説明

画像読み取り装置

【課題】手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる画像読み取り装置を提供することである。
【解決手段】プラテンガラス16は、本体12に設けられ、かつ、原稿Pが主面上に載置される。搬送装置15は、原稿Pを搬送する。プラテンガラス17は、本体12に設けられ、かつ、搬送装置15により搬送されている原稿Pが主面上を通過する。スライダー部18は、プラテンガラス16,17の下方において移動可能に構成されており、プラテンガラス16上の原稿P又はプラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する光源装置27を含んでいる。スライダー部18は、プラテンガラス16上の原稿Pに照射する光の分光特性と、プラテンガラス17上の原稿Pに照射する光の分光特性とを異ならせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読み取り装置に関し、特に、第1の透明板上に載置された原稿を読み取ることができ、更に、第2の透明板上を原稿を搬送させながら読み取ることができる画像読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手置き原稿読み取りとスルー原稿読み取りとを行うことができる画像読み取り装置が普及している。手置き原稿読み取りとは、プラテンガラス上に載置された原稿を読み取る動作である。スルー原稿読み取りとは、プラテンガラス上をADF(Auto Document Feeder)機構により原稿を通過させて読み取る動作である。このような画像読み取り装置には、手置き原稿読み取りのためのプラテンガラス、及び、スルー原稿読み取りのためのプラテンガラスが設けられている。
【0003】
ところで、前記画像読み取り装置は、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で色調の差が生じるという問題を有している。より詳細には、スルー原稿読み取りのためのプラテンガラスには、該プラテンガラスに汚れが付着しないように、防汚コーティングや導電コーティング等が施されている。そのため、手置き原稿読み取りのためのプラテンガラスの透過率と波長との関係(分光透過率)と、スルー原稿読み取りのためのプラテンガラスの透過率と波長との関係(分光透過率)とは異なっている。その結果、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で色調の差が生じてしまう。
【0004】
なお、従来の原稿読み取り装置としては、例えば、特許文献1に記載のカラー原稿読み取り装置が知られている。該カラー原稿読み取り装置では、CCDの色フィルタの分光感度分布ずれを補正するために、色フィルタのフィルタ部材の膜厚を変化させている。しかしながら、特許文献1には、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することに関する記載は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−136443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる画像読み取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る画像読み取り装置は、本体と、前記本体に設けられ、かつ、原稿が主面上に載置される第1の透明板と、原稿を搬送する搬送手段と、前記本体に設けられ、かつ、前記搬送手段により搬送されている原稿が主面上を通過する第2の透明板と、前記第1の透明板及び前記第2の透明板の下方において移動可能に構成されているスライダー部であって、該第1の透明板上の前記原稿又は該第2の透明板上の前記原稿に光を照射する光源装置を含んでいるスライダー部と、を備えており、前記スライダー部は、前記第1の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性と、前記第2の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性とを異ならせることができること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【図3】画像読み取り装置の光源装置の構成図である。
【図4】プラテンガラス、導電コーティングが施されたプラテンガラス、並びに、防汚コーティング及び導電コーティングが施されたプラテンガラスの分光透過率を示したグラフである。
【図5】図5(a)及び図5(c)はそれぞれ、原稿で反射しプラテンガラスを透過した光の分光特性を示したグラフである。図5(b)及び図5(d)は、LEDの分光特性を示したグラフである。図5(e)は、LEDの分光特性を示したグラフである。
【図6】第1の変形例に係る光源装置の構成図である。
