説明

画像読取装置および画像形成装置

【課題】コストを抑えながら省エネルギーモードから読み取り可能となるまでのウェイト時間の更なる短縮を図る。
【解決手段】待機時に省電力化を図る省エネルギーモードへの移行の際に、ゲインアンプのゲイン調整に際しての読取り対象である白基準板の領域へ走行体が移動して停止するようにした画像読取装置において、省エネルギーモードへの移行の際にゲイン調整値を復帰パラメータとして記憶し、省エネルギーモードからの復帰動作時に、復帰パラメータをゲインアンプのゲイン調整値として再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、スキャナ、ファクシミリなどに用いられる画像読取装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境保護、省エネルギーが取り上げられ、複写機やMFPなどの設計においても、エナジースター、ZESM等の省エネルギーを目標として提唱されている規格に適合させるための努力が続けられている。これらの規格は省エネルギーを目的とし、待機状態(主電源オン後、使用されない状態が所定の時間経ったときに一部の電源供給を停止し、復帰指令を待つ状態)にある時、消費エネルギーに制限を設けたものである。
【0003】
現在、複写機やMFPで実施されている待機時における省エネモードは、消費電力の大きい定着ヒータをはじめ、操作パネル等の電源はオフ、あるいは低電力運転に切り替えられ、スキャナ部に於いては電源を一括してオフされることが一般的である。
【0004】
一方、待機状態にある複写機やMFPを使用する場合は、電源をオン状態に戻して低電力運転から通常運転状態に戻し、使用可能な状態になるまでユーザを待たせることになる。この待ち時間はユーザにとっては実際以上に長く感じられ、ストレスを与えることにつながっている。
【0005】
具体的には、待機状態からの復帰時において、スキャナ部は得られたアナログ画像信号が精度良くデジタル画像信号に変換されるように、電源がオンされた時に以下の調整を行っている。
・アナログ画像信号を程よい大きさに増幅するための増幅率の調整。
・黒レベルが最適な値になるように基準レベルの調整。
【0006】
従って、スキャナ部への電源供給を停止する場合における待機状態からの復帰時に、上記した調整を行うための時間が含まれ、ユーザをより長く待たせる結果につながると言う不具合がある。
【0007】
そこで従来においては、ゲイン調整実行前の走行体のイニシャライズ処理(ホームポジション検出)を省略して上述した調整に掛かる時間の短縮を行う技術(特許文献1)や上述した調整の初期値を保存しておいた省エネモード移行前の値とする事で調整に掛かる時間の短縮を行う技術(特許文献2,3)などが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年においては、特許文献1〜3のような技術による復帰時間の短縮化に加えて、更なる復帰時間の短縮が必要となってきている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コストを抑えながら省エネルギーモードから読み取り可能となるまでの待ち時間の更なる短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、待機時に省電力化を図る省エネルギーモードへの移行の際に、ゲインアンプのゲイン調整に際しての読取り対象である白基準板の領域へ走行体が移動して停止するようにした画像読取装置において前記省エネルギーモードへの移行の際に前記ゲイン調整後のゲイン調整値を復帰パラメータとして記憶するゲイン記憶手段と、前記省エネルギーモードからの復帰動作時に、前記復帰パラメータを前記ゲインアンプの前記ゲイン調整値として再設定するゲイン設定手段と、前記ゲイン設定手段による設定の完了後、前記白基準板の領域から前記走行体のホームポジションへの復帰処理を行うと同時に、前記白基準板における白基準レベルを取得し、前記白基準レベルが正常な範囲であるか否かを判断する初期化処理手段と、前記白基準レベルが正常な範囲でないと判断された場合には、前記白基準板の領域へと前記走行体を移動させ、前記ゲインアンプの前記ゲイン調整を再度実施するゲイン再設定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを抑えながら省エネルギーモードから読み取り可能となるまでのウェイト時間の更なる短縮を図るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施の形態にかかるデジタル複合機を概略的に示す構成図である。
【図2】図2は、第1の実施形態のデジタル複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態のスキャナ部の読み取りユニットを示す概略構成図である。
