説明

画像読取装置

【課題】 被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて光源を配置し、この光源からの光が被照射物の透過部分における起伏により散乱された散乱光を受光することにより、透かし画像を読み取る画像読取装置を得る。
【解決手段】 光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣等のような被照射物の光の透過部分を読み取る画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の読取装置として、例えば、特開2000−113269号公報(特許文献1)に記載のものがあった。すなわち、この特許文献1には、紙幣等の透かし模様に光を照射し、その透過光を人工網膜チップにより検出し、透過部分(以下、「透かし部分」ともいう。)画像の形状等やその有無の情報を知識処理回路により処理して、紙幣等の鑑定を行う紙幣鑑定装置が記載されている。一方、特開2003−87564号公報(特許文献2)には、いわゆる透過型と反射型とを併用した画像読取装置が記載されている。そして、その画像読取装置は、透過原稿用の光源を原稿カバーに収容し、その原稿カバーに着脱自在に原稿マットを係止し、反射原稿の読取時にはその原稿マットを原稿カバーに装着する一方、透過原稿の読取時には原稿マットを原稿カバーから取り外すように構成した画像読取装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−113269号公報(第1図)
【特許文献2】特開2003−87564号公報(段落0024、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された紙幣鑑定装置は、紙幣等の透かし部分の鑑定は、光源からのいわゆる直接光を紙幣等の透かし部分に対して透過させてこれを電気信号に変換して紙幣等の透かし部分の画像を読み取るものであった。
【0005】
また、特許文献2に記載された画像読取装置では、いわゆる透過型の画像読取装置(以下、単に「透過型」ともいう。)と反射型の画像読取装置(以下、単に「反射型」ともいう。)とを併用したものと考えることもできるが、この場合も、透過型による光の透過部分における画像の読み取りにおいては、いわゆる直接光により透過部分の画像の読み取りを行うものであった。
【0006】
この発明は、被照射物の一方の面側であって、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて光源を配置し、この光源からの光が被照射物の透過部分における起伏により散乱された散乱光を受光することにより、被照射物の透過部分を読み取る新規な画像読取装置を提供することを目的とするものである。
また、この発明は、被照射物の一方の面側であって、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて透過型光源を配置し、この透過型光源からの光が被照射物の透過部分における起伏により散乱された散乱光を受光するとともに、被照射物の他方の面側に反射型光源を配置し、この反射型光源からの光が被照射物の反射部分により反射された反射光を受光して、被照射物の透過部分及び反射部分を読み取る新規な画像読取装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る画像読取装置は、光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明に係る画像読取装置は、光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源と、この透過型光源の光を前記照射部に導く導光部材と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明に係る画像読取装置は、光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、この搬送手段が搬送する被照射物の主走査方向に延在し、被照射物の透過部分を検出する検出手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に、前記検出手段により検出された被照射物の透過部分が前記搬送手段によって搬送されている間、光を照射する透過型光源と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明に係る画像読取装置は、光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、この搬送手段が搬送する被照射物の主走査方向に延在し、被照射物の透過部分を検出する検出手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に、前記検出手段により検出された被照射物の透過部分が前記搬送手段によって搬送されている間、光を照射する透過型光源と、この透過型光源の光を前記照射部に導く導光部材と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明に係る画像読取装置は、前記信号処理部が、前記画像信号から前記黒透かしの画像データ以外のデータを削除して、予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する請求項1〜4のいずれかに記載のものである。
