画素回路、表示装置、電子機器、及び、画素回路の駆動方法
【課題】画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する場合に、補正期間の設定の自由度を広げることのできる技術を提供する。
【解決手段】画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間(1垂直走査期間)を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(好ましくは当該処理を移動度補正処理に利用する)を行なうことが可能に構成されている。
【解決手段】画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間(1垂直走査期間)を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(好ましくは当該処理を移動度補正処理に利用する)を行なうことが可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、画素回路、表示装置、電子機器、及び、画素回路(表示装置)の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、表示素子(電気光学素子とも称される)を具備する画素回路(画素とも称される)を有する表示装置、表示装置を具備する電子機器が広く利用されている。画素の表示素子として、印加される電圧や流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子を用いた表示装置がある。例えば、印加される電圧によって輝度が変化する電気光学素子としては液晶表示素子が代表例であり、流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子としては、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence, 有機EL, Organic Light Emitting Diode, OLED;以下、有機ELと記す) 素子が代表例である。後者の有機EL素子を用いた有機EL表示装置は、画素の表示素子として、自発光素子である電気光学素子を用いたいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
ところで、表示素子を用いた表示装置においては、その駆動方式として、単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。但し、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が単純であるものの、大型でかつ高精細の表示装置の実現が難しい等の問題がある。
【0004】
このため、近年、画素内部の表示素子に供給する画素信号を、同様に画素内部に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(一般には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor ;TFT)等のトランジスタをスイッチングトランジスタとして使用して制御するアクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。
【0005】
従来のアクティブマトリクス方式の表示装置は、プロセス変動により表示素子を駆動するトランジスタの閾値電圧や移動度がばらついてしまう。又、表示素子の特性が経時的に変動する。このような駆動用のトランジスタの特性ばらつきや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性変動は、発光輝度に影響を与えてしまう。即ち、各画素に全て同一のレベルの映像信号を供給すれば、全画素が同一輝度で発光し、画面の一様性(ユニフォーミティ)が得られるはずであるが、駆動用のトランジスタの特性ばらつきや表示素子の特性変動により、画面のユニフォーミティが損なわれる。そこで、表示装置の画面全体に亘って発光輝度を均一に制御するため、各画素回路内でトランジスタや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する技術が、例えば特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4240059号公報
【特許文献2】特許第4240068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている技術では、各ラインで1回当たりの閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る最長期間は1水平期間(1Hとも記す)となっている。又、閾値補正と移動度補正とを併用する場合に両者均等に割り当てるとそれぞれが処理期間としてとり得る最長期間はH/2となる。つまり、特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている技術では、閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ制約があり、自由度が少ない。このような補正期間の設定の自由度の制約のため、場合によっては、動作時間が十分に確保できず良好なユニフォミティが得られないことが起こり得る。
【0008】
したがって本開示の目的は、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する場合に、補正期間の設定の自由度を広げることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る画素回路は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている。本開示の第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各画素回路は、本開示の第1の態様に係る画素回路のさらなる有利な具体例を規定する。
【0010】
本開示の第2の態様に係る表示装置は、表示部、保持容量、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、を具備する表示素子が配列されており、更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部(駆動信号一定化回路)を備える。第2の態様に係る表示装置は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第2の態様に係る表示装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0011】
本開示の第3の態様に係る電子機器は、表示部、保持容量、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタを具備する表示素子が配列されており、更に、画素部に供給される映像信号を生成する信号生成部と、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部とを備える。第3の態様に係る電子機器は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第3の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。
【0012】
本開示の第4の態様に係る画素回路の駆動方法は、表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう。第4の態様に係る画素回路の駆動方法は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第4の態様に係る画素回路の駆動方法のさらなる有利な具体例を規定する。
【0013】
要するに、本明細書で開示する技術では、1フィールド期間を複数に分割し、そのうちの一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう。このため、閾値補正処理にとり得る期間は、1水平期間との制約関係から開放されるので、閾値補正のオペレーションマージンの増加(つまり、補正期間の設定の自由度を広げること)が可能になる。閾値補正の動作時間が十分に確保でき、良好なユニフォミティが得られる。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様に係る画素回路、第2の態様に係る表示装置、第3の態様に係る電子機器、及び、第4の態様に係る画素回路の駆動方法によれば、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する場合に、補正期間の設定の自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、アクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。
【図2】図2は、カラー画像表示対応のアクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。
【図3】図3(A)〜図3(B)は、発光素子(実質的には画素回路)を説明する図である。
【図4】図4は、実施例1の画素回路の一形態を示す図である。
【図5】図5は、実施例1の画素回路を備えた表示装置の全体概要を示す図である。
【図6】図6は、画素回路の比較例の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図7】図7(A)〜図7(G)は、図6に示したタイミングチャートの主要な期間における等価回路と動作状態を説明する図である。
【図8】図8は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例1の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図9】図9は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例2の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図10】図10は、実施例3の画素回路の一形態を示す図である。
【図11】図11は、実施例3の画素回路を備えた表示装置の全体概要を示す図である。
【図12】図12は、駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象の対策原理を説明する図であって、トランジスタ特性の基板電位依存性を説明する図である。
【図13】図13は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例3の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図14】図14(A)〜図14(E)は実施例4(電子機器)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0017】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.表示装置の概要
3.発光素子
4.駆動方法:基本
5.具体的な適用例:
表示むら補正期間の設定自由度の拡大技術
実施例1:垂直ブランキング期間中の分割閾値補正なし
実施例2:垂直ブランキング期間中の分割閾値補正あり
実施例3:実施例2(又は実施例1)+従来の閾値補正(分割閾値補正)あり
実施例4:電子機器への適用事例
【0018】
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。
【0019】
本実施形態の構成において、画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間(1垂直走査期間)を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(好ましくは当該処理を移動度補正処理に利用する)を行なうことが可能に構成されている。このような処理を行なうことを可能にするべく、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、特性制御部を備える。閾値補正処理にとり得る期間は、1水平走査期間ではなく1垂直走査期間と一定の関係を持って設定すればよく、1水平期間との制約関係から開放されるし、設定可能な期間(閾値補正にとり得る期間)を、1水平期間との制約に基づく場合よりも広げることが可能になる。そのため、閾値補正の動作時間が十分に確保できる。
【0020】
本実施形態の構成において、1フィールドを複数に分割するに当たっては、2つの分割期間に分けるのが典型的ではあるが、原理的には2分割に限定されない。例えば、1フィールドを4つに分割し、そのうちの最初の1/4期間を全行分の閾値補正期間に割り当て、その後の1/4期間は休止期間に割り当て、残りの1/2期間で各行の信号書込みや移動度補正を行なう期間に割り当てることができる。又、閾値補正と、信号書込みや移動度補正とは、通常は、閾値補正の後に信号書込みや移動度補正を行なうが、これにも限定されない。但し、好ましくは、1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうのがよい。各処理期間に時間を最大限に割り当てることができ、効率的だからである。
【0021】
本実施形態の構成において、特性制御部は、好ましくは、駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なうのがよい。
【0022】
本実施形態の構成において、特性制御部は、駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なうこともできる。分割閾値補正時の停止(休止)期間におけるいわゆるブートストラップ動作を利用することで、閾値補正を加速させることができる。実態としては、閾値補正期間を、分割閾値補正を行なわない場合よりも短縮できる。
【0023】
本実施形態の構成において、特性制御部は、好ましくは、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なうとよい。つまり、本実施形態の構成において、特性制御部は、1フィールドを複数に分割し、その内の一の分割期間においては閾値補正を行ない、他の分割期間において、信号書込みや移動度補正を行なうことで、オペレーションマージンの増加に対応する。特性制御部は、閾値補正処理の際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なってもよい。必須ではないが、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(移動度補正処理)を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なってもよい。
【0024】
本実施形態の構成においてて、特性制御部は、好ましくは、閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御するのがよい。これによって、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象を解決することができる。尚、駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる点を勘案すると、特性制御部は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。
【0025】
好ましくは、特性制御部は、駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止するとよい。例えば、特性制御部は、駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の期間には、駆動トランジスタの閾値電圧を増大させる処理を中止する。
【0026】
好ましくは、特性制御部は、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込みつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(換言すると、駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理)の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよい。例えば、特性制御部は、閾値電圧の補正処理の終了と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよい。
【0027】
或いは、特性制御部は、閾値電圧の補正処理の終了よりも前に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくしてもよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるよりも前に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくしてもよい。
【0028】
或いは又、好ましくは、特性制御部は、駆動電圧の保持容量への書込みに連動して駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。例えば、特性制御部は、駆動電圧の保持容量への書込み開始と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが導通状態になるのと同時に、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。
【0029】
或いは、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理と連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。つまり、特性制御部は、駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。例えば、駆動トランジスタの移動度補正処理の開始と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。特に、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には(つまり、当該処理中には)、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせるのがよい。
【0030】
或いは、特性制御部は、表示部の表示開始に連動して駆動トランジスタの閾値電圧を小さくしてもよい。例えば、特性制御部は、表示部の表示開始と同時に、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくすることができる。或いは、特性制御部は、発光開始直後ではなく、それより少し後で、安定的に発光するようになってから、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくしてもよい。
【0031】
好ましくは、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、駆動トランジスタとしては、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有しているトランジスタを使用するのがよい。この場合、特性制御部は、閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する。閾値電圧を制御し得る特性制御端を有しているトランジスタとしては、例えば、バックゲート型の薄膜トランジスタやMOSFET(金属酸化膜型の電界効果トランジスタ)を使用するのが好適であり、特に、MOSFETを使用するとよい。
【0032】
好ましくは、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を画素回路に備えるとよい。駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる点を勘案すると、特性制御部は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。
【0033】
表示部としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光部、無機エレクトロルミネッセンス発光部、LED発光部、半導体レーザー発光部等の自発光型の発光部を具備した発光素子を用いることができ、特に、有機エレクトロルミネッセンス発光部であるとよい。
【0034】
1フィールド期間を複数に分割するという点においては、デバイス構成としては、表示部が2次元マトリクス状に配列された画素部を備えるものが採用される。画素部を備える構成の場合、好ましくは、特性制御部は、表示部ごとに、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。表示部が2次元マトリクス状に配列された画素部を備える構成の場合、特性制御部は、走査処理により、表示素子ごとに、駆動トランジスタの特性を制御する構成をとることができる。因みに表示素子ごとに制御する場合は駆動トランジスタのウエルは、個々に分離しておくのがよい。線順次で発光制御を行なう場合であれば、行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号)の分離を行なえばよく、駆動トランジスタのウエルは、表示素子ごとの分離を排除しないが、少なくとも行(或いは列)ごとに分離しておけばよい。
【0035】
駆動トランジスタの特性を制御するための制御信号を除く各種の信号は、必要に応じて、制御信号の振幅分を補正するとよい。
【0036】
<表示装置の概要>
以下の説明においては、対応関係の理解を容易にするため、回路構成部材の抵抗値や容量値(静電容量、キャパシタンス)等は、その部材に付されている符号と同一符号で示すことがある。
【0037】
[基本]
先ず、発光素子を備えた表示装置の概要について説明する。以下の回路構成の説明においては、「電気的に接続」を単に「接続」と記載するし、この「電気的に接続」は、特段の明示のない限り、直接に接続されることに限らず、他のトランジスタ(スイッチングトランジスタが典型例である)その他の電気素子(能動素子に限らず受動素子でもよい)を介して接続されることも含む。
【0038】
表示装置は、複数の画素回路(或いは単に画素とも称することもある)を備えている。各画素回路は、発光部と発光部を駆動する駆動回路とを具備する表示素子(電気光学素子)を有する。表示部としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光部、無機エレクトロルミネッセンス発光部、LED発光部、半導体レーザー発光部等の自発光型の発光部を具備した発光素子を用いることができる。尚、表示素子の発光部を駆動する方式としては定電流駆動型を採用するが、原理的には、定電流駆動型に限らず定電圧駆動型でもよい。
【0039】
以下に説明する例においては、発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス発光部を備えている場合で説明する。より詳細には、発光素子は、駆動回路と、駆動回路に接続された有機エレクトロルミネッセンス発光部(発光部ELP)とが積層された構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)である。
【0040】
発光部ELPを駆動するための駆動回路として各種の回路があるが、画素回路としては、5Tr/1C型、4Tr/1C型、3Tr/1C型、或いは2Tr/1C型等の駆動回路を備えた構成にすることができる。「αTr/1C型」におけるαはトランジスタの数を意味し、「1C」は容量部が1つの保持容量Ccs(キャパシタ)を具備することを意味する。駆動回路を構成する各トランジスタは、好適には、全てがnチャネル型のトランジスタから構成されているのが好ましいが、これには限らず、場合によっては、一部のトランジスタをpチャネル型としてもよい。尚、半導体基板等にトランジスタを形成した構成とすることもできる。駆動回路を構成するトランジスタの構造は、特に限定するものではなく、MOS型FETを代表例とする絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(一般には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor ;TFT))を使用できる。更には、駆動回路を構成するトランジスタはエンハンスメント型とデプレッション型の何れでもよいし、又、シングルゲート型とデュアルゲート型の何れでもよい。
【0041】
何れの構成においても、表示装置は、基本的には、最小の構成要素として2Tr/1C型と同様に、発光部ELP、駆動トランジスタTRD、書込トランジスタTRW(サンプリングトランジスタとも称される)、少なくとも書込走査部を具備する垂直走査部、信号出力部の機能を持つ水平駆動部、保持容量Ccsを備える。好ましくは、ブートストラップ回路を構成するべく、駆動トランジスタTRDの制御入力端(ゲート端)と主電極端(ソース/ドレイン領域)の一方(典型的にはソース端)との間に保持容量Ccsが接続される。駆動トランジスタTRDは、主電極端の一方が発光部ELPと接続され、主電極端の他方は電源線PWLと接続される。電源線PWLには、電源回路或いは電源電圧用の走査回路等から電源電圧(定常電圧或いはパルス状の電圧)が供給される。
【0042】
水平駆動部は、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号Vsigや閾値補正等に使用される基準電位(1種とは限らない)を表す広義の映像信号VSを映像信号線DTL(データ線とも称される)に供給する。書込トランジスタTRWは、主電極端の一方が映像信号線DTLに接続され、主電極端の他方が駆動トランジスタTRDの制御入力端に接続される。書込走査部は書込トランジスタTRWをオン/オフ制御する制御パルス(書込駆動パルスWS)を書込走査線WSLを介して書込トランジスタTRWの制御入力端に供給する。書込トランジスタTRWの主電極端の他端と駆動トランジスタTRDの制御入力端と保持容量Ccsの一端との接続点を第1ノードND1と称し、駆動トランジスタTRDの主電極端の一方と保持容量Ccsの他端との接続点を第2ノードND2と称する。
【0043】
[構成例]
図1及び図2は、本開示に係る表示装置の一実施形態であるアクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。図1は、一般的なアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すブロック図であり、図2は、そのカラー画像表示対応の場合の概略を示すブロック図である。
【0044】
図1に示すように、表示装置1は、複数の表示素子としての有機EL素子(図示せず)を持った画素回路10(画素とも称される)が表示アスペクト比である縦横比がX:Y(例えば9:16)の有効映像領域を構成するように配置された表示パネル部100と、この表示パネル部100を駆動制御する種々のパルス信号を発するパネル制御部の一例である駆動信号生成部200(いわゆるタイミングジェネレータ)と、映像信号処理部220を備えている。駆動信号生成部200と映像信号処理部220とは、1チップのIC(Integrated Circuit;半導体集積回路)に内蔵され、本例では、表示パネル部100の外部に配置されている。
【0045】
尚、製品形態としては、図示のように、表示パネル部100、駆動信号生成部200、及び映像信号処理部220の全てを備えたモジュール(複合部品)形態の表示装置1として提供されることに限らず、例えば、表示パネル部100のみで表示装置1として提供すしてもよい。又、表示装置1は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部102に透明なガラス等の対向部に貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。表示モジュールには、外部から画素アレイ部102への映像信号Vsigや各種の駆動パルスを入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0046】
このような表示装置1は、様々な電子機器、例えば半導体メモリやミニディスク(MD)やカセットテープ等の記録媒体を利用した携帯型の音楽プレイヤー、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ等、電子機器に入力された映像信号や電子機器内で生成した映像信号を、静止画像や動画像(映像)として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部に利用できる。
【0047】
表示パネル部100は、基板101の上に、画素回路10がM行×N列のマトリクス状に配列された画素アレイ部102と、画素回路10を垂直方向に走査する垂直駆動部103と、画素回路10を水平方向に走査する水平駆動部106(水平セレクタ或いはデータ線駆動部とも称される)と、各駆動部(垂直駆動部103及び水平駆動部106)と外部回路とのインタフェースをとるインタフェース部130(IF)と、外部接続用の端子部108(パッド部)等が集積形成されている。即ち、垂直駆動部103や水平駆動部106やインタフェース部130等の周辺駆動回路が、画素アレイ部102と同一の基板101上に形成された構成となっている。第m行目(m=1、2、3、…、M)、第n列(n=1、2、3、…、N)に位置する発光素子(画素回路10)を、図では10_n,mで示している。
【0048】
インタフェース部130は、垂直駆動部103と外部回路とのインタフェースをとる垂直IF部133と、水平駆動部106と外部回路とのインタフェースをとる水平IF部136を有する。
【0049】
垂直駆動部103と水平駆動部106とで、信号電位の保持容量への書込みや、閾値補正動作や、移動度補正動作や、ブートストラップ動作を制御する制御部109が構成される。この制御部109とインタフェース部130(垂直IF部133や水平IF部136)を含めて、画素アレイ部102の画素回路10を駆動制御する駆動制御回路を構成している。
【0050】
2Tr/1C型とする場合であれば、垂直駆動部103は、書込走査部(ライトスキャナWS;Write Scan)や電源供給能力を有する電源スキャナとして機能する駆動走査部(ドライブスキャナDS;Drive Scan)を有する。画素アレイ部102は、一例として、図示する左右方向の一方側もしくは両側から垂直駆動部103で駆動され、かつ図示する上下方向の一方側もしくは両側から水平駆動部106で駆動されるようになっている。
【0051】
端子部108には、表示装置1の外部に配された駆動信号生成部200から、種々のパルス信号が供給される。同様に、映像信号処理部220から映像信号Vsigが供給される。カラー表示対応の場合には、色別(本例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色)の映像信号Vsig_R、映像信号Vsig_G、映像信号Vsig_Bが供給される。
【0052】
一例としては、垂直駆動用のパルス信号として、垂直方向の走査開始パルスの一例であるシフトスタートパルスSP(図はSPDS、SPWSの2種)や垂直走査クロックCK(図はCKDS、CKWSの2種)、必要に応じて位相反転した垂直走査クロックxCK(図はxCKDS、xCKWSの2種)、並びに特定タイミングのパルス出力を指示するイネーブルパルス等の必要なパルス信号が供給される。水平駆動用のパルス信号として、水平方向の走査開始パルスの一例である水平スタートパルスSPHや水平走査クロックCKH、必要に応じて位相反転した水平走査クロックxCKH、並びに特定タイミングのパルス出力を指示するイネーブルパルス等の必要なパルス信号が供給される。
【0053】
端子部108の各端子は、配線109を介して、垂直駆動部103や水平駆動部106に接続される。例えば、端子部108に供給された各パルスは、必要に応じて図示を割愛したレベルシフタ部で電圧レベルを内部的に調整した後、バッファを介して垂直駆動部103の各部や水平駆動部106に供給される。
【0054】
画素アレイ部102は、図示を割愛するが(詳細は後述する)、表示素子としての有機EL素子に対して画素トランジスタが設けられた画素回路10が行列状に2次元配置され、画素配列に対して行ごとに垂直走査線SCLが配線されるとともに、列ごとに映像信号線DTLが配線された構成となっている。つまり、画素回路10は、垂直走査線SCLを介して直駆動部103と接続され、又、映像信号線DTLを介して水平駆動部106と接続されている。具体的には、マトリクス状に配列された各画素回路10に対しては、垂直駆動部103によって駆動パルスで駆動されるn行分の垂直走査線SCL_1〜SCL_nが画素行ごとに配線される。垂直駆動部103は、論理ゲートの組合せ(ラッチやシフトレジスタ等も含む)によって構成され、画素アレイ部102の各画素回路10を行単位で選択する、即ち、駆動信号生成部200から供給される垂直駆動系のパルス信号に基づき、垂直走査線SCLを介して各画素回路10を順次選択する。水平駆動部106は、論理ゲートの組合せ(ラッチやシフトレジスタ等も含む)によって構成され、画素アレイ部102の各画素回路10を列単位で選択する、即ち、駆動信号生成部200から供給される水平駆動系のパルス信号に基づき、選択された画素回路10に対し映像信号線DTLを介して映像信号VSの内の所定電位(例えば映像信号Vsigレベル)をサンプリングして保持容量Ccsに書き込ませる。
【0055】
本実施形態の表示装置1は、線順次駆動や点順次駆動が可能になっており、垂直駆動部103の書込走査部104及び駆動走査部105は線順次で(つまり行単位で)で画素アレイ部102を走査するとともに、これに同期して水平駆動部106が、画像信号を、1水平ライン分を同時に(線順次の場合)、或いは画素単位で(点順次の場合)、画素アレイ部102に書き込む。
【0056】
カラー画像表示対応をとるには、画素アレイ部102には、例えば図2に示すように、色別(本例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色)のサブピクセルとして画素回路10_R、画素回路10_G、画素回路10_Bを所定の配列順で縦ストライプ状に設ける。1組の色別のサブピクセルによりカラーの1画素が構成される。ここでは、サブピクセルレイアウトの一例として縦ストライプ状に各色のサブピクセルを配置したストライプ構造のものを示しているが、サブピクセルレイアウトはこのような配列例に限定されるものではない。サブピクセルを垂直方向にシフトさせた形態を採用してもよい。
【0057】
尚、図1及び図2では、画素アレイ部102の一方側にのみ垂直駆動部103(詳しくはその構成要素)を配置する構成を示しているが、垂直駆動部103の各要素を画素アレイ部102を挟んで左右両側に配置する構成を採ることもできる。又、垂直駆動部103の各要素の一方と他方を左右の各別に配置する構成を採ることもできる。同様に、図1及び図2では、画素アレイ部102の一方側にのみ水平駆動部106を配置する構成を示しているが、画素アレイ部102を挟んで上下両側に水平駆動部106を配置する構成を採ることもできる。本例では、垂直シフトスタートパルス、垂直走査クロック、水平スタートパルス、水平走査クロック等のパルス信号を表示パネル部100の外部から入力する構成としているが、これらの各種のタイミングパルスを生成する駆動信号生成部200を表示パネル部100上に搭載することもできる。
【0058】
図示した構成は、表示装置の一形態を示したに過ぎず、製品形態としては、その他の形態をとることができる。即ち、表示装置は、画素回路10を構成する素子を行列状に配置した画素アレイ部と、画素アレイ部の周辺に配置され、各画素を駆動するための走査線と接続された走査部を主要部とする制御部と、制御部を動作させるための各種の信号を生成する駆動信号生成部や映像信号処理部を備えて装置の全体が構成されていればよい。製品形態としては、画素アレイ部と制御部とを同一の基体(例えばガラス基板)上に搭載した表示パネル部と駆動信号生成部や映像信号処理部を別体とする図示のような形態(パネル上配置構成と称する)の他に、表示パネル部には画素アレイ部を搭載し、それとは別基板(例えばフレキシブル基板)上に制御部や駆動信号生成部や映像信号処理部等の周辺回路を搭載する形態(周辺回路パネル外配置構成と称する)を採ることができる。又、画素アレイ部と制御部とを同一の基体上に搭載して表示パネル部を構成するパネル上配置構成の場合、画素アレイ部のTFTを生成する工程にて同時に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の各トランジスタを生成する形態(トランジスタ一体構成と称する)と、COG(Chip On Glass)実装技術により画素アレイ部が搭載された基体上に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の半導体チップを直接実装する形態(COG搭載構成と称する)を採ることもできる。或いは又、表示パネル部(少なくとも画素アレイ部を備える)のみで表示装置として提供することもできる。
【0059】
<発光素子>
図3は、駆動回路を備えた発光素子11(実質的には画素回路10)を説明する図である。ここで、図3(A)は、発光素子11(画素回路10)の一部分の模式的な一部断面図である。図3(B)は、MOS型のトランジスタ構造例を示す断面図である。図3(A)では、絶縁ゲート型電界効果トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であるとするが、後述の実施例で説明するように、本実施形態においては、少なくとも駆動トランジスタTRDに関しては、いわゆるバックゲート型の薄膜トランジスタ或いは図3(B)に示すようなMOS型のトランジスタを使用することが好ましく、特に図3(B)に示すようなMOS型を使用するのが好適である。薄膜トランジスタをバックゲート型の構造とするには製造工程が複雑になる(或いは製造が困難である)のに対して、図3(B)に示すようなMOS型では半導体基板やウエルがそもそもバックゲート(バルクとも称される)として機能するからである。
【0060】
図3(A)に示すように、発光素子11の駆動回路を構成する各トランジスタ及び容量部(保持容量Ccs)は支持体20上に形成され、発光部ELPは、例えば、層間絶縁層40を介して、駆動回路を構成する各トランジスタ及び保持容量Ccsの上方に形成されている。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に、コンタクトホールを介して接続されている。図3においては、駆動トランジスタTRDのみを図示する。書込トランジスタTRWやその他のトランジスタは隠れて見えない。発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。
【0061】
具体的には、駆動トランジスタTRDは、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、半導体層33に設けられたソース/ドレイン領域35、及び、ソース/ドレイン領域35の間の半導体層33の部分が該当するチャネル形成領域34から構成されている。保持容量Ccsは、他方の電極36、ゲート絶縁層32の延在部から構成された誘電体層、及び、一方の電極37(第2ノードND2に相当する)から成る。ゲート電極31、ゲート絶縁層32の一部、及び、保持容量Ccsを構成する他方の電極36は、支持体20上に形成されている。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域35は配線38に接続され、一方のソース/ドレイン領域35は一方の電極37に接続されている。駆動トランジスタTRD及び保持容量Ccs等は、層間絶縁層40で覆われており、層間絶縁層40上に、アノード電極51、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極53から成る発光部ELPが設けられている。図3においては、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を1層52で表した。発光部ELPが設けられていない層間絶縁層40の部分の上には、第2層間絶縁層54が設けられ、第2層間絶縁層54及びカソード電極53上には透明な基板21が配置されており、発光層にて発光した光は、基板21を通過して、外部に出射される。一方の電極37とアノード電極51とは、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホールによって接続されている。カソード電極53は、第2層間絶縁層54、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホール56、コンタクトホール55を介して、ゲート絶縁層32の延在部上に設けられた配線39に接続されている。
