説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】所定のラインの画像信号から演算したオフセット量を用いて、その所定ラインの画像信号を補正することである。
【解決手段】画像原稿の画像信号を読み取りアナログ信号に変換するイメージセンサ部50と、イメージセンサ部50から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ64を含むアナログ信号処理部60と、アナログ信号処理部60から出力されたデジタル信号から、前記画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する画像信号処理部70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像読取装置及び画像読取装置を備える画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、デジタル複写機などの画像読取装置(スキャナ)において、CCDなどのイメージセンサにより画像原稿の画像信号を取得する。画像読取装置には、この取得した画像情報の黒レベルを一定の直流電位に保つために、その画像信号に直流電位を与えてクランプ補正するクランプ回路が設けられる。クランプ回路は、ラフに直流電位レベルを安定させるので、より安定化を図るため、基準となる直流電位レベルからの、画像の主走査方向のラインごとの画像信号のオフセット量を算出し、そのオフセット量を次のラインの画像信号にフィードバックさせる構成が考えられていた(例えば、引用文献1、2又は3参照)。
【0003】
ここで、図7及び図8を参照して、従来の画像読取装置のスキャナ部40Aを説明する。図7は、従来のスキャナ部40Aの内部構成を示す図である。図8は、スキャナ部40Aに用いられる信号のタイミングチャートである。スキャナ部40Aは、白黒の画像をスキャンするものとする。
【0004】
図7に示すように、スキャナ部40Aのイメージセンサ部50において、画像原稿に記録された画像は、撮像素子としてのCCDセンサ51により読取られて電気信号に変換される。この電気信号は、画像原稿に対する主走査方向のラインごとの電気信号である。そして、その電気信号がエミッタフォロワ52により増幅され、増幅された電気信号のDC成分がACカップリングコンデンサ53によりカットされてアナログ信号として出力される。
【0005】
そして、スキャナ部40Aのアナログ信号処理部60において、クランプ回路61によりイメージセンサ部50から出力されたアナログ信号がクランプ補正され、アンプ62,63により増幅され、増幅されたアナログ信号がADコンバータ64によりデジタル信号に変換されて出力される。ADコンバータ64から出力されたデジタル信号は、ブラックレベルクランプ回路65により黒の基準レベルとしての目標値からのオフセット量が算出される。オフセット量は、スケーリング部66により設定されたスケーリング量(1/1,1/2,1/8,1/16など)がかけられる。その算出されたデジタル信号のオフセット量がオフセット量DAコンバータ67によりアナログ信号のオフセット量に変換されて、アンプ62から出力された次のラインのアナログ信号に加算され、アンプ63に入力される。
【0006】
クランプ回路61は、アナログ信号を目標レベルに合わせるようにクランプ補正するが、ラフにしか補正できず誤差が生じるため、オフセット量を次のラインのアナログ信号に加算している。
【0007】
また、イメージセンサ部50から出力されたアナログ信号としてのイメージセンサ出力信号は、上記ラインごとの画像データがつなげられたデータである。イメージセンサ出力信号は、各ラインの実画像データに対応する有効信号期間同士の間に、空送り期間及び光シールド期間が設けられる。
【0008】
図8に示すように、クランプ回路61を動作制御させるクランプ制御信号と、ブラックレベルクランプ回路65を動作制御させるブラックレベルクランプ制御信号とは、イメージセンサ出力信号の空送り期間+光シールド期間内のタイミングでオンされる。このため、所定のラインのデジタル信号の出力後に、そのラインのデジタル信号から次のラインの空送り期間+光シールド期間内にオフセット量が算出され、次のラインのアナログ信号に加算される。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−292315号公報
【特許文献2】
特開平7−74982号公報
【特許文献3】
特開2002−57899号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の画像読取装置では、読取った画像データを画像形成する場合に、図9R>9に示す画像形成後の記録紙Aのように、副走査方向に沿って、主走査方向の横スジが入るおそれがあった。図9は、スキャナ部40Aによりスキャンされた画像信号が画像形成された記録紙Aを示す図である。横スジとは、本来黒ベタ部分における白の横スジ、又は本来白ベタ部分における黒の横スジである。
【0011】
図10は、スキャナ部40Aによりスキャンされた画像信号のオフセット量による補正結果を示す図であり、(a)はブラックレベルクランプ回路65の動作オンの場合の画像信号及びその画像形成例を示す図であり、(b)はブラックレベルクランプ回路65の動作オフの場合の目標値から複数ラインの明方向の誤差が生じている場合の画像信号及びその画像形成例を示す図である。ここで、図10に示すように、目標値の濃度レベルのベタ塗りを画像形成する場合を考える。