【0012】
請求項6の発明に係る画像読取装置は、前記信号処理部が、前記画像信号のうち、所定の値以下のものを前記黒透かしの画像データ以外として削除する請求項5に記載のものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物の一方の面側であって、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源を配置し、この透過型光源から照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を受光することにより、被照射物の透過部分の透かし部分を読み取り、予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の断面構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の透過体の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像読み取り装置の構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る搬送手段を含む画像読取装置の平面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る画像読み取り装置のブロック構成図であり、(a)は全体ブロック構成図、(b)は照合回路のブロック構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置のフォトセンサのタイミング図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の画像出力のタイミング図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の透過光源の透過光・反射光の説明図であり、(a)は透明シートを用いた場合、(b)は透明シートに起伏を持たせた場合、(c)は各材質による透過光や反射光の割合を説明する図である。
【図9】紙幣などの透かし部分による散乱光の収束状態を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の画像デジタル出力図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の画像照合データ図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置の照合回路のブロック構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
(構成)
以下、この発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る画像読取装置の断面構成図である。図1において、1は、例えば、紙幣、有価証券又は小切手等の被照射物(以下、単に「原稿」或いは「紙幣」という。)であって、半透明又は透明の透かし部分(以下、透過部分ともいう。)と光がほぼ透過しない反射部分とを有するものである。
【0016】
2は、原稿1の一方の面側(図1において下側)に配置した密着イメージセンサ(以下、単に「CIS」という。)である。3は、CIS2において両側に配置した第1の光源(以下、反射型光源という。)で、原稿1の一方の面側に配置され、原稿1の幅方向(主走査方向)に亘ってLEDチップをアレイ状に直線的に配列したものである。4は、各反射型光源3から出射した光が原稿1の照射部5に照射されるように導光する屈折型導光体で、光射出部4aを有する。ここで、照射部5については、反射型光源3からの光が、原稿1の搬送経路における原稿1に照射される主走査方向における直線状部分であって、搬送される原稿1の読み取り部分を意味する。
【0017】
6は、CIS2内に異物等の混入を防止する機能を有する透明プラスチック材で構成した約2.5mm厚の透過体で、原稿1はこの透過体6の外側においてガイドされるように搬送される。7は、反射型光源3から出射した光が原稿1の一方の面側で反射され、その反射光を収束するロッドレンズアレイ、8は、ロッドレンズアレイ7により収束された反射光を受光する受光部(センサ)であって、複数の光電変換部とそれらの駆動回路等を組み込んだセンサICにより構成している。9は、受光部(センサ、センサICとも呼ぶ)8を複数個搭載したセンサ基板で、10は、反射型光源3を両側に搭載するプリント配線板等により構成した基板である。
