説明

画像読取装置

【課題】 本発明の課題は、原稿の搬送速度が変化するのを防止することができる画像読取装置を得ることにある。
【解決手段】 原稿101の主走査方向を複数に分割したそれぞれの領域を読み取る複数のイメージセンサ109a〜109cと、貫通孔130が形成され、原稿101を副走査方向に搬送する複数の搬送ベルト110a〜110cとを備え、これらの搬送ベルト110a〜110cが、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている画像読取装置150であって、搬送ベルト110a上の原稿を、搬送ベルト110aの貫通孔130を介して搬送ベルトに向けて吸引するファン107aと、各搬送ベルト110a〜110cが掛け渡されて、これらの搬送ベルト110a〜110cを駆動する単一の駆動軸112とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取部を固定して、原稿を搬送しながら読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像読取装置として、原稿を読み取る読取部を固定して原稿を搬送しながら読み取る原稿搬送型のCISユニットを使用しているものがある。この種の画像読取装置においては、原稿テーブルに載置された原稿をコンタクトガラスに向けて送り出す一対の送出ローラと、コンタクトガラスの下方から原稿の画像面を読み取るための読み取りセンサを有する読取部と、コンタクトガラスを通過した原稿を排出する一対の排出ローラとを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような画像読取装置では、送出ローラから排出ローラとの間に搬送される原稿のたるみを防止するために、送出ローラの原稿搬送線速よりも送出ローラの原稿搬送線速が速くなるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−104563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成の画像読取装置においては、送出ローラのみで原稿を搬送しているときの線速と、送出ローラ及び排出ローラの両方で原稿を搬送しているときの線速と、排出ローラのみで原稿を搬送しているときの線速とがそれぞれ異なっている。すなわち、原稿は送出ローラにのみ搬送されている状態から送出ローラ及び排出ローラの両方によって搬送されている状態に切替わったときと、両方のローラによって搬送されている状態から排出ローラにのみ搬送されている状態に切替わったときとで線速が変化する。このような線速(搬送条件)の切替わりに起因して、読み取り画像の劣化が発生してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、原稿の搬送速度が変化するのを防止することができる画像読取装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、原稿の主走査方向を複数に分割したそれぞれの領域を読み取る複数の読取部と、貫通孔が形成され、原稿を副走査方向に搬送する複数の搬送ベルトとを備え、これらの搬送ベルトが、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている画像読取装置であって、搬送ベルト上の原稿を、搬送ベルトの貫通孔を介して搬送ベルトに向けて吸引する吸引部と、各搬送ベルトが掛け渡されて、これらの搬送ベルトを駆動する単一の駆動軸とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、搬送ベルトの速度を測定する速度測定部と、この速度測定部によって測定された速度が許容範囲内にあるか否かを判断する判断部と、この判断部によって搬送ベルトの速度が許容範囲内にないと判断されたときにその旨を報知する報知部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、判断部によって搬送ベルトの速度が許容範囲内にないと判断されたときに、搬送ベルトの駆動を停止させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、報知部は、搬送ベルトが停止したとき、原稿の読み取りを再度促す旨の報知を行なうことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載された発明において、速度測定部は、原稿の搬送に先立って搬送ベルトの速度を測定することを特徴とする。
【0011】
なお、「原稿の搬送に先立って」とは、原稿を搬送する前に搬送ベルトの速度を測定する場合および画像読取装置の電源投入時に試験的に搬送ベルトを駆動し、この搬送ベルトの速度を測定する場合の両方を含むものである。
【0012】