【図7】第2の変形例に係る光源装置の構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る画像読み取り装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る画像読み取り装置10について図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る画像読み取り装置10の構成図である。図3は、画像読み取り装置10の光源装置27の構成図である。以下では、鉛直方向をz軸方向と定義し、スライダー部18,20の移動方向をx軸方向と定義する。そして、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
【0011】
画像読み取り装置10は、図1に示すように、本体12、原稿カバー14、搬送装置15、プラテンガラス16,17、スライダー部18,20、結像レンズ22、撮像素子24及び制御部50を備えている。
【0012】
本体12は、原稿カバー14、搬送装置15、プラテンガラス16,17、スライダー部18,20、結像レンズ22及び撮像素子24が設けられている直方体状の筐体である。プラテンガラス16は、本体12のz軸方向の正方向側に設けられている開口に取り付けられている長方形状の透明板である。原稿Pは、プラテンガラス16の主面上に、読み取り面をz軸方向の負方向側に向けた状態で載置される。プラテンガラス17は、本体12のz軸方向の正方向側に設けられている開口に取り付けられている長方形状の透明板であり、プラテンガラス16よりもx軸方向の負方向側に位置している。
【0013】
原稿カバー14は、図1に示すように、原稿P上に覆いかぶさることにより、原稿Pをプラテンガラス16に密着させる働きをする。
【0014】
搬送装置15は、原稿Pを搬送し、搬送装置15は、トレイ15a,15b及び搬送部15cを有している。原稿Pは、トレイ15a上に、読み取り面をz軸方向の正方向側に向けた状態で載置される。そして、搬送部15cは、トレイ15a上の原稿Pを、該原稿Pの読み取り面がz軸方向の負方向側を向いた状態でプラテンガラス17の主面上を通過させる。その後、原稿Pは、トレイ15b上に排出される。
【0015】
スライダー部18は、図1及び図2に示すようにプラテンガラス16,17のz軸方向の負方向側においてx軸方向に移動可能に構成されており、光源装置27及びミラー29を含んでいる。
【0016】
光源装置27は、プラテンガラス16上の原稿P(図1参照)又はプラテンガラス17上の原稿P(図2参照)に対して2方向から光を照射する。光源装置27は、図3に示すように、導光体28a,28b、LED40a,40b、基板42a,42b及び筐体(合成手段)44を有している。
【0017】
LED40a,40bは、光を照射する半導体素子である。基板42a,42bはそれぞれ、LED40a,40bを駆動するための回路を内蔵している。基板42a,42bは、図3に示すように,y軸方向に対して垂直に設けられている。このとき、基板42aは、基板42bよりもy軸方向の正方向側に位置している。LED40aは、基板42aのy軸方向の正方向側の主面に実装され、LED40bは、基板42bのy軸方向の負方向側の主面に実装されている。すなわち、LED40a,40bは、反対方向に光を照射するように配置されている。
【0018】
筐体44は、LED40a,40b及び基板42a,42bを収容する容器をなしており、かつ、内周面に鏡面が施されている。筐体44は、LED40a,40bが照射した光を内周面にて反射して、これらの光が合成された光を生成する。
【0019】
導光体28aは、y軸方向に延在している円柱状をなす透明な樹脂部材である。導光体28aのy軸方向の負方向側の端部は、筐体44に設けられている開口に取り付けられている。これにより、筐体44が生成した光は、導光体28aのy軸方向の負方向側の端部から入射する。そして、導光体28aは、その表面に形成されたプリズムにより、筐体44から出力されてくる光を原稿Pに対して照射する。導光体28aが照射した光は、原稿Pの読み取り面において拡散反射する。
【0020】
導光体28bは、y軸方向に延在している円柱状をなす透明な樹脂部材である。導光体28bは、導光体28aのx軸方向の負方向側において、導光体28aに対して平行となるように設けられている。導光体28bのy軸方向の負方向側の端部は、筐体44に設けられている開口に取り付けられている。これにより、筐体44が生成した光は、導光体28bのy軸方向の負方向側の端部から入射する。そして、導光体28bは、その表面に形成されたプリズムにより、筐体44から出力されてくる光を原稿Pに対して照射する。導光体28bが照射した光は、原稿Pの読み取り面において拡散反射する。以上のような構成により、光源装置27は、2方向から光を原稿Pに対して照射する。
【0021】
ミラー29は、図1に示すように、原稿Pにおいて反射した光をx軸方向の負方向側に反射させる。
【0022】