【0018】
11は、受光部8により光電変換されたアナログ信号をA/D変換した後に、各画素(ビット)の信号出力をシェーディング補正や全ビット補正を行う補正回路を含む信号処理部を組み込み、原稿1からのイメージ情報を画像信号として出力する信号処理IC(ASIC)である。12は、基板10の裏側に支持したコネクタで、CIS2を駆動するためのシステム信号(SCLK)、スタート信号(SI)、クロック信号(CLK)及び電源等の入力信号や光源等に電力を供給し、制御信号を入出力し、さらには画像信号(SIG)等を外部に出力するものである。13は、センサ基板9と基板10との信号の受け渡しを行う中継コネクタで、14は、ロッドレンズアレイ7及びセンサ基板9を収納し、保持する内部筐体で、15は、屈折型導光体4、透過体6及び基板10を収納し、保持する外部筐体である。なお、内部筐体14は、中継コネクタ13により保持し、透過体6は外部筐体15に切り欠きなどを設けて固定されている。以上より、反射型は、反射型光源3、ロッドレンズアレイ7及び受光部8等により構成している。
【0019】
一方、20は、原稿1の主走査方向に亘って光を出射する透過型光源体である。この透過型光源体20において、21は、主走査方向に亘ってLEDチップをアレイ状に直線的に配列した第2の光源(以下、透過型光源という。)であり、22は、透過型光源21から出射した光を原稿1に導くラッパ型導光体で、光射出部22aを有する。そして、光射出部22aから出射した光は、原稿1の搬送経路における照射部5に照射するように構成している。また、光射出部22aから出射する光は、原稿1の搬送方向と直交するロッドレンズアレイ7の光軸に対して約45度の角度で持って照射される。
【0020】
23は、光が透過する透明なガラス板で、24は、透過型光源21のLEDチップを搭載するLED基板で、25は、LED基板24に支持され、透過型光源21を駆動するための電力を供給するコネクタで、26は、ラッパ型導光体22、ガラス板23及びLED基板24を収納し、保持する筐体である。また、27は2.5mm厚のプラスチック材で構成された上部搬送ガイドである。以上より、透過型は、透過型光源21、ロッドレンズアレイ7及び受光部8等により構成している。図中、同一符号は、同一叉は相当部分を示す。
【0021】
図2は透過体6の平面図であり、6aはロッドレンズアレイ7の収束領域に設けられた透過体6の溝である。この溝は、原稿1の搬送方向に対して一定の幅で、主走査方向に対して一端から他端に亘って空洞として形成されている。
【0022】
図3は実施の形態1に係る画像読取装置の構成図であり、図3aはその平面図、図3bはその側面図である。図3a及び図3bにおいて、27aはロッドレンズアレイ7の収束領域に設けられた上部搬送ガイド27の窪み部である。この窪み部27aは、原稿1の搬送方向に対して幅広で、主走査方向に対して一端から他端に亘って凹状で一体化形成されている。28は上部搬送ガイド27と透過型光源体20を支持するステーである。上部搬送ガイド27とステー28とは弾性接着剤で固定され、透過型光源体20とステー28とは当接板29を介してねじ止めされる。そして、透過体6と上部搬送ガイド27間の隙間を原稿1が搬送される。この隙間は位置により約0.3mm〜1mmあり、搬送方向の照射部5に近づくほど上部搬送ガイド27の自重と透過型光源21の自重とでたわみ、隙間は狭くなる。これは、原稿1に皺や曲がりがあっても原稿1を平滑にすることにより読取精度を向上させるためである。図中、図1と同一符号は、同一叉は相当部分を示す。
【0023】
図4は実施の形態1に係る画像読取装置の搬送手段を含めた平面構成図である。すなわち、30は、搬送ローラであって、給紙側ローラ30a、排紙側ローラ30b、原稿1の取り出しローラ30c、原稿1の取り込みローラ30dから構成している。搬送ローラ30は、所定の搬送信号に基づいてモータ(図示せず)の駆動により原稿1を搬送させる。31は、原稿1を収納するカセットであって、給紙側カセット31a、排紙側カセット31bを有する。32は、CIS2を固定する受け台で、33は、フォトセンサなる検出手段、透過型光源体20及び上部搬送ガイド27をステー28を介して固定する固定ホルダーであり、34は、原稿1を載置する原稿台である。
【0024】
