説明

画像読取装置

【課題】 両面読取可能な画像読取装置において、表面と裏面とで読み取り画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制する。
【解決手段】 表面の読み取りが完了した原稿に再送する際に搬送抵抗を付与する。これにより、原稿の表面を読み取る際の自動読取窓103での原稿搬送速度(第1搬送速度)と裏面を読み取る際の自動読取窓103での原稿搬送速度(第2搬送速度との速度差)との速度差を小さくすることができるので、簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の表裏両面に形成された画像を読み取ることが可能な画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両面読取可能な画像読取装置では、原稿の表面を読取部に搬送させた後、原稿の搬送方向を反転(スイッチバック)させて裏面を読取部に搬送させながら画像を読み取るので、表面の読取時と裏面の読取時とで原稿の搬送経路が異なっている。
【0003】
そして、搬送経路の違いにより搬送抵抗に違いが生じ、原稿の表面を読み取る際の読取部での原稿搬送速度(以下、第1搬送速度という。)と裏面を読み取る際の読取部での原稿搬送速度(以下、第2搬送速度という。)とが相違してしまうと、読み込んだ画像を出力した際に、原稿に記載された画像の大きさに対する出力された画像の大きさの比(以下、画像倍率という。)が表面と裏面とで相違してしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1の発明では、現実の第1、2搬送速度を検出し、その検出結果に基づいて搬送ローラの周速を調整することにより、第1搬送速度と第2搬送速度とが同一速度となるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−73135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明では、現実の第1、2搬送速度を検出して搬送ローラの回転を制御する必要があるので、制御部が複雑となってしまう。
本発明は、上記点に鑑み、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、原稿を読取部(103)に自動的に搬送するとともに、表面の画像読み取りが完了した原稿を読取部(103)に再送して裏面の画像を読み込む両面読み取り可能な画像読取装置であって、読み取り対象となる原稿が載置される原稿トレイ(121)と、原稿に搬送抵抗を付与することにより、原稿トレイ(121)に載置された複数枚の原稿を1枚ずつに分離し、その分離された原稿を読取部(103)の入口側に送出する分離手段(125)と、表面の読み取りが完了して読取部(103)の入口側に再送される原稿に搬送抵抗を付与する抵抗付与手段(127A、139)とを備えることを特徴とする。
【0008】
ところで、原稿に搬送抵抗を付与することにより複数枚の原稿を1枚ずつに分離する画像読取装置においては、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差の発生原因は、主に分離手段(125)で付与される搬送抵抗と考えられる。
【0009】
つまり、表面を読み取る際には分離手段(125)から読取部(103)に原稿が送出されるので、読取部(103)に原稿が到達した後も所定時間は分離手段(125)による搬送抵抗が原稿に作用し続けるのに対して、裏面を読み取る際には分離手段(125)による搬送抵抗が原稿に作用しないので、第1搬送速度と第2搬送速度とが大きく相違してしまう。
【0010】
これに対して、本発明では、表面の読み取りが完了した原稿に搬送抵抗を付与する抵抗付与手段(127A、139)が設けられているので、裏面を読み取る際には抵抗付与手段(127A、139)による搬送抵抗が原稿に作用することとなる。
【0011】
したがって、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差を小さくすることができるので、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0012】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動原稿搬送機構120の概略構造及び原稿の搬送経路を示す図である。
【図2】原稿の搬送経路を示す図である。
【図3】原稿の搬送経路を示す図である。
【図4】変速機135の概略構成を示す図である。
【図5】変速機135の概略構成を示す図である。
【図6】遊星歯車137Aの作動を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の特徴を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態の特徴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、原稿を自動的に搬送しながら原稿に記載された画像を読み取る自動搬送読取機能(ADF読取機能)、及び静止載置された原稿に記載された画像を読み取る静止原稿読取機能(フラットベッド読取機能)を兼ね備えた画像読取装置(スキャナ)に本発明に係る画像読取装置100を適用したものであり、以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