請求項6に記載された発明は、請求項2乃至5に記載された発明において、速度測定部は、搬送ベルトの貫通孔を検知する孔検知センサと、駆動中の搬送ベルトを検知している孔検知センサからの出力により速度を算出する算出部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載された発明において、孔検知センサは、搬送ベルト内でかつ搬送ベルトに搬送される原稿に重ならない位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている複数の搬送ベルトを単一の駆動軸により駆動しているので、原稿の搬送速度が変化するのを防止することができ、原稿の搬送速度を一定にすることができる。この結果、読み取り画像の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る画像読取装置の要部を概略的に示す平面図であり、図2は、図1の画像読取装置の要部の断面図であり、図3は、搬送ベルトと反射センサとの関係を説明する図であり、図4は、図1の画像読取装置の要部を示すブロック図であり、図5は、図1の画像読取装置の制御部における制御を示すフローである。
【0016】
本実施の形態の画像読取装置150は、例えば、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ、或いはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられるものであり、図1及び図2に示すように、図示しない原稿テーブルに画像面を下向きにした状態で載置された原稿101を送り出す一対の送出ローラ103a、103bと、これらの送出ローラ103a、103bから送り出された原稿101の画像を読み取る3つのイメージセンサ109a、109b、109cが収納されたケース108と、これらのイメージセンサ109a、109b、109cによって画像を読み取られた原稿101を排出する一対の排出ローラ103c、103dとを備えている。
【0017】
一対の送出ローラ103a、103bの上流側には、原稿101が一対の送出ローラ103a、103bの上流側における所定の位置に達したことを検知する第1原稿センサ102が配置されている。この第1原稿センサ102と同じ位置には、原稿101の幅サイズを検知する原稿サイズセンサ120も配置されており、原稿101は、第1原稿センサ102及び原稿サイズセンサ120によって、所定の位置に達したこと及びその幅サイズを同時に検知されるようになっている。また、一対の送出ローラ103a、103bの下流側で且つ一対の送出ローラ103a、103bとケース108との間には、原稿101が一対の送出ローラ103a、103bの下流側における所定の位置に達したことを検知する第2原稿センサ104が配置されている。
【0018】
ケース108は、底壁108aと前壁108bと後壁108cと両側壁108d、108eとで上方が開口された箱状に形成されており、平面視において、原稿101の主走査方向(図1の矢印A参照)に長い長方形をなしている。このケース108の副走査方向(図1の矢印B参照)の中央部には、ケース108内を上流側部分S1と下流側部分に区画する区画壁108fが形成されている。
【0019】
各イメージセンサ109a、109b、109cはそれぞれケースの副走査方向に延びる細長い形状をなしており、それぞれのイメージセンサ109a、109b、109cは、ケース108の副走査方向における幅の略1/3程度に設定されている。これらのイメージセンサ109a、109b、109cは、図1に示すように、副走査方向において互いに対向する部分を有するように、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、各イメージセンサ109a、109b、109cのうち、図1において右側のイメージセンサ109a及び左側のイメージセンサ109cは、後述する駆動軸111の上流側で、且つこれらのイメージセンサ109a、109cが同一直線状に位置するように配置されている。一方、中央のイメージセンサ109bは駆動軸11の下流側で、且つ右側のイメージセンサ109a及び左側のイメージセンサ109cから間隔Hあけた下流側に配置されている。そして、中央のイメージセンサ109bの両端部はそれぞれ、右側のイメージセンサ109aの左端部及び左側のイメージセンサ109bの右端部に対向している。
【0020】
これらのイメージセンサ109a、109b、109cの上方にはそれぞれ、その上方を原稿101が通過するコンタクトガラス106a、106b、106cが主走査方向に千鳥状に配置されている。具体的には、右側のコンタクトガラス106a及び左側のコンタクトガラス106cは、ケース108の開口部における上流側部分S1に対応する領域のうち、中央部分を除いた左右の領域をそれぞれ覆っている。また、中央のコンタクトガラス106bは、ケース108の開口部における下流側部分S2に対応する領域のうち、中央の領域を覆っている。これらのコンタクトガラス106a、106b、106cの上方には、送出ローラ103a、103bから送出されてきた原稿101を各コンタクトガラス106a、106b、106cの読み取り位置へ案内するとともに、画像読み取りの白色基準として用いられる圧板105が設けられている。