【0062】
図3(A)に示した構成において、TFTをMOS型トランジスタとする場合、図3(B)に示すように、第1の極性(P型又はN型(図はN型))の半導体基板の表面にゲート(狭い領域チャネル)を作り、チャネルを蔽うように酸化膜(特にゲート酸化膜と称する)を介してゲート端子を取り付ける。ゲート端子の材料は例えばポリシリコンを用いることができ、特にポリゲートと称される。更に、ゲート端を含めて全体を蔽うように酸化膜(特にフィールド酸化膜と称する)を成膜した後、ゲート端子の両端に第1の極性と異なる第2の極性(ここではP型)のソース領域とドレイン領域の各端子(それぞれソース端子、ドレイン端子)を金属素材で付ける。これにより、第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に、第2の極性(ここではP型)のMOSトランジスタ(PMOS)(P型デバイス)が形成される。この構造のP型デバイスでは、バックゲートはN型基板であり個別に分離されおらず、個々に又は行(或いは列)ごとに分離しての制御信号の供給はできず、画素アレイ部102の全P型デバイスの共通の制御信号が供給可能である。第1の極性(ここではN型)のMOSトランジスタ(NMOS)(N型デバイス)を第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に形成するには、第1の極性(N型)の半導体基板の表面に、第2の極性(P型)のウエルを形成し、このウエル(Pウエル)を第2の極性(P型)の半導体基板として扱って、以下同様にして、ゲート領域、ソース領域、ドレイン領域等を形成すればよい。この構造のN型デバイスでは、第2の極性(P型)のウエルは、個々に又は行(或いは列)ごとに分離可能であるから、個々に又は行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号Vb)の分離が可能である。尚、第2の極性(ここではP型)のMOSトランジスタ(PMOS)(P型デバイス)を第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に形成するに当たり、第1の極性(N型)の半導体基板の表面に、第1の極性(N型)のウエルを形成し(図中の破線を参照)、このウエル(Nウエル)を第1の極性(N型)の半導体基板として扱って、以下同様にして、ゲート領域、ソース領域、ドレイン領域等を形成してもよい。こうすることで、この構造のP型デバイスでは、第1の極性(N型)のウエルは、個々に又は行(或いは列)ごとに分離可能であるから、個々に又は行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号Vb)の分離が可能になる。P型デバイス(PMOS)とN型デバイス(NMOS)とは素子分離領域により分離される。
【0063】
[駆動方法]
発光部の駆動方法に関して、以下に説明する。理解を容易にするべく、画素回路10を構成する各トランジスタは、nチャネル型のトランジスタから構成されているとして説明する。又、発光部ELPは、アノード端が第2ノードND2に接続され、カソード端はカソード配線cath(その電位をカソード電位Vcathとする)に接続されるものとする。更には、ドレイン電流Idsの値の大小によって、発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。発光素子の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの2つの主電極端(ソース/ドレイン領域)は、一方(発光部ELPのアノード側)がソース端(ソース領域)として働き、他方がドレイン端(ドレイン領域)として働く。表示装置は、カラー表示対応のものであり、(N/3)×M個の2次元マトリクス状に配列された画素回路10から構成され、カラー表示の一単位を成す1つの画素回路は、3つの副画素回路(赤色を発光する赤色発光画素回路10_R、緑色を発光する緑色発光画素回路10_G、青色を発光する青色発光画素回路10_B)から構成されているとする。各画素回路10を構成する発光素子は、線順次駆動されるとし、表示フレームレートをFR(回/秒)とする。即ち、第m行目(但し、m=1、2、3、…、M)に配列された(N/3)個の画素回路10、より具体的には、N個の画素回路10のそれぞれを構成する発光素子が同時に駆動される。換言すれば、1つの行を構成する各発光素子にあっては、その発光/非発光のタイミングは、それらが属する行単位で制御される。尚、1つの行を構成する各画素回路10について映像信号を書き込む処理は、全ての画素回路10について同時に映像信号を書き込む処理(同時書込み処理とも称する)でもよいし、画素回路10毎に順次映像信号を書き込む処理(順次書込み処理とも称する)でもよい。何れの書込み処理とするかは、駆動回路の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0064】
ここで、第m行目、第n列(但し、n=1、2、3、…、N)に位置する発光素子(画素回路10)に関する駆動動作を説明する。因みに、第m行目、第n列に位置する発光素子を、第(n、m)番目の発光素子或いは第(n、m)番目の発光素子画素回路と称する。第m行目に配列された各発光素子の水平走査期間(第m番目の水平走査期間)が終了するまでに、各種の処理(閾値補正処理、書込み処理、移動度補正処理、等)が行なわれる。尚、書込み処理や移動度補正処理は、第m番目の水平走査期間内に行なわれる必要がある。一方、駆動回路の種類によっては、閾値補正処理やこれに伴う前処理を第m番目の水平走査期間より先行して行なうことができる。
【0065】
前述の各種の処理が全て終了した後、第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部を発光させる。尚、各種の処理が全て終了した後、直ちに発光部を発光させてもよいし、所定の期間(例えば、所定の行数分の水平走査期間)が経過した後に発光部を発光させてもよい。「所定の期間」は、表示装置の仕様や画素回路10(つまり駆動回路)の構成等に応じて、適宜設定すればよい。以下では説明の便宜のため、各種の処理終了後、直ちに発光部を発光させるものとする。第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部の発光は、第(m+m’)行目に配列された各発光素子の水平走査期間の開始直前まで継続される。「m’」は、表示装置の設計仕様によって決定すればよい。即ち、或る表示フレームの第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部の発光は、第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続される。一方、第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、次の表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内において書込み処理や移動度補正処理が完了するまで、第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部は、原則として非発光状態を維持する。非発光状態の期間(非発光期間とも称する)を設けることにより、アクティブマトリクス駆動に伴う残像ボケが低減され、動画品位をより良好にすることができる。但し、各画素回路10(発光素子)の発光状態/非発光状態は、以上に説明した状態には限定されない。水平走査期間の時間長は、(1/FR)×(1/M)秒未満の時間長である。(m+m’)の値がMを越える場合、越えた分の水平走査期間は、次の表示フレームにおいて処理される。
【0066】
トランジスタがオン状態(導通状態)にあるとは、主電極端間(ソース/ドレイン領域間)にチャネルが形成されている状態を意味し、一方の主電極端から他方の主電極端に電流が流れているか否かは問わない。トランジスタがオフ状態(非導通状態)にあるとは、主電極端間にチャネルが形成されていない状態を意味する。或るトランジスタの主電極端が他のトランジスタの主電極端に接続されているとは、或るトランジスタのソース/ドレイン領域と他のトランジスタのソース/ドレイン領域とが同じ領域を占めている形態を包含する。更には、ソース/ドレイン領域は、不純物を含有したポリシリコンやアモルファスシリコン等の導電性物質から構成することができるだけでなく、金属、合金、導電性粒子、これらの積層構造、有機材料(導電性高分子)から成る層から構成することができる。又、以下の説明で用いるタイミングチャートにおいて、各期間を示す横軸の長さ(時間長)は模式的なものであり、各期間の時間長の割合を示すものではない。
【0067】
画素回路10の駆動方法においては、前処理工程、閾値補正処理工程、映像信号書込み処理工程、移動度補正工程、発光工程を有する。前処理工程、閾値補正処理工程、映像信号書込み処理工程、及び、移動度補正工程を纏めて非発光工程とも称する。画素回路10の構成によっては映像信号書込み処理工程と移動度補正工程とを同時に行なうこともある。各工程について概説する。
【0068】
因みに、駆動トランジスタTRDは、発光素子の発光状態においては、以下の式(1)に従ってドレイン電流Idsを流すように駆動される。ドレイン電流Idsが発光部ELPを流れることで発光部ELPが発光する。更には、ドレイン電流Idsの値の大小によって、発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。発光素子の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの2つの主電極端(ソース/ドレイン領域)は、一方(発光部ELPのアノード端側)がソース端(ソース領域)として働き、他方がドレイン端(ドレイン領域)として働く。説明の便宜のため、以下の説明において、駆動トランジスタTRDの一方の主電極端を単にソース端と称し、他方の主電極端を単にドレイン端と呼ぶ場合がある。尚、実効的な移動度μ、チャネル長L、チャネル幅W、制御電極端の電位(ゲート電位Vg)とソース端の電位(ソース電位Vs)との電位差(ゲート・ソース間電圧)Vgs、閾値電圧Vth、等価容量Cox((ゲート絶縁層の比誘電率)×(真空の誘電率)/(ゲート絶縁層の厚さ))、係数k≡(1/2)・(W/L)・Coxとする。
【0069】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2 (1)
【0070】
以下の説明では、特段の断りのない限り、発光部ELPの寄生容量の静電容量Celは、保持容量Ccsの静電容量Ccs及び駆動トランジスタTRDの寄生容量の一例であるゲート・ソース間の静電容量Cgsと比較して十分に大きな値であるとし、駆動トランジスタTRDのゲート端の電位(ゲート電位Vg)の変化に基づく駆動トランジスタTRDのソース領域(第2ノードND2)の電位(ソース電位Vs)の変化を考慮しない。
【0071】
〔前処理工程〕
第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを越え、且つ、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差が、発光部ELPの閾値電圧VthELを越えないように、第1ノードND1に第1ノード初期化電圧(Vofs)を印加し、第2ノードND2に第2ノード初期化電圧(Vini)を印加する。例えば、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号Vsigを0〜10ボルト、電源電圧Vccを20ボルト、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを3V、カソード電位Vcathを0ボルト、発光部ELPの閾値電圧VthELを3ボルトとする。この場合、駆動トランジスタTRDの制御入力端の電位(ゲート電位Vg、つまり第1ノードND1の電位)を初期化するための電位Vofsは0ボルト、駆動トランジスタTRDのソース端の電位(ソース電位Vsつまり第2ノードND2の電位)を初期化するための電位Viniは−10ボルトとする。
【0072】
〔閾値補正処理工程〕
第1ノードND1の電位を保った状態で、駆動トランジスタTRDにドレイン電流Idsを流して、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって第2ノードND2の電位を変化させる。この際には、前処理工程後の第2ノードND2の電位に駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを加えた電圧を超える電圧(例えば発光時の電源電圧)を、駆動トランジスタTRDの主電極端の他方(第2ノードND2とは反対側)に印加する。この閾値補正処理工程において、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差(換言すれば、駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs)が駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthに近づく程度は閾値補正処理の時間により左右される。よって、例えば閾値補正処理の時間を充分長く確保すれば第2ノードND2の電位は第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に達し、駆動トランジスタTRDはオフ状態となる。一方、例えば閾値補正処理の時間を短く設定せざるを得ない場合は、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthより大きく、駆動トランジスタTRDはオフ状態とはならない場合がある。閾値補正処理の結果として、必ずしも駆動トランジスタTRDがオフ状態となることを要しない。尚、閾値補正処理工程においては、好ましくは、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておくことで、発光部ELPが発光しないようにする。
【0073】
(Vofs−Vth)<(VthEL+Vcath) (2)
【0074】
〔映像信号書込み処理工程〕
書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSによりオン状態とされた書込トランジスタTRWを介して、映像信号線DTLから映像信号Vsigを第1ノードND1に印加し、第1ノードND1の電位をVsigへと上昇させる。この電第1ノードND1の電位変化分(ΔVin=Vsig−Vofs)に基づく電荷が、保持容量Ccs、発光部ELPの寄生容量Cel、駆動トランジスタTRDの寄生容量(例えばゲート・ソース間容量Cgs等)に振り分けられる。静電容量Celが、静電容量Ccs及びゲート・ソース間容量Cgsの静電容量Cgsと比較して十分に大きな値であれば、電位変化分(Vsig−Vofs)に基づく第2ノードND2の電位の変化は小さい。一般に、発光部ELPの寄生容量Celの静電容量Celは、保持容量Ccsの静電容量Ccs及びゲート・ソース間容量Cgsの静電容量Cgsよりも大きい。この点を勘案して、特段の必要がある場合を除き、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化は考慮しない。この場合、ゲート・ソース間電圧Vgsは、式(3)で表すことができる。
【0075】
Vg=Vsig
Vs ≒Vofs−Vth
Vgs≒Vsig−(Vofs−Vth) (3)
【0076】
〔移動度補正処理工程〕
書込トランジスタTRWを介して映像信号Vsigを保持容量Ccsの一端に供給しつつ(つまり映像信号Vsigと対応する駆動電圧を保持容量Ccsに書き込みつつ)、駆動トランジスタTRDを介して保持容量Ccsに電流を供給する。例えば、書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSによりオン状態とされた書込トランジスタTRWを介して映像信号線DTLから映像信号Vsigを第1ノードND1に供給した状態で、駆動トランジスタTRDに電源を供給しドレイン電流Idsを流して、第2ノードND2の電位を変化させ、所定期間経過後、書込トランジスタTRWをオフ状態にする。このときの第2ノードND2の電位変化分をΔV(=電位補正値、負帰還量)とする。移動度補正処理を実行するための所定期間は、表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。尚、この際には、好ましくは、式(2A)を満足するように移動度補正期間を決定する。こうすることで、移動度補正期間に発光部ELPが発光することはない。
【0077】
(Vofs−Vth+ΔV)<(VthEL+Vcath) (2A)
【0078】
駆動トランジスタTRDの移動度μの値が大きい場合は電位補正値ΔVは大きくなり、移動度μの値が小さい場合は電位補正値ΔVは小さくなる。このときの駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs(つまり第1ノードND1と第2ノードND2との電位差)は、式(4)で表すことができる。ゲート・ソース間電圧Vgsは発光時の輝度を規定するが、電位補正値ΔVは駆動トランジスタTRDのドレイン電流Idsに比例し、ドレイン電流Idsは移動度μに比例するので、結果的には、移動度μが大きいほど電位補正値ΔVが大きくなるので、画素回路10ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0079】
Vgs≒Vsig−(Vofs−Vth)−ΔV (4)
【0080】
〔発光工程〕
書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSにより書込トランジスタTRWをオフ状態とすることにより第1ノードND1を浮遊状態とし、駆動トランジスタTRDに電源を供給して駆動トランジスタTRDを介して、駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs(第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差)に応じた電流Idsを発光部ELPに流すことにより発光部ELPを駆動して発光させる。
【0081】
〔駆動回路の構成による相違点〕
ここで、それぞれ典型的な、5Tr/1C型、4Tr/1C型、3Tr/1C型、2Tr/1C型での相違点は以下の通りである。5Tr/1C型では、駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端と電源回路(電源部)との間に接続された第1トランジスタTR1(発光制御トランジスタ)と、第2ノード初期化電圧を印加する第2トランジスタTR2と、第1ノード初期化電圧を印加する第3トランジスタTR3とを設ける。第1トランジスタTR1、第2トランジスタTR2、第3トランジスタTR3は何れもスイッチングトランジスタである。第1トランジスタTR1は、発光期間にオン状態としておき、オフ状態にして非発光期間に入り、その後の閾値補正期間に一度オン状態にし、更に移動度補正期間以降(次の発光期間も)オン状態とする。第2トランジスタTR2は、第2ノードの初期化期間にのみオン状態としそれ以外はオフ状態とする。第3トランジスタTR3は、第1ノードの初期化期間から閾値補正期間に亘ってのみオン状態としそれ以外はオフ状態とする。書込トランジスタTRWは、映像信号書込み処理期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0082】
4Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第1ノード初期化電圧を印加する第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給される。第1ノードの初期化期間に第1ノード初期化電圧を映像信号線DTLから第1ノードに供給するべく、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第1ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0083】
3Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第2トランジスタTR2と第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧及び第2ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給される。映像信号線DTLの電位は、第2ノードの初期化期間に第2ノードを第2ノード初期化電圧に設定し、その後の第1ノードの初期化期間に第1ノードを第1ノード初期化電圧に設定するべく、第2ノード初期化電圧と対応した電圧Vofs_Hを供給しその後に第1ノード初期化電圧Vofs_L(=Vofs)にする。そして、これと対応して、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間及び第2ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第2ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0084】
因みに、3Tr/1C型では、映像信号線DTLを利用して第2ノードND2の電位を変化させる。このため、保持容量Ccsの静電容量Ccsを、設計上、他の駆動回路よりも大きい値(例えば、静電容量Ccsを静電容量Celの約1/4〜1/3程度)に設定する。したがって、他の駆動回路よりも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化の程度が大きい点を考慮する。
【0085】
2Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第1トランジスタTR1と第2トランジスタTR2と第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給され、第2ノード初期化電圧は駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端を、第1電位Vcc_H(=5Tr/1C型のVcc)と第2電位Vcc_L(=5Tr/1C型のVini)でパルス駆動することで与えられる。駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端は、発光期間に第1電位Vcc_Hにされ、第2電位Vcc_Lにされることで非発光期間に入り、その後の閾値補正期間以降(次の発光期間も)に第1電位Vcc_Hにされる。第1ノードの初期化期間に第1ノード初期化電圧を映像信号線DTLから第1ノードに供給するべく、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第1ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0086】
尚、ここでは、駆動トランジスタの特性ばらつきとして、閾値電圧及び移動度の双方について補正処理を行なう場合で説明したが、何れか一方のみについて補正処理を行なうようにしてもよい。
【0087】
以上、好ましい例に基づき説明したが、これらの例に限定されるものではない。各例において説明した表示装置、表示素子、駆動回路を構成する各種の構成要素の構成、構造、発光部の駆動方法における工程は例示であり、適宜、変更することができる。
【0088】
又、5Tr/1C型、4Tr/1C型、及び、3Tr/1C型の動作においては、書込み処理と移動度補正を別個に行なってもよいし、2Tr/1C型と同様に、書込み処理において移動度補正処理を併せて行なってもよい。具体的には、第1トランジスタTR1(発光制御トランジスタ)をオン状態とした状態で、書込トランジスタTRWを介して、データ線DTLから映像信号VSigを第1ノードに印加すればよい。
【0089】
<具体的な適用例>
以下に、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正するための処理期間の設定自由度を拡大する画素回路の駆動技術の具体的な適用例について説明する。尚、アクティブマトリクス型の有機ELパネルを使用する表示装置においては、例えば、パネル両側或いは片側に配置されている垂直走査部によってトランジスタの制御入力端に供給する各種のゲート信号(制御パルス)を作り、画素回路10へ当該信号を印加する。更にはこのような有機ELパネルを使用する表示装置においては、素子数削減及び高精細化のため、2Tr/1C型の画素回路10を用いることがある。この点を勘案して、以下では、代表的に2Tr/1C型の構成への適用例で説明するが、5Tr/1C型等への適用も可能である。
【実施例1】
【0090】
[画素回路]
図4及び図5は、実施例1の画素回路10Aと、当該画素回路10Aを備えた表示装置の一形態を示す図である。画素回路10Aを画素アレイ部102に備える表示装置を実施例1の表示装置1Aと称する。図4は基本構成(1画素分)を示し、図5は具体的な構成(表示装置の全体)を示す。尚、表示パネル部100の基板101上において画素回路10Aの周辺部に設けられた垂直駆動部103と水平駆動部106も合わせて示している。
【0091】
表示装置1Aは、映像信号Vsig(詳しくは信号振幅ΔVin)に基づいて画素回路10A内の電気光学素子(本例では発光部ELPとして有機EL素子127を使用する)を発光させる。このため、表示装置1Aは、画素アレイ部102に行列状に配される画素回路10A内に、少なくとも、駆動電流を生成する駆動トランジスタ121(駆動トランジスタTRD)、駆動トランジスタ121の制御入力端(ゲート端が典型例)と出力端(ソース端が典型例)の間に接続された保持容量120(保持容量Ccs)、駆動トランジスタ121の出力端に接続された電気光学素子の一例である有機EL素子127(発光部ELP)、及び、保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込むサンプリングトランジスタ125(書込トランジスタTRW)を備える。この画素回路10Aにおいては、保持容量120に保持された情報に基づく駆動電流Idsを駆動トランジスタ121で生成して電気光学素子の一例である有機EL素子127に流すことで有機EL素子127を発光させる。
【0092】
サンプリングトランジスタ125で保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込むので、サンプリングトランジスタ125は、その入力端(ソース端もしくはドレイン端の一方)に信号電位(Vofs+ΔVin)を取り込み、その出力端(ソース端もしくはドレイン端の他方)に接続された保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込む。もちろん、サンプリングトランジスタ125の出力端は、駆動トランジスタ121の制御入力端にも接続されている。
【0093】
ここで示した画素回路10Aの接続構成は、最も基本的な構成を示したもので、画素回路10Aは、少なくとも前述の各構成要素を含むものであればよく、これらの構成要素以外(つまり他の構成要素)が含まれていてもよい。又、「接続」は、直接に接続されている場合に限らず、他の構成要素を介在して接続されている場合でもよい。例えば、接続間には、必要に応じて更に、スイッチング用のトランジスタや、ある機能を持った機能部等を介在させる等の変更が加えられることがある。典型的には、表示期間(換言すれば非発光時間)を動的に制御するためにスイッチング用のトランジスタを、駆動トランジスタ121の出力端と電気光学素子(有機EL素子127)と間に、もしくは駆動トランジスタ121の電源供給端(ドレイン端が典型例)と電源供給用の配線である電源線PWL(本例では電源供給線105DSL)との間に配することがある。このような変形態様の画素回路であっても、後述の各実施例で説明する構成や作用を実現し得るものである限り、それらの変形態様も、本開示に係る表示装置の一実施形態を実現する画素回路10である。
【0094】
又、画素回路10Aを駆動するための周辺部には、例えば、サンプリングトランジスタ125を水平周期で順次制御することで画素回路10Aを線順次走査して、1行分の各保持容量120に映像信号Vsigの信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込む書込走査部104、及び、書込走査部104での線順次走査に合わせて1行分の各駆動トランジスタ121の電源供給端に印加される電源供給を制御するための走査駆動パルス(電源駆動パルスDSL)を出力する駆動走査部105を具備する制御部109を設ける。又、制御部109には、書込走査部104での線順次走査に合わせて各水平周期内で基準電位(Vofs)と信号電位(Vofs+ΔVin)で切り替わる映像信号Vsigがサンプリングトランジスタ125に供給されるように制御する水平駆動部106を設ける。
【0095】
制御部109は、好ましくは、保持容量120に信号振幅ΔVinに対応する情報が書き込まれた時点でサンプリングトランジスタ125を非導通状態にして駆動トランジスタ121の制御入力端への映像信号Vsigの供給を停止させ、駆動トランジスタ121の出力端の電位変動に制御入力端の電位が連動するブートストラップ動作を行なうように制御するのがよい。制御部109は、好ましくは、ブートストラップ動作を、サンプリング動作の終了後の発光開始の初期でも実行するようにする。即ち、信号電位(Vofs+ΔVin)がサンプリングトランジスタ125に供給されている状態でサンプリングトランジスタ125を導通状態にした後にサンプリングトランジスタ125を非導通状態にすることで、駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位差が一定に維持されるようにする。
【0096】
又、制御部109は、好ましくはブートストラップ動作を、発光期間において電気光学素子(有機EL素子127)の経時変動補正動作を実現するように制御する。このため、制御部109は、保持容量120に保持された情報に基づく駆動電流Idsが電気光学素子(有機EL素子127)に流れている期間は継続的にサンプリングトランジスタ125を非導通状態にしておくことで、制御入力端と出力端の電圧を一定に維持可能にして電気光学素子の経時変動補正動作を実現するとよい。発光時における保持容量120のブートストラップ動作により有機EL素子127の電流−電圧特性が経時変動しても駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位差をブートストラップした保持容量120により一定に保つことで、常に一定の発光輝度を保つようにする。又、好ましくは、制御部109は、基準電位(=第1ノード初期化電圧Vofs)がサンプリングトランジスタ125の入力端(ソース端が典型例)に供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに対応する電圧を保持容量120に保持するための閾値補正動作を行なうように制御する。
【0097】
この閾値補正動作は、必要に応じて、信号振幅ΔVinに対応する情報の保持容量120への書込みに先行する複数の水平周期で繰り返し実行するとよい。ここで「必要に応じて」とは、1水平周期内の閾値補正期間では駆動トランジスタ121の閾値電圧に相当する電圧を十分に保持容量120へ保持させることができない場合を意味する。閾値補正動作の複数回の実行により、確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持させる。
【0098】
又、更に好ましくは、制御部109は、閾値補正動作に先立って、サンプリングトランジスタ125の入力端に基準電位(Vofs)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させて閾値補正用の準備動作(放電動作や初期化動作)を実行するように制御する。閾値補正動作前に駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位を初期化しておく。より詳しくは、制御入力端と出力端と間に保持容量120を接続しておくことで、保持容量120の両端の電位差が閾値電圧Vth以上になるように設定する。
【0099】
尚、2Tr/1C駆動構成における閾値補正に当たっては、制御部109には、書込走査部104での線順次走査に合わせて1行分の各画素回路10Aに、駆動電流Idsを電気光学素子(有機EL素子127)に流すために使用される第1電位Vcc_Hと第1電位Vcc_Hとは異なる第2電位Vcc_Lとを切り替えて出力する駆動走査部105を設け、駆動トランジスタ121の電源供給端子に第1電位Vcc_Hに対応する電圧が供給され、かつサンプリングトランジスタ121に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで閾値補正動作を行なうように制御するのがよい。又、2TR駆動構成における閾値補正の準備動作に当たっては、駆動トランジスタ121の電源供給端に第2電位Vcc_L(=第2ノード初期化電圧Vini)に対応する電圧が供給され、かつサンプリングトランジスタ125に基準電位(Vofs)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させて、駆動トランジスタ121の制御入力端(つまり第1ノードND1)の電位を基準電位(Vofs)に、又出力端(つまり第2ノードND2)の電位を第2電位Vcc_Lに初期化するのがよい。
【0100】
更に好ましくは、制御部109は、閾値補正動作の後、駆動トランジスタ121に第1電位Vcc_Hに対応する電圧が供給され、サンプリングトランジスタ125に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで保持容量120に信号振幅ΔVinの情報を書き込む際、駆動トランジスタ121の移動度μに対する補正分を保持容量120に書き込まれる情報に加えるように制御する。この際には、サンプリングトランジスタ125に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯内の所定位置で、その時間帯より短い期間だけサンプリングトランジスタ125を導通させるとよい。以下2Tr/1C駆動構成での画素回路10Aの一例について具体的に説明する。
【0101】
画素回路10Aは、基本的にnチャネル型の薄膜電界効果トランジスタで駆動トランジスタが構成されている。又、有機EL素子の経時劣化による当該有機EL素子への駆動電流Idsの変動を抑制するための回路、即ち電気光学素子の一例である有機EL素子の電流−電圧特性の変化を補正して駆動電流Idsを一定に維持する駆動信号一定化回路(その1)(本明細書の特性補正部の一例)を備え、又駆動トランジスタの特性変動(閾値電圧ばらつきや移動度ばらつき)による駆動電流変動を防ぐ閾値補正機能や移動度補正機能を実現して駆動電流Idsを一定に維持する駆動方式を採用した点に特徴を有する。
【0102】
駆動トランジスタ121の特性変動(例えば閾値電圧や移動度等のばらつきや変動)による駆動電流Idsに与える影響を抑制する方法としては、2Tr構成の駆動回路をそのまま駆動信号一定化回路(その1)として採用しつつ、各トランジスタ(駆動トランジスタ121及びサンプリングトランジスタ125)の駆動タイミングを工夫することで対処する。画素回路10Aは、2Tr駆動の構成であり、素子数や配線数が少ないため、高精細化が可能であることに加えて、映像信号Vsigの劣化なくサンプリングできるため、良好な画質を得ることができる。
【0103】
又、画素回路10Aは、保持容量120の接続態様に特徴を有し、有機EL素子127の経時劣化による駆動電流変動を防ぐ回路として、駆動信号一定化回路(その2)の一例であるブートストラップ回路を構成している。有機EL素子の電流−電圧特性に経時変化があった場合でも駆動電流を一定にする(駆動電流変動を防ぐ)ブートストラップ機能を実現する駆動信号一定化回路(その2)を備えた点に特徴を有する。
【0104】
駆動トランジスタを始めとする各トランジスタとしてはFET(電界効果トランジスタ)を使用する。この場合、駆動トランジスタについては、ゲート端を制御入力端として取り扱い、ソース端及びドレイン端の何れか一方(ここではソース端とする)を出力端として取り扱い、他方を電源供給端(ここではドレイン端とする)として取り扱う。
【0105】
具体的には図4及び図5に示すように、画素回路10Aは、それぞれnチャネル型の駆動トランジスタ121及びサンプリングトランジスタ125と、電流が流れることで発光する電気光学素子の一例である有機EL素子127とを有する。一般に、有機EL素子127は整流性があるためダイオードの記号で表している。尚、有機EL素子127には、寄生容量Celが存在する。図では、この寄生容量Celを有機EL素子127(ダイオード状のもの)と並列に示す。
【0106】
駆動トランジスタ121は、ドレイン端Dが第1電位Vcc_H或いは第2電位Vcc_Lを供給する電源供給線105DSLに接続され、ソース端Sが、有機EL素子127のアノード端Aに接続され(その接続点は第2ノードND2でありノードND122とする)、有機EL素子127のカソード端Kが基準電位を供給する全画素回路10A共通のカソード配線cath(電位はカソード電位Vcath、例えばGND)に接続されている。尚、カソード配線cathは、それ用の単一層の配線(上層配線)のみとしてもよいし、例えばアノード用の配線が形成されるアノード層に、カソード配線用の補助配線を設けてカソード配線の抵抗値を低減するようにしてもよい。この補助配線は、画素アレイ部102(表示エリア)内に格子状又は列又は行状に配線され、上層配線と同電位で固定電位である。
【0107】
サンプリングトランジスタ125は、ゲート端Gが書込走査部104からの書込走査線104WSに接続され、ドレイン端Dが映像信号線106HS(映像信号線DTL)に接続され、ソース端Sが駆動トランジスタ121のゲート端Gに接続されている(その接続点は第1ノードND1でありノードND121とする)。サンプリングトランジスタ125のゲート端Gには、書込走査部104からアクティブHの書込駆動パルスWSが供給される。サンプリングトランジスタ125は、ソース端Sとドレイン端Dとを逆転させた接続態様とすることもできる。
【0108】
駆動トランジスタ121のドレイン端Dは、電源スキャナとして機能する駆動走査部105からの電源供給線105DSLに接続されている。電源供給線105DSLは、この電源供給線105DSLそのものが、駆動トランジスタ121に対しての電源供給能力を備える点に特徴を有する。駆動走査部105は、駆動トランジスタ121のドレイン端Dに対して、それぞれ電源電圧に相当する高電圧側の第1電位Vcc_Hと閾値補正に先立つ準備動作に利用される低電圧側の第2電位Vcc_L(初期化電圧もしくはイニシャル電圧とも称される)とを切り替えて供給する。
【0109】
駆動トランジスタ121のドレイン端D側(電源回路側)を第1電位Vcc_Hと第2電位Vcc_Lの2値をとる電源駆動パルスDSLで駆動することで、閾値補正に先立つ準備動作を行なうことを可能にしている。第2電位Vcc_Lとしては、映像信号線106HSにおける映像信号Vsigの基準電位(Vofs)より十分低い電位とする。具体的には、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgs(ゲート電位Vgとソース電位Vsの差)が駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthより大きくなるように、電源供給線105DSLの低電位側の第2電位Vcc_Lを設定する。尚、基準電位(Vofs)は、閾値補正動作に先立つ初期化動作に利用するとともに映像信号線106HSを予めプリチャージにしておくためにも利用する。
【0110】
このような画素回路10Aでは、有機EL素子127を駆動するときには、駆動トランジスタ121のドレイン端Dに第1電位Vcc_Hが供給され、ソース端Sが有機EL素子127のアノード端A側に接続されることで、全体としてソースフォロワ回路を形成するようになっている。
【0111】
このような画素回路10Aを採用する場合、駆動トランジスタ121の他に走査用に1つのスイッチングトランジスタ(サンプリングトランジスタ125)を使用する2TR駆動の構成を採るとともに、各スイッチングトランジスタを制御する電源駆動パルスDSL及び書込駆動パルスWSのオン/オフタイミングの設定により、有機EL素子127の経時劣化や駆動トランジスタ121の特性変動(例えば閾値電圧や移動度等のばらつきや変動)による駆動電流Idsに与える影響を防ぐ。