【図4】図4は、第1の実施形態のスキャナ部の制御系を示すブロック図である。
【図5】図5は、第1の実施形態のスキャナ部の省エネモードへの移行処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、第1の実施形態のスキャナ部の省エネモードからの復帰処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施形態のスキャナ部のメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施形態のスキャナ部の制御系を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態のAGC回路の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第2の実施形態の画像読取時の主走査方向の同期信号と読取データの有効領域のタイミングチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態の副走査方向のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態は画像形成装置として、コピー機能、ファクシミリ(FAX)機能、プリント機能、スキャナ機能および入力画像(スキャナ機能による読み取り原稿画像やプリンタあるいはFAX機能により入力された画像)を配信する機能等を複合したいわゆるMFP(Multi Function Peripheral)と称されるデジタル複合機を適用した例である。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるデジタル複合機1000を概略的に示す構成図である。本実施の形態にかかるデジタル複合機1000は、後処理装置であるフィニシャ100と画像読取装置であるスキャナ部200と画像印刷装置であるプリンタ部300とで構成されている。
【0015】
まず、デジタル複合機1000のスキャナ部200について説明する。スキャナ部200は、概略的には、自動原稿送り装置(以後、ADF(Auto Document Feeder)という。)1と読み取りユニット50とで構成されている。
【0016】
ADF1の原稿台2に原稿の画像面を上にして置かれた原稿束は、操作部400(図2参照)上のプリントキー(図示せず)が押下されると、一番下の原稿から給送ローラ3、給送ベルト4によってコンタクトガラス6上の所定の位置に給送される。なお、デジタル複合機1000は、1枚の原稿をコンタクトガラス6上の所定の位置に給送完了する毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有している。
【0017】
コンタクトガラス6上の所定の位置に給送された原稿は、読み取りユニット50によって画像データを読み取られる。
【0018】
ここで、読み取りユニット50について詳述する。読み取りユニット50は、原稿を載置するコンタクトガラス6と光学走査系で構成されている。光学走査系は、照明手段である露光ランプ51、第1ミラー52、レンズ53、CCDイメージセンサ54等で構成されている。露光ランプ51および第1ミラー52は、第1キャリッジ61上に固定され、第2ミラー55および第3ミラー56は、第2キャリッジ62上に固定されている。この光学走査系は、スキャナ駆動モータ63にて駆動される。本実施の読み取りユニット50は、コンタクトガラス6上に原稿が搭載された場合に、露光ランプ51を点灯し、走行体である第1キャリッジ61、および第2キャリッジ62をスキャナ駆動モータ63により右方向に移動走査して原稿を読み取る読み取り方式と、露光ランプ51を点灯し、第1キャリッジ61、および第2キャリッジ62は停止した状態のまま、ADF1によって搬送される原稿を読み取る読み取り方式が選択可能である。第1キャリッジ61、および第2キャリッジ62をスキャナ駆動モータ63により右方向に移動走査して原稿を読み取る読み取り方式の場合には、原稿像を読み取るときには、光路長が変わらないように、第1キャリッジ61と第2キャリッジと62が2対1の相対速度で副走査方向に機械的に走査される。原稿画像は、CCDイメージセンサ54によって読み取られ、電気信号に変換されて出力される。CCDイメージセンサ54からの出力信号は、ADコンバータによりデジタルデータ(画像データ)に変換される。
【0019】
デジタルデータに変換された原稿画像情報は、例えばプリンタ部300に送られてプリント出力として画像情報の出力が行なわれる場合や、あるいは記憶装置に送られて入力画像情報の記憶が行なわれる場合等、種々あり、各々のスキャナ部200の情報として使用されている。
【0020】
読み取りユニット50によって画像データの読み取りが終了した原稿は、給送ベルト4および排送ローラ5によって排出される。
