成(形成)する画像出力装置(画像形成装置)50と、画像出力装置50が生成した被評価用画像Image を電子化した入力画像データD20を画像評価装置10に入力する画像入力装置70とを備えている。
【0025】
画像評価の対象となる被評価用画像Image を生成する画像出力装置50としては、たとえばインクジェット方式や電子写真方式などの画像形成プロセスを用いたカラープリンタが使用される。たとえば、画像評価装置10内に保存されている原画像データD10をRGBやCMYKなどのデバイス依存色空間の色信号に変換して紙などの出力媒体上に画像を形成する。もちろん、画像評価装置10以外から原画像データD10を取得して被評価用画像Image を生成してもよい。
【0026】
また画像入力装置70としては、原画像データD10に対応する入力画像データD20(電子化された画像情報)を生成して画像評価装置10に入力することができればよく、たとえばフラットベッド方式のスキャナなど、画像出力装置50で生成された被評価用画像Image の画素情報を電子化して出力する装置を使用する。たとえば、画像出力装置50により生成された原画像データD10の出力画像(被評価用画像Image )を光学的に読み取り、読み取った入力画像データD20を画像評価装置10に供給する。
【0027】
この場合、画像入力装置70は、入力特性のキャリブレーション、ドライバの調整などがなされていて、粒状性、鮮鋭性、階調特性、および色再現性が、被写体によって変化しないことが望ましい。また、AGCやエッジ強調などの画像入力装置70側で行なわれる自動的な処理はオフにされていることがさらに望ましい。
【0028】
図示を割愛するが、画像評価装置10は、装置内の各機能部を制御する制御部や、装置使用のためのガイダンス情報や所定の情報処理結果や管理情報などを画像情報として通知する表示部や、これらを音声情報として通知する本体内蔵もしくは外部設置の圧電体やスピーカなどで構成された音声通知部や、オペレータからの装置に対する種々の指示入力を受け付けるためのマウスやキーボードなどを有する指示入力部(操作部)を具備したユーザインタフェース部を備えている。
【0029】
画像評価装置10は、画像評価処理の実行に関わる各機能部として、先ず、画像データの受渡しをするインタフェース機能部としての出力インタフェース部11out および入力インタフェース部11inと、評価対象となる画像出力装置50の評価を行なうために必要な原画像データD10を記憶する原画像記憶部12と、画像入力装置70から供給された入力画像データD20を記憶する入力画像記憶部14とを備えている。なお、出力インタフェース部11out と原画像記憶部12とは、画像出力装置50にて被評価用画像Image を生成するための原画像データD10を画像出力装置50に供給するためのものであり、当該画像評価装置10にこれらを備えていることは必須ではない。
【0030】
出力インタフェース部11out は、原画像記憶部12に保存してあるsRGB(standard RGB ),XYZ,Lab(正しくはL***),LCh(正しくはL**°)などのデバイス非依存色空間の色信号で表わされた原画像データD10を装置外の各種機器に出力する。また、入力インタフェース部11inは、装置外の各種機器から入力画像データD20を取り込んで入力画像記憶部14に渡す。
【0031】
ここで、sRGB色空間のデータとは、デジタルカメラ、プリンタ、モニタなど多くのパーソナルコンピュータ用周辺機器などの分野で広く用いられている、IEC(International Electrotechnical Commission;国際電気標準会議 )が定める色空間の国際規格に即した色データである。このsRGBに則った色調整を行なうことで、入力と出力時の色の差異を極力少なくすることができる。
【0032】
原画像データD10は、パッチ画像やグラデーション画像のようなパターン画像だけでなく、写真画像のような絵柄画像を用いることができ、本実施形態では画像全面が均一色である場合について説明する。
【0033】
また、すじ欠陥に関する評価値の算出に当たり、たとえば、画像入力装置70より出力する画像チャートとしては、画像全面が均一色である画像チャートを用いることとする。特に本実施形態では、CMY50%の画像チャートを画像入力装置70より出力する場合について説明する。
【0034】
また、画像評価装置10は、デバイス依存色空間の画像データをデバイス非依存色空間の画像データに変換する色信号変換部16と、画像入力装置70から供給された入力画像データD20(画像データ)に基づいて入力画像画質要素評価値Q20を算出する画質要素評価値算出部20とを備えている。
【0035】
色信号変換部16は、入力画像データD20を、デバイスに非依存の色空間である均等知覚色空間の色彩データや3刺激値XYZまたは3刺激値XYZに変換可能な色彩データ(纏めて入力画像データD22)に変換する。
【0036】
画質要素評価値算出部20は、この色信号変換部16の変換結果(入力画像データD22)を用いて評価値を算出するのがよい。色信号変換部16で色変換された均等知覚色空間の色彩データや3刺激値XYZまたは3刺激値XYZに変換可能なデバイス非依存の色信号(色彩データ;D22)を用いることで、画像入力装置の入力色特性の影響を排除できる。たとえば、ある色(Lab,LCH)を入力しても画像入力装置の違いで様々な入力画像データのRGB値が得られるが、画像入力装置の入力特性プロファイル(色変換プロファイル)を用いるなどして、デバイス非依存のデータに変換することで、画像入力装置が異なっても同じLab,LChが得られるようになる。
【0037】
画質要素評価値算出部20は、被評価用画像Image について、粒状性に関する評価値Qgや鮮鋭性に関する評価値Qsや階調特性に関する評価値Qtや色再現性に関する評価値Qcなどを求めることができるとともに、特に本実施形態の構成においては、被評価用画像Image に存在するすじ欠陥に関わるすじ評価値Qeを求めることができるようになっている。注目する画像要素についての粒状性や鮮鋭性やすじ欠陥に関する特徴量や評価値は、何れも空間周波数と関わりを持つものである。
【0038】
具体的には、画質要素評価値算出部20は、入力画像データに基づいて注目する画像要素の空間周波数と関係した画質と関わりを持つ所定の特徴量Pを取得する特徴量取得部22と、注目する画像要素についての空間周波数と関わりを持つ画質を評価するための評価値Qを取得する評価値取得部26とを備えている。
【0039】
本実施形態において、特徴量取得部22は、実空間上の画像データに基づいて特徴量Pを取得する。補正量取得部24は、実空間上の画像データを一旦周波数空間上の画像データに変換して所定の帯域処理(いわゆるフィルタリング処理)をし、さらに実空間上の画像データに戻してから補正量Bを取得する。
【0040】
なお、特徴量取得部22は、実空間上の画像データを周波数空間上の画像データに変換し、注目する空間周波数を含む帯域の成分に基づいて特徴量Pを取得するようにしてもよい。ただし、この場合、注目する位置の注目する画質要素のみの特徴量Pを取得することができるように前処理を工夫する必要がある。周波数空間上に画像データを変換すると、位置に拘わらず、同様の周波数成分のものは同じ周波数軸上の成分として現われるからである。この点では、実空間上の画像データから特徴量Pを取得する場合、位置を特定した処理を行なうのは簡単である。
【0041】
また、画質要素評価値算出部20は、本実施形態の特徴部分として、入力画像データを複数の空間周波数帯域の成分に分割して、すなわち1つの入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開して、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて注目する画像要素に対しての背景成分を抽出し、この抽出した背景成分を特徴量取得部22が取得した特徴量Qに対する補正量Bとする補正量取得部24を備えている。評価値取得部26は、特徴量取得部22により取得された特徴量Pおよび補正量取得部24により取得された補正量Bに基づいて評価値Qを求める。
【0042】
ここで、本実施形態における画像評価方法のアルゴリズムにおいては、カラープリンタなどの画像出力装置より出力された画像に存在する所定方向の明度むら(いわゆるすじ欠陥)に関わる画像品質を評価する場合について説明する。
【0043】
このようなすじ欠陥に関わる画像品質を評価するべく、特徴量取得部22は、入力画像データD20もしくは入力画像データD22に対して所定の前処理を施す前処理部210と、前処理部210にて処理された入力画像データに基づいて空間周波数と関わりを持つ特徴量Pの一例であるすじ特徴量Penを算出するすじ特徴量算出部270とを備えている。
【0044】
前処理部210は、入力画像データD20もしくは色信号変換部16で処理されたデバイス非依存色空間の入力画像データD22をすじ欠陥と平行する方向に平均化し1次元のプロファイルに変換する1次元化処理部212と、明度(L*)プロファイルと明度プロファイルの平均線の差分を算出することで明度差分プロファイルを取得する平均線差分算出部214とを備えている。すじ特徴量算出部270は、平均線差分算出部214にて取得される差分プロファイルに基づいてすじ特徴量Peを求める。
