説明

画像読み取り装置

【課題】S/Nに優れた蛍光信号を得ることが可能なバイオチップ等の画像読み取り装置を提供する。
【解決手段】レーザー光2を発する励起光源1と、レーザー光が照射されるサンプルを載置するステージと、レーザー光が照射されることによって、サンプルが発した蛍光を光電的に検出する光検出手段13と、励起光源から発せられたレーザー光をステージに載置したサンプル上に集光する第1の集光手段5と、サンプルから発せられた蛍光を集光して、光検出手段に導く第2の集光手段11とを備えた画像読み取り装置であって、第1の集光手段5および第2の集光手段11は、第1の集光手段の光軸と第2の集光手段の光軸とが異なる位置となるように配置されている画像読み取り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップ等の画像読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にバイオチップの画像読み取り装置は、励起光源からの光ビーム(励起光)またはバイオチップを1次元的または2次元的に走査してチップ上の蛍光標識された検体からの蛍光を検出する。この蛍光は非常に微弱であることから効率よく検出すること、さらにはノイズ成分である励起光の波長成分を十分に除去することが必要である。
【0003】
この蛍光と励起光とを分離する方法としては、例えば特許文献1に示すように、微小ミラーにより励起光のみを反射させる方法がある。この方法を、図10を用いて概説する。
【0004】
励起光源1から発せられたレーザー光2はその微小ミラー18でバイオチップ6側へ反射され、集光レンズ15にてバイオチップ6上へ集光される。バイオチップ6上に集光されたレーザー光のほとんどは正反射され、元の光路を戻り、再度微小ミラー18で反射され、励起光源1側へ戻る。すなわち、実質的に光検出手段13へは向かわない。一方、バイオチップ6上で発せられた蛍光9は同じく集光レンズ15で集光される。このとき、蛍光は、レーザー光と異なりほぼ全方位に発光するため、集光レンズの開口数で決まる領域の光が集光され、レーザー光より大きい径で出光される。そして、集光レンズ15から出光された蛍光9は、微小ミラー18の面積分だけ励起光源1側へ反射されてロスとなるが、それ以外は微小ミラー18を越えて集光レンズ11に導かれ、光検出手段13で受光される。このように、微少ミラーを用いる方法によれば、蛍光9の波長に対して微小ミラー18以外にロスを生じる面がないため、効率よく蛍光9を光検出手段13へ導くことができるとされている。
【0005】
しかしながら、微少ミラーを用いる場合は、バイオチップ6上へ集光されたレーザー光2の光路とバイオチップ6から発せられ集光される蛍光9の光路とが一部重複するため、レーザー光と蛍光とを十分に分離することが難しい。すなわち、バイオチップ6上へ集光されたレーザー光2の内、その表面で鏡面反射される正反射成分は前記微小ミラーで励起光源側へ反射されるが、チップ表面で散乱や拡散反射される成分については、集光レンズ15でコリメートされ、蛍光9と同じ光路を伝搬することになる。そして、その散乱や拡散反射された成分のビーム径は微小ミラーの大きさを超えるため、それがノイズ成分として光検出手段に検出される可能性があり、S/Nが低下する等の課題があった。
【0006】
また、光路内にダイクロイックミラーやマルチクロイックミラーを配置し、レーザー光の波長以下の光を反射させ、当該波長を超える光を透過させることで、蛍光とレーザー光とを分離する方法も知られている。しかしながら、ダイクロイックミラーやマルチクロイックミラーの場合、レーザー光の波長に対して高反射率であるものの若干は透過してしまうため、強度の強い正反射光がどうしても通り抜け大きなノイズ成分となる。
【特許文献1】特表2002−543370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バイオチップの画像読み取り等において、検出信号のS/Nを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、以下のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)レーザー光を発する励起光源と、前記レーザー光が照射されるサンプルを載置するステージと、前記レーザー光が照射されることによって前記サンプルが発した蛍光を光電的に検出する光検出手段と、前記励起光源から発せられたレーザー光を前記ステージに載置した前記サンプル上に集光する第1の集光手段と、前記サンプルから発せられた蛍光を集光して前記光検出手段に導く第2の集光手段とを備えた画像読み取り装置であって、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段は、該第1の集光手段の光軸と該第2の集光手段の光軸とが異なる位置となるように配置されてなることを特徴とする画像読み取り装置。