【0021】
さらに、原稿セット検知7にて原稿台2に次の原稿が有ることを検知した場合、前原稿と同様に、次の原稿がコンタクトガラス6上に給送される。
【0022】
上述した給送ローラ3、給送ベルト4、排送ローラ5は、それぞれ搬送モータ(図示せず)によって駆動される。
【0023】
次に、デジタル複合機1000のプリンタ部300について説明する。プリンタ部300は、概略的には、作像ステーション70と定着ユニット17と給紙部80と両面給紙ユニット111とで構成されている。
【0024】
作像ステーション70は、電子写真方式で作像するものであり、書き込みユニット57と感光体15と現像ユニット27と転写部としても機能する搬送ベルト16とを主体として構成されている。
【0025】
給紙部80は、第1トレイ8と第2トレイ9と第3トレイ10と第1給紙装置11と第2給紙装置12と第3給紙装置13と縦搬送ユニット14とにより構成されている。第1トレイ8、第2トレイ9、第3トレイ10に積載された転写紙Pは、各々第1給紙装置11、第2給紙装置12、第3給紙装置13によって給紙され、縦搬送ユニット14によって感光体15に当接する位置まで搬送される。
【0026】
読み取りユニット50にて読み込まれた画像データは、書き込みユニット57から出力されるレーザビームによって感光体15に書き込まれ、現像ユニット27を通過することによってトナー像が形成される。書き込みユニット57は、レーザ出力ユニット58、結像レンズ59、ミラー60で構成され、レーザ出力ユニット58の内部には、レーザ光源であるレーザダイオードおよびモータによって高速で定速回転する多角形ミラー(ポリゴンミラー)が備わっている。なお、特に図示しないが、感光体15の一端近傍のレーザビームを照射される位置に、主走査同期信号を発生するビームセンサが配置されている。
【0027】
感光体15上のトナー像は、感光体15の回転と等速で搬送ベルト16によって搬送される転写紙Pに転写される。その後、定着ユニット17に搬送されて画像を定着された転写紙Pは、排紙ユニット18によって後処理装置であるフィニシャ100に排出される。
【0028】
後処理装置のフィニシャ100は、排紙ユニット18の排紙ローラ19によって搬送された転写紙Pを、通常排紙ローラ102方向とステープル処理部方向へと切り替えて導くことができる。より詳細には、後処理装置であるフィニシャ100は、切り替え板101を上に切り替えることにより、搬送ローラ103を経由して通常の排紙トレイ104側に転写紙Pを排紙することができ、切り替え板101を下方向に切り替えることで、搬送ローラ105、107を経由して、ステープル台108に転写紙Pを搬送することができる。
【0029】
ステープル台108に積載された転写紙Pは、一枚排紙されるごとに紙揃え用のジョガー109によって、紙端面が揃えられ、一部のコピー完了と共にステープラ106によって綴じられる。ステープラ106で綴じられた転写紙P群は、自重によってステープル完了排紙トレイ110に収納される。
【0030】
一方、フィニシャ100の通常の排紙トレイ104は、前後に移動可能な排紙トレイである。前後に移動可能な排紙トレイ104は、原稿毎、あるいは、画像メモリによってソーティングされたコピー部毎に、前後に移動し、簡易的に排出されてくるコピー紙を仕分けるものである。
【0031】
本実施の形態にかかるデジタル複合機1000は、転写紙Pの両面に画像を作像可能である。転写紙Pの両面に画像を作像する場合は、各給紙トレイ8〜10から給紙され作像された転写紙Pを排紙トレイ104側に導かないで、排紙ユニット18の経路切り替えの為の分岐爪112を上側にセットすることで、一旦両面給紙ユニット111にストックする。その後、両面給紙ユニット111にストックされた転写紙Pは、再び感光体15に作像されたトナー画像を転写するために、反転された状態で両面給紙ユニット111から再給紙され、下側にセットされた分岐爪112を介して排紙トレイ104に導かれる。このように、転写紙Pの両面に画像を作成する場合に両面給紙ユニット111は使用される。また、画像の載った転写紙Pの裏面に印字を行なう際にも両面給紙ユニット111を用いて転写紙Pの裏表を変えることができる。
【0032】
なお、上述した感光体15、搬送ベルト16、定着ユニット17、排紙ユニット18、現像ユニット27、フィニシャ100は、メインモータ(図示せず)によって駆動され、各給紙装置11〜13はメインモータの駆動を各々給紙クラッチ(図示せず)によって伝達駆動される。縦搬送ユニット14は、メインモータの駆動を中間クラッチ(図示せず)によって伝達駆動される。
【0033】