【0045】
また、本実施形態の特徴部分である補正量取得部24は、前処理部210にて処理された入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開して、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて注目する画像要素の画質の一例であるすじ欠陥に対しての背景成分を抽出し、この抽出した背景成分をすじ特徴量算出部270が求めたすじ特徴量Peに対するすじ補正量Beとするすじ補正量取得部280を備えている。
【0046】
すじ補正量取得部280は、前処理部210にて処理された入力画像データを複数の空間周波数帯域の画像データに分割する空間周波数帯域分割部286と、空間周波数帯域分割部286にて周波数展開された複数の空間周波数帯域の画像データに基づいてすじ補正量Benを算出するすじ補正量算出部288とを備えている。
【0047】
空間周波数帯域分割部286は、平均線差分算出部214にて取得される差分プロファイルを複数の空間周波数帯域の差分プロファイルに分割(周波数展開)する。すじ補正量算出部288は、空間周波数帯域分割部286で周波数展開された複数の空間周波数帯域の明度差分プロファイルに基づいてすじ補正量Beを求める。
【0048】
評価値取得部26は、すじ特徴量算出部270により算出されたすじ特徴量Peおよびすじ補正量取得部280のすじ補正量算出部288により算出されたすじ補正量Beに基づいて、すじ欠陥の強さに関する評価値Qeを算出するすじ評価値算出部290を備えている。特に、本実施形態のすじ評価値算出部290は、注目している空間周波数帯域のすじ評価値Qeを算出する点に特徴を有する。
【0049】
<色信号変換部の構成>
図2は、色信号変換部16の概略構成を説明するブロック図である。ここでは、処理手順に従った機能ブロック図により示している。
【0050】
図示するように、色信号変換部16は、入力画像記憶部14に保存されている入力画像データD20を均等知覚色空間の色彩データ(たとえばLab値)あるいは3刺激値XYZまたは3刺激値XYZに変換可能な色彩データなどデバイス非依存の色信号に変換する入力画像データ色変換部164を備えている。
【0051】
入力画像データ色変換部164は、一例として、入力画像記憶部14から取り込んだRGB値で示された入力画像データD20を、一旦、デバイス非依存色空間の色信号であるXYZ3刺激値に変換した後に、均等色空間であるLab値もしくは色の3属性を構成するL(明度)C(彩度)h(色相)値で示された入力画像データD22に変換する。
【0052】
均等知覚色空間では、色差が人の目で見た場合の色の差と線形に近い関係を持つので、感覚的に分かり易い評価値を算出することができる。たとえばCIEの定める3刺激値XYZやLab値などの均等知覚色空間のデータは、画像入力装置などの装置特性に依存しない絶対的な色の値を表すことができる。
【0053】
このような絶対的な色を表すXYZ表色系またはこれに変換可能な表色系で入力画像データを作成しておくことにより、画像評価装置10内部では、画像入力装置70の入力色特性を全く考慮しなくても、人間の目の視覚感度に一致した色彩情報として比較が可能になり、視感と対応の取れた評価値を算出することができる。
【0054】
たとえば、入力画像データD20のRGB値はデバイス依存の色信号であるため、入力画像データ色変換部164は、画像入力装置70の入力特性プロファイル(色変換プロファイル)を用いて、デバイス非依存の色信号であるXYZ3刺激値またはLab,LChに変換する。
【0055】
また、入力画像データ色変換部164は、画像入力装置70の入力特性を補正するべく、入力画像データD20を、色特性や階調特性だけでなく、空間周波数(MTF)特性についても、フィルタなどで補正しておく。この補正の後に、デバイス非依存の色信号であるXYZ3刺激値またはLab値やLCh値に変換する。すなわち、本実施形態の構成においては、入力画像データ色変換部164が、入力画像から入力画像画質要素評価値を算出するに先立って、入力画像データを生成する入力画像データ生成手段(たとえば入力画像データD20を生成する画像入力装置70)の入力特性を補正する入力特性補正部として機能する。
【0056】
<すじ欠陥の一例>
図3は、本実施形態で取り扱う被評価用画像Image に存在するすじ欠陥の一例を示す図である。図において、上端から下端の方向を垂直方向と呼び、左端から右端の方向を水平方向と呼ぶ。
【0057】
図示するように、被評価用画像Image におけるには、様々な太さや強度(階調差)の縦すじのノイズが存在している。このような中で、本実施形態では、特に、図中の中央部の矢印で示した位置に存在する垂直方向に延在する縦すじのノイズに注目してこれをすじ欠陥として捉え、その他の領域に存在する縦すじのノイズに関しては、背景ノイズとして取り扱うこととする。なお、図示を割愛するが、水平方向に延在する横すじのノイズに注目することもできる。
【0058】
<1次元化処理部の機能説明>
図4は、1次元化処理部212の機能を説明する図であって、特に、この1次元化処理部212で得られた明度プロファイルの一例を示している。なお、本実施形態では、1次元化処理部212以降の処理はデバイス非依存色空間の信号である明度Lの場合について説明するが、その他の色彩データa,b,C,hなど、デバイス非依存色空間の信号であれば全てに適用できる。
【0059】
1次元化処理部212が取り扱うデバイス非依存色空間の画像データは、図3に示す2次元の被評価用画像Image を表わしたものであり、垂直方向における任意の1行分のデータを全列分含んでいるものである。また、縦すじのノイズ(すじ欠陥)は、水平方向の概ね同一の位置に存在することになる。
【0060】
そこで、1次元化処理部16は、2次元の被評価用画像Image を表わすデバイス非依存色空間の画像データ(全列分のデータ)を、すじ欠陥と略平行する方向(本例では水平方向)に平均化する、すなわち同一水平位置の全列分のデータを平均化することで、1次元のプロファイルデータ(本例では明度プロファイルデータ)に変換する。こうすることで、図4に示すような、プロファイルデータが得られる。なお、明度プロファイルデータなどのプロファイルデータは実空間上で表わされる画像データの一例である。
【0061】
この図4に示すプロファイルデータにおいては、縦すじのノイズを表わす周期の小さな信号成分の他に、左端から右端に向かって漸次データ値が小さくなる大きな周期の成分、すなわち、すじ欠陥を表わすデータよりも大きい周期の、すじ欠陥の評価では影響が少ない明度変動成分が存在している。この大きい周期の明度変動は、後述するように、1次元化処理部212の後段に設けられた平均線差分算出部214で除去される。
【0062】
1次元化処理部212における平均化処理において、すじ欠陥と平行でない傾いた方向で平均化すると、1次元のプロファイルのすじ部の値が本来の値よりも小さくなってしまうため、すじ欠陥と略平行する方向で平均化することが望ましい。
【0063】
そのため、1次元化処理部212は、すじ欠陥の方向が読み取った入力画像データD20(もしくはD22)に対して垂直方向(または水平方向)になるように、画像入力装置70で被評価用画像Image を読み取るようにすることが望ましい。あるいは、すじ欠陥の方向が読み取った入力画像データD20などに対して垂直方向(または水平方向)からずれて傾いた場合は、1次元化処理部212は、入力画像データD20などのすじ欠陥の方向を検出し、傾いた方向に平均化することで傾き補正を電子的に行なうのが望ましい。
【0064】
<平均線差分算出部の機能説明>
図5は、平均線差分算出部214の機能を説明する図であって、特に、この平均線差分算出部214で得られた明度差分プロファイルの一例を示している。
【0065】
平均線差分算出部214は先ず、1次元化処理部212により得られた明度プロファイルデータの概要(特徴)を示す特徴線プロファイルデータを求める。特徴線としては、すじ欠陥を表わすデータよりも大きい周期の、すじ欠陥の評価では影響が少ない明度変動成分を表わすものである限り、どのようなものであってもよい。
【0066】
たとえば、この特徴線としては、典型的には平均線を用いるのがよい。平均線としては、たとえば、明度プロファイルデータを2次多項式で近似した曲線を用いるのがよい。以下、平均線で説明する。
【0067】
次に平均線差分算出部214は、この平均線プロファイルデータと、1次元化処理部212により得られた明度プロファイルデータとの差分を算出する。この差分処理を行なうことで、図5に示すような、明度差分プロファイルデータが得られる。なお、明度差分プロファイルデータなどの差分プロファイルデータは実空間上で表わされる画像データの一例である。
【0068】
図5において、平均線に相当するデータが縦軸の“0”の値に統一され、縦すじのノイズを表わす周期の小さな信号成分が、“0”を中心として正負に現われるようになる。これにより、明度差分プロファイルデータにおいては、すじ欠陥を表わすデータよりも大きい周期の、すじ欠陥の評価では影響が少ない明度変動成分が除去される。
【0069】
<すじ特徴量算出部の構成>
