説明

画像読取装置および画像形成装置

【課題】より少ない構成で、駆動クロックの周波数拡散による影響を除去するための画像読取装置およびそれを搭載する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置は、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段と、撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にするとともに、撮像デバイスの他の検出面に読取対象物体を配置した上で、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させることで、所定状態に対応する第3の画像信号および読取対象物体に対応する第4の画像信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、第3の画像信号に基づいて固有関数から補正値を算出するとともに、当該算出した補正値で第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号として出力する補正手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックに起因するEMI(Electro Magnetic Interference:電磁波障害)対策がなされた画像読取装置およびそれを搭載する画像形成装置に向けられたものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の高速化および大容量化に伴って、これらの情報を処理する各種デバイスを動作させるクロック周波数もますます高速化している。このようなクロック周波数の高速化に伴って、EMI対策が必要となることが多い。このようなEMI抑制手段として、電子デバイスを動作させるための駆動クロックを周波数拡散させる方法が採用される場合がある。
【0003】
このようなEMI対策は、複写機、ファクシミリ、イメージスキャナー、産業用カメラといった画像読取機能を有する装置(以下「画像読取装置」と総称する。)についてもなされる。このような画像読取装置は、画像を読取るための撮像デバイスを有している。このような撮像デバイスとしては、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor)などの画像読取センサーと、これらの画像読取センサーから画像信号を出力するためのAD(Analog to Digital:アナログデジタル)変換器とを含む。
【0004】
上述のような駆動クロックを周波数拡散すると、駆動クロックの周波数は周期的に変動するため、撮像デバイスから出力される画像信号に周期的な変動が含まれることなる。この結果、読取られた画像内に周期的な濃度ムラが発生することになる。これは、特に、AD変換器のサンプリングタイミングの変動に起因すると考えられる。
【0005】
ところで、上述のような画像読取装置では、一般的に、画像読取センサーの感度ムラや光学部品により発生する原稿照明の照度ムラなどを補正する処理、いわゆるシェーディング補正が実行される。このようなシェーディング補正は、典型的には、画像読取装置の内部に設けられた感度補正用の白板を画像読取センサーで読取り、その読取られた画像内の濃度ムラから画像読取センサーの感度を補正するための情報(センサー感度補正値)を生成する。そして、原稿読取時に、先に生成された補正するための情報を参照しながら、原稿の画像データに対して画像濃度補正を行なう。
【0006】
このようなシェーディング補正は、上述のようなEMI対策の影響を受ける場合がある。具体的には、駆動クロックの周波数拡散によって生じる画像内の濃度ムラは、画像読取センサーの主走査方向で周期的に発生することになるが、副走査周期(1ライン読取周期)と周波数拡散の周波数変動周期とが異なる場合には、周波数拡散による駆動クロックの挙動がライン間で異なったものとなる。すなわち、両者の周期が異なると、ライン毎に周期的な濃度ムラの位相は一定量ずつずれていくことになり、ライン別に異なる補正パターンを用意してシェーディング補正を行なう必要が生じる。そのため、感度補正用の白板を画像読取センサーで読取ることで生成される情報(センサー感度補正値)を単に用いただけでは、駆動クロックの周波数拡散による影響を正しく除去することができない。
【0007】
このような課題を考慮して、以下のような提案がなされている。
特開2001−339580号公報(特許文献1)には、周波数拡散による画像信号の周期的なノイズを除去する方法が開示されている。この特許文献1に開示される方法は、周波数拡散器による周波数拡散率の変化を、光電変換素子で画像を読取る際の主走査方向の同期をとる主走査同期信号に同期させる。すなわち、特許文献1に開示される方法では、副走査周期に同期して、周波数拡散器をリセットすることで、周波数拡散クロックによる画像濃度ムラの変動位相をライン間で一致させる。
【0008】
特開2008−113303号公報(特許文献2)には、クロック変調による電磁放射ノイズ対策を行なうにあたって、クロックのタイミングを厳密に合わせ込んだり複雑なノイズ除去処理を不要とする原稿読取り装置が開示されている。この特許文献2に開示される方法は、搬送周期Yと拡散周期Xとの間の関係をY=aX+α(aは整数)とすることで、電荷蓄積時間のずれを一定にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−339580号公報
【特許文献2】特開2008−113303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に開示される、周波数拡散器による周波数拡散率の変化を同期させることは現実には容易ではない。なぜならば、一般的な周波数拡散器は、周波数拡散率の変化を同期させる、すなわち周波数変動の位相合わせを行なう機能を有しておらず、また、周波数変動の周期自体にも周波数拡散器別の個体差が存在するため、周期的濃度ムラの位相を固定化することは難しい。
【0011】
また、上述の特許文献2に開示される方法では、原稿の搬送周期を変化させる機構が必要となり、コスト増などの問題が生じ得る。
【0012】
すなわち、駆動クロックの周波数拡散による画像内の濃度ムラを、特殊な周波数拡散器や搬送機構を用いることなく除去するためには、周波数拡散による周波数変動と副走査の周期とが一致しない状態、つまり周期的な濃度ムラの位相が時間的に変化する状態で、シェーディング補正を行なう必要がある。このような方法は、上述の先行技術には開示されていない。
【0013】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より少ない構成で、駆動クロックの周波数拡散による影響を除去するための画像読取装置およびそれを搭載する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面に従う画像読取装置は、基準信号と基準信号を所定規則に従って周波数拡散した周波数拡散信号とのうち一方を用いてタイミング信号を発生する信号発生部と、信号発生部からのタイミング信号に従って動作する、画像を読取るための撮像デバイスと、基準信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させて、第1の基準色を有する第1の基準物体を読取ることで取得される第1の画像信号と、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させて、第1の基準物体を読取ることで取得される第2の画像信号とに基づいて、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段と、撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にするとともに、撮像デバイスの他の検出面に読取対象物体を配置した上で、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させることで、所定状態に対応する第3の画像信号および読取対象物体に対応する第4の画像信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、第3の画像信号に基づいて固有関数から補正値を算出するとともに、当該算出した補正値で第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号として出力する補正手段とを含む。
【0015】
好ましくは、固有関数は、位相を示す定数を含み、補正手段は、第3の画像信号に基づいて、撮像デバイスの読取動作に応じて時間変化特性の位相を示す値を順次更新する。
【0016】
好ましくは、撮像デバイスは、第1の方向に延びるライン状の検出面を有しており、撮像デバイスと読取対象物体との相対位置を第1の方向とは直交する第2の方向に変化させつつ、1ラインずつの画像を順次走査するように構成されており、補正手段は、撮像デバイスによるライン走査毎に、時間変化特性の位相を一定量ずつ変化させる一方で、第3の画像信号が所定条件を満たす場合には当該一定量を増加または減少させる。
【0017】
好ましくは、関数決定手段は、第1の画像信号と第2の画像信号との差分の信号に現われる振幅が最大値および/または最小値となる位置に基づいて、固有関数に含まれる位相を示す定数の初期値を決定する。
【0018】