【0112】
[画素回路の比較例の動作]
図6は、画素回路10Aに関する駆動タイミングの一例として、線順次方式で信号振幅ΔVinの情報を保持容量120に書き込む際の比較例の動作を説明するタイミングチャート(理想状態)である。図7は、図6に示したタイミングチャートの主要な期間における等価回路と動作状態を説明する図である。図6においては、時間軸を共通にして、書込走査線104WSの電位変化、電源供給線105DSLの電位変化、映像信号線106HSの電位変化を表してある。これらの電位変化と並行に、駆動トランジスタ121のゲート電位Vg及びソース電位Vsの変化も表してある。基本的には、書込走査線104WSや電源供給線105DSLの1行ごとに、1水平走査期間だけ遅れて同じような駆動を行なう。以下では、画素回路10Aにおける比較例の動作について説明するが、後述する各実施例において特段の断りのない事項は、ここで説明する動作が同様に適用し得る。
【0113】
図6中の信号のように各パルスのタイミングによって有機EL素子127に流れる電流値をコントロールする。図6のタイミング例では、電源駆動パルスDSLを第2電位Vcc_Lとすることで消光及びノードND122を初期化した後に、第1ノード初期化電圧Vofsを映像信号線106HSに印加している際にサンプリングトランジスタ125をオン状態としてノードND121を初期化し、その状態で電源駆動パルスDSLを第1電位Vcc_Hとすることで閾値補正を行なう。その後、サンプリングトランジスタ125をオフ状態とし、映像信号線106HSに映像信号Vsigを印加する。その状態でサンプリングトランジスタ125をオン状態とすることにより信号を書き込むと同時に移動度補正を行なう。信号を書き込んだ後、サンプリングトランジスタ125をオフ状態にすると発光を開始する。このように移動度補正や閾値補正等、パルスの位相差によって駆動をコントロールする。
【0114】
以下、閾値補正及び移動度補正に着目して動作を詳しく説明する。画素回路10Aにおいて、駆動タイミングとしては、先ず、サンプリングトランジスタ125は、書込走査線104WSから供給された書込駆動パルスWSに応じて導通し、映像信号線106HSから供給された映像信号Vsigをサンプリングして保持容量120に保持する。最初に、以下では、説明や理解を容易にするため、特段の断りのない限り、書込みゲインが1(理想値)であると仮定して、保持容量120に信号振幅ΔVinの情報を、書き込む、保持する、あるいはサンプリングする等と簡潔に記して説明する。書込みゲインが1未満の場合、保持容量120には信号振幅ΔVinの大きさそのものではなく、信号振幅ΔVinの大きさに対応するゲイン倍された情報が保持されることになる。
【0115】
画素回路10Aに対する駆動タイミングは、映像信号Vsigの信号振幅ΔVinの情報を保持容量120に書き込む際に、順次走査の観点からは、1行分の映像信号を同時に各列の映像信号線106HSに伝達する線順次駆動を行なう。特に、2Tr構成の画素回路10Aにおける駆動タイミングでの閾値補正と移動度補正を行なう際の基本的な考え方においては、先ず、映像信号Vsigを基準電位(Vofs)と信号電位(Vofs+ΔVin)とを1H期間内において時分割で有するものとする。具体的には、映像信号Vsigが非有効期間である基準電位(Vofs)にある期間を1水平期間の前半部とし、有効期間である信号電位(Vsig=Vofs+ΔVin)にある期間を1水平期間の後半部とする。1水平期間を前半部と後半部に分ける際は、典型的にはほぼ1/2期間ずつ分けるがこのことは必須でなく、前半部よりも後半部の方をより長くしてもよいし、逆に、前半部よりも後半部の方をより短くしてもよい。
【0116】
信号書込みに用いる書込駆動パルスWSを閾値補正や移動度補正にも用いることとし、1H期間内に2回、書込駆動パルスWSをアクティブにしてサンプリングトランジスタ125をオンする。そして、1回目のオンタイミングにて閾値補正を行ない、2回目のオンタイミングにて信号電圧書込みと移動度補正を同時に行なう。その後、駆動トランジスタ121は、第1電位(高電位側)にある電源供給線105DSLから電流の供給を受け保持容量120に保持された信号電位(映像信号Vsigの有効期間の電位に対応する電位)に応じて駆動電流Idsを有機EL素子127に流す。尚、1H期間内に2回、書込駆動パルスWSをアクティブにするのではなく、サンプリングトランジスタ125のオン状態を維持したまま、映像信号線106HSの電位を、有機EL素子127における輝度を制御するための信号電位(=Vofs+ΔVin)としてもよい。
【0117】
例えば、有機EL素子127の発光状態は、電源供給線105DSLが第1電位Vcc_Hであり、サンプリングトランジスタ125がオフ状態である(図6(A)を参照)。このとき、駆動トランジスタ121は飽和領域で動作するように設定されているため、有機EL素子127に流れる電流Idsは駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgs(ノードND121とノードND122との間の電圧)に応じて決まる式(1)に示される値となる。その後、垂直駆動部103は、電源供給線105DSLが第1電位Vcc_Hにありかつ映像信号線106HSが映像信号Vsigの非有効期間である基準電位(Vofs)にある時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させる制御信号として書込駆動パルスWSを出力して、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持しておく(図6(D)を参照)。この動作が閾値補正機能を実現する。この閾値補正機能により、画素回路10Aごとにばらつく駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの影響をキャンセルすることができる。
【0118】
垂直駆動部103は、信号振幅ΔVinのサンプリングに先行する複数の水平期間で閾値補正動作を繰り返し実行して確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持するようにするのがよい。閾値補正動作を複数回実行することで、十分に長い書込み時間を確保する。こうすることで、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を確実に保持容量120に予め保持することができる。
【0119】
保持された閾値電圧Vthに相当する電圧は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthのキャンセルに用いられる。したがって、画素回路10Aごとに駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthがばらついていても、画素回路10Aごとに完全にキャンセルされるため、画像のユニフォーミティすなわち表示装置の画面全体に亘る発光輝度の均一性が高まる。特に信号電位が低階調のときに現れがちな輝度むらを防ぐことができる。
【0120】
好ましくは、垂直駆動部103は、閾値補正動作に先立って、電源供給線105DSLが第2電位にありかつ映像信号線106HSが映像信号Vsigの非有効期間である基準電位(Vofs)にある時間帯で、書込駆動パルスWSをアクティブ(本例ではHレベル)にしてサンプリングトランジスタ125を導通させ、その後に書込駆動パルスWSをアクティブHにしたままで電源供給線105DSLを第1電位に設定する。
【0121】
こうすることで、ソース端Sを基準電位(Vofs)より十分低い第2電位Vcc_Lにセットし(放電期間C=第2ノード初期化期間)(図6(B)を参照)、且つ、駆動トランジスタ121のゲート端Gを基準電位(Vofs)にセットしてから(初期化期間D=第1ノード初期化期間)(図6(C)を参照)、閾値補正動作を開始する(閾値補正期間E)。このようなゲート電位及びソース電位のリセット動作(初期化動作)により、後続する閾値補正動作を確実に実行することができる。放電期間Cと初期化期間Dとを合わせて、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgとソース電位Vsを初期化する閾値補正準備期間(=前処理期間)とも称する。因みに、図示した例は、第1ノードのであるノードND121への初期化動作(初期化期間D)は3回繰り返しており、放電期間Cの開始から最後の初期化期間Dが完了するまでが閾値補正準備期間となる。
【0122】
閾値補正期間Eでは、電源供給線105DSLの電位が低電位側の第2電位Vcc_Lから高電位側の第1電位Vcc_Hに遷移することで、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが上昇を開始する。即ち、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号Vsigの基準電位(Vofs)に保持されており、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れようとする。カットオフすると駆動トランジスタ121のソース電位Vsは“Vofs−Vth”となる。閾値補正期間Eでは、ドレイン電流が専ら保持容量120側(Ccs<<Cel時)に流れ、有機EL素子127側には流れないようにするため、有機EL素子127がカットオフとなるように全画素共通の接地配線cathの電位Vcathを設定しておく。
【0123】
有機EL素子127の等価回路はダイオードと寄生容量Celの並列回路で表されるため、“Vel≦Vcath+VthEL”である限り、つまり、有機EL素子127のリーク電流が駆動トランジスタ121に流れる電流よりもかなり小さい限り、駆動トランジスタ121のドレイン電流Idsは保持容量120と寄生容量Celを充電するために使われる。この結果、有機EL素子127のアノード端Aの電圧VelつまりノードND122の電位は、時間とともに上昇してゆく。そして、ノードND122の電位(ソース電位Vs)とノードND121の電圧(ゲート電位Vg)との電位差がちょうど閾値電圧Vthとなったところで駆動トランジスタ121はオン状態からオフ状態となり、ドレイン電流Idsは流れなくなり、閾値補正期間が終了する。つまり、一定時間経過後、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthという値をとる。
【0124】
ここで、閾値補正動作は1回のみ実行するものとすることもできるが、このことは必須ではない。1水平期間を処理サイクルとして、閾値補正動作を複数回(図は4回で示している)繰り返えしてもよい。例えば、実際には、閾値電圧Vthに相当する電圧が、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間に接続された保持容量120に書き込まれることになる。しかしながら、閾値補正期間Eは、書込駆動パルスWSをアクティブHにしたタイミングからインアクティブLに戻すタイミングまでであり、この期間が十分に確保されていないときには、それ以前に終了してしまう。この問題を解消するには、閾値補正動作を複数回繰り返すのがよい。
【0125】
閾値補正動作を複数回実行する場合に、1水平期間が閾値補正動作の処理サイクルとなるのは、閾値補正動作に先立って、1水平期間の前半部で映像信号線106HSを介して基準電位(Vofs)を供給しソース電位を第2電位Vcc_Lにセットする初期化動作を経るからである。必然的に、閾値補正期間は、1水平期間よりも短くなってしまう。したがって、保持容量120の静電容量Ccsや第2電位Vcc_Lの大きさ関係やその他の要因で、この短い1回分の閾値補正動作期間では、閾値電圧Vthに対応する正確な電圧を保持容量120に保持仕切れないケースも起こり得る。閾値補正動作を複数回実行するのが好ましいのは、この対処のためである。即ち、信号振幅ΔVinの保持容量120へのサンプリング(信号書込み)に先行する複数の水平周期で、閾値補正動作を繰り返し実行することで確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持させるのが好ましい。
【0126】
例えば、第1閾値補正期間E_1ではゲート・ソース間電圧VgsがVx1(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが低電位側の第2電位Vcc_Lから“Vofs−Vx1”になったときに終わってしまう(図6(D)を参照)。このため、第1閾値補正期間E_1が完了した時点では、Vx1が保持容量120に書き込まれる。
【0127】
次に、駆動走査部105は、1水平期間の後半部で、書込駆動パルスWSをインアクティブLに切り替え、さらに水平駆動部106は、映像信号線106HSの電位を基準電位(Vofs)から映像信号Vsig(=Vofs+ΔVin)に切り替える(図6(E)を参照)。これにより、映像信号線106HSが映像信号Vsigの電位に変化する一方、書込走査線104WSの電位(書込駆動パルスWS)はローレベルになる。
【0128】
このときには、サンプリングトランジスタ125は非導通(オフ)状態にあり、それ以前に保持容量120に保持されたVx1に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsが僅かに上昇する。この上昇分をVa1とすると、ソース電位Vsは“Vofs−Vx1+Va1”となる。さらに、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sとの間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、駆動トランジスタ121のソース電位Vsの変動にゲート電位Vgが連動することで、ゲート電位Vgが“Vofs+Va1”となる。
【0129】
次の第2閾値補正期間E_2では、第1閾値補正期間E_1と同様の動作をする。具体的には、先ず、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号Vsigの基準電位(Vofs)に保持されることとなり、ゲート電位Vgが直前の“Vg=基準電位(Vofs)+Va1”から基準電位(Vofs)に瞬時に切り替わる。駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sとの間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgの変動にソース電位Vsが連動することで、ソース電位Vsは、直前の“Vofs−Vx1+Va1”からVa1だけ低下するので、“Vofs−Vx1”となる。この後、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れようとする。しかしながら、ゲート・ソース間電圧VgsがVx2(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“Vofs−Vx2”になったときに終わってしまい、第2閾値補正期間E_2が完了した時点ではVx2が保持容量120に書き込まれる。次の第3閾値補正期間E_3の直前では、保持容量120に保持されたVx2に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsは“Vofs−Vx2+Va2”となり、ゲート電位Vgは“Vofs+Va2”となる。
【0130】
同様にして、次の第3閾値補正期間E_3では、ゲート・ソース間電圧VgsがVx3(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“Vofs−Vx3”になったときに終わってしまい、第3閾値補正期間E_3が完了した時点ではVx3が保持容量120に書き込まれる。次の第4閾値補正期間E_4の直前では、保持容量120に保持されたVx3に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsは“Vofs−Vx3+Va3”となり、ゲート電位Vgは“Vofs+Va3”となる。
【0131】
そして、次の第4閾値補正期間E_4では、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れる。カットオフすると駆動トランジスタ121のソース電位Vsは“Vofs−Vth”となり、ゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthと同じ状態になっている。第4閾値補正期間E_4が完了した時点で、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthが保持容量120に保持される。
【0132】
画素回路10Aにおいては、閾値補正機能に加えて、移動度補正機能を備えている。即ち、垂直駆動部103は、映像信号線106HSが映像信号Vsigの有効期間である信号電位(Vofs+ΔVin)にある時間帯にサンプリングトランジスタ125を導通状態にするため、書込走査線104WSに供給する書込駆動パルスWSを、上述の時間帯より短い期間だけアクティブ(本例ではHレベル)にする。この期間では、駆動トランジスタ121の制御入力端に信号電位(Vofs+ΔVin)を供給した状態で駆動トランジスタ121を介して有機EL素子127の寄生容量Cel及び保持容量120を充電する(図6(F)を参照)。この書込駆動パルスWSのアクティブ期間(サンプリング期間でもあり移動度補正期間でもある)を適切に設定することで、保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を保持する際、同時に駆動トランジスタ121の移動度μに対する補正を加えることができる。水平駆動部106により映像信号線106HSに信号電位(Vofs+ΔVin)を実際に供給して、書込駆動パルスWSをアクティブHにする期間を、保持容量120への信号振幅ΔVinの書込み期間(サンプリング期間とも称する)とする。
【0133】
特に、画素回路10Aにおける駆動タイミングでは、電源供給線105DSLが高電位側である第1電位Vcc_Hにあり、かつ、映像信号Vsigが有効期間にある時間帯内(信号振幅ΔVinの期間)で書込駆動パルスWSをアクティブにしている。つまり、その結果、移動度補正時間(サンプリング期間も)は、映像信号線106HSの電位が、映像信号Vsigの有効期間の信号電位(Vofs+ΔVin)にある時間幅と書込駆動パルスWSのアクティブ期間の両者が重なった範囲で決まる。特に、映像信号線106HSが信号電位にある時間幅の中に入るように書込駆動パルスWSのアクティブ期間幅を細めに決めているため、結果的に移動度補正時間は書込駆動パルスWSで決まる。正確には、移動度補正時間(サンプリング期間も)は、書込駆動パルスWS立ち上がってサンプリングトランジスタ125がオンしてから、同じく書込駆動パルスWSが立ち下がってサンプリングトランジスタ125がオフするまでの時間となる。因みに、図では、第4閾値補正期間E_4の後で書込駆動パルスWSを一端インアクティブLにしているが、このことは必須でなく、アクティブHのままにして、映像信号Vsigを基準電位(Vofs)から有効期間の信号電位(Vofs+ΔVin)に切り替えてもよい。
【0134】
具体的には、サンプリング期間においては、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgが信号電位(Vsig:Vofs+ΔVin)にある状態でサンプリングトランジスタ125が導通(オン)状態となる。したがって、書込み&移動度補正期間Hでは、駆動トランジスタ121のゲート端Gが信号電位(Vofs+ΔVin)に固定された状態で、駆動トランジスタ121に駆動電流Idsが流れる。信号振幅ΔVinの情報は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに足し込む形で保持される。この結果、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの変動は常にキャンセルされる形となるので、閾値補正を行なっていることになる。この閾値補正によって、保持容量120に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、“Vsig+Vth”=“ΔVin+Vth”となる。又、同時に、このサンプリング期間で移動度補正を実行するので、サンプリング期間は移動度補正期間を兼ねることとなる(書込み&移動度補正期間H)。
【0135】
ここで、有機EL素子127の閾値電圧をVthELとしたとき、“Vofs−Vth<VthEL”と設定しておくことで、有機EL素子127は、逆バイアス状態におかれ、カットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にあるため、発光することはなく、又、ダイオード特性ではなく単純な容量特性を示す。よって駆動トランジスタ121に流れるドレイン電流(駆動電流Ids)は保持容量120の静電容量Ccsと有機EL素子127の寄生容量(等価容量)Celの静電容量Celの両者を結合した容量“C=Ccs+Cel”に書き込まれていく。これにより、駆動トランジスタ121のドレイン電流は有機EL素子127の寄生容量Celに流れ込み充電を開始する。その結果、駆動トランジスタ121のソース電位Vsは上昇していく。
【0136】
図6のタイミングチャートでは、この上昇分をΔVで表してある。この上昇分、即ち移動度補正パラメータである電位補正値ΔVは、閾値補正によって保持容量120に保持されるゲート・ソース間電圧“Vgs=ΔVin+Vth”から差し引かれることになり、“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”となるので、負帰還をかけたことになる。このとき、駆動トランジスタ121のソース電位Vsは、ゲート電位Vgから保持容量に保持される電圧“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”を差し引いた値“−Vth+ΔV”となる。
【0137】
このようにして、画素回路10Aにおける駆動タイミングでは、書込み&移動度補正期間Hにおいて、信号振幅ΔVinのサンプリングと移動度μを補正するΔV(負帰還量、移動度補正パラメータ)の調整が行なわれる。書込走査部104は、書込み&移動度補正期間Hの時間幅を調整可能であり、これにより保持容量120に対する駆動電流Idsの負帰還量を最適化することができる。
【0138】
電位補正値ΔVはΔV≒Ids・t/Celである。この式から明らかなように、駆動トランジスタ121のドレイン・ソース間電流である駆動電流Idsが大きい程、電位補正値ΔVは大きくなる。逆に、駆動トランジスタ121の駆動電流Idsが小さいとき、電位補正値ΔVは小さくなる。このように、電位補正値ΔVは駆動電流Idsに応じて決まる。信号振幅ΔVinが大きいほど駆動電流Idsは大きくなり、電位補正値ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正を実現できる。その際、書込み&移動度補正期間Hは必ずしも一定である必要はなく、逆に駆動電流Idsに応じて調整することが好ましい場合がある。例えば、駆動電流Idsが大きい場合、移動度補正期間tは短めにし、逆に駆動電流Idsが小さくなると、書込み&移動度補正期間Hは長めに設定するのがよい。
【0139】
又、電位補正値ΔVは、Ids・t/Celであり、画素回路10Aごとに移動度μのばらつきに起因して駆動電流Idsがばらつく場合でも、それぞれに応じた電位補正値ΔVとなるので、画素回路10Aごとの移動度μのばらつきを補正することができる。つまり、信号振幅ΔVinを一定とした場合、駆動トランジスタ121の移動度μが大きいほど電位補正値ΔVの絶対値が大きくなる。換言すると、移動度μが大きいほど電位補正値ΔVが大きくなるので、画素回路10Aごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0140】
画素回路10Aはブートストラップ機能も備えている。即ち、書込走査部104は、保持容量120に信号振幅ΔVinの情報が保持された段階で書込走査線104WSに対する書込駆動パルスWSの印加を解除し(即ちインアクティブL(ロー)にして)、サンプリングトランジスタ125を非導通状態にして駆動トランジスタ121のゲート端Gを映像信号線106HSから電気的に切り離す(発光期間I:図6(G)を参照)。発光期間Iに進むと、水平駆動部106は、その後の適当な時点で映像信号線106HSの電位を基準電位(Vofs)に戻す。
【0141】
有機EL素子127の発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。以上によって、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子127の発光の動作が完了する。この後、次のフレーム(もしくはフィールド)に移って、再び、閾値補正準備動作、閾値補正動作、移動度補正動作、及び発光動作が繰り返される。
【0142】
発光期間Iでは、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号線106HSから切り離される。駆動トランジスタ121のゲート端Gへの信号電位(Vofs+ΔVin)の印加が解除されるので、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgは上昇可能となる。駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、ブートストラップ動作が行なわれる。ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、駆動トランジスタ121のソース電位Vsの変動にゲート電位Vgが連動するようになり、ゲート・ソース間電圧Vgsを一定に維持することができる。このとき、駆動トランジスタ121に流れる駆動電流Idsは有機EL素子127に流れ、有機EL素子127のアノード電位は駆動電流Idsに応じて上昇する。この上昇分をVelとする。やがて、ソース電位Vsの上昇に伴い、有機EL素子127の逆バイアス状態は解消されるので、駆動電流Idsの流入により有機EL素子127は実際に発光を開始する。
【0143】
ここで、駆動電流Ids対ゲート電圧Vgsの関係は、先のトランジスタ特性を表した式(1)に“Vsig+Vth−ΔV”或いは“ΔVin+Vth−ΔV”を代入することで、式(5A)或いは式(5B)(両式を纏めて式(5)と記す)のように表すことができる。
【0144】
Ids=k・μ・(Vsig−Vofs−ΔV)2 (5A)
Ids=k・μ・(ΔVin−Vofs−ΔV)2 (5B)
【0145】
この式(5)から、閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、有機EL素子127に供給される駆動電流Idsは駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに依存しないことが分かる。即ち、有機EL素子127を流れる電流Idsは、例えば、Vofsを0ボルトに設定したとした場合、有機EL素子127における輝度を制御するための映像信号Vsigの値から、駆動トランジスタ121の移動度μに起因した第2ノードND2(駆動トランジスタ121のソース端)における電位補正値ΔVの値を減じた値の2乗に比例する。換言すると、有機EL素子127を流れる電流Idsは、有機EL素子127の閾値電圧VthEL及び駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthには依存しない。即ち、有機EL素子127の発光量(輝度)は、有機EL素子127の閾値電圧VthELの影響及び駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの影響を受けない。そして、第(n,m)番目の有機EL素子127の輝度は、電流Idsに対応した値である。
【0146】
しかも、移動度μの大きな駆動トランジスタ121ほど、電位補正値ΔVが大きくなるので、ゲート・ソース間電圧Vgsの値が小さくなる。したがって、式(5)において、移動度μの値が大きくとも、(Vsig−Vofs−ΔV)2の値が小さくなる結果、ドレイン電流Idsを補正することができる。即ち、移動度μの異なる駆動トランジスタ121においても、映像信号Vsigの値が同じであれば、ドレイン電流Idsが略同じとなる結果、有機EL素子127を流れ、有機EL素子127の輝度を制御する電流Idsが均一化される。即ち、移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因する有機EL素子127の輝度のばらつきを補正することができる。
【0147】
又、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果により、発光期間の最初でブートストラップ動作が行なわれ、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”を一定に維持したまま、駆動トランジスタ121のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇する。駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“−Vth+ΔV+Vel”となることで、ゲート電位Vgは“ΔVin+Vel”となる。このとき、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsは一定であるので、駆動トランジスタ121は、一定電流(駆動電流Ids)を有機EL素子127に流す。その結果、有機EL素子127のアノード端Aの電位(=ノードND122の電位)は、有機EL素子127に飽和状態での駆動電流Idsという電流が流れ得る電圧まで上昇する。
【0148】
ここで、有機EL素子127は、発光時間が長くなるとそのI−V特性が変化してしまう。そのため、時間の経過とともに、ノードND122の電位も変化する。しかしながら、このような有機EL素子127の経時劣化によりそのアノード電位が変動しても、保持容量120に保持されたゲート・ソース間電圧Vgsは常に“ΔVin+Vth−ΔV”で一定に維持される。駆動トランジスタ121が定電流源として動作することから、有機EL素子127のI−V特性が経時変化し、これに伴って駆動トランジスタ121のソース電位Vsが変化したとしても、保持容量120によって駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電位Vgsが一定(≒ΔVin+Vth−ΔV)に保たれているため、有機EL素子127に流れる電流は変わらず、したがって有機EL素子127の発光輝度も一定に保たれる。実際にはブートストラップゲインは「1」よりも小さいので、ゲート・ソース間電位Vgsは「ΔVin+Vth−ΔV」よりも小さくなるが、そのブートストラップゲインに応じたゲート・ソース間電位Vgsに保たれることには変わりがない。
【0149】
以上のように、画素回路10Aは、駆動タイミングを工夫することで、閾値補正回路や移動度補正回路が自動的に構成され、駆動トランジスタ121の特性ばらつき(本例では閾値電圧Vth及びキャリア移動度μのばらつき)による駆動電流Idsに与える影響を防ぐために、閾値電圧Vth及びキャリア移動度μによる影響を補正して駆動電流を一定に維持する駆動信号一定化回路として機能するようになっている。ブートストラップ動作だけでなく、閾値補正動作と移動度補正動作とを実行しているため、ブートストラップ動作で維持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、閾値電圧Vthに相当する電圧と移動度補正用の電位補正値ΔVとによって調整されているため、有機EL素子127の発光輝度は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthや移動度μのばらつきの影響を受けることがないし、有機EL素子127の経時劣化の影響も受けない。入力される映像信号Vsig(信号振幅ΔVin)に対応する安定した階調で表示でき、高画質の画像を得ることができる。
【0150】
又、画素回路10Aは、nチャネル型の駆動トランジスタ121を用いたソースフォロア回路によって構成することができるために、現状のアノード・カソード電極の有機EL素子をそのまま用いても、有機EL素子127の駆動が可能になる。又、駆動トランジスタ121及びその周辺部のサンプリングトランジスタ125等も含めてnチャネル型のみのトランジスタを用いて画素回路10Aを構成することができ、トランジスタ作製においても低コスト化が図れる。
【0151】
[補正期間について]
前述のように、図6に示した比較例の駆動タイミングでは、各パルスのタイミングによって有機EL素子127への駆動電流Idsを制御するが、この際、1水平走査期間を前半部と後半部とに分け、前半部では閾値補正を行ない後半部では信号書込みや移動度補正を行なっている。当該手法では、閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ制約があり、補正期間の設定自由度が少なく、動作時間が十分に確保できず適正な補正ができず、表示むらの改善が不十分になることが起こり得る。例えば、パネルの大型化に伴う書込駆動パルスWSや映像信号Vsigの鈍化や高速駆動化により1回当たり閾値補正動作時間が十分に確保できなくなり、良好なユニフォミティが得られなくなる。
【0152】
[補正期間の設定自由度の改善手法]
トランジスタや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する際に、補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ場合、設定の自由度が少なく、表示むらの改善が不十分になることが起こり得る。このため、補正期間の設定の自由度を拡大できる駆動方法の開発要求がある。
【0153】
本実施形態は、この要求に対して、1フィールド(1垂直走査期間)を複数に分割し、その内の一の分割期間において閾値補正を行ない、他の分割期間において、信号書込みや移動度補正を行なうことで、オペレーションマージンの増加に対応する。閾値補正処理の際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なってもよい。必須ではないが、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(移動度補正処理)を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なってもよい。
【0154】
1フィールドを複数に分割するに当たっては、2つの分割期間に分けるのが典型的ではあるが、原理的には2分割に限定されない。又、閾値補正と、信号書込みや移動度補正とは、通常は、閾値補正の後に信号書込みや移動度補正を行なうが、これにも限定されない。好適な形態としては、1フィールドを前半部と後半部とに分け、前半部の所定期間に全行の閾値補正を行ない(詳細には最終行側の数行分は後半部に若干入り込む)、後半部にて信号書込みや移動度補正を行なう。1フィールドを前半部と後半部とに分ける際は、典型的には各ラインをほぼH/2期間としてほぼ1/2期間ずつ分けるがこのことは必須でなく、前半部よりも後半部の方をより長くしてもよいし、逆に、前半部よりも後半部の方をより短くしてもよい。1フィールドを1/2期間ずつ分ける場合であれば、各行に割当て可能な閾値補正の処理期間(詳細には第1ノードの初期化期間も含む)は、「H/2+垂直ブランキング期間(VBLK期間)」である。
【0155】
閾値補正を行なう前半部では(詳細には最終行側の数行分の閾値補正のため後半部に若干入り込む)、駆動トランジスタ121のゲートに基準電位(Vofs)を供給し続け、1水平期間との関係の制約なく閾値補正期間を設定できるようにする。2Tr構成では、サンプリングトランジスタ125を介して映像信号線106HSから基準電位(Vofs)を供給するが5Tr構成等では第1ノード初期化電圧としての基準電位(Vofs)を印加する第3トランジスタTR3を設ける等の変形も可能である。信号書込みや移動度補正を行なう後半部では、行(ライン)ごとに対応する映像信号Vsigをサンプリングトランジスタ125を介して駆動トランジスタ121のゲートに供給する。1フィールドを1/2期間ずつ分ける場合であれば、各行に割当て可能な信号書込みや移動度補正の処理期間はH/2である。
【0156】
垂直ブランキング期間に閾値補正動作を継続すれば1回の閾値補正動作となるが、この期間を複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なうこともできる。更には、前半部の閾値補正動作だけでなく、後半部の信号書込みや移動度補正の前に従前と同様の閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なうこともできる。
【0157】
このような本実施形態の駆動方法によれば、概ね1フィールドの前半部において、「H/2+VBLK」の期間にノードND121の初期化と閾値補正とを行なうことができ、垂直ブランキング期間は任意に設定できるので、閾値補正期間の設定の自由度を比較例の駆動方法よりも拡大できる。ノードND121の初期化と閾値補正の動作時間は、「H/2+VBLK」の期間分だけ確保でき、十分な閾値補正動作により良好なユニフォミティが得られる。比較例の駆動方式に対して、実質的に、垂直ブランキング期間の分だけ閾値補正期間を延ばすことができる。回路構成を変更することなく、駆動タイミングの変更のみで1回当たりの閾値補正時間を長時間化できる。
【0158】
〔具体的な駆動方法〕
図8は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例1の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。図中において参照子“_n”のnが行番号(ライン番号)を示す。実施例1は、1フィールドの前半部において、垂直ブランキング期間に閾値補正動作を継続し(1回の閾値補正動作)、後半部では従前と同様の閾値補正は行なわない形態である。
【0159】
1フィールドを2分割し、前半部(図中の開始からF/2まで)において第1ノード初期化電圧としての基準電位(Vofs)を映像信号線106HSに供給したまま、行ごとに、ノードND121を初期化する初期化期間Dと閾値補正期間Kとを、「H/2+垂直ブランキング期間(VBLK)」に割り当てる。
【0160】
具体的には、フィールド開始後、先ず1番目の行(第1ライン)について、電源駆動パルスDSL_1を第2電位Vcc_Lとすることで消光及びノードND122を初期化する(放電期間C)。この後、基準電位(Vofs)を映像信号線106HSに供給したままで書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてサンプリングトランジスタ125をオン状態としてノードND121を初期化する(初期化期間D)。更に、その状態で電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとした後所定期間経過後に書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにしてサンプリングトランジスタ125をオフ状態とする。電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとした後、書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにするまでの期間が閾値補正期間Kである。
【0161】
書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてから書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにするまでの期間を「H/2+Vブランキング期間」とする。つまり、全体としては、初期化期間Dから閾値補正期間Kまでの期間を「H/2+VBLK」とする。電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとするタイミングは、書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてからH/2経過まで(つまり次行の書込駆動パルスWS_nをアクティブHにするまで)の間であれば任意であり、一例として概ね書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてからH/4後とする。
【0162】
フィールドの後半部に入ると、信号書込みと移動度補正とを行なう(書込み&移動度補正期間H)。この際には、H/2Hごとに対応する行用の映像信号Vsigが映像信号線106HSに供給されている状態でサンプリングトランジスタ125を順次導通(オン)状態とする。
【0163】