【0021】
また、ケース108には、各コンタクトガラス106a、106b、106cの下方にそれぞれ、送出ローラ103a、103bから送出されて圧板105と各コンタクトガラス106a、106b、106cとの間を通過する原稿101を排出ローラ103c、103dに向けて搬送する3つの右搬送ベルト110b、中央搬送ベルト110a、左搬送ベルト110cが、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている。具体的には、ケース108の開口部における上流側部分S1に対応する領域のうちの中央部分でかつ中央のイメージセンサ109bの上流側に中央搬送ベルト110aが設けられ、ケース108の開口部における下流側部分S2に対応する領域のうち左右の部分でかつ左右のイメージセンサ109b、109cの下流側にそれぞれ、左搬送ベルト110c及び右搬送ベルト110bが設けられており、これら3つの搬送ベルト110a、110b、110cは平面視で千鳥状に配置されている。なお、各搬送ベルト110a、110b、110cと各コンタクトガラス106a、106b、106cとは、0.5mm〜1mm程度の間隔が形成されているのが望ましい。
【0022】
各搬送ベルト110a、110b、110cにはそれぞれ、楕円形状の複数の貫通孔130が、ベルトの周面に亘って格子状になるように形成されている。また、左搬送ベルト110cには貫通孔130の他に、複数の矩形状の貫通孔132が左搬送ベルト110cの左端部の周面を一周するように形成されている。そして、左搬送ベルト110cの内側でかつ貫通孔132の下方には、左搬送ベルト110cの矩形状の貫通孔132を検知する反射センサ116が設けられている。このため貫通孔132は、左搬送ベルト110cによって搬送される原稿101に重ならない位置、すなわち上述のように、搬送ベルト110cの左端部に形成されて、反射センサ116による貫通孔132の検知が確実に行えるようになっている。
【0023】
図3(a)に示すように、各貫通孔132の大きさは、10mm平方(一辺の長さt1が10mm)であり、矢印Cで示す左搬送ベルト110cの搬送方向(ベルトの周方向)に沿って互いに隣り合う貫通孔132同士の間隔t2が40mmに設定されている。また、左搬送ベルト110cの周方向の長さTが、左搬送ベルトの周方向における貫通孔の長さt1と各貫通孔132の間隔t2との和のちょうど整数倍ある場合には、特に問題はないが、通常は、上記長さTは、上記和のちょうど整数倍にならない場合が多く、本実施の形態の左搬送ベルト110cにしても同様である。このため、各貫通孔132同士の間隔を、上記間隔t2よりも広くしている箇所を一箇所だけ設けている。したがって、この箇所における貫通孔132同士は、左搬送ベルト110cの各貫通孔132のうちの最大間隔となっている。
【0024】
なお、本実施の形態では、上述のように貫通孔132同士の間隔を広くして、左搬送ベルト110cの周方向の長さと上記和との整合をとったが、これに代えて、貫通孔132同士の間隔を狭くして整合を取るようにしても良い。
【0025】
本実施の形態では、左搬送ベルト110cの搬送速度が50mm/sに設定されている。この場合、反射センサ116の出力は、図3(b)に示すとおりである。すなわち、反射センサ116の上方に貫通孔132が通過しているとき(貫通孔132を検知しているとき)、その出力はL出力(低出力)であり、このL出力期間T0が200msである。また、反射センサ116の上方に各貫通孔132の間のベルト部分が通過しているとき(貫通孔132を検知していないとき)、その出力はH出力(高出力)であり、このH出力期間T7が800msとなる。言い換えれば、反射センサ116が、ある貫通孔132の検知を開始してから次の貫通孔132を検知するまでの期間T1、T2、T3、T4、T6は1000msである。また、左搬送ベルト110cの各貫通孔132のうち、貫通孔132同士の間隔が広い箇所が、反射ベルト116の上方を通過している場合には、反射センサ116の出力はH出力であり、このH出力期間T5は1300msである。
【0026】
このような反射センサ116の出力は、後述する制御部201(判断部、算出部)に送られ、これにより制御部201が搬送ベルト110cの搬送速度を算出するようになっている。すなわち、本実施の形態では、反射センサ116及び制御部201で各搬送ベルト110a、110b、110cの速度を測定する速度測定部を構成している。
【0027】
また、制御部201は、算出した搬送速度が許容範囲内にないと判断したときは、その旨を後述する操作表示部202に表示させるとともに、駆動モータ111を停止させて、各搬送ベルト110a、110b、110cの駆動を停止させる判断部としての機能も有している。このとき制御部201は、原稿101の読み取りを再度促す旨の報知を、操作表示部202に行なわせるようになっている。