好ましくは、撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にすることは、撮像デバイスで読取対象物体を読取る間、当該検出面の一部に第2の基準色を有する第2の基準物体を配置した状態を維持することを含む。
【0019】
好ましくは、撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にすることは、当該検出面の一部に対応する撮像デバイスの画素を遮光状態にすることを含む。
【0020】
この発明の別の局面に従う画像形成装置は、画像を形成する画像形成手段と、基準信号と基準信号を所定規則に従って周波数拡散した周波数拡散信号とのうち一方を用いてタイミング信号を発生する信号発生部と、信号発生部からのタイミング信号に従って動作する、画像を読取るための撮像デバイスと、基準信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させて、第1の基準色を有する第1の基準物体を読取ることで取得される第1の画像信号と、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させて、第1の基準物体を読取ることで取得される第2の画像信号とに基づいて、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段と、撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にするとともに、撮像デバイスの他の検出面に読取対象物体を配置した上で、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイスを動作させることで、所定状態に対応する第3の画像信号および読取対象物体に対応する第4の画像信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、第3の画像信号に基づいて固有関数から補正値を算出するとともに、当該算出した補正値で第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号として出力する補正手段とを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より少ない構成で、駆動クロックの周波数拡散による影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に従う画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う画像形成装置の画像読取機能を実現するためのブロック図である。
【図3】駆動クロックの周波数拡散の一例および対応するイメージセンサーからの画像信号を示す図である。
【図4】駆動クロックを周波数拡散することで濃度ムラが生じる原理を説明する図である。
【図5】駆動クロックを周波数拡散することで生じる濃度ムラの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に従う画像データの算出処理を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に従う撮像デバイスおよびその周辺構成を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う画像読取動作の全体処理を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う画像濃度ムラ補正値を算出するための固有関数を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイスを動作させて白板を読取ることで得られた画像信号をシェーディング補正値で補正することで得られた画像信号の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に従う各ラインにおける画像濃度ムラ補正値を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態における推定画像信号および実際に取得される画像信号の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における位相ずれ増加量の増減についての時間的変化の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態における一部の画素が遮光状態にされた撮像デバイスからの画像信号の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に従う画像形成装置における画像読取動作の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0024】
<A.概要>
本実施の形態に従う画像読取装置では、駆動クロックを周波数拡散することで現われる濃度ムラの影響を、従来のように固定の補正値ではなく、ライン毎に動的に異ならせた補正値で除去する。このような補正を、以下では「画像濃度ムラ補正」とも称す。
【0025】
この画像濃度ムラ補正においてライン毎に補正値を異ならせる方法として、基準信号(基準クロック)の時間変化特性(周期など)および周波数拡散の周期性(位相など)を示す固有関数を予め用意しておく。この固有関数は、ライン数および各ラインにおける画素位置などを変数として含むとともに、物理状態を反映するための定数を含む。そして、シェーディング補正時に得られた画像信号に基づいて、これらの定数の値を算出することで、周波数拡散の影響を反映した補正値を固有関数の形で決定する。さらに、引き続く原稿読取時には、当該決定した固有関数を各ラインに応じて更新することで、各ラインに適した補正値を順次算出する。この順次算出される補正値を用いて画像濃度ムラ補正を実行することで、駆動クロックを周波数拡散することによる影響を取り除く。
【0026】
特に、本実施の形態においては、固有関数に含まれる位相ずれ量のライン毎の位相ずれ増加量を、原稿とは異なる既知の物体を読取ることで取得される画像信号に基づいてフィードバック的に補正する。これにより、自動原稿搬送部による原稿の連続給紙を行った場合でも、位相ずれ量の誤差が累積することを回避できる。
【0027】
<B.全体構成>
本発明は、画像読取機能を有する装置であればどのような装置にも適用できるものであり、典型的には、複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)、複写機、ファクシミリ、イメージスキャナー、産業用カメラなどに適用される。以下では、本発明に係る画像形成装置の典型例として、複写機能、プリント機能、ファクシミリ機能、およびイメージスキャナー機能といった複数の機能を搭載した複合機について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置MFPの概略構成図である。図1を参照して、画像形成装置MFPは、自動原稿搬送部2と、イメージスキャナー3と、プリントエンジン4と、給紙部5とを含む。
【0029】
自動原稿搬送部2は、原稿の連続的なスキャンを行なうためのものであり、原稿給紙台21と、送出ローラー22と、レジストローラー23と、搬送ドラム24と、排紙台25とを含む。スキャン対象の原稿は、原稿給紙台21上に載置され、送出ローラー22の作動により一枚ずつ送り出される。そして、この送り出された原稿は、レジストローラー23により一旦停止されて先端が整えられた後に、搬送ドラム24へ搬送される。さらに、この原稿は、搬送ドラム24のドラム面と一体に回転し、その過程において後述するイメージスキャナー3により画像面がスキャンされる。その後、原稿は、搬送ドラム24のドラム面を略半周した位置においてドラム面から分離されて排紙台25へ排出される。
【0030】
イメージスキャナー3は、撮像デバイス33と、原稿台35とを含む。撮像デバイス33は、被写体である原稿に対する相対位置を時間的に変化させて、原稿の画像を読取る。撮像デバイス33は、主要な構成要素として、原稿に対して光を照射する光源と、光源から照射された光が原稿で反射して生じる画像を取得するイメージセンサーと、イメージセンサーから画像信号を出力するためのAD(Analog to Digital:アナログデジタル)変換器と、イメージセンサーの前段に配置された結像光学系とを含む。なお、スキャン対象の原稿は、原稿台35に載置されることもできる。
【0031】
本明細書では、イメージスキャナー3が原稿を電気的にスキャンする方向を主走査方向(図1に示すX方向)と定義し、イメージスキャナー3と原稿とが相対移動する方向を副走査方向(図1に示すY方向)と定義する。図1に示すZ方向は、原稿面と直交する方向を示す。
【0032】
プリントエンジン4は、一例として、電子写真方式の画像形成プロセスが実行される。具体的には、フルカラーのプリント出力が可能である。具体的には、プリントエンジン4は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を生成するイメージング(作像)ユニット44Y,44M,44C,44Kを含む。イメージングユニット44Y,44M,44C,44Kは、プリントエンジン4内に張架されて駆動される転写ベルト27に沿って、その順序に配置される。
【0033】
イメージングユニット44Y,44M,44C,44Kは、それぞれ画像書込部43Y,43M,43C,43Kと、感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kとを含む。画像書込部43Y,43M,43C,43Kの各々は、対象の画像データに含まれる各色イメージに応じたレーザ光を発するレーザダイオードと、このレーザ光を偏向して対応の感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面を主走査方向に露光させるポリゴンミラーとを含んでいる。
