説明

画像読取装置及び地色補正プログラム

【課題】原稿画像の地色濃度が、常に読取画像の先端領域の地色濃度に限定されることを抑制する技術を開示する。
【解決手段】複合機1は、制御ユニット31を備え、当該制御ユニット31は、取得した読取データから各ラインの地色濃度を検出し、その検出結果に基づき、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数をカウントし、そのカウント結果に基づき、前記原稿画像の読取画像から、前記隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度を、当該原稿画像の地色濃度として抽出し、その抽出された前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であると判断された場合に、前記読取データに対し、前記原稿画像の地色濃度に応じた地色補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される発明は、原稿画像を読み取って得られた読取画像の地色を補正する地色補正に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナやコピー機などの画像読取装置には、原稿画像を読み取って得られた読取画像から原稿画像の地色、即ち、文字や図等の背景色の濃度(以下、地色濃度)を検出し、読取画像に対し、原稿画像の地色濃度を薄くすることにより、上記文字等を見易くする、いわゆる地色補正機能を有するものがある。この従来の画像読取装置では、上記読取画像のうち読取方向における先端領域の画像濃度の平均値が所定濃度以下であるかどうかを判断し、画像濃度の平均値が所定濃度以下である場合に、当該平均値が原稿画像の地色濃度であるとみなし、地色補正を実行する構成になっている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−77880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原稿画像の地色は、常に読取画像の先端領域に存在するとは限らない。例えば、原稿の中には、先端領域の全体に画像濃度が所定閾値よりも高い色のベタ塗画像が印刷され、その先端領域の後方に当該先端領域よりも広く画像濃度の平均値が閾値以下の広範囲領域が存在し、この広範囲領域に文字等が印刷されている原稿がある。このような原稿の読取画像では、原稿画像の地色は、先端領域ではなく広範囲領域に存在する。
【0005】
ところが、上記従来の画像読取装置では、原稿画像の地色濃度は、常に、読取画像の先端領域の地色濃度に限定されてしまう。このため、上記読取画像の広範囲領域に対し、原稿画像のまま地色補正されず、文字等が見易くならないという問題が生じる。
【0006】
本明細書では、原稿画像の地色濃度が、常に読取画像の先端領域の地色濃度に限定されることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿画像を読み取る読取デバイスと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記読取デバイスに、前記原稿画像を1ライン毎に読み取らせて、当該1ライン毎の読取データを取得する画像読取処理と、前記画像読取処理で取得された読取データから各ラインの地色濃度を検出するライン地色濃度検出処理と、前記ライン地色濃度検出処理の検出結果に基づき、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数をカウントするラインカウント処理と、前記ラインカウント処理のカウント結果に基づき、前記原稿画像の読取画像から、前記隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度を、当該原稿画像の地色濃度として抽出する原稿地色濃度抽出処理と、前記原稿地色濃度抽出処理で抽出された前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であるかどうかを判断する濃度判断処理と、前記濃度判断処理で前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であると判断された場合に、前記読取データに対し、前記原稿画像の地色濃度に応じた地色補正を行う地色補正処理と、を実行する。
【0008】
上記画像読取装置では、前記制御部は、前記原稿地色濃度抽出処理では、前記ラインカウント処理において、前記隣接ライン数が前記読取画像の全ライン数の半数以上の基準数に達した時点で、前記隣接ライン数が前記基準数に達した領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出してもよい。