【0028】
また、図1及び図2に示すように、ケース108の副走査方向における中央部には、ケース108を主走査方向に横切るように設けられた駆動軸112が設けられ、この駆動軸112はケース108の外側に設けられた駆動モータ111により回転駆動されるようになっている。また、ケース108の後壁108cの近傍には、ケース108を主走査方向に横切るように設けられた下流側従動軸113が設けられ、ケース108の前壁108bの中央部の近傍にはケース108の主走査方向に延びる上流側従動軸114が設けられている。そして、駆動軸112の左側の部分と下流側従動軸113の左側部分との間には左搬送ベルト110cが、駆動軸112の右側の部分と下流側従動軸113の右側の部分との間には右搬送ベルト110bが、駆動軸112の中央の部分と上流側従動軸114との間には中央駆動ベルト110aがそれぞれ、テンションをかけた状態で張架されている。これにより、各搬送ベルト110a、110b、110cは、単一の駆動軸112により駆動されるようになっている。したがって、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が同じになり、各搬送ベルト110a、110b、110c毎の搬送速度のばらつきを防止することができる。
【0029】
一方、ケース108の底壁108aの上流側部分S1には、中央搬送ベルト110aの各貫通孔130から空気を吸引してケース108外に排気するファン107a(吸引部)が設けられており、これにより中央搬送ベルト110a上の原稿101が中央搬送ベルト110aに向けて吸引されるようになっている。同様に、ケース108の底壁108aの下流側部分S2にも左搬送ベルト110c及び右搬送ベルト110bの各貫通孔130、132から空気を吸引してケース108外に排気するファン107b(吸引部)が設けられて、左搬送ベルト110c及び右搬送ベルト110b上の原稿101が各搬送ベルト110b、110cに向けて吸引されるようになっている。これらのファン107a、107bはそれぞれ、ケース108において、区画壁108fによって区画された上流側部分S1及び下流側部分S2に収納されているため、一方のファンの吸引による空気の流れはそのファン107aがされた空間内のみ作用し、他の空間に干渉しないようになっており、これにより安定した原稿101の搬送を図っている。
【0030】
次に、本実施の形態に係る画像読取装置150の要部の回路構成を説明する。図4に示すように、画像読取装置150を制御する制御部201は、CPU、メモリ(ROM/RAM、不揮発性メモリなど)、入出力部(I/O)、インターフェイス部などからなり、画像読取装置150の各種操作を行うとともにエラー報知等の各種情報を表示する操作表示部202からのモード設定信号や第1原稿センサ102、原稿サイズセンサ120、第2原稿サイズセンサ104、反射センサ(ベルト搬送検知センサ)116などからの検知信号を入力し、その情報を基にしてON/OFF制御のための切換信号やクロック信号を出力する。こうして、制御部201は、同期信号の制御、モータ駆動回路205を介しての駆動モータ111の起動制御、イメージセンサ109a、109b、109cの制御、フィードクラッチ(CL)206及び排出クラッチ(CL)207の切換制御などを実行する。このような制御により、本実施形態の画像読取装置150は、予め設定された速度で原稿101の搬送動作、読み取り動作を含む各動作を行なうことになる。
【0031】
また、タイミング信号発生回路(同期信号発生回路)202aは、各イメージセンサ109a、109b、109c、アナログ処理回路・A/D変換回路208、209、210にクロック、アドレスなどの信号を供給する。また、アナログ処理回路は、各イメージセンサ109a、109b、109cからのアナログ画像信号のレベルを調整し、サンプルボード、可変ゲインの増幅(AGC)を行なう機能を有し、A/D変換回路は、アナログ処理回路からのアナログ画像信号を8ビットのデジタル画像信号(256階調)に変換する機能を有する。
【0032】
遅延回路203は、各イメージセンサ109a、109b、109cの副走査方向の間隔Hに起因する画像ずれを補正するために、1ライン毎に上流側に位置する左右のイメージセンセンサ109a、109cで取得されてA/D変換回路により変換されたデジタル画像信号を遅延回路203のメモリに一時保持する。これにより、上記デジタル画像信号を予め設定された遅延時間に応じて遅延させるようになっている。
【0033】
画像処理回路204には、1ライン毎に、遅延回路203からのデジタル画像信号と、A/D変換回路からのデジタル画像信号とを合成する合成回路部を有する。また、画像処理回路204は、上記合成回路部で順次取得された1ライン分のデジタル画像信号からデジタル画像データを生成し、原稿101の全体画像を取得するようになっている。
【0034】