1.画像読取装置の概略構成
画像読取装置100には、図1に示すように、静止原稿読取機能用の画像読取窓(以下、静止読取窓という。)102、及び自動搬送読取機能用の画像読取窓(以下、自動読取窓という。)103が設けられており、両読取窓102、103は、ガラスやアクリル等の透明なプラテン102A、103Aにて閉塞されている。
【0016】
また、本体部101の上面側には、両読取窓102、103を覆う原稿カバー104が揺動可能に組み付けられており、静止読取窓102にて原稿読取を行う場合には、この原稿カバー104を手動操作にて上方側に開いて原稿を静止読取窓102に載置する。
【0017】
一方、本体部101内には、原稿に照射されて反射した光を受光し、その受光した光に基づいて電気信号を発する画像撮像素子105が配設されており、画像読取装置100は、画像撮像素子105を介して原稿に記載された文字等の画像を電気信号に変換して画像を読み取っていく。
【0018】
また、画像撮像素子105は、本体部101の長手方向(図1の左右方向)に移動可能に本体部101に組み付けられており、自動搬送読取機能作動時には、画像撮像素子105は自動読取窓103の直下に停止配置された状態で画像を読み取り、一方、静止原稿読取機能作動時には、画像撮像素子105は静止読取窓102の直下で移動しながら画像を読み込んでいく。
【0019】
また、原稿カバー104のうち自動読取窓103に対応する部位及びその近傍には、読み取り用の原稿を自動読取窓103に搬送する自動原稿搬送機構(オートドキュメントフィーダ(ADF))120が設けられている。
【0020】
2.自動原稿搬送機構
2.1.自動原稿搬送機構の構成
原稿トレイ121は、読み取り対象となる原稿が載置されるものであり、この原稿トレイ121の上方側には、図1に示すように、画像読取が完了した原稿が載置される排出トレイ123が設けられている。因みに、複数枚の原稿は、その厚み方向が上下方向に積層された状態で原稿トレイ121又は排出トレイ123に載置される。
【0021】
また、原稿トレイ121のうち自動読取窓103側には、原稿トレイ121に載置された複数枚の原稿のうち最下部に位置する原稿から順に自動読取窓103の入口側に原稿を送出するフィーダ機構125が設けられており、このフィーダ機構125は、吸入ローラ125A、ニップピース125B、分離ローラ125C及び分離パッド125D等から構成されている。
【0022】
すなわち、吸入ローラ125Aは、原稿トレイ121の最下部に載置された原稿の下面側に接触して回転することにより原稿を分離ローラ125C側に搬送する搬送手段であり、ニップピース125Bは、原稿を吸入ローラ125Aに押し付ける加圧手段である。
【0023】
また、分離ローラ125Cは、吸入ローラ125Aと同様に、原稿の下面側に接触して回転することにより原稿に搬送力を付与するローラであり、分離パッド125Dは、原稿を挟んで分離ローラ125Cと反対側から原稿に接触して原稿に搬送抵抗を付与するものである。因みに、本実施形態に係る分離パッド125Dは、自身に作用する重力及びバネ等の弾性手段により弾性力により、原稿に押圧される。
【0024】
このため、分離ローラ125Cと接触する原稿のみが分離ローラ125Cから搬出され、分離ローラ125Cと接触する原稿より分離パッド125D側に位置する原稿は、分離パッド125Dから搬送抵抗を受けて搬出されることなく止まるので、原稿トレイ121の最下部に載置された原稿から1枚ずつ自動読取窓103に搬送される。
【0025】
また、第1搬送ローラ126Aは、自動読取窓103の入口側、つまり自動読取窓103より原稿の搬送方向上流側に配設されて原稿に接触して回転することにより、搬送されてきた原稿を自動読取窓103に搬送し、ピンチローラ126Bは原稿を第1搬送ローラ126Aに押し付けながら、搬送される原稿に接触して従動回転する加圧ローラである。
【0026】
そして、自動読取窓103の出口側、つまり自動読取窓103より原稿の搬送方向下流側であって、プラテン103Aからずれた位置には、自動読取窓103を通過した原稿を排出トレイ123側に搬送する第2搬送ローラ128が設けられている。
【0027】
そして、第2搬送ローラ128から搬送力が付与された原稿は、案内部材(図示せず。)により、その搬送方向が上方側に略180°転向させられた後、排出トレイ123側に排出される。因みに、ピンチローラ128Aは、原稿を第2搬送ローラ128に押し付ける加圧ローラであり、このピンチローラ128Aは、搬送される原稿に接触して従動回転する。
【0028】
