説明

画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】コストアップを招くことなくLEDをディレイティング温度内で使用することができる画像読取装置を提供すること。
【解決手段】原稿読取面を光照明するLED56と、原稿からの反射光を結像させる結像レンズ60と、該結像レンズ60によって結像された光学像を電気信号に変換するCCD(光電変換素子)61を備える画像読取装置50において、前記LED56の基準となる基準出力をメモリーに記憶しておき、画像読取動作時のシェーディング補正を行う前の前記LED56の出力を前記メモリーに記憶されている基準出力と比較することによってLED56の周囲温度を算出し、その結果に基づいて画像読取動作の可否を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を光学的に読み取るための画像読取装置とこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって用紙等の記録材に画像を形成する複写機やプリンター等の画像形成装置には原稿画像を光学的に読み取るための画像読取装置が備えられている。この画像読取装置は、原稿読取面を光照明するLEDと、原稿からの反射光を結像させる結像レンズと、該結像レンズによって結像された光学像を電気信号に変換する光電変換素子を備えている。
【0003】
ところで、近年、画像読取装置の光源には、発光効率の高い白色LEDが採用されているが、該白色LEDは点光源であるため、ラインセンサーの読み取りに合わせて原稿をライン状に照明するために複数の白色LEDを基板上にアレイ状に並べることによってライン光源化している。
【0004】
一般にLEDは、発光時の自発熱や周囲温度の影響によって発光量が変化するため、例えば特許文献1には、光量ムラを防ぐために基板上に発熱体を別途設け、基板上の温度分布を均一にする構成が提案されている。
【0005】
又、特許文献2には、LEDを連続点灯させ、そのときのセンサー出力変化量をモニターしてLED連続点灯時の温度特性の近似式を算出し、点灯時間に応じてLEDの光量制御を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−088607号公報
【特許文献2】特開平11−215317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LEDはPN接合を有する半導体であり、そのPN接合部(ジャンクション部)が発光するが、半導体は一般的に設定されたジャンクション温度以上で使用すると性能が低下したり、寿命が極端に短くなるため、設定されたディレイティングカーブ内で半導体を使用することが望ましい。LEDの場合、供給電流値によってジャンクション部の発熱量が異なるため、使用する電流値によって使用可能な温度が決められている。
【0008】
しかし、近年の読取スピードの高速化に伴って光源には高照度化が求められ、LEDアレイ数や供給電力も増加してきている一方、プリント出力の高速化によって定着装置において高温定着された用紙から上昇してくる熱によって画像読取装置内の温度は上昇傾向にある。
【0009】
従って、自動原稿搬送装置(ADF)を用いて原稿を連続的に読み取る際のLEDの連続点灯や連続プリント出力によってLED自体の発熱やプリント部からの熱によって機内温度が上昇してしまい、LEDのディレイティング温度を満足しない場合があった。
【0010】
そこで、LED温度モニター用のサーミスターを設け、LEDの温度が一定以上となれば読取動作を中止したり、放熱効果を高めるためにアルミ基板を用いたり、基板に放熱板を取り付ける等の対策を講じているが、コストアップを免れないという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、コストアップを招くことなくLEDをディレイティング温度内で使用することができる画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、原稿読取面を光照明するLEDと、原稿からの反射光を結像させる結像レンズと、該結像レンズによって結像された光学像を電気信号に変換する光電変換素子を備える画像読取装置において、前記LEDの基準となる基準出力をメモリーに記憶しておき、画像読取動作時のシェーディング補正を行う前の前記LEDの出力を前記メモリーに記憶されている基準出力と比較することによってLEDの周囲温度を算出し、その結果に基づいて画像読取動作の可否を決定することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