【0034】
感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面には、上述のような画像書込部43Y,43M,43C,43Kによる露光によって静電潜像が形成され、この静電潜像がそれぞれ対応するトナーユニット441Y,441M,441C,441Kから供給されるトナー粒子によってトナー像として現像される。
【0035】
感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kの表面に現像された各色のトナー像は、転写ベルト27に順次転送される。さらに、この転写ベルト27上に重ねられたトナー像は、給紙部5からタイミングを合わせて供給される記録紙にさらに転写される。
【0036】
この記録紙上に転写されたトナー像は、下流部に配置された定着部において定着された後、トレイ57に排出される。
【0037】
上述の感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kにおける動作と並行して、記録紙を収容する給紙部5の給紙カセットにそれぞれ対応する送出ローラー52,53,54および手差給紙部26のうち、画像形成に用いられるべき記録紙に対応する部位が作動して記録紙を供給する。この供給された記録紙は、搬送ローラー55および56ならびにタイミングローラー51によって搬送され、感光体ドラム41上に形成されたトナー像に同期するように、感光体ドラム41に給紙される。
【0038】
転写器45は、感光体ドラム41に反対極性の電圧を印加することで、感光体ドラム41上に形成されたトナー像を記録紙に転写する。そして、除電器46は、トナー像が転写された記録紙を除電することで、記録紙を感光体ドラム41から分離させる。その後、トナー像が転写された記録紙は定着装置47へ搬送される。なお、転写器45としては、図1に示すような転写ベルトを用いた転写方式に代えて、転写チャージャーまたは転写ローラーを用いた転写方式を採用してもよい。あるいは、感光体ドラム41から記録紙へトナー像を直接転写する直接転写方式に代えて、感光体ドラム41と記録紙との間に、転写ローラー、転写ベルトといった中間転写体を配置して、2段階以上のプロセスによって転写を行なうようにしてもよい。
【0039】
定着装置47は、加熱ローラー471と加圧ローラー472とを含む。加熱ローラー471は、記録紙を加熱することで、その上に転写されたトナーを溶融するとともに、加熱ローラー471と加圧ローラー472との間の圧縮力により、溶融したトナーが記録紙上に定着される。そして、記録紙はトレイ57に排出される。なお、定着装置47としては、図1に示すような定着ベルトを用いた定着方式に代えて、定着ローラーなど用いた定着方式、もしくは非接触の定着方式を採用してもよい。
【0040】
一方、記録紙が分離された感光体ドラム41では、その残留電位が除去された後、クリーニング部48によって残留トナーが除去および清掃される。そして、次の画像形成処理が実行される。クリーニング部48は、一例として、クリーニングブレード、クリーニングブラシ、クリーニングローラー、またはこれらの組み合わせにより、残留トナーを除去および清掃する。あるいは、クリーニング部48に代えて、感光体ドラム41Y,41M,41C,41Kを用いて残留トナーを回収するクリーナーレス方式を採用してもよい。
【0041】
IDCセンサー49は、感光体ドラム41上に形成されるトナー像の濃度を検出する。このIDCセンサー49は、代表的に反射型フォトセンサからなる光強度センサーであり、感光体ドラム41の表面からの反射光強度を検出する。
【0042】
<C.画像読取機能の主要部>
次に、本実施の形態に従う画像形成装置MFPに搭載された画像読取機能を実現するための主要構成について説明する。
【0043】
図2は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置MFPの画像読取機能を実現するためのブロック図である。図2は、画像読取機能を実現するための電気回路の構成を示す。図2を参照して、画像形成装置MFPは、その画像読取機能として、基準クロック発生器102と、周波数拡散器104と、スイッチ106と、駆動クロック発生器108と、撮像デバイス33と、画像処理部120と、メモリー122とを含む。
【0044】
基準クロック発生器102は、所定の周期を有するクロックを発生する。このクロックは、周期性を有するものであればどのような波形であってもよい。典型的には、方形(パルス)波やノコギリ波などがクロックとして用いられる。基準クロック発生器102からのクロックは、周波数拡散器104およびスイッチ106へ入力される。
【0045】
周波数拡散器104は、基準クロック発生器102からのクロックを所定の周期で周波数拡散し、その周波数拡散後のクロックをスイッチ106へ出力する。この周波数拡散は、周波数領域でみた場合、基準クロック発生器102からのクロックの周波数(周期)を予め定められた規則で時間的に変化させる。
【0046】
スイッチ106は、基準クロック発生器102からのクロック、および、周波数拡散器104からの周波数拡散されたクロック、の一方を駆動クロック発生器108へ出力する。スイッチ106は、画像処理部120からの指令に従って、クロックを切換える。
【0047】
駆動クロック発生器108は、スイッチ106からのクロックまたは周波数拡散されたクロックに従って、駆動クロックを発生する。この駆動クロック発生器108が発生した駆動クロックは、イメージセンサー110、AD変換器112および画像処理部120へ出力される。したがって、スイッチ106の切換え動作によって、イメージセンサー110、AD変換器112および画像処理部120に対する周波数拡散の有無を変更することができる。このように、駆動クロック発生器108は、基準信号(基準クロック)と基準信号を所定規則に従って周波数拡散した周波数拡散信号とのうち一方を用いてタイミング信号(駆動クロック)を発生する信号発生部に相当する。
【0048】
撮像デバイス33は、画像を読取るための電子部品であり、主たる構成要素として、イメージセンサー110およびAD変換器112を含む。これらは、いずれも駆動クロック発生器108からの駆動クロックに従って動作する。
【0049】
イメージセンサー110は、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor)などで構成される。
【0050】
AD変換器112は、イメージセンサー110から画像信号を出力する。すなわち、AD変換器112は、イメージセンサー110の出力信号(電荷に応じて現われる電位)をサンプリングすることでデジタル値として出力する。
【0051】
画像処理部120は、撮像デバイス33からの画像信号(出力信号)に対して、後述するような画像処理(画像濃度ムラ補正)を行なうことで、駆動クロックを周波数拡散することで現われる濃度ムラの影響を補正する。また、画像処理部120は、いわゆるシェーディング補正についても併せて実行する。そして、画像処理部120は、補正後の画像データを図示しないプリントエンジンなどへ出力する。
【0052】
画像処理部120は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)やワークメモリなどを含む。典型的には、CPUが予め格納されているプログラムをワークメモリ上に展開して実行することで、後述するような画像処理が実現される。代替的に、CPUがプログラムを実行することで実現される機能の一部または全部を専用のハードウェアによって構成してもよい。また、CPUで実行されるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。この場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行されることになる。
【0053】
メモリー122は、画像処理部120において後述するような画像処理を行なうための各種データを保持する。メモリー122は、本実施の形態に係る画像濃度ムラ補正を実現するための固有関数(画像ムラ補正関数F(t))およびそれに含まれる各種定数などを保持する。
【0054】
<D.周波数拡散による濃度ムラおよび課題>
まず、駆動クロックを周波数拡散することで現われる濃度ムラの影響について説明する。
【0055】
図3は、駆動クロックの周波数拡散の一例および対応するイメージセンサー110からの画像信号を示す図である。図4は、駆動クロックを周波数拡散することで濃度ムラが生じる原理を説明する図である。図5は、駆動クロックを周波数拡散することで生じる濃度ムラの一例を示す図である。
【0056】
駆動クロック発生器108から出力される周波数拡散された駆動クロックは、図3(a)に示すように、その周波数(周期)が時間的に変化する。駆動クロックが方形(パルス)波であれば、先行のパルスが現われてから後続のパルスが現われるまでの時間(周期)が一定周期で増減することになる。この増減方法(繰返しパターン)は、周波数拡散器104により異なる。
【0057】
