説明

画像読取装置および複合機

【課題】原稿の読み取り精度の向上を図るとともに、光源移動機構の小型化および画像読取装置における消費電力の低減を図ること。
【解決手段】原稿を保持する原稿台ガラスを備える本体ハウジング210および当該本体ハウジング210に対してヒンジ機構400を介して回動自在に連結されたTPUユニット120を備える画像読取装置において、TPUユニット120に設けられた透過用光源部300を副走査方向に移動可能に支持する動力伝達機構と、モータが発生した駆動力を用いて本体ハウジング210内に設けられた撮像素子を副走査方向に移動させる撮像素子移動機構と、を駆動ベルト225を用いて連動可能に連結する連結機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像読取装置および複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿台を間にして対向配置された光源および撮像素子を備え、光源および撮像素子を副走査方向に沿って往復移動させながら、光源から照射された光を撮像素子によって受光することで透過型の原稿を読み取る画像読取装置がある。このような画像読取装置における光源および撮像素子は、読み取り動作の起点となるホームポジションと、ホームポジションとは反対側に設けられてホームポジションへの移動を開始する折り返しポジションと、の間を移動する。
【0003】
このような画像読取装置には、原稿を原稿台に押さえるとともに、撮像素子へ不要な外光が入射することを防止するためのカバー部材を備え、このカバー部材に設けられた光源を、撮像素子を往復移動させる移動機構とは別の移動機構によって移動させるようにしたものがある。このような画像読取装置においては、光源を移動させる移動機構と撮像素子を移動させる移動機構とは、それぞれが独立した駆動源を備えている。
【0004】
そして、このような画像読取装置においては、光源と撮像素子とがそれぞれ独立した移動機構によって往復移動することから、光源と撮像素子との副走査方向における相対的な位置を合わせるためのセンサを備え、センサによって検出された検出結果に応じて光源と撮像素子との同期をとっている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−231378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、光源および撮像素子をそれぞれ独立した移動機構を用いて往復移動させるために、移動に際しての光源および撮像素子の副走査方向における相対的な位置にずれが生じ、読み取り精度が低下するという問題がある。また、上述した従来の技術では、光源および撮像素子をそれぞれ独立した移動機構を用いて往復移動させるために、画像読取装置が大型化したり消費電力が多くなったりするという問題がある。特に、光源を移動させる移動機構および駆動源がカバー部材に設けられている画像読取装置では、カバー部材が大型化し、原稿をセットするためにカバー部材を動かす作業が煩わしいという問題がある。
【0007】
また、上述した特許文献1に記載された技術では、光源と撮像素子との同期をとるために、ユニット側キャリッジに位置検出センサを搭載する必要があり、装置の製造コストが増加してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像読取装置は、原稿を保持する原稿台を備える本体ハウジングおよび当該本体ハウジングに対してヒンジ機構を介して回動自在に連結されたカバー部材を備える画像読取装置において、前記カバー部材に設けられた光源と、前記カバー部材に設けられて前記光源を副走査方向に移動可能に支持する光源移動機構と、前記本体ハウジング内に設けられた撮像素子と、前記本体ハウジング内に設けられて駆動源が発生した駆動力を用いて前記撮像素子を前記副走査方向に移動させる撮像素子移動機構と、帯状部材を用いて前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構とを連動可能に連結する連結機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
したがって、画像読取装置においては、光源および撮像素子を、副走査方向に連動させることができる。これによって画像読取装置は、移動に際しての光源および撮像素子の副走査方向における相対的な位置にずれが生じることによる、読み取り精度の低下を防止することができる。
【0010】
また、画像読取装置においては、光源および撮像素子を、同じ駆動源の駆動力を用いて連動させることができる。これによって画像読取装置は、光源移動機構の小型化および画像読取装置における消費電力の低減を図ることができる。
【0011】