記LEDの基準出力の前記メモリーへの記憶を工場製造時に行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記LEDの基準出力の前記メモリーへの記憶をメイン電源投入時に行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、メイン電源投入時に画像形成装置の機内温度をモニターし、その結果に基づいて前記LEDの基準出力の更新記憶の可否を決定することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記LEDへの供給電流値によって使用可能なLEDの周囲温度の許容値を可変することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、連続通紙による画像読取においては読取開始前の基準出力の変化量と紙間でのDP通紙ガイドの出力変化量の合算値に基づいて前記LEDの周囲温度を予測することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の画像形成装置は、請求項1〜6の何れかに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び2記載の発明によれば、常温状態(例えば、工場製造時)でのLEDの出力を基準出力としてメモリーに記憶しておき、その後、通常使用時の画像読取動作時に白基準板の出力を読み取って基準出力と比較し、出力の変化量によってLEDの周囲温度を予測し、予測した周囲温度がディレイティング温度を超えているときには読取動作を中止することができ、LEDをディレイティング温度内で使用することができる。この場合、LEDを瞬時に点灯させた際の出力からLEDの周囲温度を予測するため、ディレイティング温度外の温度であってもLEDに与えるダメージを最小限に抑えることができ,又、サーミスター等を使用しないためにコストダウンを図ることができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、基準出力をメイン電源投入時に取得するため、LEDに経時的な劣化があっても、正確な基準出力の計測が可能となる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、メイン電源投入時に画像形成装置の機内温度をモニターし、その結果に基づいてLEDの基準出力の更新記憶の可否を決定するようにしたため、使用後すぐにメイン電源がON/OFFされた場合に機内が暖まっている状態で基準出力を計測してしまう動作を回避し、記憶される基準出力の更新を行わないようにすることによって、LEDの周囲温度のより正確な予測が可能となる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、LEDの発光量の補正を供給電流値を可変させて行うシステムにおいて、各供給電流値ごとに使用可能なLEDの周囲温度の許容値を設定する個とによってLEDの発光量に合わせた制御が可能となる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、LEDの発熱によるディレイティングカーブを超えてしまう最悪条件は自動原稿搬送装置を使用した場合の連続LED点灯での読取動作時であるが、読取開始時だけでなく、紙間でDP通紙ガイドの出力劣化をモニターすることによって、連続通紙途中においてもLEDの発熱温度がディレイティング温度以上の温度になる事態の発生を回避することができる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、画像読取装置においてLEDのディレイティング温度内での使用が可能となるため、原稿の読み取りが高精度になされて高質画像を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る画像形成装置(複合機)の縦断面図である。
【図2】本発明に係る画像読取装置の副走査方向断面図である。
【図3】LEDのディレイティングカーブを示す図である。
【図4】環境温度とCCD出力(光度割合)との関係を示す図図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の縦断面図であり、図示の画像形成装置は、複写機能とプリンター機能及びファクシミリ機能を兼備したカラー複合機であって、用紙の両面にカラー画像を形成することができる装置である。このカラー複合機は、装置本体100とその上部に配された自動原稿搬送装置40及び原稿読取装置50を備えており、装置本体100の内部上方には画像形成部1が配置されている。又、装置本体100内の下半部には用紙収納部70が配され、装置本体100内の画像形成部1と用紙収納部70の間には転写搬送ユニット80と両面搬送ユニット90が配されている。