図6は、すじ特徴量算出部270の概略構成を説明するブロック図である。すじ特徴量算出部270は、平均線差分算出部214にて取得される複数の空間周波数帯域の明度差分プロファイルに基づいてすじ特徴量Penを求める。
【0070】
このため、具体的には、すじ特徴量算出部270は、明度差分プロファイルのすじ位置を検出するすじ位置検出部412と、すじ位置検出部412で得られたすじ位置情報と明度差分プロファイルとに基づいてすじ強度を算出するすじ強度算出部414とを有して構成されている。
【0071】
すじ位置検出部412は、平均線差分算出部214により得られた明度差分プロファイルに基づいて、すじ欠陥の位置情報を検出する。具体的には、着目するすじ欠陥を表わすであろう大きい縦すじのノイズ成分を検出するべく、明度差分プロファイルデータにおける下限側の閾値Th1から上限側の閾値Th2までの範囲から外れる明度差分プロファイルを検出し、この領域をすじ位置と判断する。
【0072】
ここで、2つの閾値Th1,TH2は、着目するすじ欠陥の位置を適正に検知できるようにするためのものであるから、視感との関わりをもって規定するのがよい。たとえば、平均線(図5における“0”の値)からの差で正負方向に同じ量を設定し、人間が感じる最小の明度の差を用いることができる。こうすることで、下限側の閾値Th1から上限側の閾値Th2までの範囲内の信号成分を人間が感じない成分として排除し、それよりも大きな人間が感じる成分(本例の場合はすじ欠陥を表わす成分)に着目することができる。図5においては、閾値Th1,Th2を越えた領域は1箇所で、すじ欠陥が1つ存在し、それを適正に検知する状態となっている。
【0073】
すじ強度算出部414は、すじ位置検出部412により検知されたすじ位置情報と平均線差分算出部214により求められた明度差分プロファイルとに基づいて、すじ欠陥の強度(すじ強度)を算出し、このすじ強度をすじ特徴量Penとする。
【0074】
すじ強度(すじ欠陥の特徴を示すすじ特徴量Pen)としては、たとえば、明度差分プロファイルデータにおける閾値Th1から閾値Th2までの範囲から外れるより大きな明度差分プロファイルの最大値(ピーク強度)をすじ強度として用いるのがよい。なお、すじ強度は、着目するすじ欠陥の強さを表わすものであればよく、このような最大値に限らず、たとえば閾値Th1から閾値Th2までの範囲から外れるより大きな明度差分プロファイルの平均値や積分値などを用いることもできる。
【0075】
<空間周波数帯域分割部の構成>
図7は、すじ補正量取得部280に内蔵されている空間周波数帯域分割部286の概略構成を説明するブロック図である。空間周波数帯域分割部286は、平均線差分算出部214にて取得される複数の空間周波数帯域の明度差分プロファイルを複数の空間周波数帯域の明度差分プロファイルに分割する。つまり、1つの明度差分プロファイルを周波数展開することで、それぞれ注目する周波数が異なる複数の明度差分プロファイルを生成する。
【0076】
このため、具体的には、空間周波数帯域分割部286は、平均線差分算出部214にて取得される複数の空間周波数帯域の明度差分プロファイルに対して離散フーリエ変換を行なう離散フーリエ変換部422と、離散フーリエ変換部422により得られた空間周波数成分に帯域フィルタを乗算する帯域フィルタ乗算部424と、帯域フィルタ乗算部424にて帯域フィルタを乗算して得られた複数の帯域の空間周波数成分に対して逆離散フーリエ変換を行なう逆離散フーリエ変換部426とを有して構成されている。
【0077】
離散フーリエ変換部422は、平均線差分算出部214により得られた明度差分プロファイルに対して離散フーリエ変換を行ない、明度差分プロファイルの空間周波数成分(明度差分スペクトル)を算出する。
【0078】
帯域フィルタ乗算部424は、注目しているすじ欠陥の空間周波数成分を含む複数の帯域フィルタを乗算することで、帯域別明度差分スペクトルを求める。たとえば、注目しているすじ欠陥の空間周波数f0が1.5cycle/mmの場合、4つの帯域フィルタ、f1(0.2cycle/mm以下)、f2(0.2〜1.0cycle/mm)、f3(1.0〜5.0cycle/mm)、f4(5.0cycle/mm以上)のフィルタを乗算する。
【0079】
逆離散フーリエ変換部426は、帯域フィルタを乗算して得られた4つの帯域の空間周波数成分に対してそれぞれ逆離散フーリエ変換を行ない、4つの帯域別明度差分プロファイルデータL_f1,L_f2,L_f3,L_f4を算出する。
【0080】
このように、本実施形態の空間周波数帯域分割部286は、実空間上の情報である処理対象の画像データをフーリエ変換して周波数空間上の情報に変換し、この周波数空間上の情報に対してフィルタリング処理を加えることで複数の空間周波数帯域成分に展開するとともに、各空間周波数帯域成分から不要なノイズを抑制し、このノイズが抑制された各空間周波数帯域成分を逆フーリエ変換することで、周波数空間上の複数の空間周波数帯域成分を実空間上の情報に戻す。フィルタリング処理に際しては、少なくとも、注目する画質の注目する空間周波数を含む帯域成分とそれ以外の帯域成分とを峻別するようにする。
【0081】
こうすることで、注目する画質の特徴量(本例ではすじ特徴量Pen)に対しての背景成分を、注目する画質の注目する空間周波数を含む帯域成分と、それ以外の帯域成分とに適切に分離できるようになる。
【0082】
図8および図$a7は、周波数展開することで得られる、注目する周波数が異なる複数の明度差分プロファイル(帯域別明度差分プロファイル)の一例を示す図である。ここでは、図5に示した明度差分プロファイルに対して、空間周波数帯域分割部286にて周波数展開することで得られる、4つの帯域別明度差分プロファイルデータL_f1 ,L_f2 ,L_f3 ,L_f4 の一例を示している。
【0083】
たとえば、図8(A)は帯域f1(0.2cycle/mm以下)に注目した明度差分プロファイルデータL_f1 であり、図8(B)は帯域f2(0.2〜1.0cycle/mm)に注目した明度差分プロファイルデータL_f2 であり、図9(A)は帯域f3(1.0〜5.0cycle/mm)に注目した明度差分プロファイルデータL_f3 であり、図9(B)は帯域f4(5.0cycle/mm以上)に注目した明度差分プロファイルデータL_f4 である。
【0084】
このように、1つの明度差分プロファイルをそれぞれ異なる帯域に周波数展開することで、入力画像データの空間周波数成分の特徴を知ることができる。たとえば、注目しているすじ欠陥の空間周波数(すじ空間周波数)f0成分を含まない明度差分プロファイルデータL_f1 ,L_f2 ,L_f4 については、周波数空間上でランダムなノイズが存在するが、注目しているすじ欠陥のすじ空間周波数f0成分を含む明度差分プロファイルデータL_f3 では、注目しているすじ欠陥のすじ空間周波数f0である1.5cycle/mmでのデータ値が大きくなり、それ以外の周波数ではランダムなノイズが存在する。
【0085】
<すじ補正量算出部の構成>
図10は、すじ補正量取得部280に内蔵されているすじ補正量算出部288の概略構成を説明するブロック図である。すじ補正量算出部288は、空間周波数帯域分割部286により得られたそれぞれ異なる複数の空間周波数帯域の明度プロファイルに基づいて、すじ補正量Benを算出する。
【0086】
ここで、すじ補正量Benとは、注目しているすじ欠陥以外の背景ノイズの強さを表す特徴量であり、すじ欠陥の強さに関するすじ評価値Qeを求める際に影響を及ぼす特徴量である。
【0087】
すじ欠陥以外の背景ノイズの強さを適正に求めるに当たっては、各空間周波数帯域成分の特徴量から注目するすじ欠陥の強さの影響を排除する必要がある。このため、具体的には、すじ補正量算出部288は、空間周波数帯域分割部286で得られた複数の空間周波数帯域の明度プロファイルの標準偏差SDを各空間周波数帯域成分の特徴量として算出する標準偏差算出部432と、注目しているすじ欠陥の空間周波数帯域f0とそれ以外の空間周波数帯域とを峻別するすじ空間周波数帯域設定部434とを有して構成されている。
【0088】
標準偏差算出部432は、各空間周波数帯域成分の特徴量を取得する帯域特徴量取得部の一例である。すじ空間周波数帯域設定部434は、特徴量取得部22が取得した特徴量Pにおける注目する空間周波数帯域を設定する注目空間周波数帯域設定部の一例である。
【0089】
また、すじ補正量算出部288は、すじ空間周波数帯域設定部434により峻別・設定されたすじ空間周波数帯域fに基づいて各空間周波数帯域成分の特徴量に対する重み係数kを設定する重み係数設定部436と、標準偏差算出部432により求められた複数の明度プロファイルの各標準偏差SDに対して重み係数設定部436により設定された重み係数kを用いて重み付け演算を行なってすじ補正量Benを算出する重み付け演算部438とを有して構成されている。
【0090】
帯域特徴量取得部の一例である標準偏差算出部432は、空間周波数帯域分割部286により得られた複数の空間周波数帯域の明度プロファイルデータL_f1 ,L_f2 ,L_f3 ,L_f4 のそれぞれについて、標準偏差SD_f1 ,SD_f2 ,SD_f3 ,SD_f4 を算出する。
【0091】
標準偏差を求めることは、全体のばら付きを総合的に評価することを意味し、注目しているすじ欠陥のすじ空間周波数f0成分を含む明度差分プロファイルデータ中に存在する注目しているすじ欠陥の強さの影響を排除できる利点がある。