図3(a)に示すような、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33が駆動されることで、イメージセンサー110から出力される画像信号は変動することになる。すなわち、同じ色を有する物体(たとえば、感度補正用の白板)を撮像デバイス33で読取った場合であっても、イメージセンサー110からの画像信号は、図3(b)に示すように、周波数拡散された駆動クロックに連動して周期的に変化する。図3(a)と図3(b)とを比較するとわかるように、画像濃度ムラの繰返し周期は、駆動クロックの拡散周期に一致する。
【0058】
このような画像信号の変動は、主として、AD変換器112のサンプリングタイミングの変動に起因すると考えられる。図4には、イメージセンサー110の出力信号(電圧)の時間的変化の一例を示す。
【0059】
イメージセンサー110が画像を読取る場合、駆動パルスに従い、出力回路が、リセットモード、黒レベル出力モード、画像レベル出力モードに順次切り替わり、出力電圧が変化する。より具体的には、イメージセンサー110に含まれるCCDの内部回路をスイッチしてモードを切り替えることで、3種類の電圧が繰返し出力される。なお、黒レベル出力モードでは、予め定められた電圧が出力され、画像レベル出力モードでは、フォトダイオードに蓄積された電荷量に比例した電圧が出力される。
【0060】
出力される電圧(アナログ波形)には、遅延や鈍りが存在するため、CCDにおけるモードを切り替えた後、一定期間後(一定クロックをカウント後)の値をAD変換器112でサンプリングする。たとえば、AD変換器112が、駆動クロックに含まれるパルス数で指定される時刻t1および時刻t2でサンプリングするように構成されているとする。時刻t1および時刻t2は、それぞれ、リセットモードから黒レベル出力モードへの切り替えタイミングおよび黒レベル出力モードから画像レベル出力モードへの切り替えタイミングの一定期間後に相当する。この場合、図4(a)を参照して、AD変換器112は、時刻t1における電圧Vt1と時刻t2における電圧Vt2との差分電圧ΔVをイメージセンサー110で検出した画像信号として出力する。
【0061】
周波数拡散により駆動クロックの周期が変動すると、CCDのモードを切り替えてから、サンプリングを行なうまでのタイミングが変化する。このタイミングの変化が、黒レベルおよび画像レベルのサンプリング電圧の変動を生み、画像濃度ムラが発生する。なお、CCDから出力される電圧波形の遅延および鈍り具合(立下がり方)は、CCD内部の出力回路やCCD外部のアナログ増幅回路によって決まるため、実質的に周波数拡散の影響を受けない。
【0062】
より具体的には、駆動クロックの周期が変動して、それぞれの画像信号をサンプリングするタイミングが、図4(b)に示すように、時刻t1’(=t1+Δt1)および時刻t2’(=t2+Δt2)にそれぞれ変化したとする。この場合、AD変換器112は、時刻t1’における電圧Vt1’(=Vt1−ΔVt1)と時刻t2’における電圧Vt2’(=Vt2−ΔVt2)との差分電圧ΔV’がイメージセンサー110で検出された画像信号として出力される。
【0063】
図4(b)に示す、Δt1(=t1’−t1)とΔt2(=t2’−t2)とは、ほぼ同じ時間幅であるが、対応する時刻におけるCCD出力電圧の傾斜特性が異なるため、画像信号として生じる電圧変動分ΔVt1およびΔVt2は一致せず、その結果、両者の差ΔVt1−ΔVt2が、駆動クロックを周波数拡散することで生じる濃度ムラとなる。
【0064】
以上のような理由によって、駆動クロックを周波数拡散することで、撮像デバイス33から出力される画像信号には周期的な変動が生じることになる。
【0065】
このような画像信号に含まれる周期的な変動は、図5(a)に示すような画像濃度ムラとして現われる。すなわち、図5(a)には、周波数拡散クロックにより主走査方向の1ラインにおいて発生する画像濃度ムラの概念図を示す。なお、図5に示す1マスは、1画素を示す。また、図5(b)および(c)には、紙面横方向を主走査方向とし、紙面縦方向を副走査方向とした例を示す。
【0066】
ここで、上述の特許文献1に開示されるように、周波数拡散器による周波数拡散率の変化を、光電変換素子で画像を読取る際の主走査方向の同期をとる主走査同期信号に同期させることができれば、図5(b)に示すように、ライン間で画像濃度ムラ位置(繰返し位相)を一致させることができる。すなわち、周波数拡散クロックの拡散周期と副走査周期とを同期させる手段を用いれば、画像濃度ムラ補正の補正パターンとしては、図5(b)に示す1ライン分の画像信号を用いれば十分である。
【0067】
図5(b)に示す場合、画像形成装置MFPの内部に設けられた感度補正用の白板を撮像デバイス33撮像デバイス33で読取り、その読取られた画像内の濃度ムラに基づいて補正することで、イメージセンサー110の感度ムラ、光学部品の照明ムラ、および駆動クロックを周波数拡散することで生じる濃度ムラを同時に除去することができる。
【0068】
しかしながら、上述したように、特許文献1に開示される方法を実現することは、現実には容易ではない。
【0069】
そのため、通常の構成では、周波数拡散により、図5(c)に示すような画像内の画像濃度ムラが生じる。一般的には、周波数拡散器104による拡散周期とイメージセンサー110による1ライン分の走査周期とは一致しないので、各ラインにおいて、原理的には一定量ずつムラの発生位置(繰返し位相)がずれることになる。この位相のずれ量は、副走査周期と周波数拡散周期とに関係する。但し、後述するように、この位相ずれ量についても時間的に変動する場合がある。
【0070】
そこで、本実施の形態においては、図5(c)に示す画像内の濃度ムラを、画素位置を変数として含む固有関数として定義し、この固有関数を用いて、画像濃度ムラ補正を行なう。
【0071】
<E.全体処理>
次に、本実施の形態に従う画像読取機能の全体処理について説明する。本実施の形態においては、イメージセンサー110の感度ムラおよび光学部品の照度ムラを補正(以下「シェーディング補正」とも称す。)するためのシェーディング補正値X(t)、ならびに、画像濃度ムラ補正を行なうために画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を用いて、補正処理を行なう。図1に示すように、イメージセンサー110は主走査方向に複数の画素が配置されたラインセンサーであり、これらの補正値の変数tは、主走査方向の画素番号(t=1,2,…,n)であり、画像濃度ムラ補正値の変数sは、副走査方向の走査(ライン)番号(s=1,2,…,m)である。
【0072】
図6は、本発明の実施の形態に従う画像データの算出処理を説明するための図である。図6を参照して、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて原稿を読取ることで取得される画像信号V(s)(t)(図6(a))に対して、シェーディング補正値X(t)(図6(b))および画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)(図6(c))で補正(典型的には、差分の算出)することで、補正後の画像データを算出する。
【0073】
後述するように、シェーディング補正値X(t)は、周波数拡散されていない駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて、感度補正用の白板を撮像デバイス33で読取ることで取得される。このシェーディング補正値X(t)は、撮像デバイス33のt番目の画素における固有値である。
【0074】
このシェーディング補正値X(t)の取得とあわせて、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて、撮像デバイス33で当該白板を読取る。そして、周波数拡散されていない駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて読取られたシェーディング補正値X(t)と、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて読取られた画像信号Y(t)とを用いて、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出するための固有関数が決定される。
【0075】
続いて、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて原稿を読取ることで、画像信号V(s)(t)を取得する。さらに、各ラインについて、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を順次算出するとともに、画像信号V(s)(t)をシェーディング補正値X(t)および対応する画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)で補正することで、補正後の画像データを算出する。
【0076】
このとき、撮像デバイス33の原稿読取範囲以外の検出面を所定状態に構成するとともに、この所定状態に構成された検出面において取得された画像信号を用いて、固有関数に含まれる位相ずれ量を必要に応じて補正しつつ順次更新することで、各ラインにおける画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)が算出される。
【0077】
撮像デバイス33の原稿読取範囲以外の検出面を所定状態に構成する一例としては、後述するように、撮像デバイス33の原稿読取範囲以外の検出面に画像濃度ムラ補正用の白板を配置する構成(図7)、および、撮像デバイス33を構成するイメージセンサー110の一部の画素を遮蔽状態にする構成(図14)が挙げられる。
【0078】