【0012】
図10(b)に示すように、副走査方向に明方向の誤差が複数のラインに現れた場合、ブラックレベルクランプ回路65の動作オフで、オフセット量による補正は行われなく、画像形成後の画像において、明方向の誤差発生の複数のラインに複数の白スジが発生している。
【0013】
図10(a)に示すように、ブラックレベルクランプ回路65の動作オンで、図10(b)に示すデジタル信号を、明方向の誤差発生のラインから、ブラックレベルクランプ回路65によりオフセット量が算出され、オフセット量がアナログ化されて次のラインのアナログ信号にフィードバックして補正がなされる。このため、ラインごとに誤差がスケーリングにより減縮されて目標値に近づけられる。また、明方向の誤差発生のラインからベタ部分に戻ったラインから、ブラックレベルクランプ回路65により画像信号に、前ラインとしての明方向の誤差発生の最終ラインに基づくオフセット量の補正がなされて暗方向の誤差が発生する。ラインごとにその暗方向の誤差がスケーリングにより減縮されて目標値に近づけられる。このため、画像形成後の画像において、明方向の誤差発生のラインには白スジが発生し、暗方向の誤差発生のラインには黒スジが発生している。
【0014】
横スジの不具合は、所定のラインのデジタル信号からオフセット量が算出され、そのオフセット量を次のラインのアナログ信号に加算していたため、オフセット量が所定のラインから急激に変化した場合、前記所定のラインのデジタル信号自体を補正できなかったことを原因とする。
【0015】
本発明の課題は、所定のラインの画像信号から演算したオフセット量を用いて、その所定ラインの画像信号を補正することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための請求項1に記載の発明は、画像原稿の画像信号を読み取りアナログ信号に変換するイメージセンサ部と、前記イメージセンサ部から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータとを備える画像読取装置において、
前記ADコンバータから出力されたデジタル信号から、前記画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する画像信号処理部を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する。このため、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標レベルからのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像読取装置において、
前記イメージセンサ部は、前記画像原稿の画像信号を読み取り、赤、緑及び青の各色のアナログ信号に変換し、
前記画像信号処理部は、前記ADコンバータから出力されたデジタル信号から、前記画像信号の主走査方向のラインごとかつ赤、緑及び青の色ごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したライン及び色のデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算することを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、赤、緑及び青の各色の画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する。このため、赤、緑及び青の色ごとに、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標レベルからのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像読取装置において、
前記画像信号処理部は、前記赤、緑及び青の各色のオフセット量の加算又は減算を、前記赤、緑及び青の色ごとにオン/オフ制御可能であることを特徴とすることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、赤、緑及び青の各色のオフセット量の加算又は減算を、赤、緑及び青の色ごとにオン/オフ制御可能であるので、赤、緑及び青の各色のうち、デジタル信号の画像の横スジの除去が必要な色にのみオフセット量による補正を行い、不必要な処理を省くことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記目標レベルは、可変であることを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、目標レベルが可変であるので、デジタル信号に応じて適切な目標レベルに変更することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記画像信号処理部は、前記イメージセンサ部の光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタル信号を用いて前記オフセット量の演算を行うことを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータを用いてオフセット量の演算を行うので、各ラインのデジタルデータに適切なオフセット量を演算することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像読取装置において、
