説明

界面活性ペルオキシカルボン酸組成物

本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸を含む組成物、これらの組成物を製造する方法、及び微生物集団を減少させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸を含む組成物、これらの組成物を製造する方法、及び微生物集団を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のペルオキシカルボン酸組成物の典型的な例としては、短鎖ペルオキシカルボン酸、又は短鎖ペルオキシカルボン酸と中鎖ペルオキシカルボン酸との混合物が挙げられる(例えば米国特許第5,200,189号、5,314,687号、5,409,713号、5,437,868号、5,489,434号、6,674,538号、6,010,729号、6,111,963号、及び6,514,556号を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の研究努力は、ペルオキシカルボン酸組成物の改良に注がれている。特に、かかる努力は、有効な抗微生物活性を有し、製造が容易であり、有益な性質を有する組成物に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸を含む組成物、これらの組成物を製造する方法、及び微生物集団を減少させる方法に関する。
【0005】
ある実施態様によれば、本組成物は、例えば界面活性ペルオキシカルボン酸と、カルボン酸界面活性剤と、1又は2以上の酸味剤、安定剤、又はこれらの混合物とを含んでなる。
【0006】
ある実施態様によれば、本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物の使用方法を含む。この方法は、対象に本組成物(例えば使用組成物)を接触させる工程を含んでなり、その結果、対象上の1又は2以上の微生物の集団を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
定義
本明細書において「カルボン酸界面活性剤」という語句は、カルボン酸成分及び/又はカルボキシレート部分を含む界面活性剤を意味する。
【0008】
本明細書において、幾つかの成分から「基本的になる(consisting essentially)」組成物又は組合せとは、これらの成分を含有するとともに、本組成物又は方法の基本的且つ新規な特徴に大きな影響を与える成分を含有しない組成物を意味する。「から基本的になる(consisting essentially of)」という語句は、本発明の組成物や方法から、短鎖ペルオキシカルボン酸や短鎖カルボン酸を除外する意である。但し、この語句の後にこうした成分が具体的に記載されている場合を除く。
【0009】
本明細書において「短鎖カルボン酸」という語句は、1)特徴的な悪臭、刺激臭、又は不快臭を有するとともに、2)20℃で水に大量に溶解又は混和し得る、カルボン酸を意味する。短鎖カルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸が挙げられる。
【0010】
本明細書において「短鎖ペルオキシカルボン酸」という語句は、短鎖カルボン酸のペルオキシカルボン酸型を意味する。
【0011】
本明細書において「中鎖カルボン酸」という語句は、1)等濃度の短鎖カルボン酸に伴う悪臭、刺激臭、又は不快臭と比べて、臭いが少なく、又は無臭であるとともに、2)中性pHの水性緩衝液中での臨界ミセル濃度が1mM超である、カルボン酸を意味する。20℃で水に大量に溶解又は混和し得るカルボン酸は、中鎖カルボン酸からは除外される。中鎖カルボン酸は、(760mmHg圧での)沸点が180〜300℃のカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、中鎖カルボン酸は、(760mmHg圧での)沸点が200〜300℃のカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、中鎖カルボン酸は、25℃における水への溶解度が1g/L未満であるものを含む。中鎖カルボン酸の例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、及びドデカン酸が挙げられる。
【0012】
本明細書において「中鎖ペルオキシカルボン酸」という語句は、中鎖カルボン酸のペルオキシカルボン酸型を意味する。
【0013】
本明細書において、1又は2以上の成分「を実質的に含まない(substantially free of)」組成物又は組合せとは、こうした成分を全く含有しないか、又は、こうした成分を微量若しくは偶発的な量しか含有しない組成物を意味する。微量又は偶発的な量としては、例えば、他の成分中に不純物として存在する量、又は、中鎖ペルオキシカルボン酸の生成又は分解時の微小な副反応により生成される量が挙げられる。
【0014】
本明細書において「不快臭(objectionable odor)」、「異臭(offensive odor)」、又は「悪臭(malodor)」という語句は、普通の人ならできるだけ避けるであろう、鋭い、刺激性の、又は鼻を刺す臭い又は大気環境を意味する。快不快度(hedonic tone)は、臭いが快適か不快かの程度を示す尺度となる。「不快臭(objectionable odor)」、「異臭(offensive odor)」、又は「悪臭(malodor)」の快不快度は、5重量%の酢酸、プロピオン酸、酪酸、又はこれらの混合物の溶液と同等又はそれ以上に不快であると評価される。
【0015】
本明細書において「微生物(microorganism)」という語句は、任意の非細胞性又は単細胞性(集落性を含む)の微生物を意味する。微生物にはあらゆる原核生物が含まれる。微生物には、細菌(シアノバクテリアを含む)、地衣類、真菌、原生動物、ビリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、及び一部の藻類が含まれる。本明細書において、「微生物(microbe)」という語は、微生物(microorganism)と同義である。
【0016】
本明細書において「対象」という語句は、感覚機能により直接及び/又は間接的に認識可能な実在物を意味する。対象としては、表面、例えば硬い表面(例えばガラス、セラミクス、金属、天然及び合成の岩、木、及びポリマー)、エラストマー又はプラスチック、織地及び不織地、食品加工表面、医療表面などが挙げられる。また、対象には、食品(及びその表面);水塊若しくはガス塊、又は、水流若しくはガス流(例えば空気流);並びに、接客業や産業界で使用される表面や物品も含まれる。更には、生物の身体や身体部分(例えば手)も対象に含まれる。
【0017】
本明細書において「食品」という語句には、抗微生物剤又は抗微生物組成物による処理を必要とする可能性がある食物であって、そのまま又は調理して食用とされる任意の食物が含まれる。食品としては、肉(例えば赤身肉及び豚肉)、海産物、鳥肉、果物及び野菜、卵、有精卵、卵製品、インスタント食品、小麦、種子、根、塊茎、葉、茎、穀物、花、新芽、薬味、又はこれらの組合せが挙げられる。「作物」という語句は、果実及び野菜、並びに植物又は植物由来物質等の食品であって、通常は未調理のまま、多くは未包装で販売され、時には生で食される食品を意味する。
【0018】
本明細書において「植物生成物」という語句には、抗微生物剤又は抗微生物組成物による処理を必要とする可能性がある任意の植物物質又は植物由来物質が含まれる。植物生成物としては、種子、堅果、堅果実、切り花、温室で栽培又は貯蔵された植物又は作物、観葉植物などが挙げられる。植物生成物には多くの動物飼料も含まれる。
【0019】
本明細書において、加工された果物又は野菜とは、カット、チョップ、スライス、皮むき、粉砕、製粉、照射、凍結、調理(例えば、湯通し、低温除菌)、又はホモジナイズされた果物又は野菜を意味する。本明細書において、果物又は野菜に洗浄、着色、蝋かけ、ハイドロクーリング、冷蔵、脱穀、又は葉、茎若しくは外皮の除去を施すことは、加工には該当しない。
【0020】
本明細書において「肉製品」という語句は、あらゆる形態の動物肉を意味する。例としては、屠体、筋肉、脂肪、臓器、皮、骨、体液、及び同様の動物の構成成分が挙げられる。動物肉としては、哺乳類、鳥類、魚類、は虫類、両生類、巻貝類、二枚貝類、甲殻類、他の食用種(例えばエビ、カニなど)、又は他の形態の海産物が挙げられる。動物肉の形態としては、例えば、動物肉の全体又は一部の単独又は他の成分との組合せが挙げられる。典型的な形態としては、加工肉、例えば塩漬肉、切断及び整形した肉、ミンチした肉、細くチョップした肉、挽肉及び挽肉加工品、塊肉などが挙げられる。
【0021】
本明細書において「家禽」という語句は、肉又は卵を得るために飼育され、採取され、家畜化された任意の鳥を意味する。例としては、鶏、七面鳥、ダチョウ、猟鳥、若鳩、ホロホロチョウ、キジ、ウズラ、ガチョウ、エミュー等、並びにこれらの鳥の卵が挙げられる。家禽には塊、薄切り、加工、調理、又は生の家禽があり、あらゆる形態の家禽肉、副産物(byproducts)、及び副生物(side products)が包含される。家禽肉としては、筋肉、脂肪、臓器、皮、骨及び体液、並びに同様の動物構成成分が挙げられる。動物肉の形態としては、例えば、動物肉の全体又は一部の単独又は他の成分との組合せが挙げられる。典型的な形態としては、加工肉、例えば塩漬肉、切断及び整形した肉、ミンチした肉、細くチョップした肉、並びに塊肉が挙げられる。
【0022】
本明細書において「家禽の残骸」という語句は、加工中の家禽の屠体又はその部分から取り出されて廃物流に入る、任意の残骸、残渣、物質、汚物、臓物、家禽の一部、家禽の廃物、家禽の臓器、家禽の器官、こうした物質の断片又は組合せなどを意味する。
【0023】
本明細書において「食品加工表面」という語句は、食品加工、調理、又は保存活動の一部として使用される器具、機械、装置、構造物、ビルなどの表面を意味する。食品加工表面の例としては、食品加工又は調製装置(例えば、スライス、缶詰、又は輸送装置、水路を含む)の表面、食品加工食器(例えば、用具、皿、洗浄用具、及びバーガラス器具)の表面、及び食品加工が行われる構造物の床、壁、又は備品)の表面が挙げられる。食品加工表面は、食品腐敗防止空気循環システム、無菌パッケージング除菌、食品冷蔵、及びクーラークリーナーと除菌剤、食器洗浄除菌剤、湯通し洗浄と除菌、食品パッケージ材料、まな板添加物、第3流し除菌、飲料クーラーとウォーマー、肉冷却水又は加熱水、食器洗浄器除菌剤、除菌ゲル、冷却塔、食品加工抗微生物衣類スプレー、並びに、低含水又は無水の食物調理潤滑剤、油、及び洗浄添加剤において存在し、使用される。
【0024】
本明細書において「空気流」という語句は、食品腐敗防止空気循環システムを含む。また、空気流には、病院、手術室、病室、分娩室、霊安室、及び臨床診断室において一般に見られる空気流も含まれる。
【0025】
本明細書において「水」という語句は、食品加工又は輸送水を含む。食品加工又は輸送水としては、作物輸送水(例えば、水路、パイプ輸送手段、カッター、スライサー、湯通し器、レトルトシステム、洗濯機など)、食品輸送ラインのベルトスプレー、手足洗浄浸し容器、第3流し洗浄水などが挙げられる。また、水としては、家庭用水や娯楽施設用水、例えばプール、温泉、娯楽水路やウォータースライド、噴水などの水も挙げられる。
【0026】
本明細書において「医療表面」という語句は、医療活動の一環として使用される装置、器具、カート、ケージ、備品、構造物、ビルなどの表面を意味する。医療表面の例には、医療装置又は歯科装置の表面、医学器具又は歯科器具の表面、患者の健康を追跡するために使用される電子装置の表面、医療が行われる構造物の床、壁、又は備品の表面がある。医療表面は、病院、手術室、病室、分娩室、霊安室、及び臨床診断室内に存在する。これらの表面としては、「硬い表面」(例えば、壁、床、便器など)、又は布表面、例えばニット、織布及び不織布表面(例えば、手術衣、カーテン布地、ベッドシーツとまくらカバー、包帯など)、又は患者管理装置(例えば、呼吸器、診断装置、シャント、ボディスコープ、車椅子、ベッドなど)、又は手術装置や診断装置に代表されるものであってもよい。医療表面としては、動物医療で使用される製品や表面が挙げられる。
【0027】
本明細書において「装置」という語句は、本発明の組成物を用いた洗浄により利益が得られ得る、種々の医療又は歯科装置又は器具を意味する。
【0028】
本明細書において「医療装置」、「歯科装置」、「医療器具」、「歯科器具」、「医療用品」、又は「歯科用品」という語句は、医療又は歯科で使用される装置、機器、工具、器械、器具、及び用品を意味する。このような装置、機器、及び用品は、低温除菌、浸漬、又は洗浄され、次に加熱滅菌されるか、又は本発明の組成物を用いた洗浄の利益を受ける。これらの種々の装置、機器、及び用品としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる:診断装置、トレイ、皿、ホルダー、棚、ピンセット、ハサミ、鋏、のこぎり(骨のこ及びこれらの刃)、止血鉗子、ナイフ、のみ、骨鉗子、ファイル、ペンチ、ドリル、錐先、やすり、座金、塗抹棒、破砕機、エレベーター、クランプ、持針器、キャリアー、クリップ、フック、切骨器、掻爬器、開創器、ストレートナー、穴あけ具、抜き取り具、しゃくし、角膜切開刀、スパテラ、エクスプレッサー(expressors)、套管針、拡張器、ケージ、ガラス器具、チューブ、カテーテル、カニューレ、プラグ、ステント、スコープ(例えば内視鏡、聴診器、及び動脈鏡)、及び関連用品など、又はこれらの組合せ。
【0029】
本明細書において「農業」又は「獣医学的」対象又は表面としては、動物飼料、動物の水飲み場及び囲い、動物舎、動物獣医クリニック(例えば手術又は治療区域)、動物手術区域などが挙げられる。
【0030】
本明細書において「住宅」又は「施設」対象又は表面としては、ヒトが住む構造物に見られるものがある。そのような対象又は表面には、浴室表面、流し、流し表面、台所表面などが挙げられる。
【0031】
本明細書において重量パーセント(wt-%)、重量%(percent by weight)、重量%(% by weight)などは同義であり、ある物質の重量を組成物の重量で割って100を掛けた物質の濃度を示す。別途明記する場合を除き、成分の量とは活性成分の量を意味する。
【0032】
本明細書において、本発明の組成物中の成分や本発明の方法に使用される成分の量を修飾する「約(about)」という語は、例えば、実際に濃縮物又は使用溶液を作製するのに使用される通常の測定及び液体取扱手順;これらの手順における意図しないエラー;組成物の作製や方法の実施に使用される成分の製法、原料、又は純度の差などに起因する、数値の変動を意味する。また、「約」という語は、特定の混合物に由来する組成物において、平衡条件の違いにより量が異なる場合をも包含する。「約」という語による修飾の有無によらず、特許請求の範囲には、その等価量も含まれる。
【0033】
本出願の目的において、微生物集団が少なくとも約50%減少した場合、或いは、水洗の場合と比べて有意に大きな減少が見られた場合に、微生物の低減が首尾よく達成されたものとする。微生物集団の減少が大きいほど、防御のレベルもより高くなる。
【0034】
本明細書において「除菌剤(sanitizer)」という語句は、細菌汚染数を公衆衛生基準により安全であると判断されるレベルまで低減する物質である。ある実施態様によれば、本発明で使用される除菌剤は、少なくとも99.999%の低減(5対数オーダーの低減)を生じさせるものと思われる。これらの低減は、Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants, Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, paragraph 960.09 and applicable sections, 15th eddition, 1990 (EPA Guideline 91-2) に記載の方法を用いて評価することができる。本基準によれば、除菌剤は数種の試験微生物に対して、室温(25±2℃)で30秒以内に、99.999%の低減(5対数オーダーの低減)を生じさせることが求められる。
【0035】
本明細書において「消毒剤(disinfectant)」という語句は、A.O.A.C. Use Dilution Methods, Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, paragraph 955.14 and applicable sections, 15th eddition, 1990 (EPA Guideline 91-2) に記載の方法を用いた場合に、最も有名な病原性微生物を含むすべての栄養細胞を死滅させる物質を意味する。
【0036】
本明細書において「殺胞子剤(sporicide)」という語句は、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)又は枯草菌(Bacillus subtilis)の胞子集団に対して、60℃で10秒以内に90%を超える低減(1対数オーダーの低減)を生じさせる能力を有する、物理的又は化学的な薬剤又は方法を意味する。ある実施態様によれば、本発明の殺胞子剤組成物は、かかる集団に対して、60℃で10秒以内に、99%を超える低減(2対数オーダーの低減)、99.99%を超える低減(4対数オーダーの低減)、又は99.999%を超える低減(5対数オーダーの低減)を生じさせる。
【0037】
有効性の程度を表わす定義である、抗微生物性の「殺−(-cidal)」と「静−(-static)」との区別は、この有効性を測定するための公認の実験室プロトコルとともに、抗微生物剤及び組成物の妥当性を理解する上で考慮すべき事項である。抗微生物組成物は、2種類の微生物細胞傷害を引き起こす。第1は致死的な不可逆的作用であり、これは微生物細胞の完全な破壊又は無能力化を引き起こす。第2のタイプの細胞傷害は可逆的であり、その薬剤が微生物から除去されると、微生物は再度増殖することができる。前者を殺微生物性と呼び、後者を静微生物性と呼ぶ。除菌剤及び消毒剤は、定義によれば、抗微生物活性又は殺微生物活性を与える物質である。これに対して、保存剤は通常、インヒビター又は静微生物組成物と呼ばれている。
【0038】
界面活性ペルオキシカルボン酸抗微生物組成物