これによって画像読取装置は、原稿の読み取り精度の向上を図るとともに、光源移動機構の小型化および画像読取装置における消費電力の低減を図ることができる。そして、これによって利用者は、小型で消費電力を抑制した画像読取装置を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0012】
また、画像読取装置においては、帯状部材を用いることで、駆動源で発生した駆動力を光源移動機構へ伝達するために回転する各部品や駆動源,光源移動機構,あるいは撮像素子移動機構において回転する各部品の回転軸心方向が異なっていても、駆動源で発生した駆動力を光源移動機構および撮像素子移動機構に伝達して、光源および撮像素子を副走査方向に連動させることができる。
【0013】
これによって画像読取装置は、光源および撮像素子を同じ駆動源の駆動力を用いて連動させる場合にも設計の自由度の向上を図り、設計上の制限に起因して部品点数が増加したり、画像読取装置が大型化したりすることを防止できる。そして、これによって利用者は、小型で消費電力を抑制した画像読取装置を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0014】
また、この発明にかかる画像読取装置における前記帯状部材は、前記ヒンジ機構またはその近傍を経由するようにして前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構との間に架け渡されていることを特徴とする。
【0015】
したがって、画像読取装置においては、本体ハウジングに対するカバー部材の位置に拘わらず、光源移動機構と撮像素子移動機構とを常時連結することができる。これによって画像読取装置は、光源と撮像素子との副走査方向における相対的な位置を合わせるためのセンサを用いることなく、光源と撮像素子との副走査方向における相対的な位置を原稿の読み取りに適した位置に保持することができる。
【0016】
また、これによって画像読取装置は、製造コストを増加させることなく、原稿の読み取り精度の向上を図るとともに、光源移動機構の小型化および画像読取装置における消費電力の低減を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型の画像読取装置を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0017】
また、この発明にかかる画像読取装置における前記連結機構は、単一の帯状部材を用いて前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構とを連動可能に連結することを特徴とする。
【0018】
したがって、画像読取装置においては、光源および撮像素子を高精度に同期させて連動させることができる。これによって画像読取装置は、原稿の読み取り精度の向上を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型の画像読取装置を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0019】
また、画像読取装置においては、1箇所で帯状部材のテンションを調整することができる。これによって画像読取装置は、テンション調整のための部品点数の増加やテンション調整のための部品を設けることによる画像読取装置の大型化を抑えつつ、原稿の読み取り精度の向上を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型の画像読取装置を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0020】
また、この発明にかかる画像読取装置における前記光源は、LEDによって構成されていることを特徴とする。
【0021】
したがって、画像読取装置においては、点灯直後から原稿の読み取りが可能になり、LEDに代えて蛍光管を用いた場合と比較して照射光量の安定化を図ることができる。これによって、画像読取装置は、原稿の読み取りを迅速に開始するとともに、読み取り精度の向上を図ることができる。これによって、利用者は、高精度な画像データを迅速に得ることができる。
【0022】
また、画像読取装置は、LEDを用いることによってLEDに代えて蛍光管を用いた場合と比較して、消費電力を抑え、ランニングコストを低く抑えることができる。これによって利用者は、消費電力およびランニングコストの低い画像読取装置を用いて、高精度な画像データを得ることができる。
【0023】
また、この発明にかかる複合機は、上述した画像読取装置と、前記画像読取装置が備える撮像素子に入射された光の強弱に応じた画像を記録媒体上に形成する画像形成装置と、を備えることを特徴とする。
【0024】