図7は、本発明の実施の形態に従う撮像デバイス33およびその周辺構成を示す模式図である。図8は、本発明の実施の形態に従う画像読取動作の全体処理を説明するための図である。
【0079】
図7(a)は、図1においてイメージスキャナー3を紙面上方からZ方向に沿って見た場合の平面図を模式的に示す。また、図7(b)は、図1においてイメージスキャナー3を紙面下方からZ方向に沿って見た場合の斜視図を模式的に示す。
【0080】
イメージスキャナー3は、プラテンガラスが配置された原稿台35と、原稿台35から原稿台35のY方向に沿って所定距離だけ離れた位置に設けられた感度補正用の白板37とを含む。プラテンガラスは、原稿台35の使用時における画像読取用の窓である。また、自動原稿搬送部2による原稿の搬送経路に対応付けて窓部38が設けられている。窓部38は、自動原稿搬送部2の使用時における画像読取用の窓である。
【0081】
さらに、撮像デバイス33の原稿読取範囲以外の検出面に対応して、画像濃度ムラ補正用の画像ムラ検出板39が設けられる。この画像ムラ検出板39は、撮像デバイス33が副走査方向(Y方向)のいずれの位置にあっても、撮像デバイス33の検出範囲に含まれる長さに構成される。なお、画像ムラ検出板39は、画像濃度ムラを補正するための情報が取得できればどのようなものであってもよく、典型的には、白板、黒板、あるいは他の単色に塗装されている。すなわち、原稿外の特定画素の相当位置に副走査方向に沿った、白板、黒板、あるいは単色の板である、画像ムラ検出板である画像ムラ検出板39が設けられる。そして、撮像デバイス33がこの画像ムラ検出板39を読取ることで取得される画像信号に基づいて、固有関数に含まれる位相ずれ量を必要に応じて補正しつつ順次更新する。
【0082】
感度補正用の白板37および画像濃度ムラ補正用の画像ムラ検出板39は、イメージスキャナー3の上筐体の内側に配置される。
【0083】
撮像デバイス33は、画像読取動作の初期には、白板37の位置に配置される。そして、原稿台35に配置された原稿を読取る場合には、撮像デバイス33はY方向に沿って紙面右側へ順次移動する。また、自動原稿搬送部2により自動搬送される原稿を読取る場合には、撮像デバイス33はY方向に沿って紙面左側へ移動し、窓部38の位置で待機する。そして、撮像デバイス33は、1ライン分ずつ画像を読取って画像信号として出力する。この画像信号には、原稿台35に配置された原稿を示す情報、および、画像ムラ検出板39の濃度を示す情報が含まれる。
【0084】
このように、撮像デバイス33は、第1の方向(X方向)に延びるライン状の検出面を有しており、撮像デバイス33と読取対象物体(原稿)との相対位置を第1の方向とは直交する第2の方向(Y方向)に変化させつつ、1ラインずつの画像を順次走査するように構成されている。そして、撮像デバイス33の検出面の一部を所定状態にすることは、撮像デバイス33で読取対象物体(原稿)を読取る間、当該検出面の一部に第2の基準色を有する第2の基準物体(画像ムラ検出板39)を配置した状態を維持することを含む。
【0085】
図7に示すように、本実施の形態に従う撮像デバイス33は、読取動作時に白板37がその検出範囲に入るので、このときの画像信号を利用して、シェーディング補正値X(t)に加えて、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出するための情報を取得する。
【0086】
すなわち、本実施の形態に従う撮像デバイス33は、図7(a)に示すように、まず、白板37の領域を通過し、原稿の読取動作に入る。撮像デバイス33による白板37の読取時には、図7(b)に示すように、駆動クロックを、周波数拡散されていない状態と、周波数拡散された状態とに切換える。なお、この切換順序については、特に制限されないが、後続の原稿読取時には、周波数拡散された駆動クロックが用いられるので、先に、周波数拡散されていない状態とし、次に周波数拡散された状態に切換えることが好ましい。
【0087】
図7(c)に示すように、撮像デバイス33が白板37の位置に存在している場合に、周波数拡散されていない駆動クロックで撮像デバイス33を動作させることで画像信号(シェーディング補正値X(t))が読取られ、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させることで画像信号Y(t)が読取られる。
【0088】
さらに、これらの画像信号に基づいて、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を定義する固有関数が決定される。
【0089】
続いて、撮像デバイス33が原稿の位置に存在している場合に、撮像デバイス33は、周波数拡散された駆動クロックで駆動され、原稿を読取ることで得られた画像信号V(s)(t)を1ライン分ずつ出力する。
【0090】
まず、1ライン目の画像信号V(1)(t)が出力されると、対応する位相ずれ量が算出されるとともに、画像信号V(1)(t)の画像ムラ検出板39に対応する成分に基づいて、必要に応じて位相ずれ増加量を増加または減少させる。続いて、このように決定された位相ずれ増加量を加算して得られる位置ずれ量に基づいて、対応する画像濃度ムラ補正値Y(1)(t)が決定される。さらに、この決定された画像濃度ムラ補正値Y(1)(t)およびシェーディング補正値X(t)を用いて、画像信号V(1)(t)が補正された後、補正後の画像データとして出力される。
【0091】
以下、同様の処理が、2ライン目、3ライン目と原稿の読取りが完了するまで繰返される。
【0092】
上述したように、図6および図8に示す一連の処理は、画像処理部120(図2)によって実行される。すなわち、画像処理部120は、基準信号(基準クロック)を用いて発生されたタイミング信号(周波数拡散されていない駆動クロック)で撮像デバイス33を動作させて、所定の基準色を有する基準物体(白板)を読取ることで得られる第1の画像信号(シェーディング補正値X(t))と、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号(周波数拡散された駆動クロック)で撮像デバイス33を動作させて、基準物体(白板)を読取ることで得られる第2の画像信号(画像信号Y(t))とに基づいて、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段として機能する。さらに、画像処理部120は、撮像デバイス33の検出面の一部を所定状態にするとともに、撮像デバイス33の他の検出面に読取対象物体(原稿)を配置した上で、周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で撮像デバイス33を動作させることで、所定状態に対応する第3の画像信号(画像信号V(s)(t)のうち画像ムラ検出板39に対応する成分(原稿外の特定画素))および読取対象物体に対応する第4の画像信号(画像信号V(s)(t)のうち原稿に対応する成分)をそれぞれ取得する信号取得手段として機能する。
【0093】
そして、画像処理部120は、第3の画像信号に基づいて固有関数から補正値(Y(s)(t))を算出するとともに、当該算出した補正値で第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号(補正後の画像データ)として出力する補正手段として機能する。
【0094】
<F.画像濃度ムラ補正値の算出処理>
(f1:固有関数)
上述した画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を定義する固有関数としては、以下のような一般式を用いる。すなわち、sライン目(s=1,2,…,m)の1ライン分の画像データに対するt番目(t=1,2,…,n)の画素について対する補正値Y(s)(t)は、
(s)(t)=B×F(t−nT−A(s))
と表わすことができる。
【0095】
ここで、Tは、周波数拡散器104における周波数拡散周期であり、Fは、基準クロック発生器102(または、駆動クロック発生器108)が発生するクロックの時間波形を示す関数であり、A(s)は、sライン目(s=1,2,…,m)における関数Fについての位相ずれ量であり、Bは、感度ムラ補正値の振幅である。
【0096】
図9は、本発明の実施の形態に従う画像濃度ムラ補正値を算出するための固有関数を示す図である。本実施の形態に従う画像形成装置MFPでは、周波数拡散されていない駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて読取られた画像信号(シェーディング補正値X(t))と、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて読取られた画像信号Y(t)とを用いて、図9に示す位相ずれ量A(s)および振幅である感度ムラ補正係数Bを決定する。
【0097】
図9には、図3に示す駆動クロックに対応して、関数Fがノコギリ波である場合を例示するが、この関数Fの時間波形は、駆動クロックの種類に応じて異なったものとなる。また、感度ムラ補正係数Bは、撮像デバイス33の個体差などによって、装置毎に異なったものとなる。
【0098】
なお、関数Fは周期性を有するので、t−nT−A(s)<T、かつ、A(s)<Tの条件が満たされるように、位相ずれ量A(s)が決定される。また、関数Fは、副走査周期、周波数拡散器の拡散周期、および撮像デバイス33の特性、に依存した装置固有の繰返し濃度ムラを示す繰返しパターンとなる。
【0099】
上述のような固有関数を定義する関数Fおよび周期Tについては、メモリー122に予め格納されており、画像処理部120がこれらの値を読出して処理を実行する。