比較例の駆動方法では、各回の閾値補正期間としてとり得る最長期間はH/2であるのに対して、実施例1の駆動方法では、閾値補正期間としてとり得る最長期間は「H/2+VBLK」となる。つまり、実施例1の駆動方法によれば、フィールド前半部の「H/2+VBLK」の期間に閾値補正を行なうことができ、比較例に対して閾値補正期間を垂直ブランキングの期間だけ延ばすことができる。
【0164】
前述の通り、比較例の駆動方法では、パネルの大型化に伴う書込駆動パルスWSやデータ線パルス(映像信号Vsig)の鈍化や高速駆動化により、1回当たりの閾値補正時間が非常に短くなり、例え分割閾値補正を適用したとしても、1回目の補正時間が短すぎる場合には補正が正常にかからず良好なユニフォミティが得られない。
【0165】
これに対して、実施例1の駆動方法では、十分な閾値補正用の書込駆動パルスWSの幅を確保することができる。具体的には、図8に示したように、最大限として「H/2+VBLK」の期間を閾値補正期間に使用できる。比較例の1回当たりの閾値補正時間(H/2)に対してVブランキング期間分だけ補正時間を余分に確保できる。因みに、書込み&移動度補正期間Hとしてとり得る最長期間は比較例と同様にH/2である。
【0166】
又、実施例1の駆動方法によれば、フィールド前半部における閾値補正動作後、フィールド後半部における信号書込みや移動度補正を開始するまでの期間(書込み&移動度補正準備期間Lと記す)を各ラインにて一定とすることができるので、本期間に発生する駆動トランジスタ121の微小なリーク電流もラインごとに一定となり縦シェーディングも発生しない。
【実施例2】
【0167】
図9は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例2の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。実施例2は、フィールド前半部における垂直ブランキング期間に複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行ない、後半部では従前と同様の閾値補正は行なわない形態である。
【0168】
比較例の駆動方法の説明において、分割閾値補正を行なう目的は、1水平周期内の閾値補正期間では駆動トランジスタ121の閾値電圧に相当する電圧を十分に保持容量120へ保持させることができない場合に対する対処として説明した。この点においては、本実施形態の駆動方法を適用すると、1水平周期に左右されず十分な閾値補正期間を確保できるので、本来的には分割閾値補正を行なう意義はないと考えられる。むしろ、分割閾値補正を行なうことで発生する休止期間のため、実際の閾値補正動作の期間が、「H/2+VBLK」よりも短くなり、分割閾値補正を行なうことは不利になるとも考えられる。
【0169】
しかしながら、比較例の駆動方法の説明において説明した分割閾値補正動作における「休止期間」には、その直前の回の閾値補正動作により保持容量120に保持されたVxn(nは回数)に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsが僅かに上昇する。このため、分割閾値補正を行なうと、分割閾値補正を行なわない場合よりもソース電位Vsの上昇を加速できる利点がある。
【0170】
実施例2は、この効果を利用して、フィールド前半部における垂直ブランキング期間に、分割閾値補正を行なうことで、ソース電位Vsの上昇を促進させて閾値補正を加速させる。図では、「H/2+VBLK」の期間を、実施例1と同じで記載しているが、実態としては、「H/2+VBLK」の期間を、分割閾値補正を行なわない場合よりも短縮できる。フィールド前半部において分割閾値補正を行なう点を除いて、実施例1と同様の効果を享受できる。
【実施例3】
【0171】
[構成]
図10及び図11は、実施例3の画素回路10Cと、当該画素回路10Cを備えた表示装置の一形態を示す図である。実施例3の画素回路10Cを画素アレイ部102に備える表示装置を実施例1の表示装置1Cと称する。図10は基本構成(1画素分)を示し、図11は具体的な構成(表示装置の全体)を示す。
【0172】
実施例1及び実施例2の画素回路10Aにおいては、各トランジスタはバックゲート端が存在しない一般的な薄膜トランジスタであるのに対して、実施例3の画素回路10Cにおいては、少なくとも駆動トランジスタ121については(図はサンプリングトランジスタ125も)、制御入力端(ゲート端)の他に、トランジスタ特性を制御(ここでは閾値電圧Vthを増減)し得る制御端(以下「トランジスタ特性制御端」とも称する)を有するものを使用している。「トランジスタ特性制御端」を有するトランジスタの典型例は、バックゲート型の薄膜トランジスタや図3(B)に示したようなMOS型のトランジスタである。
【0173】
実施例1の画素回路10Aのトランジスタをトランジスタ特性制御端を有するトランジスタに置き換えることもできる。但しこの際には、トランジスタ特性制御端は、通常、接地線或いは主電極端の一方(例えばソース端)と接続される。
【0174】
これに対して、実施例3においては、特性制御走査部651を具備するトランジスタ特性制御部650を備えており、トランジスタ特性制御部650(特性制御走査部651)から駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端に「所定の制御電位」を与えるように構成している。
【0175】
「所定の制御電位」については詳しくは後述するが、理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間に、駆動トランジスタ121をより確実にオフ状態に維持するための制御電圧である。発光時には元の基板電位に戻すので、全体としては、駆動トランジスタ121のバックゲートに矩形波状のトランジスタ特性制御信号Vbを入力する。このため、特性制御走査部651は、トランジスタ特性制御信号Vbのハイ/ローと対応した走査パルスを生成し、その走査パルスをレベル変換して、適正なレベルのVb_HとVb_Lのトランジスタ特性制御信号Vbを特性制御走査線651VBに出力する。
【0176】
画素回路10Cは、その外部の制御部109からの駆動信号で制御され、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」は制御部109からの駆動信号で規定されるので、基本的には、トランジスタ特性制御部650の特性制御走査部651の構成としては、各種の駆動信号と関係した信号を利用した構成が採用される。
【0177】
[表示むら現象の発生原因]
実施例1や実施例2で説明した駆動タイミングでは、駆動トランジスタ121の特性補正を行なった後には、保持容量120に保持された駆動電圧に基づく駆動電流Idsを駆動トランジスタ121で生成して有機EL素子127に供給して発光(表示)を行なう。この発光の前には、理想状態では駆動トランジスタ121に電流が流れない状態(閾値補正期間K後から書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間)が存在するが、実際にはリークにより微小な電流が流れる。そして、この現象があると、表示むらが発生する場合がある。この点に関して、実施例1では、本期間に発生する駆動トランジスタ121の微小なリーク電流はラインごとに一定となり縦シェーディングは発生しないと説明した。しかしながら、フィールド前半部の閾値補正期間K後からフィールド後半部の書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間(書込み&移動度補正準備期間L)は、比較例の駆動方法における閾値補正期間E後からフィールド後半部の書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間に比べて、格段に長期間であり、リーク電流による影響を無視できないケースも起こり得る。この点について、以下に詳しく説明する。
【0178】
実動作では、フィールド前半部にて「H/2+VBLK」期間での閾値補正を行なった後、書込みパルスWSをインアクティブ(ローレベル)にしてサンプリングトランジスタ125をオフ状態にすると、一時的に駆動トランジスタ121のゲート端(ノードND121)がフローティング状態になる。この際、理想的には駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsはその閾値電圧Vthと等しくなっているため(Vgs=Vth)、駆動トランジスタ121に電流は流れないはずである。しかしながら、実際には、リークのため微小な電流が流れている。このリークの影響で、ソース電位Vs(つまりノードND122)の上昇と、ブートストラップ動作と同様の現象によるソース電位Vsの上昇に伴うゲート電位Vgの上昇が起こる。書込み&移動度補正準備期間Lを各ラインにて一定とすることができても、このリークに伴うソース電位Vs及びゲート電位Vgの変動のばらつきによりゲート・ソース間電圧Vgsのばらつきが生じ、発光時に表示むら(具体的にはスジむら)となって認識されるという問題が起こり得る。
【0179】
閾値補正期間後から書込み&移動度補正期間が開始されるまでのサンプリングトランジスタ125がオフ状態の期間が短い場合(比較例の駆動方法の場合が該当する)は、単位時間当たりのリーク電流のばらつきが多少あってもリーク電流による影響を無視でき得る。これに対して、書込み&移動度補正準備期間Lが長期(概ねF/2期間)に亘る実施例1や実施例2の駆動方法の場合は、単位時間当たりのリーク電流のばらつきが少ないとしても、長期に亘ることでリーク電流による影響が無視できなくなり得る。
【0180】
[表示むら現象の対策手法]
実施例3では、トランジスタ特性の補正処理後の発光の前の一定期間に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端にトランジスタ特性制御信号Vbを供給してトランジスタ特性を低下させることで、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消する。「トランジスタ特性を低下させる」とは、リークが起きない状態にすることを意味し、一例として閾値電圧Vthを増大させる。
【0181】
〔原理〕
図12は、リークに起因する表示むら現象の対策原理を説明する図であって、特に、トランジスタ特性(Vgs−Ids特性)の基板電位依存性を説明する図である。
【0182】
周知のように、バックゲート型の薄膜トランジスタやMOS型のトランジスタでは、バックゲート効果により、トランジスタ特性が変動する。例えば、MOS型のトランジスタは、通常はバイポーラトランジスタと同様に3端子デバイスとして取り扱うことが多いが、ソース領域やドレイン領域が形成される基板やウエルも制御端子(トランジスタ特性制御端)として考えるべきであるので、正確には4端子として取り扱うべきである。そして、ソースとトランジスタ特性制御端(例えば基板(ボディーとも云う))との間にトランジスタ特性制御信号Vb(バックゲート電圧或いは基板電位或いはベース電位とも称する)を印加すれば、トランジスタ特性を制御することができる。通常は、バックゲート電圧はダイオードが遮断状態になるように負の電圧で印加される。例えば、バックゲート電圧を印加すると、ダイオードと同様にソース及びドレインチャネル直下の空乏層が変化し、半導体表面のポテンシャルが変化する。そのため、空乏層中の電荷はバックゲート電圧印加がないときとあるときとでは異なり、トランジスタ特性(Vgs−Ids特性)は図12に示すように変化し、そのため閾値電圧Vthが変化する。バックゲート効果を考慮したとき、閾値電圧Vthはバックゲート電圧に対し、約1/2乗で増加する特性となることが知られている。因みに、単純理論では、閾値電圧Vthはバックゲート電圧に対して1/2乗で増加するが、実際には直線増加と見なしても問題がないことが多い。
【0183】
図12に示すように、基板電位(つまりトランジスタ特性制御信号Vb)が上昇するほど、閾値が低くなり、ドレイン電流Idsをより多く流すように変化する。逆に、基板電位(つまりトランジスタ特性制御信号Vb)が減少するほど、閾値が拡大する。よって、発光前の一定期間、トランジスタ特性制御信号Vbを通常時よりも低下させて閾値を拡大させることで、リークを防ぐことができ、結果として、表示むらを抑制・解消することができる。トランジスタ特性制御部640Aを画素回路10Cごとに駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを設定する構成とし、発光前の一定期間、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させれば、閾値電圧Vthをより拡大でき、駆動トランジスタ121を確実にオフ状態に維持することができる。駆動トランジスタ121をオフ状態に維持することができれば、表示むら現象を抑制・解消することができる。閾値補正後から映像信号書込みまでの期間にリークが発生し、これによって生じていた表示むらを改善することができる。
【0184】
尚、通常時のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Hを、実施例3を適用しない場合と同じにする場合(発光状態において画素回路10Cの最低電圧:この例では接地電位)、実体的には、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Lは負電圧となるので、負電圧生成回路が必要になる。装置全体として考えた場合、負電圧生成回路を設けることはあまり好ましいことではない。この問題を解消するには、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Lを画素回路10Cの最低電圧(この例では接地電位)とし、通常時のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Hを正電圧とするのがよい。そして、必要に応じて、その他の信号(例えば映像信号Vsig等)を相対的にレベルシフトさせればよい。
【0185】
〔具体的な駆動方法〕
図13は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例3の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。実施例3は、トランジスタ特性の補正処理後の発光の前の一定期間に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端にトランジスタ特性制御信号Vbを供給してトランジスタ特性を低下させることで、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消する。
【0186】
「発光前の一定期間」は、少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させることで閾値電圧Vthを拡大(増大)させるものであればよく、原理的には、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問である。図6に示した比較例の駆動タイミングの場合は、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」は、閾値補正期間E後から書込み&移動度補正期間(詳しくはその準備期間G)が開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間(図中の期間F)である。したがって、少なくとも当該書込みパルスWSがローの期間は、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させて(このときの値をVb_Lとする)閾値電圧Vthをより拡大させる。
【0187】
原理的には、その他の非発光期間については、トランジスタ特性制御信号Vbを、通常状態と同じレベル(このときの値をVb_Hとする)にするのか、それとも書込みパルスWSがローの期間のときのレベル(ローレベル)とするかは自由である。つまり、少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を通常時(発光時)よりも低下(ここでは閾値電圧を増大)させればよく、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは、基本的には自由である。換言すると、実施例3の構成は、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間に駆動トランジスタ121の特性を通常時よりも低下させる」汎用的な構成をとることもできるし、非発光時の他の期間の扱い(駆動トランジスタ121の特性を通常時よりも低下させるか否か)の具体的な事例にも適用できる。
【0188】
但し、図8に示した実施例1の駆動方法や図9に示した実施例2の駆動方法において、閾値補正動作後から信号書込みや移動度補正を開始するまでの書込み&移動度補正準備期間Lにおける駆動トランジスタ121のリーク電流に起因する表示むらをより確実に抑制すると云う点においては、書込み&移動度補正準備期間Lの駆動トランジスタ121の特性をその他の期間よりも低下させておくのが好適である。即ち、具体的には、フィールド前半部における閾値補正動作後、フィールド後半部における信号書込みや移動度補正を開始するまでの書込み&移動度補正準備期間Lには、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性を低下させる(一例として閾値電圧Vthを増大させる)。必須ではないが、フィールド前半部における「H/2+VBLK」期間での閾値補正動作に加えて、後半部でも従前と同様の閾値補正(分割閾値補正動作でもよい)を行なう。
【0189】
例えば、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させるが、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問とする場合、閾値補正期間Kに駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させて閾値電圧Vthをより拡大させると、トランジスタ特性が低下したときの閾値電圧Vthが保持容量120の両端間に保持され、発光時の閾値電圧Vthと相違が生じ、閾値補正が不十分となることが懸念される。更には、閾値補正期間Kの経過後、書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの期間も、閾値補正期間Kにおける閾値電圧Vthと同じであり、リークに対する対処が不十分となり得る。
【0190】
実施例3では、この点も勘案して、駆動トランジスタ121が電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタ121の特性を低下させる処理を中止する。つまり、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの補正処理の期間には、駆動トランジスタ121の閾値電圧thを増大させる処理を中止する(第1駆動例と記す)。少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間(図中の書込み&移動度補正準備期間L)にはトランジスタ特性制御信号VbをVb_Lとして駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させ、閾値補正期間Kにはトランジスタ特性制御信号Vbを発光時と同じVb_Hとするが、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問である。
【0191】
例えば、閾値補正期間Kの終了より前に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、信号書込み開始と同時に中止することもできる(第2駆動例と記す)。具体的には、第1駆動例の駆動タイミングをベースに、更に、書込み&移動度補正期間Hの開始とほぼ同時に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を中止する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_LからVb_Hに戻す)。又、閾値補正期間Kの終了より少し前に駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を開始する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_HからVb_Lにする)。つまり、駆動トランジスタ121の基板電位を、閾値補正の終了より少し前、つまり、書込みパルスWSの立下りより少し前(直前)に低下させ、信号書込み開始時の書込みパルスWSの立上りとほぼ同時に上げるよう構成すればよい。閾値補正終了より少し前に駆動トランジスタ121の基板電位を低下させて閾値電圧Vthを上げることによって、閾値補正後の駆動トランジスタ121のフローティング期間内のリークを抑制することができる。即ち、駆動トランジスタ121に関して、閾値補正終了直前は、Vgs≒Vthとなっていた状態から、トランジスタ特性制御信号Vb(つまり基板電位)を下げたことによって、基板・ソース間電圧Vbsが拡がるため、基板バイアス効果により閾値電圧Vthが拡がりVth-expとなるので、Vgs<Vth-expとなり、この後の書込み&移動度補正準備期間Lにおけるリークを確実に抑えることができる。
【0192】
或いは又、信号書込みや移動度補正の期間にはトランジスタ特性制御信号Vbをローレベルにしておく形態とすることもできる(第3駆動例と記す)。例えば、閾値補正終了より前に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、発光開始とほぼ同時に中止する形態とすることもできる。具体的には、第1駆動例の駆動タイミングをベースに、更に、発光開始と同時とほぼ同時に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を中止する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_LからVb_Hに戻す)。又、閾値補正期間Kの終了より少し前に駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を開始する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_HからVb_Lにする)。つまり、駆動トランジスタ121の基板電位を、閾値補正の終了より少し前、つまり、書込みパルスWSの立下りより少し前(直前)に低下させ、発光開始時(ブートストラップ動作開始時)の書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に上げるよう構成すればよい。第3駆動例場合でも、第2駆動例と同様に、閾値補正後の駆動トランジスタ121のフローティング期間内のリークを確実に抑えることができる。
【0193】
第3駆動例のメリットを以下に述べる。移動度μが過度に大きい(高い)駆動トランジスタ121を使用すると、移動度補正がかかり過ぎ、発光直前のゲート・ソース間電圧Vgsのつぶれが生じ、著しい輝度低下やユニフォミティの低下が発生することが懸念される。この弊害を抑制するべく、移動度補正パルスを狭幅にすることが必要になる。ところが、実際には、狭幅の移動度補正パルスにして動作させることは、回路構成や遅延その他の面から、パルス幅の設定・管理が困難である。例えば、MOSFETでは移動度μが高いため、移動度補正がかかり過ぎ、輝度が低下しないよう移動度補正パルスを数ナノ秒程度にすることが必要になることが懸念される。このような狭パルスの制御は困難である。この点を踏まえると、移動度補正パルスを狭幅にせずに(現状をほぼ維持して)、移動度補正期間に流れる電流値を減らすことが望ましい。第3駆動例の駆動タイミングでは、移動度補正期間の閾値電圧Vthが大きくなるため、この効果を得ることができる。
【0194】
或いは又、閾値補正終了とほぼ同時に、つまり、書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、信号書込み開始と同時に中止する形態とすることもできる(第4駆動例と記す)。更には、閾値補正終了とほぼ同時に、つまり、書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、発光開始とほぼ同時に中止する形態とすることもできる(第5駆動例と記す)。第4駆動例や第5駆動例は、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、第2駆動例或いは第3駆動例よりも、発光時の閾値電圧Vthにより近い値となる。
【0195】
更には、図13に示すトランジスタ特性制御電圧Vb(ここでは1行目のVb_1のみを示している)のように、フィールド前半部における「H/2+VBLK」期間での閾値補正動作及び書込み&移動度補正準備期間Lにおけるトランジスタ特性の低下処理(具体的には閾値電圧Vthを通常時よりも拡大させる処理)に加えて、フィールド後半部でも従前と同様の閾値補正を行なう形態とすることもできる(第6駆動例と記す)。この場合、フィールド後半部での1回当たりの閾値補正期間Eや書込み&移動度補正期間Hとしてとり得る最長期間はH/4になる。因みに図13では、フィールド後半部で閾値補正を1回行なう例で示しているが、分割閾値補正動作を適用してもよい。更には、図13では、第3駆動例を適用して、移動度補正期間の閾値電圧Vthを大きくする例で示しているがこのことは必須でない。
【0196】
閾値補正動作Kの終了時に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthを通常時よりも拡大させると、書込駆動パルスWSをインアクティブLにするタイミングとの関係次第では、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが、発光時の閾値電圧Vthと少しずれる(より大きくなる)ことが懸念される(例えば第2駆動例或いは第3駆動例の場合)。更には、保持容量120にもリークが存在するので、書込み&移動度補正準備期間Lが長期(概ねF/2期間)に亘ることで、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが発光時の閾値電圧Vthとずれないとしても、書込み&移動度補正期間Hの直前に保持容量120の両端に保持されているゲート・ソース間電圧Vgsが、発光時の閾値電圧Vthとずれる(より小さくなる)ことが懸念される。
【0197】
これらを踏まえた場合、書込み&移動度補正期間Hの直前に保持容量120の両端に保持されているゲート・ソース間電圧Vgsが発光時の閾値電圧Vthより少し大きくなるようにしておき、書込み&移動度補正期間Hの直前にも閾値補正を行なうことにより、補正後のゲート・ソース間電圧Vgsを発光時の閾値電圧Vthと一致させるのが好ましい。このためには、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが、書込み&移動度補正準備期間Lにおける基板バイアス効果による拡大された閾値電圧Vth-expとの関係で「Vgs<Vth-exp」を満たす範囲で、意図的に、発光時の閾値電圧Vthより大きくなるようにしておくのが好ましい。即ち、フィールド前半での閾値補正後に駆動トランジスタ121の閾値電圧を通常時よりも拡大させておく、更には、フィールド前半での閾値補正ではゲート・ソース間電圧Vgs=閾値電圧Vthの少し手前とし、フィールド後半の書込み&移動度補正の前に通常の閾値電圧Vthに戻して閾値補正を行なうことが好ましい。
【0198】
[変形例]
例えば、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消すると云う点においては、発光前の少なくとも「理想状態で駆動トランジスタに電流が流れない期間(駆動トランジスタのフローティング期間と記す)」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させるように制御可能に構成されていればよく、その限りにおいて、様々な構成をとることができる。その対処のため、画素回路10の外部に設けられる制御部109(前例ではトランジスタ特性制御部650:詳細には特性制御走査部651)による画素回路10の制御タイミングの工夫によって実現することは必須でなく、その対処のための回路要素を画素回路10内に備えていてもよい。即ち、閾値補正後から発光前の一定期間、駆動トランジスタ121の特性が低下するように制御する特性制御部を、画素回路10ごとに設けてもよい。
【0199】
或いは又、画素回路10の外部に独立の特性制御走査部651を設けずに、他の走査部が出力する駆動パルスを利用して論理回路によりトランジスタ特性制御信号Vbのハイ/ローと対応した走査パルスを生成し、その走査パルスをレベル変換して、適正なレベルのVb_HとVb_Lのトランジスタ特性制御信号Vbを出力する構成でもよい。
【0200】
又、駆動トランジスタ121がバックゲート端等の閾値電圧を制御し得るトランジスタ特性制御端を有する場合に、そのトランジスタ特性制御端を利用して、駆動トランジスタ121の特性を制御するようにしていた。しかしながら、それは一例に過ぎず、「駆動トランジスタのフローティング期間」に駆動トランジスタ121の特性を低下させるものである限り、トランジスタ特性制御端を利用して制御するものに限定されない。
【実施例4】
【0201】
図14は実施例4を説明する図である。実施例4は、前述の補正期間の設定自由度を改善する技術が適用された表示装置を搭載した電子機器についての事例である。本実施形態の表示むら抑制処理に当たっての補正期間の設定自由度を改善する技術は、ゲーム機、電子ブック、電子辞書、携帯電話機等の各種の電子機器に使用される電流駆動型の表示素子を具備した表示装置に適用することができる。
【0202】
例えば、図14(A)は、電子機器700が、画像表示装置の一例である表示モジュール704を利用したテレビジョン受像機702の場合の外観例を示す斜視図である。テレビジョン受像機702は、台座706に支持されたフロントパネル703の正面に表示モジュール704を配置した構造となっており、表示面にはフィルターガラス705が設けられている。図14(B)は、電子機器700がデジタルカメラ712の場合の外観例を示す図である。デジタルカメラ712は、表示モジュール714、コントロールスイッチ716、シャッターボタン717、その他を含んでいる。図14(C)は、電子機器700がビデオカメラ722の場合の外観例を示す図である。ビデオカメラ722は、本体723の前方に被写体を撮像する撮像レンズ725が設けられ、更に、表示モジュール724や撮影のスタート/ストップスイッチ726等が配置されている。図14(D)は、電子機器700がコンピュータ732の場合の外観例を示す図である。コンピュータ732は、下型筐体733a、上側筐体733b、表示モジュール734、Webカメラ735、キーボード736等を含んでいる。図14(E)は、電子機器700が携帯電話機742の場合の外観例を示す図である。携帯電話機742は、折り畳み式であり、上側筐体743a、下側筐体743b、表示モジュール744a、サブディスプレイ744b、カメラ745、連結部746(この例ではヒンジ部)、ピクチャーライト747等を含んでいる。
【0203】
ここで、表示モジュール704、表示モジュール714、表示モジュール724、表示モジュール734、表示モジュール744a、サブディスプレイ744bは、本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。これにより、各電子機器700は、駆動トランジスタの閾値電圧や移動度のばらつき(更には、kのばらつき)に起因する輝度ばらつきを補正することができるだけでなく、補正期間の設定は水平走査期間に左右されず自由度が高い。実施例3を適用すれば、補正期間の設定自由度を改善する場合においても、駆動トランジスタのリークに起因する表示むらを抑制・解消することができ、高画質の表示を行なうことができる。
【0204】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0205】
例えば、トランジスタをnチャネルとpチャネルで入れ替え、それに合わせて、電源や信号の極性を逆転させる等した相補型の構成にできることは云うまでもない。
【0206】
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載の請求項に係る技術は一例であり、例えば、以下の技術が抽出される。以下列記する。
[付記1]
表示部と、
保持容量と、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
とを備え、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている画素回路。
[付記2]
1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう付記1に記載の画素回路。
[付記3]
駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なう付記1又は付記2に記載の画素回路。
[付記4]
駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なう付記1乃至付記3の何れか1項に記載の画素回路。
[付記5]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なう付記1乃至付記4の何れか1項に記載の画素回路。
[付記6]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理は、駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正処理に使用される付記1乃至付記5の何れか1項に記載の画素回路。
[付記7]
閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御可能に構成されている付記1乃至付記6の何れか1項に記載の画素回路。
[付記8]
駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止する付記7に記載の画素回路。
[付記9]
駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする付記7又は付記8に記載の画素回路。
[付記10]
閾値電圧の補正処理の終了よりも前に、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする付記9に記載の画素回路。
[付記11]
駆動電圧の保持容量への書込みに連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする付記7乃至付記10の何れか1項に記載の画素回路。
[付記12]
駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記7乃至付記11の何れか1項に記載の画素回路。
[付記13]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記12に記載の画素回路。
[付記14]
表示部の表示開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記7乃至付記13の何れか1項に記載の画素回路。
[付記15]
駆動トランジスタは、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有し、
特性制御部は、閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する付記7乃至付記14の何れか1項に記載の画素回路。
[付記16]
表示部の発光前の一定期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を備えている付記7乃至付記15の何れか1項に記載の画素回路。
[付記17]
表示部は自発光型である付記1乃至付記16の何れか1項に記載の画素回路。
[付記18]
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
を具備する表示素子が配列されており、
更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部を備えた表示装置。
[付記19]
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ
を具備する表示素子が配列されており、
更に、書込トランジスタに供給される映像信号を生成する信号生成部と、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部、
とを備えた電子機器。
[付記20]
表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう画素回路の駆動方法。
【符号の説明】
【0207】
1…表示装置、10…画素回路、11…発光素子、100…表示パネル部、101…基板、102…画素アレイ部、103…垂直駆動部、104…書込走査部、105…駆動走査部、106…水平駆動部、120…保持容量、121…駆動トランジスタ、125…サンプリングトランジスタ(書込トランジスタ)、127…有機EL素子、130…インタフェース部、200…駆動信号生成部、220…映像信号処理部、650…トランジスタ特性制御部、651…特性制御走査部、700…電子機器
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、画素回路、表示装置、電子機器、及び、画素回路(表示装置)の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、表示素子(電気光学素子とも称される)を具備する画素回路(画素とも称される)を有する表示装置、表示装置を具備する電子機器が広く利用されている。画素の表示素子として、印加される電圧や流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子を用いた表示装置がある。例えば、印加される電圧によって輝度が変化する電気光学素子としては液晶表示素子が代表例であり、流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子としては、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence, 有機EL, Organic Light Emitting Diode, OLED;以下、有機ELと記す) 素子が代表例である。後者の有機EL素子を用いた有機EL表示装置は、画素の表示素子として、自発光素子である電気光学素子を用いたいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
ところで、表示素子を用いた表示装置においては、その駆動方式として、単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。但し、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が単純であるものの、大型でかつ高精細の表示装置の実現が難しい等の問題がある。
【0004】
このため、近年、画素内部の表示素子に供給する画素信号を、同様に画素内部に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(一般には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor ;TFT)等のトランジスタをスイッチングトランジスタとして使用して制御するアクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。
【0005】
従来のアクティブマトリクス方式の表示装置は、プロセス変動により表示素子を駆動するトランジスタの閾値電圧や移動度がばらついてしまう。又、表示素子の特性が経時的に変動する。このような駆動用のトランジスタの特性ばらつきや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性変動は、発光輝度に影響を与えてしまう。即ち、各画素に全て同一のレベルの映像信号を供給すれば、全画素が同一輝度で発光し、画面の一様性(ユニフォーミティ)が得られるはずであるが、駆動用のトランジスタの特性ばらつきや表示素子の特性変動により、画面のユニフォーミティが損なわれる。そこで、表示装置の画面全体に亘って発光輝度を均一に制御するため、各画素回路内でトランジスタや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する技術が、例えば特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4240059号公報
