説明

画像読取装置、キャリブレーション方法、及びキャリブレーションプログラム

【課題】キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させる。
【解決手段】複合機1は、第1及び第2のテストチャートの濃度パッチの階調値(測色値)をそれぞれ第1及び第2の目標値として記憶している。第2のテストチャートは、第1のテストチャートの濃度範囲外の濃度パッチを含んでいる。更に、複合機1は、第2のテストチャートについて、別の装置の読取デバイスによって得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として記憶している。キャリブレーション時には、第1のテストチャートの濃度パッチが読み取られ、該濃度パッチの階調値が第1の読取値として取得される。そして、取得された第1の読取値及び記憶部に記憶されているデータに基づいて、キャリブレーションが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取デバイスのキャリブレーションを行う機能を備えた画像読取装置、キャリブレーション方法、及びキャリブレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する画像読取装置が知られている。画像読取装置が備える読取デバイスは、光源、光学系部品、CCD等のセンサ及び回路等を含んで構成されている。これらの構成要素の特性にはばらつきがあるため、読取デバイスによって色の読取特性にばらつきが生じる。このため、一般的に、画像読取装置は、読取デバイスによって読み取られた読取値に対してガンマ補正を行う。ガンマ補正は、測色計等で測定された基準となる目標値に、読取値を近付けるための補正である。ガンマ補正を行う画像読取装置は、予めキャリブレーションを行う必要がある。キャリブレーションには、読取デバイスによって読み取られた実際の読取値を目標値と関連付ける処理が含まれる。
【0003】
下記特許文献1には、テストチャートを用いてキャリブレーションを行う画像読取装置が記載されている。テストチャートには、濃度が黒から白まで均等に変化した複数の濃度パッチが印刷されている。そして、キャリブレーションの際には、まず、テストチャートが読取デバイスによって読み取られる。そして、各濃度パッチの読取値と、各濃度パッチのグレー濃度を数値化した値とがリニアな関係になるように、読取値をシフトする。この読取値とシフト後の値とを関連付けた変換テーブルが作成されることにより、キャリブレーションが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−344332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャリブレーションの精度を向上させることにより、色再現性が高まるので、原稿の読取精度を向上させることができる。特に、カラー原稿をRGBに分解して読み取る場合、1つの成分のわずかな量の精度が、混色した後の色再現性に影響が出る。このため、キャリブレーションの精度を向上させることにより、特に、カラー原稿を読み取った際の色再現性を向上させることができる。
【0006】
ところで、キャリブレーションの際に用いるテストチャートは、濃度パッチを紙に印刷することにより作成されるが、紙には、普通紙、マット紙、印画紙等の様々な種類がある。この紙の種類によって、印刷によって色を再現可能な範囲(色再現範囲)が異なる。例えば、階調値が30程度以下の黒色のデータを一般的なプリンタによって普通紙に印刷する場合、階調値が変化しても印刷された色の濃度は変化しない。すなわち、階調値が30程度以下の色は、一般的に、印刷によって普通紙に再現することができない。これに対して、印画紙は、普通紙より色再現範囲が広い。階調値が30〜20程度の色であっても印刷によって印画紙に再現することができる。
【0007】
キャリブレーションについては、読み取る濃度パッチの濃度範囲が広い方が、精度を向上させることができる。そこで、濃度範囲のより広い濃度パッチが印刷されたテストチャートを作成するために、印画紙等の色再現性の広い紙でテストチャートを作成することが考えられる。しかしながら、一般的に、印画紙等の色再現範囲が広い紙は、普通紙に色再現性を良くするための加工を施しているので、普通紙等の色再現範囲が狭い紙より単価が高いという問題がある。
【0008】
また、印画紙等の色再現範囲の広い紙には、表面が傷つき易い紙がある。表面が傷つき易い紙は、画像読取装置の工場出荷時にキャリブレーションを行う場合、テストチャートを繰り返し使用するに当たって、その使用回数が普通紙より少なくなる。また、画像読取装置にADF(自動給紙装置)が搭載されている場合、一般的には、ADFによってテストチャートを搬送中に読み取った読取値も用いてキャリブレーションが行われる。ADFを用いる方が、テストチャートが静止した状態で読み取りを行う場合より、テストチャートの表面が傷つき易い。このため、ADFを用いてキャリブレーションを行うに当たっては、特にテストチャートの耐久性が問題となる。
【0009】
更に、色再現範囲が広い紙には、色再現範囲が狭い紙と比較して摩擦係数が小さく、平滑性が高いために、色再現範囲が広い紙がある。しかし、平滑性が高い紙は、搬送性が悪い。このため、ADFによってテストチャートを上手く給紙できない虞がある。