また、操作表示部202には、図示しないスタート/ストップキー、テンキー、ファンクションキー、Yes/Noキー、カーソルキーなどのキー群、LCD、LEDなどの表示器、音声出力装置などを備え、モード設定機能、動作開始指示機能、エラー報知機能などを有する。
【0035】
次に、本実施の形態における画像読み取り時の原稿搬送動作を説明する。送出ローラ103a、103bによって送り出された原稿101が、中央搬送ベルト110aに到達すると、この原稿101は、中央搬送ベルト110aの貫通孔130を介して空気を吸引するファン107aの作用により中央搬送ベルト110aに向けて吸引されて、中央搬送ベルト110aに吸着された状態で搬送される。この原稿101が、左搬送ベルト110c及び右搬送ベルト110bに到達すると、同様にファン107bの作用により、これらの搬送ベルト110b、110cに吸着された状態で搬送される。このように原稿101は、各搬送ベルト110a、110b、110cにより搬送されながら、その画像を読み取られた後、排出ローラ103c、103dによって排出される。
【0036】
ここで、図5を参照しながら、原稿搬送時における制御部の制御動作について説明する。駆動モータ111の駆動を開始させ、この駆動モータ111が定速状態になった(S1)後、反射センサ116の出力が、一定時間H出力からL出力にならない場合(一定時間センサからの情報に変化がない場合)においては、駆動モータ111は駆動しているが、各搬送ベルト110a、110b、110cが空回りなどして回転駆動していない事態が考えられるため、駆動モータ111の駆動を停止させ、操作表示部202に、エラー表示させるとともに機器の点検を促す表示をさせる(S2及びS3)。
【0037】
なお、機器の点検を促す表示に代えて、機器の点検を促す音声を流すようにしても良く、要は機器の点検を促す報知がなされていれば良い。これによって、駆動系の異常を迅速に検知できるとともに、機器の点検等を速やかに促すことができる。
【0038】
一方、駆動モータ111が定速状態となって、各搬送ベルト110a、110b、110cが一定速度で駆動しているとき、原稿101の読み取りに先立って、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が適正なものかどうかをチェックする。具体的には、左搬送ベルト110cにおいて、互いの間隔が最大間隔を形成する貫通孔132のうち、搬送方向上流側の貫通孔132が反射ベルト116の上方を通過して、反射センサ116の出力がH出力からL出力になった場合には、これらの貫通孔132間が反射センサ116を通過するのに要する出力期間A(図3においてT5に相当する)のカウント、言い換えれば、左搬送ベルト110cの搬送速度を測定するとともに、この出力期間Aが予め定められた許容範囲(想定範囲)nAであるか否かの判定を行なう(S4)。
【0039】
ここで、上記最大間隔に対応した出力期間A(T5+100msに相当)が、上記許容範囲nA外であった場合(T5+100ms<nA)、すなわち各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が許容範囲内にないときに、駆動モータ111を停止させ、操作表示部202にエラー表示させるとともに機器の点検を促す表示をさせる(S5)。これによって、原稿読取動作に先立って、左搬送ベルト110cの搬送速度が許容範囲内にあるか否かを検知することができ、搬送速度が異常になっている各搬送ベルト101a、101b、101cに原稿101を送るのを防止することができる。
【0040】
そして、上記S2乃至S5において異常がない場合には、通常の速度測定を行なう。すなわち、各貫通孔132のいずれかが反射センサ116に到達して、反射センサ116の出力がH出力からL出力になった場合、上記期間Aのカウントを終了し、これと同時に、左搬送ベルト110cの搬送速度(線速)を測定する対象である各貫通孔(線速測定対象パターン)132のうち、1つの貫通孔132から次の貫通孔132までの間が反射センサ116を通過するのに要する出力期間B(図3において、T1〜T6に相当する)のカウント、言い換えれば、左搬送ベルト110cの搬送速度の測定を行なうとともに、上記出力期間B(T1±50ms又はT5±50msに相当)が、予め定められた許容範囲nB内であるか否かを判定を行なう(S6及びS7)。
【0041】
ここで、上記出力期間Bが上記許容範囲nB外であった場合、すなわち各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が許容範囲内にないときに、駆動モータ111を停止させ、操作表示部202にエラー表示させるとともに、原稿101の読み取りを再度促す旨の表示をさせる(S8)。なお、原稿101の読み取りを再度促す表示に代えて、原稿101の読み取りを再度促す音声を流すようにしても良く、要は原稿101の読み取りを再度促す報知がなされていれば良い。このように、原稿101の読み取り中において、各搬送ベルト101a、101b、101cの搬送速度(線速)が異常になっているときに、原稿101の搬送を中止するので、原稿101に与えるダメージを低減することができる。また、原稿101の読み取りと書き込みとが同時に行なわれるような画像形成装置においては、無駄なトナー消費を低減することができる。更に、原稿101の読み取りを再度促すことによって、異常発生時であっても、迅速に次の作業を行なうことができる。