前記画像信号処理部は、前記イメージセンサ部の光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータの複数の画像データの平均値から前記オフセット量の演算を行うことを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータの複数の画素データの平均値を用いてオフセット量の演算を行うので、各ラインのデジタルデータにさらに適切なオフセット量を演算することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置により前記オフセット量を加算又は減算されたデジタル信号に基づいて記録媒体に画像形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、オフセット量による補正後のデジタル信号に基づいて記録媒体に画像形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る第1及び第2の実施の形態を順に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1〜図6を参照して第1の実施の形態を説明する。図1は、画像形成装置1の内部構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態のスキャナ部40の内部構成を示す図である。図1に示すように、画像形成装置100は、画像読取装置1と、画像形成部2と、操作部3と、表示部4と、通信部5とを備えて構成され、各部はバス6により接続されている。
【0032】
画像形成部2は、画像信号処理部70により画像処理が施された画像データに基づいて、電子写真方式により記録紙、OHPシートなどの記録媒体に画像を形成する。具体的には、感光体ドラム、露光部、現像部、定着部などを有し、この露光部がレーザビームやLED(Light Emitting Diode)により感光ドラムを感光させて画像データに応じた静電潜像を形成し、現像部が感光ドラムにトナーを吸着させる。そして、感光ドラムに吸着させたトナーを記録紙やOHPシートなどに転写し、定着部が用紙にトナーを熱定着させる。
なお、画像形成部2は、インクジェット方式、ドットインパクト方式、感熱方式などの他の方法により画像を形成することとしてもよい。
【0033】
操作部3は、数字キーや各種機能キーを備える。そして、これらのキーが押下された場合には、その押下信号をCPU10へ出力する。なお、この操作部3は、表示部4と一体となったタッチパネルにより構成されることとしてもよい。
【0034】
表示部4は、LCD(Liquid Crystal Display)又はEL(ElectroLuminecent)ディスプレイなどで構成され、CPU10からの表示信号に従って、画面表示を行う。
【0035】
画像読取装置1は、各部を中央制御するCPU(Central Processing Unit)10と、データを記憶するFROM(Flash Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶部20と、データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)30と、画像原稿の画像をスキャンするスキャナ部40とを備える。
【0036】
記憶部20は、CPU10により実行される各種プログラムやデータ、画像データなどを記憶する。RAM30は、読み書き可能な半導体素子で構成される。RAM30は、CPU10が実行するためのプログラムを展開するためのプログラムエリア、操作部4から入力されるデータやCPU10による各種処理結果等を保存するためのデータエリアなどが形成される。
【0037】
CPU10は、記憶部20に記憶されている画像形成装置100に対応する各種プログラムの中から指定されたプログラムをRAM30のワークエリアに展開し、RAM30上のプログラムとの協働により各種制御を実行する。この構成における各種制御の主体を制御部11とする。ここでは、制御部11はソフトウェア的に設けられるものとして説明したが、ハードウェア的に設けられる構成でもよい。また、操作部3及び表示部4は、図1上で画像読取装置1に含まれるように設けられる構成でもよい。
【0038】
スキャナ部40は、イメージセンサ部50と、アナログ信号処理部60と、画像信号処理部70とを備えて構成される。スキャナ部40は、図示しないが、画像原稿を載置するためのガラス板などのプラテン、画像原稿を照明するランプなどの光源、光源の点灯器、副走査方向の読み取りを行うためのミラー可動用モータ部、画像原稿からの反射光をCCDセンサ41に集光するためのレンズやミラーなどの光学素子部、画像原稿の紙送り部なども有する。
【0039】
通信部5は、LANなどの通信ネットワークなどにより外部機器と通信接続される。例えば、スキャナ部40によりスキャンされた画像データが記憶部20に記憶された場合に、記憶部20に記憶された画像データが通信部5を介して外部機器に送信することが可能である。
【0040】
図2に示すように、スキャナ部40のイメージセンサ部50及びアナログ信号処理部60は、図8に示すイメージセンサ部50及びアナログ信号処理部60と同様であるので、重複する説明を省略する。アナログ信号処理部60から出力されるデジタル信号は、10ビットのデジタルデータとするが、これに限るものではない。