【0028】
前記画像形成部1は、電子写真方式によって画像を形成するものであって、タンデムに配置されたマゼンタ画像形成ユニット1M、シアン画像形成ユニット1C、イエロー画像形成ユニット1Y及びブラック画像形成ユニット1Kを備えている。
【0029】
上記各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kには、像担持体である感光ドラム2a,2b,2c,2dがそれぞれ配置されており、各感光ドラム2a〜2dの周囲には、露光装置3a,3b,3c,3d、帯電器4a,4b,4c,4d、現像装置5a,5b,5c,5d、一次転写ローラー6a,6b,6c,5d及びクリーニング装置7a,7b,7c,7dがそれぞれ配置されている。
【0030】
ここで、前記感光ドラム2a〜2dは、ドラム状の感光体であって、不図示の駆動モーターによって図示矢印方向(反時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。又、前記露光装置3a〜3dは各色の画像信号に対応するレーザー光を各感光ドラム2a〜2dに向けて照射することによって各感光ドラム2a〜2d上に静電潜像を形成するものであり、前記帯電器4a〜4dは、不図示の帯電バイアス電源から印加される帯電バイアスによって感光ドラム2a〜2dの表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。
【0031】
更に、前記現像装置5a〜5dは、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー、イエロー(Y)トナー、ブラック(K)トナーをそれぞれ収容しており、各感光ドラム2a〜2d上に形成された各静電潜像に各色のトナーを付着させて各静電潜像を各色のトナー像として可視像化するものである。
【0032】
又、前記一次転写ローラー6a〜6dは、各一次転写部にて無端状の中間転写ベルト8を介して各感光ドラム2a〜2dに当接可能に配置されている。ここで、中間転写ベルト8は、二次転写対向ローラー9と駆動ローラー10及び複数のテンションローラー11,12,13との間に張設されて各感光ドラム2a〜2dの下面側に図示矢印方向(時計方向)に走行可能に配置されており、前記二次転写対向ローラー9は、二次転写部において中間転写ベルト8を介して二次転写ローラー14に当接可能に配置されている。
【0033】
前記用紙収納部70は、複数枚の用紙が積層収容された着脱可能な3つの給紙カセット71,72,73を備えており、各給紙カセット71〜73の近傍には、各給紙カセット71〜73内の用紙を上位のものから順次取り出すピックローラー15と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すフィードローラー16とリタードローラー17がそれぞれ配設されている。又、バイパストレイ74の近傍には、バイパス搬送手段としてのピックローラー15、フィードローラー16、リタードローラー17及び搬送ローラー18が設けられている。尚、図1において19は搬送ローラーである。
【0034】
前記転写搬送ユニット80は、用紙収納部70から送り出された用紙を適当なタイミングで画像形成部1へと搬送するとともに、画像形成部1において画像が形成された用紙を不図示の排紙トレイへと排出するものであって、用紙収納部70から二次転写部(二次転写対向ローラー9と二次転写ローラー14の当接部)に至る第1搬送経路L1に配置されたレジストローラー20、前記二次転写ローラー14、二次転写部から排紙手段としての後述の排紙ローラー24に至る第2搬送経路L2に設けられた搬送ベルト21、定着装置22と搬送ローラー23及び排紙ローラー24ーを備えている。ここて、定着装置22は、圧接状態で互いに回転する定着ローラー22aと加圧ローラー22bを備えている。
【0035】
又、転写搬送ユニット80は、画像形成装置本体100に対して着脱可能であって、該転写搬送ユニット80には、第2搬送経路L2から分岐して両面搬送ユニット90の反転ローラー25と反転コロ26に至る横U字状の第3搬送経路L3が設けられており、その途中には搬送ローラー27が設けられている。又、転写搬送ユニット80には前記第3搬送経路L3とは別に反転搬送経路L3’が第2搬送経路L2から分岐して下方に延びており、その途中には搬送ローラー28が設けられている。そして、第2搬送経路L2と第3搬送経路L3との分岐部には、用紙の搬送方向を切り換えるためのフラッパ29が回動可能に設けられている。