【0009】
上記画像読取装置では、前記制御部は、前記ラインカウント処理で処理されていない未処理ライン数が、既にカウントされた隣接ライン数の最大値よりも少ないかどうかを判断する未処理ライン数判断処理を実行し、前記原稿地色濃度抽出処理では、前記未処理ライン判断処理で前記未処理ライン数が前記隣接ライン数の最大値よりも少ないと判断された時点で、当該隣接ライン数が最大である領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出してもよい。
【0010】
上記画像読取装置では、前記制御部は、前記ラインカウント処理では、前記読取デバイスの読取方向における先頭ラインを含む先端領域の隣接ライン数をカウントし、その後、前記先端領域以外の他の領域の隣接ライン数が、前記先端領域の隣接ライン数を超えるかどうかを判断し、前記原稿地色濃度抽出処理では、前記他の領域の隣接ライン数が、前記先端領域の隣接ライン数を超えたと判断された時点で、当該他の領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出してもよい。
【0011】
上記画像読取装置では、前記制御部は、前記ライン地色濃度検出処理では、前記ラインの一端または両端側の読取データに基づき当該ラインの地色濃度を決定する、部分データ利用処理を実行してもよい。
【0012】
上記画像読取装置では、部分データ利用モードと全体データ利用モードとのいずれかを選択する選択指示を受け付ける選択受付部を備え、前記制御部は、前記選択受付部が、前記部分データ利用モードを選択する選択指示を受けた場合には、前記部分データ利用処理により前記ライン地色濃度検出処理を実行し、前記選択受付部が、前記全体データ利用モードを選択する選択指示を受けた場合には、各ラインの地色濃度を、当該ラインの全体分の読取データに基づき決定する全体データ利用処理により前記ライン地色濃度検出処理を実行してもよい。
【0013】
なお、この発明は、地色補正方法、当該方法または上記画像読取装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度が、原稿画像の地色濃度とされ、当該原稿画像の地色濃度に基づき地色補正処理の実行の要否が決定される。従って、例えば、原稿に、ラインの読み取りが最も早い先端領域よりも、隣接ライン数が多い領域が存在する場合に、原稿画像の地色濃度が、常に、読取画像の先端領域の地色濃度に限定されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る複合機の構成を概略的に示す部分的断面図
【図2】複合機の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】読取処理を示すフローチャート
【図4】原稿、地色補正が行われていない読取画像、及び、地色補正が行われた読取画像を例示する模式図
【図5】読取デバイスの全画素と、各画素の階調データとの関係を例示する模式図(全体データ利用処理時)
【図6】読取デバイスの全画素と、各画素の階調データとの関係を例示する模式図(部分データ利用処理時)
【図7】補正処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態に係る複合機1について、図1から図7を参照しつつ説明する。以下、図1において紙面左側を複合機1の前側とし、紙面手前側を複合機1の右側とし、紙面上側を複合機1の上側として説明する。複合機1は、スキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを有する多機能周辺装置であり、画像読取装置の一例である。
【0017】
(複合機の構成)
図1に示すように、複合機1は、図示しない印刷機構等を備える本体部2、及び、当該本体部2の上方に設けられたスキャナユニット3を備える。スキャナユニット3は、原稿載置部(以下、FB4という)原稿カバー5及び読取デバイス7を有する。
【0018】
FB4は、台枠11、透明なガラス板からなる第1プラテンガラス12、第2プラテンガラス13、及びこれらのガラス12,13の中間に配置された中間枠14を含む。FB4は、原稿カバー5によって開閉可能に覆われている。
【0019】
原稿カバー5は、FB4を覆う閉姿勢(図1参照)とFB4を開放する開姿勢とに回動可能に本体部2に支持されており、原稿自動送り装置(以下、ADF6という)、原稿トレイ21及び排出トレイ25を有する。ADF6は、押圧部材22、各種ローラ24等を有する。原稿トレイ21は、ADF6で搬送される原稿Mを載置するトレイである。ADF6には、ローラ24等によって原稿Mが原稿トレイ21から排出トレイ25へと搬送される経路である搬送路27が形成されている。以後、搬送路27に沿った方向を搬送方向という。図1に、搬送方向を矢印28で示す。