なお、本実施形態では、第1搬送ローラ126Aの周速を第2搬送ローラ128の周速より小さくして搬送されてきた原稿のうち自動読取窓103に対応する部分に張力を発生させることにより、自動読取窓103において原稿が張架された状態となるようにしている。
【0029】
また、第2搬送ローラ128Aより搬送方向下流側の搬送経路Loは、分岐部P1にて上下に分岐しており、分岐部P1にて下方側に分岐した搬送経路L1は、反転機構127側に連通し、一方、搬送経路L2は排出トレイ123側に連通している。なお、原稿は、搬送フラップ(図示せず。)によって搬送経路L1又は搬送経路L2のいずれかに選択的に送られる。
【0030】
反転機構127は、自動読取窓103を通過した原稿を、その搬送方向を反転させて自動読取窓103に再搬送する再搬送手段であり、この反転機構127は、原稿に搬送力を付与するスイッチバックローラ127A、及び原稿をスイッチバックローラ127Aに押し付けるピンチローラ127B等から構成されている。
【0031】
そして、スイッチバックローラ127Aは、自動読取窓103から排出された原稿の搬送方向前端がスイッチバックローラ127Aに到達した時以降であって、当該原稿の搬送方向後端側が分岐部P2を通過したときに、その回転方向を正転方向から逆転方向に反転させて原稿を第1搬送ローラ126Aに至る搬送経路L3に向けて搬出する。
【0032】
なお、第3搬送ローラ127Cは、搬送経路L1に搬送されてきた原稿を反転機構127側に搬出する搬送手段であり、分岐部P1及び分岐部P2それぞれには、原稿の搬送経路を切り替える搬送フラップ(図示せず。)が設けられている。
【0033】
また、分岐部P1にて上方側に分岐した搬送経路L2は、原稿読取が終了した原稿を排出トレイ123に排出するための排紙口123Aに連通しており、この排紙口123Aには、原稿を排出トレイ123に向けて排出する一対の排出ローラ130が設けられている。
【0034】
また、排出トレイ123の排紙口123A側には、排出トレイ123に既に載置されている原稿と排出トレイ123との間に原稿を潜り込ませるように排紙する(以下、このような排紙を潜込排紙という。)ための潜り込み機構133が設けられている。
【0035】
この潜り込み機構133は、潜込排紙を実行させるための排紙フラップ133A、排紙フラップ133Aを第1ポジション(図1で示す状態)と第2ポジション(図2で示す状態)との間で揺動変位させるためクランク133B、及びクランク133Bを回転させるアクチュエータ(図示せず。)等から構成されている。
【0036】
また、排紙フラップ133Aの先端側には、排出トレイ123に既に載置されている原稿の排紙口123A側を排出トレイ123から浮き上がらせるための突起部133Dが設けられている。
【0037】
そして、排紙フラップ133Aが第1ポジションに位置している場合には、潜込排紙が実行され、排紙フラップ133Aが第2ポジションに位置している場合には、潜込排紙されることなく、排出トレイ123に既に載置されている原稿の最上位に積層されていく通常排紙が実行される。
【0038】
2.2.自動原稿搬送機構の作動
原稿の表面(片面)に記載された画像のみを読み込む場合には、図1に示すように、読み取り対象となる画像が記載されている面を原稿トレイ121に面した状態で載置した後、読取開始スイッチ(図示せず。)を押下してフィーダ機構125を作動させる。
【0039】
これにより、排紙フラップ133Aが第1ポジションに自動設定された後、自動読取窓103から排出された原稿は搬送経路L2を経由して排出トレイ123に潜込排紙される。
【0040】
また、原稿の表裏両面に記載された画像のみを読み込む場合には、表面と画像として読み込ませたい画像が記載されている面を原稿トレイ121に面した状態で載置した後、読取開始スイッチを押下してフィーダ機構125を作動させる。
【0041】
これにより、排紙フラップ133Aが第2ポジションに自動設定された後、自動読取窓103から排出された原稿は、図2に示すように、搬送経路L1を経由してスイッチバックローラ127A側に排出される。
【0042】
そして、原稿の搬送方向後端側が分岐部P2を通過したときに、スイッチバックローラ127Aの回転方向が反転し、図3に示すように、表面の画像読込が完了した原稿は、搬送経路L3を経由して自動読取窓103に搬送されて裏面の画像が読み込まれた後、搬送経路L2を経由して排出トレイ123に通常排紙される。
【0043】
このとき、本実施形態では、スイッチバックローラ127Aが逆転しているとき(原稿の搬送方向後端側が分岐部P2を通過した後)の周速が、スイッチバックローラ127Aが正転しているとき(原稿の搬送方向後端側が分岐部P2を通過前)の周速に比べて小さくなるように設定されている。
【0044】
具体的には、正転時のスイッチバックローラ127Aの周速は、第2搬送ローラ128又は第3搬送ローラ127Cとほぼ等しい周速であり、逆転時のスイッチバックローラ127Aの周速は、第1搬送ローラ126Aの周速より小さい周速に設定されている。このため、表面の読み取りが完了して自動読取窓103の入口側に再送される原稿には、第1搬送ローラ126Aとスイッチバックローラ127Aの周速の差だけスイッチバックローラ127Aから搬送抵抗が付与された状態となる。