スライダー部20は、図1及び図2に示すようにプラテンガラス16,17のz軸方向の負方向側においてx軸方向に移動可能に構成されており、ミラー30,32を含んでいる。ミラー30は、ミラー29からの光をz軸方向の負方向側に反射させる。ミラー32は、ミラー30からの光をx軸方向の正方向側に反射させる。
【0023】
結像レンズ22は、ミラー32からの光によって得られる光学像を撮像素子24に結像させる。撮像素子24は、原稿Pで反射した光を受光する受光素子である。具体的には、撮像素子24は、y軸方向に延びる一次元状の撮像領域を有し、結像レンズ22によって結像された光学像を走査して原稿Pの像を読み取るCCDカメラ等のラインセンサである。
【0024】
制御部50は、例えば、CPUにより構成され、画像読み取り装置10の動作を制御する。
【0025】
以上のような画像読み取り装置10は、図1に示すように、プラテンガラス16上に載置された原稿を読み取る手置き原稿読み取りと、図2に示すように、プラテンガラス17上を搬送装置15により原稿Pを通過させて読み取るスルー原稿読み取りとを行うことができる。以下に、手置き原稿読み取り及びスルー原稿読み取りが行われるときのスライダー部18,20の動作について説明する。
【0026】
手置き原稿読み取りが行われるときには、原稿Pは、プラテンガラス16の主面上に載置される。そして、原稿カバー14により原稿Pがプラテンガラス16に対して押し付けられる。スライダー部18は、原稿Pが読み取られているときには、図1に示すように、プラテンガラス16に沿って、図示しないモータ、ベルト及びプーリー等の移動手段により、x軸方向の正方向側に向かって速度Vで移動させられる。
【0027】
一方、スライダー部20は、原稿Pが読み取られているときには、図1に示すように、プラテンガラス16のz軸方向の負方向側において、図示しないモータ、ベルト及びプーリー等の移動手段により、x軸方向の正方向側に向かって速度V/2で移動させられる。このように、スライダー部20をスライダー部18の半分の速度で移動させることにより、移動中における原稿Pの読み取り面と撮像素子24との間の光の経路の長さが一定に保たれている。
【0028】
また、スルー原稿読み取りが行われるときには、原稿Pは、図2に示すように、搬送装置15により搬送され、プラテンガラス17上を通過する。スライダー部18は、図2に示すように、プラテンガラス17のz軸方向の負方向側において静止している。また、スライダー部20は、スライダー部20のx軸方向の負方向側において静止している。
【0029】
ところで、画像読み取り装置10では、以下に説明するように、プラテンガラス16の分光透過率(透過率と波長との関係)とプラテンガラス17の分光透過率(透過率と波長との関係)とは異なっている。図4は、プラテンガラス、導電コーティングが施されたプラテンガラス、並びに、防汚コーティング及び導電コーティングが施されたプラテンガラスの分光透過率を示したグラフである。縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示している。
【0030】
前記の通り、手置き原稿読み取りでは、プラテンガラス16を介して原稿Pが読み取られ、スルー原稿読み取りでは、プラテンガラス17を介して原稿Pが読み取られている。そして、スルー原稿読み取りのためのプラテンガラス17には、プラテンガラス17に汚れが付着しないように、防汚コーティングや導電コーティング等が施されている。一方、手置き原稿読み取りのためのプラテンガラス16には、防汚コーティングや導電コーティング等は施されていない。そのため、プラテンガラス16の分光透過率とプラテンガラス17の分光透過率とは異なっている。具体的には、図4に示すように、防汚コーティングや導電コーティング等が施されたプラテンガラスの分光透過率は、防汚コーティングや導電コーティング等が施されていないプラテンガラスの分光透過率よりも低い。特に、350nm〜450nmの範囲の波長(青色の光の波長から緑色の光の波長までの波長)において、防汚コーティングや導電コーティング等が施されたプラテンガラスの分光透過率は、防汚コーティングや導電コーティング等が施されていないプラテンガラスの分光透過率よりも低い。このような分光透過率の差は、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で色調に差が生じる原因となる。
【0031】
そこで、画像読み取り装置10では、スライダー部18は、プラテンガラス16上の原稿Pに照射する光の分光特性と、プラテンガラス17上の原稿Pに照射する光の分光特性とを異ならせることができる。プラテンガラス17上の原稿Pに照射する光の分光特性は、プラテンガラス16上の原稿Pに照射する光の分光特性よりも、350nm〜450nmの範囲の波長において、強い強度を有している。
【0032】