【0020】
読取デバイス7は、台枠11等の下側において、図示しない移動機構によって前後方向に移動可能に設けられている。図1では、読取デバイス7は、第2プラテンガラス13を介して、押圧部材22に対向配置されている。読取デバイス7は、CIS(Contact Image Sensor)を有する構成であり、複数の読取素子7Aが、左右方向に沿って並んで配置されているとともに、その近傍に、RGBの複数の光源7Bが配置されている。なお、読取デバイス7は、CISに限らず、例えばCCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)を有する構成でもよい。
【0021】
以上の構成により、スキャナユニット3では、FB読取とADF読取とが実行可能である。FB読取は、FB4上に静止状態で載置された原稿Mの片面、図1では下面を読み取る方式である。FB読取では、読取デバイス7が、図1に示す位置から同図の点線で示す位置まで移動しつつ、原稿Mの下面を読み取る。ADF読取は、原稿トレイ21に載置された原稿Mの片面、図1では上面を読み取る方式である。ADF読取では、読取デバイス7が、第1プラテンガラス12の下側(図1参照)に位置し、ADF6が原稿Mを原稿トレイ21から排出トレイ25へと搬送する過程において、読取デバイス7により原稿Mの片面を読み取る方式である。
【0022】
(複合機の電気的構成)
図2に示すように、複合機1は、制御基板30を備える。制御基板30には、制御ユニット31、デバイス制御部32、アナログフロントエンド(以下、AFE)33、駆動部34が搭載されており、これらにバス36を介して、操作ユニット37、表示ユニット38などが接続されている。操作ユニット37は、複数のボタンを備え、ユーザにより各種の指示や設定の入力操作が可能である。表示ユニット38は、ディスプレイやランプ等を備え、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。
【0023】
制御ユニット31は、中央処理装置(以下、CPU)31A、及び、メモリ31Bを有する。メモリ31Bには、複合機1の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU31Aは、メモリ31Bから読み出したプログラムに従って、複合機1の各部を制御する。メモリ31Bは、RAMやROMを有する。制御ユニット31は、制御部の一例である。
【0024】
デバイス制御部32は、読取デバイス7に各々接続されており、CPU31Aからの命令に基づいて、光源7Bの点灯/消灯、及び、CIS7Aによる読み取りを制御する信号を読取デバイス7に送信する。読取デバイス7は、デバイス制御部32から信号を受け取ると、光源7Bを点灯し、原稿Mから反射される反射光をCIS7Aにより受光する。また、読取デバイス7は、CIS7Aが受光した受光量に応じたアナログの第1読取データをAFE33に出力する。
【0025】
AFE33は、読取デバイス7に各々接続されている。AFE33は、読取デバイス7から出力されるアナログ信号である第1読取データを、RGB(レッド・グリーン・ブルー)表色系の階調、換言すれば画像濃度に応じたデジタル値である第2読取データに変換する。CPU31Aは、当該第2読取データを、バス36を介してメモリ31Bに記憶する。以下、このデジタル値を、階調データという。なお、以下の説明では、第2読取データは8ビット(0〜255)のデータであり、階調データが小さいほど画像濃度が高く、階調データが大きいほど画像濃度が低い場合を例に挙げて説明する。データ駆動部34は、各種ローラ24を用いて原稿Mを搬送方向に搬送する搬送機構39や、読取デバイス7を移動させる移動機構等に接続されており、CPU31Aからの命令に基づいて搬送機構39等の動作を制御する。
【0026】
(読取処理)
ユーザが、原稿トレイ21またはFB4上に原稿Mを載置し、操作ユニット38にてモノクロ形式の読取指示の入力操作をすると、制御ユニット31は、図3に示す読取処理を実行する。具体的には、CPU31Aが、上記プログラムを読み出して、上記読取処理を実行する。当該読取処理を実行するためのプログラムは、地色補正プログラムの一例である。この読取処理により、原稿Mの画像が読取デバイス7により読み取られつつ、その読取画像、換言すれば読取データに対し、原稿Mの画像の地色濃度に応じた地色補正が行われる。
【0027】
図4には、原稿M1について地色補正が行われていない読取画像G1と、地色補正が行われた後の読取画像G2とが例示されている。この原稿M1は、読取方向における先端側に位置する領域M1A、及び、その後方に位置する領域M1Bを有する。領域M1Aには、白色の文字の背景部分が黒色でベタ塗りされた画像が印刷されており、領域M1Bには、文字、イメージ及びグラフ等の背景部分が薄い灰色でベタ塗りされた画像が印刷されている。なお、上記読取方向は、FB読取の場合、図1においてFB4上に載置された原稿Mに対してその前端から後端に向かう方向であり、ADF読取の場合、ADF6によって搬送される原稿Mに対して、その搬送方向の前端から後端に向かう方向である。