【0036】
前記両面搬送ユニット90は、画像形成部1において画像が形成された用紙の表裏を反転させるものであって、前記第3搬送経路L3と反転搬送経路L3に連なる中間トレイ30とその下方に配された第4搬送経路L4を備えており、中間トレイ30には、正逆転可能な前記反転ローラー25と、該反転ローラー25に対して圧接/離間する前記反転コロ26が設けられている。
【0037】
又、両面搬送ユニット90には大径の再給紙ローラー32が回転可能に設けられており、この再給紙ローラー32の外周には小径のローラー33,34が回転可能に当接している。尚、再給紙ローラー32には不図示の一方向クラッチが設けられている。そして、反転手段を構成する前記反転ローラー25と反転コロ26からは第1搬送経路L4が延びており、この第4搬送経路L4は前記第1搬送経路L1に合流している。
【0038】
上記第4搬送経路L4には、搬送ローラー35が用紙搬送方向に沿って複数設けられている。又、再給紙ローラー32の近傍には、中間トレイ30に一旦引き込まれた用紙の搬送方向を切り換えるためのフラッパ36が回動可能に設けられている。尚、本実施の形態では、両面搬送ユニット90の第4搬送経路L4には、2枚以上の用紙を保留可能な2つ以上の用紙保留位置が備えられている。
【0039】
次に、以上の構成を有するカラー複合機の画像形成動作について説明する。
【0040】
例えば、自動原稿搬送装置40の原稿トレイ41にセットされた図2に示す原稿が原稿読取部であるコンタクトガラス50a(図2参照)上に自動的に搬送され、その原稿Gの画像が原稿読取装置50によって光学的に読み取られる。
【0041】
上述のように原稿の画像が画像読取装置50によって光学的に読み取られると、画像形成部1においては、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kにおいて各感光ドラム2a〜2dが図示矢印方向(反時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動され、これらの感光ドラム2a〜2dは、帯電器4a〜4dによって一様に帯電される。又、露光装置3a〜3dは、原稿読取装置60によって読み取られた画像の各色毎の信号によって変調されたレーザー光を出射し、そのレーザー光を各感光ドラム2a〜2dの表面に照射し、各感光ドラム2a〜2d上に各色のカラー画像信号に対応した静電潜像をそれぞれ形成する。
【0042】
そして、先ず、マゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、該感光ドラム2aの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加された現像装置5aによってマゼンタトナーを付着させ、該静電潜像をマゼンタトナー像として可視像化する。このマゼンタトナー像は、感光ドラム2aと一次転写ローラー6aとの間の一次転写部(転写ニップ部)において、トナーと逆極性の一次転写バイアスが印加された一次転写ローラー6aの作用によって、図示矢印方向に回転駆動されている中間転写ベルト8上に一次転写される。
【0043】
上述のようにしてマゼンタトナー像が一次転写された中間転写ベルト8は、次のシアン画像形成ユニット1Cへと移動する。そして、シアン画像形成ユニット1Cにおいても、前記と同様にして、感光ドラム2b上に形成されたシアントナー像が一次転写部において中間転写ベルト8上のマゼンタトナー像に重ねて転写される。
【0044】
以下同様にして、中間転写ベルト8上に重畳転写されたマゼンタ及びシアントナー像の上に、イエロー及びブラック画像形成ユニット1Y,1Kの各感光ドラム2c,2d上にそれぞれ形成されたイエロー及びブラックトナー像が各一次転写部において順次重ね合わせられ、中間転写ベルト8上にはフルカラーのトナー像が形成される。尚、中間転写ベルト8上に転写されないで各感光ドラム2a〜2d上に残留する転写残トナーは、各クリーニング装置7a〜7dによって除去され、各感光ドラム2a〜2dは次の画像形成に備えられる。
【0045】
他方、用紙収納部70の例えば給紙カセット72内に収容された用紙は、ピックローラー15によって最上位のものから1枚ずつピックアップされ、フィードローラー16とリタードローラー17によって1枚ずつ分離されて搬送ローラー19によって第1搬送経路路L1をレジストローラー20へと搬送される。そして、レジストローラー20においては、用紙は、一時待機状態とされた後、中間転写ベルト8上のトナー像に同期する所定のタイミングで二次転写対向ローラー9と二次転写ローラー14との当接部である二次転写部へと供給される。
【0046】