【0092】
図5に示す明度差分プロファイルデータの場合、すじ空間周波数f0成分は1つであるのに対して、それを除くノイズ周波数成分はランダムに多数存在するからである。すなわち、標準偏差を求めると、すじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分を特異点として取り扱うことができ、予めすじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分を排除してデータ解析を行なわなくても、このすじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分の影響を受けない情報を取得できるのである。結果的に、各空間周波数帯域成分の特徴量から注目するすじ欠陥の強さの影響を排除することができる。
【0093】
注目空間周波数帯域設定部の一例であるすじ空間周波数帯域設定部434は、注目しているすじ欠陥のすじ空間周波数f0を含む帯域(すじ欠陥の空間周波数帯域)を設定する。すじ空間周波数帯域は、空間周波数帯域分割部286で周波数展開した空間周波数帯域(f1,f2,f3,f4)と同じものを用いる。すじ空間周波数帯域の設定はオペレータが手動で設定するものであってもよいし、すじ特徴量算出部270にて求められるすじ特徴量Penから推定するなどして自動で設定するものであってもよい。何れにしても、特徴量取得部22が取得した特徴量Pにおける注目する空間周波数帯域を設定することができればよいのである。
【0094】
重み係数設定部436は、すじ空間周波数帯域設定部434で峻別・設定したすじ空間周波数帯域(f1,f2,f3,f4の何れか)に応じて、標準偏差算出部432により得られた複数の標準偏差SD_f1 ,SD_f2 ,SD_f3 ,SD_f4 に乗算する各重み係数k1,k2,k3,k4を設定する。
【0095】
ここで、重み係数設定部436は、すじ空間周波数帯域設定部434で峻別・設定されるすじ空間周波数帯域(f1,f2,f3,f4の何れか)に応じて異なる数値を各重み係数k1,k2,k3,k4に設定する。
【0096】
このとき、重み係数設定部436は、すじ空間周波数帯域設定部434で設定されたすじ空間周波数帯域、つまりすじ空間周波数f0を含む帯域に近いほど重付けが高くなるような重み係数kを設定する。たとえば、すじ空間周波数帯域設定部434でfnを設定した場合に対応する重み係数knが一番高くなるような数値を設定するのが肝要である。
【0097】
これは、すじ特徴量算出部270により求められるすじ特徴量Penに対して、すじ欠陥の空間周波数帯域f0と同一もしくは近傍周波数の成分の補正をより強く加えることで、すじ欠陥の強さに関するすじ評価値Qeが視感とより対応するようにするためである。
【0098】
たとえば、帯域f1を設定した場合はk1=1.0、k2=0.4、k3=0.2、k4=0.1、帯域f2を設定した場合はk1=0.3、k2=1.0、k3=0.3、k4=0.1、帯域f3を設定した場合はk1=0.1、k2=0.3、k3=1.0、k4=0.3、帯域f4を設定した場合はk1=0.1、k2=0.2、k3=0.4、k4=1.0、の数値を設定する。
【0099】
重み付け演算部438は、標準偏差算出部432により求められた複数の明度プロファイルの各標準偏差SD_f1 ,SD_f2 ,SD_f3 ,SD_f4 に対して、重み係数設定部436により設定された各重み係数k1,k2,k3,k4を用いて重み付け演算を行なうことで、すじ補正量Benを算出する。
【0100】
ここで、重み付け演算に当たっては、たとえば式(1)に示すように、重み係数設定部436により設定されたすじ空間周波数f0に近いほど高くなるような重み係数knと標準偏差算出部432により取得された標準偏差SDnとを掛けて得られる各重付き周波数帯域成分kn*SDnの線形和(重み付け線形和)を使用するのがよい。
【0101】
【数1】

【0102】
このような重み付け線形和を使用してすじ補正量Benを求めると、注目しているすじ欠陥の空間周波数帯域に応じて、その注目しているすじ欠陥の強さの影響を受けない適正なすじ補正量Benを算出することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、各空間周波数帯域成分の特徴量として標準偏差SDを算出することですじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分の影響を受けないようにし、すじ欠陥以外の背景ノイズの強さを適正に求める、つまり注目するすじ欠陥の強さの影響を排除したすじ補正量Benを求めるようにしていたが、注目するすじ欠陥の強さの影響を受けない背景ノイズの強さを表すものである限り、その他の取得手法を用いることもできる。
【0104】
たとえば、一般的なデータ解析と同様に、平均値や中央値(メジアン)やスパン(最大値と最小値の差)などを各空間周波数帯域成分の特徴量として用いることも考えられる。ただし、これらの場合には、単純な算出手法では、注目するすじ欠陥の強さの影響を受けないようにすることが難しい。
【0105】
たとえば、平均値の場合、単純に平均値を求めたのでは、注目するすじ欠陥の成分をもその算出に含んでしまう。また、中央値やスパンの場合には、注目するすじ欠陥の成分を最大値(もしくは最小値もしくはその両方)として使用して中央値やスパンを求めることになるので、注目するすじ欠陥の強さの影響を大きく受けてしまい、背景成分を適正に求めることが難しい。このため、予めすじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分を排除してから(事前の排除処理を行なってから)平均値などを求める必要がある。この点では、標準偏差を使用すれば、このような事前の排除処理を行なわなくても、すじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分の影響を受けない情報が得られる点で有利である。
【0106】
また、重み付け演算部438においては、式(1)に示すような重み付け線形和を使用することですじ補正量Benを算出していたが、注目空間周波数帯域設定部の一例であるすじ空間周波数帯域設定部434が設定した注目するすじ空間周波数を含む帯域成分ほど高い重付けがなされたすじ補正量Benを求めることができればよく、その限りにおいて、その他の取得手法を用いることもできる。ただし、特に式(1)に示すような重み付け線形和を使用すると、それ以外の手法に比べて、注目するすじ空間周波数を考慮した適正なすじ補正量Benを非常に簡単に求めることができる。
【0107】
<すじ評価値算出部の構成>
図11は、すじ評価値算出部290の概略構成を説明するブロック図である。すじ評価値算出部290は、すじ特徴量算出部270により算出されたすじ特徴量Penとすじ補正量算出部288より算出されたすじ補正量Benとに基づいて、注目しているすじ欠陥が存在する位置以外のすじ空間周波数f0やその近傍の周波数成分の影響を排除した、その注目しているすじ欠陥の空間周波数帯域のすじ評価値Qeを求める。
【0108】
具体的には、すじ評価値算出部290は、検出したすじ欠陥ごとに、各すじ欠陥のすじ評価値に関する個別すじ評価値Qenを算出する個別すじ評価値算出部442と、個別すじ評価値算出部442で得られた複数の個別すじ評価値Qenに基づいてすじ欠陥に関する総合的な評価値である総合すじ評価値Qe_allを算出する総合すじ評価値算出部444とを有して構成されている。
【0109】
個別すじ評価値算出部442は、たとえば、すじ特徴量算出部270により得られた各すじ特徴量Penからすじ補正量算出部288により得られたすじ補正量Benを減算することですじ欠陥の強さに関する個別すじ評価値Qenを算出する。
【0110】
なお個別すじ評価値Qenは、検出したすじ欠陥ごとに、そのすじ欠陥の強さ(度合い)を示すものであればよく、すじ評価値Qeは、このような差分処理により求めることに限らず、たとえば、すじ特徴量Penをすじ補正量Benで除算することにより求めてもよい。差分処理や除算処理の何れにおいても、背景ノイズに対しての注目しているすじ欠陥の強さを求めていることになる。
【0111】
総合すじ評価値算出部444は、個別すじ評価値算出部442により得られた複数の個別すじ評価値Qenを積算することで、すじ欠陥に関する総合的な評価値である総合すじ評価値Qe_allを算出し、これをすじ評価値Qeとする。
【0112】
なお、総合すじ評価値Qe_allは、すじ欠陥の総合的な強さを示すものであればよく、このような積算処理により求めることに限らず、たとえば、複数の個別すじ評価値Qenを平均することで求めてもよい。あるいは、一般的なデータ解析と同様に、中央値(メジアン)やスパン(最大値と最小値の差)などを用いることも考えられる。
【0113】
図12は、第1実施形態の画像評価装置10により被評価用画像Image として2種類の画像A,Bのすじ欠陥について、すじ評価値Qeを算出した結果を説明する図である。ここで、図12(A)は被評価用画像Aの明度差分プロファイルデータLaであり、図12(B)は被評価用画像Bの明度差分プロファイルデータLbであり、図12(C)は、すじ評価値を算出した結果を示す図表である。なお、図12(C)に示す図表においては、比較として、従来技術のすじ評価値も示している。