したがって、複合機においては、上述した画像読取装置における撮像素子に対して変位する光源を、同じ駆動源の駆動力を用いて撮像素子の移動に連動させることができる。これによって複合機は、画像読取装置における読み取り精度の低下を防止し、光源移動機構の小型化および画像読取装置における消費電力の低減を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型の複合機を使用して、高精度な画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像読取装置および複合機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像読取装置の好適な実施の形態1を詳細に説明する。この実施の形態1は、この発明にかかる画像読取装置を実現するスキャナ装置への適用例を示す。
【0027】
図1は、実施の形態1にかかるスキャナ装置の外観を示す斜視図である。はじめに、図1を用いて、実施の形態1にかかるスキャナ装置の外観について説明する。図1に示すように、スキャナ装置100は、本体ユニット110と、透過型原稿用光源ユニット(以下、「TPUユニット」という)120と、を備えている。実施の形態1においては、TPUユニット120によってカバー部材が実現されている。
【0028】
TPUユニット120は、本体ユニット110に対して対向配置されており、ヒンジ機構(図4参照)を介して、本体ユニット110に連結されている。TPUユニット120は、ヒンジ機構における本体ユニット110とTPUユニット120との連結部分を支点にして、図1に示す状態から本体ユニット110に対して離反する方向に回動可能に連結されている。
【0029】
図2は、実施の形態1にかかるスキャナ装置100の縦断正面図である。つぎに、図2を用いて、実施の形態1のスキャナ装置100の概略構成について説明する。図2に示すように、スキャナ装置100は、本体ユニット110の外郭をなす本体ハウジング210と、TPUユニット120の外郭をなすTPUハウジング230と、を備えている。
【0030】
本体ハウジング210およびTPUハウジング230は、それぞれ、上下方向に分離可能な2つのパーツを主体として形成されている。格別な符号は省略するが、以降、適宜、本体ハウジング210およびTPUハウジング230の上側を構成する部分を、上側本体ハウジング、上側TPUハウジングとして説明する。同様に、本体ハウジング210およびTPUハウジング230の下側を構成する部分を、下側本体ハウジング、下側TPUハウジングとして説明する。
【0031】
はじめに、本体ユニット110の概略構成について説明する。本体ユニット110における本体ハウジング210は、TPUハウジング230に向かって開口する開口部211を備えている。開口部211には、開口部211を閉塞するように原稿台ガラス212が設けられている。
【0032】
この実施の形態1では、開口部211および原稿台ガラス212によって読取窓が実現され、本体ハウジング210における開口部211周辺部によって枠部材が実現されている。原稿台ガラス212上には、読み取り対象となる原稿が載置される。
【0033】
本体ハウジング210および原稿台ガラス212によって形成される空間213には、原稿台ガラス212に載置された原稿の画像を光学的に読み取るための光学部材214が設けられている。光学部材214としては、原稿台ガラス212に向けて光を照射する反射用光源215、反射用光源215から照射され原稿において反射された光を所定の経路に導く複数のミラー216、ミラー216によって導かれた光を受光する撮像素子217、ミラー216によって導かれた光を撮像素子217に結像させるレンズ218などが挙げられる。
【0034】
撮像素子217としては、たとえば、受光面に結像された光学像を光電変換して、素子ごとの受光量に応じた電気信号を出力するフォトダイオードを用いることが可能である。スキャナ装置100においては、前述のフォトダイオードが走査回路基板219上において主走査方向に沿って直線的に配列されることによって構成されるリニアイメージセンサが、撮像素子217として用いられている。
【0035】
また、空間213には、スキャナキャリッジ220が設けられている。スキャナキャリッジ220は、原稿台ガラス212と平行であって、かつ、副走査方向に延出するキャリッジガイド221に沿って摺動自在に設けられている。
【0036】
スキャナキャリッジ220には、駆動源としてのモータ222に連結された撮像素子移動機構223を介して、駆動源としてのモータ222で発生させた駆動力が伝達される。モータ222は、たとえばステッピングモータのように、駆動量を制御可能な機能を備えるものが用いられる。
【0037】
撮像素子移動機構223は、モータ222の駆動軸に連結されたギア列や、ギア列を構成するプーリ(図5参照)と従動プーリ224との間に架け渡された帯状部材としての駆動ベルト225などによって構成されている。スキャナキャリッジ220は、駆動ベルト225に連結されている。
【0038】