以上説明したように、キャリブレーションの精度を向上させるために、色再現範囲の広い紙で作成したテストチャートがキャリブレーション行う際に読み取られる場合、コスト、耐久性、及び搬送性の問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させることが可能な画像読取装置、キャリブレーション方法、及びキャリブレーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像読取装置は、原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する読取デバイスと、濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、第2のテストチャートについて、読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部と、第1のテストチャートに含まれた濃度パッチが読取デバイスによって読み取られた場合に、生成された読取画像データに基づいて得られた該濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得部と、取得部によって取得された第1のテストチャートの第1の読取値、及び、記憶部に記憶されている第2のテストチャートの第2の読取値を、記憶部に記憶されている第1のテストチャートの第1の目標値、及び、第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーション部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るキャリブレーション方法は、画像読取装置において行われるキャリブレーション方法であって、画像読取装置は、濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、第2のテストチャートについて、読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部を備え、画像読取装置が備える読取デバイスが、第1のテストチャートに含まれた濃度パッチを読み取って、読取画像データを生成する読取ステップと、読取ステップにおいて生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得ステップと、取得ステップにおいて取得された第1のテストチャートの第1の読取値、及び、記憶部に記憶されている第2のテストチャートの第2の読取値を、記憶部に記憶されている第1のテストチャートの第1の目標値、及び、第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーションステップを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るキャリブレーションプログラムは、コンピュータを、原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する読取デバイスと、濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、第2のテストチャートについて、読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部、第1のテストチャートに含まれた濃度パッチが読取デバイスによって読み取られた場合に、生成された読取画像データに基づいて得られた該濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得部、取得部によって取得された第1のテストチャートの第1の読取値、及び、記憶部に記憶されている第2のテストチャートの第2の読取値を、記憶部に記憶されている第1のテストチャートの第1の目標値、及び、第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーション部、として機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、キャリブレーションモードにおいて、第1のテストチャートが読取デバイスによって読み取られる。そして、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの階調値が、第1の読取値として取得される。一方、第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値が、第1の目標値として予め記憶されている。また、第1のテストチャートの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値が、第2の目標値として予め記憶されている。更に、第2のテストチャートについて、読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値が、第2の読取値として予め記憶されている。このため、第1のテストチャートの濃度範囲外の濃度パッチのデータ(第2の読取値)も含めて、キャリブレーションを行うことができる。よって、キャリブレーションの精度を向上させることができる。また、第2の読取値が予め記憶されているので、キャリブレーション時には、第2のテストチャートを読み取る必要がない。従って、キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明では、第2のテストチャートが、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲より濃い濃度の濃度パッチを含むことが好ましい。また、本発明では、第2のテストチャートが、第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲より淡い濃度の濃度パッチを含むことも好ましい。
【0016】
これらの構成によれば、第1のテストチャートの濃度範囲より濃い又は淡い濃度の濃度パッチの読取値(第2の読取値)も含めて、キャリブレーションを行うことができる。従って、キャリブレーションの精度を向上させることができる。
【0017】
本発明では、第1のテストチャートは、普通紙で作成され、第2のテストチャートは、印画紙で作成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第2のテストチャートが印画紙で作成されているので、第2のテストチャートを作成する際に、普通紙上では再現できない範囲の濃度の濃度パッチを印刷することができる。従って、普通紙上では再現できない濃度範囲の読取値(第2の読取値)を用いて、キャリブレーションを行うことが可能となる。また、キャリブレーションが行われる際に読み取られる第1のテストチャートは、普通紙で作成されているので、コストを抑制できる。また、普通紙は印画紙より耐久性があるので、繰り返し使用するに当たって、その回数を多くすることができる。また、普通紙は印画紙よりADFによる搬送性に優れているので、搬送が上手くいかないために、再試行する手間を省くことができる。