本実施形態に係る画像読み取り装置10では、前記分光特性を得るために、LED40aが照射する光の分光特性とLED40bが照射する光の分光特性を異ならせている。そして、制御部50は、プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、手置き原稿読み取りの場合)には、LED40aのみに光を照射させ、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、スルー原稿読み取りの場合)には、LED40a,40bに光を照射させる。以下に、図面を参照しながら説明する。
【0033】
図5(a)及び図5(c)はそれぞれ、原稿Pで反射しプラテンガラス16,17を透過した光の分光特性を示したグラフである。図5(b)及び図5(d)は、LED40aの分光特性を示したグラフである。図5(e)は、LED40bの分光特性を示したグラフである。図5において、縦軸は光の強度を示し、横軸は波長を示している。
【0034】
プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合には、制御部50は、LED40aのみを点灯させる。この場合、図5(b)に示す分光特性を有する光が、プラテンガラス16を介して原稿Pに照射されて、原稿Pにおいて拡散反射する。そして、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス16を透過した光は、図5(a)に示す分光特性を有する。
【0035】
一方、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合には、制御部50は、LED40a,40bを点灯させる。LED40bは、図5(e)に示すように、350nm〜450nmの範囲の波長の光を照射する。そして、図5(d)及び図5(e)に示す分光特性を有する光が、プラテンガラス17を介して原稿Pに照射されて、原稿Pにおいて拡散反射する。そして、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス16を透過した光は、図5(c)に示す分光特性を有する。
【0036】
ここで、プラテンガラス17の分光透過率は、350nm〜450nmの範囲の波長において、プラテンガラス16の分光透過率よりも低い。すなわち、プラテンガラス17は、プラテンガラス16よりも、350nm〜450nmの範囲の波長の光を吸収及び反射しやすい。そこで、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合には、制御部50は、350nm〜450nmの範囲の波長の光を照射するLED40bをLED40aに加えて点灯させている。これにより、プラテンガラス17の透過時に損失する光とプラテンガラス16の透過時に損失する光との差を、LED40bが照射する光によって補うことができる。その結果、図5(a)及び図5(c)に示すように、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス16を透過した光の分光特性と、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス17を透過した光の分光特性とを近づけることが可能となる。よって、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る画像読み取り装置10では、LED40a,40bが照射した光が筐体44にて合成された後に、導光体28a,28bにより原稿Pに照射されている。そのため、導光体28a,28bが照射する光の分光特性は等しくなる。その結果、原稿Pを読み取って得られた画像に色むらが発生することが抑制される。
【0038】
なお、本実施形態に係る画像読み取り装置10において、光源装置27では、LED40a,40bが光源として用いられているが、例えば、2本の蛍光管が光源として用いられてもよい。この場合、2本の蛍光管が照射する光の分光特性が、LED40a,40bが照射する光の分光特性と同様に異なっていればよい。
【0039】
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係る光源装置27aについて図面を参照しながら説明する。図6は、第1の変形例に係る光源装置27aの構成図である。なお、光源装置27aにおいて、光源装置27と同じ構成については同じ参照符号を付してある。そこで、光源装置27aの構成について、光源装置27との相違点を中心に説明する。
【0040】
光源装置27aのLED40'a,40'bは、同じ分光特性を有する光を照射する。そして、LED40'aは、LED40'bよりも導光体28a,28bの近くに設けられている。これにより、LED40'aが照射した光の大半は、筐体44aの内周面で反射することなく、直接に導光体28a,28bに入射する。一方、LED40'bが照射した光の大半は、筐体44aの内周面で反射した後に、導光体28a,28bに入射する。
【0041】