図2は、デジタル複合機1000のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、このデジタル複合機1000は、コントローラ1101とプリンタ部300及びスキャナ部200とをPCI(Peripheral Component Interconnect)バスで接続した構成となる。コントローラ1101は、デジタル複合機1000全体の制御と描画、通信、操作部400からの入力を制御するコントローラである。なお、プリンタ部300又はスキャナ部200には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0034】
コントローラ1101は、コンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)1111と、システムメモリ(MEM−P)1112と、ノースブリッジ(NB)1113と、サウスブリッジ(SB)1114と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)1116と、ローカルメモリ(MEM−C)1117と、ハードディスクドライブ(HDD)1118とを有し、NB1113とASIC1116との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス1115で接続した構成となる。また、MEM−P1112は、ROM(Read Only Memory)1112aと、RAM(Random Access Memory)1112bとをさらに有する。
【0035】
CPU1111は、デジタル複合機1000の全体制御を行うものであり、NB1113、MEM−P1112およびSB1114からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0036】
NB1113は、CPU1111とMEM−P1112、SB1114、AGPバス1115とを接続するためのブリッジであり、MEM−P1112に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0037】
MEM−P1112は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM1112aとRAM1112bとからなる。ROM1112aは、CPU1111の動作を制御するプログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM1112bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0038】
SB1114は、NB1113とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB1114は、PCIバスを介してNB1113と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインタフェース(I/F)部1104なども接続される。
【0039】
ASIC1116は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス1115、PCIバス、HDD1118およびMEM−C1117をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC1116は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC1116の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C1117を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、プリンタ部300やスキャナ部200との間でPCIバスを介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。このASIC1116には、PCIバスを介してFCU(Fax Control Unit)1121、USB(Universal Serial Bus)1122、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インタフェース1123が接続される。
【0040】
MEM−C1117は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD1118は、画像データの蓄積、CPU1111の動作を制御するプログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。
【0041】
AGPバス1115は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM−P1112に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にするものである。
【0042】