本発明は、界面活性剤でもあるペルオキシカルボン酸を含む組成物に関する。本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を含む。本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物は、担体を含んでいてもよい。ある実施態様によれば、本組成物は、界面活性ペルオキシカルボン酸、カルボン酸界面活性剤、及び担体を含む。意外なことに、ある実施態様によれば、本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物は、種々の微生物のうち1又は2以上に対して有効な抗微生物活性を示し得る。例えば、ペルオキシカルボン酸界面活性剤組成物は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌の両方に対して抗微生物活性を示し得る。意外なことに、本界面活性剤カルボン酸は、酸化剤とカルボン酸界面活性剤との混合物から作製することができる。例えば、生成されるペルオキシカルボン酸界面活性剤組成物の濃度によっては、希釈により有効な抗微生物性使用組成物とするための濃縮組成物を産生することも可能である。
【0039】
ある実施態様によれば、本組成物は、酸化剤、酸味剤、安定剤、これらの混合物などのうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。本組成物は、種々の酸化剤、例えば過酸化水素を含んでいてもよい。酸化剤は、カルボン酸界面活性剤を界面活性ペルオキシカルボン酸に変換するのに有効である。また、酸化剤が抗微生物活性を有してもよいが、そのような活性を示す程の濃度で存在しなくてもよい。本組成物は、種々の酸味剤のうち任意のもの(例えば無機酸)を含んでいてもよい。酸味剤は、本濃縮組成物のpHを1未満にするか、又は本濃縮組成物のpHを約5若しくはそれ以下、約4若しくはそれ以下、又は約3若しくはそれ以下にするのに有効である。酸味剤は、本組成物の抗微生物活性を増強することがある。本組成物は、種々の安定剤の任意のもの、例えば金属イオン封鎖剤(例えばリン酸塩金属イオン封鎖剤)を含んでいてもよい。金属イオン封鎖剤は、界面活性ペルオキシカルボン酸を安定化するのに有効なことがある。
【0040】
界面活性ペルオキシカルボン酸及び/又はカルボン酸界面活性剤の組成物
本明細書において「界面活性ペルオキシカルボン酸」という語句は、ペルオキシカルボン酸型のカルボン酸界面活性剤を意味する。本発明の組成物又は方法は、1又は2以上の界面活性ペルオキシカルボン酸と、任意により1又は2以上のカルボン酸界面活性剤とを包含し得る。適切なペルオキシカルボン酸としては、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び/又は、双性イオン性界面活性剤であるカルボン酸界面活性剤のペルオキシカルボン酸型が挙げられる。ペルオキシカルボン酸型において、本発明の界面活性ペルオキシカルボン酸として機能し得る、適切な陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び双性イオン性界面活性剤の例について、以下に説明する。
【0041】
ペルオキシカルボン酸(又はペルカルボン酸)は、一般に式R(CO3H)n(ここで、Rはアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、芳香族、又は複素環基であり、nは1、2、又は3である)を有し、親の酸に「ペルオキシ」という接頭辞を付して命名される。R基は飽和でも不飽和でもよく、置換でも非置換でもよい。
【0042】
ペルオキシカルボン酸は、カルボン酸に酸化剤を直接作用させることにより、アルデヒドの自己酸化により、或いは、酸塩化物及び水素化物から過酸化水素又は過酸化ナトリウムを用いて作製することができる。ある実施態様によれば、ペルオキシカルボン酸は、カルボン酸界面活性剤に過酸化水素を直接、酸触媒平衡作用させることにより作製することができる。スキーム1では、カルボン酸及び酸化剤(Ox)を一辺に、ペルオキシカルボン酸及び還元された酸化剤(Oxred)を他辺に配し、これらの平衡を示している。
RCOOH+Ox □ RCOOOH+Oxred (1)
【0043】
スキーム2では、スキーム1の平衡の一実施態様を示している。ここで酸化剤は、一片では過酸化水素であり、他辺ではペルオキシカルボン酸及び水である。
RCOOH+H22 □ RCOOOH+H2O (2)
【0044】
本発明を限定するものではないが、本組成物の平衡定数は、約1000よりも大きい値であると考えられる。
【0045】
本発明の組成物及び方法には、例えば、少なくとも1つのアルキルアミン部分、少なくとも1つのアルキルカルボキシレート部分、少なくとも1つのアルキルアミド部分、少なくとも1つのスルホネート部分、及び/又は、少なくとも1つのアルコキシレート部分を含有する、界面活性ペルオキシカルボン酸を使用することができる。
【0046】
適切な界面活性ペルオキシカルボン酸としては、式A:(R1)(R2)X(R3COOOH)で示されるものが挙げられる。ある実施態様によれば、式Aにおいて、例えば、R1及びR2は各々独立に、存在しないか、アルキル部分、アルキルカルボキシレート部分、アルキルアミド部分、アルキルスルホネート部分又はアルコキシレート部分であり;Xは、N、NH、C=O、又はCH2であり;R3は、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0047】
ある実施態様によれば、適切な界面活性ペルオキシカルボン酸としては、式B:(R1)(R2)N(R3COOOH)で示されるものが挙げられる。式Bにおいて、例えば、R1及びR2は各々独立に、アルキル部分、アルキルカルボキシレート部分、アルキルアミド部分、アルキルスルホネート部分、又はアルコキシレート部分であり、R3は、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0048】
ある実施態様によれば、適切な界面活性ペルオキシカルボン酸としては、式C:(R1)C(O)(R3COOOH)で示されるものが挙げられる。式Cにおいて、例えば、R1はアルコキシレート部分であり、R3は、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0049】
ある実施態様によれば、適切な界面活性ペルオキシカルボン酸としては、式D:(R1)CH2(R3COOOH)で示されるものが挙げられる。式Dにおいて、例えば、R1はアルコキシレート部分であり、R3は存在しないか又はアルキルスルホネート部分である。
【0050】
適切なアルキル部分としては、直鎖又は分岐鎖のC1〜C16アルキル部分が挙げられる。適切なC1〜C16アルキル部分としては、C6〜C14アルキル部分、例えばC8、C11、C12、又はC13アルキル部分が挙げられる。適切なC1〜C16アルキル部分としては、C1〜C6アルキル部分、例えばC2又はC3直鎖アルキル部分が挙げられる。
【0051】
適切なアルキルカルボキシレート部分としては、直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキルカルボキシレート部分が挙げられる。アルキルカルボキシレート部分の適切なアルキル部分としては、上述のものが挙げられる。適切なアルキルカルボキシレート部分としては、式−(CH21-6COOH、例えば−(CH22COOHで示されるもの、又はその塩が挙げられる。
【0052】
適切なアルキルアミド部分としては、置換又は無置換の窒素を有する、直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキルアミド部分が挙げられる。アルキルアミドの適切なアルキル部分としては、上述のものが挙げられる。適切なアルキルアミド部分としては、式−(CH21-6CONHR、例えば−(CH22CONHRで示されるものが挙げられる。
【0053】
適切なアルキルスルホネート部分としては、カルボキシル基を含有してもよい直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキルスルホネート部分が挙げられる。アルキルスルホネート部分の適切なアルキル部分としては、上述のものが挙げられる。適切なアルキルスルホネート部分としては、式−(CH20-6(CHSO3H)−(CH21-6COOH、例えば−CH(SO3H)CH2COOHで示されるものが挙げられる。
【0054】
適切なアルコキシレート部分としては、エトキシレート又はプロポキシレート成分が挙げられる。適切なアルコキシレート部分は、例えば、式E:R4O((CH22-3O)n−で表わされる。一実施形態によれば、式Eにおいて、例えば、R4はアルキル、例えばC8からC24アルキル、例えばC10からC14アルキル、C11アルキル、C12アルキル、又はC13アルキルであり;nは約1から約12、又は約1から約6、例えば約2から約4、又は約3であり;及び/又は、(CH22-3は(CH22である。
【0055】
本発明の組成物及び方法において有用なペルオキシカルボン酸としては、式F〜Iで示される界面活性ペルオキシカルボン酸が挙げられる。
【0056】
【化1】

【0057】
式Fにおいて、例えば、R1はC817であり、R2はH又はOHである。窒素はプロトン化していても、プロトン化していなくてもよい。式Gにおいて、例えば、R1及びR2はC817である。窒素はプロトン化していても、プロトン化していなくてもよい。式Hにおいて、例えば、RはC1123であり、スルホネートはナトリウム塩の形である。式Iにおいて、例えば、RはC1225、C1327、又はこれらの混合物であって、nは3である。式F〜Iの各々には、RCOOOH基がRCOOO-として存在する脱プロトン化型も含まれる。
【0058】
本発明の組成物はカルボン酸を含んでいてもよい。カルボン酸は通常、式R−COOHを有する。ここでRは、任意の数の種々の基であり、例としてはアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、芳香族、又は複素環基が挙げられる(これらは何れも、飽和でも不飽和でもよく、置換でも非置換でもよい)。カルボン酸が有するカルボキシル基の数は、1でも、2でも、3でも、それ以上でもよい。適切なカルボン酸界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び/又は双性イオン性界面活性剤に分類されるものが挙げられる。適切な陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び双性イオン性界面活性剤の例について、以下に説明する。
【0059】
本発明の組成物及び方法では、例えば、少なくとも1つのアルキルアミン部分、少なくとも1つのアルキルカルボキシレート部分、少なくとも1つのアルキルアミド部分、少なくとも1つのスルホネート部分、及び/又は少なくとも1つのアルコキシレート部分を含有するカルボキシ界面活性剤を使用することができる。ある実施態様によれば、この組成物及び方法は、界面活性ペルオキシカルボン酸と対応するカルボン酸界面活性剤とを含有する。
【0060】
適切なカルボン酸界面活性剤としては、式J:(R1)(R2)X(R3COOH)で示されるものが挙げられる。ある実施態様によれば、式Jにおいて、例えば、R1及びR2は各々独立に、存在しないか、アルキル部分、アルキルカルボキシレート部分、アルキルアミド部分、アルキルスルホネート部分又はアルコキシレート部分であり;Xは、N、NH、C=O、又はCH2であり;R3は、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0061】
ある実施態様によれば、適切なカルボン酸界面活性剤には、式K:(R1)(R2)N(R3COOH)で示されるものが挙げられる。式Kにおいて、例えば、R1及びR2は各々独立に、アルキル部分、アルキルカルボキシレート部分、アルキルアミド部分、アルキルスルホネート部分、又はアルコキシレート部分であり、R3は、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0062】
ある実施態様によれば、適切なカルボン酸界面活性剤には、式L:(R1)C(O)(R3COOH)で示されるものが挙げられる。式Lにおいて、例えば、R1はアルコキシレート部分であり、R3はアルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0063】
ある実施態様によれば、適切なカルボン酸界面活性剤としては、式M:(R1)CH2(R3COOOH)で示されるものが挙げられる。式Mにおいて、例えば、R1はアルコキシレート部分であり、R3は存在しないか、アルキル又はアルキルスルホネート部分である。
【0064】
本発明の組成物及び方法において有用なカルボン酸としては、式N〜Qで示されるカルボン酸界面活性剤が挙げられる。
【0065】
【化2】

【0066】
式Nにおいて、例えば、R1はC817であり、窒素はプロトン化していても、プロトン化していなくてもよい。式Oにおいて、例えば、R1及びR2はC817である。窒素はプロトン化していても、プロトン化していなくてもよい。式Pにおいて、例えば、RはC1123であり、スルホネートはナトリウム塩の形である。式Iにおいて、例えば、QはC1225、C1327、又はこれらの混合物であり、nは3である。式N〜Qの各々には、カルボキシル基がカルボキシレートとして存在する脱プロトン化型又はその塩も含まれる。
【0067】
適切なカルボン酸界面活性剤としては、オクチルイミノジプロピオン酸(商品名マッカム(Mackam)ODP(50%活性)及びミラタイン(Mirataine)JCHA(42%活性)として市販)、ラウレススルホンコハク酸(例えば重ナトリウム塩)(商品名マカネート(Makanate)EL(39%活性)として市販)、線状アルコールエトキシカルボン酸(商品名ネオドックス(Neodox)23−4として市販)、これらの混合物など、並びに、これらに対応する界面活性ペルオキシカルボン酸が挙げられる。
【0068】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約15重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約10重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約2〜約6重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、又は、約3〜約4重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸を含有する。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0069】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、約1〜約15重量%のカルボン酸界面活性剤、又は、約1〜約6重量%のカルボン酸界面活性剤を含有する。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0070】
ある実施態様によれば、本組成物は、当然に予測される製品の貯蔵寿命に亘って安定な界面活性ペルオキシカルボン酸を含有する。例えば、ある実施態様によれば、界面活性ペルオキシカルボン酸は約1年安定である。例えば、ある実施態様によれば、界面活性ペルオキシカルボン酸は少なくとも約1年安定である。
【0071】
ある実施態様によれば、本組成物は、食品に関連する1又は2以上の食物性病原性細菌、例えばサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・ジャビアーナ(Salmonella javiana)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobactre jejuni)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、及び大腸菌(E. coli)O157:H7、酵母、カビなどを死滅させるのに有効な量の界面活性ペルオキシカルボン酸を含有する。ある実施態様によれば、本組成物は、医療表面及び環境に関連する1又は2以上の病原性細菌、例えばサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ・コレラスルス(Salmonella choleraesurus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(E. coli)、マイコバクテリア(mycobacteria)、酵母、カビなどを死滅させるのに有効な量の界面活性ペルオキシカルボン酸を含有する。本発明の組成物及び方法は、多種多様な微生物、例えばグラム陽性細菌(例えば、リステリア菌(Listeria monocytogenes)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))及びグラム陰性細菌(例えば、大腸菌(E. coli)又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、酵母、カビ、細菌胞子、ウイルスなどに対して活性を有する。本発明の組成物及び方法は、以上に述べたように、多種多様なヒト病原体に対して活性を有する。本組成物及び本方法は、食品加工表面上、食品表面上、食品の洗浄又は加工に使用される水中、又は医療表面上、又は医療環境中における、多種多様な微生物を死滅させることができる。
【0072】
本発明の実施態様は、カルボン酸界面活性剤及び界面活性ペルオキシカルボン酸を含有するが、一部の実施態様では、短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物が除外されている。しかしながら、本組成物の実施態様は、短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を加えた組成物が、必ずしも本発明の要旨及び範囲から外れることを意図するものではない。
【0073】
陰イオン性界面活性剤
適切な界面活性ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシカルボン酸型の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。適切な陰イオン性界面活性剤としては、カルボキシル又はカルボキシレート部分を含む任意の陰イオン性界面活性剤、例えばカルボキシレート界面活性剤が挙げられる。ある実施態様によれば、陰イオン性界面活性剤としては、アルコールアルコキシレートカルボキシレート、サルコシネート、タウリネート、アシルアミノ酸、アルカン酸エステル、これらの塩又は酸型、又はこれらの混合物が挙げられる。具体的な塩は、個々の剤型及びそのニーズに応じて、適切に選択すればよい。適切な塩としては、アンモニウム塩及び置換アンモニウム(例えばモノ−、ジ−、及びトリエタノールアミン)、及びアルカリ金属(例えばナトリウム、リチウム、及びカリウム)塩、これらの混合物などが挙げられる。