また、筐体44aの内周面は、350nm〜450nmの範囲の波長の光を、350nm〜450nmの範囲外の波長の光よりも高い反射率で反射する。具体的には、筐体44aの内周面は、350nm〜450nmの範囲外の波長の光を吸収するコーティングが鏡面上に施されて構成されている。これにより、350nm〜450nmの範囲の波長の光は、コーティングを透過して、鏡面により反射されて、再びコーティングを透過して、導光体28a,28bへと入射する。一方、350nm〜450nmの範囲外の波長の光は、コーティングにより吸収されるので、導光体28a,28bへと殆ど入射しない。
【0042】
以上のような光源装置27aが設けられた画像読み取り装置1では、プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合には、制御部50がLED40’aのみを点灯させる。LED40’aが照射した光の大半は、筐体44aの内周面で反射することなく導光体28a,28bに直接に入射する。一方、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合には、制御部50がLED40’a,40’bを点灯させる。LED40’bが照射した光の大半は、筐体44aの内周面により反射された後に、導光体28a,28bに入射する。そのため、350nm〜450nmの範囲の波長の光が、導光体28a,28bに入射する。これにより、プラテンガラス17の透過時に損失する光とプラテンガラス16の透過時に損失する光との差を、LED40’bが照射し筐体44aが反射した光によって補うことができる。その結果、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス16を透過した光の分光特性と、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス17を透過した光の分光特性とを近づけることが可能となる。よって、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【0043】
(第2の変形例)
以下に、第2の変形例に係る光源装置27bについて図面を参照しながら説明する。図7は、第2の変形例に係る光源装置27bの構成図である。なお、光源装置27bにおいて、光源装置27,27aと同じ構成については同じ参照符号を付してある。そこで、光源装置27bの構成について、光源装置27,27aとの相違点を中心に説明する。
【0044】
光源装置27aのLED40'a,40'bは、同じ分光特性を有する光を照射する。そして、LED40'aは、LED40'bよりも導光体28a,28bの近くに設けられている。これにより、LED40'aが照射した光の大半は、筐体44aの内周面で反射することなく、直接に導光体28a,28bに入射する。一方、LED40'bが照射した光の大半は、筐体44aの内周面で反射した後に、導光体28a,28bに入射する。
【0045】
また、筐体44の内周面は、350nm〜450nmの範囲の波長の光を、350nm〜450nmの範囲外の波長の光よりも高い反射率で反射する。具体的には、筐体44の内周面であってLED40'bと対向する部分には、350nm〜450nmの範囲の波長の光を反射し、かつ、350nm〜450nmの範囲外の波長の光を透過するハーフミラーのコーティング45が施されて構成されている。これにより、350nm〜450nmの範囲の波長の光は、コーティング45により反射されて、導光体28a,28bへと入射する。一方、350nm〜450nmの範囲外の波長の光は、コーティング45を透過して筐体44により吸収されるので、導光体28a,28bへと殆ど入射しない。
【0046】
以上のような光源装置27bが設けられた画像読み取り装置10においても、光源装置27aが設けられた画像読み取り装置10と同様に、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る画像読み取り装置10aについて図面を参照しながら説明する。図8及び図9は、本発明の第2の実施形態に係る画像読み取り装置10aの構成図である。画像読み取り装置10aにおいて、画像読み取り装置10と同じ構成については、同じ参照符号を付した。そこで、以下では、画像読み取り装置10との相違点を中心に画像読み取り装置10aについて説明する。
【0048】
画像読み取り装置10aでは、図8及び図9に示すように、光源装置27cは、蛍光管41及びミラー52を有している。蛍光管41は、図8に示すように、原稿P及びミラー52に対して光を照射する。ミラー52は、蛍光管41により照射された光を反射して、プラテンガラス16上の原稿Pに対して照射する。これにより、蛍光管41及びミラー52は、プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、手置き原稿読み取りを行う場合)に、2方向から光を原稿Pに対して照射する。
【0049】