【特許文献2】特許第4240068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている技術では、各ラインで1回当たりの閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る最長期間は1水平期間(1Hとも記す)となっている。又、閾値補正と移動度補正とを併用する場合に両者均等に割り当てるとそれぞれが処理期間としてとり得る最長期間はH/2となる。つまり、特許第4240059号公報や特許第4240068号公報に提案されている技術では、閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ制約があり、自由度が少ない。このような補正期間の設定の自由度の制約のため、場合によっては、動作時間が十分に確保できず良好なユニフォミティが得られないことが起こり得る。
【0008】
したがって本開示の目的は、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する場合に、補正期間の設定の自由度を広げることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る画素回路は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている。本開示の第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各画素回路は、本開示の第1の態様に係る画素回路のさらなる有利な具体例を規定する。
【0010】
本開示の第2の態様に係る表示装置は、表示部、保持容量、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、を具備する表示素子が配列されており、更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部(駆動信号一定化回路)を備える。第2の態様に係る表示装置は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第2の態様に係る表示装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0011】
本開示の第3の態様に係る電子機器は、表示部、保持容量、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタを具備する表示素子が配列されており、更に、画素部に供給される映像信号を生成する信号生成部と、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部とを備える。第3の態様に係る電子機器は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第3の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。
【0012】
本開示の第4の態様に係る画素回路の駆動方法は、表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう。第4の態様に係る画素回路の駆動方法は、第1の態様に係る画素回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第4の態様に係る画素回路の駆動方法のさらなる有利な具体例を規定する。
【0013】
要するに、本明細書で開示する技術では、1フィールド期間を複数に分割し、そのうちの一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう。このため、閾値補正処理にとり得る期間は、1水平期間との制約関係から開放されるので、閾値補正のオペレーションマージンの増加(つまり、補正期間の設定の自由度を広げること)が可能になる。閾値補正の動作時間が十分に確保でき、良好なユニフォミティが得られる。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様に係る画素回路、第2の態様に係る表示装置、第3の態様に係る電子機器、及び、第4の態様に係る画素回路の駆動方法によれば、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する場合に、補正期間の設定の自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、アクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。
【図2】図2は、カラー画像表示対応のアクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。
【図3】図3(A)〜図3(B)は、発光素子(実質的には画素回路)を説明する図である。
【図4】図4は、実施例1の画素回路の一形態を示す図である。
【図5】図5は、実施例1の画素回路を備えた表示装置の全体概要を示す図である。
【図6】図6は、画素回路の比較例の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図7】図7(A)〜図7(G)は、図6に示したタイミングチャートの主要な期間における等価回路と動作状態を説明する図である。
【図8】図8は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例1の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図9】図9は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例2の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図10】図10は、実施例3の画素回路の一形態を示す図である。
【図11】図11は、実施例3の画素回路を備えた表示装置の全体概要を示す図である。
【図12】図12は、駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象の対策原理を説明する図であって、トランジスタ特性の基板電位依存性を説明する図である。
【図13】図13は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例3の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。
【図14】図14(A)〜図14(E)は実施例4(電子機器)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0017】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.表示装置の概要
3.発光素子
4.駆動方法:基本
5.具体的な適用例:
表示むら補正期間の設定自由度の拡大技術
実施例1:垂直ブランキング期間中の分割閾値補正なし
実施例2:垂直ブランキング期間中の分割閾値補正あり
実施例3:実施例2(又は実施例1)+従来の閾値補正(分割閾値補正)あり
実施例4:電子機器への適用事例
【0018】
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。
【0019】
本実施形態の構成において、画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、表示部と、保持容量と、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタとを備える。そして、1フィールド期間(1垂直走査期間)を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(好ましくは当該処理を移動度補正処理に利用する)を行なうことが可能に構成されている。このような処理を行なうことを可能にするべく、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、特性制御部を備える。閾値補正処理にとり得る期間は、1水平走査期間ではなく1垂直走査期間と一定の関係を持って設定すればよく、1水平期間との制約関係から開放されるし、設定可能な期間(閾値補正にとり得る期間)を、1水平期間との制約に基づく場合よりも広げることが可能になる。そのため、閾値補正の動作時間が十分に確保できる。
【0020】
本実施形態の構成において、1フィールドを複数に分割するに当たっては、2つの分割期間に分けるのが典型的ではあるが、原理的には2分割に限定されない。例えば、1フィールドを4つに分割し、そのうちの最初の1/4期間を全行分の閾値補正期間に割り当て、その後の1/4期間は休止期間に割り当て、残りの1/2期間で各行の信号書込みや移動度補正を行なう期間に割り当てることができる。又、閾値補正と、信号書込みや移動度補正とは、通常は、閾値補正の後に信号書込みや移動度補正を行なうが、これにも限定されない。但し、好ましくは、1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうのがよい。各処理期間に時間を最大限に割り当てることができ、効率的だからである。
【0021】
本実施形態の構成において、特性制御部は、好ましくは、駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なうのがよい。
【0022】
本実施形態の構成において、特性制御部は、駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なうこともできる。分割閾値補正時の停止(休止)期間におけるいわゆるブートストラップ動作を利用することで、閾値補正を加速させることができる。実態としては、閾値補正期間を、分割閾値補正を行なわない場合よりも短縮できる。
【0023】
本実施形態の構成において、特性制御部は、好ましくは、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なうとよい。つまり、本実施形態の構成において、特性制御部は、1フィールドを複数に分割し、その内の一の分割期間においては閾値補正を行ない、他の分割期間において、信号書込みや移動度補正を行なうことで、オペレーションマージンの増加に対応する。特性制御部は、閾値補正処理の際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なってもよい。必須ではないが、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(移動度補正処理)を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なってもよい。
【0024】
本実施形態の構成においてて、特性制御部は、好ましくは、閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御するのがよい。これによって、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象を解決することができる。尚、駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる点を勘案すると、特性制御部は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。
【0025】
好ましくは、特性制御部は、駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止するとよい。例えば、特性制御部は、駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の期間には、駆動トランジスタの閾値電圧を増大させる処理を中止する。
【0026】
好ましくは、特性制御部は、映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込みつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(換言すると、駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理)の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよい。例えば、特性制御部は、閾値電圧の補正処理の終了と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくするとよい。
【0027】
或いは、特性制御部は、閾値電圧の補正処理の終了よりも前に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくしてもよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるよりも前に駆動トランジスタの閾値電圧を大きくしてもよい。
【0028】
或いは又、好ましくは、特性制御部は、駆動電圧の保持容量への書込みに連動して駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。例えば、特性制御部は、駆動電圧の保持容量への書込み開始と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが導通状態になるのと同時に、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。
【0029】
或いは、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理と連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。つまり、特性制御部は、駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。例えば、駆動トランジスタの移動度補正処理の開始と同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよい。特に、特性制御部は、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には(つまり、当該処理中には)、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせるのがよい。
【0030】
或いは、特性制御部は、表示部の表示開始に連動して駆動トランジスタの閾値電圧を小さくしてもよい。例えば、特性制御部は、表示部の表示開始と同時に、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくするとよく、換言すると、書込トランジスタが非導通状態になるのと同時に駆動トランジスタの閾値電圧を小さくすることができる。或いは、特性制御部は、発光開始直後ではなく、それより少し後で、安定的に発光するようになってから、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくしてもよい。
【0031】
好ましくは、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、駆動トランジスタとしては、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有しているトランジスタを使用するのがよい。この場合、特性制御部は、閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する。閾値電圧を制御し得る特性制御端を有しているトランジスタとしては、例えば、バックゲート型の薄膜トランジスタやMOSFET(金属酸化膜型の電界効果トランジスタ)を使用するのが好適であり、特に、MOSFETを使用するとよい。
【0032】
好ましくは、本実施形態の画素回路、表示装置、或いは、電子機器は、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を画素回路に備えるとよい。駆動トランジスタのリークに起因する表示むら現象は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して起こる点を勘案すると、特性制御部は、書込トランジスタの導通/非導通の動作と連動して、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。
【0033】
表示部としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光部、無機エレクトロルミネッセンス発光部、LED発光部、半導体レーザー発光部等の自発光型の発光部を具備した発光素子を用いることができ、特に、有機エレクトロルミネッセンス発光部であるとよい。
【0034】
1フィールド期間を複数に分割するという点においては、デバイス構成としては、表示部が2次元マトリクス状に配列された画素部を備えるものが採用される。画素部を備える構成の場合、好ましくは、特性制御部は、表示部ごとに、駆動トランジスタの特性を制御するのがよい。表示部が2次元マトリクス状に配列された画素部を備える構成の場合、特性制御部は、走査処理により、表示素子ごとに、駆動トランジスタの特性を制御する構成をとることができる。因みに表示素子ごとに制御する場合は駆動トランジスタのウエルは、個々に分離しておくのがよい。線順次で発光制御を行なう場合であれば、行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号)の分離を行なえばよく、駆動トランジスタのウエルは、表示素子ごとの分離を排除しないが、少なくとも行(或いは列)ごとに分離しておけばよい。
【0035】
駆動トランジスタの特性を制御するための制御信号を除く各種の信号は、必要に応じて、制御信号の振幅分を補正するとよい。
【0036】
<表示装置の概要>
以下の説明においては、対応関係の理解を容易にするため、回路構成部材の抵抗値や容量値(静電容量、キャパシタンス)等は、その部材に付されている符号と同一符号で示すことがある。
【0037】
[基本]
先ず、発光素子を備えた表示装置の概要について説明する。以下の回路構成の説明においては、「電気的に接続」を単に「接続」と記載するし、この「電気的に接続」は、特段の明示のない限り、直接に接続されることに限らず、他のトランジスタ(スイッチングトランジスタが典型例である)その他の電気素子(能動素子に限らず受動素子でもよい)を介して接続されることも含む。
【0038】
表示装置は、複数の画素回路(或いは単に画素とも称することもある)を備えている。各画素回路は、発光部と発光部を駆動する駆動回路とを具備する表示素子(電気光学素子)を有する。表示部としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光部、無機エレクトロルミネッセンス発光部、LED発光部、半導体レーザー発光部等の自発光型の発光部を具備した発光素子を用いることができる。尚、表示素子の発光部を駆動する方式としては定電流駆動型を採用するが、原理的には、定電流駆動型に限らず定電圧駆動型でもよい。
【0039】
以下に説明する例においては、発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス発光部を備えている場合で説明する。より詳細には、発光素子は、駆動回路と、駆動回路に接続された有機エレクトロルミネッセンス発光部(発光部ELP)とが積層された構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)である。
【0040】
発光部ELPを駆動するための駆動回路として各種の回路があるが、画素回路としては、5Tr/1C型、4Tr/1C型、3Tr/1C型、或いは2Tr/1C型等の駆動回路を備えた構成にすることができる。「αTr/1C型」におけるαはトランジスタの数を意味し、「1C」は容量部が1つの保持容量Ccs(キャパシタ)を具備することを意味する。駆動回路を構成する各トランジスタは、好適には、全てがnチャネル型のトランジスタから構成されているのが好ましいが、これには限らず、場合によっては、一部のトランジスタをpチャネル型としてもよい。尚、半導体基板等にトランジスタを形成した構成とすることもできる。駆動回路を構成するトランジスタの構造は、特に限定するものではなく、MOS型FETを代表例とする絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(一般には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor ;TFT))を使用できる。更には、駆動回路を構成するトランジスタはエンハンスメント型とデプレッション型の何れでもよいし、又、シングルゲート型とデュアルゲート型の何れでもよい。
【0041】
何れの構成においても、表示装置は、基本的には、最小の構成要素として2Tr/1C型と同様に、発光部ELP、駆動トランジスタTRD、書込トランジスタTRW(サンプリングトランジスタとも称される)、少なくとも書込走査部を具備する垂直走査部、信号出力部の機能を持つ水平駆動部、保持容量Ccsを備える。好ましくは、ブートストラップ回路を構成するべく、駆動トランジスタTRDの制御入力端(ゲート端)と主電極端(ソース/ドレイン領域)の一方(典型的にはソース端)との間に保持容量Ccsが接続される。駆動トランジスタTRDは、主電極端の一方が発光部ELPと接続され、主電極端の他方は電源線PWLと接続される。電源線PWLには、電源回路或いは電源電圧用の走査回路等から電源電圧(定常電圧或いはパルス状の電圧)が供給される。
【0042】
水平駆動部は、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号Vsigや閾値補正等に使用される基準電位(1種とは限らない)を表す広義の映像信号VSを映像信号線DTL(データ線とも称される)に供給する。書込トランジスタTRWは、主電極端の一方が映像信号線DTLに接続され、主電極端の他方が駆動トランジスタTRDの制御入力端に接続される。書込走査部は書込トランジスタTRWをオン/オフ制御する制御パルス(書込駆動パルスWS)を書込走査線WSLを介して書込トランジスタTRWの制御入力端に供給する。書込トランジスタTRWの主電極端の他端と駆動トランジスタTRDの制御入力端と保持容量Ccsの一端との接続点を第1ノードND1と称し、駆動トランジスタTRDの主電極端の一方と保持容量Ccsの他端との接続点を第2ノードND2と称する。
【0043】
[構成例]
図1及び図2は、本開示に係る表示装置の一実施形態であるアクティブマトリクス型表示装置の一構成例の概略を示すブロック図である。図1は、一般的なアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すブロック図であり、図2は、そのカラー画像表示対応の場合の概略を示すブロック図である。
【0044】
図1に示すように、表示装置1は、複数の表示素子としての有機EL素子(図示せず)を持った画素回路10(画素とも称される)が表示アスペクト比である縦横比がX:Y(例えば9:16)の有効映像領域を構成するように配置された表示パネル部100と、この表示パネル部100を駆動制御する種々のパルス信号を発するパネル制御部の一例である駆動信号生成部200(いわゆるタイミングジェネレータ)と、映像信号処理部220を備えている。駆動信号生成部200と映像信号処理部220とは、1チップのIC(Integrated Circuit;半導体集積回路)に内蔵され、本例では、表示パネル部100の外部に配置されている。
【0045】
尚、製品形態としては、図示のように、表示パネル部100、駆動信号生成部200、及び映像信号処理部220の全てを備えたモジュール(複合部品)形態の表示装置1として提供されることに限らず、例えば、表示パネル部100のみで表示装置1として提供すしてもよい。又、表示装置1は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部102に透明なガラス等の対向部に貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。表示モジュールには、外部から画素アレイ部102への映像信号Vsigや各種の駆動パルスを入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0046】
このような表示装置1は、様々な電子機器、例えば半導体メモリやミニディスク(MD)やカセットテープ等の記録媒体を利用した携帯型の音楽プレイヤー、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ等、電子機器に入力された映像信号や電子機器内で生成した映像信号を、静止画像や動画像(映像)として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部に利用できる。
【0047】
表示パネル部100は、基板101の上に、画素回路10がM行×N列のマトリクス状に配列された画素アレイ部102と、画素回路10を垂直方向に走査する垂直駆動部103と、画素回路10を水平方向に走査する水平駆動部106(水平セレクタ或いはデータ線駆動部とも称される)と、各駆動部(垂直駆動部103及び水平駆動部106)と外部回路とのインタフェースをとるインタフェース部130(IF)と、外部接続用の端子部108(パッド部)等が集積形成されている。即ち、垂直駆動部103や水平駆動部106やインタフェース部130等の周辺駆動回路が、画素アレイ部102と同一の基板101上に形成された構成となっている。第m行目(m=1、2、3、…、M)、第n列(n=1、2、3、…、N)に位置する発光素子(画素回路10)を、図では10_n,mで示している。
【0048】
インタフェース部130は、垂直駆動部103と外部回路とのインタフェースをとる垂直IF部133と、水平駆動部106と外部回路とのインタフェースをとる水平IF部136を有する。
【0049】
垂直駆動部103と水平駆動部106とで、信号電位の保持容量への書込みや、閾値補正動作や、移動度補正動作や、ブートストラップ動作を制御する制御部109が構成される。この制御部109とインタフェース部130(垂直IF部133や水平IF部136)を含めて、画素アレイ部102の画素回路10を駆動制御する駆動制御回路を構成している。
【0050】
2Tr/1C型とする場合であれば、垂直駆動部103は、書込走査部(ライトスキャナWS;Write Scan)や電源供給能力を有する電源スキャナとして機能する駆動走査部(ドライブスキャナDS;Drive Scan)を有する。画素アレイ部102は、一例として、図示する左右方向の一方側もしくは両側から垂直駆動部103で駆動され、かつ図示する上下方向の一方側もしくは両側から水平駆動部106で駆動されるようになっている。
【0051】
端子部108には、表示装置1の外部に配された駆動信号生成部200から、種々のパルス信号が供給される。同様に、映像信号処理部220から映像信号Vsigが供給される。カラー表示対応の場合には、色別(本例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色)の映像信号Vsig_R、映像信号Vsig_G、映像信号Vsig_Bが供給される。
【0052】
一例としては、垂直駆動用のパルス信号として、垂直方向の走査開始パルスの一例であるシフトスタートパルスSP(図はSPDS、SPWSの2種)や垂直走査クロックCK(図はCKDS、CKWSの2種)、必要に応じて位相反転した垂直走査クロックxCK(図はxCKDS、xCKWSの2種)、並びに特定タイミングのパルス出力を指示するイネーブルパルス等の必要なパルス信号が供給される。水平駆動用のパルス信号として、水平方向の走査開始パルスの一例である水平スタートパルスSPHや水平走査クロックCKH、必要に応じて位相反転した水平走査クロックxCKH、並びに特定タイミングのパルス出力を指示するイネーブルパルス等の必要なパルス信号が供給される。
【0053】
端子部108の各端子は、配線109を介して、垂直駆動部103や水平駆動部106に接続される。例えば、端子部108に供給された各パルスは、必要に応じて図示を割愛したレベルシフタ部で電圧レベルを内部的に調整した後、バッファを介して垂直駆動部103の各部や水平駆動部106に供給される。
【0054】
画素アレイ部102は、図示を割愛するが(詳細は後述する)、表示素子としての有機EL素子に対して画素トランジスタが設けられた画素回路10が行列状に2次元配置され、画素配列に対して行ごとに垂直走査線SCLが配線されるとともに、列ごとに映像信号線DTLが配線された構成となっている。つまり、画素回路10は、垂直走査線SCLを介して直駆動部103と接続され、又、映像信号線DTLを介して水平駆動部106と接続されている。具体的には、マトリクス状に配列された各画素回路10に対しては、垂直駆動部103によって駆動パルスで駆動されるn行分の垂直走査線SCL_1〜SCL_nが画素行ごとに配線される。垂直駆動部103は、論理ゲートの組合せ(ラッチやシフトレジスタ等も含む)によって構成され、画素アレイ部102の各画素回路10を行単位で選択する、即ち、駆動信号生成部200から供給される垂直駆動系のパルス信号に基づき、垂直走査線SCLを介して各画素回路10を順次選択する。水平駆動部106は、論理ゲートの組合せ(ラッチやシフトレジスタ等も含む)によって構成され、画素アレイ部102の各画素回路10を列単位で選択する、即ち、駆動信号生成部200から供給される水平駆動系のパルス信号に基づき、選択された画素回路10に対し映像信号線DTLを介して映像信号VSの内の所定電位(例えば映像信号Vsigレベル)をサンプリングして保持容量Ccsに書き込ませる。
【0055】
本実施形態の表示装置1は、線順次駆動や点順次駆動が可能になっており、垂直駆動部103の書込走査部104及び駆動走査部105は線順次で(つまり行単位で)で画素アレイ部102を走査するとともに、これに同期して水平駆動部106が、画像信号を、1水平ライン分を同時に(線順次の場合)、或いは画素単位で(点順次の場合)、画素アレイ部102に書き込む。
【0056】
カラー画像表示対応をとるには、画素アレイ部102には、例えば図2に示すように、色別(本例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色)のサブピクセルとして画素回路10_R、画素回路10_G、画素回路10_Bを所定の配列順で縦ストライプ状に設ける。1組の色別のサブピクセルによりカラーの1画素が構成される。ここでは、サブピクセルレイアウトの一例として縦ストライプ状に各色のサブピクセルを配置したストライプ構造のものを示しているが、サブピクセルレイアウトはこのような配列例に限定されるものではない。サブピクセルを垂直方向にシフトさせた形態を採用してもよい。
【0057】
尚、図1及び図2では、画素アレイ部102の一方側にのみ垂直駆動部103(詳しくはその構成要素)を配置する構成を示しているが、垂直駆動部103の各要素を画素アレイ部102を挟んで左右両側に配置する構成を採ることもできる。又、垂直駆動部103の各要素の一方と他方を左右の各別に配置する構成を採ることもできる。同様に、図1及び図2では、画素アレイ部102の一方側にのみ水平駆動部106を配置する構成を示しているが、画素アレイ部102を挟んで上下両側に水平駆動部106を配置する構成を採ることもできる。本例では、垂直シフトスタートパルス、垂直走査クロック、水平スタートパルス、水平走査クロック等のパルス信号を表示パネル部100の外部から入力する構成としているが、これらの各種のタイミングパルスを生成する駆動信号生成部200を表示パネル部100上に搭載することもできる。
【0058】
図示した構成は、表示装置の一形態を示したに過ぎず、製品形態としては、その他の形態をとることができる。即ち、表示装置は、画素回路10を構成する素子を行列状に配置した画素アレイ部と、画素アレイ部の周辺に配置され、各画素を駆動するための走査線と接続された走査部を主要部とする制御部と、制御部を動作させるための各種の信号を生成する駆動信号生成部や映像信号処理部を備えて装置の全体が構成されていればよい。製品形態としては、画素アレイ部と制御部とを同一の基体(例えばガラス基板)上に搭載した表示パネル部と駆動信号生成部や映像信号処理部を別体とする図示のような形態(パネル上配置構成と称する)の他に、表示パネル部には画素アレイ部を搭載し、それとは別基板(例えばフレキシブル基板)上に制御部や駆動信号生成部や映像信号処理部等の周辺回路を搭載する形態(周辺回路パネル外配置構成と称する)を採ることができる。又、画素アレイ部と制御部とを同一の基体上に搭載して表示パネル部を構成するパネル上配置構成の場合、画素アレイ部のTFTを生成する工程にて同時に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の各トランジスタを生成する形態(トランジスタ一体構成と称する)と、COG(Chip On Glass)実装技術により画素アレイ部が搭載された基体上に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の半導体チップを直接実装する形態(COG搭載構成と称する)を採ることもできる。或いは又、表示パネル部(少なくとも画素アレイ部を備える)のみで表示装置として提供することもできる。
【0059】
<発光素子>
図3は、駆動回路を備えた発光素子11(実質的には画素回路10)を説明する図である。ここで、図3(A)は、発光素子11(画素回路10)の一部分の模式的な一部断面図である。図3(B)は、MOS型のトランジスタ構造例を示す断面図である。図3(A)では、絶縁ゲート型電界効果トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であるとするが、後述の実施例で説明するように、本実施形態においては、少なくとも駆動トランジスタTRDに関しては、いわゆるバックゲート型の薄膜トランジスタ或いは図3(B)に示すようなMOS型のトランジスタを使用することが好ましく、特に図3(B)に示すようなMOS型を使用するのが好適である。薄膜トランジスタをバックゲート型の構造とするには製造工程が複雑になる(或いは製造が困難である)のに対して、図3(B)に示すようなMOS型では半導体基板やウエルがそもそもバックゲート(バルクとも称される)として機能するからである。
【0060】
図3(A)に示すように、発光素子11の駆動回路を構成する各トランジスタ及び容量部(保持容量Ccs)は支持体20上に形成され、発光部ELPは、例えば、層間絶縁層40を介して、駆動回路を構成する各トランジスタ及び保持容量Ccsの上方に形成されている。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に、コンタクトホールを介して接続されている。図3においては、駆動トランジスタTRDのみを図示する。書込トランジスタTRWやその他のトランジスタは隠れて見えない。発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。
【0061】
具体的には、駆動トランジスタTRDは、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、半導体層33に設けられたソース/ドレイン領域35、及び、ソース/ドレイン領域35の間の半導体層33の部分が該当するチャネル形成領域34から構成されている。保持容量Ccsは、他方の電極36、ゲート絶縁層32の延在部から構成された誘電体層、及び、一方の電極37(第2ノードND2に相当する)から成る。ゲート電極31、ゲート絶縁層32の一部、及び、保持容量Ccsを構成する他方の電極36は、支持体20上に形成されている。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域35は配線38に接続され、一方のソース/ドレイン領域35は一方の電極37に接続されている。駆動トランジスタTRD及び保持容量Ccs等は、層間絶縁層40で覆われており、層間絶縁層40上に、アノード電極51、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極53から成る発光部ELPが設けられている。図3においては、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を1層52で表した。発光部ELPが設けられていない層間絶縁層40の部分の上には、第2層間絶縁層54が設けられ、第2層間絶縁層54及びカソード電極53上には透明な基板21が配置されており、発光層にて発光した光は、基板21を通過して、外部に出射される。一方の電極37とアノード電極51とは、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホールによって接続されている。カソード電極53は、第2層間絶縁層54、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホール56、コンタクトホール55を介して、ゲート絶縁層32の延在部上に設けられた配線39に接続されている。
【0062】
図3(A)に示した構成において、TFTをMOS型トランジスタとする場合、図3(B)に示すように、第1の極性(P型又はN型(図はN型))の半導体基板の表面にゲート(狭い領域チャネル)を作り、チャネルを蔽うように酸化膜(特にゲート酸化膜と称する)を介してゲート端子を取り付ける。ゲート端子の材料は例えばポリシリコンを用いることができ、特にポリゲートと称される。更に、ゲート端を含めて全体を蔽うように酸化膜(特にフィールド酸化膜と称する)を成膜した後、ゲート端子の両端に第1の極性と異なる第2の極性(ここではP型)のソース領域とドレイン領域の各端子(それぞれソース端子、ドレイン端子)を金属素材で付ける。これにより、第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に、第2の極性(ここではP型)のMOSトランジスタ(PMOS)(P型デバイス)が形成される。この構造のP型デバイスでは、バックゲートはN型基板であり個別に分離されおらず、個々に又は行(或いは列)ごとに分離しての制御信号の供給はできず、画素アレイ部102の全P型デバイスの共通の制御信号が供給可能である。第1の極性(ここではN型)のMOSトランジスタ(NMOS)(N型デバイス)を第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に形成するには、第1の極性(N型)の半導体基板の表面に、第2の極性(P型)のウエルを形成し、このウエル(Pウエル)を第2の極性(P型)の半導体基板として扱って、以下同様にして、ゲート領域、ソース領域、ドレイン領域等を形成すればよい。この構造のN型デバイスでは、第2の極性(P型)のウエルは、個々に又は行(或いは列)ごとに分離可能であるから、個々に又は行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号Vb)の分離が可能である。尚、第2の極性(ここではP型)のMOSトランジスタ(PMOS)(P型デバイス)を第1の極性(N型)の半導体基板の表面層に形成するに当たり、第1の極性(N型)の半導体基板の表面に、第1の極性(N型)のウエルを形成し(図中の破線を参照)、このウエル(Nウエル)を第1の極性(N型)の半導体基板として扱って、以下同様にして、ゲート領域、ソース領域、ドレイン領域等を形成してもよい。こうすることで、この構造のP型デバイスでは、第1の極性(N型)のウエルは、個々に又は行(或いは列)ごとに分離可能であるから、個々に又は行(或いは列)ごとにウエル電位(トランジスタ特性制御信号Vb)の分離が可能になる。P型デバイス(PMOS)とN型デバイス(NMOS)とは素子分離領域により分離される。
【0063】
[駆動方法]