36は、発光素子36a及び受光素子36bを有する分離型フォトセンサにより構成した検出手段(以下、単に「フォトセンサ」という。)で、原稿1の主走査方向において原稿1の一端から他端に延在して設けている。フォトセンサ36にはコネクタ36cを設け、フォトセンサ36はステー37を介して固定ホルダー33で位置決め固定されている。このフォトセンサ36は、照射部5に対して、原稿1の搬送方向と反対方向に所定距離(例えば、L=50mm)だけ離隔して設け、原稿1は発光素子36aと受光素子36bとの間に搬送されるように構成している。そして、フォトセンサ36については、発光素子36aから出射した光は、原稿1の反射部分に対しては反射されて受光素子36bには到達しないが、原稿1の透過部分に対してはその透過部分を透過して受光素子36bに到達する。このとき、フォトセンサ36は、原稿1の透過部分が通過終了するまで受光素子36bにより光を受光することとなる。
【0025】
従って、図4においては、フォトセンサ36はステー37に固定されている。給紙側カセット31aの上部に載置された原稿1は、順次に、搬送ローラ30c、30aによりCIS2の読み取り領域の照射部5に搬送される。原稿1の搬送経路中において、原稿1の黒透かし、白透かし等の入った透過部分を検出するフォトセンサ36は、照射部5に対して搬送方向と反対側に所定距離Lだけ隔てて設置している。図4においては、3本のフォトセンサ36を原稿1の主走査方向に等間隔に設けているが、原稿1の透過部分が、図4に示すように、原稿1の主走査方向において一端から他端に亘って形成されているような場合には、フォトセンサ36は1本で構成すればよい。また、読み取り領域を通過した紙幣1は搬送ローラ30b、30dでカセット31bに収納される。ここに、搬送ローラ30aと30bは、原稿1の搬送速度が、例えば、250mm/secで搬送されるように同期して駆動される。なお、図4において、図1及び図3と同一符号は、同一又は相当部分を示す。
【0026】
CIS2、透過型光源体20及びフォトセンサ36等は、例えば、金融端末装置の画像読取装置(読取システム)の本体に固定されるものである。
【0027】
(光源の点灯と消灯)
実施の形態1に係る画像読取装置においては、原稿1の反射部分が照射部5を搬送されている間において、反射型光源3を点灯させれば、照射部5における原稿1の反射部分から反射された反射光は、ロッドレンズアレイ7を介して受光部8に結像される。このとき、透過型光源21は消灯させておく。一方、原稿1の透過部分が照射部5を搬送されている間においては、透過型光源21を点灯させれば、原稿1の透過部分を透過した透過光は、ロッドレンズアレイ7を介して受光部8に結像される。このとき、反射型光源21は消灯させておく。ここでは、反射型光源3と透過型光源21の点灯及び消灯はこのようにするが、反射型光源3が点灯している間に透過型光源21を点灯させておいても、透過型光源21の光は、原稿1の反射部分により反射され、ロッドレンズアレイ7を介して受光部8にはほとんど受光されない場合には、透過型光源21が点灯していても原稿1の反射部分の読み取りにはほとんど影響を与えない。
【0028】
他方、透過型光源21を点灯させている間に、反射型光源3を点灯させれば、反射型光源3の光は原稿1の透過部分を透過するが、その光の一部は原稿1の透過部分により反射されて受光部8により受光されるおそれがあり、原稿1の透過部分における正確な読み取りに影響を与える可能性がある。したがって、このような場合には、透過型光源21が点灯している間は反射型光源3は消灯させておく方がよい。
【0029】
(光源の点灯・消灯の制御)
次に、図5a及び図5bは、実施の形態1に係る画像読取装置のブロック構成図である。図5aにおいて、40は、反射型光源3及び透過型光源21を点灯させ、かつ、消灯させるため光源駆動回路である。41は制御部(CPU)であり、光源駆動回路40を制御する。すなわち、フォトセンサ36により、原稿1の透過部分を最初に検出するタイミング信号がCPU41に入力される。このとき、原稿1の搬送速度が一定の場合には、フォトセンサ36と照射部5との所定距離Lに対応した時間経過後に、原稿1の透過部分が照射部5に差し掛かるので、そのタイミングで光源駆動回路40を駆動制御して、透過型光源21を点灯させる一方、反射型光源3を消灯させる。そして、CPU41は、フォトセンサ36により原稿1の透過部分を検出している時間だけ透過型光源21の点灯、反射型光源3の消灯を継続するように光源駆動回路40を制御する。
【0030】
他方、CPU41に読み取りシステム信号(SCLK)が入力された後、フォトセンサ36が原稿1の透過部分を検出していない間においては、CPU41は、フォトセンサ36を原稿1の反射部分が通過しているものとして、反射型光源3を点灯させ、透過型光源21を消灯させるように光源駆動回路40を駆動制御する。このように、CPU41により光源駆動回路40を駆動制御して、反射型光源3と透過型光源21の点灯・消灯を制御する。なお、42はアナログ信号(SO アナログの画像出力とも呼ぶ)を増幅する可変増幅器、43はアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログデジタル)変換器、44は補正回路、45は照合回路である。