二次転写部においては、転写ベルト8上に担持されたフルカラーのトナー像が二次転写ローラー14の作用によって用紙の表面(第1面)上に一括転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、搬送ベルト21によって定着装置22へと搬送され、この定着装置22の定着ローラー22aと加圧ローラー22b間の定着ニップを通過する過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。
【0047】
而して、定着装置22にて表面にトナー像が定着された用紙は、フェースアップ排紙(FU排紙)が選択されている場合には、フラッパ29によってその搬送方向が決定され、用紙は第2搬送経路L2をそのまま排紙ローラー24に向かって搬送され、排紙ローラー24によって画像面を上にして不図示の排紙トレイへと排出される。
【0048】
一方、フェースダウン排紙(FD排紙)又は両面画像モードが選択された場合には、フラッパ29が動作して用紙の搬送方向が切り換えられ、定着装置22を通過した用紙は横U字状の第3搬送経路L3を通って両面搬送ユニット90へと搬送される。
【0049】
両面搬送ユニット90においては、反転コロ26は反転ローラー25から離間した状態で待機しており、用紙が両面搬送ユニット90に或る一定以上送られると、反転コロ26は反転ローラー25に圧接される。このように反転コロ26が反転ローラー25に圧接されると、反転ローラー25が正転されて用紙が送られてきた方向に引き込まれ、用紙が或る一定以上引き込まれると反転ローラー25が逆転されて用紙がスイッチバックされて反転搬送経路L3’又は第4搬送経路L4へと送られる。即ち、フェースダウン排紙が選択されている場合には、フラッパ36によって用紙の搬送方向が反転搬送経路L3’へと切り換えられ、用紙は画像面を下にした状態で排紙ローラー24によって不図示の排紙トレイへと排出される。
【0050】
又、用紙の両面に画像を形成する場合には、フラッパ36によって用紙の搬送方向が第4面搬送経路L4の方向に切り換えられ、用紙は、再給紙ローラー32と搬送ローラー35によって第4搬送経路L4を画像面を上にして搬送され、第4搬送経路L4から第1搬送経路L1へと受け渡されることによって表裏が反転されて画像面を下にした状態でレジストローラー20へと送られる。そして、以後は前述と同様のプロセスを経て用紙の反対面(第2面)にトナー像が形成され、このトナー像が形成された用紙は、定着装置22によってトナー像の定着を受けた後に排紙ローラー対24によって不図示の排紙トレイへと排出され、該用紙の両面に画像が形成される。
【0051】
尚、以上はカセット給紙を行う場合について説明したが、手差し給紙を行う場合には、バイパストレイ74上にセットされた用紙は、ピックローラー15によって最上位のものから1枚ずつピックアップされ、フィードローラー16とリタードローラー17によって1枚ずつ分離されて搬送ローラー18によって第1搬送経路L1をレジストローラー20へと搬送され、以後は前記と同様のプロセスを経て該用紙に画像が形成される。
[画像読取装置]
次に、本発明に係る前記画像読取装置50の構成を図2に基づいて説明する。
【0052】
図2は本発明に係る画像読取装置の副走査方向断面図であり、図示の画像読取装置50は、筐体を構成する箱状構造体である光学フレーム51を備えており、この光学フレーム51の上面にはコンタクトガラス52が設けられている。そして、コンタクトガラス52の端部には読取濃度の白基準を決めるための白基準板53が設置されている。
【0053】
又、光学フレーム51の内部には、副走査方向に移動可能な第1及び第2移動キャリッジ54,55が収容されている。ここで、第1移動キャリッジ54には、コンタクトガラス52上に載置された原稿を照明する複数のLED(発光ダイオード)56と、原稿にて反射した読取光(反射光)を90°方向に反射させる第1反射ミラー57が設けられており、第2キャリッジ55には、第1反射ミラー57にて反射した反射光を90°方向に反射させる第2反射ミラー58と、該第2反射ミラー58にて反射した反射光を更に90°方向に反射させる第3反射ミラー59が設けられており、これらの第1及び第2移動キャリッジ54,55は、不図示のガイドレールに沿って副走査方向(図2の左右方向)に移動する。尚、本実施の形態では、LED56として白色LEDが使用されており、複数のLED56は主走査方向(図2の紙面垂直方向)に列状(アレイ状)に配列されている。
【0054】
更に、光学フレーム51の内部には結像レンズ60と光電変換素子であるCCD61が収容されており、前記第3反射ミラー59にて反射した原稿からの読取光は、結像レンズ60によって収束した後にCCD61に入射し、該CCD61上に結像される。