(2)前記第1の集光手段と前記第2の集光手段がレンズであって、前記第1の集光手段の光軸と前記第2の集光手段の光軸とで形成される角θが次の関係式を満足することを特徴とする、前記(1)に記載の画像読み取り装置。
【0009】
θ+φ−tan−1(D/2f)>|φ±sin−1(NA2)|
θ+φ+tan−1(D/2f)<90
但し、NA2:第2の集光手段の開口数、
D :第1の集光手段に入射するレーザー光の直径、
f :第1の集光手段の焦点距離
φ :第2の集光手段の光軸とサンプル面に垂直な線とのなす角
(符号は第1の集光手段の光軸と同じ象限側がプラス)
±sin−1の符号はφの符号に準ずる
(3)前記レーザー光の、前記第1の集光手段への入射形状は、前記第1の集光手段の光軸とサンプル面に垂直な線とを含む平面において、前記第1の集光手段の光軸と直交する方向の長さが短い楕円形であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の画像読み取り装置。
(4)前記第1の集光手段に入射するレーザー光の強度パターンが、前記楕円形の短軸方向において分布を有していることを特徴とする、前記(3)に記載の画像読み取り装置。
(5)前記蛍光の光路に関し、前記第2の集光レンズよりも下流側でかつ前記光検出手段よりも上流側に、前記レーザー光の波長以下の波長を有する光を遮蔽する励起光カットフィルターを備えてなることを特徴とする、前記(1)〜(4)に記載の画像読み取り装置。
(6)前記蛍光の光路に関し前記励起光カットフィルターよりも下流側でかつ前記光検出手段よりも上流側に、前記励起光カットフィルターを透過した前記蛍光を集光する第3の集光手段と前記第3の集光手段の焦点距離で決まる焦点位置にピンホールと有する板状部材とを有し、前記第3の集光手段が前記第2の集光手段と共焦点系を構成することを特徴とする、前記(5)に記載の画像読み取り装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバイオチップの画像読み取り装置では、励起光源からのレーザー光が第1の集光手段によってバイオチップ上へ集光され、前記レーザー光の励起によって発せられた蛍光が第2の集光手段によって集光されるが、このとき、第1の集光手段の光軸と第2の集光手段の光軸とが異なっている、すなわち、第1の集光手段の光軸が第2の集光手段の光軸に対してθの傾きを持って設置されている。これによって、前記レーザー光の内、バイオチップ上で鏡面反射する正反射光は、前記第2の集光手段の光軸に対して一定の角度で伝搬するため、第2の集光手段には入射しない。これに対して、レーザー光による励起によって発せられた蛍光は全方位に拡がるため、前記蛍光の第2の集光手段の開口数で決まる立体角内の光が集光されることになる。さらに、バイオチップ上で散乱・拡散反射されるレーザー光が微弱ながらも存在するが、これも、前記正反射光の光軸に沿った指向性をもって拡がるため、第1の集光手段とは光軸が異なる第2の集光手段にはほとんど入射せず、蛍光光路へのレーザー光の入射を極力低減できる。したがって、高S/N比での蛍光の検出が可能となり、優れた画像読み取りが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るバイオチップの画像読み取り装置及び方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、バイオチップ6の画像読み取り装置の概略構成を示す平面図である。この画像読み取り装置は、レーザー光2を発する励起光源1と、レーザー光2が照射されるバイオチップ6を載置するステージ7と、レーザー光2が照射されることによってバイオチップ6が発した蛍光を光電的に検出する光検出手段13と、励起光源から発せられたレーザー光をステージに載置したサンプル上に集光する集光レンズ5(第1の集光手段)と、サンプルから発せられた蛍光を集光して光検出手段13に導く集光レンズ8(第2の集光手段)とを備えている。そして、集光レンズ5と集光レンズ8は、ステージに対してレーザー光の照射面側に、互いに光軸が一致しないような位置に配置されている。具体的には、集光レンズ5が、励起光源1から発せられたレーザー光をステージ7上のバイオチップに対して斜め方向から入射するような位置に配置され、集光レンズ8が、バイオチップ6の真正面に対向するように配置されている。すなわち、図2に示すように、集光レンズ8が前記バイオチップ6の照射面に対して垂直な光軸をもち、集光レンズ5の光軸が該集光レンズ8の光軸に対してθの傾きを有するように構成されている。