【0041】
画像信号処理部70は、アナログ信号処理部60から出力されるデジタル信号を記憶する半導体メモリなどのメモリ71と、メモリ71に記憶されているデジタル信号のオフセット量を演算するオフセット量演算回路72と、所定のスケーリング値をオフセット量にかけて出力するスケーリング部73と、メモリ71に記憶されているデジタル信号に、スケーリング部73から出力されたオフセット量を加算又は減算し、10ビットのデジタル信号として出力する加減算回路74とを備えて構成される。
【0042】
画像信号処理部70から出力されたデジタル信号は、スキャンされた画像データとして例えばRAM30に記憶される。そして、例えばRAM30内のデジタルデータに各種画像処理が施され、画像形成部2において記録紙などに画像形成される。また、アナログ信号処理部60や画像信号処理部70を制御する各制御パルスは、CPU10(制御部11)から出力される。
【0043】
次いで、画像形成装置100の画像読取り動作を簡単に説明する。画像信号処理部70において、画像原稿からイメージセンサ部50により画像がスキャンされアナログ信号として出力される。イメージセンサ部50から出力されたアナログ信号は、アナログ信号処理部60によりオフセット量による補正がなされてデジタル信号に変換されて出力される。アナログ信号処理部60でのオフセット量による補正は、所定の主走査方向のラインのデジタル信号からオフセット量を算出し、そのオフセット量を次のラインのアナログ信号にアナログ変換して加算する補正である。このため、アナログ信号処理部60から出力されるデジタル信号は、[発明が解決しようとする課題]において述べた、画像のベタ部分において、副走査方向に沿って、主走査方向の横スジが入るおそれのあるデジタル信号となる。
【0044】
本実施の形態では、アナログ信号処理部60から出力されるデジタル信号がラインごとにメモリ71に記憶される。メモリ71に記憶されたデジタル信号から、オフセット量演算回路72により目標値(目標レベル)からのオフセット量が演算される。目標値とは、目標(基準)となる黒又は白の電位値である。また、オフセット量は、オフセット量の絶対値を意味するものとする。演算されたオフセット量は、スケーリング部73により1/1,1/2,1/8,1/16などの所定のスケーリング量がかけられる。そして、スケーリングされたオフセット量が加減算回路74により、メモリ71に記憶されかつオフセット量の演算元のラインのデジタル信号に加算又は減算される。加算又は減算されたデジタル信号は、スキャンされたデジタルの画像データとして加減算回路74から出力される。
【0045】
次に、スキャナ部40の画像信号処理部70の動作タイミングを説明する。図3は、スキャナ部40に用いられるイメージセンサ出力信号の各期間を示すタイミングチャートである。図4は、スキャナ部40に用いられる信号のタイミングチャートである。
【0046】
先ず、図3を参照して主走査方向の1ラインクロック信号に対応するイメージセンサ出力信号の各期間を説明する。CCDセンサ51は、詳細に説明すると、原稿の画像の1ライン分をスキャンして、その画像データのイメージセンサ出力信号を奇数列及び偶数列の画像データ信号に分けて出力する。その奇数列のイメージセンサ出力信号をイメージセンサ出力信号S1とし、その偶数列のイメージセンサ出力信号をイメージセンサ出力信号S2とする。CCDセンサ51から出力されたイメージセンサ出力信号S1,S2は、アナログ信号処理部60において合成され、再び1ラインのデータに戻される。
【0047】
ラインクロック信号の1周期中に、イメージセンサ信号S1は、空送り期間と、光シールド期間と、実画像データ部分である有効信号期間と、空送り期間とが順に経過して、1ライン出力期間とされる。空送り期間とは、各有効信号期間を区別するために設けられる期間である。光シールド期間とは、CCDセンサ51の撮像部分の端を覆うように設けられたアルミ箔などのシールド部分における撮像データである。例えば、光シールド期間内の読取りデータを黒の基準レベルとしての目標値とする。また、図3に示すように、空送り期間及び光シールド期間を含む期間を、有効信号期間と対比する意味においてのダミー信号期間とする。イメージセンサ信号S2は、イメージセンサ信号S1と同様である。
【0048】
また、アナログ信号処理部60における目標値からのオフセット量の演算において、目標値の数値は自在に変更可能とする。また、目標値の数値は、空送り期間及び光シールド期間のうちのいずれか一方又は両方のデジタル信号に基づいて決定される。例えば、空送り期間及び光シールド期間のうちのいずれか一方又は両方のデジタル信号の複数の画素データを取得し、その複数の画素データの平均値に基づいて目標値の数値を決定する。
【0049】
そして、図4を参照して、画像信号処理部70の動作タイミングを説明する。図4は、図3R>3のイメージセンサ出力信号及び各期間を簡略化して示す。図4に示すように、画像信号処理部70のオフセット量演算回路72を動作制御させるオフセット量演算制御信号は、イメージセンサ出力信号の空送り期間+光シールド期間内のタイミングでオンされる。このため、所定のラインのデジタル信号の出力前に、そのラインのデジタル信号から次のラインの空送り期間+光シールド期間内にオフセット量が演算され、その未出力のラインのデジタル信号に加算又は減算されて出力される。