また、画像読み取り装置10aでは、図8及び図9に示すように、プラテンガラス17のz軸方向の負方向側にミラー54が設けられている。ミラー54は、図9に示すように、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、スルー原稿読み取りを行う場合)に、スライダー部18内に位置して、光源装置27cが照射した光の一部をプラテンガラス17上の原稿Pに向けて反射する反射部材である。ミラー54は、350nm〜450nmの範囲の波長の光を350nm〜450nmの範囲外の波長の光よりも高い反射率で反射する。なお、この際、図9に示すように、ミラー52は、蛍光管41が照射した光を反射しないように、z軸方向の負方向側に移動する。これにより、蛍光管41及びミラー54は、プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、手置き原稿読み取りを行う場合)に、2方向から光を原稿Pに対して照射する。
【0050】
画像読み取り装置10aでは、ミラー54は、350nm〜450nmの範囲の波長の光を350nm〜450nmの範囲外の波長の光よりも高い反射率で反射する。そのため、ミラー54が反射する光に含まれる350nm〜450nmの範囲の波長の光の割合は、ミラー52が反射する光に含まれる350nm〜450nmの範囲の波長の光の割合よりも高い。そのため、スライダー部18がプラテンガラス17上の原稿Pに照射する光に含まれる350nm〜450nmの範囲の波長の光の割合は、スライダー部18がプラテンガラス16上の原稿Pに照射する光に含まれる350nm〜450nmの範囲の波長の光の割合よりも大きくなる。これにより、プラテンガラス17の透過時に損失する350nm〜450nmの範囲の波長の光とプラテンガラス16の透過時に損失する350nm〜450nmの範囲の波長の光との差を、ミラー54が反射する光によって補うことができる。その結果、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス16を透過した光の分光特性と、原稿Pにおいて拡散反射した後、プラテンガラス17を透過した光の分光特性とを近づけることが可能となる。よって、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る画像読み取り装置10bについて図面を参照しながら説明する。図10及び図11は、本発明の第3の実施形態に係る画像読み取り装置10bの構成図である。画像読み取り装置10bにおいて、画像読み取り装置10aと同じ構成については、同じ参照符号を付した。そこで、以下では、画像読み取り装置10aとの相違点を中心に画像読み取り装置10bについて説明する。
【0052】
画像読み取り装置10bでは、光源装置27cは、ミラー52,54を有している。ミラー52,54の機能は、画像読み取り装置10aのミラー52,54と同じである。ただし、図8及び図9に示すように、ミラー52,54は、スライダー部18内において移動(より詳細には、回転)することが可能である。そのため、スライダー部18は、ミラー52,54を移動させるための移動機構(図示せず)を含んでいる。
【0053】
より詳細には、プラテンガラス16上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、手置き原稿読み取りを行う場合)には、ミラー52は、図10に示すように、蛍光管41が照射した光の一部を反射して、原稿Pに対して照射する。この際、移動機構は、ミラー54により反射された光がプラテンガラス16上の原稿Pを照射しないように、ミラー54をミラー52のz軸方向の負方向側に移動させている。
【0054】
一方、プラテンガラス17上の原稿Pに光を照射する場合(すなわち、スルー原稿読み取りを行う場合)には、ミラー54は、図11に示すように、蛍光管41が照射した光の一部を反射して、原稿Pに対して照射する。この際、移動機構は、ミラー52により反射された光がプラテンガラス16上の原稿Pを照射しないように、ミラー52をミラー54のx軸方向の負方向側に移動させている。
【0055】
以上のような画像読み取り装置10bにおいても、画像読み取り装置10aと同様に、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、画像読み取り装置に有用であり、特に、手置き原稿読み取りによって得られる画像とスルー原稿読み取りによって得られる画像との間で発生する色調の差を低減することができる点において優れている。
【符号の説明】
【0057】
10,10a,10b 画像読み取り装置
12 本体
14 原稿カバー
15 搬送装置
16,17 プラテンガラス
18,20 スライダー部
27,27a,27b 光源装置
40a,40b,40'a,40’b LED
41 蛍光管
44,44a 筐体
45 コーティング
50 制御部
52,54 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられ、かつ、原稿が主面上に載置される第1の透明板と、
原稿を搬送する搬送手段と、
前記本体に設けられ、かつ、前記搬送手段により搬送されている原稿が主面上を通過する第2の透明板と、
前記第1の透明板及び前記第2の透明板の下方において移動可能に構成されているスライダー部であって、該第1の透明板上の前記原稿又は該第2の透明板上の前記原稿に光を照射する光源装置を含んでいるスライダー部と、