【0013】
また、集光レンズ8と光検出手段13の間、すなわちバイオチップ6から発せられる蛍光の光路に関し、第2の集光手段である集光レンズ8よりも下流側でかつ光検出手段13よりも上流側には、レーザー光の波長以下の波長を有する光を遮蔽する励起光カットフィルター10が設けられ、さらにこの励起光カットフィルター10よりも下流側でかつ光検出手段13よりも上流側には、励起光カットフィルター10を透過した蛍光を集光する集光レンズ11(第3の集光手段)と、ピンホールを有する板状部材12とが設けられている。なお、ピンホールは、集光レンズ11の焦点位置に配置されている。
【0014】
ここで、励起光源1には、バイオチップ6上に配置される検体に含有された蛍光色素を励起するレーザー光を発するものであればよく、用いられる前記蛍光色素によって、それに適した発振波長をもつ光源を選択することができる。
【0015】
励起光源1としては波長選択性がよくかつ指向性に優れたレーザー光源が特に適しており、固体レーザーや半導体レーザー、ガスレーザー、レーザーダイオードなどを例示できるが、例えばハロゲンランプやキセノンランプ、水銀ランプなど広帯域に発光波長をもつ光源から狭帯域フィルターを通して単一波長に近づけた光を用いても良いし、LEDを用いても良く、目的とする波長とパワーが得られれば限定されるものではない。また励起光2のビームサイズは必要とする集光サイズに応じて、励起光源から出力されるビームサイズのままでも良いし、ビームエキスパンダーを用いて拡大してもよい。さらにビーム品質を向上させるため、集光レンズ−ピンホール−集光レンズで構成された空間フィルターを挿入してもよい。
【0016】
検体に含有される蛍光色素としてはCy3、Cy5が用いられることが多く、その場合には例えば発振波長が約532nm、約635nmの半導体レーザー励起固体レーザー光や半導体レーザー光が用いられることが多いが、吸収波長帯が広いため、その波長内であれば別の発振波長をもつ光源を使うこともできる。
【0017】
また、検体には1種類の蛍光色素を用いる場合もあれば、複数の蛍光色素を用いる場合もあることから、用いる蛍光色素に応じて複数の光源を同時に用いることもできる。
【0018】
第1の集光手段としての集光レンズ5は、励起光源1からのレーザー光をバイオチップ6上に集光するものであって、目的とする集光サイズにレーザー光を絞れるものであれば特に限定されるものではない。光学系に応じて平凸レンズや両凸レンズなどの単レンズを用いても良いし、収差の少ない非球面レンズを用いても良い。また励起光に複数の波長の光を用いる場合には、色収差が補正されたアクロマティックレンズを用いることもできる。また顕微鏡の対物レンズを用いても良い。さらに、要求を満たすものであれば第1の集光手段として曲面ミラーを用い、反射で集光することもできる。
【0019】
第2の集光手段としての集光レンズ8は、バイオチップ上で発せられた蛍光を集光するものであって、前記第1の集光手段と同様に単レンズの平凸レンズや両凸レンズ、または非球面レンズ、アクロマティックレンズ、顕微鏡の対物レンズや曲面ミラーなどを用いることができる。
【0020】
なお、前記集光レンズ5や集光レンズ8で用いるレンズ表面にはレーザー光2や蛍光8の表面反射ロスを低減するARコートを施しても良い。
【0021】
励起光カットフィルター10は、集光レンズ8で集光された蛍光9を透過させつつ、バイオチップ6で散乱や拡散反射して伝搬してきた微弱なレーザー光をカットするものであって、例えば、レーザー光を光検出手段13での検出限界以下にまで除去し、検出信号のS/N比を高めるためのものである。かかるフィルターとしては、レーザー光の波長以下の波長を有する光を遮蔽するシャープカットフィルターや広帯域バンドパスフィルター、より好ましくは蛍光9の波長のみを選択的に透過させる干渉フィルターなどの狭帯域バンドパスフィルターを用いるのが良い。また複数の波長の励起光を用いる場合、それぞれの蛍光の波長に対応する狭帯域フィルターを準備し、使用する波長に応じて切り換えれば良い。勿論、検出する波長の数だけ光検出手段を用意し、ダイクロイックミラーなどでそれぞれ専用の光路を設けて、それぞれに対応する狭帯域フィルターを設置し、同時検出するような構成もできる。
【0022】
第3の集光手段としての集光レンズ11は、前記励起光カットフィルター10によって選択された蛍光9を光検出手段に集光するものであって、一般的な平凸レンズ、両凸レンズ、または非球面レンズなどの単レンズや、複数の波長に対して色収差が補正されたアクロマティックレンズなどを用いることができる。
【0023】
そして、集光レンズ11は、より効率的に蛍光を検出するために前記集光レンズ8と共焦点系を構成するのが好ましく、同じ焦点距離のものを用いるのが良いが、特に限定されるものではなく、要求性能を満たす焦点距離のものを選択できる。