【0019】
本発明では、キャリブレーション部が、第1の読取値と第1の目標値との差、及び、第2の読取値と第2の目標値との差が、最小となるように最小二乗法を用いて、第1及び第2の読取値を第1及び第2の目標値と関連付ける関数を決定する際に、第2の読取値及び第2の目標値を重複して用いることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、最小二乗法を用いてキャリブレーションが行われる際に、第2の読取値及び第2の目標値が重複して用いられる。このため、第2の読取値及び第2の目標値の重みをより重くすることができる。従って、第2の読取値及び第2の目標値の影響を大きくして、階調値の小さい範囲又は大きい範囲におけるキャリブレーションの精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。また、キャリブレーションの精度を向上させることにより、色再現性が高まるので、原稿の読取精度を向上させることができる。特に、カラー原稿を読み取った際の色再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る画像読取装置が搭載された複合機の構成を示すブロック図である。
【図2】複合機が有するADFについて説明するための図である。
【図3】第1のテストチャートの一例を示す図である。
【図4】第2のテストチャートの一例を示す図である。
【図5】複合機が有する制御部の機能的な構成を示すブロック図である。
【図6】複合機が有する記憶部が記憶しているデータを説明するための図である。
【図7】MFPによるキャリブレーションの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例に係る複合機及び比較例に係る複合機において、予め記憶されていたデータと、キャリブレーション時に読み取ったデータとを示す図である。
【図9】実施例に係る複合機及び比較例に係る複合機によるキャリブレーション結果を示すグラフである。
【図10】実施形態に係るキャリブレーションプログラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を用いて、実施形態に係る画像読取装置が搭載された複合機1の構成について説明する。図1は、複合機1の構成を示すブロック図である。
【0024】
複合機1は、スキャン機能、プリント機能、及びFAX機能を有する。この複合機1は、スキャン機能によって原稿に印刷されている画像又は文字の色をより正確に読み取るために、キャリブレーションを行う機能も有している。複合機1は、これらの機能を発揮するために、操作パネル10、ディスプレイ11、LANインターフェース12、NCU13、モデム14、プリンタ15、スキャナ16、画像メモリ17、及び制御部20を備えている。
【0025】
操作パネル10は、ユーザが複合機1を操作するために、複数の操作ボタンを備えている。ディスプレイ11は、例えば液晶ディスプレイで構成され、各種の設定内容等を表示する。キャリブレーションを行う際には、操作者が、ディスプレイ11の表示を参照しながら操作パネル10を操作することにより、キャリブレーションモードに設定することができる。
【0026】
LANインターフェース12は、LAN(ローカルエリアネットワーク)に接続され、LANと複合機1との間の情報の入出力を制御する。このため、複合機1は、LANを介してパーソナルコンピュータ等の機器と情報の送受信を行うことができる。NCU13は、モデム14と公衆交換電話網(PSTN)90との接続を制御する。このNCU13及びモデム14によって、FAXの送受信が行われる。プリンタ15は、電子写真方式のプリンタであり、各種の画像データを用紙に印刷する。
【0027】
スキャナ16は、読取デバイス16aを備えて構成されている。読取デバイス16aは、原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する。この読取デバイス16aは、光源、ミラー及びレンズ等の光学部品、CCDセンサ、及び、信号の出力回路等を有している。CCDセンサは、ライン式のカラーセンサであり、ライン状に原稿を走査して原稿の画像情報を読み取る。
【0028】
また、複合機1は、原稿を載置するプラテンガラス、及び原稿を自動的に給紙するためのADF(Auto Document Feeder)を備えている。原稿がプラテンガラス上に置かれた場合、フラットベット方式でスキャン処理が行われる。フラットベット方式では、プラテンガラス上に原稿が静止した状態でスキャン処理が行われる。原稿がADFにセットされた場合は、ADF方式でスキャン処理が行われる。ADF方式では、原稿がADFによって搬送されながらスキャン処理が行われる。
【0029】
図2を参照して、ADFの機構について簡単に説明する。図2は、ADFの機構を説明するための図である。ADFは、原稿トレイ31から搬送路32に沿って読取位置33を経由して排出トレイまで原稿30を搬送する。なお、図2では、搬送路32を直線状に表しているが、実際の複合機では、搬送路32は湾曲し、原稿トレイ31の下方に排出トレイが設けられている。
【0030】
原稿トレイ31上にセットされた原稿30は、ピックアップローラ34によってピックアップされ、給紙ローラ35によって搬送路32へ給紙される。搬送路32に給紙された原稿30は、第1原稿検知センサ36によって検知される。この原稿30は、搬送路32に沿って配置された3対の搬送ローラ37によって排紙トレイに向けて搬送される。原稿30の先端が読取位置33の近くに到達すると、第2原稿検知センサ38によって検知される。続いて、読取デバイス16aによる読取動作が開始される。