【0031】
図6は、フォトセンサ36の出力信号(FO)と反射型光源3及び透過型光源21の点灯信号との関係を時間軸に対する変化の様子を示したタイムチャート図である。原稿1は、例えば、250mm/secで搬送されているものとする。フォトセンサ36における原稿1が反射部分である場合には、フォトセンサ36の出力信号(FO)は低レベルであるので、反射型光源3は点灯(ON)し、透過型光源21は消灯(OFF)している。ところが、フォトセンサ36における原稿1が透過部分に差し掛かった場合には、フォトセンサ36の出力信号(FO)は高レベルとなる。このとき、フォトセンサ36の出力信号(FO)が所定のレベル範囲内、すなわち、Vth(L)とVth(H)間に、フォトセンサ36の出力信号が立ち上がった時点から、例えば、200ms後に反射型光源3が消灯(OFF)し、透過型光源21が点灯(ON)する。そして、フォトセンサ36の出力信号(FO)がVth(L)とVth(H)間だけ継続する。図7に反射型光源読み取り領域と透過型光源読み取り領域との画像出力(SO)の時間的変化を示す。スタート信号(SI)に同期して順次画像出力(SO)が現われ、各ライン出力間にはブランキング期間を設けることにより、読み取り時間の変更や搬送スピードの変更を行うことができる。
【0032】
(ブロック構成の動作)
次に、図5aに示す全体ブロック構成図について説明する。まず、読み取りシステム信号(SCLK)に基づいて、CIS2のクロック信号(CLK)と同期した0.5ms/Lineのスタート信号(SI)が受光部8に入力されると、そのタイミングにより受光部8において光電変換されたアナログ信号(SO)が出力される。SOは、可変増幅器42により増幅された後に、A/D変換器43によりアナログデジタル(A/D)変換され、補正回路44及び照合回路45に入力される。補正回路44は、サンプル・ホールドを含むシェーディング補正や全ビット補正などが行われる。SOから得られたデジタル信号データの補正は、あらかじめ設定された基準信号データを記憶したデジタルデータをRAM1領域から読み出し、原稿1から採取したイメージ情報と補正回路44により演算加工する。これは、CIS2を構成する反射型光源3、ロッドレンズアレイ7及び受光部8等における個々の素子のばらつきを考慮して受光部8による光電変換出力を均一化するために行うものである。
【0033】
また、補正回路44に組み込まれた照合回路45については、図5bにその構成を示している。照合回路45は、原稿1の透過部分における画像信号をあらかじめ決められた画像パターン(起伏パターンとも呼ぶ)に対応したデジタルデータをRAM2から読み出し、実際に読み取られた透過部分における画像データとの照合を行うものである。すなわち、透過型光源21を点灯させて原稿1の透過部分における画像を読み取る場合には、前記のとおり、CIS2に収納されている反射型光源3を消灯することにより、原稿1の透過部分を読み取るが、こうして得られた照度を受光部8により光電変換して画像出力信号(SIG)とする。そして、この画像出力信号(SIG)は、RAM2に収納された透過部分の画像データと比較照合し、一致した場合には一致信号(A)を外部に出力する。
【0034】
次に原稿1に対して照射角度が45度で設置された透過光源について図8で説明する。OHPシートなどの完全に平滑な透明フィルムなどに入射する光はシート面でその反射光と透過光が発生する。通常反射光は10%以下であり、透過した直接光は90%以上である。
ところで透過光源を使用する場合は、一般的にはレンズ(ロッドレンズアレイなど)の光軸と対向させて光源を設置するが、本実施の形態1ではレンズの光軸に対して45度の角度を持たせて設置しているのでレンズには直接光及び反射光は入射しないので、レンズの原稿面側と反対方向に設置されたセンサでは出力はほぼ零である。
【0035】
次に、図8bに示すようにOHPシートに凸凹を設けることにより散乱光が一部発生する。また、散乱光は散乱反射光と散乱透過光に分離され、散乱透過光は5%程度発生する。
【0036】
図8cは様々な材質の透明性を有する材料を用いてそれらに対する反射光と直接透過光と散乱透過光との割合を比較したものである。透明フィルムでは散乱光の発生は無視できるのに対して、白色の半濁フィルムではフィルム内部の反射面で反射・屈折する散乱透過光が発生する。また、半透明である紙幣の透かし部分では、OHPシートに設けた凸凹同様に散乱透過光が発生する。これは紙幣等の透かし部分は黒透かしや白透かしなどの作製時の起伏があることによる。
【0037】
図9は紙幣1の透かし部分の拡大模式図であり、紙幣の起伏状態で散乱された一部の透過光がレンズ7を介して受光部8に入射する。
【0038】