スキャナキャリッジ220は、モータ222で発生させた駆動力が撮像素子移動機構223を介して伝達されることによって、原稿台ガラス212に沿って副走査方向に移動する。スキャナキャリッジ220は、原稿の読み取りを開始する側の端部位置に設定されたホームポジションと、原稿を読み取り後ホームポジションに向けて折り返す位置に設定された折り返しポジションとの間を往復移動する。上述した光学部材214は、スキャナキャリッジ220に搭載されている。光学部材214は、スキャナキャリッジ220の移動にともなって、原稿台ガラス212に沿って副走査方向に移動する。
【0039】
つぎに、TPUユニット120の概略構成について説明する。TPUユニット120におけるTPUハウジング230には、本体ハウジング210に対向する側に、本体ハウジング210に向かって開口する開口部231が設けられている。また、TPUハウジング230は、開口部231を覆う位置に、保護マット232が設けられている。保護マット232は、TPUハウジング230に対して着脱自在に設けられている。
【0040】
TPUハウジング230には、光源としての透過用光源部(図3参照)が設けられている。透過用光源部は、写真用フィルムなどのような光透過型の原稿の読み取り動作に際して使用され、原稿台ガラス212に向けて光を照射する。透過用光源部は、原稿台ガラス212に沿って副走査方向に移動可能に設けられている。
【0041】
TPUハウジング230には、上述したモータ222の駆動力を透過用光源部に伝達する光源移動機構としての動力伝達機構(図4参照)が設けられている。詳細は後述するが、TPUユニット120に設けられた動力伝達機構は、上述した駆動ベルト225を含んでおり、モータ222の駆動力を駆動ベルト225を用いて動力伝達機構に伝達することによって、透過用光源部を副走査方向に移動させる。
【0042】
すなわち、スキャナ装置100においては、モータ222の駆動力を単一の駆動ベルト225を用いて撮像素子移動機構223および動力伝達機構に伝達し、スキャナキャリッジ220および透過用光源部を単一のモータ222の駆動力によって駆動する。モータ222が駆動している最中は、モータ222の駆動力が駆動ベルト225を介して、スキャナキャリッジ220および透過用光源部に常時伝達される。
【0043】
このため、透過用光源部は、透過用光源部におけるLED(図3参照)の点灯の有無に拘わらずスキャナキャリッジ220とともに副走査方向に沿って移動する。透過用光源部は、原稿の照射を開始する側の端部位置に設定されたホームポジションと、原稿を照射後ホームポジションに向けて折り返す位置に設定された折り返しポジションとの間を往復移動する。
【0044】
フィルムのような光透過型の原稿(以下、「フィルム」という)の読み取り動作に際しては、原稿台ガラス212の上、すなわち、本体ユニット110とTPUユニット120の間にフィルムフォルダ240が設置される。フィルムフォルダ240は、原稿台ガラス212上におけるフィルム用の読取位置にフィルムが設置されるように、フィルムの設置位置を案内するとともに、設置されたフィルムを読取位置に固定する部材である。
【0045】
図3は、透過用光源部を示す分解斜視図である。つぎに、図3を用いて、透過用光源部の構成について説明する。図3に示すように、透過用光源部300は、LED301と、LED301によって発光された光を伝播させる導光板302と、を備えている。導光板302によって、LED1個あたりの照射面積よりも広い面積を照射することができる。なお、図3中、導光板302に表記された仮想線は、導光板302における有効発光エリアを示している。
【0046】
導光板302中を伝播された光は、プリズムシート303および拡散シート304を介して、支持フレーム305に設けられた開口部306から、原稿台ガラス212に向けて照射される。プリズムシート303および拡散シート304を介することにより、導光板302中を伝播された光をより広い面積に照射することができる。
【0047】
透過用光源部300において、導光板302を間にして開口部306とは反対側には、導光板302中を伝播された光を開口部306へ向けて反射させる反射板307が設けられている。反射板307を設けることによって、導光板302中を伝播された光を、効率よく原稿台ガラス212側へ照射することができる。
【0048】
透過用光源部300において、支持フレーム305の側方には、透過用光源部300を駆動ベルト225に固定する固定部308が設けられている。固定部308は、原稿台ガラス212側から駆動ベルト225を狭持するように、上方に向けて開口している。支持フレーム305において、開口部306と固定部308との間であって、TPUハウジング230に設けられたガイドレール(図4参照)に対向する位置には、ガイドレールに嵌め込まれる溝309が設けられている。
【0049】
また、透過用光源部300において、支持フレーム305の固定部308とは反対側の側方であって、TPUハウジング230に設けられたガイド部材(図4参照)に対向する位置には、ガイド部材に嵌め込まれる溝310が設けられている。