【0028】
(1)各領域の先頭ラインに対する処理
CPU31Aは、まずライン番号N及び領域番号Kを1に初期化し(S1)、読取範囲が終了したかどうかを判断する(S2)。具体的には、CPU31Aは、ライン番号Nが、予め定められた読取範囲に対応する全ライン数Nmaxを超えた場合に、読取範囲が終了したと判断する。なお、読取範囲は、原稿Mのサイズにかかわらず固定の範囲でもよいし、原稿Mのサイズに応じて変更される範囲でもよい。
【0029】
CPU31Aは、読取範囲が終了したと判断すれば(S2:NO)、読取デバイス7に原稿M上の画像におけるN番目のラインを読み取らせて、そのN番目のラインの第2読取データを取得する画像読取処理を実行する(S3)。なお、ラインとは、原稿Mの画像のうち、上記複数の読取素子7Aの並び方向、即ち、主走査方向に沿った線状部分の画像である。また、モノクロ形式の画像読取では、CPU31Aは、モノクロの階調データを示すグリーンの第2読取データのみ取得する。
【0030】
CPU31Aは、N番目のラインの第2読取データを取得すると、そのN番目のラインが、領域Kの1番目のライン、即ち先頭ラインであるかどうかを判断する(S4)。例えば図4の例では、CPU31Aは、原稿Mの領域M1Aにおける最初のラインや、領域M1Bにおける最初のラインの第2読取データを取得した場合に、それらのラインを、領域1または領域2の先頭ラインであると判断する。
【0031】
CPU31Aは、領域Kの先頭ラインの第2読取データを取得したと判断した場合には(S4:YES)、先頭ラインについて、ラインの地色濃度の階調データを検出するライン地色濃度検出処理を実行する(S5)。ラインの地色濃度とは、そのライン画像において広い範囲を占める領域の色、換言すれば背景部分の画像濃度をいう。以下、ラインの地色濃度の階調データを、単に、ラインの地色濃度DL(N)ということがある。具体的には、CPU31Aは、ラインの地色濃度を、当該ラインの全体分、換言すれば全画素の読取データに基づき決定する全体データ利用処理により、先頭ラインについてライン地色濃度検出処理を実行する。全体データ利用処理では、CPU31Aは、ラインにおける全画素の階調データ(輝度)の高いものから所定数の画素を抽出し、その所定数の画素の階調データの平均値を、当該ラインの地色濃度DL(N)とする。なお、所定数の一例としては、全画素が1024個の場合、10個が好ましい。
【0032】
図5には、読取デバイス7の全画素(読取素子)と、各画素の階調データとの関係が例示されている。同図に示すように、階調データが高いものから10個の画素について、階調データ(同図の黒丸)の平均値が算出され、この平均値が、ラインの地色濃度DL(N)とされる。CPU31Aは、先頭ラインの地色濃度DL(N)を検出すると、その地色濃度DL(N)を、領域Kの地色濃度DE(K)としてメモリ31Bに記憶し(S6)、ライン番号Nに1を加算して(S7)、S2に戻る。
【0033】
(2)各領域の2番目以降のラインに対する処理
CPU31Aは、読取範囲が終了していないと判断すれば(S2:NO)、N番目のラインの第2読取データを取得し(S3)、そのN番目のラインが、領域Kの先頭ラインでない、換言すれば2番目以降のラインであると判断すれば(S4:NO)、部分データ利用モードと全体データ利用モードのいずれが選択されているかを判断する(S8)。このモード選択は、例えばユーザが操作ユニット38にて上記読取指示の入力操作をする際に行われる。:操作ユニット38は、選択受付部の一例である。
【0034】
CPU31Aは、部分データ利用モードが選択されていると判断すれば(S8:YES)、部分データ利用処理により、N番目のラインについてライン地色濃度検出処理を実行する(S9)。部分データ利用処理では、CPU31Aは、ラインの地色濃度DL(N)を、当該ラインの右端側及び左端側の少なくとも一方側部分の第2読取データのみに基づき決定する。より具体的には、CPU31Aは、ラインの左右両端側部分の階調データの平均値を、当該ラインの地色濃度DL(N)とする。図6には、読取デバイス7の全画素(読取素子)と、各画素の階調データとの関係が例示されている。同図に示すように、左右端側に位置する8つの画素について、階調データ(同図の黒丸)の平均値が算出され、この平均値が、ラインの地色濃度DL(N)とされる。
【0035】