次に、本実施の形態のデジタル複合機1000のコントローラ1101がプログラムに従って実現する待機時に省電力化を図る省エネルギーモード(以下、省エネモードという)機能について簡単に説明する。デジタル複合機1000で実施される待機時における省エネモードは、消費電力の大きい定着ユニット17の定着ヒータや操作部400(図2参照)等の電源はオフあるいは低電力運転に切り替え、スキャナ部200においては電源を一括してオフする。より詳細には、デジタル複合機1000は、下記に示す3種類の省エネモードを備えている。
低電力モード:最後に機器を使用してから一定時間経過した場合に、エンジン系負荷の一部を除いて電源供給停止+定着温度を下げる。
スリープモード:低電力モードに移行後、引き続き操作が行われなかった場合、エンジン系負荷への電源供給を停止する。
オフモード:設定時間以上機器を使用しない場合に、エンジン系負荷は全て、コントローラ系負荷は一部を除いて電源供給を停止する。
【0043】
なお、スリープモードは、オプション追加によりプリンタ機能やスキャナ機能を有した場合に有効となる。オフモードは、コピー機能しか有しない場合に有効となる。よって、スリープとオフモードは、デジタル複合機1000がどのような機能を有しているかにより、一方の機能のみ有効になる。すなわち、スリープモードとオフモードは、排他の関係にある。
【0044】
ところで、上述したような省エネモードによる待機状態からの復帰時においては、スキャナ部200は、得られたアナログ画像信号が精度良くデジタル画像信号に変換されるように、電源がオンされた時に以下の調整を行っている。
・アナログ画像信号を程よい大きさに増幅するための増幅率の調整。
・黒レベルが最適な値になるように基準レベルの調整。
【0045】
従って、待機状態においてスキャナ部200への電源供給を停止する場合における待機状態からの復帰時に、上記した調整を行うための時間が含まれるため、電源投入後のスキャナ部200の原稿読み取り可能となるまでのウェイト時間の短縮が望まれている。
【0046】
次に、本実施の形態のデジタル複合機1000が備える機能について説明する。
【0047】
図3は、スキャナ部200の読み取りユニット50を示す概略構成図である。前述した構成に加えて、読み取りユニット50の上部であってコンタクトガラス6の副走査方向上流側には、白基準板90が配置されている。この白基準板90は、電源オン時には画像信号を増幅するゲインアンプのゲイン調整する際の読み取り対象であり、原稿読み取り時にはシェーディング補正データを得るための読み取り対象である、主走査方向に設けられた均一濃度のほぼ白色の部材である。
【0048】
本実施の形態のデジタル複合機1000においては、原稿の読み取りに先立って白基準板90の読み取りデータを走査して、シェーディング補正用データを生成しメモリに記憶しておき、そのシェーディング補正用データで原稿画像を読み取りながら正規化することで、該装置における光量分布ムラ、CCDの感度ムラ、そして出力変動等を補正し、原稿の画像情報を精度よく読み取っている。
【0049】
CCDイメージセンサ54は、CCD基板92に搭載されている。このCCD基板92は、信号処理IC91(図4参照)などを備えている。CCD基板92は、入射光量に対応した電圧を出力し、画像処理部93に画像データとして渡す。
【0050】
上述したように、スキャナ部200はコントローラ1101に制御されるものであり、CCD基板92と画像処理部93とについてもコントローラ1101により制御されることになる。
【0051】
ここで、図4はスキャナ部200の制御系を示すブロック図である。図4に示すように、コントローラ1101は、信号処理IC91を制御する。また、コントローラ1101は、ゲイン調整に用いる白基準板90のピーク検出機能および露光ランプ51の照度の立ち上りの検出機能を備える検出手段1200を有している。検出手段1200は、白基準板90の読取レベルに対してノイズを除去する為の平均化処理を行なう平均化回路1201と、白基準板90の読取レベルについてピークデータを検出するピーク検出回路1202と、基準レベルを保持する基準レベル保持回路1203と、ピーク検出回路1202で検出したピークデータと基準レベル保持回路1203が保持する基準レベルとを比較する比較回路1204とで構成されている。
【0052】
図4に示すように、CCDイメージセンサ54からの読み取り画像信号を処理する信号処理IC91は、RGB毎のアナログ処理回路により信号処理し、その後A/D変換し、読み取りデータとして画像処理部93に出力するまでの読み取り画像の信号処理を行う。信号処理IC91内の信号処理のフローを説明すると、ここでは、CCDイメージセンサ54の出力を交流結合した信号をクランプ(CLMP)回路91aによりラインクランプした後、サンプルホールド(SH)回路91bにより保持し、保持した信号をゲインが制御できる可変ゲインアンプ(VGA)91cを通して増幅してA/Dコンバータ(ADC)91dに入力する。変換後のデジタル画像データは、読み取り画像データとして画像処理部93に入力される。信号処理IC91は、上記した信号処理フローを実行する制御信号を生成するために、CCDイメージセンサ54の駆動や信号処理IC91のタイミング信号を発生するタイミングジェネレータ91e、CPU1111と直接やり取りを行うCPU IF91f等を構成要素として有する。