【0074】
本組成物での使用に適した陰イオン性カルボキシレート界面活性剤としては、カルボン酸(及び塩)、例えばアルカン酸(及びアルカネート)、エステルカルボン酸(例えばアルキルコハク酸)、エーテルカルボン酸などが挙げられる。このようなカルボキシレートとしては、アルキルエトキシカルボン酸、アルキルアリールエトキシカルボン酸、アルキルポリエトキシポリカルボン酸界面活性剤、及び石けん(例えばアルキルカルボキシル)が挙げられる。本組成物で有用な2級カルボキシレートとしては、2級炭素に結合したカルボキシル単位を含有するものが挙げられる。2級炭素は、例えばp−オクチル安息香酸や、アルキル置換シクロヘキシルカルボキシレートのように、環構造中に存在するものであってもよい。ある実施態様によれば、2級カルボキシレート界面活性剤は、エーテル結合、エステル結合、及び/又は、ヒドロキシル基を含有しない。更には、頭部基(両親媒性部分)の窒素原子が欠如していてもよい。適切な2次石けん界面活性剤としては、合計11〜13個の炭素原子を含有するものが挙げられるが、さらに多くの炭素原子(例えば最大16個)が存在してもよい。適切なカルボキシレートとしては、アシルアミノ酸(及び塩)、例えばアシルグルタミン酸、アシルペプチド、サルコシネート(例えば、N−アシルサルコシン酸)、タウリネート(例えば、N−アシルタウリン酸、及びメチルタウリン酸化物の脂肪酸アミド)などが挙げられる。
【0075】
適切な陰イオン性界面活性剤としては、式R:
R−O−(CH2CH2O)n(CH2m−CO2
のアルキル又はアルキルアリールエトキシカルボキシレートが挙げられる。
【0076】
式中、RはC8〜C22アルキル基、又は
【化3】

(式中、R1はC4〜C16アルキル基である)であり:nは1〜20の整数であり;mは1〜3の整数であり;Xは対イオン、例えば水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、又はアミン塩、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンである。ある実施態様によれば、式Rにおいて、nは4〜10の整数であり、mは1である。ある実施態様によれば、式Rにおいて、RはC8〜C16アルキル基である。ある実施態様によれば、式Rにおいて、RはC12〜C14アルキル基であり、nは4であり、mは1である。
【0077】
ある実施態様によれば、式Rにおいて、Rは
【化4】

であり、R1はC6〜C12アルキル基である。ある実施態様によれば、式Rにおいて、R1はC9アルキル基であり、nは10であり、mは1である。
【0078】
かかるアルキル及びアルキルアリールエトキシカルボン酸は市販されている。これらのエトキシカルボン酸は通常、酸型で販売されているが、容易にアニオン型又は塩型に変換することができる。市販のカルボキシレートとしては、ネオドックス(Neodox)23−4、C12-13アルキルポリエトキシ(4)カルボン酸(シェルケミカル(Shell Chemical))、及びEmcol CNP-110、C9アルキルアリールポリエトキシ(10)カルボン酸(ウィトコケミカル(Witco Chemical))がある。また、カルボキシレートとしては、クラリアント(Clariant)社からも、例えば製品サンドパン(Sandopan)(登録商標)DTC、C13アルキルポリエトキシ(7)カルボン酸として市販されている。
【0079】
適切な陰イオン性界面活性剤としては、オクチルイミノジプロピオン酸(商品名マッカム(Mackam)ODP(50%活性)及びミラタイン(Mirataine)JCHA(42%活性)として市販)、ラウレススルホンコハク酸(例えば二ナトリウム塩)(商品名マカネート(Makanate)EL(39%活性)として市販)、線状アルコールエトキシカルボン酸(商品名ネオドックス(Neodox)23−4として市販)、これらの混合物など、並びにこれらに対応する界面活性ペルオキシカルボン酸が挙げられる。
【0080】
両性界面活性剤
両性界面活性剤(amphoteric, or ampholytic, surfactants)は、酸性親水性基及び有機疎水性基の両方を含有する。これらのイオン性物質は、界面活性剤に使用される種々の陰イオン基又は陽イオン基のうち、何れであってもよい。ある実施態様によれば、両性界面活性剤は、塩基性及び酸性の親水性基として、それぞれ塩基性窒素及び酸性カルボン酸基を含有する。
【0081】
両性界面活性剤は、広義には、脂肪族2級及び3級アミンの誘導体であるということができる。ここで、脂肪族ラジカルは直鎖でも分岐鎖でもよく、脂肪族置換基のうち1つが例えば約8〜18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性水溶性基(例えばカルボキシル基)を含有する。両性界面活性剤は、“Surfactant Encyclopedia”, Cosmetics & Toiletries, Vol.104(2) 69-71 (1989) に記載されているように、2つの大きなクラスに分類することができる。第1のクラスには、アシル/ジアルキルエチレンジアミン誘導体(例えば、2−アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン誘導体)及びこれらの塩が含まれる。第2のクラスには、N−アルキルアミノ酸及びこれらの塩が含まれる。両性界面活性剤の中には、両方のクラスに属するものも存在する。
【0082】
両性界面活性剤は、種々の公知の方法のうち、任意の方法により合成することができる。例えば、2−アルキルヒドロキシエチルイミダゾリンの合成は、長鎖カルボン酸(又は誘導体)とジアルキルエチレンジアミンとの縮合及び閉環により行なうことができる。市販の両性界面活性剤を誘導体化するには、引き続き加水分解とイミダゾリンの開環とを行なえばよい。これは、クロロ酢酸や酢酸エチル等を用いたアルキル化によって行なうことができる。アルキル化により、1又は2以上のカルボキシ−アルキル基が反応して、3級アミンを生成する。異なるアルキル化剤とエーテル結合させれば、異なる3級アミンが得られる。
【0083】
本発明において使用可能な長鎖イミダゾリン誘導体は、通常は以下の一般式を有する。
【化5】

【0084】
式中、Rは約8〜18個の炭素原子を含有する非環状疎水性基であり、Mは陰イオンの電荷を中和する陽イオン(通常はナトリウム)である)を有する。本組成物で使用できる主な市販のイミダゾリン由来両性物質としては、例えば、ココアンホプロピオネート(Cocoamphopropionate)、ココアンホカルボキシ−プロピオネート(Cocoamphocarboxy-propionate)、ココアンホグリシネート(Cocoamphoglycinate)、ココアンホカルボキシ−グリシネート(Cocoamphocarboxy-glycinate)、及び、ココアンホカルボキシ−プロピオン酸(Cocoamphocarboxy-propionatic acid)が挙げられる。アンホカルボン酸は、脂肪イミダゾリンから作製することができる。ここで、アンホジカルボン酸のジカルボン酸官能基は、二酢酸及び/又は二プロピオン酸である。
【0085】
上述のカルボキシメチル化化合物(グリシネート)は、しばしばベタインとも呼ばれる。ベタインは特殊なクラスの両性物質であり、双性イオン性界面活性剤の欄で後述する。
【0086】
長鎖N−アルキルアミノ酸は、RNH2(ここでR=C8〜C18直鎖又は分岐鎖アルキル、脂肪アミンである)とハロゲン化カルボン酸との反応により、容易に調製することができる。アミノ酸の1級アミノ基のアルキル化により、2級及び3級アミンが得られる。アルキル置換基が更にアミノ基を有することにより、反応性窒素中心が2つ以上存在していてもよい。市販のN−アルキルアミン酸の多くは、ベータ−アラニン又はベータ−N(2−カルボキシエチル)アラニンのアルキル誘導体である。本発明において使用可能な市販のN−アルキルアミノ酸両性電解質の例としては、アルキルベータ−アミノジプロピオネート、RN(C24COOM)2、及びRNHC24COOMが挙げられる。ある実施態様によれば、Rは例えば、約8〜18個の炭素原子を含有する疎水性基であり、Mは陰イオンの電荷を中和する陽イオンである。
【0087】
適切な両性界面活性剤としては、ココナッツ製品、例えばココナッツ油又はココナッツ脂肪酸由来のものが挙げられる。より適切なココナッツ由来界面活性剤としては、その構造の一部として、エチレンジアミン部分、アルカノールアミド部分、アミノ酸成分(例えばグリシン)、又はこれらの組合せと、約8〜18個(例えば12個)の炭素原子の脂肪族置換基とを有するものが挙げられる。かかる界面活性剤は、アルキルアンホカルボン酸と見なすこともできる。これらの両性界面活性剤は、例えば、以下で示される化学構造を含有する:C12−アルキル−C(O)−NH−CH2−CH2−N+(CH2−CH2−CO2Na)2−CH2−CH2−OH、又はC12−アルキル−C(O)−NH−CH2−CH2−N+(CH2−CO2Na)2−CH2−CH2−OH。適切な両性界面活性剤の一例として、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウムが挙げられる。これは、商品名ミラノール(Miranol)(登録商標)FBSとして、ロディア社(Rhodia Inc.)(グランベリー、ニュージャージー州)から市販されている。他の適切なココナッツ由来の両性界面活性剤としては、ココアンホ二酢酸二ナトリウムという化学名のものが挙げられ、これは商品名ミラタイン(Mirataine)JCHAとして、やはりロディア社(Rhodia Inc.)(グランベリー、ニュージャージー州)から販売されている。他の適切な両性界面活性剤として、オクチルイミノジプロピオン酸が挙げられ、これは商品名マッカム(Mackam)ODPとして市販されている。
【0088】
適切な両性界面活性剤としては、オクチルイミノジプロピオン酸(商品名マッカム(Mackam)ODP(50%活性)及びミラタイン(Mirataine)JCHA(42%活性)として市販)、ラウレススルホンコハク酸(例えば二ナトリウム塩)(商品名マカネート(Makanate)EL(39%活性)として市販)、これらの混合物など;並びに、これらに対応する界面活性ペルオキシカルボン酸が挙げられる。
【0089】
両性の物質群、及びこれらの界面活性剤の具体例については、Laughlin及びHeuringの米国特許第3,929,678号(1975年12月30日)に典型的なものが列挙されている。さらなる例は、“Surface Active Agents and Detergents”(Vol.I及びVol.II、Schwartz, Perry and Berch)に記載されている。
【0090】
双性イオン性界面活性剤
双性イオン性界面活性剤は、両性界面活性剤のサブセットと考えることができるが、陰イオン電荷を含んでいてもよい。双性イオン性界面活性剤は、広義には、2級及び3級アミンの誘導体、複素環2級及び3級アミンの誘導体、又は4級アンモニウム、4級ホスホニウム又は3級スルホニウム化合物の誘導体として定義される。ある実施態様によれば、両性界面活性剤は、陽性荷電した4級アンモニウムを含むか、場合によっては、スルホニニウム若しくはホスホニウムイオン;陰性荷電したカルボキシル基;及びアルキル基を含む。双性イオンは、陽イオン基及び陰イオン基を含有し、これらは分子の等電点領域では概ね同程度にイオン化し、陽性−陰性荷電中心間で強い「内部塩」引力を発生する。かかる双性イオン性合成界面活性剤の例としては、脂肪族4級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体(ここで脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖でもよく、脂肪族置換基の1つが8〜18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性水溶性基(例えばカルボキシル基)を含有する)が挙げられる。適切な双性イオン性界面活性剤としては、ベタイン及びスルタイン界面活性剤が挙げられる。
【0091】
これらの化合物の一般式は以下である:
【化6】

【0092】
式中、R1は、0〜10個のエチレンオキシド成分と0〜1個のグリセリル成分とを有する、8〜18個の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカルであり;Yは窒素、リン、又は硫黄原子であり;R2は、1〜3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり;Yが硫黄原子である場合、xは1であり、Yが窒素又はリン原子である場合、xは2であり;R3は、アルキレン又はヒドロキシアルキレン又は1〜4個の炭素原子のヒドロキシアルキレンであり;そしてZはカルボキシレートである。
【0093】
上記構造を有する双性イオン性界面活性剤の例としては、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−N−オクタデシル)アンモニオ]−ブタン−1−カルボキシレート、及び4−[N,N−ジ(2(2−ヒドロキシエチル)−N(2−ヒドロキシドデシル)アンモニオ]−ブタン−1−カルボキシレートが挙げられる。該洗浄界面活性剤に含有されるアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、飽和でも不飽和でもよい。
【0094】
これらの界面活性剤の双性イオン群及び化合物種のリストは、Laughlin及びHeuringの米国特許第3,929,678号(1975年12月30日)に記載されている。さらなる例は、“Surface Active Agents and Detergents”(Vol.I 及びVol.II、Schwartz, Perry and Berch)に記載されている。
【0095】
組成物の実施態様
本組成物の実施態様の代表的な成分濃度の幾つかの例を表AとBに示すが、ここで値は、総組成物重量に対して成分の重量%で示される。ある実施態様によれば、表AとBの比率と量は「約」により修飾することができる。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約15重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約10重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約2〜約6重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、又は約3〜約4重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0099】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、約1〜約15重量%のカルボン酸界面活性剤、又は約1〜約6重量%のカルボン酸界面活性剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0100】
ある実施態様によれば、本組成物は、約5〜約90重量%の担体、約10〜約80重量%の担体、約20〜約40重量%の担体、又は約25〜約35重量%の担体を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0101】
ある実施態様によれば、本組成物は、約2〜約50重量%の酸化剤、約5〜約40重量%の酸化剤、約5〜約30重量%の酸化剤、又は約10〜約20重量%の酸化剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0102】
ある実施態様によれば、本組成物は、約10〜約80重量%の酸味剤、約20〜約70重量%の酸味剤、約30〜約70重量%の酸味剤、又は約35〜約65重量%の酸味剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0103】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.2〜約10重量%の安定剤、約0.4〜約4重量%の安定剤、約0.6〜約3重量%の安定剤、又は約1〜約2重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0104】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約15重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、及び/又は約5〜約90重量%の担体を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、約1〜約10重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、及び/又は約10〜約80重量%の担体を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、約2〜約6重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約15重量%のカルボン酸界面活性剤、及び/又は約20〜約40重量%の担体を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、約3〜約4重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約6重量%のカルボン酸界面活性剤、及び/又は約25〜約35重量%の担体を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0105】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.5〜約15重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、約5〜約90重量%の担体、約2〜約50重量%の酸化剤、約10〜約80重量%の酸味剤、及び/又は約0.2〜約10重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0106】