一方、CPU31Aは、全体データ利用モードが選択されていると判断すれば(S8:NO)、S5と同様に、上述した全体データ利用処理により、N番目のラインについてライン地色濃度検出処理を実行する(S10)。例えば図4に示す原稿M1のように、周縁分に余白領域が無い、いわゆる縁無し原稿の画像を読み取る場合、部分データ利用モードを選択することで、ライン地色濃度検出処理の処理負担の軽減、高速化を図ることができる。一方、周縁分に余白領域が有る、いわゆる縁有り原稿の画像を読み取る場合、部分データ利用処理を実行すると、ラインの地色濃度が、常に余白領域の画像濃度とされてしまい、正確にライン地色濃度検出処理を実行できない可能性がある。そこで、全体データ利用モードを選択することで、余白領域による影響を抑制しつつ地色補正の実行の要否を判断することができる。
【0036】
CPU31Aは、S9またはS10の処理によりラインの地色濃度DL(N)を検出すると、ラインカウント処理を実行する。ラインカウント処理では、CPU31Aは、まず、検出したラインの地色濃度DL(N)と、上記S6でメモリ13Bに保存した領域Kの地色濃度DE(K)との差が、基準範囲以内であるかどうかを判断する(S11)。CPU31Aは、その差が基準範囲以内であると判断した場合(S11:YES)、検出したラインと1つ前のラインとは、地色濃度が略同一であるとして、領域Kの隣接ライン数C(K)に1を加算する(S12)。つまり、検出したラインと1つ前のラインとが、同一の領域Kに含められる。
【0037】
CPU31Aは、ラインカウント処理を実行した後、加算後の隣接ライン数C(K)が基準数に達したかどうかを判断する(S13)。基準数は、前述した全ライン数Nmaxの半数以上であることが好ましい。CPU31Aは、隣接ライン数C(K)が基準数に達していないと判断すれば(S13:NO)、S7に進む。これに対し、CPU31Aは、隣接ライン数C(K)が基準数に達したと判断すれば(S13:YES)、原稿地色濃度抽出処理を実行する。この原稿地色濃度抽出処理では、CPU31Aは、領域Kを、隣接ライン数C(K)が最も多い最大領域であるとみなし、当該領域Kの地色濃度DE(K)を、原稿Mの画像の地色濃度DMとして抽出する(S14)。
【0038】
これにより、常に読取画像の全ラインについてラインカウント処理を実行した後に、最大領域を抽出する構成に比べて、早期に原稿地色濃度抽出処理を行うことができる。また、隣接ライン数C(K)が基準数に達した時点でラインカウント処理を停止することにより、その処理負担を軽減することができる。図4の例では、原稿M1の領域M1Bを略3分の2だけ読み取った時点で、当該領域M1Bが最大領域とみなされ、ラインカウント処理が停止される。
【0039】
一方、CPU31Aは、検出したラインの地色濃度DL(N)と領域Kの地色濃度DE(K)との差が基準範囲外であると判断した場合(S11:NO)、検出したラインと1つ前のラインとは、地色濃度が異なるとして、領域番号Kに1を加算し、その時点までの隣接ライン数C(K)を、領域Kに対応付けてメモリ13Bに記憶する(S15)。つまり、1つ前のN−1番目のラインが領域Kに含められ、検出したN番目のラインが別の領域K+1に含められる。
【0040】
CPU31Aは、ラインカウント処理で処理されていない未処理ライン数が、既にカウントされメモリ13に記憶されている隣接ライン数C(K)の最大値Cmaxよりも少ないかどうかを判断する未処理ライン数判断処理を実行する(S16)。CPU31Aは、前述した全ライン数Nmaxから、現在のライン番号Nを差し引いた数を、未処理ライン数とする。CPU31Aは、未処理ライン数が最大値Cmax以上であると判断すれば(S16:NO)、S7に進む。これに対し、CPU31Aは、未処理ライン数が最大値Cmaxよりも少ないと判断すれば(S16:YES)、これ以降、ラインカウント処理を継続しても、上記最大値Cmaxを超える隣接ライン数がカウントされることはないため、当該最大値Cmaxに対応する領域を最大領域とし、その地色濃度DE(K)を、原稿Mの画像の地色濃度DMとして抽出する(S17)。
【0041】
これにより、常に読取画像の全ラインについてラインカウント処理を実行した後に、最大領域を抽出する構成に比べて、早期に原稿地色濃度抽出処理を行うことができる。また、未処理ライン数が最大値Cmaxよりも少ないと判断した時点でラインカウント処理を停止することにより、その処理負担を軽減することができる。図4の例では、原稿M1の領域M1Aを読み終わった時点では、未処理ライン数が最大値Cmaxよりも多いため、ラインカウント処理が継続される。
【0042】
隣接ライン数C(K)が基準数に達することなく(S13:NO)、且つ、未処理ライン数が最大値Cmaxよりも少なくならずに(S16:NO)、読取範囲が終了すると(S2:YES)、CPU31Aは、メモリ13に記憶されている隣接ライン数C(K)の最大値Cmaxに対応する領域を最大領域とし、その地色濃度DE(K)を、原稿Mの画像の地色濃度DMとして抽出する(S18)。
【0043】