【0114】
2種類の被評価用画像Image (画像Aと画像B)は、何れも電子写真方式のカラープリンタで出力した画像であり、それぞれの明度差分プロファイルは図12(A),(B)に示すようになっている。
【0115】
従来技術によるすじ評価値は、図12(A),(B)に示す明度差分プロファイルを持つ画像からすじ欠陥のピーク強度とすじ欠陥以外の背景の標準偏差を求め、“ピーク強度−背景の標準偏差”により評価値を算出したものである。
【0116】
一方、本実施形態のすじ評価値は、図12(A),(B)に示す明度差分プロファイルを持つ画像から図1に示した画像評価装置10の構成に従って、すじ欠陥のすじ特徴量Pen(ピーク強度)とすじ補正量Ben(4つの空間周波数帯域の標準偏差の重み付け線形和)を求め、“すじ特徴量Pen−すじ補正量Ben”を個別すじ評価値Qenとして算出したものである。
【0117】
本実施形態のすじ評価値の算出に当たっては、注目しているすじ欠陥の空間周波数が略1.5cycle/mmであるため、空間周波数帯域分割部286では4つの帯域、f1(0.2cycle/mm以下)、f2(0.2〜1.0cycle/mm)、f3(1.0〜5.0cycle/mm)、f4(5.0cycle/mm以上)に分割する。また、すじ補正量算出部288では、すじ空間周波数帯域設定部434で帯域f3をすじ空間周波数f0を含む空間周波数帯域に設定し重み係数設定部436で、重付け演算に用いられる各係数k1〜k4を、k1=0.1,k2=0.3,k3=1.0,k4=0.3に設定した。
【0118】
図12(A),(B)に示すように、画像Aおよび画像Bは、すじ欠陥のピーク強度は同じですじ欠陥以外の背景ノイズ(標準偏差)の大きさは画像Bの方が画像Aよりも若干大きく、また、背景ノイズの周波数特性が異なっている。たとえば、画像Aでは、図12(A)に示す明度差分プロファイルから分かるように、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが大きく、すじ欠陥は目立ち難い。これに対して、画像Bでは、図12(B)に示す明度差分プロファイルから分かるように、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが小さく、すじ欠陥は目立ち易い。
【0119】
実際に、視感の評価では、注目するすじ欠陥と同程度の空間周波数帯域の成分が背景ノイズとして周囲に存在すると、注目するすじ欠陥がそれに紛れてしまうので、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが大きい画像Aよりも、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが小さい画像Bの方がすじ欠陥の強さが高くなる。
【0120】
従来技術において、“ピーク強度−背景の標準偏差”のようにしてすじ評価値を算出すると、背景の標準偏差は画像Bの方が画像Aよりも若干大きいため、すじ欠陥の強さを示すすじ評価値Qeは、画像Bの方が画像Aより低く評価される。
【0121】
一方、本実施形態においては、すじ補正量算出部288は、すじ欠陥の空間周波数帯域f0と同一もしくは近傍周波数の成分の補正量がより大きくなるように、すじ空間周波数帯域に対して高い重み付けを施してすじ補正量Benを求めている。このため、“すじ特徴量Pen−すじ補正量Ben”に従ってすじ評価値Qeを算出することで背景ノイズの補正を加えると、すじ特徴量算出部270にて求められるすじ特徴量Penが同じ画像であっても、すじ欠陥の空間周波数帯域f0と同一もしくは近傍周波数の成分が大きな画像ほど、すじ評価値算出部290にて求められるすじ評価値Qeが小さくなり、視感の評価と対応の取れたすじ評価値Qeとなる。
【0122】
画像Aと画像Bとの比較で言えば、すじ欠陥のピーク強度が同じであっても、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが小さい画像Bの方が、すじ欠陥と同程度の空間周波数帯域f3の背景ノイズが大きい画像Aよりも、すじ評価値Qeが大きくなり、画像Bのすじ欠陥は画像Aのすじ欠陥より高く評価されるので、視感と対応の取れたすじ評価値Qeを算出できる。
【0123】
以上のように、本実施形態の画像評価装置10におけるすじ欠陥に関する評価値(すじ評価値Qe)の取得手法によれば、すじ欠陥に関する特徴量(すじ特徴量Pen)に含まれる背景成分の影響を抑制するための補正成分(すじ補正量Ben)を求めるに当たり、注目するすじ欠陥の空間周波数帯域と同一もしくは近傍周波数の成分のすじ特徴量に対する抑制量をより大きくすることができるようにしたので、注目している空間周波数帯域のすじ欠陥を評価する場合でも、注目しているすじ欠陥以外の背景ノイズの影響を受けず、視感と対応の取れたすじ評価値を算出することができる。
【0124】
従来の仕組みにおいて、画質を評価するための評価値を客観的に求めるに当たって、周波数解析を利用するものがある(たとえば特許文献3に記載の仕組み)。しかしながら、単純に周波数解析を利用して評価値を求めたのでは、背景ノイズの影響を受け、注目する画像要素の注目する周波数の注目する画質のみの評価値を適正に得ることが難しい。注目する画像要素が存在する位置以外(つまり注目部分の周囲)に、同一もしくは近傍の周波数の成分が存在すると、それを注目するものと峻別することができないからである。
【0125】
この点において、空間周波数と関係した画質を評価する際に、評価値のベースとなる特徴量に対しての背景ノイズの補正に使用される成分に関して、背景成分を複数の帯域成分に周波数展開して、その解析結果に基づいて補正量を求めるようにすれば、注目する空間周波数を含む帯域の成分ほど補正量が強くなるように所定の重み付け演算を行なうことができる。
【0126】
そして、このようにして求めた補正量を使って特徴量に対して補正を加えれば、評価値に対しての影響度合いの強い注目する空間周波数帯域成分ほど補正を強く加えることができるようになり、結果として、評価値に対しての影響度合いの強い注目する空間周波数帯域成分の影響を排除し得ることになり、視感と対応の取れた評価値を算出することができるようになる。
【0127】
従来の仕組みでは、空間周波数に対する重み付けを考慮した背景ノイズの補正が施されていないため、視感と対応の取れた評価値を算出することができないのと大きく異なるのである。
【0128】
<システム構成;第2実施形態>
図13は、本発明に係る画像評価装置の第2実施形態を備えた画像評価システム1の概略構成を示すブロック図である。ここでは、処理手順に従った機能ブロック図により示している。第2実施形態の画像評価装置10は、特徴量Pや補正量Bを求めるに当たって、予め入力画像データに対して視覚系の空間周波数特性に応じた補正を施し、この補正が施された画像データを使用して特徴量Pや補正量Bを取得するようにした点に特徴を有している。
【0129】
具体的には、第2実施形態の画像評価装置10は、前処理部210内において、すじ特徴量算出部270や空間周波数帯域分割部286の前段に、入力画像データ(本例では平均線差分算出部214で求められた明度差分プロファイルデータ)に対し、視覚系の空間周波数特性に応じた補正を施す視覚空間周波数特性補正部216を備えている。視覚空間周波数特性補正部216は、平均線差分算出部214により得られた明度差分プロファイルデータに対して、人間の視覚特性に合わせる補正を行なう。
【0130】
<視覚空間周波数特性補正部の構成>
図14は、視覚空間周波数特性補正部216の概略構成を説明するブロック図である。視覚空間周波数特性補正部216は、明度差分プロファイルデータに対して離散フーリエ変換を行ない、それに視覚系の空間周波数特性を表す関数を掛け合わせる、すなわち視覚特性フィルタを乗算することで視覚特性の補正を加え、この視覚特性の補正が加えられた空間周波数成分に対して逆離散フーリエ変換を行なうことによって、人間の視覚特性に合致した明度差分プロファイルデータを生成する。
【0131】
このため、具体的には、視覚空間周波数特性補正部216は、平均線差分算出部214により得られた明度差分プロファイルデータに対して離散フーリエ変換を行なう離散フーリエ変換部402と、離散フーリエ変換部402により得られた空間周波数成分に人間の視覚の空間周波数特性に対応した視覚伝達関数VTF(f)(VTF:Visual Transfer Function)を乗算することで視覚特性フィルタ処理を行なう視覚特性フィルタ乗算部404と、視覚特性フィルタ乗算部404により視覚特性フィルタを乗算して得られた空間周波数成分に対して逆離散フーリエ変換を行う逆離散フーリエ変換部406とを有して構成されている。
【0132】
離散フーリエ変換部402は、平均線差分算出部214により得られた明度差分プロファイルデータに対して離散フーリエ変換を行ない、明度差分プロファイルの空間周波数成分(明度差分スペクトル)を算出する。
【0133】
視覚特性フィルタ乗算部404は、人間の視覚の空間周波数特性に対応した視覚伝達関数VTF(f)として、たとえば式(2)に示すDooleyの近似式を用いることで、視覚特性フィルタ処理を行ない、視感度補正済の明度差分スペクトルを取得する。ここでは、fは空間周波数[cycle/mm]を表す。