【0024】
ピンホールを有する板状部材12は、前記共焦点系において、集光レンズ8の焦点から外れた位置から入射してくる外乱光を除去するものである。集光レンズ11の焦点距離や蛍光9の入射口径などによって決まる集光点でのスポットサイズと同程度の径のピンホールを有するものであれば特に限定されるものではなく、求める光学性能に応じて任意に選択できる。なお、ピンホールの変わりに同等の口径をもつ光ファイバーを介して蛍光を光検出手段13へ導光してもよい。
【0025】
ここで、サンプル6は、バイオチップであって、図9に示すように基板上に柱状の凹凸を複数有し、その凸部の上面に選択適合性物質が固定化されていることが多いが、このようなバイオチップを上記実施形態のような共焦点系で構成された光学系で処理すると、S/N比をより効果的に高めることができ、好適である。すなわち、蛍光の光路に関し励起光カットフィルターよりも下流側でかつ光検出手段よりも上流側に、励起光カットフィルターを透過した蛍光を集光する集光レンズ11と、ピンホールを有する板状部材12とを設け、さらに集光レンズ11と集光レンズ8とで共焦点系を構成すると、集光レンズ8の焦点位置以外からの光は集光レンズ11とピンホールを有する板状部材12によって除去される。言い換えればピントのあった場所の光しか光検出手段13に入射しない。一方、基板上に複数の凹凸を有している上記バイオチップは、その凹凸構造の凸部の上面に蛍光標識された検体が配置されており、集光レンズ8の焦点も前記凸部の上面に調整されることになる。そのため、バイオチップ6は前記移動手段により1次元的又は2次元的にスキャンされるが、凹部の底面に間違って配置された検体があっても、その部分にはピントが合っていないので、仮にレーザー光2によって励起されて蛍光を発したとしても、光検出手段に受光されることがない。同様に凹部で散乱や拡散反射されたレーザー光2についてもピントがあっていないため、前記光検出手段には集光されない。つまり凹凸構造が故に始めから凸部以外の情報が除去されるようになるのでS/N比のよい画像の読み取りが可能となる。
【0026】
したがって、本発明の装置によれば、表面に柱上の凹凸を複数有するバイオチップが好ましく処理される。かかるバイオチップの凸部の数は任意で選ぶことが出来るが、最も高い凸部の高さと最も低い凸部の高さの差が50μm以下であることが好ましい。また前記バイオチップの材質は選択適合性物質の固定化が行えるものであれば特に限定されるものではなく、熱可塑性共重合体で構成されたものであっても良いし、ガラスでも良いが、カーボンブラックが混入されているのが好ましい。
【0027】
光検出手段13は、集光された蛍光を検出し、光電変換するものであればよい。好ましくは増幅率が高く高感度な光電子増倍管を用いるのがよいが、信号強度に応じてフォトダイオードやアバランシェフォトダホトダイオードを用いても良いし、2次元光検出手段としてCCDカメラを用いても良いし、より高い増幅率を得るためにマルチチャンネルプレートを併せて用いても良い。
【0028】
光検出手段13にはデータ処理部14が接続されているが、かかるデータ処理部14は、光検出手段13で得られた蛍光の信号を元に画像化を行うものであって、パソコンなどの演算装置と処理を行うソフトウェアから構成される。また、光検出手段13で得られた電気信号をフィルタリングや増幅して画像化に適した信号に加工する信号処理回路を含んでも良い。
【0029】
次に上記装置によるバイオチップの画像読み取り方法を以下に説明する。
【0030】
図1に示す上記装置において、励起光源1から出射したレーザー光2は、集光レンズ5によってバイオチップ上6に集光され、前記レーザー光2の照射によって発せられた蛍光9が集光レンズ8によって集光される。このとき、図2に示すように、集光レンズ8はバイオチップ6の照射面に対して垂直な光軸をもち、レーザー光2の光軸つまり集光レンズ5の光軸はバイオチップ6の照射面の垂線に対してΘの傾きを持っている。そのため、バイオチップ上6に集光されたレーザー光2のほとんどは鏡面反射され、−Θ方向へ伝搬していく。したがって、レーザー光が集光レンズ8で集光されることはない。また、レーザー光2の一部は、バイオチップ上で散乱や拡散反射されるが、この散乱や拡散反射の成分16は、図4に示すように鏡面反射の光軸に沿って指向性を持って、すなわち集光レンズ8の光軸に対して傾きをもって伝搬していくため、集光レンズ8にはほとんど入射しない。一方、レーザー光が照射されることによってバイオチップ6は図5に示すように蛍光17を発するが、この蛍光17は全ての方向に拡がる。そのため、集光レンズ8で集光し、コリメートすることで蛍光9として伝搬させることができる。集光レンズ8によってコリメートされた蛍光9は集光レンズ11によって光検出手段13へ入射し、光電変換される。変換された電気信号はデータ処理部14へ送られ、画像と形成される。