(3)補正処理
CPU31Aは、上記S14、S17、S18で原稿Mの画像の地色濃度DMとして抽出すると、図7に示す補正処理を実行する(S19)。CPU31Aは、まず抽出した地色濃度DMが、基準値Dth以上であるかどうか、換言すれば、原稿Mの地色濃度が、基準濃度以下であるかどうかを判断する、濃度判断処理を実行する(S31)。CPU31Aは、地色濃度DMが、基準値Dth以上であると判断した場合には(S31:YES)、地色濃度DMに応じた地色補正を開始する。具体的には、CPU31Aは、地色濃度DMを、より高い値にする、換言すれば、原稿Mの地色濃度を、より薄くする、或いは白色にするための補正係数Hを算出する(S32)。例えば、地色濃度DMが200であるとすると、白色の階調データは255なので、補正係数Hは、1.275(=255/200)とされる。
【0044】
CPU31Aは、補正係数Hを算出すると、既にメモリ13Bに記憶されている第2読取データから順に、各画素の階調データに補正係数Hを乗じる地色補正を開始し(S33)、S34に進む。これにより、図4に示すように、原稿M1に対して、灰色のベタ塗り部分が白色に補正された読取画像G2を得ることができる。なお、読取画像G2は、地色補正後に、各画素の階調データを、所定の閾値と比較することにより2値化して白と黒のみの画像とされたものである。なお、以上の地色補正は一例であり、これに以外に、公知の様々な地色補正を適用することができる。
【0045】
一方、CPU31Aは、地色濃度DMが、基準値Dth未満である、換言すれば、原稿Mの地色濃度が、基準濃度を超えると判断した場合には(S31:NO)、図4の読取画像G1のように、上記地色補正をせずにS34に進む。このような場合に地色補正を実行すると、文字等が薄くなり見えづらくなる可能性があるからである。CPU31Aは、S34で読取範囲を終了していないと判断すれば(S34:NO)、ライン番号Nに1を加算し(S35)、N番目のラインの第2読取データを取得する画像読取処理を実行し(S36)、S34に戻る。CPU31Aは、読取範囲を終了したと判断すれば(S34:YES)、本補正処理、及び、読取処理を終了する。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度が、原稿画像の地色濃度とされ、当該原稿画像の地色濃度に基づき地色補正処理の実行の要否が決定される。従って、例えば、原稿に、ラインの読み取りが最も早い先端領域よりも、隣接ライン数が多い領域が存在する場合に、原稿画像の地色濃度が、常に、読取画像の先端領域の地色濃度に限定されることを抑制することができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
上記実施形態では、画像読取装置の一例として、複合機1を挙げた。しかし、画像読取装置は、これに限らず、スキャナ機能のみ有するスキャナ装置単体、ファクシミリ装置単体、スキャナ機能及び印刷機能のみ有するコピー機などでもよい。要するに、読取デバイスを有して原稿画像を読み取るスキャナ機能を備える装置であればよい。
【0049】
上記実施形態では、画像読取装置の一例として、FB4を有して静止読取が可能な複合機1を例に挙げた。しかし、画像処理装置は、FB4を有しない構成でもよい。例えば、2つの読取デバイスが、ADF6の搬送路を挟んで配対向置された構成でもよい。また、画像処理装置は、1つの読取デバイスと、原稿反転機構とを有し、原稿の一方の面を読取デバイスで読み取った後、スイッチバック機構などの原稿反転機構により反転された原稿の他方の面を上記読取デバイスで読み取る構成でもよい。
【0050】
上記実施形態では、制御ユニット31は、1つのCPUを備える構成であった。しかし、制御ユニット31は、複数のCPUを備える構成でもよく、画像処理回路など、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路で構成してもよく、更に、CPUとハード回路により構成したものでもよい。また、複数のCPUやハード回路を備える構成では、例えば画像読取処理、ライン地色濃度検出処理、ラインカウント処理、原稿地色濃度抽出処理、未処理ライン数判断処理、濃度判断処理などの各処理の一部または全部を、複数のCPU等で分担して処理させてもよい。
【0051】
上記実施形態では、地色補正プログラムの一例として、メモリ31Bに記憶されたものを例に挙げた。しかし、地色補正プログラムは、これに限らず、ハードディスク装置、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性メモリや、CD−Rなどの記憶媒体などに記憶されたものでもよい。
【0052】