【0050】
図4は、透過用光源部300の移動に関わる各部を示す斜視図である。つぎに、図4を用いて、透過用光源部300の移動に関わる各部について説明する。図4においては、TPUハウジング230における上側TPUハウジングを取り外した状態のスキャナ装置100が示されている。TPUハウジング230は、図4中符号400で示すヒンジ機構における本体ユニット110とTPUユニット120との連結部分を介して、本体ハウジング210に対して回動することで、原稿台ガラス212に対して接離自在とされている。
【0051】
図4に示すように、TPUハウジング230には、透過用光源部300と、透過用光源部300を副走査方向に往復移動させる光源移動機構401と、が設けられている。光源移動機構401は、副走査方向に対向配置された一対のプーリ402,403を備えている。このプーリ402,403には、上述した駆動ベルト225が架け渡されている。実施の形態1においては、駆動ベルト225,プーリ402,403によって動力伝達機構が実現されている。
【0052】
図示を省略するが、TPUハウジング230には、プーリ402をプーリ403から離反する方向へ付勢することで駆動ベルト225のテンションを調整するテンション調整機構が設けられている。テンション調整機構は、たとえば、プーリ402の回転軸を支持する支持部材や、この支持部材をプーリ403から離反する方向へ付勢するバネなどの付勢部材などを用いて実現することが可能である。
【0053】
テンション調整機構における付勢部材は、スキャナキャリッジ220および透過用光源部300を副走査方向に移動させる際に、駆動ベルト225の弛みなどによってスキャナキャリッジ220および透過用光源部300の連動に支障をきたさない程度に、駆動ベルト225にテンションを与える付勢力を、プーリ402に作用させる。スキャナ装置100においては、駆動ベルト225のテンションを、単一のテンション調整機構によって駆動ベルト225の全体に亘って調整することができる。
【0054】
駆動ベルト225は、TPUハウジング230の外部に設けられたプーリ群404を介して、本体ハウジング210の内部へ導かれている。プーリ403とプーリ群404とは、主走査方向に対向している。駆動ベルト225は、プーリ403およびプーリ403の近傍に設けられたプーリ405によって方向を変えられてプーリ群404へ導かれている。
【0055】
図4中符号406は上述した溝309が嵌め込まれるガイドレールであり、図4中符号407は上述した溝310が嵌め込まれるガイド部材である。また、図4中符号408は、透過用光源部300から照射された光を原稿台ガラス212側に導くための開口部である。開口部408は、透過用光源部300のうち、フィルムの読み取り範囲をカバーするように設けられている。
【0056】
図5は、図4に示した斜視図を一部切断して示す斜視図である。図5には、図4に示した斜視図における本体ハウジング210を一部切断した状態が示されている。図5に示すように、TPUハウジング230の内部からプーリ群404へ導かれた駆動ベルト225は、本体ハウジング210の内部に設けられたプーリ群501を介して、プーリ502に架け渡されている。
【0057】
プーリ502は、上述した従動プーリ224に対して、副走査方向に対向する位置に設けられている。上述したように、プーリ502はモータ222に連結されており、プーリ502と従動プーリ224との間には駆動ベルト225が架け渡されているため、プーリ502の回転にともなって駆動ベルト225が回転すると、駆動ベルト225によって従動プーリ224も回転する。これによって、撮像素子217が副走査方向に往復移動する。
【0058】
また、プーリ502に伝達されたモータ222の駆動力は、駆動ベルト225を介してプーリ402,403に伝達される。これによって、プーリ402,403は、プーリ502の回転にともなって回転し、透過用光源部300が副走査方向に往復移動する。実施の形態1においては、駆動ベルト225、プーリ502、プーリ群404,501によって連結機構が実現されている。
【0059】
上述したように、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、本体ユニット110に対するTPUユニット120の位置に拘わらず、撮像素子217に対して変位する透過用光源部300を、撮像素子217の移動に連動させることができる。これによってスキャナ装置100は、透過用光源部300および撮像素子217の副走査方向における相対的な位置にずれが生じることによる、読み取り精度の低下を防止することができる。
【0060】