【0031】
読取位置33には、搬送路32を挟んで透明ガラス39と白色のバックプレート40とが対向して配置され、透明ガラス39とバックプレート40との間に原稿30が搬送される。そして、読取デバイス16aによって原稿が読み取られる。原稿30の後端が、第2原稿検知センサ40に検知され、読取位置33を通過すると、読取動作が終了する。そして、原稿30の先端が、搬送路32の終端付近に到達すると、第3原稿検知センサ41によって検出される。続いて、原稿30は、排出ローラ42によって排出トレイへ搬送される。以上のように、原稿30がADFに搬送されながら読取デバイス16aによってスキャン処理が行われる。
【0032】
図1に示される制御部20は、物理的な構成要素として、CPU18、制御プログラム等を記憶するROM19、及びRAM等を有している。制御部20は、制御プログラムを実行することにより、複合機1を構成する上記のハードウエアを統合的に制御する。制御プログラムには、キャリブレーションを行うキャリブレーションプログラムが含まれている。このため、制御部20は、キャリブレーションを行う機能を発揮することができる。
【0033】
キャリブレーションは、スキャン時にガンマ補正を行うために、予め、読取デバイス16aによって読み取られる読取値を目標値と関連付ける処理である。本実施形態のキャリブレーションは、第1のテストチャート及び第2のテストチャートの読取値及び目標値を用いて行われる。図3及び図4を参照して、第1のテストチャート40及び第2のテストチャート50について説明する。図3は、第1のテストチャート40の一例を示す図である。図4は、第2のテストチャート50の一例を示す図である。なお、図4及び図5においては、色が濃い濃度パッチほど単位面積当たりのドット数を増やして表現しているが、実際の第1及び第2のテストチャートでは、四角形に形成された各濃度パッチが一様に着色されている。
【0034】
第1のテストチャート40は、紙41に複数(本実施形態では5つ)の濃度パッチ61〜65が印刷されている。第2のテストチャート50は、紙51に複数(本実施形態では9つ)の濃度パッチ61〜69が印刷されている。第2のテストチャート50の紙51は、第1のテストチャート40の紙41より色再現範囲が広い。すなわち、同じ印刷方法により印刷した場合に表現できる階調値の範囲は、第1のテストチャート40の紙41より第2のテストチャート50の紙51の方が広い。
【0035】
本実施形態では、第1のテストチャート40の紙41が普通紙であり、第2のテストチャート50の紙51が印画紙である。普通紙は、一般的に、プリンタにおいて文書等を印刷するために用いられる用紙である。印画紙は、一般的に、写真等を印刷するために用いられる用紙であり、普通紙より高画質な画像を印刷するために用いられる。例えば、普通紙の色再現範囲は、R、G、Bの各階調値が30〜230程度の範囲である。これに対して、印画紙の色再現範囲は、R、G、Bの各階調値が20〜240程度の範囲である。
【0036】
第1のテストチャート40には、普通紙の色再現範囲内で、階調値が段階的に大きくなるように濃度パッチ61〜65が印刷されている。測色計によるRGB各色についての測色値(階調値)が、濃度パッチ61は50、濃度パッチ62は測色値90、濃度パッチ63は測色値130、濃度パッチ64は測色値170、濃度パッチ65は測色値210となるように印刷されている。すなわち、濃度パッチ61から濃度パッチ65まで、濃い色(黒色)から段階的に淡い色(白色)となるように配置されている。
【0037】
第2のテストチャート50には、印画紙の色再現範囲内で、階調値が段階的に大きくなるように濃度パッチ61〜69が印刷されている。図4において、中央付近に配置された濃度パッチ61〜65の濃度(階調値)は、第1のテストチャート40の濃度パッチ61〜65とそれぞれ同じ値である。そして、第2のテストチャート50は、第1のテストチャート40に含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチ66〜69を含んでいる。
【0038】
第2のテストチャート50の濃度パッチ66,67は、測色計によるRGB各色についての測色値が、それぞれ30、40となるように印刷されている。すなわち、第2のテストチャート50は、第1のテストチャート40に含まれる濃度パッチの濃度範囲より濃い濃度(低い階調値)の濃度パッチ66,67を含んでいる。濃度パッチ68,69は、測色計によるRGB各色についての測色値が、それぞれ220、230となるように印刷されている。すなわち、第2のテストチャート50は、第1のテストチャート40に含まれる濃度パッチの濃度範囲より淡い濃度(高い階調値)の濃度パッチ68,69を含んでいる。
【0039】
次に、第1及び第2のテストチャート40,50のデータを用いて行われるキャリブレーションについて説明すると共に、図5を参照して、制御部20が有する機能的な構成要素について説明する。図5は、制御部20の機能的な構成を示すブロック図である。制御部20は、記憶部21、取得部22、キャリブレーション部23を備えている。
【0040】
記憶部21は、例えば、ROM等で構成されている。この記憶部21は、キャリブレーションを行うためのデータを予め記憶している。キャリブレーションを行うためのデータとは、第1及び第2のテストチャート40,50のデータである。図6を参照して、記憶部21が記憶しているデータについて説明する。
【0041】
記憶部21は、第1のテストチャート40のデータとして、第1の目標値を記憶している。第1の目標値は、第1のテストチャート40について、測色計によって得られた濃度パッチ61〜65の階調値(測色値)である。第1の目標値は、測色計によって測定された測色値に基づいて得られた値であればよく、測色値と同じ値であってもよいし、測色値に任意の補正又は変換を行って、第1の目標値を得ても良い。なお、濃度パッチ61〜65は、第1のテストチャート40と第2のテストチャート50との双方に含まれている。従って、第2のテストチャート50の濃度パッチ61〜65を測定することにより、第1の目標値を得ることも可能である。