上記実施形態では、モノクロ形式の読取指示がされた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、カラー形式の読取指示がされた場合に、そのカラーの読取画像に対して地色補正を行う構成でもよい。この場合、R、G、Bの色ごとに、図3に示す読取処理を実行する構成が好ましい。
【0053】
上記実施形態では、CPU31Aは、S5、S10において全体データ利用処理によりライン地色濃度検出処理を行う例を挙げた。しかし、これに限らず、CPU31Aは、S5及びS10の少なくともいずれか一方の処理において、ラインの地色濃度を、当該ラインの中央部分の読取データに基づき決定する構成でもよい。
【0054】
上記実施形態では、CPU31Aは、ライン地色濃度検出処理において、ラインの利用対象部分における画素の階調データの平均値を、当該ラインの地色濃度とした。しかし、ライン地色濃度検出処理は、これに限らず、CPU31Aが、ラインの利用対象部分において、最も多くの画素が示す階調データ、階調データの最大値と最小値との中心の値や、互いに隣接し、且つ、互いの階調データの差が所定範囲内である画素の数が最も多い部分の階調データを、当該ラインの地色濃度とする構成でもよい。
【0055】
上記実施形態では、CPU31Aは、各領域Kの先頭ラインについて全体データ利用処理によりラインの地色濃度DL(N)を検出した。しかし、これに限らず、CPU31Aが、各領域Kの先頭ラインについて部分データ利用処理によりラインの地色濃度DL(N)を検出してもよい。但し、上記実施形態の構成であれば、原稿が縁有りかどうかによる影響を抑制することができる。
【0056】
上記実施形態では、CPU31Aは、各領域の先頭ラインの地色濃度DL(N)を、領域Kの地色濃度DE(K)とした。しかし、これに限らず、CPU31Aは、当該領域Kにおけるラインの地色濃度DL(N)の平均値や、最大値と最小値の中心の値や、最も多くのラインが示す階調データを、領域Kの地色濃度DE(K)としてもよい。
【0057】
上記実施形態では、選択受付部の一例として、操作ユニット38を例に挙げた。しかし、これに限らず、複合機1が、外部機器から、モードの選択指示を受信するデータ通信部を備える構成では、そのデータ通信部が選択受付部の一例である。また、CPU31Aが、原稿の先頭ラインの読取データに基づき、当該原稿が、縁無し原稿であると判断した場合に部分データ利用モードを自動で選択し、縁有り原稿であると判断した場合に全長データ利用モードを自動で選択する構成でもよい。
【0058】
上記実施形態では、ラインカウント処理において、CPU31Aは、検出したラインの地色濃度DL(N)と、上記S6でメモリ13Bに保存した領域Kの地色濃度DE(K)との差が、基準値以下であるかどうかを判断した。しかし、これに限らず、CPU31Aは、検出したラインの地色濃度DL(N)と、その検出したラインの1つ前のラインの地色濃度DL(N−1)、或いは、領域K内において、上記検出したラインの1つ前までのラインの地色濃度DL(N)の平均値との差が、基準値以下であるかどうかを判断してもよい。
【0059】
上記実施形態では、隣接ライン数C(K)が基準数に達した時点で原稿地色濃度抽出処理を実行した。しかし、例えば、先端領域以外の他の領域の隣接ライン数が、先端領域の隣接ライン数を超えたと判断された時点で、他の領域のラインの地色濃度の平均値等を、原稿Mの画像の地色濃度DMとする構成でもよい。これにより、例えば、原稿に、ラインの読み取りが最も早い先端領域よりも、隣接ライン数が多い領域が存在する場合に、原稿画像の地色濃度が、常に、読取画像の先端領域の地色濃度に限定されることを抑制することができる。また、常に読取画像の全ラインについてラインカウント処理を実行した後に、原稿画像の地色濃度を抽出する構成に比べて、早期に原稿地色濃度抽出処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1:複合機 7:読取デバイス 31:制御ユニット M:原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を読み取る読取デバイスと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記読取デバイスに、前記原稿画像を1ライン毎に読み取らせて、当該1ライン毎の読取データを取得する画像読取処理と、
前記画像読取処理で取得された読取データから各ラインの地色濃度を検出するライン地色濃度検出処理と、
前記ライン地色濃度検出処理の検出結果に基づき、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数をカウントするラインカウント処理と、
前記ラインカウント処理のカウント結果に基づき、前記原稿画像の読取画像から、前記隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度を、当該原稿画像の地色濃度として抽出する原稿地色濃度抽出処理と、