【0050】
次に、図5を参照して、スキャナ部40の画像信号処理部70の補正処理の結果を説明する。図5は、スキャナ部40によりスキャンされた画像信号のオフセット量による補正結果を示す図であり、(a)は目標値から複数ラインの明方向の誤差が生じている場合の補正前の画像信号及びその画像形成例を示す図であり、(b)は(a)に示すデジタル信号を次のラインにフィードバックして、誤差を補正した結果を示す画像信号及びその画像形成例の図であり、(c)は補正後の画像信号及びその画像形成例を示す図である。
【0051】
図5に示すように、目標値の濃度レベルのベタ塗りを画像形成する場合を考える。図5(a)に示すように、副走査方向に明方向の誤差が複数ライン現れる場合に、画像形成後の画像には複数ラインの白スジが現れる。このため、アナログ信号処理部60のブラックレベルクランプ回路65により、目標値に対するラインごとのオフセット量を算出して、スケーリング部66によりスケーリング量をかけ、オフセット量DAコンバータ67によりそのラインの次のラインのアナログ信号にスケーリングしたオフセット量を減算(又は加算)して、各ラインのアナログ信号を補正していく。
【0052】
すると、[発明が解決しようとする課題]における図10を用いた説明と同様に、図5(a)に示すデジタル信号を次のラインにフィードバックして誤差を補正した結果、図5(b)に示すように、画像形成後の画像には白スジライン及び黒スジラインが順に現れる。このため、画像信号処理部70のオフセット量演算回路72により、目標値に対する白スジのラインのオフセット量を演算して、スケーリング部73により所定のスケーリング量をかけ、そのラインに対応するメモリ71内のデジタル信号にスケーリングしたオフセット量を減算して、各ラインのデジタル信号を補正していく。また、画像信号処理部70のオフセット量演算回路72により、目標値に対する黒スジのラインのオフセット量を演算して、スケーリング部73により所定のスケーリング量をかけ、そのラインに対応するメモリ71内のデジタル信号にスケーリングしたオフセット量を加算して、各ラインのデジタル信号を補正していく。すると、図5(c)に示すように、オフセット量による補正により、画像形成される画像から白スジ及び黒スジが除去される。
【0053】
よって、本実施の形態によれば、画像信号処理部70により、スキャンされた画像信号の主走査方向のラインごとに目標値からのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量をスケーリング後に加算又は減算する。このため、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標値からのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。また、画像形成部2により、オフセット量による補正後のデジタル信号に基づいて記録媒体に画像形成することができる。
【0054】
また、目標値が可変であるので、デジタル信号に応じて適切な目標値に変更することができる。また、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタル信号を用いてオフセット量の演算を行うので、各ラインのデジタル信号に適切なオフセット量を演算することができる。さらに、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタル信号の複数の画素データの平均値を用いてオフセット量の演算を行う場合に、各ラインのデジタル信号にさらに適切なオフセット量を演算することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、図6を参照して第2の実施の形態を説明する。図6は、本実施の形態のスキャナ部40Cの内部構成を示す図である。
【0056】
第1の実施の形態のスキャナ部40が画像の白黒データをスキャンする構成であるのに対し、本実施の形態のスキャナ部40Cは、画像のカラーデータをスキャンする構成である。第1の実施の形態の画像形性装置100において、スキャナ部40をスキャナ部40Cに代える構成であるので、異なる部分であるスキャナ部40Cを主として説明し、重複する説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、スキャナ部40Cは、イメージセンサ部50Cと、アナログ信号処理部60Cと、画像信号処理部70Cとを備えて構成される。イメージセンサ部50Cは、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3色の画像データを別々に読取るCCDセンサ51Cと、CCDセンサ51Cから出力されたRの信号を増幅及びDC成分カットするエミッタフォロワ52R及びACカップリングコンデンサ53Rと、CCDセンサ51Cから出力されたGの信号を増幅及びDC成分カットするエミッタフォロワ52G及びACカップリングコンデンサ53Gと、CCDセンサ51Cから出力されたBの信号を増幅及びDC成分カットするエミッタフォロワ52B及びACカップリングコンデンサ53Bとを備える。
【0058】