【0042】
記憶部21は、第2のテストチャート50のデータとして、第2の目標値及び第2の読取値を記憶している。第2の目標値は、第2のテストチャート50について、測色値に基づいて得られた濃度パッチ66〜69の階調値(測色値)である。すなわち、第2の目標値は、測色計によって測定された値から算出することができる。なお、測色計によって測定された値に任意の補正又は変換を行って、第1の目標値を得ても良い。
【0043】
第2の読取値は、第2のテストチャート50について、複合機1が備える読取デバイス16aとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチ66〜69の階調値である。例えば、読取デバイス16aと同じ機種又は型番の読取デバイスを搭載した装置が、第2のテストチャート50を読み取ることにより、濃度パッチ66〜69の読取値を得ることができる。又は、複合機1と同じ機種又は型番の装置が、第2のテストチャート50を読み取ることにより、濃度パッチ66〜69の読取値を得ることができる。
【0044】
具体的な例としては、1000台の複合機を製造する場合に、そのうち1台の複合機1が第2のテストチャートを読み取ることにより得られた第2の読取値を他の999台の複合機に記憶させる。また、1000台の複合機を製造する場合に、そのうち10台の複合機1が第2のテストチャートを読み取ることにより得られた値を平均し、その平均値を第2の読取値として1000台の複合機に記憶させてもよい。記憶部21は、各濃度パッチ66〜69の第2の目標値と第2の読取値とを関連付けて記憶している。
【0045】
キャリブレーションは、例えば、複合機1が製造された後、製造工場内で行われる。なお、キャリブレーションは、工場出荷後に、複合機1を設置するサービスマンが行ってもよいし、ユーザが行ってもよい。キャリブレーションが行われる際には、スキャナ16の読取デバイス16aによって第1のテストチャート40が読み取られ、読取画像データが生成される。すなわち、第1のテストチャート40の濃度パッチ61〜65が読み取られる。読取デバイス16aは、読取画像データに含まれる色データについては、例えば、YCbCr表色系の出力フォーマットで出力する。スキャナ16は、上述した読取デバイス16aの他、画像処理部24を備えている。キャリブレーション時において、画像処理部24は、読取デバイス16aから出力される読取画像データに対して、ガンマ補正部25によるガンマ補正を行わずに、読取画像データを画像メモリ17へ出力する。
【0046】
取得部22は、読取画像データが出力された場合、画像メモリ17の該読取画像データから濃度パッチ61〜65の階調値を第1の読取値として取得する。具体的には、取得部22は、まず、読取画像データに含まれる色データをYCbCr表色系からRGB表色系に変換する。そして、取得部22は、各濃度パッチ61〜65が位置している領域内の色データをRGBそれぞれについて複数抽出し、抽出した複数の読取値の平均をRGBそれぞれについて算出する。そして、取得部22は、RGBそれぞれについて算出した値を濃度パッチ61〜65の第1読取値とする。
【0047】
このようにして、取得部22は、キャリブレーションモードにおいて、第1のテストチャート40について読み取られた値に基づいて、濃度パッチ61〜66の階調値を第1の読取値として取得することができる。複合機1が量産された場合、第1のテストチャート40は機台毎に読み取られ、読取値(第1の読取値)が取得される。一方、第2のテストチャート50については、機台共通の読取値(第2の読取値)が、1台の装置によって一度取得されれば、その値が量産された複数の複合機1に予め記憶される。
【0048】
キャリブレーション部23は、取得部22により得られた第1のテストチャート40の第1の読取値、及び、記憶部21に記憶されている第1のテストチャート40の第1の目標値を、記憶部21に記憶されている第2のテストチャート50の第2の読取値、及び、第2の目標値に関連付けることにより、キャリブレーションを行う。このキャリブレーションは、ガンマ補正用(輝度補正用)のルックアップテーブルを作成する処理である。ルックアップテーブルは、スキャンを実行した際に得られる読取値について、補正前の値と補正後の値とを関連付けたテーブルである。
【0049】
本実施形態では、記憶部21に濃度パッチ61〜65の目標値(第1の目標値)と、濃度パッチ66〜69の目標値(第2の目標値)とが記憶されている。また、記憶部21には、予め、濃度パッチ66〜69の読取値(第2の読取値)が記憶されている。そして、キャリブレーションモードでは、第1のテストチャート40をスキャンすることにより、濃度パッチ61〜65の読取値(第1の読取値)が取得される。これらのデータを用いて、キャリブレーション部23は、例えば、次の方法によりガンマ補正用のルックアップテーブルを生成する。
【0050】
第1の読取値及び第2の読取値を合わせた9つの濃度パッチ61〜69の読取値をxi(i=1、2、・・・、9)とする。また、第1の目標値と第2の目標値とを合わせて9つの目標値とする。そして、読取値xiを関数y(x)に代入して得られる値y(xi)と目標値との差が最小となるように最小二乗法を用いて関数y(x)を決定する。続いて、読取値xiに対して、関数y(x)によって算出される補正値y(xi)を関連付けて、ガンマ補正用のルックアップテーブルを作成する。
【0051】
本実施形態の場合、第2の読取値及び第2の目標値のデータ数が、第1の読取値及び第1の目標値のデータ数より少ない。このため、同じ重みで計算した場合、第2の読取値及び第2の目標値による影響が小さくなる。そこで、最小二乗法を用いてルックアップテーブルを生成する際に、第2の読取値及び第2の目標値を重複して用いることが好ましい。これにより、第2の読取値及び第2の目標値の重みを大きくすることができるので、第2の読取値及び第2の目標値による影響を大きくすることができる。
【0052】