【0042】
そして、上記S7において異常がない場合には、各搬送ベルト110a、110b、110cの駆動の終了判定が行なわれるまで、上記S6〜S8までを繰り返す。
【0043】
以上説明したように、上記構成の原稿読取装置150においては、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている各搬送ベルト110a、110b、110cを単一の駆動軸112により駆動しているので、原稿101の搬送速度が変化するのを防止することができ、原稿101の搬送速度を一定にすることができる。この結果、読み取り画像の劣化を防止することができる。
【0044】
また、原稿101をファン107a、107bにより各搬送ベルト110a、110b、110cに吸着させているので、原稿101をコンタクトガラス106a、106b、106cに密着させることができ、原稿101が浮くのを防止することができる。その結果、原稿101の浮き加減による各イメージセンサ109a、109b、109cの解像力の差を排除することができ、原稿101の画像を鮮明に読み取ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。なお、以下に示す変形例においては、上記実施の形態と同一の部分には、同一の符号を付することによってその説明を簡略化することとする。
【0046】
上記実施の形態では、千鳥状に配置された3つの搬送ベルト110a、110b、110cと、千鳥状に配置された3つのイメージセンサ109a、109b、109cと、2つのファン107a、107bとを用いていたが、これらの部材の数は適宜変更可能である。
【0047】
例えば、図6(a)に示すように、搬送ベルトとして、互いに副走査方向にずれた位置に配置された左搬送ベルト110c及び中央搬送ベルト110aの2つのみを用い、イメージセンサとして、互いに副走査方向にずれた位置に配置された左のイメージセンサ109c及び中央のイメージセンサ109bの2つのみを用いるようにしても良い。
【0048】
また、図6(b)に示すように、上記実施の形態のイメージセンサと同様な5つのイメージセンサ160を主走査方向に沿って千鳥状に配置し、上記実施の形態の搬送ベルトと同様な5つの搬送ベルト161を主走査方向に沿って千鳥状に配置するとともに、各搬送ベルト161の下方にそれぞれ、上記実施の形態のファンと同様なファン162を配置するようにしても良い。
【0049】
なお、図6(b)に示す構成においては、原稿101の幅が小さい場合には、例えば、図(b)において真ん中の3つの搬送ベルト161のみで原稿101を搬送することがあり、このような場合には、制御部201によって、原稿101を搬送していない一番左側及び右側の搬送ベルト161の下方にそれぞれ設けられたファン162の駆動を停止する(ファンによる吸引を停止する)ようにしても良い。要は、制御部201によって、原稿101を搬送していない搬送ベルトに対応するファン162の駆動を停止すれば良く、これにより、無駄な電力を消費するのを防止することができ、電力の節約を図ることができる。
【0050】
また、上記実施の形態では、複数の搬送ベルト110a、110b、110c及び複数のイメージセンサ109a、109b、109cを用いていたが、これに代えて、図7に示すように、1つの搬送ベルト110a及び1つのイメージセンサ109bによって、原稿101を搬送するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、左搬送ベルト110cに、反射センサ116に検知させるために、複数の矩形状の貫通孔132を形成したが、これに代えて、楕円形状の貫通孔130を形成して、この貫通孔130を反射センサ116が検知するようにしてもよい。
【0052】
また、上記各実施の形態においては、原稿101の読み取りに先立って、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が許容範囲内にあるか否かを検知していたが、これに限定されず、例えば、画像読取装置150の電源ON時に自動的に、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が許容範囲内にあるか否かを検知し、許容範囲を越えていた場合には、その旨及び機器の点検を促す報知を行なうようにしても良い。要は、原稿101の読み取り動作を行う前に、各搬送ベルト110a、110b、110cにおける搬送速度の異常の有無をチェックするようにすれば良い。
【0053】