ある実施態様によれば、本組成物は、約1〜約10重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約20重量%のカルボン酸界面活性剤、約10〜約80重量%の担体、約5〜約40重量%の酸化剤、約20〜約70重量%の酸味剤、及び/又は約0.4〜約4重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0107】
ある実施態様によれば、本組成物は、約2〜約6重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約15重量%のカルボン酸界面活性剤、約20〜約40重量%の担体、約5〜約30重量%の酸化剤、約30〜約70重量%の酸味剤、及び/又は約0.6〜約3重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0108】
ある実施態様によれば、本組成物は、約3〜約4重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約6重量%のカルボン酸界面活性剤、約25〜約35重量%の担体、約10〜約20重量%の酸化剤、約35〜約65重量%の酸味剤、約1〜約2重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0109】
ある実施態様によれば、本組成物は、例えば政府(例えばFDA又はUSDA)の規則及び規定、21CFR§170〜178に従う食品、食品の洗浄、取り扱い、又は加工に使用可能な成分のみを含む。ある実施態様によれば、本発明の組成物はUSEPA、40CFR§180.940により食品との偶然接触が許容されている濃度の成分のみを含むものであってもよい。
【0110】
本組成物は、液体、固体、ゲル、ペースト、単位用量、ゲルパックなどの形態とすることができる。本組成物は、種々の容器又は媒体のうち、任意のものを用いて提供することができる。例としては、2室型ディスペンサーに入れた形態や、ウェットタイプのテイッシュ、タオル、又はスポンジ等の形態が挙げられる。
【0111】
中鎖カルボン酸及び/又はペルオキシカルボン酸を含む組成物
また、本発明の組成物及び方法は、例えば6〜12の炭素原子を有する中鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。例えば中鎖ペルオキシカルボン(ペルカルボン)酸は、式R(CO3H)n(ここでRはC5〜C11アルキル基、C5〜C11シクロアルキル基、C5〜C11アリールアルキル基、C5〜C11アリール基、又はC5〜C11複素環基であり;nは1、2、又は3である)で表わすことができる。本発明の組成物及び方法において有用な中鎖ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシペンタン酸、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、ペルオキシウンデカン酸、ペルオキシドデカン酸、ペルオキシアスコルビン酸、ペルオキシアジピン酸、ペルオキシクエン酸、ペルオキシピメリン酸、又はペルオキシスベリン酸、これらの混合物などが挙げられる。これらの中鎖ペルオキシカルボン酸のアルキル骨格は、直鎖でも、分岐鎖でも、これらの混合物でもよい。2つ以上のカルボキシレート部分を有するカルボン酸のペルオキシ型は、それらのカルボキシル成分のうち1又は2以上がペルオキシカルボキシル成分として存在していてもよい。
【0112】
ペルオキシオクタン(又はペルオクタン)酸は、例えばn−ペルオキシオクタン酸の式:CH3(CH26COOOHを有するペルオキシカルボン酸である。ペルオキシオクタン酸は、直鎖アルキル部分を有する酸でも、分岐鎖アルキル部分を有する酸でも、これらの混合物でもよい。ペルオキシオクタン酸は表面活性であり、微生物表面等の疎水性表面の湿潤化を促進することが可能である。
【0113】
中鎖ペルオキシカルボン酸としては、C6〜C12ペルオキシカルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C6〜C12ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、ペルオキシウンデカン酸、ペルオキシドデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖ペルオキシカルボン酸としては、C7〜C12ペルオキシカルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C7〜C12ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、ペルオキシウンデカン酸、ペルオキシドデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖ペルオキシカルボン酸としては、C6〜C10ペルオキシカルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C6〜C10ペルオキシカルボン酸は、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖ペルオキシカルボン酸としては、C8〜C10ペルオキシカルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C8〜C10ペルオキシカルボン酸は、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。ある実施態様によれば、中鎖ペルオキシオクタン酸としては、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。ある実施態様によれば、中鎖ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシオクタン酸、又はこれを含んでなるものが挙げられる。
【0114】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.0005〜約5重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、約0.3〜約7重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約5重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、約0.5〜約4重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、約0.8〜約3重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、約1〜約3重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸、又は約1〜約2重量%の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0115】
本発明の組成物及び方法は、例えば6〜12個の炭素原子を含有する中鎖カルボン酸を含んでいてもよい。例えば中鎖カルボン酸は、式R−COOH(ここでRはC5〜C11アルキル基、C5〜C11シクロアルキル基、C5〜C11アリールアルキル基、C5〜C11アリール基、又はC5〜C11複素環基である)で表わすことができる。適切な中鎖カルボン酸としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、アスコルビン酸、クエン酸、アジピン酸、ピメリン酸、又はスベリン酸が挙げられる。これらの中鎖カルボン酸のアルキル骨格は、直鎖でも、分岐鎖でも、又はこれらの混合物でもよい。一般に有用なカルボン酸としては、R基の主アルキル鎖の長さがC4〜C11であるカルボキシル基を、1つ又は2つ有するものが挙げられる。ここで主アルキル鎖とは、分子中の炭素鎖のうち炭素原子長が最も長く、カルボキシル官能基が直接結合している炭素鎖である。
【0116】
ある実施態様によれば、本組成物及び本方法は、中鎖カルボン酸を含む。中鎖カルボン酸としては、C6〜C12カルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C6〜C12カルボン酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖カルボン酸としては、C7〜C12カルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C7〜C12カルボン酸としては、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖ペルオキシカルボン酸としては、C6〜C10カルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C6〜C10カルボン酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。中鎖カルボン酸としては、C8〜C10カルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C8〜C10カルボン酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。ある実施態様によれば、中鎖カルボン酸としては、オクタン酸、デカン酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。ある実施態様によれば、中鎖カルボン酸は、オクタン酸であるか、又はオクタン酸を含んでなる。
【0117】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.001〜約8重量%の中鎖カルボン酸、約1〜約10重量%の中鎖カルボン酸、約1〜約8重量%の中鎖カルボン酸、約1.5〜約6重量%の中鎖カルボン酸、約2〜約8重量%の中鎖カルボン酸、約2〜約6重量%の中鎖カルボン酸、約2〜約4重量%の中鎖カルボン酸、約2.5〜約5重量%の中鎖カルボン酸、約3〜約6重量%の中鎖カルボン酸、約3〜約5重量%の中鎖カルボン酸を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0118】
ある実施態様によれば、本組成物及び本方法は、中鎖ペルオキシカルボン酸及び対応する中鎖カルボン酸を含む。
【0119】
ある実施態様によれば、本組成物は、食品に関連する1又は2以上の食物由来病原性細菌を死滅させるのに有効な量の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。こうした細菌の例としては、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・ジャビアーナ(Salmonella javiana)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobactre jejuni)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、及び大腸菌(E. coli)O157:H7、酵母、カビなどが挙げられる。ある実施態様によれば、本組成物は、医療表面及び環境に関連する1又は2以上の病原性細菌を死滅させるのに有効な量の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。こうした細菌の例としては、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ・コレラスルス(Salmonella choleraesurus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(E. coli)、マイコバクテリア(mycobacteria)、酵母、カビなどが挙げられる。本発明の組成物及び方法は、多種多様な微生物、例えば、リステリア菌(Listeria monocytogenes)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のグラム陽性細菌、大腸菌(E. coli)又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等グラム陰性細菌、酵母、カビ、細菌胞子、ウイルスなどに対して活性を有する。上記したように本発明の組成物及び方法は、多種多様なヒト病原体に対して活性を有する。本組成物及び本方法は、食品加工表面上、食品の表面上、食品の洗浄又は加工に使用される水の中、医療表面上、又は医療環境上に存在する、多種多様な微生物を死滅させることができる。
【0120】
ある実施態様によれば、本組成物は、多量の短鎖ペルオキシカルボン酸を含む必要は無い。例えば、本組成物は、添加された(added)短鎖ペルオキシカルボン酸を含まなくてもよい。本明細書において、添加された物質(added material)を含まないとは、組成物に含まれるその物質が、例えば他の成分中に成分若しくは不純物として含まれる程度、又は微少な副反応により偶発的に生じた程度の、偶然量又は微量しか存在しないことを意味する。
【0121】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸と比較的少量の短鎖ペルオキシカルボン酸とを含む。例えば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物8部当たり、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。例えば、本組成物は、普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の量の短鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。
【0122】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸を含み、多量のペルオキシ酢酸は含まず、添加されたペルオキシ酢酸を含まず、ペルオキシ酢酸8部当たり、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含むか、又は普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の量のペルオキシ酢酸を含んでいてもよい。
【0123】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸を含むが、多量の短鎖カルボン酸を含む必要は無い。例えば、本組成物は、添加された短鎖カルボン酸を含まない。ある実施態様によれば、本組成物は、比較的少量の短鎖カルボン酸を含む。さらなる例として、本組成物は、各8部の短鎖カルボン酸につき約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。例えば、本組成物は、普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の量の短鎖カルボン酸を含んでいてもよい。
【0124】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸を含み、多量の酢酸を含む必要は無く、添加された酢酸を含まず、酢酸各8部につき約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含むか、又は普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の量の酢酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、例えば10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満の酢酸を含む。ある実施態様によれば、本使用組成物は、40ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、又は5ppm未満の酢酸を含む。
【0125】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸を含み、多量の短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を含む必要は無い。例えば、本組成物は、添加された短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を含まなくてよい。例えば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を、普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の濃度で含んでいてもよい。ある実施態様によれば、本組成物は、多量の酢酸、ペルオキシ酢酸、又はこれらの混合物を含まず;添加された酢酸、ペルオキシ酢酸、又はこれらの混合物を含まず;酢酸、ペルオキシ酢酸、又はこれらの混合物各8部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含むか;又は、普通の人が不快と感じる臭いを生じない程度の量の酢酸、ペルオキシ酢酸、又はこれらの混合物を含む。
【0126】
ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各8部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各7部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各6部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各5部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各4部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各3部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各2部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各1部につき約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含む。
【0127】
ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは、(例えば快不快度評価により測定した場合に)5、4、3、2、又は1重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは、(例えば快不快度評価により測定した場合に)5重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは、(例えば快不快度評価により測定した場合に)4重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは、(例えば快不快度評価により測定した場合に)3重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは、(例えば快不快度評価により測定した場合に)2重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。ある実施態様によれば、本組成物が有する臭いは(例えば快不快度評価により測定した場合に)1重量%の酢酸水溶液よりも不快度が低い。
【0128】
ある実施態様によれば、本組成物は、中鎖ペルオキシカルボン酸を含み、短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を、全く含まないか、ほんのわずかに、又は比較的少量含む。例えば、ある実施態様によれば、本組成物は、添加された短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を実質的に含まない。例えば、ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を、中鎖ペルオキシカルボン酸を溶解させない程度の濃度で含む。例えば、ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を、不快臭を引き起こさない程度の濃度で含んでいてもよい。例えば、ある実施態様によれば、本組成物は、短鎖カルボン酸、短鎖ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物各8部につき、約1部又はそれ以上の中鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。
【0129】
本発明の実施態様は、中鎖カルボン酸及び中鎖ペルオキシカルボン酸を含んでおり、一部の実施態様は特に、短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を除外している。しかしながら、本組成物の実施態様は、短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。組成物に短鎖ペルオキシカルボン酸、短鎖カルボン酸、又はこれらの混合物を加えたからといって、組成物が必ずしも本発明の趣旨及び範囲から除外される訳ではない。
【0130】
中鎖ペルオキシカルボン酸を含むある実施態様によれば、本組成物は、約0.001〜約30重量%の酸化剤、約0.001〜約10重量%の酸化剤、約0.002〜約10重量%の酸化剤、約2〜約30重量%の酸化剤、約2〜約25重量%の酸化剤、約2〜約20重量%の酸化剤、約4〜約20重量%の酸化剤、約5〜約10重量%の酸化剤、又は約6〜約10重量%の酸化剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0131】
中鎖ペルオキシカルボン酸を含むある実施態様によれば、本組成物は、約0.001〜約50重量%の酸味剤、約0.001〜約30重量%の酸味剤、約1〜約50重量%の酸味剤、約1〜約30重量%の酸味剤、約2〜約40重量%の酸味剤、約2〜約10重量%の酸味剤、約3〜約40重量%の酸味剤、約5〜約40重量%の酸味剤、約5〜約25重量%の酸味剤、約10〜約40重量%の酸味剤、約10〜約30重量%の酸味剤、約15〜約35重量%の酸味剤、約15〜約30重量%の酸味剤、又は約40〜約60重量%の酸味剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0132】
中鎖ペルオキシカルボン酸を含むある実施態様によれば、本組成物は、約0.001〜約50重量%の安定剤、約0.001〜約5重量%の安定剤、約0.5〜約50重量%の安定剤、約1〜約50重量%の安定剤、約1〜約30重量%の安定剤、約1〜約10重量%の安定剤、約1〜約5重量%の安定剤、約1〜約3重量%の安定剤、約2〜約10重量%の安定剤、約2〜約5重量%の安定剤、又は約5〜約15重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0133】
短鎖カルボン酸及び/又はペルオキシカルボン酸を含む組成物
ある実施態様によれば、本発明の組成物はまた、例えば2〜4個の炭素原子を含有する短鎖ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。例えば短鎖ペルオキシカルボン(ペルカルボン)酸は、式R(CO3H)n(ここでRはC2〜C4アルキル基であり、nは1又は2である)を有する。本発明の組成物及び方法において有用な短鎖ペルオキシカルボン酸としては、ペルオキシ酢酸、ペルオキシプロピオン酸、又はペルオキシ酪酸、これらの混合物などが挙げられる。短鎖ペルオキシカルボン酸のアルキル骨格は、直鎖でも分岐鎖でもよい。2つ以上のカルボキシレート部分を有するペルオキシ型のカルボン酸の場合は、それらのカルボキシル成分のうち1又は2以上が、ペルオキシカルボキシル成分として存在していてもよい。
【0134】
短鎖ペルオキシカルボン酸は、C2〜C4ペルオキシカルボン酸、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。C6〜C12ペルオキシカルボン酸は、ペルオキシ酢酸、ペルオキシプロピオン酸、ペルオキシ酪酸、又はこれらの混合物、又はこれらを含んでなるものが挙げられる。ある実施態様によれば、短鎖ペルオキシカルボン酸は、ペルオキシ酢酸であるか、これを含んでなる。ある実施態様によれば、本組成物は、約0.1〜約25重量%の短鎖ペルオキシカルボン酸、約3〜約20重量%の短鎖ペルオキシカルボン酸、又は約5〜約15重量%の短鎖ペルオキシカルボン酸を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0135】
本発明の組成物及び方法は、例えば2〜4個の炭素原子を含有する短鎖カルボン酸を含んでいてもよい。例えば、短鎖カルボン酸は、式R−COOH(ここでRはC2〜C4アルキル基である)を有する。適切な短鎖カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸が挙げられる。これらの短鎖カルボン酸のアルキル骨格は、直鎖でも分岐鎖でもよく、又はこれらの混合物でもよい。一般に有用なカルボン酸としては、R基の主アルキル鎖の長さがC2〜C4であるカルボキシル基を、1つ又は2つ有するものが挙げられる。ここで主アルキル鎖とは、分子の炭素鎖のうち、炭素原子長が最も長く、カルボキシル官能基が直接結合している炭素鎖をいう。
【0136】
ある実施態様によれば、本組成物及び本方法は、短鎖カルボン酸を含む。短鎖カルボン酸としては、C2〜C4カルボン酸が挙げられる。C6〜C12カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。ある実施態様によれば、本組成物は、約0.1〜約25重量%の短鎖ペルオキシカルボン酸、約3〜約20重量%の短鎖ペルオキシカルボン酸、又は約5〜約15重量%の短鎖カルボン酸を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0137】
ある実施態様によれば、本組成物及び本方法は、短鎖ペルオキシカルボン酸、及び対応する短鎖カルボン酸を含む。
【0138】
ある実施態様によれば、本組成物は、抗微生物活性を示す有効量に満たない程度の短鎖ペルオキシカルボン酸を含み、或いは短鎖ペルオキシカルボン酸を実質的に含まない。
【0139】
担体
また、本発明の組成物は、担体を含んでいてもよい。担体は、組成物の他の成分を溶解、懸濁、又は運搬する媒体となる。例えば、担体は、界面活性ペルオキシカルボン酸の溶解、懸濁、又は産生のための、更には平衡混合物を生成するための媒体となり得る。また、担体は、ある対象上に本発明の抗微生物組成物を送達し、湿潤させる機能も有し得る。このために、これらの機能を促進し得る任意の成分を、担体に含有させてもよい。
【0140】
一般に、担体は主成分として水を含む。水は溶解を促進し、反応及び平衡のための媒体として機能し得る。担体は、有機溶媒を含有していてもよく、有機溶媒を主成分としていてもよい。有機溶媒としては、単純アルキルアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどが挙げられる。また、グリセロール、ソルビトールなどのポリオールも、有用な担体である。
【0141】
適切な担体としては、グリコールエーテルが挙げられる。適切なグリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールtert−ブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)からDOWANOLEPH(登録商標)として市販されている)、プロピレングリコールフェニルエーテル(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)からDOWANOLPPH(登録商標)として市販されている)など、又はこれらの混合物が挙げられる。追加の適切な市販のグリコールエーテル(これらのすべてがユニオンカーバード社(Union Carbide Corp.)から入手できる)には、ブトキシエチルPROPASOL(登録商標)、ブチルCARBITOL(登録商標)アセテート、ブチルCARBITOL(登録商標)、ブチルCELLOSOLVE(登録商標)、ブチルDIPROPASOL(登録商標)、ブチルPRPASOL(登録商標)、CARBITOL(登録商標)PM−600、CARBITOL(登録商標)低比重(Low Gravity)、CELLOSOLVE(登録商標)アセテート、CELLOSOLVE(登録商標)、エステルEEP(登録商標)、FILMER IBT(登録商標)、ヘキシルCARBITOL(登録商標)、ヘキシルCELLOSOLVE(登録商標)、メチルCARBITOL(登録商標)、メチルCELLOSOLVE(登録商標)アセテート、メチルCELLOSOLVE(登録商標)、メチルDIPROPASOL(登録商標)、メチルPROPASOL(登録商標)アセテート、メチルPROPASOL(登録商標)、プロピルCARBITOL(登録商標)、プロピルCELLOSOLVE(登録商標)、プロピルDIPROPASOL(登録商標)、及びプロピルPROPASOL(登録商標)がある。
【0142】
一般に、担体は本発明の組成物の大部分を構成する。活性抗微生物成分、酸化剤、アジュバントなどを除いた本組成物の残りを、全て担体としてもよい。繰り返しになるが、担体の濃度及び種類は、組成物全体の性質、保存環境、及び施用法(界面活性ペルオキシカルボン酸の濃度などを含む)に依存する。特に担体は、本発明の組成物中の界面活性ペルオキシカルボン酸の抗微生物活性を阻害しない濃度で選択し、使用べきである。
【0143】
ある実施態様によれば、本組成物は、約5〜約90重量%の担体、約10〜約80重量%の担体、約20〜約40重量%の担体、又は約25〜約35重量%の担体を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0144】
酸化剤
本組成物及び方法は、種々の酸化剤のうち任意のものを含んでいてもよい。酸化剤は、ペルオキシカルボン酸の維持又は作製に使用することができる。
【0145】
無機酸化剤の例には、以下の種類の化合物、若しくはこれらの化合物の供給源、又は、これらの種類の化合物を含む、若しくはこれらと付加物を形成するアルカリ金属塩が挙げられる。
【0146】
過酸化水素;
第1族(IA族)酸化剤、例えば過酸化リチウム、過酸化ナトリウムなど;
2族(IIA族)酸化剤、例えば過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウムなど;
第12族(IIB族)酸化剤、例えば過酸化亜鉛など;
【0147】
第13族(IIIA族)酸化剤、例えばホウ素化合物、例えば過ホウ素塩、例えば式Na2[Br2(O22(OH)4]・6H2Oの過ホウ素塩ナトリウム六水和物(過ホウ素塩ナトリウム四水和物とも呼ばれ、以前はNaBO3・4H2Oと書かれた);式Na2Br2(O22[(OH)4]・4H2Oの過ホウ素塩ナトリウム四水和物(過ホウ素塩ナトリウム三水和物とも呼ばれ、以前はNaBO3・3H2Oと書かれた);式Na2[B2(O22(OH)4]の過ホウ素塩ナトリウム(過ホウ素塩ナトリウム一水和物とも呼ばれ、以前はNaBO3・H2Oと書かれた);など;ある実施態様によれば、過ホウ素塩;
【0148】
第14族(IVA族)酸化剤、例えば過ケイ酸塩及びペルオキシ炭酸塩(これらはアルカリ金属の過炭酸塩とも呼ばれる)、例えばアルカリ金属のペルケイ酸塩又はペルオキシ炭酸塩;など;ある実施態様によれば、過炭酸塩;ある実施態様によれば、過ケイ酸塩;
【0149】
第15族(VA族)酸化剤、例えば例えばペルオキシ亜硝酸及びその塩;ペルオキシリン酸及びその塩、例えば過りん酸塩;など;ある実施態様によれば、過りん酸塩;
【0150】
第16族(VIA族)酸化剤、例えばペルオキシ硫酸及びその塩、例えばペルオキシモノ硫酸及びペルオキシジ硫酸、及びその塩、例えば過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム;など;別の実施態様によれば、過硫酸塩;
第VIIa族酸化剤、例えば過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなど。
【0151】
他の活性無機酸素化合物としては、遷移金属過酸化物;及び、他のかかる過酸素化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0152】
ある実施態様によれば、本発明の組成物及び方法では、上記の1又は2以上の無機酸化剤を使用する。適切な無機酸化剤には、オゾン、過酸化水素、過酸化水素付加物、IIIA属酸化剤、VIA属酸化剤、VA属酸化剤、VIIA属酸化剤、又はこれらの混合物がある。かかる無機酸化剤の適切な例としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0153】
過酸化水素は、無機酸化剤の1つの適切な例である。過酸化水素は、過酸化水素と水との混合物、例えば液体過酸化水素の水溶液として提供することができる。過酸化水素は、35%、70%、及び90%水溶液として市販されている。安全の観点から、一般に35%が使用される。本組成物は、例えば約2〜約30重量%、又は約5〜約20重量%の過酸化水素を含む。
【0154】
ある実施態様によれば、無機酸化剤には、過酸化水素付加物が含まれる。例えば、無機酸化剤には、過酸化水素、過酸化水素付加物、又はこれらの混合物が含まれる。種々の過酸化水素付加物の何れも、本発明の組成物及び方法における使用に適している。例えば、適切な過酸化水素付加物としては、過炭酸塩、過酸化尿素、ホウ酸ペルアセチル、及びH22の付加物、及びポリビニルピロリドン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、これらの混合物などが挙げられる。適切な過酸化水素付加物としては、過炭酸塩、過酸化尿素、ホウ酸ペルアセチル、H22の付加物、ポリビニルピロリドン、又はこれらの混合物が挙げられる。適切な過酸化水素付加物としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、これらの混合物、例えば過炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0155】
ある実施態様によれば、本組成物及び本方法は、過酸化水素を酸化剤として含んでいてもよい。過炭酸と組合せた過酸化水素は、微生物に対して若干の抗微生物作用を示す場合がある。さらに、過酸化水素は発泡作用を有し、これによって施用対象の任意の表面を洗浄することができる。過酸化水素はいったん施用されると機械的な洗浄流作用(mechanical flushing action)を示し、これによって対象の表面がさらに洗浄される。過酸化水素のさらなる利点として、使用及び分解時における本組成物の食品適合性が挙げられる。
【0156】
ある実施態様によれば、本組成物は、約2〜約50重量%の酸化剤、約5〜約40重量%の酸化剤、約5〜約30重量%の酸化剤、約10〜約20重量%の酸化剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0157】
酸味剤
ある実施態様によれば、本組成物は酸味剤を含んでいてもよい。酸味剤は、カルボン酸をペルオキシカルボン酸に変換するための触媒として作用する。酸味剤は、pHが約1以下の濃縮組成物を生成するのに有効である。酸味剤は、pHが約5、約5以下、約4、約4以下、約3、約3以下、約2、約2以下などの使用組成物を生成するのに有効である。ある実施態様によれば、酸味剤としては無機酸が挙げられる。適切な無機酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0158】
ある実施態様によれば、酸味剤は、pKaが4未満のカルボン酸を含む。pKaが4未満の適切なカルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、他のヒドロキシカルボン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0159】
ある実施態様によれば、本組成物は、約10〜約80重量%の酸味剤、約20〜約70重量%の酸味剤、約30〜約70重量%の酸味剤、約35〜約65重量%の酸味剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0160】
安定剤
過酸及び過酸化水素を安定化するとともに、本発明の組成物内における本成分の早期分解を防止するため、1又は2以上の安定剤を本発明の組成物に加えることができる。
【0161】
適切な安定剤としては、キレート剤又は金属イオン封鎖剤が挙げられる。適切な金属イオン封鎖剤としては、溶液中の金属イオン、特に遷移金属イオンを封鎖する有機キレート化合物が挙げられる。かかる金属イオン封鎖剤としては、有機アミノ−又はヒドロキシ−ポリリン酸錯化物質(酸型又は可溶性の塩型)、カルボン酸(例えば、ポリマー性ポリカルボキシレート)、ヒドロキシカルボン酸、又はアミノカルボン酸が挙げられる。