アナログ信号処理部60Cは、ACカップリングコンデンサ53Rから出力されたRのアナログ信号を処理するアナログ信号処理部60Rと、ACカップリングコンデンサ53Gから出力されたGのアナログ信号を処理するアナログ信号処理部60Gと、ACカップリングコンデンサ53Bから出力されたBのアナログ信号を処理するアナログ信号処理部60Bとを備えて構成される。アナログ信号処理部60R,60G,60Bの内部構成は、第1の実施の形態において説明したアナログ信号処理部60の内部構成と同様である。図示しないが、例えば、アナログ信号処理部60Rは、クランプ回路61Rと、アンプ62R,63Rと、ADコンバータ64Rと、ブラックレベルクランプ回路65Rと、スケーリング部66Rとを備えて構成される。
【0059】
画像信号処理部70Cは、アナログ信号処理部60Rから出力されたRのデジタル信号を処理する画像信号処理部70Rと、アナログ信号処理部60Gから出力されたGのデジタル信号を処理する画像信号処理部70Gと、アナログ信号処理部60Bから出力されたBのデジタル信号を処理する画像信号処理部70Bとを備えて構成される。画像信号処理部70R,70G,70Bの内部構成は、第1の実施の形態において説明した画像信号処理部70の内部構成と同様である。図示しないが、例えば、画像信号処理部70Rは、メモリ71Rと、オフセット量演算回路72Rと、スケーリング部73Rと、加減算回路74Rとを備えて構成される。
【0060】
この構成において、イメージセンサ部50Cにより画像原稿上の画像がスキャンされ、RGBの3色のアナログ信号がそれぞれ出力される。イメージセンサ部50Cから出力されたRGBのアナログ信号は、アナログ信号処理部60Cにより、それぞれ、クランプ補正と次ラインへのオフセット量の補正とがなされてRGBのデジタル信号に変換されて出力される。アナログ信号処理部60Cから出力されたRGBのデジタル信号について、対象ラインのデジタル信号にその対象ラインの目標値からのオフセット量の補正がなされて出力される。
【0061】
アナログ信号処理部60Cにおける目標値からのRGBそれぞれのオフセット量の演算において、RGBそれぞれの目標値の数値は自在に変更可能とする。また、アナログ信号処理部60CにおけるRGBそれぞれのオフセット量の加減算の実行は、制御部11の制御パルスにより各色で独立してオン(実行する)/オフ(実行しない)の切換制御が可能である。
【0062】
よって本実施の形態によれば、画像信号処理部70Cにより、RGBの各色の画像信号の主走査方向のラインごとに目標値からのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量をスケーリング後に加算又は減算する。このため、RGBの色ごとに、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標値からのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。
【0063】
また、RGBの各色のオフセット量の加算又は減算を、RGBの色ごとにオン/オフ制御可能であるので、RGBの各色のうち、デジタル信号の画像の横スジの除去が必要な色にのみオフセット量による補正を行い、不必要な処理を省くことができる。
【0064】
なお、以上の各実施の形態における記述は、本発明に係る好適な画像形成装置の一例であり、これに限定されるものではない。
また、以上の各実施の形態における画像形成装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する。このため、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標レベルからのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。
【0066】
請求項2に記載の発明によれば、赤、緑及び青の各色の画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する。このため、赤、緑及び青の色ごとに、対象ラインのデジタル信号をその対象ラインの目標レベルからのオフセット量により補正して、補正前のデジタル信号の画像に含まれるベタ部分の主走査方向の横スジを除去することができる。
【0067】
請求項3に記載の発明によれば、赤、緑及び青の各色のオフセット量の加算又は減算を、赤、緑及び青の色ごとにオン/オフ制御可能であるので、赤、緑及び青の各色のうち、デジタル信号の画像の横スジの除去が必要な色にのみオフセット量による補正を行い、不必要な処理を省くことができる。
【0068】
請求項4に記載の発明によれば、目標レベルが可変であるので、デジタル信号に応じて適切な目標レベルに変更することができる。
【0069】
請求項5に記載の発明によれば、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータを用いてオフセット量の演算を行うので、各ラインのデジタルデータに適切なオフセット量を演算することができる。
【0070】
請求項6に記載の発明によれば、光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータの複数の画素データの平均値を用いてオフセット量の演算を行うので、各ラインのデジタルデータにさらに適切なオフセット量を演算することができる。
【0071】
請求項7に記載の発明によれば、オフセット量による補正後のデジタル信号に基づいて記録媒体に画像形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置1の内部構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態のスキャナ部40の内部構成を示す図である。