【0045】
3.スイッチバックローラの駆動系等
スイッチバックローラ127Aは、図4に示すように、駆動力を伝達する複数の歯車からなる変速機135を介して駆動力を得て回転し、この変速機135は、正転方向に駆動力を伝達する正転経路DL1と、逆転方向に駆動力を伝達する逆転経路DL2とが切替可能となっている。
【0046】
すなわち、変速機135は、駆動力の入力側に配設された入力側歯車135C、入力側歯車135Cに噛み合って回転し、かつ、その回転軸が入力側歯車135Cの回転軸を中心として揺動可能な遊星歯車137A、正転経路DL1を構成するとともに遊星歯車137Aと噛み合う正転側入力歯車135D、並びに逆転経路DL2を構成するとともに遊星歯車137Aと噛み合う逆転側入力歯車135F等を有して構成されている。
【0047】
そして、遊星歯車137Aが、正転側入力歯車135Dと噛み合う位置(図6の実線で示す状態)と逆転側入力歯車135Fと噛み合う位置(図6の二点鎖線で示す状態)との間で揺動変位することにより、正転経路DL1と逆転経路DL2とが切り替えられる。
【0048】
つまり、遊星歯車137Aが、正転側入力歯車135Dと噛み合った状態では、電動モータ(図示せず。)にて発生した駆動力は、図4に示すように、歯車135A→歯車135B→入力歯車135C→遊星歯車137A→正転側入力歯車135D→歯車135Eの順に伝達され、歯車135Eに一体化されている回転軸127Dを介してスイッチバックローラ127Aが正転駆動される。なお、図4〜図6では、これらの歯車の歯を一部省略して図示している。
【0049】
一方、遊星歯車137Aが、逆転側入力歯車135Fと噛み合った状態では、電動モータにて発生した駆動力は、図5に示すように、歯車135A→歯車135B→入力歯車135C→遊星歯車137A→逆転側入力歯車135F→歯車135G→歯車135H→歯車135Eの順に伝達され、回転軸127Dを介してスイッチバックローラ127Aが逆転駆動される。
【0050】
このとき、正転経路DL1の減速比に比べて逆転経路DL2の減速比が大きくなるような所定の減速比に設定されているため、スイッチバックローラ127Aが逆転しているときの周速が、スイッチバックローラ127Aが正転しているときの周速に比べて小さくなる。具体的には、スイッチバックローラ127Aの材質等にもよるが、周速差としては大1搬送ローラ126Aの周速に対して50%〜70%程度となるようにすることが好ましい。
【0051】
なお、遊星歯車137Aは、入力歯車135Cに噛み合った状態で入力側歯車135Cの回転軸に回転可能に組み付けられたアーム137Bに回転可能に組み付けられているため、入力歯車135Cから反力を受け、入力側歯車135Cの回転軸を中心として揺動(公転)しようとする。そこで、本実施形態では、入力歯車135Cの回転方向を切り替えて反力の向きを切り替えることにより、正転経路DL1と逆転経路DL2とを切り替えている。
【0052】
また、回転軸127Dは、原稿の搬送方向及び原稿の厚み方向と直交する幅方向と平行な方向に延びているとともに、この回転軸127Dには、複数個(本実施形態では、2個)のスイッチバックローラ127Aが組み付けられている。そして、スイッチバックローラ127Aは、原稿との接触部が幅方向中央に対して対称となるように設定されている。
【0053】
4.本実施形態に係る画像読取装置の特徴
上述したように、原稿に搬送抵抗を付与することにより複数枚の原稿を1枚ずつに分離する画像読取装置においては、原稿の表面を読み取る際の自動読取窓103での原稿搬送速度(第1搬送速度)と裏面を読み取る際の自動読取窓103での原稿搬送速度(第2搬送速度との速度差)の発生原因は、主にフィーダ機構125(分離パッド125D)で付与される搬送抵抗と考えられる。
【0054】
つまり、表面を読み取る際にはフィーダ機構125から自動読取窓103に原稿が送出されるので、自動読取窓103に原稿が到達した後も所定時間はフィーダ機構125による搬送抵抗が原稿に作用し続けるのに対して、裏面を読み取る際にはフィーダ機構125による搬送抵抗が原稿に作用しないので、第1搬送速度と第2搬送速度とが大きく相違してしまう。
【0055】
これに対して、本実施形態では、再送時のスイッチバックローラ127Aの周速が第1搬送ローラ126Aの周速より小さいので、表面の読み取りが完了した原稿にスイッチバックローラ127Aにより搬送抵抗が付与されることとなる。
【0056】
したがって、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差を小さくすることができるので、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0057】
なお、上述の説明からも明らかなように、スイッチバックローラ127Aの周速は、理想的には、フィーダ機構125から第1搬送ローラ126Aまでの搬送抵抗とスイッチバックローラ127Aから第1搬送ローラ126Aまでの搬送抵抗とが同一となるように設定することが望ましい。
【0058】