【0053】
このようなデジタル複合機1000の主電源投入時又は省エネモードからの復帰時には、A/Dコンバータ(ADC)91dのダイナミックレンジを有効に使用するため、上記白基準板90の読取レベルが規定のレベルとなるようにCCD出力のゲイン調整を行う処理が実行される。CCD出力のゲイン調整は、CCD出力をサンプリングした後、可変ゲインアンプ(VGA)91cにてアナログ信号として増幅する。なお、CCD出力のゲイン調整は、コンバータの分解能が十分な場合には、A/D変換を行った後にデジタル的に増幅する場合もある。また、CCD出力のゲイン調整は、両者の組合せで行う場合もある。
【0054】
主電源投入時又は省エネモードからの復帰時からゲイン調整にいたるステップとしては、一般的に次のような手順となる。まず、第1キャリッジおよび第2キャリッジのイニシャライズ処理(ホームポジション検出)を行い、露光ランプ51の起動及び白基準板90領域へ第1キャリッジおよび第2キャリッジの移動が行われた後、ゲイン調整が実行される。ゲイン調整終了後、第1キャリッジおよび第2キャリッジのホームポジションへの移動が行われ、原稿画像読取が可能な待機状態へ移行する。
【0055】
上記のような一般的なゲイン調整のプロセスに対して、より高速での省エネモードからの復帰を行うためには、本実施形態では次のような処理が行われている。すなわち、まず省エネモードへの移行時に、露光ランプ51の起動及び白基準板90領域へ第1キャリッジおよび第2キャリッジの移動が行われた後、ゲイン調整が実行され、このときのゲイン調整値を復帰パラメータRPとして不揮発性のメモリに記憶される。このメモリが、ゲイン記憶手段に相当する。
【0056】
省エネモードからの復帰時においては、露光ランプ51の起動後に、復帰パラメータPRをゲイン調整値として設定してゲイン調整を行う。この調整作業と同時に、第1キャリッジおよび第2キャリッジのホームポジションへと移動するホーミング動作を行う。
【0057】
ここで、図5は、スキャナ部200の省エネモードへの移行時の処理の流れを示すフローチャートである。上述したように、一定時間何も操作がされない等の所定の条件を満たすと省エネモードに移行し、処理が開始される。処理が開始されると、コントローラ1101は、白基準板90領域へ第1キャリッジ61および第2キャリッジ62の移動を指示する(ステップS101)。従来のスキャナ部ではこの状態で、省エネモードへと移行するが、本実施形態においては、この処理に続いて以下の処理を行う。
【0058】
コントローラ1101は、露光ランプ51の点灯処理を行う(ステップS102)。次いで、コントローラ1101は、ゲイン調整処理を行い(ステップS103)、調整後に露光ランプ51の消灯処理を行う(ステップS104)。なお、この際にオフセット調整や、光量調整などを実施しても良い。そして、コントローラ1101は、調整後のゲイン調整値を復帰パラメータRPとして不揮発性メモリに記憶し(ステップS105)、省電力状態に移行する(ステップS106)。
【0059】
次いで、省エネモードからの復帰時の処理の流れについ説明する。図6はスキャナ部200の省エネモードからの復帰処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62は、省エネモードへの移行時に白基準板90の領域へ移動して停止した状態となっている。なお、通常動作に戻る場合、原稿のセットなどをトリガとして、復帰の処理が実行される。
【0060】
復帰処理が開始されると、コントローラ1101は、信号処理IC91等に必要な初期設定を行い、(ステップS201)、露光ランプ51の点灯処理を行う(ステップS202)。
【0061】
次いで、コントローラ1101は、保存された復帰パラメータRPをゲイン調整値として設定する(ステップS203:ゲイン設定手段)。ゲイン調整値の設定が終わると、コントローラ1101は、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62のホームポジションへの移動を行うホーミングの指示を出すとともに、この指示と同時に白基準板90における白基準データを取得する指示を出す(ステップS204:初期化処理手段)。白基準データは、CCDイメージセンサ54で白基準板90を走査して読み取り、画像処理部93内のA/Dコンバータ91dでアナログ−デジタル変換を行うことで取得され、RAMに保持される。