【0055】
次に、以上のように構成された原稿読取装置50の画像読取動作について説明する。
【0056】
例えば、図1に示す自動原稿搬送装置40の原稿トレイ41にセットされた原稿が原稿読取部であるコンタクトガラス52上に自動的に搬送され、その原稿の画像が画像読取装置50によって光学的に読み取られる。
【0057】
即ち、先ず、原稿の画像読取動作前に白基準板53がCCD61によって読み取られ、その読み取られたデータが主走査方向に均一な出力になるようにシェーディング補正がなされる。
【0058】
その後、第1移動キャリッジ54と第2移動キャリッジ55が不図示のガイドレールに沿って副走査方向(図2の左右方向)に移動しながらコンタクトガラス52上に載置された原稿を走査すると、第1移動キャリッジ54のLED56から出射する光は原稿に向かい、原稿はこの光によって照明される。そして、原稿を照明する光は原稿にて反射し、その反射光は、第1移動キャリッジ54の第1反射ミラー57にて90°方向に反射した後、第2移動キャリッジ55の第2反射ミラー58と第3反射ミラー59にて90°方向にそれぞれ反射し、結像レンズ60によって収束した後にCCD61に入射し、該CCD61によって読み取られて電気信号に変換される。
【0059】
上述のようにして原稿の画像が画像読取装置50によって光学的に読み取られると、その電気信号が図1に示す各露光装置3a〜3dへと送信され、各露光装置3a〜3dは、電気信号に基づくレーザー光を出力し、図1に示すカラー複合機において前述のような画像形成動作が行われてカラー画像が形成される。
【0060】
ところで、LED56は設定されたジャンクション温度以上で使用すると性能が低下したり、寿命が極端に短くなるため、電流値によって使用可能な温度が決められており、図3に示すディレイティングカーブ内で使用されることが望ましい。
【0061】
而して、本実施の形態において使用しているLED(白色LED)56においては、青色チップの出力によって黄色蛍光体を励起して擬似的に白色の光を作り出している。ここで、CCD61のblack出力、Green出力及びRed出力を示すものとして光度割合(20℃基準)の環境温度に対する変化を図4にCCDB出力、CCDG出力、CCDR出力としてそれぞれ示すが、環境温度によって黄色蛍光体の励起効率が劣化するため、黄色成分に対して高い感度を示すGreen出力とRed出力の変化量が大きくなっている。従って、変化量の大きなGreen出力又はRed出力をモニターすることによって環境温度の予測が可能となる。
【0062】
例えば供給電流が20mAである場合のLED56の使用可能な温度範囲は図3から60°までであるが、例えば環境温度20℃でLED56を点灯させて白基準板53の出力をCCD61のGreen出力を取得したデータを基準とした場合、画像読取前のシェーディング補正を行う前にLED56を瞬間的に点灯させ、白基準板53のデータを確認し、CCD61のGreen出力の変化量が8%であれば、図4に示す結果から環境温度は60℃以上であって、LED56はディレイティングカーブ内で使用されていないことになる。従って、このような場合は読取動作を一旦中止してユーザーに注意を促したり、ファン等の冷却手段によってLED56を冷却することが行われる。
【0063】
実際には、LED56の基準となる基準出力をメモリーに記憶しておき、画像読取動作時のシェーディング補正を行う前のLED56の出力をメモリーに記憶されている基準出力と比較することによってLED56の周囲温度を算出し、その結果に基づいて画像読取動作の可否を決定するようにしている。ここで、LED56の基準出力のメモリーへの記憶は工場製造時に行っても、メイン電源投入時に行うようにしても良い。
【0064】
以上のように、本実施の形態に係る画像読取装置50によれば、常温状態(例えば、工場製造時)でのLED56の出力を基準出力としてメモリーに記憶しておき、その後、通常使用時の画像読取動作時に白基準板53の出力を読み取って基準出力と比較し、出力の変化量によってLED56の周囲温度を予測し、予測した周囲温度がディレイティング温度を超えているときには読取動作を中止することができ、LED56をディレイティング温度内で使用することができる。この場合、LED56を瞬時に点灯させた際の出力からLED56の周囲温度を予測するため、ディレイティング温度外の温度であってもLED56に与えるダメージを最小限に抑えることができ,又、サーミスター等を使用しないためにコストダウンを図ることができる。
【0065】