また、本実施形態では、裏面を読み取り際に必要となる既存のスイッチバックローラ127Aを利用して自動読取窓103の入口側に再送される原稿に搬送抵抗を付与することができるので、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0059】
また、本実施形態では、正転経路DL1と逆転経路DL2とで変速機135の変速比が異なることにより、再送時にスイッチバックローラ127Aの周速を小さくするので、現状の画像読取装置に対して、逆転経路DL2の変速比を変更するのみで、容易に表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、スイッチバックローラ127Aと原稿との接触部が幅方向中央に対して対称となるように設定されているので、再送される原稿に幅方向において均等に搬送抵抗を付与することができ、再送される原稿が斜行してしまうことを抑制できる。
【0061】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、自動読取窓103が特許請求の範囲に記載された読取部に相当し、フィーダ機構125が特許請求の範囲に記載された分離手段に相当し、スイッチバックローラ127Aが特許請求の範囲に記載された抵抗付与手段及び再送ローラに相当する。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態は、スイッチバックローラ127Aとは別に、自動読取窓103の入口側に再送される原稿に接触して摩擦力を発生させる摩擦抵抗体139により抵抗付与手段を構成したものである。なお、本実施形態に係るスイッチバックローラ127Aでは、正転時の周速と逆転時の周速とは同じである。
【0063】
すなわち、図7に示すように、スイッチバックローラ127Aの回転軸127Dから再送される原稿の搬送方向後端側に延びるアーム139Aを回転軸127Dに回転可能に組み付けるとともに、このアーム139Aの先端側に摩擦抵抗体139を設けたものである。
【0064】
なお、ガイド139B、139Cは原稿の搬送を案内するものであり、特に、ガイド139Cのうち摩擦抵抗体139に対応する部位は壁状に構成されている。
これにより、再送時(逆転時)には、回転軸127Dとアーム139Aとの接触部で発生する摩擦抵抗により、摩擦抵抗体139が原稿に押し付けられるようにアーム139Aが回転しようとする。一方、正転時には、逆転時とは逆に、回転軸127Dとアーム139Aとの接触部で発生する摩擦抵抗により、摩擦抵抗体139が原稿から離間するようにアーム139Aが回転しようとする。
【0065】
したがって、本実施形態では、原稿が自動読取窓103に再送されるときにのみ積極的に搬送抵抗を付与することが可能となるので、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0066】
(第3実施形態)
第2実施形態では、アーム139Aを回転軸127Dに組み付けたが、本実施形態では、図8に示すように、アーム139Aの回転軸139Dを、再送される原稿の搬送方向後端側に設定するとともに、回転軸139Dから摩擦抵抗体139までの長さAを、回転軸139Dからガイド139Cまでの距離Bより長くしたものである。
【0067】
これにより、摩擦抵抗体139は、正転時には、自身及びアーム139Aの自重によるモーメントにより原稿に押し付けられるが、スイッチバックローラ127Aが逆転し、原稿が再送されると、原稿と摩擦抵抗体139との接触面で発生する摩擦力により、アーム139Aが、矢印Cに示されるように、スイッチバックローラ127Aに近づくように回転しようとするものの、ガイド139Cによりその回転が阻害されるので、原稿と摩擦抵抗体139との接触面圧が正転時より高まって摩擦抵抗力が大きくなる。
【0068】
したがって、本実施形態においても、原稿が自動読取窓103に再送されるときにのみ積極的に搬送抵抗を付与することが可能となるので、特許文献1と異なる簡易な構成で、表面と裏面とで画像倍率が大きく相違してしまうことを抑制できる。
【0069】
(その他の実施形態)
第1実施形態では、スイッチバックローラ127Aを正転又は逆転させて原稿をスイッチバック搬送したが、本発明はこれに限定されるものではなく、正転専用の搬送ローラと逆転専用の再送ローラとを別々に設けてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、潜込排紙が可能なフィーダ機構125であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、第1実施形態では、入力歯車135Cの回転方向を切り替えることにより、正転経路DL1と逆転経路DL2とを切り替えたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばソレノイド等のアクチュエータを用いてアーム137Bを揺動変位させてもよい。
【0071】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1…特許文献、100…画像読取装置、101…本体部、102…静止読取窓、