【0100】
このように、画像処理部120は、基準信号(基準クロック)の時間変化特性(関数F)および周波数拡散の周期性(周期T)を示す、定数を含む固有関数について、第1の画像信号(シェーディング補正値X(t))および第2の画像信号(画像信号Y(t))に基づいて、固有関数に含まれる定数を決定することで、時間変化特性である画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出する。
【0101】
(f2:感度ムラ補正係数Bの決定)
まず、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)の振幅である感度ムラ補正係数Bを決定する方法について説明する。この感度ムラ補正係数Bは、周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて白板37を読取ることで得られた画像信号Y(t)をシェーディング補正値X(t)で補正することで得られた画像信号に基づいて決定される。
【0102】
図10は、本発明の実施の形態において周波数拡散された駆動クロックで撮像デバイス33を動作させて白板37を読取ることで得られた画像信号Y(t)をシェーディング補正値X(t)で補正することで得られた画像信号の一例を示す図である。より具体的には、図10に示す画像信号は、画像信号Y(t)からシェーディング補正値X(t)を差し引いたものに相当する。
【0103】
そして、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を図10に示す画像信号にフィッティングする処理が行なわれる。一例として、図10に示す画像信号のうち、最大値と最小値とが抽出され、この抽出された最大値と最小値との差分から感度ムラ補正係数Bが算出される。すなわち、感度ムラ補正係数B(振幅)={(最大値)−(最小値)}/2に従って算出される。
【0104】
このように、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出する固有関数は、振幅を示す定数(感度ムラ補正係数B)を含み、画像処理部120は、第1の画像信号(シェーディング補正値X(t))と第2の画像信号(画像信号Y(t))との差分の信号に現われる振幅の最大値および最小値に基づいて、固有関数に含まれる振幅を示す定数を決定する。
【0105】
(f3:初期の位相ずれ量A(0)の決定)
さらに、図10に示す画像信号のうち、画像信号が最大値をとる画素または画像信号が最小値をとる画素を特定し、これらの特定された少なくとも一方の位置(画素番号)から、初期の位相ずれ量A(0)が決定される。
【0106】
このように、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出する固有関数は、位相を示す定数(位相ずれ量A(s))を含み、画像処理部120は、第1の画像信号(シェーディング補正値X(t))と第2の画像信号(画像信号Y(t))との差分の信号に現われる振幅が最大値および/または最小値となる位置に基づいて、固有関数に含まれる位相を示す定数の初期値を決定する。
【0107】
(f4:位相ずれ量の更新)
上述したように、関数Fの位相ずれ量A(s)はライン毎に変動するため、この位相ずれ量A(s)がライン毎に更新される。より具体的には、ライン間の位相ずれ増加量は、周波数拡散器104における周波数拡散周期と副走査周期とにより定める固有値であるため、この位相ずれ増加量をaとして予め取得しておけば、原理的には、初期の位相ずれ量A(0)から位相ずれ量A(s)を順次算出できる。
【0108】
すなわち、初期の位相ずれ量A(0)を特定した後は、1ライン分スキャンする毎に予めメモリー122に格納された位相ずれ増加量aを順次加算することで更新できる。なお、初期の位相ずれ量A(0)を特定した後、原稿の1ライン目をスキャンするまでの間に、何らかの空白時間がある場合には、その空白時間を測定し、1ライン目の位相ずれ量A(1)を算出すればよい。
【0109】
図11は、本発明の実施の形態に従う各ラインにおける画像濃度ムラ補正値を示す図である。図11(a)には、1ライン目の画像濃度ムラ補正値Y(1)(t)の波形を示し、図11(b)には、それに引き続く2ライン目の画像濃度ムラ補正値Y(2)(t)の波形を示す。ライン間の位相ずれ増加量をaとした場合には、1ライン目の位相ずれ量A(1)と2ライン目の位相ずれ量A(2)との間には、
A(2)=A(1)+a
の関係が成立する。
【0110】
同様に、図11(c)に示す3ライン目の画像濃度ムラ補正値Y(3)(t)は、
A(3)=A(2)+a=A(1)+a+a
という計算式に従って算出された3ライン目の位相ずれ量A(3)を用いて決定される。
【0111】
(f5:位相ずれ増加量の増減)
上述のように位相ずれ量A(s)をライン毎に更新することで、原理的には、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)の値を順次算出できるが、周波数拡散器104の周波数拡散周期には個体差があり、また、温度により周波数拡散周期が変動し得るため、予め格納された位相ずれ増加量aが周波数拡散器104における現実の位相ずれ増加量に対して、僅かに誤差を有する場合がある。この誤差には、位相ずれ増加量aを有限の桁で表現することによる量子化誤差なども含まれる。
【0112】
特に、自動原稿搬送部2を用いて原稿の連続給紙を行なう場合には、原稿台35に原稿を1枚ずつ配置して画像読取動作を行なう場合に比較して、撮像デバイス33の読取動作に係るライン数が多くなるので、位相ずれ増加量aに含まれる誤差がより多く累積する。その結果、位相ずれ量Aが本来の値から乖離する結果となり、画像濃度ムラの除去の度合いが低下する可能性がある。
【0113】
そこで、本実施の形態に従う画像形成装置MFPでは、撮像デバイス33の画像読取動作によって出力される画像信号のうち、画像ムラ検出板39に対応する成分(原稿外の特定画素)を用いて、上述のような位相ずれ量Aの誤差の程度を判断する。そして、位相ずれ量Aの誤差が相対的に大きくなっていれば、位相ずれ増加量aを増減させることで、位相ずれ量Aが本来の値となるように、フィードバック的に補正する。
【0114】
より具体的には、撮像デバイス33から出力される画像ムラ検出板39に対応する成分(原稿外の特定画素からの画像信号)を推定するとともに、実際に取得された画像信号と逐次比較する。
【0115】
撮像デバイス33から出力される画像ムラ検出板39に対応する成分の推定値である推定画像信号V^(t)は、以下のように算出できる。
【0116】
まず、上述したように、原稿の読取動作の開始前に、周波数拡散されていない駆動クロックで撮像デバイス33を動作させてシェーディング補正値X(t)を取得するが、このとき、原稿外の特定画素についてもシェーディング補正値X(t)が取得される。図7に示すように、このシェーディング補正値X(t)は、画像ムラ検出板39の読取結果に相当する。
【0117】
続いて、上述したように、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)に含まれる感度ムラ補正係数Bが決定された後、ライン毎に位相ずれ量A(s)が更新され、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)が順次算出される。ここで、撮像デバイス33の原稿外の特定画素についても、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出可能であり、かつ、撮像デバイス33への入射光量はほぼ均一であるともなせる。そのため、推定画像信号V^(t)は、シェーディング補正値X(t)および画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を用いて、以下のように示すことができる。
【0118】
V^(t)=B×F(t−nT−A(s))+X(t)
そして、この推定画像信号V^(t)と実際に読取られた画像信号との差を評価することで、位相ずれ量A(s)の誤差の大きさを判断する。
【0119】
図12は、本発明の実施の形態における推定画像信号V^(t)および実際に取得される画像信号の一例を示す図である。図12(a)は、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って上昇傾向にある場合を示し、図12(b)は、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って下降傾向にある場合を示す。
【0120】
図12(a)に示すように、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って上昇傾向にある場合には、推定画像信号V^(t)に比較して、実際に取得された画像信号が小さいならば、実際の位相ずれ量A(s)は予想よりも大きいといえるため、位相ずれ増加量aを減少させる。また、推定画像信号V^(t)に比較して、実際に取得された画像信号が大きいならば、実際の位相ずれ量A(s)は予想よりも小さいといえるため、位相ずれ増加量aを増加させる。
【0121】
一方、図12(b)に示すように、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って下降傾向にある場合には、推定画像信号V^(t)に比較して、実際に取得された画像信号が小さいならば、実際の位相ずれ量A(s)は予想よりも小さいといえるため、位相ずれ増加量aを増加させる。また、推定画像信号V^(t)に比較して、実際に取得された画像信号が大きいならば、実際の位相ずれ量A(s)は予想よりも大きいといえるため、位相ずれ増加量aを減少させる。