【0062】
白基準データは、シェーディングの補正用データとして用いられることから、シェーディングされた画像データが飽和しない範囲内の値に設定される。例えば、白基準板90を8bitの分解能で読み取った場合のノイズ成分の標準偏差が6の場合、ノイズ成分も含めて256階調(8bit)内に収まるよう225を目標値とし、この±20%を許容値とする。
【0063】
そして、コントローラ1101は、白基準データが正常な範囲であるか否かを判定する(ステップS205)。白基準データが正常な場合(ステップS205:Yes)、コントローラ1101は、露光ランプ51の消灯処理を行い(ステップS206)、省エネモードからの復帰時の処理を終了する。
【0064】
一方、白基準データが正常でない場合(ステップS205:No)、コントローラ1101は、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62を再度白基準板90の領域へと移動させる指示を行い、ゲイン調整を再度実行する(ステップS207:ゲイン再設定手段)。そして、コントローラ1101は、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62のホームポジションへの移動を行うホーミングの指示を出す(ステップS208)。
【0065】
ついで、コントローラ1101は、白基準データが正常な範囲であるか否かを判定する(ステップS209:再検査手段)。白基準データが正常な場合(ステップS209:Yes)、コントローラ1101は、露光ランプ51の消灯処理を行い(ステップS206)、省エネモードからの復帰時の処理を終了する。白基準データが正常でない場合(ステップS209:No)、再度の調整においても正常値とならないことからスキャナ部200に障害が発生していると判断して、コントローラ1101は、露光ランプ51の消灯処理を行い、機器の停止処理を行う(ステップS210:停止手段)。
【0066】
機器の停止処理後は、コントローラ1101は、機器のディスプレイやユーザの端末等に異常の発生を表示させて通知したり(ステップS211:通知手段)、サービスセンサーへの通報を行ったりする(ステップS212)。
【0067】
次いで、メンテナンス処理の流れについて説明する。図7はスキャナ部200におけるメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである。上述したような省エネモードへの移行、及び復帰がなされない場合、ゲイン調整が行われず、また白基準データの異常判定も行われないこととなってしまい、こうした状況を是正するための処理である。図7に示されるように、コントローラ1101は、前回の省エネモードの復帰時から一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS301)。ここでいう一定時間経過の判定は、時間の経過として判定してもよいし、スキャナ部200による読取回数が一定回数を越えたか否かによって判定してもよい。
【0068】
一定時間が経過するまで判定を繰り返し、経過すると(ステップS301:Yes)、コントローラ1101は、露光ランプ51の点灯処理を行う(ステップS302)。 コントローラ1101は、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62を再度白基準板90の領域へと移動させる指示を行い(ステップS303)、ゲイン調整を実行する(ステップS304)。そして、コントローラ1101は、第1キャリッジ61および第2キャリッジ62のホームポジションへの移動を行うホーミングの指示を出す(ステップS305)。最後に、コントローラ1101は、露光ランプ51の消灯処理を行い、メンテナンス処理を終了する(ステップS306)。
【0069】
以上に、示した本実施形態の画像形成装置においては、省エネモードへの移行時に保存したゲイン調整値を復帰時に利用することとしたため、省エネモードからの復帰時に白基準板90領域へ第1キャリッジおよび第2キャリッジの移動を行ってゲイン調整をする必要がなくなり、この処理にかかる時間を短縮することができるようになるため、省エネルギーモードから読み取り可能となるまでのウェイト時間の更なる短縮を図ることができる。
【0070】
また、省エネモードからの復帰時に白基準データに異常を検出した場合であっても、再度ゲイン調整を実施することとしたため、正常な調整が可能であれば機器の動作を可能とし、機器のダウンタイムの低減を図ることができる。
【0071】
また、メンテナンス処理を行うことで、白基準データの異常検知を定期的に行うことができ、シェーディング補正への影響を抑制することができる。
【0072】
なお、ステップS209〜ステップS211の処理は適宜省略することも出来る。また、図7で示したメンテナンス処理を行わないようにすることもできる。