前記原稿地色濃度抽出処理で抽出された前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であるかどうかを判断する濃度判断処理と、
前記濃度判断処理で前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であると判断された場合に、前記読取データに対し、前記原稿画像の地色濃度に応じた地色補正を行う地色補正処理と、を実行する、画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、
前記原稿地色濃度抽出処理では、
前記ラインカウント処理において、前記隣接ライン数が前記読取画像の全ライン数の半数以上の基準数に達した時点で、前記隣接ライン数が前記基準数に達した領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出する、画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、
前記ラインカウント処理で処理されていない未処理ライン数が、既にカウントされた隣接ライン数の最大値よりも少ないかどうかを判断する未処理ライン数判断処理を実行し、
前記原稿地色濃度抽出処理では、前記未処理ライン判断処理で前記未処理ライン数が前記隣接ライン数の最大値よりも少ないと判断された時点で、当該隣接ライン数が最大である領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出する、画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、
前記ラインカウント処理では、前記読取デバイスの読取方向における先頭ラインを含む先端領域の隣接ライン数をカウントし、その後、前記先端領域以外の他の領域の隣接ライン数が、前記先端領域の隣接ライン数を超えるかどうかを判断し、
前記原稿地色濃度抽出処理では、前記他の領域の隣接ライン数が、前記先端領域の隣接ライン数を超えたと判断された時点で、当該他の領域のラインの地色濃度を、前記原稿画像の地色濃度として抽出する、画像読取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、
前記ライン地色濃度検出処理では、前記ラインの一端または両端側の読取データに基づき当該ラインの地色濃度を決定する部分データ利用処理を実行する、画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置であって、
部分データ利用モードと全体データ利用モードとのいずれかを選択する選択指示を受け付ける選択受付部を備え、
前記制御部は、
前記選択受付部が、前記部分データ利用モードを選択する選択指示を受けた場合には、前記部分データ利用処理により前記ライン地色濃度検出処理を実行し、
前記選択受付部が、前記全体データ利用モードを選択する選択指示を受けた場合には、各ラインの地色濃度を、当該ラインの全体分の読取データに基づき決定する全体データ利用処理により前記ライン地色濃度検出処理を実行する、画像読取装置。
【請求項7】
原稿画像を読み取る読取デバイスを備える画像読取装置が有するコンピュータに、
前記読取デバイスに、前記原稿画像を1ライン毎に読み取らせて、当該1ライン毎の読取データを取得する画像読取処理と、
前記画像読取処理で取得された読取データから各ラインの地色濃度を検出するライン地色濃度検出処理と、
前記ライン地色濃度検出処理の検出結果から、互いに隣接し、且つ、互いのラインの地色濃度の差が基準範囲以内であるラインの数である隣接ライン数をカウントするラインカウント処理と、
前記ラインカウント処理のカウント結果に基づき、前記原稿画像の読取画像から、前記隣接ライン数が最も多い領域のラインの地色濃度を、当該原稿画像の地色濃度として抽出する原稿地色濃度抽出処理と、
前記原稿地色濃度抽出処理で抽出された前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であるかどうかを判断する濃度判断処理と、
前記濃度判断処理で前記原稿画像の地色濃度が基準濃度以下であると判断された場合に、前記読取データに対し、前記原稿画像の地色濃度に応じた地色補正を行う地色補正処理と、を実行させる、地色補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74474(P2013−74474A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212110(P2011−212110)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】