【0162】
金属イオン封鎖剤としては、ホスホン酸若しくはホスホネート、又はこれらを含むものが挙げられる。適切なホスホン酸及びホスホネートとしては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(CH3C(PO322OH)(HEDP);エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸(EDTMP);ジエチレントリアミンペンタキスメチルレーンホスホン酸(DTPMP);シクロヘキサン−1,2−テトラメチレンホスホン酸;アミノ[トリ(メチレンホスホン酸)];(エチレンジアミン[テトラメチレン−ホスホン酸)];2−ホスフェンブタン−1,2,4−トリカルボン酸;又はこれらの塩、例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアルキロイル塩、例えばモノ、ジ、若しくはテトラエタノールアミン塩;又はこれらの混合物が挙げられる。
【0163】
適切な有機ホスホネートとしては、HEDPが挙げられる。
【0164】
市販の食品添加剤キレート剤としては、商品名DEQUEST(登録商標)として販売されているホスホネート、例えばDEQUEST(登録商標)2010としてモンサントインダストリアルケミカルズ社(Monsanto Industrial Chemicals Co.)(セントルイス、ミズーリ州)から入手できる1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸;DEQUEST(登録商標)2000としてモンサント(Monsanto)から入手できるアミノ(トリ(メチレンホスホン酸))、(N[CH2PO323);DEQUEST(登録商標)2041としてモンサント(Monsanto)から入手できるエチレンジアミン[テトラ(メチレンホスホン酸));及び、モベイケミカル社(Mobay Chemical Coprporation)無機化成品部門(ピッツバーグ、ペンシルバニア州)からBayhibitAMとして入手できる2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸が挙げられる。
【0165】
金属イオン封鎖剤は、アミノカルボン酸型の金属イオン封鎖剤であるか、又はこれを含むものであってもよい。適切なアミノカルボン酸型の金属イオン封鎖剤としては、酸又はそのアルカリ金属塩、例えばアミノ酢酸塩及びその塩が挙げられる。適切なアミノカルボキシレートとしては、N−ヒドロキシエチルアミノ二酢酸;ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);N−ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸(HEDTA);ジエチレンジアミン五酢酸(DTPA);及びアラニン−N,N−二酢酸;など;及び、これらの混合物が挙げられる。
【0166】
金属イオン封鎖剤は、ポリカルボキシレートであるか、又はこれを含むものであってもよい。適切なポリカルボキシレートとしては、例えば、ポリアクリル酸、マレイック/オレフィンコポリマー、アクリリック/マレイックコポリマー、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、加水分解ポリアクリルアミド、加水分解ポリメタクリルアミド、加水分解ポリアミド−メタクリルアミドコポリマー、加水分解ポリアクリロニトリル、加水分解ポリメタクリロニトリル、加水分解アクリロニトリル−メタクリロニトリルコポリマー、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、アクリル酸とイタコン酸とのコポリマー、ホスフィノポリカルボキシレート、これらの酸型若しくは塩型、これらの混合物などが挙げられる。
【0167】
ある実施態様によれば、本組成物は、約0.2〜約10重量%の安定剤、約0.4〜約4重量%の安定剤、約0.6〜約3重量%の安定剤、約1〜約2重量%の安定剤を含む。本組成物は、これらの範囲又は量のうち、「約」によって修飾されない何れかの値を含んでいればよい。
【0168】
アジュバント
また、本発明の抗微生物組成物は、種々のアジュバントのうち任意のものを含んでいてもよい。特に、本発明の組成物は、組成物に添加することが可能な種々の成分の中でも、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、発泡剤、固化剤、化粧剤(すなわち、着色剤(例えば顔料)、着臭剤、又は香料)を含んでいてもよい。かかるアジュバントは予め、本発明の抗微生物組成物と共に調製してもよく、抗微生物組成物の添加と同時に、又はその後に、系に加えてもよい。また、本発明の組成物は、施用のための必要に応じて、本発明の活性を促進し得る他の公知の種々の成分のうち、任意のものを含んでいてもよい。
【0169】
湿潤剤又は消泡剤
また、本発明においては、湿潤剤及び消泡剤も有用である。湿潤剤は、本発明の抗微生物組成物の表面接触又は浸透活性を向上させる機能を有する。本発明の組成物に使用可能な湿潤剤としては、本発明の組成物の表面活性を上昇させることが本技術分野で知られている、任意の成分が挙げられる。
【0170】
一般に、本発明で使用できる消泡剤としては、シリカとシリコーン;脂肪族酸又はエステル;アルコール;硫酸塩又はスルホネート;アミン又はアミド;ハロゲン化化合物、例えばフルオロクロロ炭化水素;植物油、蝋、ミネラル油、及びこれらの硫酸化誘導体;脂肪酸石けん、例えばアルカリ、アルカリ土類金属石けん;並びに、ホスフェート及びホスフェートエステル、特にアルキル及びアルカリ性ジホスフェート、及びトリブチルスズホスフェート等;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0171】
ある実施態様によれば、本組成物は、本発明の方法の用途に応じた、食品グレードの消泡剤(antifoaming agents or defoamers)を含んでいてもよい。この目的において、より有効な消泡剤の1つとしては、シリコーンが挙げられる。例えばジメチルシリコーン、グリコールポリシロキサン、メチルフェノールポリシロキサン、トリアルキル又はテトラアルキルシラン、疎水性シリカ消泡剤等のシリコーン、及びこれらの混合物は、何れも消泡用途に使用することが可能である。一般に入手可能な市販の消泡剤としては、シリコーン類、例えばアーマーインダストリアルケミカル社(Armour Industrial Chemical Company)のArdefoam(登録商標)(これは有機エマルジョン中で結合したシリコーンである);クルサブルケミカル社(Krusable Chemical Company)のFoam Kill(登録商標)又はKresseo(登録商標)(これらはシリコーン及び非シリコーン型の消泡剤、ならびにシリコーンエステルである);及びダウコーニング社(Dow Corning Corporation)のAnti-Foam(登録商標)とDC-200(これらは両方とも特に食品グレード型のシリコーンである)が挙げられる。これらの消泡剤の存在濃度は、約0.01重量%〜5重量%、約0.01重量%〜2重量%、又は約0.01重量%〜約1重量%の範囲とすることができる。
【0172】
増粘剤又はゲル化剤
本組成物は、種々の既知の増粘剤のうち、任意のものを含んでいてもよい。適切な増粘剤としては、天然ゴム、例えばキサンタンガム、グアールガム、又は植物粘液由来の他のゴム;多糖ベースの増粘剤、例えばアルギン酸塩、デンプン、及びセロビオースポリマー(例えばカルボキシメチルセルロース);ポリアクリレート増粘剤;及びヒドロコロイド増粘剤、例えばペクチンが挙げられる。ある実施態様によれば、増粘剤は、汚染残渣を対象の表面に残さないものである。例えば、増粘剤又はゲル化剤は、接触領域における食品や、慎重な取り扱いを要する他の製品と、適合性を有するものであってもよい。一般に、本組成物又は方法で使用される増粘剤の濃度は、最終組成物における所望の粘度により決定される。しかし、一般的な基準として、本組成物内の増粘剤の粘度は、約0.1重量%〜1.5重量%、約0.1重量%〜1.0重量%、又は約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲である。
【0173】
固化剤
本組成物は、固化剤を含んでいてもよい。固化剤は、組成物を固体状態に維持するのに寄与し得る。ある実施態様によれば、固化剤は、固体状の組成物を形成し、及び/又は、維持し得るものである。ある実施態様によれば、固化剤は、界面活性ペルオキシカルボン酸の最終的な放出を許容し得ないほど妨害することなく、組成物を固化し得るものである。固化剤としては、例えば、中性且つ不活性の性質を有するか、又は、本組成物の機能性、安定性若しくは洗浄性に寄与し得る、有機又は無機の固体化合物がある。適切な固化剤としては、固体ポリエチレングリコール(PEG)、固体ポリプロピレングリコール、固体EO/POブロックコポリマー、アミド、尿素(カルバミドとしても知られている)、(カプラーとともに使用可能な)非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、(例えば酸又はアルカリ処理法により)水溶化されたデンプン、水溶化されたセルロース、無機物質、ポリ(無水マレイン酸/メチルビニルエーテル)、ポリメタクリル酸、その他の一般的な機能性又は不活性の高融点物質、これらの混合物などが挙げられる。
【0174】
適切なグリコール固化剤としては、例えば分子量が約1,400〜約30,000の、固体ポリエチレングリコール又は固体ポリプロピレングリコールが挙げられる。ある実施態様によれば、固化剤は、固体PEG(例えばPEG1500から、最大でPEG20,000まで)であるか、又はこれを含んでなる。ある実施態様によれば、PEGはPEG1450、PEG3350、PEG4500、PEG8000、PEG20,000などを含む。適切な固体ポリエチレングリコールとしては、ユニオンカーバード社(Union Carbide Corp.)から商品名CARBOWAXとして市販されているものが挙げられる。
【0175】
適切なアミド固化剤としては、ステアリックモノエタノールアミド、ラウリックジエタノールアミド、ステアリックジエタノールアミド、ステアリックモノエタノールアミド、ココジエチレンアミド、アルキルアミド、これらの混合物などが挙げられる。ある実施態様によれば、本組成物は、グリコール(例えばPEG)及びアミドを含む。
【0176】
適切な非イオン性界面活性固化剤としては、ノニルフェノールエトキシレート、線状アルキルアルコールエトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、これらの混合物などが挙げられる。適切なエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーとしては、バスフ社(BASF Corporation)から商品名Pluronic(例えば、Pluronic108及びPluronic F68)で販売されているものが挙げられる。ある実施態様によれば、非イオン性界面活性剤としては、室温において、或いは組成物の保存又は使用時の温度において、固体であるものが選択される。ある実施態様によれば、非イオン性界面活性剤としては、カップリング剤との組合せで水溶性が低いものを選択することができる。非イオン性界面活性固化剤とともに使用できる適切なカプラーとしては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの混合物などが挙げられる。
【0177】
適切な陰イオン性界面活性剤固化剤としては、線状アルキルベンゼンスルホン酸、アルコール硫酸、アルコールエーテル硫酸、アルファオレフィンスルホン酸、これらの混合物などが挙げられる。ある実施態様によれば、陰イオン性界面活性剤固化剤は、線状アルキルベンゼンスルホン酸であるか、又はこれを含んでなる。ある実施態様によれば、陰イオン性界面活性剤は、室温において、或いは組成物の保存又は使用時の温度において、固体であるものが選択される。
【0178】
適切な無機固化剤としては、リン酸塩(例えば、アルカリ金属リン酸塩)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウム)、酢酸塩(例えば、無水酢酸ナトリウム)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム又は水和炭酸塩)、他の公知の可水和化合物、これらの混合物などが挙げられる。ある実施態様によれば、無機固化剤としては、有機リン酸化合物及び炭酸塩、例えばE型組成物が挙げられる。
【0179】
ある実施態様によれば、本組成物は、必要な程度の固化及び水溶性を達成する限り、任意の物質又は物質の組合せを含んでいてもよい。ある実施態様によれば、本組成物における固化剤の濃度を上昇させると、組成物の硬度が上昇する傾向がある。ある実施態様によれば、本組成物における固化剤の濃度を低下させると、組成物が弛緩又は軟化する傾向がある。
【0180】
ある実施態様によれば、固化剤は、例えば本組成物を水性環境においた場合に、これに固体性を付与し、及び/又は、その可溶性を制御するような、任意の有機又は無機化合物を含んでいてもよい。例えば、組成物中の他の成分に比べてより水溶性の固化剤を使用すれば、分配性を制御することが可能となる。このような固化剤の一例としては尿素が挙げられる。別の例として、水溶性が低い方が好ましい系や、溶解速度が遅い方が好ましい系の場合には、有機非イオン性又はアミド固化剤が適している。
【0181】
ある実施態様によれば、本組成物は、本組成物の加工又は製造の利便性を高める固化剤を含んでいてもよい。例えば、混合を停止して混合系から混合物を分配した後、約30から約50℃の周囲温度において、約1分〜約3時間、又は約2分〜約2時間、又は約5分〜約1時間の間に組成物が固化して固体になるように、固化剤を選択すればよい。
【0182】
本組成物が含有する固化剤の量は、有効量であれば任意である。本組成物に含まれる固化剤の量は、組成物の種類、組成物の成分、組成物の使用目的、使用時に固体組成物に対して経時的に適用される分配溶液の量、分配溶液の温度、分配溶液の硬度、固体組成物の物理的サイズ、他の成分の濃度、組成物中の洗浄剤の濃度、及び他の要因に依存して変化し得る。適切な量としては、例えば、約1〜約90重量%、約1.5〜約85重量%、約2〜約80重量%、約10〜約45重量%、約15〜約40重量%、約20〜約30重量%、約30〜約70重量%、約40〜約60重量%、最大約50重量%、約40〜約50重量%が挙げられる。
【0183】
使用組成物
本組成物としては、濃縮組成物と使用組成物とが挙げられる。例えば、濃縮組成物は、水等で希釈して使用組成物を作製することができる。ある実施態様によれば、濃縮組成物を希釈して使用溶液にした後、対象に施用することができる。経済的な観点からは、濃縮物を販売し、この濃縮物を最終ユーザーが水又は水性希釈剤で希釈して、使用溶液を作製するようにしてもよい。
【0184】
濃縮組成物中の活性成分の濃度は、目的とする希釈係数や、所望の界面活性ペルオキシカルボン酸化合物の活性に依存する。一般に、水性抗微生物組成物の場合、水約20ガロンに対し液体約1オンスから、水約1ガロンに対し液体約5オンスまでの割合で希釈して使用される。使用温度が高い(25℃超)場合や、暴露時間が長い(30秒超)場合には、使用時の希釈率をより高くしてもよい。通常の使用場所では、一般的な水道水又は材料混合用水で、水100ガロンにつき濃縮物約3〜約20オンスの希釈比率で濃縮物を希釈する。
【0185】
例えば、使用組成物は、約0.01〜約10重量%の濃縮組成物及び約90〜約99.99重量%の希釈剤;又は約0.1〜約1重量%の濃縮組成物及び約99〜約99.99重量%の希釈剤を含んでなる。使用組成物中の成分の量は、濃縮組成物について上述したした量と、これらの希釈率とから計算することができる。
【0186】
本方法には、1又は2以上の微生物集団を減少させるのに有効な濃度の界面活性ペルオキシカルボン酸を利用することができる。かかる有効な濃縮物は、約2〜約500ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸、約5〜約200ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸、約10〜約100ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸、又は約20〜約50ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸を含む。ある実施態様によれば、使用組成物は、約5〜約200ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸、約1〜約1000ppmのカルボン酸界面活性剤、及び約1〜約99重量%の担体及び/又は希釈剤(例えば水)を含んでいてもよい。
【0187】
使用組成物中の反応種(例えば界面活性ペルオキシカルボン酸及び/又は過酸化水素)の濃度は、使用組成物中に存在する有機物質、或いは使用組成物に加えられる有機物質によって影響を受ける(通常は低下することになる)。例えば、対象を洗浄する際に使用組成物を浴液又はスプレーとして使用する場合、対象上の汚れによって過酸及びペルオキシドが消費される可能性がある。従って、本明細書に示す使用組成物中の成分量は、使用前又は使用初期の組成物に関する量であり、使用組成物に有機物質を加える場合には低下するものと理解される。
【0188】
界面活性ペルオキシカルボン酸組成物の製造
本発明の組成物、又は本発明の方法で使用される組成物は、カルボン酸界面活性剤と酸化剤(例えば過酸化水素)とを組み合わせ、或いは反応させることにより作製することができる。カルボン酸界面活性剤と酸化剤とを組み合わせ、或いは反応させると、界面活性ペルオキシカルボン酸が産生される。ある実施態様によれば、組み合わせる工程としては、混合する工程が挙げられる。本組成物を作製するために組み合わされる調製物も、酸味剤、担体、安定剤、これらの混合物などを含んでいてもよい。あるいは、ペルオキシカルボン酸の一部又は全部が産生された後に、1又は2以上の酸味剤、担体、これらの混合物を加えてもよい。
【0189】