また、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、透過用光源部300および撮像素子217を、単一のモータ222の駆動力を用いて連動させることで、動力伝達機構の小型化およびスキャナ装置100における消費電力の低減を図ることができる。これによってスキャナ装置100は、フィルムの読み取り精度の向上を図るとともに、動力伝達機構の小型化およびスキャナ装置100における消費電力の低減を図ることができる。そして、これによって利用者は、小型で消費電力を抑制したスキャナ装置100を使用して、フィルムの画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0061】
ここで、たとえば、モータ222の駆動力を、平歯車形状のギアやプーリの輪列によって、撮像素子移動機構223および動力伝達機構に伝達することを想定した場合、モータ222や撮像素子移動機構223および動力伝達機構におけるギアやプーリの回転軸心方向が平行になるように各回転軸心方向を揃える必要がある。このため、設計の自由度が低下し、部品点数が増加したり、画像読取装置が大型化したりすることが懸念される。
【0062】
また、実施の形態1に示したように、連結機構がヒンジ機構の近傍を経由する構成をとる場合、ヒンジ機構における回転軸心方向と、モータ222や撮像素子移動機構223および動力伝達機構におけるギアやプーリの回転軸心方向とが異なる場合、平歯車形状のギアやプーリのみでは、モータ222の駆動力を撮像素子移動機構223および動力伝達機構に伝達することができない。
【0063】
この対策として、たとえば、モータ222の駆動力を、斜歯車形状のギアやプーリを含むギアやプーリの輪列によって、撮像素子移動機構223および動力伝達機構に伝達することで、斜歯車形状のギアやプーリによって各回転軸心方向を変更することができるが、この場合、モータ222の駆動力を伝達するための機構が複雑になり、部品点数が増加したり、画像読取装置が大型化したりすることが懸念される。
【0064】
これに対して、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、モータ222の駆動力を駆動ベルト225を用いて撮像素子移動機構223および動力伝達機構に伝達することで、プーリ402,403,502や従動プーリ224の軸芯方向と、プーリ群404,501の軸芯方向とが異なっている場合にも、モータ222で発生した駆動力を動力伝達機構および撮像素子移動機構223に伝達させて、透過用光源部300および撮像素子217を副走査方向に連動させることができる。
【0065】
これによってスキャナ装置100は、設計の自由度の向上を図り、設計上の制限に起因して部品点数が増加したり、スキャナ装置100が大型化したりすることを防止できる。そして、これによって利用者は、小型で消費電力を抑制したスキャナ装置100を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0066】
また、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、1本の駆動ベルト225を用いて動力伝達機構と撮像素子移動機構223とを連動可能に連結することで、透過用光源部300および撮像素子217を高精度に同期させて連動させることができる。これによってスキャナ装置100は、フィルムの読み取り精度の向上を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型のスキャナ装置100を使用して、フィルムの画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0067】
また、スキャナ装置100においては、1箇所で駆動ベルト225のテンションを調整することができる。これによってスキャナ装置100は、テンション調整のための部品点数の増加やテンション調整のための部品を設けることによるスキャナ装置100の大型化を抑えつつ、原稿の読み取り精度の向上を図ることができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型のスキャナ装置100を使用して、原稿の画像を高精度に再現した画像データを得ることができる。
【0068】
また、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、透過用光源部300がLED301によって構成されているため、透過用光源部300の点灯直後からフィルムの読み取りが可能になり、LED301に代えて蛍光管を用いた場合と比較して照射光量の安定化を図ることができる。これによって、スキャナ装置100は、フィルムの読み取りを迅速に開始するとともに、読み取り精度の向上を図ることができる。これによって、利用者は、高精度な画像データを迅速に得ることができる。
【0069】
また、実施の形態1のスキャナ装置100によれば、LED301を用いることによってLED301に代えて蛍光管を用いた場合と比較して、消費電力を抑え、ランニングコストを低く抑えることができる。これによって利用者は、消費電力およびランニングコストの低いスキャナ装置100を用いて、高精度な画像データを得ることができる。