例えば、第2の読取値及び第2の目標値の組、すなわち、目標値(30,30,30)と読取値(35,35,35)の組、目標値(40,40,40)と読取値(45,45,45)の組、目標値(220,220,220)と読取値(225,225,225)の組、目標値(230,230,230)と読取値(235,235,235)の組をデータとして二重に用いる。この場合、第1の読取値及び第2の読取値を合わせた9つの濃度パッチ61〜69の読取値は、合計13個となる。同様に、第1の目標値と第2の目標値とを合わせて13個の目標値となる。
【0053】
また、例えば、複数の濃度パッチ61〜69の目標値に対して読取値を1対1に対応付けることにより、ガンマ補正用のルックアップテーブルを作成してもよい。この場合、複数の濃度パッチ61〜69から得られる読取値の間の値は、補間処理を行うことにより補間することが好ましい。なお、キャリブレーション部23は、各RGBについて、目標値及び読取値が共に「0」のデータと「255」のデータを用いて、ルックアップテーブルを生成してもよい。
【0054】
キャリブレーション部23が作成したルックアップテーブルは、画像処理部24が備えるガンマ補正部25によって記憶される。このガンマ補正用のルックアップテーブルは、後に原稿がスキャンされた場合に生成される読取画像データの輝度補正に用いられる。
【0055】
画像処理部24は、原稿がスキャンされた時に、読取デバイス16aから出力される読取画像データの画像処理を行う。ガンマ補正部25は、ガンマ補正用のルックアップテーブルを用いてガンマ補正を行う。画像処理部24によって、画像処理及びガンマ補正が施された読取画像データは、画像メモリ17に記憶される。その後、FAXの送信データ又はプリントデータ(コピーデータ)等として用いられる。
【0056】
引き続いて、図7を参照して複合機1によるキャリブレーションの処理手順について説明する。図7は、複合機1によるキャリブレーションの処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
まず、第1のテストチャート40が複合機1にセットされ、キャリブレーションを行う旨の入力が受け付けられると、複合機1は、ステップS101において、キャリブレーションモードに設定される。ステップS102では、読取ステップが行われる。この読取ステップでは、第1のテストチャート40が、読取デバイス16aによって読み取られ、読取画像データが生成される。すなわち、第1のテストチャート40に含まれた濃度パッチ61〜65が読み取られる。
【0058】
続いて、ステップS103では、取得ステップが行われる。この取得ステップでは、読取ステップにおいて生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチ61〜65の階調値が、第1の読取値として取得される。そして、ステップS104では、第1のテストチャート40の第1の目標値、第2のテストチャートの第2の読取値及び第2の目標値が、記憶部21から読み込まれる。
【0059】
続いて、ステップS105では、キャリブレーションステップが行われる。このキャリブレーションステップでは、取得ステップにおいて得られた第1のテストチャート40の第1の読取値、及び、記憶部21から読み込まれた第1のテストチャート40の第1の目標値を、記憶部21から読み込まれた第2のテストチャート50の第2の読取値及び第2の目標値と関連付けることにより、キャリブレーションが行われる。すなわち、ガンマ補正用のルックアップテーブルが、キャリブレーション部23によって作成される。
【0060】
以上説明したように、複合機1によれば、第1のテストチャート40の濃度範囲外の濃度パッチのデータ(第2の読取値及び第2の目標値)も含めて、キャリブレーションを行うことができる。よって、キャリブレーションの精度を向上させることができる。また、第2の読取値が予め記憶されているので、キャリブレーション時には、第2のテストチャートを読み取る必要がない。従って、キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。また、キャリブレーションの精度を向上させることにより、原稿の読取精度を向上させることができる。特に、カラー原稿を読み取ってRGBに分解する場合、1つの成分のわずかな量の精度が、混色した後の色再現性に影響が出る。このため、キャリブレーションの精度を向上させることにより、特に、カラー原稿の色再現性を向上させることができる。
【0061】
また、第2のテストチャート50が印画紙で作成されているので、第2のテストチャート50を作成する際に、普通紙上では再現できない範囲の濃度の濃度パッチを印刷することができる。従って、普通紙上では再現できない濃度範囲の読取値(第2の読取値)を用いて、キャリブレーションを行うことが可能となる。また、キャリブレーションが行われる際に読み取られる第1のテストチャート40は、普通紙で作成されているので、コストを抑制できる。また、普通紙は印画紙より耐久性があるので、繰り返し使用するに当たって、その回数を多くすることができる。また、普通紙は印画紙よりADFによる搬送性に優れているので、搬送が上手くいかないために、再試行する手間を省くことができる。
【0062】
また、本実施形態では、最小二乗法を用いてキャリブレーションが行われる際に、第2の読取値及び第2の目標値が重複して用いられる。このため、第2の読取値及び第2の目標値の重みをより重くすることができる。従って、第2の読取値及び第2の目標値の影響を大きくして、階調値の小さい範囲又は大きい範囲におけるキャリブレーションの精度を向上させることができる。これにより、混色した後の微妙な色再現性を向上させることができる。
【0063】
引き続いて、図8及び図9を参照して、実施例に係る複合機のキャリブレーションの精度について、比較例と比較しながら説明する。図8(a)は、比較例に係る複合機において、予め記憶されていたデータと、キャリブレーション時に読み取ったデータとを示している。図8(b)は、実施例に係る複合機において、予め記憶されていたデータと、キャリブレーション時に読み取ったデータとを示している。図9(a)は、比較例に係る複合機によるキャリブレーション結果を示すグラフである。図9(b)は、実施例に係る複合機によるキャリブレーション結果を示すグラフである。