【0073】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図8ないし図10に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同じ部分は同じ符号で示し説明も省略する。
【0074】
ここで、図8はスキャナ部200の制御系を示すブロック図である。図8に示すように、本実施の形態においては、ゲイン調整を行う機能を発揮するAGC回路94を信号処理IC91内に備えており、ハード的なゲイン調整が可能となっている。
【0075】
図9は、AGC回路94の構成を示すブロック図である。AGC回路94におけるAGCの起動は、SHGT信号のアサートにより実行される。SHGTアサート期間の画像データは、AGC回路94の平均化回路94aにて平均化される。平均化(例えば、4画素のデータの移動平均)によりノイズの影響を低減した画像データは、ピーク検出回路94bにて1ライン毎のピークを検出される。ピーク検出データのラッチはLGT信号のネゲートタイミングで行われ、ピークデータが確定する。確定したピーク検出結果は、ゲイン演算回路94dに入力され、予め設定された白レベル目標値94cとの比較演算が行われる。目標値に対する公差外の場合にはゲイン演算が行われ、その値がゲインレジスタ94eに設定される。
【0076】
ここで、図10は画像読取時の主走査方向の同期信号と読取データの有効領域のタイミングチャートである。主走査の同期信号LSYNCに同期して、CCDイメージセンサ54から1ライン毎のデータの読み取りが行われるが、1ラインの読取データのうち、図10中のLGT信号のタイミングがCCD出力として有効な画像データの期間である。また、図11は、副走査方向のタイミングチャートであり、SHGT信号はAGCの実行期間を示している。
【0077】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
51 露光ランプ
90 白基準板
91c ゲインアンプ
200 スキャナ部
300 プリンタ部
1000 デジタル複合機
1101 コントローラ
1111 CPU
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2002−118726号公報
【特許文献2】特開2002−112027号公報
【特許文献3】特開2002−077520号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機時に省電力化を図る省エネルギーモードへの移行の際に、ゲインアンプのゲイン調整に際しての読取り対象である白基準板の領域へ走行体が移動して停止する画像読取装置において
前記省エネルギーモードへの移行の際に前記ゲイン調整後のゲイン調整値を復帰パラメータとして記憶するゲイン記憶手段と、
前記省エネルギーモードからの復帰時に、前記復帰パラメータを前記ゲインアンプの前記ゲイン調整値として設定するゲイン設定手段と、
前記ゲイン設定手段による設定の完了後、前記白基準板の領域から前記走行体のホームポジションへの復帰処理を行うとともに、前記白基準板の白基準レベルを取得し、前記白基準レベルが正常な範囲であるか否かを判断する初期化処理手段と、
前記白基準レベルが正常な範囲でないと判断された場合には、前記白基準板の領域へと前記走行体を移動させ、前記ゲインアンプの前記ゲイン調整を再度実施するゲイン再設定手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ゲイン再設定手段が、前記ゲインアンプのゲイン調整を再度行った後に、再度前記白色基準板における白基準レベルを取得し、前記白基準レベルが正常な範囲であるか否かを判断する再検査手段と、
前記再検査手段によって、前記白基準レベルが正常な範囲でないと判断された場合に、機器の運転を停止させる停止手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記停止手段により、機器の運転が停止された際に、異常の発生を通知する通知手段
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
一定期間が経過すると、前記走行体を前記白基準板の領域へと移動させて、前記ゲインアンプのゲイン調整を行うメンテナンス手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−115567(P2013−115567A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259250(P2011−259250)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】