を備えており、
前記スライダー部は、前記第1の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性と、前記第2の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性とを異ならせることができること、
を特徴とする画像読み取り装置。
【請求項2】
前記第2の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性は、前記第1の透明板上の前記原稿に照射する光の分光特性よりも、所定範囲の波長において、強い強度を有していること、
を特徴とする請求項1に記載の画像読み取り装置。
【請求項3】
前記所定範囲の波長とは、青色の光の波長から緑色の光の波長までの波長であること、
を特徴とする請求項2に記載の画像読み取り装置。
【請求項4】
前記光源装置は、
第1の光源と、
前記第1の光源が照射する光の分光特性と異なる分光特性を有する光を照射する第2の光源と、
を有しており、
前記画像読み取り装置は、
前記第1の透明板上の前記原稿に光を照射する場合には、前記第1の光源のみに光を照射させ、前記第2の透明板上の前記原稿に光を照射する場合には、該第1の光源及び前記第2の光源に光を照射させる制御部を、
更に有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項5】
前記光源装置は、
前記第1の光源が照射した光と前記第2の光源が照射した光とを合成する合成手段と、
前記合成手段から出力されてくる光を前記第1の透明板上の前記原稿又は前記第2の透明板上の前記原稿に照射する導光体と、
を更に有していること、
を特徴とする請求項4に記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
前記第2の光源は、青色の光の波長から緑色の光の波長までの間の波長の光を照射すること、
を特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項7】
前記光源装置は、
第1の光源と、
第2の光源と、
前記第1の光源及び前記第2の光源を収容する容器をなし、かつ、該第1の光源が照射した光と該第2の光源が照射した光とを内周面にて反射することによって合成する合成手段と、
前記合成手段から出力されてくる光を前記第1の透明板上の前記原稿又は前記第2の透明板上の前記原稿に照射する導光体と、
を有しており、
前記画像読み取り装置は、
前記第1の透明板上の前記原稿に光を照射する場合には、前記第1の光源のみに光を照射させ、前記第2の透明板上の前記原稿に光を照射する場合には、該第1の光源及び前記第2の光源に光を照射させる制御部を、
更に備えており、
前記第1の光源は、前記第2の光源よりも前記導光体の近くに設けられており、
前記合成手段は、所定範囲の波長の光を該所定範囲以外の波長の光よりも高い反射率で反射すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項8】
前記画像読み取り装置は、
前記光源装置が照射した光の一部を前記第2の透明板上の前記原稿に向けて反射する反射部材であって、所定範囲の波長の光を該所定範囲以外の波長の光よりも高い反射率で反射する反射部材を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項9】
前記光源装置は、
光を照射する光源と、
前記光源が照射した光の一部を前記第2の透明板上の前記原稿に向けて反射する反射部材であって、所定範囲の波長の光を該所定範囲以外の波長の光よりも高い反射率で反射する反射部材と、
を更に有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項10】
前記光源装置は、
前記第1の透明板上の前記原稿に光を照射する場合には、前記反射部材により反射された光が該第1の透明板上の該原稿を照射しないように、該反射部材を移動させる移動手段を、
更に有していること、
を特徴とする請求項9に記載の画像読み取り装置。
【請求項11】
前記第1の透明板の分光透過率と前記第2の透明板の分光透過率とは異なっていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項10に記載の画像読み取り装置。
【請求項12】
前記第2の透明板の分光透過率は、前記第1の透明板の分光透過率よりも、所定範囲の波長において、低いこと、
を特徴とする請求項11に記載の画像読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−65149(P2012−65149A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207764(P2010−207764)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】