紙幣1の場合、透過型光源21からの可視光や赤外光は、透かし部分を通過する光の方が透かし部分以外を通過する光よりも大きい。したがって、原稿1の透過部分による出力の下限を設定し、この設定値出力より大きい出力に対して1ラインのライン情報として取り出す。このことは、図5aにおいて引出した波形図として図示している。このように、設定値出力より大きい出力は、RAM2に収納されたデータの相似部分の有無についてラインごとに照合する。例えば、8ドット/mmの分解能を有するCIS2の読み取りにおいては、連続4ビットの平均データをRAM2に収納されたデータと比較し、デジタルデータの包絡線形状で複数箇所について判定する。そして、これを順次ラインごとに行い、複数ラインに亘って一致信号(A)が発生する場合には、読み取りシステム側において、原稿1の真偽を決定する。
【0039】
(照合)
次に、照合方法について、図5a及び図5bを用いてさらに説明する。透かし部分(透過部分)を有する紙幣(原稿)1をその長手方向に沿って搬送する場合には、紙幣1のサイズは、通常、80mm以下であるため、分解能仕様が8ドット/mmのCISでは、640ビットの有効読取領域を設けている。アナログ信号の画像出力(SO)は、A/D変換してデジタル出力とし、補正回路44によりシェーディング補正等を行い、SIGからデジタル画像出力として読取システムに送られる。補正回路44の出力は、照合回路45にも共通して送られ、照合回路45では透かし部分に配置された透かし画像とあらかじめRAM2に収納された透かし画像データとを比較して照合する。
【0040】
図10aは、A/D変換されたデジタル画像出力からの画像データを4ビット単位で単純平均したデジタル出力を表現したデジタル出力図である。A/D変換器43は、ここでは、8ビットの分解能のものを使用しているため、256digitsで表現して数値が高いほど出力が高いものとする。また、便宜上、5digitsごとにまとめて表現している。照合回路45に入力されたライン(l)ごとのデータは、図5bに示すように、まず、演算され平均化処理され、レジスタ(シフトレジスタ)に収納される。本実施の形態1では、レジスタのビット数は160ビットである。次に透かし部分の画像を照合するので、透かし部分以外の不要なデータを消去するため、10digit以下のデータを削除する。
【0041】
次に、図10bに示すように、透かし部分の透かし画像を特定するため、透かし画像の最低出力を設定し(本実施の形態1では基準出力はー30)、この値を各出力と加算する。一方、RAM2には、あらかじめ図11aに示す黒透かし部の画像データを収納しておき、ラインごとに送られてくる透かし部分のデータと比較する。比較には双方向のレジスタに収納された画像データを双方向に転送し、次ラインの読取期間中を利用してRAM2データ(1)と比較する。基準出力をー30としたのは、黒透かし部分の最低出力を零より大きい値に合わせるためであり、赤外光のように透過型光源21の光量が大きい場合はさらにその絶対値を大きくし、可視光のように透過型光源21の光量が小さい場合はその絶対値を小さくすることにより、調整するためである。また、この基準出力は、透過型光源21の光量をCIS2に組み込まれたモニター用の受光素子でもって自動調整しても良い。
【0042】
また、図11b及び図12に示すようにRAM2データには各ライン(l)ごとに照合加算データと照合減算データとしてRAM2の基準値とは各画素データが±5digits異なる値を収納しておくことにより、それぞれの画像信号(SO)のデジタル出力値と比較することにより高精度でエラーの少ない照合が可能となる。
【0043】
また、図5bもしくは図12に示すように160ビット以上のセルを持つ双方向レジスタのシフト(転送)回数から対応するCIS2の画素位置が特定されるので、次ラインでは特定画素位置におけるデータをシフトレジスタに転送し、ラッチ(LA)後、RAM2データ(2)と比較し、照合する。この時点で、一致出力(A)を読取システムに送出してもよいが、同様に次々ラインの画像データをRAM2データ(3)と比較照合し、一致出力とすることにより簡便な照合を行うことが可能である。
【0044】
前記においては、画像信号(SO)からの画像出力を4ビットの平均化出力としたが、これは、透かし領域画像は比較的粗い画像とみなしていることによる。また、透かし領域の汚れなども考慮して平均化出力とした。すなわち、透かし領域の画像は、2ビット/mmの分解能で読取判定を行っている。したがって、さらに高密度で判定する場合には12ドット/mmの分解能を有するCISを適応することでさらに高精度の画像読取が可能である。なお、透かし部分は、黒透かし(厚みが厚く透かしの濃い部分)と白透かし(厚みが薄い部分)があるが、本実施の形態1では透過型光源21をロッドレンズアレイ7の光軸に対して45度の傾斜を持たせているので、黒透かし部分と白透かし部分の起伏を画像データとして読み込んでいることは前述した。
【0045】