発光部の駆動方法に関して、以下に説明する。理解を容易にするべく、画素回路10を構成する各トランジスタは、nチャネル型のトランジスタから構成されているとして説明する。又、発光部ELPは、アノード端が第2ノードND2に接続され、カソード端はカソード配線cath(その電位をカソード電位Vcathとする)に接続されるものとする。更には、ドレイン電流Idsの値の大小によって、発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。発光素子の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの2つの主電極端(ソース/ドレイン領域)は、一方(発光部ELPのアノード側)がソース端(ソース領域)として働き、他方がドレイン端(ドレイン領域)として働く。表示装置は、カラー表示対応のものであり、(N/3)×M個の2次元マトリクス状に配列された画素回路10から構成され、カラー表示の一単位を成す1つの画素回路は、3つの副画素回路(赤色を発光する赤色発光画素回路10_R、緑色を発光する緑色発光画素回路10_G、青色を発光する青色発光画素回路10_B)から構成されているとする。各画素回路10を構成する発光素子は、線順次駆動されるとし、表示フレームレートをFR(回/秒)とする。即ち、第m行目(但し、m=1、2、3、…、M)に配列された(N/3)個の画素回路10、より具体的には、N個の画素回路10のそれぞれを構成する発光素子が同時に駆動される。換言すれば、1つの行を構成する各発光素子にあっては、その発光/非発光のタイミングは、それらが属する行単位で制御される。尚、1つの行を構成する各画素回路10について映像信号を書き込む処理は、全ての画素回路10について同時に映像信号を書き込む処理(同時書込み処理とも称する)でもよいし、画素回路10毎に順次映像信号を書き込む処理(順次書込み処理とも称する)でもよい。何れの書込み処理とするかは、駆動回路の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0064】
ここで、第m行目、第n列(但し、n=1、2、3、…、N)に位置する発光素子(画素回路10)に関する駆動動作を説明する。因みに、第m行目、第n列に位置する発光素子を、第(n、m)番目の発光素子或いは第(n、m)番目の発光素子画素回路と称する。第m行目に配列された各発光素子の水平走査期間(第m番目の水平走査期間)が終了するまでに、各種の処理(閾値補正処理、書込み処理、移動度補正処理、等)が行なわれる。尚、書込み処理や移動度補正処理は、第m番目の水平走査期間内に行なわれる必要がある。一方、駆動回路の種類によっては、閾値補正処理やこれに伴う前処理を第m番目の水平走査期間より先行して行なうことができる。
【0065】
前述の各種の処理が全て終了した後、第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部を発光させる。尚、各種の処理が全て終了した後、直ちに発光部を発光させてもよいし、所定の期間(例えば、所定の行数分の水平走査期間)が経過した後に発光部を発光させてもよい。「所定の期間」は、表示装置の仕様や画素回路10(つまり駆動回路)の構成等に応じて、適宜設定すればよい。以下では説明の便宜のため、各種の処理終了後、直ちに発光部を発光させるものとする。第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部の発光は、第(m+m’)行目に配列された各発光素子の水平走査期間の開始直前まで継続される。「m’」は、表示装置の設計仕様によって決定すればよい。即ち、或る表示フレームの第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部の発光は、第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続される。一方、第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、次の表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内において書込み処理や移動度補正処理が完了するまで、第m行目に配列された各発光素子を構成する発光部は、原則として非発光状態を維持する。非発光状態の期間(非発光期間とも称する)を設けることにより、アクティブマトリクス駆動に伴う残像ボケが低減され、動画品位をより良好にすることができる。但し、各画素回路10(発光素子)の発光状態/非発光状態は、以上に説明した状態には限定されない。水平走査期間の時間長は、(1/FR)×(1/M)秒未満の時間長である。(m+m’)の値がMを越える場合、越えた分の水平走査期間は、次の表示フレームにおいて処理される。
【0066】
トランジスタがオン状態(導通状態)にあるとは、主電極端間(ソース/ドレイン領域間)にチャネルが形成されている状態を意味し、一方の主電極端から他方の主電極端に電流が流れているか否かは問わない。トランジスタがオフ状態(非導通状態)にあるとは、主電極端間にチャネルが形成されていない状態を意味する。或るトランジスタの主電極端が他のトランジスタの主電極端に接続されているとは、或るトランジスタのソース/ドレイン領域と他のトランジスタのソース/ドレイン領域とが同じ領域を占めている形態を包含する。更には、ソース/ドレイン領域は、不純物を含有したポリシリコンやアモルファスシリコン等の導電性物質から構成することができるだけでなく、金属、合金、導電性粒子、これらの積層構造、有機材料(導電性高分子)から成る層から構成することができる。又、以下の説明で用いるタイミングチャートにおいて、各期間を示す横軸の長さ(時間長)は模式的なものであり、各期間の時間長の割合を示すものではない。
【0067】
画素回路10の駆動方法においては、前処理工程、閾値補正処理工程、映像信号書込み処理工程、移動度補正工程、発光工程を有する。前処理工程、閾値補正処理工程、映像信号書込み処理工程、及び、移動度補正工程を纏めて非発光工程とも称する。画素回路10の構成によっては映像信号書込み処理工程と移動度補正工程とを同時に行なうこともある。各工程について概説する。
【0068】
因みに、駆動トランジスタTRDは、発光素子の発光状態においては、以下の式(1)に従ってドレイン電流Idsを流すように駆動される。ドレイン電流Idsが発光部ELPを流れることで発光部ELPが発光する。更には、ドレイン電流Idsの値の大小によって、発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。発光素子の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの2つの主電極端(ソース/ドレイン領域)は、一方(発光部ELPのアノード端側)がソース端(ソース領域)として働き、他方がドレイン端(ドレイン領域)として働く。説明の便宜のため、以下の説明において、駆動トランジスタTRDの一方の主電極端を単にソース端と称し、他方の主電極端を単にドレイン端と呼ぶ場合がある。尚、実効的な移動度μ、チャネル長L、チャネル幅W、制御電極端の電位(ゲート電位Vg)とソース端の電位(ソース電位Vs)との電位差(ゲート・ソース間電圧)Vgs、閾値電圧Vth、等価容量Cox((ゲート絶縁層の比誘電率)×(真空の誘電率)/(ゲート絶縁層の厚さ))、係数k≡(1/2)・(W/L)・Coxとする。
【0069】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2 (1)
【0070】
以下の説明では、特段の断りのない限り、発光部ELPの寄生容量の静電容量Celは、保持容量Ccsの静電容量Ccs及び駆動トランジスタTRDの寄生容量の一例であるゲート・ソース間の静電容量Cgsと比較して十分に大きな値であるとし、駆動トランジスタTRDのゲート端の電位(ゲート電位Vg)の変化に基づく駆動トランジスタTRDのソース領域(第2ノードND2)の電位(ソース電位Vs)の変化を考慮しない。
【0071】
〔前処理工程〕
第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを越え、且つ、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差が、発光部ELPの閾値電圧VthELを越えないように、第1ノードND1に第1ノード初期化電圧(Vofs)を印加し、第2ノードND2に第2ノード初期化電圧(Vini)を印加する。例えば、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号Vsigを0〜10ボルト、電源電圧Vccを20ボルト、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを3V、カソード電位Vcathを0ボルト、発光部ELPの閾値電圧VthELを3ボルトとする。この場合、駆動トランジスタTRDの制御入力端の電位(ゲート電位Vg、つまり第1ノードND1の電位)を初期化するための電位Vofsは0ボルト、駆動トランジスタTRDのソース端の電位(ソース電位Vsつまり第2ノードND2の電位)を初期化するための電位Viniは−10ボルトとする。
【0072】
〔閾値補正処理工程〕
第1ノードND1の電位を保った状態で、駆動トランジスタTRDにドレイン電流Idsを流して、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって第2ノードND2の電位を変化させる。この際には、前処理工程後の第2ノードND2の電位に駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを加えた電圧を超える電圧(例えば発光時の電源電圧)を、駆動トランジスタTRDの主電極端の他方(第2ノードND2とは反対側)に印加する。この閾値補正処理工程において、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差(換言すれば、駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs)が駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthに近づく程度は閾値補正処理の時間により左右される。よって、例えば閾値補正処理の時間を充分長く確保すれば第2ノードND2の電位は第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に達し、駆動トランジスタTRDはオフ状態となる。一方、例えば閾値補正処理の時間を短く設定せざるを得ない場合は、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthより大きく、駆動トランジスタTRDはオフ状態とはならない場合がある。閾値補正処理の結果として、必ずしも駆動トランジスタTRDがオフ状態となることを要しない。尚、閾値補正処理工程においては、好ましくは、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておくことで、発光部ELPが発光しないようにする。
【0073】
(Vofs−Vth)<(VthEL+Vcath) (2)
【0074】
〔映像信号書込み処理工程〕
書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSによりオン状態とされた書込トランジスタTRWを介して、映像信号線DTLから映像信号Vsigを第1ノードND1に印加し、第1ノードND1の電位をVsigへと上昇させる。この電第1ノードND1の電位変化分(ΔVin=Vsig−Vofs)に基づく電荷が、保持容量Ccs、発光部ELPの寄生容量Cel、駆動トランジスタTRDの寄生容量(例えばゲート・ソース間容量Cgs等)に振り分けられる。静電容量Celが、静電容量Ccs及びゲート・ソース間容量Cgsの静電容量Cgsと比較して十分に大きな値であれば、電位変化分(Vsig−Vofs)に基づく第2ノードND2の電位の変化は小さい。一般に、発光部ELPの寄生容量Celの静電容量Celは、保持容量Ccsの静電容量Ccs及びゲート・ソース間容量Cgsの静電容量Cgsよりも大きい。この点を勘案して、特段の必要がある場合を除き、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化は考慮しない。この場合、ゲート・ソース間電圧Vgsは、式(3)で表すことができる。
【0075】
Vg=Vsig
Vs ≒Vofs−Vth
Vgs≒Vsig−(Vofs−Vth) (3)
【0076】
〔移動度補正処理工程〕
書込トランジスタTRWを介して映像信号Vsigを保持容量Ccsの一端に供給しつつ(つまり映像信号Vsigと対応する駆動電圧を保持容量Ccsに書き込みつつ)、駆動トランジスタTRDを介して保持容量Ccsに電流を供給する。例えば、書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSによりオン状態とされた書込トランジスタTRWを介して映像信号線DTLから映像信号Vsigを第1ノードND1に供給した状態で、駆動トランジスタTRDに電源を供給しドレイン電流Idsを流して、第2ノードND2の電位を変化させ、所定期間経過後、書込トランジスタTRWをオフ状態にする。このときの第2ノードND2の電位変化分をΔV(=電位補正値、負帰還量)とする。移動度補正処理を実行するための所定期間は、表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。尚、この際には、好ましくは、式(2A)を満足するように移動度補正期間を決定する。こうすることで、移動度補正期間に発光部ELPが発光することはない。
【0077】
(Vofs−Vth+ΔV)<(VthEL+Vcath) (2A)
【0078】
駆動トランジスタTRDの移動度μの値が大きい場合は電位補正値ΔVは大きくなり、移動度μの値が小さい場合は電位補正値ΔVは小さくなる。このときの駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs(つまり第1ノードND1と第2ノードND2との電位差)は、式(4)で表すことができる。ゲート・ソース間電圧Vgsは発光時の輝度を規定するが、電位補正値ΔVは駆動トランジスタTRDのドレイン電流Idsに比例し、ドレイン電流Idsは移動度μに比例するので、結果的には、移動度μが大きいほど電位補正値ΔVが大きくなるので、画素回路10ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0079】
Vgs≒Vsig−(Vofs−Vth)−ΔV (4)
【0080】
〔発光工程〕
書込走査線WSLからの書込駆動パルスWSにより書込トランジスタTRWをオフ状態とすることにより第1ノードND1を浮遊状態とし、駆動トランジスタTRDに電源を供給して駆動トランジスタTRDを介して、駆動トランジスタTRDのゲート・ソース間電圧Vgs(第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差)に応じた電流Idsを発光部ELPに流すことにより発光部ELPを駆動して発光させる。
【0081】
〔駆動回路の構成による相違点〕
ここで、それぞれ典型的な、5Tr/1C型、4Tr/1C型、3Tr/1C型、2Tr/1C型での相違点は以下の通りである。5Tr/1C型では、駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端と電源回路(電源部)との間に接続された第1トランジスタTR1(発光制御トランジスタ)と、第2ノード初期化電圧を印加する第2トランジスタTR2と、第1ノード初期化電圧を印加する第3トランジスタTR3とを設ける。第1トランジスタTR1、第2トランジスタTR2、第3トランジスタTR3は何れもスイッチングトランジスタである。第1トランジスタTR1は、発光期間にオン状態としておき、オフ状態にして非発光期間に入り、その後の閾値補正期間に一度オン状態にし、更に移動度補正期間以降(次の発光期間も)オン状態とする。第2トランジスタTR2は、第2ノードの初期化期間にのみオン状態としそれ以外はオフ状態とする。第3トランジスタTR3は、第1ノードの初期化期間から閾値補正期間に亘ってのみオン状態としそれ以外はオフ状態とする。書込トランジスタTRWは、映像信号書込み処理期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0082】
4Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第1ノード初期化電圧を印加する第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給される。第1ノードの初期化期間に第1ノード初期化電圧を映像信号線DTLから第1ノードに供給するべく、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第1ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0083】
3Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第2トランジスタTR2と第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧及び第2ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給される。映像信号線DTLの電位は、第2ノードの初期化期間に第2ノードを第2ノード初期化電圧に設定し、その後の第1ノードの初期化期間に第1ノードを第1ノード初期化電圧に設定するべく、第2ノード初期化電圧と対応した電圧Vofs_Hを供給しその後に第1ノード初期化電圧Vofs_L(=Vofs)にする。そして、これと対応して、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間及び第2ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第2ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0084】
因みに、3Tr/1C型では、映像信号線DTLを利用して第2ノードND2の電位を変化させる。このため、保持容量Ccsの静電容量Ccsを、設計上、他の駆動回路よりも大きい値(例えば、静電容量Ccsを静電容量Celの約1/4〜1/3程度)に設定する。したがって、他の駆動回路よりも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化の程度が大きい点を考慮する。
【0085】
2Tr/1C型では、5Tr/1C型から、第1トランジスタTR1と第2トランジスタTR2と第3トランジスタTR3が省略され、第1ノード初期化電圧は映像信号線DTLから映像信号Vsigと時分割で供給され、第2ノード初期化電圧は駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端を、第1電位Vcc_H(=5Tr/1C型のVcc)と第2電位Vcc_L(=5Tr/1C型のVini)でパルス駆動することで与えられる。駆動トランジスタTRDの電源側の主電極端は、発光期間に第1電位Vcc_Hにされ、第2電位Vcc_Lにされることで非発光期間に入り、その後の閾値補正期間以降(次の発光期間も)に第1電位Vcc_Hにされる。第1ノードの初期化期間に第1ノード初期化電圧を映像信号線DTLから第1ノードに供給するべく、書込トランジスタTRWは第1ノードの初期化期間にもオン状態とされる。典型的には、書込トランジスタTRWは、第1ノードの初期化期間から移動度補正処理期間に亘ってオン状態とされ、それ以外はオフ状態とされる。
【0086】
尚、ここでは、駆動トランジスタの特性ばらつきとして、閾値電圧及び移動度の双方について補正処理を行なう場合で説明したが、何れか一方のみについて補正処理を行なうようにしてもよい。
【0087】
以上、好ましい例に基づき説明したが、これらの例に限定されるものではない。各例において説明した表示装置、表示素子、駆動回路を構成する各種の構成要素の構成、構造、発光部の駆動方法における工程は例示であり、適宜、変更することができる。
【0088】
又、5Tr/1C型、4Tr/1C型、及び、3Tr/1C型の動作においては、書込み処理と移動度補正を別個に行なってもよいし、2Tr/1C型と同様に、書込み処理において移動度補正処理を併せて行なってもよい。具体的には、第1トランジスタTR1(発光制御トランジスタ)をオン状態とした状態で、書込トランジスタTRWを介して、データ線DTLから映像信号VSigを第1ノードに印加すればよい。
【0089】
<具体的な適用例>
以下に、画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正するための処理期間の設定自由度を拡大する画素回路の駆動技術の具体的な適用例について説明する。尚、アクティブマトリクス型の有機ELパネルを使用する表示装置においては、例えば、パネル両側或いは片側に配置されている垂直走査部によってトランジスタの制御入力端に供給する各種のゲート信号(制御パルス)を作り、画素回路10へ当該信号を印加する。更にはこのような有機ELパネルを使用する表示装置においては、素子数削減及び高精細化のため、2Tr/1C型の画素回路10を用いることがある。この点を勘案して、以下では、代表的に2Tr/1C型の構成への適用例で説明するが、5Tr/1C型等への適用も可能である。
【実施例1】
【0090】
[画素回路]
図4及び図5は、実施例1の画素回路10Aと、当該画素回路10Aを備えた表示装置の一形態を示す図である。画素回路10Aを画素アレイ部102に備える表示装置を実施例1の表示装置1Aと称する。図4は基本構成(1画素分)を示し、図5は具体的な構成(表示装置の全体)を示す。尚、表示パネル部100の基板101上において画素回路10Aの周辺部に設けられた垂直駆動部103と水平駆動部106も合わせて示している。
【0091】
表示装置1Aは、映像信号Vsig(詳しくは信号振幅ΔVin)に基づいて画素回路10A内の電気光学素子(本例では発光部ELPとして有機EL素子127を使用する)を発光させる。このため、表示装置1Aは、画素アレイ部102に行列状に配される画素回路10A内に、少なくとも、駆動電流を生成する駆動トランジスタ121(駆動トランジスタTRD)、駆動トランジスタ121の制御入力端(ゲート端が典型例)と出力端(ソース端が典型例)の間に接続された保持容量120(保持容量Ccs)、駆動トランジスタ121の出力端に接続された電気光学素子の一例である有機EL素子127(発光部ELP)、及び、保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込むサンプリングトランジスタ125(書込トランジスタTRW)を備える。この画素回路10Aにおいては、保持容量120に保持された情報に基づく駆動電流Idsを駆動トランジスタ121で生成して電気光学素子の一例である有機EL素子127に流すことで有機EL素子127を発光させる。
【0092】
サンプリングトランジスタ125で保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込むので、サンプリングトランジスタ125は、その入力端(ソース端もしくはドレイン端の一方)に信号電位(Vofs+ΔVin)を取り込み、その出力端(ソース端もしくはドレイン端の他方)に接続された保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込む。もちろん、サンプリングトランジスタ125の出力端は、駆動トランジスタ121の制御入力端にも接続されている。
【0093】
ここで示した画素回路10Aの接続構成は、最も基本的な構成を示したもので、画素回路10Aは、少なくとも前述の各構成要素を含むものであればよく、これらの構成要素以外(つまり他の構成要素)が含まれていてもよい。又、「接続」は、直接に接続されている場合に限らず、他の構成要素を介在して接続されている場合でもよい。例えば、接続間には、必要に応じて更に、スイッチング用のトランジスタや、ある機能を持った機能部等を介在させる等の変更が加えられることがある。典型的には、表示期間(換言すれば非発光時間)を動的に制御するためにスイッチング用のトランジスタを、駆動トランジスタ121の出力端と電気光学素子(有機EL素子127)と間に、もしくは駆動トランジスタ121の電源供給端(ドレイン端が典型例)と電源供給用の配線である電源線PWL(本例では電源供給線105DSL)との間に配することがある。このような変形態様の画素回路であっても、後述の各実施例で説明する構成や作用を実現し得るものである限り、それらの変形態様も、本開示に係る表示装置の一実施形態を実現する画素回路10である。
【0094】
又、画素回路10Aを駆動するための周辺部には、例えば、サンプリングトランジスタ125を水平周期で順次制御することで画素回路10Aを線順次走査して、1行分の各保持容量120に映像信号Vsigの信号振幅ΔVinに応じた情報を書き込む書込走査部104、及び、書込走査部104での線順次走査に合わせて1行分の各駆動トランジスタ121の電源供給端に印加される電源供給を制御するための走査駆動パルス(電源駆動パルスDSL)を出力する駆動走査部105を具備する制御部109を設ける。又、制御部109には、書込走査部104での線順次走査に合わせて各水平周期内で基準電位(Vofs)と信号電位(Vofs+ΔVin)で切り替わる映像信号Vsigがサンプリングトランジスタ125に供給されるように制御する水平駆動部106を設ける。
【0095】
制御部109は、好ましくは、保持容量120に信号振幅ΔVinに対応する情報が書き込まれた時点でサンプリングトランジスタ125を非導通状態にして駆動トランジスタ121の制御入力端への映像信号Vsigの供給を停止させ、駆動トランジスタ121の出力端の電位変動に制御入力端の電位が連動するブートストラップ動作を行なうように制御するのがよい。制御部109は、好ましくは、ブートストラップ動作を、サンプリング動作の終了後の発光開始の初期でも実行するようにする。即ち、信号電位(Vofs+ΔVin)がサンプリングトランジスタ125に供給されている状態でサンプリングトランジスタ125を導通状態にした後にサンプリングトランジスタ125を非導通状態にすることで、駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位差が一定に維持されるようにする。
【0096】
又、制御部109は、好ましくはブートストラップ動作を、発光期間において電気光学素子(有機EL素子127)の経時変動補正動作を実現するように制御する。このため、制御部109は、保持容量120に保持された情報に基づく駆動電流Idsが電気光学素子(有機EL素子127)に流れている期間は継続的にサンプリングトランジスタ125を非導通状態にしておくことで、制御入力端と出力端の電圧を一定に維持可能にして電気光学素子の経時変動補正動作を実現するとよい。発光時における保持容量120のブートストラップ動作により有機EL素子127の電流−電圧特性が経時変動しても駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位差をブートストラップした保持容量120により一定に保つことで、常に一定の発光輝度を保つようにする。又、好ましくは、制御部109は、基準電位(=第1ノード初期化電圧Vofs)がサンプリングトランジスタ125の入力端(ソース端が典型例)に供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに対応する電圧を保持容量120に保持するための閾値補正動作を行なうように制御する。
【0097】
この閾値補正動作は、必要に応じて、信号振幅ΔVinに対応する情報の保持容量120への書込みに先行する複数の水平周期で繰り返し実行するとよい。ここで「必要に応じて」とは、1水平周期内の閾値補正期間では駆動トランジスタ121の閾値電圧に相当する電圧を十分に保持容量120へ保持させることができない場合を意味する。閾値補正動作の複数回の実行により、確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持させる。
【0098】
又、更に好ましくは、制御部109は、閾値補正動作に先立って、サンプリングトランジスタ125の入力端に基準電位(Vofs)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させて閾値補正用の準備動作(放電動作や初期化動作)を実行するように制御する。閾値補正動作前に駆動トランジスタ121の制御入力端と出力端の電位を初期化しておく。より詳しくは、制御入力端と出力端と間に保持容量120を接続しておくことで、保持容量120の両端の電位差が閾値電圧Vth以上になるように設定する。
【0099】
尚、2Tr/1C駆動構成における閾値補正に当たっては、制御部109には、書込走査部104での線順次走査に合わせて1行分の各画素回路10Aに、駆動電流Idsを電気光学素子(有機EL素子127)に流すために使用される第1電位Vcc_Hと第1電位Vcc_Hとは異なる第2電位Vcc_Lとを切り替えて出力する駆動走査部105を設け、駆動トランジスタ121の電源供給端子に第1電位Vcc_Hに対応する電圧が供給され、かつサンプリングトランジスタ121に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで閾値補正動作を行なうように制御するのがよい。又、2TR駆動構成における閾値補正の準備動作に当たっては、駆動トランジスタ121の電源供給端に第2電位Vcc_L(=第2ノード初期化電圧Vini)に対応する電圧が供給され、かつサンプリングトランジスタ125に基準電位(Vofs)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させて、駆動トランジスタ121の制御入力端(つまり第1ノードND1)の電位を基準電位(Vofs)に、又出力端(つまり第2ノードND2)の電位を第2電位Vcc_Lに初期化するのがよい。
【0100】
更に好ましくは、制御部109は、閾値補正動作の後、駆動トランジスタ121に第1電位Vcc_Hに対応する電圧が供給され、サンプリングトランジスタ125に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させることで保持容量120に信号振幅ΔVinの情報を書き込む際、駆動トランジスタ121の移動度μに対する補正分を保持容量120に書き込まれる情報に加えるように制御する。この際には、サンプリングトランジスタ125に信号電位(Vofs+ΔVin)が供給されている時間帯内の所定位置で、その時間帯より短い期間だけサンプリングトランジスタ125を導通させるとよい。以下2Tr/1C駆動構成での画素回路10Aの一例について具体的に説明する。
【0101】
画素回路10Aは、基本的にnチャネル型の薄膜電界効果トランジスタで駆動トランジスタが構成されている。又、有機EL素子の経時劣化による当該有機EL素子への駆動電流Idsの変動を抑制するための回路、即ち電気光学素子の一例である有機EL素子の電流−電圧特性の変化を補正して駆動電流Idsを一定に維持する駆動信号一定化回路(その1)(本明細書の特性補正部の一例)を備え、又駆動トランジスタの特性変動(閾値電圧ばらつきや移動度ばらつき)による駆動電流変動を防ぐ閾値補正機能や移動度補正機能を実現して駆動電流Idsを一定に維持する駆動方式を採用した点に特徴を有する。
【0102】
駆動トランジスタ121の特性変動(例えば閾値電圧や移動度等のばらつきや変動)による駆動電流Idsに与える影響を抑制する方法としては、2Tr構成の駆動回路をそのまま駆動信号一定化回路(その1)として採用しつつ、各トランジスタ(駆動トランジスタ121及びサンプリングトランジスタ125)の駆動タイミングを工夫することで対処する。画素回路10Aは、2Tr駆動の構成であり、素子数や配線数が少ないため、高精細化が可能であることに加えて、映像信号Vsigの劣化なくサンプリングできるため、良好な画質を得ることができる。
【0103】
又、画素回路10Aは、保持容量120の接続態様に特徴を有し、有機EL素子127の経時劣化による駆動電流変動を防ぐ回路として、駆動信号一定化回路(その2)の一例であるブートストラップ回路を構成している。有機EL素子の電流−電圧特性に経時変化があった場合でも駆動電流を一定にする(駆動電流変動を防ぐ)ブートストラップ機能を実現する駆動信号一定化回路(その2)を備えた点に特徴を有する。
【0104】
駆動トランジスタを始めとする各トランジスタとしてはFET(電界効果トランジスタ)を使用する。この場合、駆動トランジスタについては、ゲート端を制御入力端として取り扱い、ソース端及びドレイン端の何れか一方(ここではソース端とする)を出力端として取り扱い、他方を電源供給端(ここではドレイン端とする)として取り扱う。
【0105】
具体的には図4及び図5に示すように、画素回路10Aは、それぞれnチャネル型の駆動トランジスタ121及びサンプリングトランジスタ125と、電流が流れることで発光する電気光学素子の一例である有機EL素子127とを有する。一般に、有機EL素子127は整流性があるためダイオードの記号で表している。尚、有機EL素子127には、寄生容量Celが存在する。図では、この寄生容量Celを有機EL素子127(ダイオード状のもの)と並列に示す。
【0106】
駆動トランジスタ121は、ドレイン端Dが第1電位Vcc_H或いは第2電位Vcc_Lを供給する電源供給線105DSLに接続され、ソース端Sが、有機EL素子127のアノード端Aに接続され(その接続点は第2ノードND2でありノードND122とする)、有機EL素子127のカソード端Kが基準電位を供給する全画素回路10A共通のカソード配線cath(電位はカソード電位Vcath、例えばGND)に接続されている。尚、カソード配線cathは、それ用の単一層の配線(上層配線)のみとしてもよいし、例えばアノード用の配線が形成されるアノード層に、カソード配線用の補助配線を設けてカソード配線の抵抗値を低減するようにしてもよい。この補助配線は、画素アレイ部102(表示エリア)内に格子状又は列又は行状に配線され、上層配線と同電位で固定電位である。
【0107】
サンプリングトランジスタ125は、ゲート端Gが書込走査部104からの書込走査線104WSに接続され、ドレイン端Dが映像信号線106HS(映像信号線DTL)に接続され、ソース端Sが駆動トランジスタ121のゲート端Gに接続されている(その接続点は第1ノードND1でありノードND121とする)。サンプリングトランジスタ125のゲート端Gには、書込走査部104からアクティブHの書込駆動パルスWSが供給される。サンプリングトランジスタ125は、ソース端Sとドレイン端Dとを逆転させた接続態様とすることもできる。
【0108】
駆動トランジスタ121のドレイン端Dは、電源スキャナとして機能する駆動走査部105からの電源供給線105DSLに接続されている。電源供給線105DSLは、この電源供給線105DSLそのものが、駆動トランジスタ121に対しての電源供給能力を備える点に特徴を有する。駆動走査部105は、駆動トランジスタ121のドレイン端Dに対して、それぞれ電源電圧に相当する高電圧側の第1電位Vcc_Hと閾値補正に先立つ準備動作に利用される低電圧側の第2電位Vcc_L(初期化電圧もしくはイニシャル電圧とも称される)とを切り替えて供給する。
【0109】
駆動トランジスタ121のドレイン端D側(電源回路側)を第1電位Vcc_Hと第2電位Vcc_Lの2値をとる電源駆動パルスDSLで駆動することで、閾値補正に先立つ準備動作を行なうことを可能にしている。第2電位Vcc_Lとしては、映像信号線106HSにおける映像信号Vsigの基準電位(Vofs)より十分低い電位とする。具体的には、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgs(ゲート電位Vgとソース電位Vsの差)が駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthより大きくなるように、電源供給線105DSLの低電位側の第2電位Vcc_Lを設定する。尚、基準電位(Vofs)は、閾値補正動作に先立つ初期化動作に利用するとともに映像信号線106HSを予めプリチャージにしておくためにも利用する。
【0110】
このような画素回路10Aでは、有機EL素子127を駆動するときには、駆動トランジスタ121のドレイン端Dに第1電位Vcc_Hが供給され、ソース端Sが有機EL素子127のアノード端A側に接続されることで、全体としてソースフォロワ回路を形成するようになっている。
【0111】
このような画素回路10Aを採用する場合、駆動トランジスタ121の他に走査用に1つのスイッチングトランジスタ(サンプリングトランジスタ125)を使用する2TR駆動の構成を採るとともに、各スイッチングトランジスタを制御する電源駆動パルスDSL及び書込駆動パルスWSのオン/オフタイミングの設定により、有機EL素子127の経時劣化や駆動トランジスタ121の特性変動(例えば閾値電圧や移動度等のばらつきや変動)による駆動電流Idsに与える影響を防ぐ。
【0112】
[画素回路の比較例の動作]
図6は、画素回路10Aに関する駆動タイミングの一例として、線順次方式で信号振幅ΔVinの情報を保持容量120に書き込む際の比較例の動作を説明するタイミングチャート(理想状態)である。図7は、図6に示したタイミングチャートの主要な期間における等価回路と動作状態を説明する図である。図6においては、時間軸を共通にして、書込走査線104WSの電位変化、電源供給線105DSLの電位変化、映像信号線106HSの電位変化を表してある。これらの電位変化と並行に、駆動トランジスタ121のゲート電位Vg及びソース電位Vsの変化も表してある。基本的には、書込走査線104WSや電源供給線105DSLの1行ごとに、1水平走査期間だけ遅れて同じような駆動を行なう。以下では、画素回路10Aにおける比較例の動作について説明するが、後述する各実施例において特段の断りのない事項は、ここで説明する動作が同様に適用し得る。
【0113】
図6中の信号のように各パルスのタイミングによって有機EL素子127に流れる電流値をコントロールする。図6のタイミング例では、電源駆動パルスDSLを第2電位Vcc_Lとすることで消光及びノードND122を初期化した後に、第1ノード初期化電圧Vofsを映像信号線106HSに印加している際にサンプリングトランジスタ125をオン状態としてノードND121を初期化し、その状態で電源駆動パルスDSLを第1電位Vcc_Hとすることで閾値補正を行なう。その後、サンプリングトランジスタ125をオフ状態とし、映像信号線106HSに映像信号Vsigを印加する。その状態でサンプリングトランジスタ125をオン状態とすることにより信号を書き込むと同時に移動度補正を行なう。信号を書き込んだ後、サンプリングトランジスタ125をオフ状態にすると発光を開始する。このように移動度補正や閾値補正等、パルスの位相差によって駆動をコントロールする。
【0114】
以下、閾値補正及び移動度補正に着目して動作を詳しく説明する。画素回路10Aにおいて、駆動タイミングとしては、先ず、サンプリングトランジスタ125は、書込走査線104WSから供給された書込駆動パルスWSに応じて導通し、映像信号線106HSから供給された映像信号Vsigをサンプリングして保持容量120に保持する。最初に、以下では、説明や理解を容易にするため、特段の断りのない限り、書込みゲインが1(理想値)であると仮定して、保持容量120に信号振幅ΔVinの情報を、書き込む、保持する、あるいはサンプリングする等と簡潔に記して説明する。書込みゲインが1未満の場合、保持容量120には信号振幅ΔVinの大きさそのものではなく、信号振幅ΔVinの大きさに対応するゲイン倍された情報が保持されることになる。
【0115】
画素回路10Aに対する駆動タイミングは、映像信号Vsigの信号振幅ΔVinの情報を保持容量120に書き込む際に、順次走査の観点からは、1行分の映像信号を同時に各列の映像信号線106HSに伝達する線順次駆動を行なう。特に、2Tr構成の画素回路10Aにおける駆動タイミングでの閾値補正と移動度補正を行なう際の基本的な考え方においては、先ず、映像信号Vsigを基準電位(Vofs)と信号電位(Vofs+ΔVin)とを1H期間内において時分割で有するものとする。具体的には、映像信号Vsigが非有効期間である基準電位(Vofs)にある期間を1水平期間の前半部とし、有効期間である信号電位(Vsig=Vofs+ΔVin)にある期間を1水平期間の後半部とする。1水平期間を前半部と後半部に分ける際は、典型的にはほぼ1/2期間ずつ分けるがこのことは必須でなく、前半部よりも後半部の方をより長くしてもよいし、逆に、前半部よりも後半部の方をより短くしてもよい。
【0116】
信号書込みに用いる書込駆動パルスWSを閾値補正や移動度補正にも用いることとし、1H期間内に2回、書込駆動パルスWSをアクティブにしてサンプリングトランジスタ125をオンする。そして、1回目のオンタイミングにて閾値補正を行ない、2回目のオンタイミングにて信号電圧書込みと移動度補正を同時に行なう。その後、駆動トランジスタ121は、第1電位(高電位側)にある電源供給線105DSLから電流の供給を受け保持容量120に保持された信号電位(映像信号Vsigの有効期間の電位に対応する電位)に応じて駆動電流Idsを有機EL素子127に流す。尚、1H期間内に2回、書込駆動パルスWSをアクティブにするのではなく、サンプリングトランジスタ125のオン状態を維持したまま、映像信号線106HSの電位を、有機EL素子127における輝度を制御するための信号電位(=Vofs+ΔVin)としてもよい。
【0117】