【0134】
【数2】

【0135】
逆離散フーリエ変換部406は、視覚特性フィルタ乗算部404により視覚特性フィルタを乗算して得られた空間周波数成分(視感度補正済の明度差分スペクトル)に対して逆離散フーリエ変換を行なうことで、人間の視覚特性に合致した視感度補正済の明度差分プロファイルデータL_vtfを算出する。
【0136】
視覚空間周波数特性補正部216の後段のすじ特徴量算出部270や空間周波数帯域分割部286は、このようにして視覚系の空間周波数特性に応じた補正が施された明度差分プロファイルデータL_vtfを使用してすじ特徴量Penやすじ補正量Benを求める。
【0137】
図15は、第2実施形態の画像評価装置10において、図5に示した明度差分プロファイルデータについて視覚空間周波数特性補正部216にて求めた人間の視覚特性に合致した明度差分プロファイルデータL_vtfの一例を示す図である。図5と図15との比較から分かるように、視覚系の空間周波数特性に応じた補正を施すと、周波数が高く、視感度の低い成分が抑制されるようになる。
【0138】
この第2実施形態のように、人間の視覚の空間周波数特性に合わせる補正を行なってからすじ特徴量Penやすじ補正量Benを求めてすじ評価値Qeを求めるようにすることで、より視感と対応の取れたすじ評価値Qeを算出することができるようになる。
【0139】
<電子計算機を利用した構成>
なお、上述した一連の画像評価処理機能は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。すなわち、画像評価処理の実行に関わる各機能部は、それぞれハードウェアにより構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づいて電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェア的に実現することも可能である。たとえば、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)本体の構成と同様に、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)などを備えて構成することができる。
【0140】
上述の画像評価処理の実行に際しては、このコンピュータ構成の画像評価装置に組み込まれたアプリケーションプログラムをCPUが実行することによって実現することができる。よって、本発明に係る画像評価方法や装置を、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現するために好適な画質評価プログラムあるいはこの画質評価プログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体を発明として抽出することもできる。
【0141】
もちろん、このようなコンピュータを用いた構成に限らず、それぞれの機能をなす専用のハードウェアの組合せにより構成することもできる。ソフトウェアにより処理を実行させる仕組みとすることで、ハードウェアの変更を伴うことなく、処理手順や処理条件などを容易に変更できる利点を享受できるようになる。逆に、ハードウェアで構成すれば、高速処理が実現できる。
【0142】
記録媒体は、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取装置に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気などのエネルギの状態変化を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取装置にプログラムの記述内容を伝達できるものである。
【0143】
たとえば、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc )を含む)、または半導体メモリなどよりなるパッケージメディア(可搬型の記憶媒体)により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMやハードディスクなどで構成されてもよい。または、ソフトウェアを構成するプログラムが、有線あるいは無線などの通信網を介して提供されてもよい。
【0144】
一連の評価値算出処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(組込みマイコンなど)、あるいは、CPU、論理回路、記憶装置などの機能を1つのチップ上に搭載して所望のシステムを実現するSOC(System On a Chip:システムオンチップ)、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0145】
たとえば、画像評価値算出処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、ハードウェアにて構成する場合と同様の効果は達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が画像評価値算出処理機能を実現する。
【0146】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することで、画像評価値算出処理を行なう機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム;基本ソフト)などが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって画像評価値算出処理を行なう機能が実現される場合であってもよい。
【0147】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって画像評価値算出処理を行なう機能が実現される場合であってもよい。
【0148】
このような電子計算機には、たとえば、複写アプリケーションやプリンタアプリケーション、ファクシミリ(FAX)アプリケーション、あるいは他のアプリケーション用の処理プログラムなど、従来の画像形成装置(複合機)におけるものと同様のソフトウェアが組み込まれる。また、ネットワーク9を介して外部とのデータを送受信したりするための制御プログラムも組み込まれる。
【0149】
このとき、画像評価値算出処理を行なう機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて、個別のプログラムモジュールとして提供されてもよい。たとえば、既存の複写装置制御ソフトやプリンタ制御ソフト(プリンタドライバ)に組み込まれるアドインソフトとして提供されてもよい。
【0150】
図16は、CPUやメモリを利用してソフトウェア的に画像評価装置10を構成する、すなわちパーソナルコンピュータなどの電子計算機を利用して画像評価装置10をソフトウェア的に実現する場合のハードウェア構成の一例を示した図である。
【0151】
画像評価装置10を構成するコンピュータシステム900は、コントローラー部901と、ハードディスク装置、フレキシブルディスク(FD)ドライブ、あるいはCD−ROM(Compact Disk ROM)ドライブ、半導体メモリコントローラなどの、所定の記憶媒体からデータを読み出したり記録したりするための記録・読取制御部902とを有する。特に、本実施形態においては、ハードディスク装置やその他の記憶媒体を原画像記憶部12や入力画像記憶部14として機能させ、原画像データD10などを格納する。
【0152】
コントローラー部901は、CPU(Central Processing Unit )912、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)913、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)915、および不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)916を有している。
【0153】
上記において“揮発性の記憶部”とは、画像出力端末4の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。
【0154】
また、コンピュータシステム900は、ユーザインタフェースをなす機能部として、キーボードやマウスなどを有する指示入力部903と、操作時のガイダンス画面や処理結果などの所定の情報をユーザに提示する表示出力部904と、処理対象の画像を読み取る画像読取部(スキャナユニット)905と、画像評価装置10における処理済みの画像を所定の出力媒体(たとえば印刷用紙)に出力する画像形成部906と、各機能部との間のインタフェース機能をなすインタフェース部909とを有する。
【0155】