ある実施態様によれば、本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸の製造法を包含する。この方法は、例えば、カルボン酸界面活性剤、担体(例えば水)、酸化剤(例えば過酸化水素)、酸味剤、及び安定剤を組み合わせ、或いは反応させる工程を含む。この方法は、例えば、カルボン酸界面活性剤を約1〜約20重量%、担体を約20〜約80重量%、酸化剤を約20〜約80重量%、酸味剤を約10〜約50重量%、及び、安定剤を約1〜約5重量%の濃度で、成分を混合することを含む。また、本組成物には、これらの成分の組合せが平衡に達して界面活性ペルオキシカルボン酸を生成している状態の組成物も含まれる。
【0190】
本組成物は、工場で濃縮物として製造して最終ユーザーに出荷し、最終ユーザーはそれを希釈するだけで使用組成物を作製できるようにしてもよい。また、本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物は、使用する場所で作製してもよい。例えば、製品を複数の部分組成物として、又はキットとして出荷してもよい。ユーザーはそれら複数の組成物、又はキットの成分を組み合わせれば、本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を作製することができる。あるいは、調製装置と容器入原料からなるシステムを使用場所に供給し、これをプログラムし、又は操作することによって、本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物の混合及び分注を行なうようにしてもよい。
【0191】
ある実施態様によれば、製品を複数の部分組成物として供給してもよい。組成物のうち1つは、例えば、カルボン酸界面活性剤と、酸味剤、担体、安定剤、これらの混合物等のうち1又は2以上とを含んでなる。第2の組成物は、例えば、酸化剤と、酸味剤、担体、安定剤、これらの混合物等のうち1又は2以上とを含んでなる。あるいは、酸味剤、担体、安定剤、これらの混合物などを、別の組成物として供給してもよい。
【0192】
ある実施態様によれば、濃縮組成物のpHは、例えば、約1未満又は約2未満である。ある実施態様によれば、混合物の1%又は1.5%水溶液のpHは、1%溶液の他の成分によって異なるが、約1又は2から約7までの範囲である。ある実施態様によれば、使用組成物のpHは、他の成分によって異なるが、例えば約2から約7である。
【0193】
界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を使用する方法
本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を使用する方法を包含する。通常、これらの方法は、界面活性ペルオキシカルボン酸の抗微生物活性又は漂白活性を使用する。例えば、本発明は、微生物集団を減少させる方法、皮膚上の微生物の集団を減少させる方法、皮膚の疾患を治療する方法、臭いを低下させる方法、又は漂白する方法を含む。これらの方法によれば、安定化された本発明のエステルペルオキシカルボン酸組成物を、対象、表面、水塊若しくはガス塊、又は水流若しくはガス流に接触させることにより、これらの対象、表面、水塊若しくはガス塊、又は水流若しくはガス流などに作用させることができる。この接触させる工程には、組成物を施用する多数の方法のうち、任意の方法が含まれる。例としては、組成物を噴霧する方法、対象を組成物に浸漬する方法、対象を組成物又はこれらの組合せで発泡又はゲル処理する方法等が挙げられる。
【0194】
本発明の組成物は、種々の家庭用途又は工業用途において、例えば、対象若しくは表面上の、或いは、水塊若しくはガス塊又は水流若しくはガス流中の、微生物又はウイルス集団を減少させる目的で使用することができる。本組成物は、台所、浴室、工場、病院、歯医者、及び食品工場等の様々な場所で施用することができ、また、平滑、不規則、又は多孔質の表面形状を有する、種々の硬表面又は柔表面に施用することができる。適切な硬表面としては、例えば建築物表面(例えば、床、壁、窓、流し、テーブル、カウンター、及び看板);食器;硬表面の医療装置又は手術装置や器具;及び硬表面パッケージが挙げられる。かかる硬表面としては、例えばセラミクス、金属、ガラス、木、又は硬プラスチック等、種々の材料からなるものが対象となる。適切な軟表面としては、例えば紙、フィルター媒体、病院及び手術リネン類や衣類、軟表面の医療装置又は手術装置や器具;及び軟表面パッケージングが挙げられる。かかる軟表面としては、例えば、紙、繊維、織布、不織布、軟プラスチック、及びエラストマー等、種々の材料からなるものが対象となる。本発明の組成物はまた、食物や皮膚(例えば手)等の軟表面にも適用することができる。本組成物は、発泡性又は非発泡性の環境除菌剤又は消毒剤として使用することができる。
【0195】
本発明の抗微生物組成物は、除草剤、除菌剤、消毒剤、保存剤、脱臭剤、防腐剤、殺真菌剤、殺胞子剤、殺ウイルス剤、洗剤、漂白剤、硬表面クリーナー、ハンドソープ、手の無水除菌剤、及び、手術前又は手術後スクラブ等の製品に含有させることができる。
【0196】
また、本抗微生物組成物は、哺乳類用皮膚トリートメント等の獣医学用製品への使用や、動物構内、囲い、水飲み場、及び獣医学的処置を行なう場所、例えば検査テーブルや運転室等を除菌又は消毒するための製品への使用も可能である。本組成物は、家畜やヒトの抗微生物性足浴液に使用することもできる。
【0197】
本組成物は、病原性微生物(例えばヒト、動物などの病原体)集団の低減に使用することができる。本組成物は、真菌、カビ、細菌、胞子、及びウイルスを含む病原体、例えば黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、ストレプトコッカス(Streptococci)、レギオネラ(Legionella)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、結核菌、ファージなどに対する活性を示し得る。かかる病原体は、乳腺炎や、他の哺乳類の搾乳疾患、結核など、種々の疾患や障害の原因となる。本発明の組成物は、動物の皮膚や、他の外表面又は粘膜表面上の微生物集団を減少させる。さらに、本組成物は、水、空気、又は表面基質による移送を通じて拡散する病原性微生物を、死滅させることができる。本組成物は、動物の皮膚やその他の外表面又は粘膜表面、水、空気、又は表面に施用するのみでよい。
【0198】
また、本抗微生物組成物は、食物や植物種に対し、その表面の微生物集団を低減するために使用し、食品や植物種を扱う製造又は加工場所に使用し、或いは、かかる場所の加工水を処理するために使用することができる。例えば、本組成物は、食品輸送ライン(例えばベルト噴霧);靴や手の洗浄ディップパン;食品保存施設;防腐用空気循環システム;冷蔵及びクーラー設備;飲料冷却器及び加熱器、湯通し器、まな板、第3流し領域、及び肉冷却器又は煮沸器に使用することができる。本発明の組成物は、例えば人口水路、パイプ輸送路、カッター、スライサー、湯通し器、レトルトシステム、ウォッシャーなどの作物輸送水を処理するのに使用することができる。本発明の組成物を用いて処理可能な食物の具体例としては、卵、肉、種子、葉、果物、及び野菜が挙げられる。植物表面の具体例としては、既採取又は未採取の、葉、根、種子、皮又は殻、茎、幹、塊茎、穀類、果物などがある。また、本組成物は、病原性及び非病原性の両方の微生物の濃度を低減するべく、動物屠体の処理に使用することができる。
【0199】
本組成物は、食品サービス業又は食物加工業界の容器、加工施設又は設備の洗浄又は除菌に有用である。抗微生物組成物は、食品包装の材料や設備、特に低温又は高温無菌包装への使用に有用である。本発明の組成物を使用可能な加工施設の例としては、乳製品工場、連続的発酵システム、食品加工ライン(例えばポンプ処理食品システム及び飲料ラインなど)が挙げられる。食品サービス製品は、本発明の組成物で消毒することができる。また、本組成物は例えば、製品洗浄機、皿洗い機、ビン洗い機、ビン冷却機、加熱器、第3流しウォッシャー、切断面(例えば、水ナイフ、スライサー、カッター及び鋸)、及び卵洗浄機の外部又は内部に使用することができる。処理可能な表面の具体例としては、パッケージング、例えば箱、ビン、フィルム、及び樹脂;皿類、例えばガラス、プレート、調理器具、鍋類;用具洗浄機;露出した食物調製領域表面、例えば流し、カウンター、テーブル、床、及び壁;加工装置、例えばタンク、バット、ライン、ポンプ、及びホース(例えば、ミルク、チーズ、アイスクリーム、及び他の乳製品の加工のための乳製品加工設備);及び輸送用乗り物が挙げられる。容器としては、種々の容量(例えば100mlから2リットル)のガラスビン、PVC又はポリオレフィンフィルムサック、カン、ポリエステル、PEN又はPETボトル、1ガロンミルク容器、ボール紙製のジュース又はミルク容器などが挙げられる。
【0200】
また、本抗微生物組成物は、他の工業設備の外部又は内部、或いは他の工業プロセス流(例えばヒーター、冷却塔、ボイラー、レトルト水、洗浄水、無菌パッケージング洗浄水など)の内部に使用することができる。本組成物は、娯楽施設の水(例えば、プール、温泉、娯楽用水路、及び水スライド、噴水など)の微生物や臭いを処理するために使用することができる。
【0201】
本組成物を含有するフィルターは、空気及び液体中の微生物の集団を減少させることができる。かかるフィルターは、水や空気伝染性の病原体(例えばレギオネラ(Legionella)等)の除去に使用することができる。
【0202】
本組成物は、排水設備や他の表面における、微生物、ミバエ、又は他の昆虫の幼虫の集団を減少させるのに使用することができる。
【0203】
また、食品加工装置を使用溶液に浸漬し、装置を除菌するのに充分な時間浸した後、過剰の溶液を装置から拭き取り、又は排水するという方法で、本組成物を使用することも可能である。さらに、使用溶液を食品加工表面に噴霧又は塗布し、表面を除菌するのに充分な時間、表面を湿らせた後、過剰の溶液を拭き取り、鉛直排水し、又は真空除去するという方法で、本組成物を使用することも可能である。
【0204】
また、本発明の組成物は、硬表面、例えば、設置型装置、台所用品、皿、医療設備又は器具、及び他の硬表面を除菌するための方法に使用してもよい。また、本組成物は、汚染された衣類又は布を除菌するのに使用してもよい。上述の汚染された表面や物品のうち任意のものに対して、使用溶液を約4℃〜60℃の範囲内の使用温度で、表面又は品物を除菌、消毒、又は滅菌するのに有効な時間接触させる。例えば、濃縮組成物を洗濯機の洗浄水に注入し、汚染された布を除菌するのに充分な時間、布と接触させればよい。その後、布をリンス又は遠心分離することにより、過剰の溶液を除去することができる。
【0205】
本抗微生物組成物を微生物に対して、或いは汚染された表面や洗浄対象の表面に対して施用するには、種々の方法を使用することができる。これらの方法は、対象、表面、水塊若しくはガス塊、又は水流若しくはガス流に本発明の組成物を接触させることにより、対象、表面、水塊若しくはガス塊、又は水流若しくはガス流などに作用させることができる。接触させる方法としては、組成物を施用するための無数の方法のうち、任意の方法が挙げられる。例えば、組成物を噴霧する方法、組成物中に対象を浸漬させる方法、組成物を用いて対象を発泡又はゲル処理する方法、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0206】
本発明の組成物の濃縮物又は使用組成物を対象に施用し、又は対象に接触させるには、抗微生物組成物又はクリニーング組成物を対象に施用するための任意の公知の方法又は装置を用いることができる。例えば、組成物又は組成物から作製した使用溶液を、対象に塗布し、噴霧し、発泡させ、及び/又は浸漬することができる。組成物を表面上に噴霧、発泡、又は塗布してもよく、組成物を表面上に流通させてもよく、表面を組成物中に浸漬させてもよい。接触は手作業で行なってもよく、機械を用いて行なってもよい。食品加工表面、食品、食品加工水、又は輸送水などは、本発明の液体、ゲル、エアゾル、ガス、蝋、固体、若しくは粉末化安定化組成物で、又はこれらの組成物を含有する溶液で処理することができる。
【0207】
定置洗浄
本発明の抗微生物組成物を適用可能な他の硬表面の洗浄用途としては、定置洗浄システム(Clean-in-place systems:CIP)、分解洗浄システム(Clean-out-of-place systems:COP)、洗浄汚染除去機、滅菌機、繊維洗浄機、限外濾過及びナノ濾過システム、及び室内空気フィルターが挙げられる。COPシステムとしては、洗浄タンク、浸漬容器、モップバケツ、保持タンク、スクラブシンク、乗り物部品洗浄機、不連続バッチ洗浄機及びシステムなどの、即時アクセス可能なシステムも含まれる。
【0208】
一般に、定置洗浄システムや他の表面の実際の洗浄(すなわち、好ましくない廃物の除去)は、別の物質(例えばお湯とともに導入される調製洗浄剤等)を用いて行なわれる。この洗浄工程の後、本組成物を非加熱の周囲温度の水中、使用溶液の濃度の水溶液として系内に施用又は導入する。一般的に、CIPに対しては、流速を約40〜約600リットル/分のオーダーとし、温度を周囲温度から約70℃の範囲とし、接触時間を少なくとも約10秒、例えば約30秒から約120秒の範囲とする。本組成物は低温(例えば40°F/4℃)水中に保持してもよく、高温(例えば140°F/60℃)水中に保持してもよい。本組成物の使用水溶液は、通常は加熱不要であるが、条件によっては抗微生物活性をさらに増強するために、加熱することが望ましい場合もある。これらの物質は、考え得るいかなる温度でも有効である。
【0209】
実質的に固定の定置処理設備を除菌する方法は、以下の工程を含んでなる。本発明の使用溶液を、約4℃から60℃の範囲の温度でプロセス設備に導入する。使用溶液の導入後、処理設備を除菌する(即ち、好ましくない微生物を死滅させる)のに充分な時間、溶液を容器内に維持するか、又はシステム中を循環させる。本組成物により表面が除菌された後、使用溶液を排水する。除菌工程の完了後に適宜、他の物質(例えば飲料水)を用いて系をリンスしてもよい。本組成物を処理設備内に循環させる時間は、例えば10分以内とすればよい。
【0210】
本方法は、本組成物を空気送達により定置洗浄表面又は他の表面(例えばパイプ内及びタンク内)に送達する工程を含んでいてもよい。この空気送達の方法によれば、必要な溶液の量を削減することができる。
【0211】
界面活性ペルオキシカルボン酸組成物の食品への接触
本方法及びシステムによれば、食品を界面活性ペルオキシカルボン酸組成物に、このような組成物を施用するのに適した方法又は装置を使用して接触させる。例えば、本発明の方法及びシステムによれば、食品に組成物を噴霧し、食品を組成物中に浸漬させ、組成物を用いて発泡又はゲル処理を行なう等の手法により、食品を組成物に接触させることができる。噴霧、泡、ゲル、又は浸漬を用いた接触は、抗微生物剤を食物に施用するための当業者に公知の種々の方法で行なうことができる。食物への接触は、食品が存在するあらゆる場所(例えば、屋外、加工場所又は工場、車両、倉庫、店、レストラン、又は家庭)に行なうことができる。これらと同様の方法を応用して、本発明の安定化組成物を他の対象に施用することもできる。
【0212】
本方法によって抗微生物作用を得るためには、組成物と食品とをある最低限の時間接触させる必要がある。この接触時間は、使用組成物の濃度、使用組成物の施用方法、使用組成物の温度、食品上の汚染物の量、食品上の微生物の数、抗微生物剤の種類などにより様々である。露出時間は例えば、少なくとも約5から約15秒間とすればよい。
【0213】
ある実施態様によれば、食品を洗浄する方法に、組成物を含む圧力噴霧を使用する。食品への噴霧溶液の施用中に、機械的作用(例えば、攪拌、摩擦、ブラシがけなど)により食品の表面を移動させてもよい。攪拌は、食品の物理的に擦ることにより、加圧噴霧溶液の作用により、超音波処理により、又は他の方法により行なうことができる。攪拌によって、噴霧溶液が微生物を死滅させる効力が向上するが、これはおそらく、微生物を含有する割れ目や微小コロニーの溶液への暴露が促進されるためであろう。効力を上昇させるために、施用前の噴霧溶液を約15〜20℃、例えば約20〜60℃の温度に加熱してもよい。噴霧安定化組成物を、微生物集団を適切に低減するのに充分な時間、食品上に放置した後、食品からリンスし、排水し、又は蒸散させればよい。
【0214】
噴霧により物質を施用する方法としては、噴霧管を用いて手作業で施用する方法や、食品が生産ラインを通過する際に、確実に完全接触させるための複数の噴霧ヘッド、又は他の噴霧装置を用いて自動噴霧する方法が挙げられる。自動噴霧による施用の一例として、噴霧ブースの使用が挙げられる。噴霧ブースは、噴霧組成物をブース内に実質的に限定する。生産ラインによって食品を入口から噴霧ブース内に進入させ、ブース内でその全外表面に対して噴霧を行なう。ブース内で食品を物質で完全に被覆し、食品からこれを排液した後、ブースから食品を排出する。噴霧ブースに噴出流を設け、安定化された本発明の組成物を施用してもよい。これらの噴出流が食品表面に到達する際の処理温度を65℃未満、例えば60℃未満に保つために、冷却水と組み合わせて使用してもよい。噴霧温度によって食品が大幅に変性してしまう(調理されてしまう)のを防止するために、食品への噴霧温度は重要である。噴霧パターンとしては、有用な噴霧パターンを、実質的に任意に選択することができる。
【0215】
液体安定化組成物への食品の浸漬は、当業者に公知の種々の方法のうち、任意の方法を用いて行なうことができる。例えば、安定化組成物を含有するタンク又は浴槽中に、食品を導入すればよい。あるいは、安定化組成物の水路内を通じて食品を輸送し、又はこの水路内で食品を加工してもよい。洗浄溶液を攪拌して溶液の効力を向上させ、食品に付着している微生物の溶液による低減速度を上昇させることができる。攪拌は従来法で行なうことができる。例えば、超音波、溶液中に空気をバブリングさせる通気、機械的方法、例えばストレイナー、パドル、ブラシ、ポンプ駆動液体ジェット、又はこれらの方法の組合せが挙げられる。溶液が微生物を死滅させる効力を向上させるべく、洗浄溶液を加熱してもよい。所望の抗微生物作用を得るために必要な時間、食品を浸漬させた後、食品を浴槽又は水路から排出した上で、安定化組成物を食品からリンスし、排水し、又は蒸散させればよい。
【0216】
本発明の別の実施態様によれば、食品を泡状の組成物で処理してもよい。泡の調製は、使用時に発泡性界面活性剤と洗浄溶液とを混合することにより行なうことができる。発泡性界面活性剤は、非イオン性でも、陰イオン性でも、陽イオン性でもよい。有用な界面活性剤の例としては、特に限定されないが、アルコールエトキシレート、アルコールエトキシレートカルボキシレート、アミンオキシド、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、スルホネート、4級アンモニウム化合物、アルキルサルコシン、ベタイン、及びアルキルアミドが挙げられる。発泡性界面活性剤は通常、使用時に洗浄溶液と混合される。発泡剤の使用溶液濃度は、約50ppmから約2.0重量%である。使用時には、圧縮空気を混合物に注入し、続いてこれを泡供給装置(例えばタンク発泡器)又は吸引壁設置発泡器により食品表面に施用すればよい。