例えば、有機EL素子127の発光状態は、電源供給線105DSLが第1電位Vcc_Hであり、サンプリングトランジスタ125がオフ状態である(図6(A)を参照)。このとき、駆動トランジスタ121は飽和領域で動作するように設定されているため、有機EL素子127に流れる電流Idsは駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgs(ノードND121とノードND122との間の電圧)に応じて決まる式(1)に示される値となる。その後、垂直駆動部103は、電源供給線105DSLが第1電位Vcc_Hにありかつ映像信号線106HSが映像信号Vsigの非有効期間である基準電位(Vofs)にある時間帯でサンプリングトランジスタ125を導通させる制御信号として書込駆動パルスWSを出力して、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持しておく(図6(D)を参照)。この動作が閾値補正機能を実現する。この閾値補正機能により、画素回路10Aごとにばらつく駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの影響をキャンセルすることができる。
【0118】
垂直駆動部103は、信号振幅ΔVinのサンプリングに先行する複数の水平期間で閾値補正動作を繰り返し実行して確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持するようにするのがよい。閾値補正動作を複数回実行することで、十分に長い書込み時間を確保する。こうすることで、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を確実に保持容量120に予め保持することができる。
【0119】
保持された閾値電圧Vthに相当する電圧は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthのキャンセルに用いられる。したがって、画素回路10Aごとに駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthがばらついていても、画素回路10Aごとに完全にキャンセルされるため、画像のユニフォーミティすなわち表示装置の画面全体に亘る発光輝度の均一性が高まる。特に信号電位が低階調のときに現れがちな輝度むらを防ぐことができる。
【0120】
好ましくは、垂直駆動部103は、閾値補正動作に先立って、電源供給線105DSLが第2電位にありかつ映像信号線106HSが映像信号Vsigの非有効期間である基準電位(Vofs)にある時間帯で、書込駆動パルスWSをアクティブ(本例ではHレベル)にしてサンプリングトランジスタ125を導通させ、その後に書込駆動パルスWSをアクティブHにしたままで電源供給線105DSLを第1電位に設定する。
【0121】
こうすることで、ソース端Sを基準電位(Vofs)より十分低い第2電位Vcc_Lにセットし(放電期間C=第2ノード初期化期間)(図6(B)を参照)、且つ、駆動トランジスタ121のゲート端Gを基準電位(Vofs)にセットしてから(初期化期間D=第1ノード初期化期間)(図6(C)を参照)、閾値補正動作を開始する(閾値補正期間E)。このようなゲート電位及びソース電位のリセット動作(初期化動作)により、後続する閾値補正動作を確実に実行することができる。放電期間Cと初期化期間Dとを合わせて、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgとソース電位Vsを初期化する閾値補正準備期間(=前処理期間)とも称する。因みに、図示した例は、第1ノードのであるノードND121への初期化動作(初期化期間D)は3回繰り返しており、放電期間Cの開始から最後の初期化期間Dが完了するまでが閾値補正準備期間となる。
【0122】
閾値補正期間Eでは、電源供給線105DSLの電位が低電位側の第2電位Vcc_Lから高電位側の第1電位Vcc_Hに遷移することで、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが上昇を開始する。即ち、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号Vsigの基準電位(Vofs)に保持されており、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れようとする。カットオフすると駆動トランジスタ121のソース電位Vsは“Vofs−Vth”となる。閾値補正期間Eでは、ドレイン電流が専ら保持容量120側(Ccs<<Cel時)に流れ、有機EL素子127側には流れないようにするため、有機EL素子127がカットオフとなるように全画素共通の接地配線cathの電位Vcathを設定しておく。
【0123】
有機EL素子127の等価回路はダイオードと寄生容量Celの並列回路で表されるため、“Vel≦Vcath+VthEL”である限り、つまり、有機EL素子127のリーク電流が駆動トランジスタ121に流れる電流よりもかなり小さい限り、駆動トランジスタ121のドレイン電流Idsは保持容量120と寄生容量Celを充電するために使われる。この結果、有機EL素子127のアノード端Aの電圧VelつまりノードND122の電位は、時間とともに上昇してゆく。そして、ノードND122の電位(ソース電位Vs)とノードND121の電圧(ゲート電位Vg)との電位差がちょうど閾値電圧Vthとなったところで駆動トランジスタ121はオン状態からオフ状態となり、ドレイン電流Idsは流れなくなり、閾値補正期間が終了する。つまり、一定時間経過後、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vthという値をとる。
【0124】
ここで、閾値補正動作は1回のみ実行するものとすることもできるが、このことは必須ではない。1水平期間を処理サイクルとして、閾値補正動作を複数回(図は4回で示している)繰り返えしてもよい。例えば、実際には、閾値電圧Vthに相当する電圧が、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間に接続された保持容量120に書き込まれることになる。しかしながら、閾値補正期間Eは、書込駆動パルスWSをアクティブHにしたタイミングからインアクティブLに戻すタイミングまでであり、この期間が十分に確保されていないときには、それ以前に終了してしまう。この問題を解消するには、閾値補正動作を複数回繰り返すのがよい。
【0125】
閾値補正動作を複数回実行する場合に、1水平期間が閾値補正動作の処理サイクルとなるのは、閾値補正動作に先立って、1水平期間の前半部で映像信号線106HSを介して基準電位(Vofs)を供給しソース電位を第2電位Vcc_Lにセットする初期化動作を経るからである。必然的に、閾値補正期間は、1水平期間よりも短くなってしまう。したがって、保持容量120の静電容量Ccsや第2電位Vcc_Lの大きさ関係やその他の要因で、この短い1回分の閾値補正動作期間では、閾値電圧Vthに対応する正確な電圧を保持容量120に保持仕切れないケースも起こり得る。閾値補正動作を複数回実行するのが好ましいのは、この対処のためである。即ち、信号振幅ΔVinの保持容量120へのサンプリング(信号書込み)に先行する複数の水平周期で、閾値補正動作を繰り返し実行することで確実に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量120に保持させるのが好ましい。
【0126】
例えば、第1閾値補正期間E_1ではゲート・ソース間電圧VgsがVx1(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが低電位側の第2電位Vcc_Lから“Vofs−Vx1”になったときに終わってしまう(図6(D)を参照)。このため、第1閾値補正期間E_1が完了した時点では、Vx1が保持容量120に書き込まれる。
【0127】
次に、駆動走査部105は、1水平期間の後半部で、書込駆動パルスWSをインアクティブLに切り替え、さらに水平駆動部106は、映像信号線106HSの電位を基準電位(Vofs)から映像信号Vsig(=Vofs+ΔVin)に切り替える(図6(E)を参照)。これにより、映像信号線106HSが映像信号Vsigの電位に変化する一方、書込走査線104WSの電位(書込駆動パルスWS)はローレベルになる。
【0128】
このときには、サンプリングトランジスタ125は非導通(オフ)状態にあり、それ以前に保持容量120に保持されたVx1に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsが僅かに上昇する。この上昇分をVa1とすると、ソース電位Vsは“Vofs−Vx1+Va1”となる。さらに、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sとの間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、駆動トランジスタ121のソース電位Vsの変動にゲート電位Vgが連動することで、ゲート電位Vgが“Vofs+Va1”となる。
【0129】
次の第2閾値補正期間E_2では、第1閾値補正期間E_1と同様の動作をする。具体的には、先ず、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号Vsigの基準電位(Vofs)に保持されることとなり、ゲート電位Vgが直前の“Vg=基準電位(Vofs)+Va1”から基準電位(Vofs)に瞬時に切り替わる。駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sとの間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgの変動にソース電位Vsが連動することで、ソース電位Vsは、直前の“Vofs−Vx1+Va1”からVa1だけ低下するので、“Vofs−Vx1”となる。この後、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れようとする。しかしながら、ゲート・ソース間電圧VgsがVx2(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“Vofs−Vx2”になったときに終わってしまい、第2閾値補正期間E_2が完了した時点ではVx2が保持容量120に書き込まれる。次の第3閾値補正期間E_3の直前では、保持容量120に保持されたVx2に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsは“Vofs−Vx2+Va2”となり、ゲート電位Vgは“Vofs+Va2”となる。
【0130】
同様にして、次の第3閾値補正期間E_3では、ゲート・ソース間電圧VgsがVx3(>Vth)になったとき、つまり、駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“Vofs−Vx3”になったときに終わってしまい、第3閾値補正期間E_3が完了した時点ではVx3が保持容量120に書き込まれる。次の第4閾値補正期間E_4の直前では、保持容量120に保持されたVx3に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsは“Vofs−Vx3+Va3”となり、ゲート電位Vgは“Vofs+Va3”となる。
【0131】
そして、次の第4閾値補正期間E_4では、駆動トランジスタ121のソース端Sの電位Vsが上昇して駆動トランジスタ121がカットオフするまでドレイン電流が流れる。カットオフすると駆動トランジスタ121のソース電位Vsは“Vofs−Vth”となり、ゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthと同じ状態になっている。第4閾値補正期間E_4が完了した時点で、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthが保持容量120に保持される。
【0132】
画素回路10Aにおいては、閾値補正機能に加えて、移動度補正機能を備えている。即ち、垂直駆動部103は、映像信号線106HSが映像信号Vsigの有効期間である信号電位(Vofs+ΔVin)にある時間帯にサンプリングトランジスタ125を導通状態にするため、書込走査線104WSに供給する書込駆動パルスWSを、上述の時間帯より短い期間だけアクティブ(本例ではHレベル)にする。この期間では、駆動トランジスタ121の制御入力端に信号電位(Vofs+ΔVin)を供給した状態で駆動トランジスタ121を介して有機EL素子127の寄生容量Cel及び保持容量120を充電する(図6(F)を参照)。この書込駆動パルスWSのアクティブ期間(サンプリング期間でもあり移動度補正期間でもある)を適切に設定することで、保持容量120に信号振幅ΔVinに応じた情報を保持する際、同時に駆動トランジスタ121の移動度μに対する補正を加えることができる。水平駆動部106により映像信号線106HSに信号電位(Vofs+ΔVin)を実際に供給して、書込駆動パルスWSをアクティブHにする期間を、保持容量120への信号振幅ΔVinの書込み期間(サンプリング期間とも称する)とする。
【0133】
特に、画素回路10Aにおける駆動タイミングでは、電源供給線105DSLが高電位側である第1電位Vcc_Hにあり、かつ、映像信号Vsigが有効期間にある時間帯内(信号振幅ΔVinの期間)で書込駆動パルスWSをアクティブにしている。つまり、その結果、移動度補正時間(サンプリング期間も)は、映像信号線106HSの電位が、映像信号Vsigの有効期間の信号電位(Vofs+ΔVin)にある時間幅と書込駆動パルスWSのアクティブ期間の両者が重なった範囲で決まる。特に、映像信号線106HSが信号電位にある時間幅の中に入るように書込駆動パルスWSのアクティブ期間幅を細めに決めているため、結果的に移動度補正時間は書込駆動パルスWSで決まる。正確には、移動度補正時間(サンプリング期間も)は、書込駆動パルスWS立ち上がってサンプリングトランジスタ125がオンしてから、同じく書込駆動パルスWSが立ち下がってサンプリングトランジスタ125がオフするまでの時間となる。因みに、図では、第4閾値補正期間E_4の後で書込駆動パルスWSを一端インアクティブLにしているが、このことは必須でなく、アクティブHのままにして、映像信号Vsigを基準電位(Vofs)から有効期間の信号電位(Vofs+ΔVin)に切り替えてもよい。
【0134】
具体的には、サンプリング期間においては、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgが信号電位(Vsig:Vofs+ΔVin)にある状態でサンプリングトランジスタ125が導通(オン)状態となる。したがって、書込み&移動度補正期間Hでは、駆動トランジスタ121のゲート端Gが信号電位(Vofs+ΔVin)に固定された状態で、駆動トランジスタ121に駆動電流Idsが流れる。信号振幅ΔVinの情報は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに足し込む形で保持される。この結果、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの変動は常にキャンセルされる形となるので、閾値補正を行なっていることになる。この閾値補正によって、保持容量120に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、“Vsig+Vth”=“ΔVin+Vth”となる。又、同時に、このサンプリング期間で移動度補正を実行するので、サンプリング期間は移動度補正期間を兼ねることとなる(書込み&移動度補正期間H)。
【0135】
ここで、有機EL素子127の閾値電圧をVthELとしたとき、“Vofs−Vth<VthEL”と設定しておくことで、有機EL素子127は、逆バイアス状態におかれ、カットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にあるため、発光することはなく、又、ダイオード特性ではなく単純な容量特性を示す。よって駆動トランジスタ121に流れるドレイン電流(駆動電流Ids)は保持容量120の静電容量Ccsと有機EL素子127の寄生容量(等価容量)Celの静電容量Celの両者を結合した容量“C=Ccs+Cel”に書き込まれていく。これにより、駆動トランジスタ121のドレイン電流は有機EL素子127の寄生容量Celに流れ込み充電を開始する。その結果、駆動トランジスタ121のソース電位Vsは上昇していく。
【0136】
図6のタイミングチャートでは、この上昇分をΔVで表してある。この上昇分、即ち移動度補正パラメータである電位補正値ΔVは、閾値補正によって保持容量120に保持されるゲート・ソース間電圧“Vgs=ΔVin+Vth”から差し引かれることになり、“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”となるので、負帰還をかけたことになる。このとき、駆動トランジスタ121のソース電位Vsは、ゲート電位Vgから保持容量に保持される電圧“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”を差し引いた値“−Vth+ΔV”となる。
【0137】
このようにして、画素回路10Aにおける駆動タイミングでは、書込み&移動度補正期間Hにおいて、信号振幅ΔVinのサンプリングと移動度μを補正するΔV(負帰還量、移動度補正パラメータ)の調整が行なわれる。書込走査部104は、書込み&移動度補正期間Hの時間幅を調整可能であり、これにより保持容量120に対する駆動電流Idsの負帰還量を最適化することができる。
【0138】
電位補正値ΔVはΔV≒Ids・t/Celである。この式から明らかなように、駆動トランジスタ121のドレイン・ソース間電流である駆動電流Idsが大きい程、電位補正値ΔVは大きくなる。逆に、駆動トランジスタ121の駆動電流Idsが小さいとき、電位補正値ΔVは小さくなる。このように、電位補正値ΔVは駆動電流Idsに応じて決まる。信号振幅ΔVinが大きいほど駆動電流Idsは大きくなり、電位補正値ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正を実現できる。その際、書込み&移動度補正期間Hは必ずしも一定である必要はなく、逆に駆動電流Idsに応じて調整することが好ましい場合がある。例えば、駆動電流Idsが大きい場合、移動度補正期間tは短めにし、逆に駆動電流Idsが小さくなると、書込み&移動度補正期間Hは長めに設定するのがよい。
【0139】
又、電位補正値ΔVは、Ids・t/Celであり、画素回路10Aごとに移動度μのばらつきに起因して駆動電流Idsがばらつく場合でも、それぞれに応じた電位補正値ΔVとなるので、画素回路10Aごとの移動度μのばらつきを補正することができる。つまり、信号振幅ΔVinを一定とした場合、駆動トランジスタ121の移動度μが大きいほど電位補正値ΔVの絶対値が大きくなる。換言すると、移動度μが大きいほど電位補正値ΔVが大きくなるので、画素回路10Aごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0140】
画素回路10Aはブートストラップ機能も備えている。即ち、書込走査部104は、保持容量120に信号振幅ΔVinの情報が保持された段階で書込走査線104WSに対する書込駆動パルスWSの印加を解除し(即ちインアクティブL(ロー)にして)、サンプリングトランジスタ125を非導通状態にして駆動トランジスタ121のゲート端Gを映像信号線106HSから電気的に切り離す(発光期間I:図6(G)を参照)。発光期間Iに進むと、水平駆動部106は、その後の適当な時点で映像信号線106HSの電位を基準電位(Vofs)に戻す。
【0141】
有機EL素子127の発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。以上によって、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子127の発光の動作が完了する。この後、次のフレーム(もしくはフィールド)に移って、再び、閾値補正準備動作、閾値補正動作、移動度補正動作、及び発光動作が繰り返される。
【0142】
発光期間Iでは、駆動トランジスタ121のゲート端Gは映像信号線106HSから切り離される。駆動トランジスタ121のゲート端Gへの信号電位(Vofs+ΔVin)の印加が解除されるので、駆動トランジスタ121のゲート電位Vgは上昇可能となる。駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果によって、ブートストラップ動作が行なわれる。ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、駆動トランジスタ121のソース電位Vsの変動にゲート電位Vgが連動するようになり、ゲート・ソース間電圧Vgsを一定に維持することができる。このとき、駆動トランジスタ121に流れる駆動電流Idsは有機EL素子127に流れ、有機EL素子127のアノード電位は駆動電流Idsに応じて上昇する。この上昇分をVelとする。やがて、ソース電位Vsの上昇に伴い、有機EL素子127の逆バイアス状態は解消されるので、駆動電流Idsの流入により有機EL素子127は実際に発光を開始する。
【0143】
ここで、駆動電流Ids対ゲート電圧Vgsの関係は、先のトランジスタ特性を表した式(1)に“Vsig+Vth−ΔV”或いは“ΔVin+Vth−ΔV”を代入することで、式(5A)或いは式(5B)(両式を纏めて式(5)と記す)のように表すことができる。
【0144】
Ids=k・μ・(Vsig−Vofs−ΔV)2 (5A)
Ids=k・μ・(ΔVin−Vofs−ΔV)2 (5B)
【0145】
この式(5)から、閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、有機EL素子127に供給される駆動電流Idsは駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthに依存しないことが分かる。即ち、有機EL素子127を流れる電流Idsは、例えば、Vofsを0ボルトに設定したとした場合、有機EL素子127における輝度を制御するための映像信号Vsigの値から、駆動トランジスタ121の移動度μに起因した第2ノードND2(駆動トランジスタ121のソース端)における電位補正値ΔVの値を減じた値の2乗に比例する。換言すると、有機EL素子127を流れる電流Idsは、有機EL素子127の閾値電圧VthEL及び駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthには依存しない。即ち、有機EL素子127の発光量(輝度)は、有機EL素子127の閾値電圧VthELの影響及び駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの影響を受けない。そして、第(n,m)番目の有機EL素子127の輝度は、電流Idsに対応した値である。
【0146】
しかも、移動度μの大きな駆動トランジスタ121ほど、電位補正値ΔVが大きくなるので、ゲート・ソース間電圧Vgsの値が小さくなる。したがって、式(5)において、移動度μの値が大きくとも、(Vsig−Vofs−ΔV)2の値が小さくなる結果、ドレイン電流Idsを補正することができる。即ち、移動度μの異なる駆動トランジスタ121においても、映像信号Vsigの値が同じであれば、ドレイン電流Idsが略同じとなる結果、有機EL素子127を流れ、有機EL素子127の輝度を制御する電流Idsが均一化される。即ち、移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因する有機EL素子127の輝度のばらつきを補正することができる。
【0147】
又、駆動トランジスタ121のゲート端Gとソース端Sと間には保持容量120が接続されており、その保持容量120によるブートストラップ効果により、発光期間の最初でブートストラップ動作が行なわれ、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧“Vgs=ΔVin+Vth−ΔV”を一定に維持したまま、駆動トランジスタ121のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇する。駆動トランジスタ121のソース電位Vsが“−Vth+ΔV+Vel”となることで、ゲート電位Vgは“ΔVin+Vel”となる。このとき、駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsは一定であるので、駆動トランジスタ121は、一定電流(駆動電流Ids)を有機EL素子127に流す。その結果、有機EL素子127のアノード端Aの電位(=ノードND122の電位)は、有機EL素子127に飽和状態での駆動電流Idsという電流が流れ得る電圧まで上昇する。
【0148】
ここで、有機EL素子127は、発光時間が長くなるとそのI−V特性が変化してしまう。そのため、時間の経過とともに、ノードND122の電位も変化する。しかしながら、このような有機EL素子127の経時劣化によりそのアノード電位が変動しても、保持容量120に保持されたゲート・ソース間電圧Vgsは常に“ΔVin+Vth−ΔV”で一定に維持される。駆動トランジスタ121が定電流源として動作することから、有機EL素子127のI−V特性が経時変化し、これに伴って駆動トランジスタ121のソース電位Vsが変化したとしても、保持容量120によって駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電位Vgsが一定(≒ΔVin+Vth−ΔV)に保たれているため、有機EL素子127に流れる電流は変わらず、したがって有機EL素子127の発光輝度も一定に保たれる。実際にはブートストラップゲインは「1」よりも小さいので、ゲート・ソース間電位Vgsは「ΔVin+Vth−ΔV」よりも小さくなるが、そのブートストラップゲインに応じたゲート・ソース間電位Vgsに保たれることには変わりがない。
【0149】
以上のように、画素回路10Aは、駆動タイミングを工夫することで、閾値補正回路や移動度補正回路が自動的に構成され、駆動トランジスタ121の特性ばらつき(本例では閾値電圧Vth及びキャリア移動度μのばらつき)による駆動電流Idsに与える影響を防ぐために、閾値電圧Vth及びキャリア移動度μによる影響を補正して駆動電流を一定に維持する駆動信号一定化回路として機能するようになっている。ブートストラップ動作だけでなく、閾値補正動作と移動度補正動作とを実行しているため、ブートストラップ動作で維持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、閾値電圧Vthに相当する電圧と移動度補正用の電位補正値ΔVとによって調整されているため、有機EL素子127の発光輝度は駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthや移動度μのばらつきの影響を受けることがないし、有機EL素子127の経時劣化の影響も受けない。入力される映像信号Vsig(信号振幅ΔVin)に対応する安定した階調で表示でき、高画質の画像を得ることができる。
【0150】
又、画素回路10Aは、nチャネル型の駆動トランジスタ121を用いたソースフォロア回路によって構成することができるために、現状のアノード・カソード電極の有機EL素子をそのまま用いても、有機EL素子127の駆動が可能になる。又、駆動トランジスタ121及びその周辺部のサンプリングトランジスタ125等も含めてnチャネル型のみのトランジスタを用いて画素回路10Aを構成することができ、トランジスタ作製においても低コスト化が図れる。
【0151】
[補正期間について]
前述のように、図6に示した比較例の駆動タイミングでは、各パルスのタイミングによって有機EL素子127への駆動電流Idsを制御するが、この際、1水平走査期間を前半部と後半部とに分け、前半部では閾値補正を行ない後半部では信号書込みや移動度補正を行なっている。当該手法では、閾値補正期間や移動度補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ制約があり、補正期間の設定自由度が少なく、動作時間が十分に確保できず適正な補正ができず、表示むらの改善が不十分になることが起こり得る。例えば、パネルの大型化に伴う書込駆動パルスWSや映像信号Vsigの鈍化や高速駆動化により1回当たり閾値補正動作時間が十分に確保できなくなり、良好なユニフォミティが得られなくなる。
【0152】
[補正期間の設定自由度の改善手法]
トランジスタや表示素子等の画素回路を構成する素子の特性ばらつき等に起因する表示むらを補正する際に、補正期間としてとり得る期間が1水平期間と一定の関係を持つ場合、設定の自由度が少なく、表示むらの改善が不十分になることが起こり得る。このため、補正期間の設定の自由度を拡大できる駆動方法の開発要求がある。
【0153】
本実施形態は、この要求に対して、1フィールド(1垂直走査期間)を複数に分割し、その内の一の分割期間において閾値補正を行ない、他の分割期間において、信号書込みや移動度補正を行なうことで、オペレーションマージンの増加に対応する。閾値補正処理の際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なってもよい。必須ではないが、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理(移動度補正処理)を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なってもよい。
【0154】
1フィールドを複数に分割するに当たっては、2つの分割期間に分けるのが典型的ではあるが、原理的には2分割に限定されない。又、閾値補正と、信号書込みや移動度補正とは、通常は、閾値補正の後に信号書込みや移動度補正を行なうが、これにも限定されない。好適な形態としては、1フィールドを前半部と後半部とに分け、前半部の所定期間に全行の閾値補正を行ない(詳細には最終行側の数行分は後半部に若干入り込む)、後半部にて信号書込みや移動度補正を行なう。1フィールドを前半部と後半部とに分ける際は、典型的には各ラインをほぼH/2期間としてほぼ1/2期間ずつ分けるがこのことは必須でなく、前半部よりも後半部の方をより長くしてもよいし、逆に、前半部よりも後半部の方をより短くしてもよい。1フィールドを1/2期間ずつ分ける場合であれば、各行に割当て可能な閾値補正の処理期間(詳細には第1ノードの初期化期間も含む)は、「H/2+垂直ブランキング期間(VBLK期間)」である。
【0155】
閾値補正を行なう前半部では(詳細には最終行側の数行分の閾値補正のため後半部に若干入り込む)、駆動トランジスタ121のゲートに基準電位(Vofs)を供給し続け、1水平期間との関係の制約なく閾値補正期間を設定できるようにする。2Tr構成では、サンプリングトランジスタ125を介して映像信号線106HSから基準電位(Vofs)を供給するが5Tr構成等では第1ノード初期化電圧としての基準電位(Vofs)を印加する第3トランジスタTR3を設ける等の変形も可能である。信号書込みや移動度補正を行なう後半部では、行(ライン)ごとに対応する映像信号Vsigをサンプリングトランジスタ125を介して駆動トランジスタ121のゲートに供給する。1フィールドを1/2期間ずつ分ける場合であれば、各行に割当て可能な信号書込みや移動度補正の処理期間はH/2である。
【0156】
垂直ブランキング期間に閾値補正動作を継続すれば1回の閾値補正動作となるが、この期間を複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なうこともできる。更には、前半部の閾値補正動作だけでなく、後半部の信号書込みや移動度補正の前に従前と同様の閾値補正(分割閾値補正でもよい)を行なうこともできる。
【0157】
このような本実施形態の駆動方法によれば、概ね1フィールドの前半部において、「H/2+VBLK」の期間にノードND121の初期化と閾値補正とを行なうことができ、垂直ブランキング期間は任意に設定できるので、閾値補正期間の設定の自由度を比較例の駆動方法よりも拡大できる。ノードND121の初期化と閾値補正の動作時間は、「H/2+VBLK」の期間分だけ確保でき、十分な閾値補正動作により良好なユニフォミティが得られる。比較例の駆動方式に対して、実質的に、垂直ブランキング期間の分だけ閾値補正期間を延ばすことができる。回路構成を変更することなく、駆動タイミングの変更のみで1回当たりの閾値補正時間を長時間化できる。
【0158】
〔具体的な駆動方法〕
図8は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例1の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。図中において参照子“_n”のnが行番号(ライン番号)を示す。実施例1は、1フィールドの前半部において、垂直ブランキング期間に閾値補正動作を継続し(1回の閾値補正動作)、後半部では従前と同様の閾値補正は行なわない形態である。
【0159】
1フィールドを2分割し、前半部(図中の開始からF/2まで)において第1ノード初期化電圧としての基準電位(Vofs)を映像信号線106HSに供給したまま、行ごとに、ノードND121を初期化する初期化期間Dと閾値補正期間Kとを、「H/2+垂直ブランキング期間(VBLK)」に割り当てる。
【0160】
具体的には、フィールド開始後、先ず1番目の行(第1ライン)について、電源駆動パルスDSL_1を第2電位Vcc_Lとすることで消光及びノードND122を初期化する(放電期間C)。この後、基準電位(Vofs)を映像信号線106HSに供給したままで書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてサンプリングトランジスタ125をオン状態としてノードND121を初期化する(初期化期間D)。更に、その状態で電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとした後所定期間経過後に書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにしてサンプリングトランジスタ125をオフ状態とする。電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとした後、書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにするまでの期間が閾値補正期間Kである。
【0161】
書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてから書込駆動パルスWS_1をインアクティブLにするまでの期間を「H/2+Vブランキング期間」とする。つまり、全体としては、初期化期間Dから閾値補正期間Kまでの期間を「H/2+VBLK」とする。電源駆動パルスDSL_1を第1電位Vcc_Hとするタイミングは、書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてからH/2経過まで(つまり次行の書込駆動パルスWS_nをアクティブHにするまで)の間であれば任意であり、一例として概ね書込駆動パルスWS_1をアクティブHにしてからH/4後とする。
【0162】
フィールドの後半部に入ると、信号書込みと移動度補正とを行なう(書込み&移動度補正期間H)。この際には、H/2Hごとに対応する行用の映像信号Vsigが映像信号線106HSに供給されている状態でサンプリングトランジスタ125を順次導通(オン)状態とする。
【0163】
比較例の駆動方法では、各回の閾値補正期間としてとり得る最長期間はH/2であるのに対して、実施例1の駆動方法では、閾値補正期間としてとり得る最長期間は「H/2+VBLK」となる。つまり、実施例1の駆動方法によれば、フィールド前半部の「H/2+VBLK」の期間に閾値補正を行なうことができ、比較例に対して閾値補正期間を垂直ブランキングの期間だけ延ばすことができる。
【0164】
前述の通り、比較例の駆動方法では、パネルの大型化に伴う書込駆動パルスWSやデータ線パルス(映像信号Vsig)の鈍化や高速駆動化により、1回当たりの閾値補正時間が非常に短くなり、例え分割閾値補正を適用したとしても、1回目の補正時間が短すぎる場合には補正が正常にかからず良好なユニフォミティが得られない。
【0165】
これに対して、実施例1の駆動方法では、十分な閾値補正用の書込駆動パルスWSの幅を確保することができる。具体的には、図8に示したように、最大限として「H/2+VBLK」の期間を閾値補正期間に使用できる。比較例の1回当たりの閾値補正時間(H/2)に対してVブランキング期間分だけ補正時間を余分に確保できる。因みに、書込み&移動度補正期間Hとしてとり得る最長期間は比較例と同様にH/2である。
【0166】
又、実施例1の駆動方法によれば、フィールド前半部における閾値補正動作後、フィールド後半部における信号書込みや移動度補正を開始するまでの期間(書込み&移動度補正準備期間Lと記す)を各ラインにて一定とすることができるので、本期間に発生する駆動トランジスタ121の微小なリーク電流もラインごとに一定となり縦シェーディングも発生しない。
【実施例2】
【0167】
図9は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例2の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。実施例2は、フィールド前半部における垂直ブランキング期間に複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行ない、後半部では従前と同様の閾値補正は行なわない形態である。
【0168】
比較例の駆動方法の説明において、分割閾値補正を行なう目的は、1水平周期内の閾値補正期間では駆動トランジスタ121の閾値電圧に相当する電圧を十分に保持容量120へ保持させることができない場合に対する対処として説明した。この点においては、本実施形態の駆動方法を適用すると、1水平周期に左右されず十分な閾値補正期間を確保できるので、本来的には分割閾値補正を行なう意義はないと考えられる。むしろ、分割閾値補正を行なうことで発生する休止期間のため、実際の閾値補正動作の期間が、「H/2+VBLK」よりも短くなり、分割閾値補正を行なうことは不利になるとも考えられる。
【0169】
しかしながら、比較例の駆動方法の説明において説明した分割閾値補正動作における「休止期間」には、その直前の回の閾値補正動作により保持容量120に保持されたVxn(nは回数)に応じたドレイン電流が有機EL素子127に流れることで、ソース電位Vsが僅かに上昇する。このため、分割閾値補正を行なうと、分割閾値補正を行なわない場合よりもソース電位Vsの上昇を加速できる利点がある。
【0170】
実施例2は、この効果を利用して、フィールド前半部における垂直ブランキング期間に、分割閾値補正を行なうことで、ソース電位Vsの上昇を促進させて閾値補正を加速させる。図では、「H/2+VBLK」の期間を、実施例1と同じで記載しているが、実態としては、「H/2+VBLK」の期間を、分割閾値補正を行なわない場合よりも短縮できる。フィールド前半部において分割閾値補正を行なう点を除いて、実施例1と同様の効果を享受できる。
【実施例3】
【0171】
[構成]
図10及び図11は、実施例3の画素回路10Cと、当該画素回路10Cを備えた表示装置の一形態を示す図である。実施例3の画素回路10Cを画素アレイ部102に備える表示装置を実施例1の表示装置1Cと称する。図10は基本構成(1画素分)を示し、図11は具体的な構成(表示装置の全体)を示す。
【0172】
実施例1及び実施例2の画素回路10Aにおいては、各トランジスタはバックゲート端が存在しない一般的な薄膜トランジスタであるのに対して、実施例3の画素回路10Cにおいては、少なくとも駆動トランジスタ121については(図はサンプリングトランジスタ125も)、制御入力端(ゲート端)の他に、トランジスタ特性を制御(ここでは閾値電圧Vthを増減)し得る制御端(以下「トランジスタ特性制御端」とも称する)を有するものを使用している。「トランジスタ特性制御端」を有するトランジスタの典型例は、バックゲート型の薄膜トランジスタや図3(B)に示したようなMOS型のトランジスタである。
【0173】
実施例1の画素回路10Aのトランジスタをトランジスタ特性制御端を有するトランジスタに置き換えることもできる。但しこの際には、トランジスタ特性制御端は、通常、接地線或いは主電極端の一方(例えばソース端)と接続される。
【0174】
これに対して、実施例3においては、特性制御走査部651を具備するトランジスタ特性制御部650を備えており、トランジスタ特性制御部650(特性制御走査部651)から駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端に「所定の制御電位」を与えるように構成している。
【0175】