インタフェース部909としては、処理データ(画像データを含む)や制御データの転送経路であるシステムバス991の他、たとえば、画像読取部905とのインタフェース機能をなすスキャナIF部995、画像形成部906や他のプリンタとのインタフェース機能をなすプリンタIF部996、およびインターネットなどのネットワーク9との間の通信データの受け渡しを仲介する通信IF部999を有している。スキャナIF部995と通信IF部999とは入力インタフェース部11inに対応し、プリンタIF部996は出力インタフェース部11out に対応する。なお、記録・読取制御部902も、所定の記憶媒体から画像データを取り込む入力インタフェース部11inの機能を持つ。
【0156】
表示出力部904は、読み取った全体画像やガイダンス情報などの主要な情報を提示するための表示装置を有して構成されている。表示された情報を確認しながら所定の入力を行なう作業を効率的にできるように、表示装置は、指示入力部903の近傍に配置するのがよい。
【0157】
表示出力部904は、たとえば、表示制御部942とCRT(Cathode Ray Tube;陰極線管)やLCD(Liquid Crystal Display;液晶)などでなるディスプレイ部944とを有する。たとえば、表示制御部942が、ディスプレイ部944上に、ガイダンス情報や画像読取部905が取り込んだ全体画像などを表示させる。なお、表示面上にタッチパネル945を有するディスプレイ部944とすることで、指先やペンなどで所定の情報を入力する指示入力部903を構成することもできる。
【0158】
コンピュータシステム900には、画像読取部として、上記実施形態の画像入力装置70に相当するものが接続される。この画像入力装置70は、画像入力端末の機能を備えており、たとえばCCD固体撮像素子の全幅アレイを使用して、読取位置へ送られた原稿に光を照射することで、原稿上の画像を読み取り、この読み取った画像を表す赤R、緑G、青Bのアナログビデオ信号をデジタル信号へ変換する。特に、本実施形態においては、読み取った画像を、ハードディスク装置やその他の記憶媒体(RAM915でもよい)に入力画像データD20として格納する。
【0159】
また、コンピュータシステム900には、画像形成部として、上記実施形態の画像出力装置50に相当するものが接続される。この画像出力装置50は、たとえば画像読取部(画像入力装置70)にて得られた画像信号により表される画像を、電子写真式、感熱式、熱転写式、インクジェット式、あるいは同様な従来の画像形成処理を利用して、普通紙や感熱紙上に可視画像を形成する(印刷する)。
【0160】
このため、画像形成部(画像出力装置50)は、たとえばイエローY,マゼンタM,シアンC,ブラックKの2値化信号などの印刷出力用データを生成する画像処理部52と、画像評価装置10をデジタル印刷システムとして稼働させるためのラスタ出力スキャンベースのプリントエンジン54を備える。
【0161】
このような構成において、CPU912は、システムバス991を介してシステム全体の制御を行なう。ROM913は、CPU912の制御プログラムなどを格納する。RAM915は、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納する。また、RAM915は、所定のアプリケーションプログラムによって取得した電子ドキュメント(文字データのみに限らず画像データを含んでよい)や自装置に備えられている画像読取部(画像入力装置70)で取得した画像データ、さらには外部から取得した電子データなどを一時的に格納する領域を含んでいる。
【0162】
そして、たとえば画像評価値算出処理をコンピュータに実行させるプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体を通じて配布される。あるいは、このプログラムは、CD−ROMではなくFDに格納されてもよい。また、MOドライブを設け、MOに前記プログラムを格納してもよく、またフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、その他の記録媒体にプログラムを格納してもよい。さらに、他のサーバなどからインターネットなどのネットワーク9を経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
【0163】
なお、プログラムを提供するための記録媒体としては、FDやCD−ROMなどの他にも、DVDなどの光学記録媒体、MDなどの磁気記録媒体、PDなどの光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアカードなどの半導体メモリを用いることができる。記録媒体の一例としてのFDやCD−ROMなどには、画像評価装置10における画像評価値算出処理機能の一部または全ての機能を格納することができる。
【0164】
また、ハードディスク装置は、制御プログラムによる各種処理のためのデータを格納したり、画像読取部(画像入力装置70)で取得した画像データや外部から取得した印刷データなどを大量に一時的に格納したりする領域を含んでいる。また、ハードディスク装置、FDドライブ、あるいはCD−ROMドライブは、たとえば、CPU912にコンテンツ取得やアドレス取得あるいはアドレス設定などの処理をソフトウェアにて実行させるためのプログラムデータを登録するなどのために利用される。
【0165】
なお、画像評価装置10の画像評価値算出処理に関わる各機能部分の全ての処理をソフトウェアで行なうのではなく、これら機能部分の一部を専用のハードウェアにて行なう処理回路908を設けてもよい。この場合、図示するように、色信号変換部16に相当する色信号変換部984や画質要素評価値算出部20(その内部の各機能部の任意のもの)に相当する画質要素評価値算出部986などを個別に設けてもよい。
【0166】
ソフトウェアで行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、その処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。これに対して、ハードウェア処理回路で行なうことで、高速化を図ったアクセラレータシステムを構築することができるようになる。アクセラレータシステムは、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを算出することができる。
【0167】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0168】
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0169】
たとえば、上記実施形態の具体的な仕組みとしては、画質要素として、すじ欠陥に注目して説明したが、これに限らず、粒状性や鮮鋭性など、その他の空間周波数と関わりを持つ画質要素についても、注目する画質と関わりを持つ特徴量に対しての背景ノイズの補正に使用される補正成分を、注目する空間周波数に対する重み付けを考慮して取得するという仕組みを同様に適用することができる。
【0170】
たとえば、粒状性に関して言えば、注目する粒状性と同程度の空間周波数帯域の成分が背景ノイズとして周囲に存在すると、注目する空間周波数の粒状性がそれに紛れてしまうので、同程度の空間周波数帯域の背景ノイズが大きい画像よりも、同程度の空間周波数帯域の背景ノイズが小さい画像の方が、視感度的には、注目する空間周波数の粒状性の強さが高くなる。
【0171】
また、鮮鋭性に関して言えば、注目する鮮鋭性と同程度の空間周波数帯域の成分が背景ノイズとして周囲に存在すると、注目する空間周波数の鮮鋭性がそれに紛れてしまうので、同程度の空間周波数帯域の背景ノイズが大きい画像よりも、同程度の空間周波数帯域の背景ノイズが小さい画像の方が、視感度的には、注目する空間周波数の鮮鋭性の強さが高くなる。
【0172】
こういった場合に、注目する空間周波数に対する重み付けを考慮して補正成分を求め、注目する画像要素の空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量に対して前記補正成分を使って補正を加えるようにすれば、注目している空間周波数の画質要因から背景ノイズの影響を的確に抑制でき、結果として、粒状性や鮮鋭性などの空間周波数と関係した画質を評価するための評価値を、視感と対応が取れるようにして求めることができるようになる。
【0173】
なお、すじ欠陥と、それ以外の空間周波数と関連した画質(粒状性や鮮鋭性)とを比べた場合、すじ欠陥は装置固有の技術に依存して発生した画像欠陥の1つであり、すじ欠陥と特定の固有技術の因果関係が比較的分かっているため、画像内の一部のすじに着目して評価することが多いので、特に、すじ欠陥の評価値を求めるに当たって、上記実施形態の仕組みを適用することで得られる効果が高い。
【0174】
また、上記実施形態ではカラープリンタなどの画像出力装置から出力された画像の評価方法を例に説明したが、カラープリンタだけではなく、ディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタなどのその他の画像出力装置より出力されたカラー画像の画質を評価する場合にも、表示面をテレビカメラで撮像するなどして画像データを取得するようにすることで、上記実施形態で述べた仕組みが同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明に係る画像評価装置の第1実施形態を備えた画像評価システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】色信号変換部の概略構成を説明するブロック図である。