【0031】
なお、前述した従来技術のようにレーザー光2の光路とバイオチップ6から発せられ集光される蛍光9の光路とが重複する場合には、図3に示すように、レーザー光2の散乱や拡散反射成分16が鏡面反射の光軸に沿って指向性を持って拡がるため、そのほとんどが蛍光9とともに集光されてしまう。
【0032】
上記実施形態において、集光レンズ8の光軸は、図2に示すようにバイオチップ6のレーザー光2の照射面に対してほぼ垂直な方向にあって、前記集光レンズ5の光軸が、集光レンズ8の光軸に対して、その焦点を基点してθの傾きを持っているが、この傾きθは、レーザ光の正反射光が第2の集光手段に入射しないように以下の条件下に収めることが好ましい。
【0033】
θ+φ−tan−1(D/2f)>|φ±sin−1(NA2)|
θ+φ+tan−1(D/2f)<90
但し、NA2:集光レンズ8の開口数、
D :集光レンズ5に入射するレーザー光の直径、
f :集光レンズ5の焦点距離
φ :集光レンズ8の光軸とサンプル面に垂直な線とのなす角
(符号は集光レンズ5と同じ象限側がプラス)
±sin−1の符号はφの符号に準ずる
このように構成することで励起光であるレーザー光2の正反射光が集光レンズ8へ入射することをより確実に抑制することができる。
【0034】
さらに
(θ+φ−tan−1(D/2f))− |φ±sin−1(NA2)|
の値が大きければ大きいほど、レーザー光2と蛍光9の角度が大きく、両者が違いに離れて行くことになるため、バイオチップ上6で散乱や拡散反射されるレーザー光2の集光レンズ8への入射、つまり蛍光の光路への入射を極力抑制できるようになる。
【0035】
なお、集光レンズ8の光軸が、バイオチップ6のレーザー光照射面に対して垂直でない場合であっても、同様の効果を奏するためには上記関係式を満足するように設定することが好ましい。
【0036】
また、図1に示すように、励起光源1から集光レンズ5の間に、レーザー光2に対するビームパターン成形手段3や光量分布補正手段4を設けることも好ましい。すなわち、サンプル面に垂直な線に対してΘの角度を持って集光されたレーザー光2はバイオチップ上6では楕円形状となるため、予め焦点で円形になるようにビームパターン成形手段3を用いて楕円形状として集光レンズ5に入射させるのが好ましい。楕円率は傾きΘに併せて設定すればよいが、前記レーザー光の、集光レンズへの入射形状は、図6に示すように、集光レンズ5の光軸5Aとサンプル面に垂直な線とを含む平面において、前記集光レンズ5の光軸と直交する方向の長さが短い楕円とすることが好ましい。円形のレーザー光2を楕円にする方法としては、図7に示すように板に必要とされる楕円形状の穴をあけたものを光路に挿入しても良いし、回折光学素子を用いても良い。またシリンドリカルレンズを組み合わせても良く、所望の形状が得られる方法であれば特に限定されるものではない。
【0037】
また、レーザー光2はΘの角度で集光されるため、バイオチップ上6でのビームパターンは図6で説明するとX軸方向に強度分布をもつ。そこでこれを均一化するために図8に示すようにある方向に透過率分布を持たせた光量分布補正板3を挿入することも好ましい。透過率分布は焦点面の強度分布に併せて設定すれば良く、例えば透過率を順次変えたものでも良く、拡散板として粗さを変えたものでも良く、所望の透過率分布が実現できるものであれば特に限定されるものではない。
【0038】
そして、上記のような態様において、ステージ7を2次元的に移動可能としておけば、当該ステージ7をスキャンすることでバイオチップ6の2次元画像を得ることが出来る。ステージ7を移動可能とする方法としては、特に限定されるものではなく、例えばXY軸ステージを採用することなどが好ましい。さらに集光レンズ5や集光レンズ8の焦点位置を調整しやすくするために、Z軸を持たせたXYZ軸ステージを用いることもできる。さらにいえば、バイオチップ6を固定して、集光レンズ5と集光レンズ8をXY軸またはZ軸方向にスキャンしても良い。
【0039】
また、本発明においては、上記実施形態における光検出手段13と励起光源1との位置を反対にするとともに、それぞれに関連するものの位置を入れ替えたりしてもよく、集光レンズ8で集光された後の蛍光をさらに反射、屈曲させてから光検出手段に導いてもよい。さらに、バイオチップがレーザー光2を透過する透明基板である場合には、集光レンズ8とバイオチップ6を挟んで対向する面側からレーザー光を照射することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、バイオチップの画像読み取り装置に限らず、マイクロプレートの測定装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】励起光の集光レンズの光軸と蛍光の集光レンズの光軸の関係を表す概略図である。