又、LED56の基準出力のメモリーへの記憶をメイン電源投入時に行うようにすれば、基準出力がメイン電源投入時に取得できるため、LED56に経時的な劣化があっても、正確な基準出力の計測が可能となる。この場合、メイン電源投入時に画像形成装置の機内温度をモニターし、その結果に基づいてLED56の基準出力の更新記憶の可否を決定するようにすれば、使用後すぐにメイン電源がON/OFFされた場合に機内が暖まっている状態で基準出力を計測してしまう動作を回避することができ、記憶される基準出力の更新を行わないようにすることによって、LED56の周囲温度のより正確な予測が可能となる。
【0066】
ところで、LED56への供給電流値によって使用可能なLED56の周囲温度の許容値を可変するようにすれば、LED56の発光量の補正を供給電流値を可変させて行うシステムにおいて、各供給電流値ごとに使用可能なLED56の周囲温度の許容値を設定することによってLED56の発光量に合わせた制御が可能となる。
【0067】
又、LED56の発熱によるディレイティングカーブを超えてしまう最悪条件は自動原稿搬送装置を使用した場合の連続的にLED56を点灯した状態での読取動作時であるが、連続通紙による画像読取においては読取開始前の基準出力の変化量と紙間でのDP通紙ガイドの出力変化量の合算値に基づいてLED56の周囲温度を予測するようにすれば、読取開始時だけでなく、紙間でDP通紙ガイドの出力劣化をモニターすることによって、連続通紙途中においてもLED56の発熱温度がディレイティング温度以上の温度になる事態の発生を回避することができる。
【0068】
尚、本実施の形態では、本発明をカラー複合機及びこれに備えられた画像読取装置に対して適用した例について説明したが、本発明は、単体としての複写機、プリンター、ファクシミリ等、他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた画像読取装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成部
1M マゼンタ画像形成ユニット
1C シアン画像形成ユニット
1Y イエロー画像形成ユニット
1K ブラック画像形成ユニット
40 自動原稿搬送装置
50 原稿読取装置
51 光学フレーム
52 コンタクトガラス
53 白基準板
54 第1キャリッジ
55 第2キャリッジ
56 LED
57 第1反射ミラー
58 第2反射ミラー
59 第3反射ミラー
60 結像レンズ
61 CCD(光電変換素子)
70 用紙収納部
80 転写搬送ユニット
90 両面搬送ユニット
100 画像形成装置本体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿読取面を光照明するLEDと、原稿からの反射光を結像させる結像レンズと、該結像レンズによって結像された光学像を電気信号に変換する光電変換素子を備える画像読取装置において、
前記LEDの基準となる基準出力をメモリーに記憶しておき、画像読取動作時のシェーディング補正を行う前の前記LEDの出力を前記メモリーに記憶されている基準出力と比較することによってLEDの周囲温度を算出し、その結果に基づいて画像読取動作の可否を決定することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記LEDの基準出力の前記メモリーへの記憶を工場製造時に行うことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記LEDの基準出力の前記メモリーへの記憶をメイン電源投入時に行うことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項4】
メイン電源投入時に画像形成装置の機内温度をモニターし、その結果に基づいて前記LEDの基準出力の更新記憶の可否を決定することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記LEDへの供給電流値によって使用可能なLEDの周囲温度の許容値を可変することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項6】
連続通紙による画像読取においては読取開始前の基準出力の変化量と紙間でのDP通紙ガイドの出力変化量の合算値に基づいて前記LEDの周囲温度を予測することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205175(P2012−205175A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69350(P2011−69350)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】