「所定の制御電位」については詳しくは後述するが、理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間に、駆動トランジスタ121をより確実にオフ状態に維持するための制御電圧である。発光時には元の基板電位に戻すので、全体としては、駆動トランジスタ121のバックゲートに矩形波状のトランジスタ特性制御信号Vbを入力する。このため、特性制御走査部651は、トランジスタ特性制御信号Vbのハイ/ローと対応した走査パルスを生成し、その走査パルスをレベル変換して、適正なレベルのVb_HとVb_Lのトランジスタ特性制御信号Vbを特性制御走査線651VBに出力する。
【0176】
画素回路10Cは、その外部の制御部109からの駆動信号で制御され、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」は制御部109からの駆動信号で規定されるので、基本的には、トランジスタ特性制御部650の特性制御走査部651の構成としては、各種の駆動信号と関係した信号を利用した構成が採用される。
【0177】
[表示むら現象の発生原因]
実施例1や実施例2で説明した駆動タイミングでは、駆動トランジスタ121の特性補正を行なった後には、保持容量120に保持された駆動電圧に基づく駆動電流Idsを駆動トランジスタ121で生成して有機EL素子127に供給して発光(表示)を行なう。この発光の前には、理想状態では駆動トランジスタ121に電流が流れない状態(閾値補正期間K後から書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間)が存在するが、実際にはリークにより微小な電流が流れる。そして、この現象があると、表示むらが発生する場合がある。この点に関して、実施例1では、本期間に発生する駆動トランジスタ121の微小なリーク電流はラインごとに一定となり縦シェーディングは発生しないと説明した。しかしながら、フィールド前半部の閾値補正期間K後からフィールド後半部の書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間(書込み&移動度補正準備期間L)は、比較例の駆動方法における閾値補正期間E後からフィールド後半部の書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間に比べて、格段に長期間であり、リーク電流による影響を無視できないケースも起こり得る。この点について、以下に詳しく説明する。
【0178】
実動作では、フィールド前半部にて「H/2+VBLK」期間での閾値補正を行なった後、書込みパルスWSをインアクティブ(ローレベル)にしてサンプリングトランジスタ125をオフ状態にすると、一時的に駆動トランジスタ121のゲート端(ノードND121)がフローティング状態になる。この際、理想的には駆動トランジスタ121のゲート・ソース間電圧Vgsはその閾値電圧Vthと等しくなっているため(Vgs=Vth)、駆動トランジスタ121に電流は流れないはずである。しかしながら、実際には、リークのため微小な電流が流れている。このリークの影響で、ソース電位Vs(つまりノードND122)の上昇と、ブートストラップ動作と同様の現象によるソース電位Vsの上昇に伴うゲート電位Vgの上昇が起こる。書込み&移動度補正準備期間Lを各ラインにて一定とすることができても、このリークに伴うソース電位Vs及びゲート電位Vgの変動のばらつきによりゲート・ソース間電圧Vgsのばらつきが生じ、発光時に表示むら(具体的にはスジむら)となって認識されるという問題が起こり得る。
【0179】
閾値補正期間後から書込み&移動度補正期間が開始されるまでのサンプリングトランジスタ125がオフ状態の期間が短い場合(比較例の駆動方法の場合が該当する)は、単位時間当たりのリーク電流のばらつきが多少あってもリーク電流による影響を無視でき得る。これに対して、書込み&移動度補正準備期間Lが長期(概ねF/2期間)に亘る実施例1や実施例2の駆動方法の場合は、単位時間当たりのリーク電流のばらつきが少ないとしても、長期に亘ることでリーク電流による影響が無視できなくなり得る。
【0180】
[表示むら現象の対策手法]
実施例3では、トランジスタ特性の補正処理後の発光の前の一定期間に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端にトランジスタ特性制御信号Vbを供給してトランジスタ特性を低下させることで、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消する。「トランジスタ特性を低下させる」とは、リークが起きない状態にすることを意味し、一例として閾値電圧Vthを増大させる。
【0181】
〔原理〕
図12は、リークに起因する表示むら現象の対策原理を説明する図であって、特に、トランジスタ特性(Vgs−Ids特性)の基板電位依存性を説明する図である。
【0182】
周知のように、バックゲート型の薄膜トランジスタやMOS型のトランジスタでは、バックゲート効果により、トランジスタ特性が変動する。例えば、MOS型のトランジスタは、通常はバイポーラトランジスタと同様に3端子デバイスとして取り扱うことが多いが、ソース領域やドレイン領域が形成される基板やウエルも制御端子(トランジスタ特性制御端)として考えるべきであるので、正確には4端子として取り扱うべきである。そして、ソースとトランジスタ特性制御端(例えば基板(ボディーとも云う))との間にトランジスタ特性制御信号Vb(バックゲート電圧或いは基板電位或いはベース電位とも称する)を印加すれば、トランジスタ特性を制御することができる。通常は、バックゲート電圧はダイオードが遮断状態になるように負の電圧で印加される。例えば、バックゲート電圧を印加すると、ダイオードと同様にソース及びドレインチャネル直下の空乏層が変化し、半導体表面のポテンシャルが変化する。そのため、空乏層中の電荷はバックゲート電圧印加がないときとあるときとでは異なり、トランジスタ特性(Vgs−Ids特性)は図12に示すように変化し、そのため閾値電圧Vthが変化する。バックゲート効果を考慮したとき、閾値電圧Vthはバックゲート電圧に対し、約1/2乗で増加する特性となることが知られている。因みに、単純理論では、閾値電圧Vthはバックゲート電圧に対して1/2乗で増加するが、実際には直線増加と見なしても問題がないことが多い。
【0183】
図12に示すように、基板電位(つまりトランジスタ特性制御信号Vb)が上昇するほど、閾値が低くなり、ドレイン電流Idsをより多く流すように変化する。逆に、基板電位(つまりトランジスタ特性制御信号Vb)が減少するほど、閾値が拡大する。よって、発光前の一定期間、トランジスタ特性制御信号Vbを通常時よりも低下させて閾値を拡大させることで、リークを防ぐことができ、結果として、表示むらを抑制・解消することができる。トランジスタ特性制御部640Aを画素回路10Cごとに駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを設定する構成とし、発光前の一定期間、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させれば、閾値電圧Vthをより拡大でき、駆動トランジスタ121を確実にオフ状態に維持することができる。駆動トランジスタ121をオフ状態に維持することができれば、表示むら現象を抑制・解消することができる。閾値補正後から映像信号書込みまでの期間にリークが発生し、これによって生じていた表示むらを改善することができる。
【0184】
尚、通常時のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Hを、実施例3を適用しない場合と同じにする場合(発光状態において画素回路10Cの最低電圧:この例では接地電位)、実体的には、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Lは負電圧となるので、負電圧生成回路が必要になる。装置全体として考えた場合、負電圧生成回路を設けることはあまり好ましいことではない。この問題を解消するには、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Lを画素回路10Cの最低電圧(この例では接地電位)とし、通常時のトランジスタ特性制御信号Vbの値Vb_Hを正電圧とするのがよい。そして、必要に応じて、その他の信号(例えば映像信号Vsig等)を相対的にレベルシフトさせればよい。
【0185】
〔具体的な駆動方法〕
図13は、補正期間の設定自由度の改善に着目した実施例3の画素回路の駆動方法を説明するタイミングチャートである。実施例3は、トランジスタ特性の補正処理後の発光の前の一定期間に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御端にトランジスタ特性制御信号Vbを供給してトランジスタ特性を低下させることで、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消する。
【0186】
「発光前の一定期間」は、少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させることで閾値電圧Vthを拡大(増大)させるものであればよく、原理的には、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問である。図6に示した比較例の駆動タイミングの場合は、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」は、閾値補正期間E後から書込み&移動度補正期間(詳しくはその準備期間G)が開始されるまでの書込みパルスWSがローの期間(図中の期間F)である。したがって、少なくとも当該書込みパルスWSがローの期間は、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させて(このときの値をVb_Lとする)閾値電圧Vthをより拡大させる。
【0187】
原理的には、その他の非発光期間については、トランジスタ特性制御信号Vbを、通常状態と同じレベル(このときの値をVb_Hとする)にするのか、それとも書込みパルスWSがローの期間のときのレベル(ローレベル)とするかは自由である。つまり、少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を通常時(発光時)よりも低下(ここでは閾値電圧を増大)させればよく、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは、基本的には自由である。換言すると、実施例3の構成は、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間に駆動トランジスタ121の特性を通常時よりも低下させる」汎用的な構成をとることもできるし、非発光時の他の期間の扱い(駆動トランジスタ121の特性を通常時よりも低下させるか否か)の具体的な事例にも適用できる。
【0188】
但し、図8に示した実施例1の駆動方法や図9に示した実施例2の駆動方法において、閾値補正動作後から信号書込みや移動度補正を開始するまでの書込み&移動度補正準備期間Lにおける駆動トランジスタ121のリーク電流に起因する表示むらをより確実に抑制すると云う点においては、書込み&移動度補正準備期間Lの駆動トランジスタ121の特性をその他の期間よりも低下させておくのが好適である。即ち、具体的には、フィールド前半部における閾値補正動作後、フィールド後半部における信号書込みや移動度補正を開始するまでの書込み&移動度補正準備期間Lには、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性を低下させる(一例として閾値電圧Vthを増大させる)。必須ではないが、フィールド前半部における「H/2+VBLK」期間での閾値補正動作に加えて、後半部でも従前と同様の閾値補正(分割閾値補正動作でもよい)を行なう。
【0189】
例えば、「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させるが、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問とする場合、閾値補正期間Kに駆動トランジスタ121のトランジスタ特性制御信号Vbを低下させて閾値電圧Vthをより拡大させると、トランジスタ特性が低下したときの閾値電圧Vthが保持容量120の両端間に保持され、発光時の閾値電圧Vthと相違が生じ、閾値補正が不十分となることが懸念される。更には、閾値補正期間Kの経過後、書込み&移動度補正期間Hが開始されるまでの期間も、閾値補正期間Kにおける閾値電圧Vthと同じであり、リークに対する対処が不十分となり得る。
【0190】
実施例3では、この点も勘案して、駆動トランジスタ121が電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタ121の特性を低下させる処理を中止する。つまり、駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthの補正処理の期間には、駆動トランジスタ121の閾値電圧thを増大させる処理を中止する(第1駆動例と記す)。少なくとも「理想状態で駆動トランジスタ121に電流が流れない期間(図中の書込み&移動度補正準備期間L)にはトランジスタ特性制御信号VbをVb_Lとして駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させ、閾値補正期間Kにはトランジスタ特性制御信号Vbを発光時と同じVb_Hとするが、非発光時の他の期間に駆動トランジスタ121の特性を低下させるか否かは不問である。
【0191】
例えば、閾値補正期間Kの終了より前に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、信号書込み開始と同時に中止することもできる(第2駆動例と記す)。具体的には、第1駆動例の駆動タイミングをベースに、更に、書込み&移動度補正期間Hの開始とほぼ同時に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を中止する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_LからVb_Hに戻す)。又、閾値補正期間Kの終了より少し前に駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を開始する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_HからVb_Lにする)。つまり、駆動トランジスタ121の基板電位を、閾値補正の終了より少し前、つまり、書込みパルスWSの立下りより少し前(直前)に低下させ、信号書込み開始時の書込みパルスWSの立上りとほぼ同時に上げるよう構成すればよい。閾値補正終了より少し前に駆動トランジスタ121の基板電位を低下させて閾値電圧Vthを上げることによって、閾値補正後の駆動トランジスタ121のフローティング期間内のリークを抑制することができる。即ち、駆動トランジスタ121に関して、閾値補正終了直前は、Vgs≒Vthとなっていた状態から、トランジスタ特性制御信号Vb(つまり基板電位)を下げたことによって、基板・ソース間電圧Vbsが拡がるため、基板バイアス効果により閾値電圧Vthが拡がりVth-expとなるので、Vgs<Vth-expとなり、この後の書込み&移動度補正準備期間Lにおけるリークを確実に抑えることができる。
【0192】
或いは又、信号書込みや移動度補正の期間にはトランジスタ特性制御信号Vbをローレベルにしておく形態とすることもできる(第3駆動例と記す)。例えば、閾値補正終了より前に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、発光開始とほぼ同時に中止する形態とすることもできる。具体的には、第1駆動例の駆動タイミングをベースに、更に、発光開始と同時とほぼ同時に、駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を中止する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_LからVb_Hに戻す)。又、閾値補正期間Kの終了より少し前に駆動トランジスタ121のトランジスタ特性の低下を開始する(つまりトランジスタ特性制御信号VbをVb_HからVb_Lにする)。つまり、駆動トランジスタ121の基板電位を、閾値補正の終了より少し前、つまり、書込みパルスWSの立下りより少し前(直前)に低下させ、発光開始時(ブートストラップ動作開始時)の書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に上げるよう構成すればよい。第3駆動例場合でも、第2駆動例と同様に、閾値補正後の駆動トランジスタ121のフローティング期間内のリークを確実に抑えることができる。
【0193】
第3駆動例のメリットを以下に述べる。移動度μが過度に大きい(高い)駆動トランジスタ121を使用すると、移動度補正がかかり過ぎ、発光直前のゲート・ソース間電圧Vgsのつぶれが生じ、著しい輝度低下やユニフォミティの低下が発生することが懸念される。この弊害を抑制するべく、移動度補正パルスを狭幅にすることが必要になる。ところが、実際には、狭幅の移動度補正パルスにして動作させることは、回路構成や遅延その他の面から、パルス幅の設定・管理が困難である。例えば、MOSFETでは移動度μが高いため、移動度補正がかかり過ぎ、輝度が低下しないよう移動度補正パルスを数ナノ秒程度にすることが必要になることが懸念される。このような狭パルスの制御は困難である。この点を踏まえると、移動度補正パルスを狭幅にせずに(現状をほぼ維持して)、移動度補正期間に流れる電流値を減らすことが望ましい。第3駆動例の駆動タイミングでは、移動度補正期間の閾値電圧Vthが大きくなるため、この効果を得ることができる。
【0194】
或いは又、閾値補正終了とほぼ同時に、つまり、書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、信号書込み開始と同時に中止する形態とすることもできる(第4駆動例と記す)。更には、閾値補正終了とほぼ同時に、つまり、書込みパルスWSの立下りとほぼ同時に駆動トランジスタ121の特性を低下させ、発光開始とほぼ同時に中止する形態とすることもできる(第5駆動例と記す)。第4駆動例や第5駆動例は、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsは、第2駆動例或いは第3駆動例よりも、発光時の閾値電圧Vthにより近い値となる。
【0195】
更には、図13に示すトランジスタ特性制御電圧Vb(ここでは1行目のVb_1のみを示している)のように、フィールド前半部における「H/2+VBLK」期間での閾値補正動作及び書込み&移動度補正準備期間Lにおけるトランジスタ特性の低下処理(具体的には閾値電圧Vthを通常時よりも拡大させる処理)に加えて、フィールド後半部でも従前と同様の閾値補正を行なう形態とすることもできる(第6駆動例と記す)。この場合、フィールド後半部での1回当たりの閾値補正期間Eや書込み&移動度補正期間Hとしてとり得る最長期間はH/4になる。因みに図13では、フィールド後半部で閾値補正を1回行なう例で示しているが、分割閾値補正動作を適用してもよい。更には、図13では、第3駆動例を適用して、移動度補正期間の閾値電圧Vthを大きくする例で示しているがこのことは必須でない。
【0196】
閾値補正動作Kの終了時に駆動トランジスタ121の閾値電圧Vthを通常時よりも拡大させると、書込駆動パルスWSをインアクティブLにするタイミングとの関係次第では、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが、発光時の閾値電圧Vthと少しずれる(より大きくなる)ことが懸念される(例えば第2駆動例或いは第3駆動例の場合)。更には、保持容量120にもリークが存在するので、書込み&移動度補正準備期間Lが長期(概ねF/2期間)に亘ることで、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが発光時の閾値電圧Vthとずれないとしても、書込み&移動度補正期間Hの直前に保持容量120の両端に保持されているゲート・ソース間電圧Vgsが、発光時の閾値電圧Vthとずれる(より小さくなる)ことが懸念される。
【0197】
これらを踏まえた場合、書込み&移動度補正期間Hの直前に保持容量120の両端に保持されているゲート・ソース間電圧Vgsが発光時の閾値電圧Vthより少し大きくなるようにしておき、書込み&移動度補正期間Hの直前にも閾値補正を行なうことにより、補正後のゲート・ソース間電圧Vgsを発光時の閾値電圧Vthと一致させるのが好ましい。このためには、閾値補正後に保持容量120の両端に保持されるゲート・ソース間電圧Vgsが、書込み&移動度補正準備期間Lにおける基板バイアス効果による拡大された閾値電圧Vth-expとの関係で「Vgs<Vth-exp」を満たす範囲で、意図的に、発光時の閾値電圧Vthより大きくなるようにしておくのが好ましい。即ち、フィールド前半での閾値補正後に駆動トランジスタ121の閾値電圧を通常時よりも拡大させておく、更には、フィールド前半での閾値補正ではゲート・ソース間電圧Vgs=閾値電圧Vthの少し手前とし、フィールド後半の書込み&移動度補正の前に通常の閾値電圧Vthに戻して閾値補正を行なうことが好ましい。
【0198】
[変形例]
例えば、駆動トランジスタ121のリークに起因する表示むら現象を解消すると云う点においては、発光前の少なくとも「理想状態で駆動トランジスタに電流が流れない期間(駆動トランジスタのフローティング期間と記す)」に駆動トランジスタ121の特性を発光時よりも低下させるように制御可能に構成されていればよく、その限りにおいて、様々な構成をとることができる。その対処のため、画素回路10の外部に設けられる制御部109(前例ではトランジスタ特性制御部650:詳細には特性制御走査部651)による画素回路10の制御タイミングの工夫によって実現することは必須でなく、その対処のための回路要素を画素回路10内に備えていてもよい。即ち、閾値補正後から発光前の一定期間、駆動トランジスタ121の特性が低下するように制御する特性制御部を、画素回路10ごとに設けてもよい。
【0199】
或いは又、画素回路10の外部に独立の特性制御走査部651を設けずに、他の走査部が出力する駆動パルスを利用して論理回路によりトランジスタ特性制御信号Vbのハイ/ローと対応した走査パルスを生成し、その走査パルスをレベル変換して、適正なレベルのVb_HとVb_Lのトランジスタ特性制御信号Vbを出力する構成でもよい。
【0200】
又、駆動トランジスタ121がバックゲート端等の閾値電圧を制御し得るトランジスタ特性制御端を有する場合に、そのトランジスタ特性制御端を利用して、駆動トランジスタ121の特性を制御するようにしていた。しかしながら、それは一例に過ぎず、「駆動トランジスタのフローティング期間」に駆動トランジスタ121の特性を低下させるものである限り、トランジスタ特性制御端を利用して制御するものに限定されない。
【実施例4】
【0201】
図14は実施例4を説明する図である。実施例4は、前述の補正期間の設定自由度を改善する技術が適用された表示装置を搭載した電子機器についての事例である。本実施形態の表示むら抑制処理に当たっての補正期間の設定自由度を改善する技術は、ゲーム機、電子ブック、電子辞書、携帯電話機等の各種の電子機器に使用される電流駆動型の表示素子を具備した表示装置に適用することができる。
【0202】
例えば、図14(A)は、電子機器700が、画像表示装置の一例である表示モジュール704を利用したテレビジョン受像機702の場合の外観例を示す斜視図である。テレビジョン受像機702は、台座706に支持されたフロントパネル703の正面に表示モジュール704を配置した構造となっており、表示面にはフィルターガラス705が設けられている。図14(B)は、電子機器700がデジタルカメラ712の場合の外観例を示す図である。デジタルカメラ712は、表示モジュール714、コントロールスイッチ716、シャッターボタン717、その他を含んでいる。図14(C)は、電子機器700がビデオカメラ722の場合の外観例を示す図である。ビデオカメラ722は、本体723の前方に被写体を撮像する撮像レンズ725が設けられ、更に、表示モジュール724や撮影のスタート/ストップスイッチ726等が配置されている。図14(D)は、電子機器700がコンピュータ732の場合の外観例を示す図である。コンピュータ732は、下型筐体733a、上側筐体733b、表示モジュール734、Webカメラ735、キーボード736等を含んでいる。図14(E)は、電子機器700が携帯電話機742の場合の外観例を示す図である。携帯電話機742は、折り畳み式であり、上側筐体743a、下側筐体743b、表示モジュール744a、サブディスプレイ744b、カメラ745、連結部746(この例ではヒンジ部)、ピクチャーライト747等を含んでいる。
【0203】
ここで、表示モジュール704、表示モジュール714、表示モジュール724、表示モジュール734、表示モジュール744a、サブディスプレイ744bは、本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。これにより、各電子機器700は、駆動トランジスタの閾値電圧や移動度のばらつき(更には、kのばらつき)に起因する輝度ばらつきを補正することができるだけでなく、補正期間の設定は水平走査期間に左右されず自由度が高い。実施例3を適用すれば、補正期間の設定自由度を改善する場合においても、駆動トランジスタのリークに起因する表示むらを抑制・解消することができ、高画質の表示を行なうことができる。
【0204】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0205】
例えば、トランジスタをnチャネルとpチャネルで入れ替え、それに合わせて、電源や信号の極性を逆転させる等した相補型の構成にできることは云うまでもない。
【0206】
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載の請求項に係る技術は一例であり、例えば、以下の技術が抽出される。以下列記する。
[付記1]
表示部と、
保持容量と、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
とを備え、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている画素回路。
[付記2]
1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう付記1に記載の画素回路。
[付記3]
駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なう付記1又は付記2に記載の画素回路。
[付記4]
駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なう付記1乃至付記3の何れか1項に記載の画素回路。
[付記5]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なう付記1乃至付記4の何れか1項に記載の画素回路。
[付記6]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理は、駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正処理に使用される付記1乃至付記5の何れか1項に記載の画素回路。
[付記7]
閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御可能に構成されている付記1乃至付記6の何れか1項に記載の画素回路。
[付記8]
駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止する付記7に記載の画素回路。
[付記9]
駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする付記7又は付記8に記載の画素回路。
[付記10]
閾値電圧の補正処理の終了よりも前に、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする付記9に記載の画素回路。
[付記11]
駆動電圧の保持容量への書込みに連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする付記7乃至付記10の何れか1項に記載の画素回路。
[付記12]
駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記7乃至付記11の何れか1項に記載の画素回路。
[付記13]
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記12に記載の画素回路。
[付記14]
表示部の表示開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる付記7乃至付記13の何れか1項に記載の画素回路。
[付記15]
駆動トランジスタは、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有し、
特性制御部は、閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する付記7乃至付記14の何れか1項に記載の画素回路。
[付記16]
表示部の発光前の一定期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を備えている付記7乃至付記15の何れか1項に記載の画素回路。
[付記17]
表示部は自発光型である付記1乃至付記16の何れか1項に記載の画素回路。
[付記18]
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
を具備する表示素子が配列されており、
更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部を備えた表示装置。
[付記19]
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ
を具備する表示素子が配列されており、
更に、書込トランジスタに供給される映像信号を生成する信号生成部と、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部、
とを備えた電子機器。
[付記20]
表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう画素回路の駆動方法。
【符号の説明】
【0207】
1…表示装置、10…画素回路、11…発光素子、100…表示パネル部、101…基板、102…画素アレイ部、103…垂直駆動部、104…書込走査部、105…駆動走査部、106…水平駆動部、120…保持容量、121…駆動トランジスタ、125…サンプリングトランジスタ(書込トランジスタ)、127…有機EL素子、130…インタフェース部、200…駆動信号生成部、220…映像信号処理部、650…トランジスタ特性制御部、651…特性制御走査部、700…電子機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
保持容量と、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
とを備え、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている画素回路。
【請求項2】
1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項3】
駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項4】
駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項5】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項6】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理は、駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正処理に使用される請求項1に記載の画素回路。
【請求項7】
閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御可能に構成されている請求項1に記載の画素回路。
【請求項8】
駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止する請求項7に記載の画素回路。
【請求項9】
駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする請求項7に記載の画素回路。
【請求項10】
閾値電圧の補正処理の終了よりも前に、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする請求項9に記載の画素回路。
【請求項11】
駆動電圧の保持容量への書込みに連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする請求項7に記載の画素回路。
【請求項12】
駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項7に記載の画素回路。
【請求項13】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項12に記載の画素回路。
【請求項14】
表示部の表示開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項7に記載の画素回路。
【請求項15】
駆動トランジスタは、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有し、
閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する請求項7に記載の画素回路。
【請求項16】
表示部の発光前の一定期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を備えている請求項7に記載の画素回路。
【請求項17】
表示部は自発光型である請求項1に記載の画素回路。
【請求項18】
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
を具備する表示素子が配列されており、
更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部を備えた表示装置。
【請求項19】
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ
を具備する表示素子が配列されており、
更に、書込トランジスタに供給される映像信号を生成する信号生成部と、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部、
とを備えた電子機器。
【請求項20】
表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう画素回路の駆動方法。
【請求項1】
表示部と、
保持容量と、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタと、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
とを備え、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうことが可能に構成されている画素回路。
【請求項2】
1フィールド期間を2分割した前半の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、後半の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項3】
駆動トランジスタの閾値補正を行なう分割期間とその後のブランキング期間において、全ての行の駆動トランジスタについて、順に、閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項4】
駆動トランジスタの閾値補正を行なう際には、複数回に分けて閾値補正動作を繰り返す分割閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項5】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう直前にも、駆動トランジスタの閾値補正を行なう請求項1に記載の画素回路。
【請求項6】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理は、駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正処理に使用される請求項1に記載の画素回路。
【請求項7】
閾値補正後の一の期間から書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なうまでの期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御可能に構成されている請求項1に記載の画素回路。
【請求項8】
駆動トランジスタが電流を流している状態にあるときには、駆動トランジスタの特性を低下させる処理を中止する請求項7に記載の画素回路。
【請求項9】
駆動トランジスタの閾値電圧の補正処理の終了に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする請求項7に記載の画素回路。
【請求項10】
閾値電圧の補正処理の終了よりも前に、駆動トランジスタの閾値電圧を大きくする請求項9に記載の画素回路。
【請求項11】
駆動電圧の保持容量への書込みに連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくする請求項7に記載の画素回路。
【請求項12】
駆動トランジスタの移動度補正処理の開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項7に記載の画素回路。
【請求項13】
書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理の際には、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項12に記載の画素回路。
【請求項14】
表示部の表示開始に連動して、駆動トランジスタの閾値電圧を小さくさせる請求項7に記載の画素回路。
【請求項15】
駆動トランジスタは、閾値電圧を制御し得る特性制御端を有し、
閾値電圧を制御するための制御信号を特性制御端に供給する請求項7に記載の画素回路。
【請求項16】
表示部の発光前の一定期間、駆動トランジスタの特性が低下するように制御する特性制御部を備えている請求項7に記載の画素回路。
【請求項17】
表示部は自発光型である請求項1に記載の画素回路。
【請求項18】
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ、
を具備する表示素子が配列されており、
更に、1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部を備えた表示装置。
【請求項19】
表示部、
保持容量、
映像信号と対応する駆動電圧を保持容量に書き込む書込トランジスタ、及び、
保持容量に書き込まれた駆動電圧に基づいて表示部を駆動する駆動トランジスタ
を具備する表示素子が配列されており、
更に、書込トランジスタに供給される映像信号を生成する信号生成部と、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう特性補正部、
とを備えた電子機器。
【請求項20】
表示部を駆動する駆動トランジスタを備えた画素回路を駆動する方法であって、
1フィールド期間を複数に分割した一の分割期間においては、駆動トランジスタの閾値補正を行ない、他の分割期間においては、書込トランジスタを介して映像信号を保持容量の一端に供給しつつ駆動トランジスタを介して保持容量に電流を供給する処理を行なう画素回路の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−3569(P2013−3569A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138256(P2011−138256)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]