【0122】
なお、位相ずれ増加量aを増減方法としては、各ラインの算出において、推定画像信号V^(t)と実際に取得された画像信号とを比較して、位相ずれ増加量aをライン毎に増加または減少させるようにしてもよい。あるいは、推定画像信号V^(t)と実際に取得された画像信号との差が所定量を超えた場合に、位相ずれ増加量aを増加または減少させてもよい。
【0123】
図13は、本発明の実施の形態における位相ずれ増加量aの増減についての時間的変化の一例を示す図である。図13(a)には、ライン毎に位相ずれ増加量aを増減させる例を示し、図13(b)には、推定画像信号V^(t)と実際に取得された画像信号との差が所定量を超えた場合に位相ずれ増加量aを増減させる例を示す。
【0124】
このように、画像読取動作の間、位相ずれ増加量aの増加または減少を逐次行なうことで、位相ずれ量A(s)における位相ずれ増加量aの誤差の累積を防止することができ、より適切に画像濃度ムラ補正を行なうことができる。
【0125】
すなわち、画像処理部120は、第3の画像信号(画像信号V(s)(t)のうち画像ムラ検出板39に対応する成分(原稿外の特定画素))に基づいて、撮像デバイス33の読取動作に応じて、時間変化特性の位相を示す値(位相ずれ量A(s))を順次更新する。そして、画像処理部120は、撮像デバイス33によるライン走査毎に、時間変化特性の位相(位相ずれ量A(s))を一定量ずつ変化させる一方で、(画像信号V(s)(t)のうち画像ムラ検出板39に対応する成分(原稿外の特定画素))が所定条件を満たす場合には当該一定量を増加または減少させる。
【0126】
なお、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って上昇傾向にある場合と、推定画像信号V^(t)が主走査方向の画素番号の増大に伴って下降傾向にある場合とは、互いに大小関係が逆転するはずであるが、いずれの場合も同様の大小関係を示す場合には、推定画像信号V^(t)の算出に用いるシェーディング補正値X(t)を変更してもよい。すなわち、いずれの傾向の場合でも、実際に取得された画像信号が推定画像信号V^(t)に比較して大きいときには、シェーディング補正値X(t)をより小さい値に変更する。一方、いずれの傾向の場合でも、実際に取得された画像信号が推定画像信号V^(t)に比較して小さいときには、シェーディング補正値X(t)をより大きい値に変更する。
【0127】
(f6:その他の形態)
上述の図7には、撮像デバイス33の原稿読取範囲以外の検出面に対応して、画像濃度ムラ補正用の画像ムラ検出板39を設ける構成について例示したが、これ以外の構成を用いて、位相ずれ量A(s)を補正するための形態について説明する。
【0128】
このような形態の一例として、撮像デバイス33の原稿外の特定画素を遮光状態にする方法を採用してもよい。これは、特定画素に対応するCCDイメージセンサーの入射部に遮蔽部材を設けることで、イメージセンサーへの光の入射を遮断する方法である。このような方法を採用することで、画像ムラ検出板39などを設ける必要がなくなり、イメージスキャナー3をより小型化できる。
【0129】
図14は、本発明の実施の形態における一部の画素が遮光状態にされた撮像デバイス33からの画像信号の一例を示す図である。図14には、1ライン分の画像信号の波形が示されており、主走査方向の両端には、画像読取には用いられない画素からのダミー出力が存在し、その間に、原稿領域に対応する有効画素出力と、原稿外の特定画素からの遮光画素出力とが存在する。この遮光画素出力は、外部の状態に影響されず一定の黒レベルを出力する。
【0130】
このように、撮像デバイス33の検出面の一部を所定状態にすることは、当該検出面の一部に対応する撮像デバイス33の画素を遮光状態にすることを含む。
【0131】
<G.処理手順>
図15は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置MFPにおける画像読取動作の処理手順を示すフローチャートである。
【0132】
図15を参照して、ユーザなどから画像読取指示を受けると(ステップS2)、画像形成装置MFPは、周波数拡散されていない駆動クロックの発生を開始する(ステップS4)。続いて、画像形成装置MFPは、撮像デバイス33を画像補正用の白板37に位置付け、撮像デバイス33で白板37を読取ることでシェーディング補正値X(t)を取得する(ステップS6)。このとき、撮像デバイス33は、画像濃度ムラ補正用の画像ムラ検出板39を読取ることになるので、シェーディング補正値X(t)には、画像ムラ検出板39の画像読取結果も含まれることになる。
【0133】
続いて、画像形成装置MFPは、駆動クロックの周波数拡散を再開する(ステップS8)。すなわち、撮像デバイス33に周波数拡散された駆動クロックを供給する。続いて、画像形成装置MFPは、撮像デバイス33で白板37を読取ることで画像信号Y(t)を取得する(ステップS10)。
【0134】
その後、画像形成装置MFPは、ステップS10において取得した画像信号Y(t)をステップS6において取得したシェーディング補正値X(t)で補正し(ステップS12)、ステップS12における補正によって得られた補正後の画像信号から、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)に含まれる感度ムラ補正係数Bを決定する(ステップS14)。さらに、画像形成装置MFPは、ステップS12における補正によって得られた補正後の画像信号から、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)に含まれる初期の位相ずれ量A(0)を決定する(ステップS16)。以上の処理により、画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を定義する固有関数が決定される。
【0135】
その後、画像形成装置MFPは、撮像デバイス33を原稿読取位置に位置付け、撮像デバイス33での原稿の読取動作を開始する(ステップS18)。
【0136】
画像形成装置MFPは、撮像デバイス33によって1ライン分の原稿を示す画像信号V(s)(t)を取得すると(ステップS20)、当該ラインにおける位相ずれ量A(s)を算出する(ステップS22)。続いて、画像形成装置MFPは、ステップS22において決定した位相ずれ量A(s)を用いて、1ライン分の画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を算出する(ステップS24)。この算出される1ライン分の画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)には、原稿外の画像ムラ検出板39に対応する特定画素についての補正値も含まれる。
【0137】
その後、画像形成装置MFPは、ステップS20において取得した画像信号V(s)(t)のうち原稿に対応する成分を、ステップS6において取得したシェーディング補正値X(t)、および、ステップS24において算出した画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)で補正する(ステップS26)。そして、画像形成装置MFPは、補正後の画像信号を出力する(ステップS28)。
【0138】
続いて、画像形成装置MFPは、原稿外の特定画素について、ステップS6において取得したシェーディング補正値X(t)、および、ステップS24において算出した画像濃度ムラ補正値Y(s)(t)を用いて、推定画像信号V^(t)を算出する(ステップS30)。続いて、ステップS30において算出した推定画像信号V^(t)と、ステップS20において取得した画像信号V(s)(t)のうち原稿外の特定画素に対応する成分との差分が所定のしきい値を超えているか否かを判断する(ステップS32)。差分が所定のしきい値を超えている場合(ステップS32においてYESの場合)には、画像形成装置MFPは、位相ずれ増加量aを増加または減少させる(ステップS34)。差分が所定のしきい値を超えていない場合(ステップS32においてNOの場合)には、ステップS34の処理はスキップされる。
【0139】
その後、画像形成装置MFPは、原稿の全領域の読取りが完了したか否かを判断する(ステップS36)。原稿に対する読取りが完了していなければ(ステップS36においてNO)、画像形成装置MFPは、撮像デバイス33を次のラインの読取位置に位置付け、撮像デバイス33での原稿の読取動作を開始する(ステップS38)。そして、ステップS20以下の処理が繰返される。
【0140】
画像形成装置MFPは、原稿の全領域の読取りが完了していれば(ステップS36においてYES)、画像読取処理は終了する。
【0141】
<H.その他の実施の形態>
上述の実施の形態においては、ラインセンサーからなる撮像デバイス33を用いた場合の処理例について説明した。この処理例では、画像補正を1ライン分ずつ行なうが、上述したように各画素についての補正値を算出できるので、画像補正は1画素あるいは複数画素ずつ画像補正を行なってもよい。
【0142】
<I.別の局面>
本発明は、別の局面として、さらに以下のように表現することができる。
【0143】