なお、紙幣1の無い受光部8の領域は透過光は透過型光源21を傾斜させているので画像信号(SO)の出力はほぼ零であるため、透かし領域以外に含まれる。また、透過型光源21の傾斜角度はロッドレンズアレイ7の光軸(紙幣1などの搬送方向と直角方向)に対して45度と設定したが±15度までが適当である。傾斜角度が60度以上になると透過型光源21からの光は散乱光も全反射や発散がおこり、読取出力が低下する。また、傾斜角度が30度以下になるとロッドレンズアレイ7に直接透過光が入射し、読取出力は大きくなるが、直接透過光は不要光であるから真偽判別精度は低下する。
【符号の説明】
【0046】
1 被照射物(紙幣)、 2 密着イメージセンサ(CIS)、 3 第1の光源(反射型光源)、 4 導光体(屈折型導光体)、 4a 光射出部、 5 照射部、 6 透過体、 7 レンズ(ロッドレンズアレイ)、 8 受光部(センサ)、 9 センサ基板、 10 基板、 11 信号処理IC(ASIC)、 12 コネクタ、 13 中継コネクタ、 14 内部筐体、 15 外部筐体、 20 透過型光源体、 21 第2の光源(透過型光源)、 22 導光体(ラッパ型導光体)、 22a 光射出部、 23 ガラス板、 24 LED基板、 25 コネクタ、 26 筐体、 27 上部搬送ガイド、 28 ステー、 30 搬送ローラ、 31 カセット、 32 受け台、 33 固定ホルダー、 34 原稿台、 36 検出手段(フォトセンサ)、36a 発光側、 36b 受光側、 36c コネクタ、 37 ステー、 40 光源駆動回路、 41 制御部(CPU)、 42 増幅器(可変増幅器)、 43 A/D変換器、 44 補正回路、 45 照合回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えた画像読取装置。
【請求項2】
光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に光を照射する透過型光源と、この透過型光源の光を前記照射部に導く導光部材と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えた画像読取装置。
【請求項3】
光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、この搬送手段が搬送する被照射物の主走査方向に延在し、被照射物の透過部分を検出する検出手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に、前記検出手段により検出された被照射物の透過部分が前記搬送手段によって搬送されている間、光を照射する透過型光源と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えた画像読取装置。
【請求項4】
光の透過部分である黒透かし及び白透かしを有する被照射物を搬送する搬送手段と、この搬送手段が搬送する被照射物の主走査方向に延在し、被照射物の透過部分を検出する検出手段と、被照射物の一方の面側に配置され、被照射物の垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて被照射物の照射部に、前記検出手段により検出された被照射物の透過部分が前記搬送手段によって搬送されている間、光を照射する透過型光源と、この透過型光源の光を前記照射部に導く導光部材と、被照射物の他方の面側に被照射物の垂直面に対して平行配置され、前記照射部に照射された光が被照射物の前記黒透かし及び白透かしの起伏により散乱反射された散乱透過光を収束するロッドレンズアレイと、このロッドレンズアレイにより収束された散乱透過光を結像してライン毎に出力するセンサと、このセンサが結像した画像信号と予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する信号処理部とを備えた画像読取装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記画像信号から前記黒透かしの画像データ以外のデータを削除して、予め収納された被照射物の黒透かしの画像データとを照合する請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記画像信号のうち、所定の値以下のものを前記黒透かしの画像データ以外として削除する請求項5に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−225164(P2010−225164A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99796(P2010−99796)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願2006−9710(P2006−9710)の分割
【原出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】