【図3】スキャナ部40に用いられるイメージセンサ出力信号の各期間を示すタイミングチャートである。
【図4】スキャナ部40に用いられる信号のタイミングチャートである。
【図5】スキャナ部40によりスキャンされた画像信号のオフセット量による補正結果を示す図であり、(a)は目標値から複数ラインの明方向の誤差が生じている場合の補正前のデジタル信号及びその画像形成例を示す図であり、(b)は(a)に示すデジタル信号を次のラインにフィードバックして、誤差を補正した結果を示す画像信号及びその画像形成例の図であり、(c)は補正後の画像信号及びその画像形成例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のスキャナ部40Cの内部構成を示す図である。
【図7】従来のスキャナ部40Aの内部構成を示す図である。
【図8】スキャナ部40Aに用いられる信号のタイミングチャートである。
【図9】スキャナ部40Aによりスキャンされた画像信号が画像形成された記録紙Aを示す図である。
【図10】スキャナ部40Aによりスキャンされた画像信号のオフセット量による補正結果を示す図であり、(a)はブラックレベルクランプ回路65の動作オンの場合の画像信号及びその画像形成例を示す図であり、(b)はブラックレベルクランプ回路65の動作オフの場合の目標値から複数ラインの明方向の誤差が生じている場合の画像信号及びその画像形成例を示す図である。
【符号の説明】
100…画像形成装置
1…画像読取装置
2…画像形成部
3…操作部
4…表示部
5…通信部
6…バス
10…CPU
11…制御部
20…記憶部
30…RAM
40,40A…スキャナ部
50,50C…イメージセンサ部
51,51C…CCDセンサ
52,52R,52G,52B…エミッタフォロワ
53,53R,53G,53B…ACカップリングコンデンサ
60,60C,60R,60G,60B…アナログ信号処理部
61…クランプ回路
62,63…アンプ
64…ADコンバータ
65…ブラックレベルクランプ回路
66…スケーリング部
67…オフセット量DAコンバータ
70,70C,70R,70G,70B…画像信号処理部
71,71R…メモリ
72,72R…オフセット量演算回路
73,73R…スケーリング部
74,74R…加減算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像原稿の画像信号を読み取りアナログ信号に変換するイメージセンサ部と、前記イメージセンサ部から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータとを備える画像読取装置において、
前記ADコンバータから出力されたデジタル信号から、前記画像信号の主走査方向のラインごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したラインのデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算する画像信号処理部を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記イメージセンサ部は、前記画像原稿の画像信号を読み取り、赤、緑及び青の各色のアナログ信号に変換し、
前記画像信号処理部は、前記ADコンバータから出力されたデジタル信号から、前記画像信号の主走査方向のラインごとかつ赤、緑及び青の色ごとに目標レベルからのオフセット量を演算し、そのオフセット量を演算したライン及び色のデジタル信号に当該オフセット量を加算又は減算することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像信号処理部は、前記赤、緑及び青の各色のオフセット量の加算又は減算を、前記赤、緑及び青の色ごとにオン/オフ制御可能であることを特徴とすることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記目標レベルは、可変であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像信号処理部は、前記イメージセンサ部の光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタル信号を用いて前記オフセット量の演算を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像信号処理部は、前記イメージセンサ部の光シールド出力期間及び空送り期間のいずれか一方又は両方に対応するデジタルデータの複数の画像データの平均値から前記オフセット量の演算を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置により前記オフセット量を加算又は減算されたデジタル信号に基づいて記録媒体に画像形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2004−350062(P2004−350062A)
【公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−145302(P2003−145302)
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】