本発明のさらに別の局面に従う画像読取装置は、原稿の画像を読取る画像読取り手段と、画像濃度ムラを補正するための画像補正用白板と、画像読取手段から出力される画像データを基に画像補正を行なう画像演算装置と、基準クロックを生成する基準クロック生成手段と、基準クロックに基づいてクロックの周波数を周期的に拡散させる周波数拡散器と、周波数拡散されたクロックもしくは基準クロックを画像読取装置に供給するスイッチ機能とを有し、基準クロックを画像読取手段に供給したときに得られる画像データから算出した1ライン分の画像補正値X(t)と、周波数拡散クロックを画像読取手段に供給したときに得られる画像データから算出された周波数拡散器による画像濃度ムラを補正するための画像補正値Y(t)と、原稿外の特定画素の画像データを計測し算出することでライン毎に変動するY(t)の変動量を修正する機能を有する。
【0144】
好ましくは、画像読取装置は、周波数拡散クロック供給時に得られる画像データに補正値X(t)を施した画像データから画像補正値Y(t)における画像補正パターンF(t)の位相ずれ量Aを算出した後、1ライン走査毎に位相ずれ増加量aずつ画像補正値Y(t)の位相ずれ量Aを変化させていくが、原稿外の特定画像データから位相ずれ増加量aを増減させる。
【0145】
さらに好ましくは、画像読取装置は、原稿外の特定画素の相当位置に副走査方向に沿った、白板、黒板、あるいは単色の板である、画像ムラ検出板を設置し、この画像濃度ムラ検出板を読取ることで、位相ずれ増加量aを増減させる。
【0146】
あるいはさらに好ましくは、画像読取装置は、自動原稿搬送部のための原稿読取窓の外側における原稿外の特定画素の相当位置に、白板、黒板、あるいは単色の板である、画像ムラ検出板を設置し、この画像ムラ検出板を読取ることで、位相ずれ増加量aを増減させる。
【0147】
あるいはさらに好ましくは、画像読取装置は、画像読取センサーの原稿外に配置された遮光された画素を読取ることで、位相ずれ増加量aを増減させる。
【0148】
<J.利点>
上述したように、本実施の形態に従う画像読取機構では、主走査方向に沿って配置された画像補正用の白板を読取ることで得られる、周波数拡散クロックによる画像濃度ムラの補正値Y(t)、Y(t)の位相ずれ量A、および位相ずれ量Aのライン毎の位相ずれ増加量aについて、位相ずれ増加量aにより予想される画像濃度ムラの副走査変動周期と、画像センサーの原稿外の特定画素を毎ライン読取ることで得られる画像濃度ムラの副走査変動周期とを比較することで、ライン毎の位相ずれ増加量aを増減させる。
【0149】
このように、自動原稿搬送部による連続給紙を行った場合でも、位相ずれ増加量aの誤差の累積を除去することができ、位相ずれの少ない画像濃度ムラ補正を行なうことができる。その結果、駆動クロックを周波数拡散することで生じる濃度ムラをより正確に除去して、画像濃度ムラのない画像を得ることができる。
【0150】
このように、本実施の形態によれば、EMI対策がなされた画像読取装置あるいは画像形成装置であっても、画像濃度ムラを除去した画像を得ることができる。
【0151】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0152】
2 自動原稿搬送部、3 イメージスキャナー、4 プリントエンジン、5 給紙部、21 原稿給紙台、22,52,53,54 送出ローラー、23 レジストローラー、24 搬送ドラム、25 排紙台、26 手差給紙部、27 転写ベルト、33 撮像デバイス、35 原稿台、37 白板、38 窓部、41,41Y,41M,41C,41K 感光体ドラム、43Y,43M,43C,43K 画像書込部、44Y,44M,44C,44K イメージング(作像)ユニット、45 転写器、46 除電器、47 定着装置、48 クリーニング部、49 IDCセンサー、51 タイミングローラー、55 搬送ローラー、57 トレイ、102 基準クロック発生器、104 周波数拡散器、106 スイッチ、108 駆動クロック発生器、110 イメージセンサー、112 変換器、120 画像処理部、122 メモリー、441Y,441M,441C,441K トナーユニット、471 加熱ローラー、472 加圧ローラー、MFP 画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号と前記基準信号を所定規則に従って周波数拡散した周波数拡散信号とのうち一方を用いてタイミング信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部からの前記タイミング信号に従って動作する、画像を読取るための撮像デバイスと、
前記基準信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させて、第1の基準色を有する第1の基準物体を読取ることで取得される第1の画像信号と、前記周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させて、前記第1の基準物体を読取ることで取得される第2の画像信号とに基づいて、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段と、
前記撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にするとともに、前記撮像デバイスの他の検出面に読取対象物体を配置した上で、前記周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させることで、前記所定状態に対応する第3の画像信号および前記読取対象物体に対応する第4の画像信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、
前記第3の画像信号に基づいて前記固有関数から補正値を算出するとともに、当該算出した補正値で前記第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号として出力する補正手段とを備える、画像読取装置。
【請求項2】
前記固有関数は、位相を示す定数を含み、
前記補正手段は、前記第3の画像信号に基づいて、前記撮像デバイスの読取動作に応じて前記時間変化特性の位相を示す値を順次更新する、請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記撮像デバイスは、第1の方向に延びるライン状の検出面を有しており、前記撮像デバイスと前記読取対象物体との相対位置を前記第1の方向とは直交する第2の方向に変化させつつ、1ラインずつの画像を順次走査するように構成されており、
前記補正手段は、前記撮像デバイスによるライン走査毎に、前記時間変化特性の位相を一定量ずつ変化させる一方で、前記第3の画像信号が所定条件を満たす場合には当該一定量を増加または減少させる、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記関数決定手段は、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号との差分の信号に現われる振幅が最大値および/または最小値となる位置に基づいて、前記固有関数に含まれる前記位相を示す定数の初期値を決定する、請求項2または3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にすることは、前記撮像デバイスで前記読取対象物体を読取る間、当該検出面の一部に第2の基準色を有する第2の基準物体を配置した状態を維持することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にすることは、当該検出面の一部に対応する前記撮像デバイスの画素を遮光状態にすることを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
画像を形成する画像形成手段と、
基準信号と前記基準信号を所定規則に従って周波数拡散した周波数拡散信号とのうち一方を用いてタイミング信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部からの前記タイミング信号に従って動作する、画像を読取るための撮像デバイスと、
前記基準信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させて、第1の基準色を有する第1の基準物体を読取ることで取得される第1の画像信号と、前記周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させて、前記第1の基準物体を読取ることで取得される第2の画像信号とに基づいて、周波数拡散に起因する濃度ムラを示す固有関数を決定する関数決定手段と、
前記撮像デバイスの検出面の一部を所定状態にするとともに、前記撮像デバイスの他の検出面に読取対象物体を配置した上で、前記周波数拡散信号を用いて発生されたタイミング信号で前記撮像デバイスを動作させることで、前記所定状態に対応する第3の画像信号および前記読取対象物体に対応する第4の画像信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、
前記第3の画像信号に基づいて前記固有関数から補正値を算出するとともに、当該算出した補正値で前記第4の画像信号を補正した上で第5の画像信号として出力する補正手段とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249273(P2012−249273A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122036(P2011−122036)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】