【図3】本実施形態で取り扱う被評価用画像に存在するすじ欠陥の一例を示す図である。
【図4】1次元化処理部で得られた明度プロファイルの一例を示す図である。
【図5】平均線差分算出部で得られた明度差分プロファイルの一例を示す図である。
【図6】すじ特徴量算出部の概略構成を説明するブロック図である。
【図7】空間周波数帯域分割部の概略構成を説明するブロック図である。
【図8】帯域別明度差分プロファイルの一例を示す図(その1)である。
【図9】帯域別明度差分プロファイルの一例を示す図(その2)である。
【図10】すじ補正量算出部の概略構成を説明するブロック図である。
【図11】すじ評価値算出部の概略構成を説明するブロック図である。
【図12】第1実施形態の画像評価装置により2種類の画像A,Bのすじ欠陥についてすじ評価値を算出した結果を説明する図である。
【図13】本発明に係る画像評価装置の第2実施形態を備えた画像評価システムの概略構成を示すブロック図である。
【図14】視覚空間周波数特性補正部の概略構成を説明するブロック図である。
【図15】視覚空間周波数特性補正部にて求めた明度差分プロファイルデータの一例を示す図である。
【図16】パーソナルコンピュータなどの電子計算機を利用して画像評価装置をソフトウェア的に実現する場合のハードウェア構成の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0176】
1…画像評価システム、10…画像評価装置、11out …出力インタフェース部、11in…入力インタフェース部、12…原画像記憶部、14…入力画像記憶部、16…色信号変換部、20…画質要素評価値算出部、22…特徴量取得部、24…補正量取得部、26…評価値取得部、50…画像出力装置、70…画像入力装置、164…入力画像データ色変換部、210…前処理部、212…1次元化処理部、214…平均線差分算出部、216…視覚空間周波数特性補正部、270…すじ特徴量算出部、280…すじ補正量取得部、284…すじ特徴量算出部、286…空間周波数帯域分割部、288…すじ補正量算出部、290…すじ評価値算出部、402…離散フーリエ変換部、404…視覚特性フィルタ乗算部、406…逆離散フーリエ変換部、412…すじ位置検出部、414…すじ強度算出部、422…離散フーリエ変換部、424…帯域フィルタ乗算部、426…逆離散フーリエ変換部、432…標準偏差算出部、434…すじ空間周波数帯域設定部、436…重み係数設定部、438…重み付け演算部、442…個別すじ評価値算出部、444…総合すじ評価値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像における空間周波数と関係した画質を評価する画像評価方法であって、
入力画像データに基づいて注目する画像要素の前記空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量を取得し、
入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開し、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて前記注目する画像要素に対しての背景成分を抽出し、
前記特徴量と前記背景成分とに基づいて前記注目する画像要素の画質を評価するための評価値を求める
ことを特徴とする画像評価方法。
【請求項2】
注目する空間周波数帯域成分ほど重付けが高くなるようにして前記背景成分を抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項3】
画像における空間周波数と関係した画質を評価する画像評価装置であって、
入力画像データに基づいて注目する画像要素の前記空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量を取得する特徴量取得部と、
入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開し、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて前記注目する画像要素に対しての背景成分を抽出し、この抽出した背景成分を前記特徴量取得部が取得した特徴量に対する補正量とする補正量取得部と、
前記特徴量取得部により取得された特徴量および前記補正量取得部により取得された補正量に基づいて、前記注目する画像要素の画質を評価するための評価値を取得する評価値取得部と
を備えたことを特徴とする画像評価装置。
【請求項4】
前記特徴量取得部は、すじ欠陥の強さと関わりを持つすじ特徴量を算出するすじ特徴量算出部を有し、
前記評価値取得部は、前記すじ欠陥の強さに関するすじ評価値を算出するすじ評価値算出部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像評価装置。
【請求項5】
前記補正量取得部は、
入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に分割する空間周波数帯域分割部と、
前記空間周波数帯域分割部にて周波数展開された複数の空間周波数帯域成分に基づいて前記補正量を算出する補正量算出部と
ことを特徴とする請求項3に記載の画像評価装置。
【請求項6】
前記空間周波数帯域分割部は、
画像に対して離散フーリエ変換を行なう離散フーリエ変換部と、
前記離散フーリエ変換部により得られた空間周波数成分に帯域フィルタを乗算する帯域フィルタ乗算部と、
前記帯域フィルタ乗算部にて帯域フィルタを乗算して得られた複数の帯域の空間周波数成分に対して逆離散フーリエ変換を行なう逆離散フーリエ変換部と
を有していることを特徴とする請求項5に記載の画像評価装置。
【請求項7】
前記補正量算出部は、前記特徴量取得部が取得した特徴量における注目する空間周波数帯域を設定する注目空間周波数帯域設定部と、
前記特徴量取得部が取得する特徴量の強さの影響を排除しつつ、各空間周波数帯域成分の特徴量を取得する帯域特徴量取得部と、
前記注目空間周波数帯域設定部が設定した前記注目する空間周波数帯域に基づいて、前記帯域特徴量取得部により取得される各空間周波数帯域成分の特徴量に対する重み係数を設定する重み係数設定部と、
前記帯域特徴量取得部により取得される各空間周波数帯域成分に対して前記重み係数設定部により設定された重み係数を用いて重み付け演算を行なって前記補正量を算出する重み付け演算部と
を有していることを特徴とする請求項5に記載の画像評価装置。
【請求項8】
前記帯域特徴量取得部は、空間周波数帯域成分の標準偏差を前記空間周波数帯域成分の特徴量として取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像評価装置。
【請求項9】
前記重み係数設定部は、前記注目空間周波数帯域設定部が設定した前記注目する空間周波数帯域の成分ほど重付けが高くなるように各重み係数を設定する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像評価装置。
【請求項10】
前記重み付け演算部は、前記帯域特徴量取得部により取得される各空間周波数帯域成分に対して前記重み係数設定部により設定された重み係数を掛けて得られる各重付き周波数帯域成分の線形和によって前記補正量を算出する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像評価装置。
【請求項11】
入力画像データに対して視覚系の空間周波数特性に応じた補正を施す視覚空間周波数特性補正部をさらに備え、
前記特徴量取得部は、前記視覚空間周波数特性補正部により前記補正が施された画像データを使用して前記特徴量を取得し、
前記補正量取得部は、前記視覚空間周波数特性補正部により前記補正が施された画像データを使用して前記補正量を取得する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像評価装置。
【請求項12】
画像における空間周波数と関係した画質を評価する画像評価処理をコンピュータを用いて行なうためのプログラムであって、
入力画像データに基づいて注目する画像要素の前記空間周波数と関係した画質と関わりを持つ特徴量を取得する特徴量取得部と、
入力画像データを複数の空間周波数帯域成分に周波数展開し、この周波数展開した各空間周波数帯域成分に基づいて前記注目する画像要素に対しての背景成分を抽出し、この抽出した背景成分を前記特徴量取得部が取得した特徴量に対する補正量とする補正量取得部と、
前記特徴量取得部により取得された特徴量および前記補正量取得部により取得された補正量に基づいて、前記注目する画像要素の画質を評価するための評価値を取得する評価値取得部と
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−34648(P2007−34648A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216655(P2005−216655)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】