102A…プラテン、103…自動読取窓、103A…プラテン、
104…原稿カバー、105…画像撮像素子、121…原稿トレイ、
123…排出トレイ、123A…排紙口、125…フィーダ機構、
125A…吸入ローラ、125B…ニップピース、125C…分離ローラ、
125D…分離パッド、126A…第1搬送ローラ、126B…ピンチローラ、
127…反転機構、127A…スイッチバックローラ、127C…第3搬送ローラ、
127D…回転軸、128…第2搬送ローラ、128A…ピンチローラ、
128A…第2搬送ローラ、130…排出ローラ、133…潜り込み機構、
133A…排紙フラップ、133B…クランク、133D…突起部、
135…変速機、135A〜135H…歯車、137A…遊星歯車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読取部に自動的に搬送するとともに、表面の画像読み取りが完了した原稿を前記読取部に再送して裏面の画像を読み込む両面読み取り可能な画像読取装置であって、
読み取り対象となる原稿が載置される原稿トレイと、
原稿に搬送抵抗を付与することにより、前記原稿トレイに載置された複数枚の原稿を1枚ずつに分離し、その分離された原稿を前記読取部の入口側に送出する分離手段と、
表面の読み取りが完了して前記読取部の入口側に再送される原稿に搬送抵抗を付与する抵抗付与手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記読取部の入口側に設けられ、原稿に接触して回転することにより原稿を読取部に搬送する搬送ローラと、
表面の読み取りが完了した原稿に接触して回転することにより、前記読取部から排出された原稿を前記搬送ローラに向けて再送する再送ローラとを備え、
前記抵抗付与手段は、前記再送ローラを有して構成されており、
さらに、再送時の前記再送ローラの周速が前記搬送ローラの周速より小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記再送ローラは、前記読取部から排出された原稿の搬送方向前端が前記再送ローラに到達した時以降に、その回転方向を正転方向から逆転方向に反転して原稿を前記搬送ローラに向けて再送するスイッチバックローラであることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記再送ローラに駆動力を伝達する複数の歯車から構成され、前記正転方向に駆動力を伝達する正転経路と、前記逆転方向に駆動力を伝達する逆転経路とを切替可能なる変速機が設けられており、
さらに、前記正転経路と前記逆転経路とで変速比が異なることにより、再送時に前記再送ローラの周速を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記変速機は、
駆動力の入力側に配設された入力側歯車、
前記入力側歯車に噛み合って回転するとともに、その回転軸が前記入力側歯車の回転軸を中心として揺動可能な遊星歯車、
前記正転経路を構成するとともに、前記遊星歯車と噛み合う正転側入力歯車、並びに
前記逆転経路を構成するとともに、前記遊星歯車と噛み合う逆転側入力歯車を有しており、
さらに、前記遊星歯車が、前記正転側入力歯車と噛み合う位置と前記逆転側入力歯車と噛み合う位置との間で揺動変位することにより、前記正転経路と前記逆転経路とが切り替えられることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
原稿の搬送方向及び原稿の厚み方向と直交する方向を幅方向と呼ぶとき、
前記再送ローラと原稿との接触部は、前記幅方向中央に対して対称となっていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取部の入口側に再送される原稿に接触して摩擦力を発生させることにより搬送抵抗を発生させる摩擦抵抗体を有し、
前記抵抗付与手段は前記摩擦抵抗体を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項8】
表面の読み取りが完了した原稿に接触して回転することにより、前記読取部から排出された原稿の搬送方向を反転させて前記読取部の入口側に向けて原稿を再送する再送ローラと、
前記再搬送ローラと一体的に回転する回転軸に回転可能に組み付けられ、再送される原稿の搬送方向後端側に延びて、その先端側に前記摩擦抵抗体が設けられたアームとを備え、
前記回転軸と前記アームとの接触部で発生する摩擦抵抗により、前記摩擦抵抗体が原稿に押し付けられるように前記アームが回転することを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−80158(P2012−80158A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220501(P2010−220501)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】