【0064】
図8では、太枠内のデータが、予め記憶されているデータである。斜体の太文字は、キャリブレーション時に読み取ったデータを示している。比較例に係る複合機には、第1のテストチャート40の目標値(第1の目標値)のみ記憶されている。実施例に係る複合機には、第1の目標値に加えて、第2のテストチャート50の第2の目標値及び第2の読取値が記憶されている。キャリブレーション時に第1のテストチャート40の読取値(第1の読取値)を取得する点については、比較例は実施例と同様である。
【0065】
図9のグラフは、横軸がガンマ補正前の階調値を示し、縦軸がガンマ補正後の階調値を示している。図9(b)の実施例に係る複合機のガンマ曲線71は、図9(a)の比較例に係る複合機のガンマ曲線81より理想的なガンマ曲線に近い。特に、比較例に係る複合機のガンマ曲線81では、階調値が低い純黒側の部分82と階調値が高い純白側の部分83とが歪んでいる。これに対して、実施例に係る複合機によるガンマ曲線71では、階調値が低い純黒側の部分72及び階調値が高い純白側の部分73も理想的なガンマ曲線に近い。このように、実施例に係る複合機1におけるキャリブレーションでは、第1のテストチャートの用紙(普通紙)の色再現範囲外の色について、特に精度が向上する。
【0066】
複合機では、スキャン時にカラー画像を得るために、RGBの3成分に分解して色データを得る。このため、比較例に係る複合機では、3成分に普通紙の再現範囲外の成分が含まれていると、その色の読取精度が低下することになる。これに対して、実施例に係る複合機は、普通紙の再現範囲外の純黒側の部分72及び純白側の部分73もキャリブレーションの精度が高い。従って、精度良くガンマ補正を行うことができ、読取精度を向上させることができる。特に、図9の比較例と実施例とを比較すると、純黒側の部分が特にキャリブレーションの精度が向上している。従って、第2のテストチャート50が、第1のテストチャート40に含まれる濃度パッチの濃度範囲より濃い濃度の濃度パッチ66,67を含むことにより、純黒側の部分を特に精度良くガンマ補正を行うことができる。
【0067】
上述した複合機1の制御部20は、本発明に係るキャリブレーションプログラムをインストールしたコンピュータを用いて実現することができる。図10は、キャリブレーションプログラム100のモジュール構成を示す図である。
【0068】
コンピュータは、図1に示された複合機1が有する制御部20のハードウエア構成と同様な構成を有している。すなわち、コンピュータは、CPU、ROM、及びRAM等を備えている。また、コンピュータは、スキャナと接続されている。キャリブレーションプログラム100は、例えば、コンピュータがLANインターフェースと接続されている場合、ネットワークを介してコンピュータに提供される。なお、キャリブレーションプログラム100は、記録媒体111に記録された状態で流通してもよい。記録媒体111としては、例えば、磁気ディスク、光ディスク、CD−ROMなどが該当する。
【0069】
プログラム100は、処理を統括するメインモジュール101、記憶モジュール102、取得モジュール103、キャリブレーションモジュール104を備えている。ここで、記憶モジュール102、取得モジュール103、及びキャリブレーションモジュール104を上記のコンピュータにおいて動作させることによって実現する機能は、上記複合機1の記憶部21、取得部22、キャリブレーション部23によって発揮される上述した機能と同様である。従って、キャリブレーションプログラム100が実行されることにより、上記コンピュータを複合機1の制御部20として機能させることができる。よって、キャリブレーションを行う際に、色再現範囲がより広い紙で作成されたテストチャートを読み取ることなく、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、読取画像データがカラーの場合について説明したが、読取デバイス16aによって得られる読取画像データがモノクロであってもよい。この場合、例えば、第1のテストチャート40を普通紙で作成し、第2のテストチャート50をコート紙で作成することができる。モノクロの読取画像データは、1成分の色のみを読み取るCCDセンサを有するスキャナによって生成することができる。
【0071】
また、キャリブレーションは、フラットベット方式とADF方式の双方について行われることが好ましい。この場合、フラットベット方式によって行われた場合に生成されるガンマ補正用のルックアップテーブルと、ADF方式によって行われた場合に生成されるルックアップテーブルとをそれぞれ記憶する。そして、スキャンがフラットベット方式で行われた場合には、フラットベット方式で生成されたルックアップテーブルを用いてガンマ補正を行う。また、スキャンがADF式で行われた場合には、ADF方式で生成されたルックアップテーブルを用いてガンマ補正を行う。
【0072】
また、上記実施形態では、第1のテストチャート40を普通紙で作成し、第2のテストチャート50を印画紙で作成することしたが、これに限られない。第2のテストチャート50が第1のテストチャート40の濃度範囲外の濃度パッチを含んでいればよい。このために、第2のテストチャート50は、第2のテストチャート40の紙より色再現範囲の広い紙で作成されていればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、複合機に本実施形態に係る画像読取装置を搭載した場合について説明したが、これに限られない。本実施形態の画像読取装置を搭載する機器は、プリント、FAX、又はネットワーク機能を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 複合機
10 操作パネル
11 ディスプレイ
12 LAN インターフェース