【0070】
(実施の形態2)
つぎに添付図面を参照して、この発明にかかる複合機の好適な実施の形態2を詳細に説明する。この実施の形態2は、この発明にかかる複合機の実施例を示す。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
【0071】
図6は、実施の形態2にかかる複合機を示す斜視図である。実施の形態2にかかる複合機600は、上述した実施の形態1で説明したスキャナ装置100と、スキャナ装置100が備える撮像素子217に入射された光の強弱に応じた画像を被記録媒体上に形成する画像形成装置としてのプリンタ601と、を備えている。
【0072】
スキャナ装置100とプリンタ601とは、図示しない通信I/Fを介して相互通信可能に接続されている。スキャナ装置100は、撮像素子217に入射された光の強弱に応じた画像データをプリンタ601へ出力する。
【0073】
プリンタ601は、紙などの被記録媒体に画像を形成するプリンタエンジンを備えている。公知の技術であるため図示および説明を省略するが、プリンタエンジンにおける画像形成方式は、たとえば、インクジェット方式、静電転写方式、昇華転写方式など、各種の方式を適用することができる。
【0074】
このような構成を備える複合機600において、プリンタ601は、スキャナ装置100から出力された画像データに基づいて、紙などの被記録媒体に画像を形成する。
【0075】
このような複合機600によれば、スキャナ装置100における透過用光源部300および撮像素子217を、単一のモータ222の駆動力を用いて連動させることができる。これによって複合機600は、消費電力の増加および複合機600の大型化を抑えながら、原稿を精度よく再現した画像を紙などの被記録媒体に形成することができる。そして、これによって利用者は、消費電力を抑制した小型の複合機600を使用して、高精度な画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施の形態1にかかるスキャナ装置の外観を示す斜視図。
【図2】実施の形態1にかかるスキャナ装置の縦断正面図。
【図3】透過用光源部を示す分解斜視図。
【図4】透過用光源部の移動に関わる各部を示す斜視図。
【図5】図4に示した斜視図を一部切断して示す斜視図。
【図6】実施の形態2にかかる複合機を示す斜視図。
【符号の説明】
【0077】
100 スキャナ装置、120 TPUユニット、212 原稿台ガラス、217 撮像素子、222 モータ、223 撮像素子移動機構、225 駆動ベルト、300 透過用光源部、301 LED、400 ヒンジ機構、600 複合機、601 プリンタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を保持する原稿台を備える本体ハウジングおよび当該本体ハウジングに対してヒンジ機構を介して回動自在に連結されたカバー部材を備える画像読取装置において、
前記カバー部材に設けられた光源と、
前記カバー部材に設けられて前記光源を副走査方向に移動可能に支持する光源移動機構と、
前記本体ハウジング内に設けられた撮像素子と、
前記本体ハウジング内に設けられて駆動源が発生した駆動力を用いて前記撮像素子を前記副走査方向に移動させる撮像素子移動機構と、
帯状部材を用いて前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構とを連動可能に連結する連結機構と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記帯状部材は、前記ヒンジ機構またはその近傍を経由するようにして前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構との間に架け渡されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記連結機構は、単一の帯状部材を用いて前記光源移動機構と前記撮像素子移動機構とを連動可能に連結することを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記光源は、LEDによって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置が備える撮像素子に入射された光の強弱に応じた画像を記録媒体上に形成する画像形成装置と、
を備えることを特徴とする複合機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−39798(P2008−39798A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209517(P2006−209517)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】