【図3】従来の光学系での励起光の散乱・拡散反射成分の拡がりを説明する拡大図である。
【図4】本発明における励起光の散乱・拡散反射成分の拡がりを説明する拡大図である。
【図5】本発明における蛍光の拡がりを示す拡大図である。
【図6】本発明における励起光の集光レンズへの好ましい入射形状を示す概略図である。
【図7】本発明における励起光のパターン成形マスクの一例を示す概略図である。
【図8】本発明における励起光の光量分布補正板の一例を示す概略図である。
【図9】バイオチップの形態を示す概略構成図である。
【図10】従来技術の実施の形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1 励起光源
2 レーザー光(励起光)
3 ビームパターン成形手段
4 光量分布補正板
5 集光レンズ
6 バイオチップ
7 ステージ
8 集光レンズ
9 蛍光
10 励起光カットフィルター
11 集光レンズ
12 ピンホール
13 光検出手段
14 データ処理部
15 投受光レンズ(集光レンズ)
16 励起光の散乱や拡散反射の成分
17 蛍光
18 微小ミラー
19 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発する励起光源と、前記レーザー光が照射されるサンプルを載置するステージと、前記レーザー光が照射されることによって前記サンプルが発した蛍光を光電的に検出する光検出手段と、前記励起光源から発せられたレーザー光を前記ステージに載置した前記サンプル上に集光する第1の集光手段と、前記サンプルから発せられた蛍光を集光して前記光検出手段に導く第2の集光手段とを備えた画像読み取り装置であって、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段は、該第1の集光手段の光軸と該第2の集光手段の光軸とが異なる位置となるように配置されてなることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項2】
前記第1の集光手段と前記第2の集光手段がレンズであって、前記第1の集光手段の光軸と前記第2の集光手段の光軸とで形成される角θが次の関係式を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読み取り装置。
θ+φ−tan−1(D/2f)>|φ±sin−1(NA2)|
θ+φ+tan−1(D/2f)<90
但し、NA2:第2の集光手段の開口数、
D :第1の集光手段に入射するレーザー光の直径、
f :第1の集光手段の焦点距離
φ :第2の集光手段の光軸とサンプル面に垂直な線とのなす角
(符号は第1の集光手段の光軸と同じ象限側がプラス)
±sin−1の符号はφの符号に準ずる
【請求項3】
前記レーザー光の、前記第1の集光手段への入射形状は、前記第1の集光手段の光軸とサンプル面に垂直な線とを含む平面において、前記第1の集光手段の光軸と直交する方向の長さが短い楕円形であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像読み取り装置。
【請求項4】
前記第1の集光手段に入射するレーザー光の強度パターンが、前記楕円形の短軸方向において分布を有していることを特徴とする請求項3に記載の画像読み取り装置。
【請求項5】
前記蛍光の光路に関し、前記第2の集光レンズよりも下流側でかつ前記光検出手段よりも上流側に、前記レーザー光の波長以下の波長を有する光を遮蔽する励起光カットフィルターを備えてなることを特徴とする請求項1〜4に記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
前記蛍光の光路に関し前記励起光カットフィルターよりも下流側でかつ前記光検出手段よりも上流側に、前記励起光カットフィルターを透過した前記蛍光を集光する第3の集光手段と前記第3の集光手段の焦点距離で決まる焦点位置にピンホールと有する板状部材とを有し、前記第3の集光手段が前記第2の集光手段と共焦点系を構成することを特徴とする請求項5に記載の画像読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−139464(P2010−139464A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318128(P2008−318128)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】