また、原稿101の読み取りに先立って、操作表示部202に読み取る原稿101の種類を入力し、この入力された原稿101の種類に応じて、各ファン107a、107bの風量を制御部201によって制御するようにしても良い。具体的には、原稿101がOHPシートのように厚くて腰の強いものであった場合には、ファン107a、107bの風量を、通常の紙による用紙を搬送する場合よりも強くして、コンタクトガラス106a、106b、106cへの原稿101の密着性の向上させる。一方、原稿101が薄紙のように腰の弱いものであった場合には、通常の紙による用紙を搬送する場合よりも弱くするようにして、原稿101のシワの発生を防止する。これは、例えば、制御部201に、原稿の種類に応じたファンの風量を予め設定したり、或いは、原稿101の種類を検知するセンサ等を設けたりすることにより実現できる。
【0054】
さらに、上記実施の形態では、反射センサ116により各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度を測定していたが、これに代えて、駆動軸112にロータリーエンコーダ等を設けて、この駆動軸112の回転速度を測定することにより、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度を測定するようにしても良く、各搬送ベルト110a、110b、110cの搬送速度が測定できるものであれば特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態に係る画像読取装置の要部を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の画像読取装置の要部の断面図である。
【図3】搬送ベルトと反射センサとの関係を説明する図である。
【図4】図1の画像読取装置の要部を示すブロック図である。
【図5】制御部の制御を示すフローである。
【図6】変形例に係る画像読取装置の要部を概略的に示す平面図である。
【図7】変形例に係る画像読取装置の要部を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
101 原稿
107a、107b、107c、162 ファン(吸引部)
109a、109b、109c、160 イメージセンサ(読取部)
110a、110b、110c、161 搬送ベルト
112 駆動軸
130、132 貫通孔
150 画像読取装置
116 反射センサ(孔検知センサ)
201 制御部(算出部、判断部)
202 操作表示部(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の主走査方向を複数に分割したそれぞれの領域を読み取る複数の読取部と、貫通孔が形成され、原稿を副走査方向に搬送する複数の搬送ベルトとを備え、これらの搬送ベルトが、副走査方向にずれた位置になるように主走査方向に沿って配置されている画像読取装置であって、
搬送ベルト上の原稿を、搬送ベルトの貫通孔を介して搬送ベルトに向けて吸引する吸引部と、各搬送ベルトが掛け渡されて、これらの搬送ベルトを駆動する単一の駆動軸とを備えていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
搬送ベルトの速度を測定する速度測定部と、この速度測定部によって測定された速度が許容範囲内にあるか否かを判断する判断部と、この判断部によって搬送ベルトの速度が許容範囲内にないと判断されたときにその旨を報知する報知部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
判断部によって搬送ベルトの速度が許容範囲内にないと判断されたときに、搬送ベルトの駆動を停止させることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
報知部は、搬送ベルトが停止したとき、原稿の読み取りを再度促す旨の報知を行なうことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
速度測定部は、原稿の搬送に先立って搬送ベルトの速度を測定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
速度測定部は、搬送ベルトの貫通孔を検知する孔検知センサと、駆動中の搬送ベルトを検知している孔検知センサからの出力により速度を算出する算出部とを備えていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
孔検知センサは、搬送ベルト内でかつ搬送ベルトに搬送される原稿に重ならない位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246253(P2006−246253A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61550(P2005−61550)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】