13 NCU
14 モデム
15 プリンタ
16 スキャナ
16a 読取デバイス
20 制御部
21 記憶部
22 取得部
23 キャリブレーション部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する読取デバイスと、
濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、前記第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、前記第2のテストチャートについて、前記読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部と、
前記第1のテストチャートに含まれた濃度パッチが前記読取デバイスによって読み取られた場合に、生成された読取画像データに基づいて得られた該濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1のテストチャートの第1の読取値、及び、前記記憶部に記憶されている前記第2のテストチャートの第2の読取値を、前記記憶部に記憶されている前記第1のテストチャートの第1の目標値、及び、前記第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーション部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記第2のテストチャートは、前記第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲より濃い濃度の濃度パッチを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2のテストチャートは、前記第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲より淡い濃度の濃度パッチを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記第1のテストチャートは、普通紙で作成され、
前記第2のテストチャートは、印画紙で作成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記キャリブレーション部は、前記第1の読取値と前記第1の目標値との差、及び、前記第2の読取値と前記第2の目標値との差が、最小となるように最小二乗法を用いて、前記第1及び前記第2の読取値を前記第1及び前記第2の目標値と関連付ける関数を決定する際に、前記第2の読取値及び前記第2の目標値を重複して用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
画像読取装置において行われるキャリブレーション方法であって、
前記画像読取装置は、濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、前記第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、前記第2のテストチャートについて、前記読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部を備え、
前記画像読取装置が備える読取デバイスが、第1のテストチャートに含まれた濃度パッチを読み取って、読取画像データを生成する読取ステップと、
前記読取ステップにおいて生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された前記第1のテストチャートの第1の読取値、及び、前記記憶部に記憶されている前記第2のテストチャートの第2の読取値を、前記記憶部に記憶されている前記第1のテストチャートの第1の目標値、及び、前記第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーションステップを備えることを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項7】
コンピュータを、
原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成する読取デバイスと、
濃度パッチを含む第1のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第1の目標値として予め記憶し、前記第1のテストチャートに含まれる濃度パッチの濃度範囲外の濃度パッチを含む第2のテストチャートについて、測色計による測色値に基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の目標値として予め記憶すると共に、前記第2のテストチャートについて、前記読取デバイスとは別の読取デバイスによって生成された読取画像データに基づいて得られた濃度パッチの階調値を第2の読取値として予め記憶している記憶部、
前記第1のテストチャートに含まれた濃度パッチが前記読取デバイスによって読み取られた場合に、生成された読取画像データに基づいて得られた該濃度パッチの階調値を第1の読取値として取得する取得部、
前記取得部によって取得された前記第1のテストチャートの第1の読取値、及び、前記記憶部に記憶されている前記第2のテストチャートの第2の読取値を、前記記憶部に記憶されている前記第1のテストチャートの第1の目標値、及び、前記第2のテストチャートの第2の目標値とそれぞれ関連付けることにより、キャリブレーションを行うキャリブレーション部、
として機能させることを特徴とするキャリブレーションプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−17134(P2013−17134A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150288(P2011−150288)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】