【0217】
本発明の別の実施態様によれば、食品を粘稠又はゲル状の組成物で処理してもよい。粘稠又はゲル状の洗浄溶液は、食品表面への接触時間が長くなるため、抗微生物性効力が向上する。また、粘稠又はゲル状の溶液は、垂直な表面にも接着可能である。組成物又は洗浄溶液の増粘又はゲル化は、既存の手法、例えばキサンタンガム、ポリマー増粘剤、セルロース増粘剤などを使用して行なうことができる。また、ロッドミセル生成システム(例えばアミンオキシド及び陰イオン性対イオン)を使用することもできる。増粘剤又はゲル形成剤は、濃縮製品に使用してもよく、使用時に洗浄溶液と混合して使用してもよい。増粘剤又はゲル剤の一般的な使用濃度は、約100ppmから約10重量%の範囲である。
【0218】
飲料、食物、及び薬剤加工のための方法
本界面活性ペルオキシカルボン酸抗微生物組成物は、飲料、食物、及び薬剤(果物ジュース、乳製品、麦芽飲料、大豆ベースの製品、ヨーグルト、離乳食、びん詰水製品、お茶、せき止め薬、薬剤、及びシフトドリンクを含む)の製造に使用することができる。本物質を使用して、かかる飲料の製造に用いられるビン、ポンプ、リネン、タンク、及び混合装置を除菌し、消毒し、殺胞子剤作用に付し、又は滅菌することができる。さらに、本界面活性ペルオキシカルボン酸抗微生物組成物は、無菌低温充填操作に使用することもできる。この場合、食物、飲料、又は薬剤容器の内部を除菌又は滅菌した後、充填を行なう。かかる操作において、容器と除菌性界面活性ペルオキシカルボン酸組成物との接触は、通常は噴霧、浸漬、又は充填装置を使用して、容器内の微生物集団を減少させるのに充分な時間、容器の内部に界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を充分接触させて行なえばよい。続いて、使用した分量の除菌剤又は滅菌剤を容器から排出する。排出後、容器を飲料水又は滅菌水でリンスし、再度排出する。リンス後、容器に飲料、食物、又は薬剤を充填すればよい。その後、容器を密封、閉栓、又は密閉してから、包装して最終販売用に出荷すればよい。さらに微生物を死滅させるべく、密封された容器をオートクレーブ又はレトルト処理してもよい。
【0219】
食物、飲料、又は薬剤製造において、ケダマカビ属(Chaetomium)又はアルスリニウム(Arthrinium)属の真菌微生物、及びバチルス(Bacillus)属の胞子又は細菌は、ビン詰め工程、特に低温無菌ビン詰め工程において大きな問題となる。本発明の界面活性ペルオキシカルボン酸除菌剤材料を用いれば、低温無菌ビン詰め法を用いた飲料又は食物又は薬剤ビン詰めラインにおける、ケダマカビ属(Chaetomium)又はアルスリニウム(Arthrinium)属又はバチルス(Bacillus)属の微生物の数を抑制し、又は大幅に低減する(5log10超の低減)ことができる。
【0220】
かかる技術の下で低温無菌充填法を用い、金属、アルミニウム、又はスティール缶を充填してもよく、ガラスビン又は容器を充填してもよく、プラスチック(PET又はPBT又はPEN)ビンなどを充填してもよい。かかるプロセスにおいて、本発明の界面活性ペルオキシカルボン酸物質は、炭酸(又は非炭酸)飲料の充填前に、飲料容器内部の除菌に使用することができる。本出願における典型的な炭酸飲料としては、コーラ飲料、果物飲料、ジンジャーエール飲料、ルートビール飲料、炭酸化されていなくてもよい氷冷茶飲料、及び、ソフトドリンクとして扱われる他の一般的な飲料が挙げられる。本発明の界面活性ペルオキシカルボン酸物質は、ソフトドリンク物質の製造及び保存に用いられるタンク、ライン、ポンプ、及び他の設備の除菌に使用してもよく、また、飲料のビン詰め又は容器に使用することもできる。ある実施態様によれば、本界面活性ペルオキシカルボン酸物質除菌物質は、製造設備や飲料容器の表面に存在し得る細菌及び真菌微生物の両方を死滅させるのに有用である。
【0221】
本発明は、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物が、少なくとも約150百万分率(ppm)の濃度レベル(例えば界面活性ペルオキシカルボン酸組成物約1000ppm)で、微生物を有効に死滅させる(例えば、30秒間で>1log10又は最大5log10の減少)ことができるという驚くべき発見に基づく。ある実施態様によれば、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物は、水を除いた量として、約0.001〜約1重量%、例えば約0.01〜約0.15重量%、又は約0.05〜約0.1重量%の濃度で存在していればよい。
【0222】
図1は、低温無菌操作を含んでなる、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を用いたビン噴霧/ビン詰め操作の実施態様を示す略図である。図1に示す工場100は、除菌管理のために界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を飲料ビンに接触させることが可能となっている。図1において、ビン110は除菌トンネル102内を通過する。その後、除菌されたビン110aはリンストンネル103内を通過し、除菌及びリンス済みのビン110bとして出てくる。
【0223】
本プロセスにおいて、バルクの界面活性ペルオキシカルボン酸組成物が、保持タンク101に加えられる。通常、この物質はタンク101内で、約22℃の温度に維持される。界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を有効な使用濃度とするべく、補給水105がタンク101内の濃縮界面活性ペルオキシカルボン酸組成物と一緒にされる。界面活性ペルオキシカルボン酸組成物の使用組成物を約45〜50℃の温度にすべく、ヒーター108内に通過させてもよい。加熱された界面活性ペルオキシカルボン酸の使用組成物を、滅菌トンネル102内で、ビン110の内表面及び外表面全体に噴霧すればよい。界面活性ペルオキシカルボン酸組成物をビン110と確実に接触させるのは、微生物集団を除菌レベルまで低下させる上で有効である。
【0224】
界面活性ペルオキシカルボン酸の使用組成物と接触させ、ビンから過剰の組成物を除去した後、除菌されたビン110は新鮮水リンストンネル103に移送される。新鮮水108は新鮮水補給部から噴霧リンストンネル103に供給される。過剰の噴霧液はリンストンネル103からドレイン106に排水される。トンネル103内で、除菌されたビン110aを新鮮水で完全にリンスすることができる。ビン110aから界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を完全に除去することは、飲料製品を高品質に維持するために重要である。リンス及び除菌済みのビン110bは、続いてリンストンネルから排出される。
【0225】
デイタンク101、滅菌トンネル102、及びリンストンネル103に、湿式スクラバー又はベント111a、111b、又は111cを通孔し、系内成分由来の蒸気や煙霧を除去するようにしてもよい。噴霧後にビン110aから排出された除菌材料は、噴霧トンネル102の底に蓄積された後、リサイクルライン及びヒーター107を介してデイタンク101にリサイクルされる。
【0226】
デイタンクは、界面活性ペルオキシカルボン酸の使用組成物(ペルオキシカルボン酸組成物の含有量は約0.001〜約1重量%、例えば約0.01〜約0.15重量%、又は約0.05〜約0.1重量%とすることができる)を希釈、保存、及び供給するのに使用される。稼動下の処理装置は何れも湿式スクラバーに通孔し、煙霧が処理装置から大気中に入るのを防止することが望ましい。容器から界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を排除することで、キャリーオーバーによる製品の損失を最小にすることができる。ビンと界面活性ペルオキシカルボン酸抗微生物組成物との接触は、典型的には0℃より高い温度、典型的には25℃より高く、最も典型的には約40℃より高い温度で行なわれる。しばしば約40℃〜90℃の温度が使用される。約150ppm〜約1000ppmの界面活性ペルオキシカルボン酸組成物で飲料容器を除菌又は滅菌するには、40℃〜60℃で少なくとも5秒間、さらに好ましくは10秒間の接触時間が必要である。
【0227】
除菌又は滅菌条件は、処理温度、時間、汚染物質の負荷、水質等によって大きく異なる。ある実施態様によれば、除菌装置、デイタンク、除菌トンネル、及びリンストンネルは、ポリオレフィン構造プラスチック、不動態化ステンレス鋼、又は他の非腐食性製造材料から製造される。
【0228】
16オンスのポリエチレンテレフタレート(PETビン)、又は他のポリマー性飲料容器の低温無菌充填において、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を用いたプロセスが採用されている。界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を、約0.1〜約10重量%の使用濃度に希釈し、約25℃〜約70℃、好ましくは約40℃〜約60℃の有効な高温で維持される。ビンに材料を噴霧又は浸漬させ、少なくとも5秒間、例えば10秒間、ビンと除菌材料とを確実に接触させる。浸漬の完了後、少なくとも2秒間かけて、ビンから全ての内容物を排出した後、任意により、38℃(100°F)の約200mlの無菌水を用いて、5秒間水洗いする。任意により洗浄水を充填した場合は、ビンから滅菌水を少なくとも2秒間かけて排出し、直ちに液体飲料を充填する。リンスの完了後、ビンに残存するリンス用水は、通常10ml未満、好ましくは3ml未満である。
【実施例】
【0229】
本発明の理解をより深めるべく、以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は本発明の具体的な態様を例示することを意図するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0230】
実施例1−界面活性ペルオキシカルボン酸を含む組成物
界面活性ペルオキシカルボン酸を含む本組成物の具体例を表1に示す。
【0231】
【表3】

【0232】
【表4】

【0233】
本発明の組成物に配合されるカルボン酸界面活性剤としては、オクチルイミノジプロピオン酸(例えば、商品名Mackam ODP(50%活性)として販売されている製品)、アミンプロピオン酸(例えば、商品名Mirataine JCHA(42%活性)で販売されている製品)、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム(例えば、商品名Makanate EL(39%活性)で販売されている製品)、及び、線状アルコールエトキシカルボン酸(例えば、商品名Neodox 23-4として販売されている製品)が挙げられる。
【0234】
実施例2−界面活性ペルオキシカルボン酸を含む本組成物の抗微生物作用
本発明の組成物が、グラム陰性菌、グラム陽性細菌、真菌、胞子、ウイルス、及びマイコバクテリア(mycobacteria)等の微生物に対して、有効な抗微生物活性を有することを、評価により立証した。
【0235】
材料と方法
抗微生物活性は2つの充分確立された方法により測定した。第1の方法は、Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants, Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, paragraph 960.09 and applicable sections, 15th eddition, 1990 (EPA Guideline 91-2) に記載されている方法である。第2の方法は、A.O.A.C. Use Dilution Methods, Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, paragraph 955.14 and applicable sections, 15th eddition, 1990 (EPA Guideline 91-2) に記載されている方法である。簡単に説明すると、本組成物の抗微生物活性を決定するべく、標的微生物を含有する1mlのアリコートに、99mlの所望の濃度の試験物質を、所望の温度で暴露した。所定の接触時間後、微生物を含有する1mlの試験溶液を中和し、生存数を計数した。
【0236】
結果
表2及び3に示したデータは、本界面活性ペルオキシカルボン酸組成物が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や大腸菌(E. coli)のような微生物集団を、わずか30〜60秒間で、且つ12〜150ppmという低濃度で、有効に低減させることを示している。
【0237】
【表5】

【0238】
【表6】

【0239】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、「1つの」("a", "an")及び「その」("the")という単数形は、別途明示する場合を除き、複数形も含むことに注意されたい。例えば、「1つの化合物」("a compound")という記載には、2つ以上の化合物の混合物も含まれる。また、「又は」("or")は、別途明示する場合を除き、通常は「及び/又は」("and/or")を含む意味で使用されることにも注意されたい。
【0240】
本明細書に記載の刊行物及び特許出願は何れも、本発明が属する分野の技術水準を示すものである。
【0241】
本発明について、様々な態様及び手法の具体例及び好適例を用いて説明したが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない限りにおいて、様々な変更や修正を加えることが可能であると解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】図1は、炭酸飲料又は非炭酸飲料の製造及びビン詰めが可能な、低温無菌充填工場を含む飲料工場の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効な抗微生物量の界面活性ペルオキシカルボン酸と、
約0.0005〜約40重量%のカルボン酸界面活性剤とを含んでなる、組成物。
【請求項2】
約0.0005〜約15重量%の界面活性ペルオキシカルボン酸と、
約0.0005〜約25重量%のカルボン酸界面活性剤とを含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約0.0005〜約50重量%の酸化剤をさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
約0.001〜約80重量%の酸味剤をさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
約0.00002〜約10重量%の安定剤をさらに含んでなる請求項1記載の組成物。
【請求項6】
約5〜約99.9999重量%の担体をさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、陰イオン性界面活性ペルオキシカルボン酸、両性界面活性ペルオキシカルボン酸、双性イオン性界面活性ペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、アルコールエトキシペルオキシカルボン酸を含んでなる、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、線状アルコールエトキシペルオキシカルボン酸を含んでなる、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、スルホペルオキシコハク酸を含んでなる、請求項7記載の組成物。
【請求項11】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、ラウレススルホペルオキシコハク酸を含んでなる、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、アルキルアミンペルオキシカルボン酸を含んでなる、請求項7記載の組成物。
【請求項13】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、アルキルイミノジプロピオネートペルオキシカルボン酸を含んでなる、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
界面活性ペルオキシカルボン酸が、線状アルコールエトキシペルオキシカルボン酸、ラウレススルホペルオキシコハク酸、アルキルイミノジプロピオネートペルオキシカルボン酸、又はこれらの混合物を含んでなる、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
カルボン酸界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、又はこれらの混合物を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
カルボン酸界面活性剤が、アルコールエトキシカルボン酸を含んでなる、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
カルボン酸界面活性剤が、線状アルコールエトキシカルボン酸を含んでなる、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
カルボン酸界面活性剤が、スルホコハク酸を含んでなる、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
カルボン酸界面活性剤が、ラウレススルホコハク酸を含んでなる、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
カルボン酸界面活性剤が、アルキルアミンカルボン酸を含んでなる、請求項15記載の組成物。
【請求項21】
カルボン酸界面活性剤が、アルキルイミノプロピオン酸を含んでなる、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
カルボン酸界面活性剤が、線状アルコールエトキシカルボン酸、ラウレススルホコハク酸、アルキルイミノジプロピオン酸、又はこれらの混合物を含んでなる、請求項15記載の組成物。
【請求項23】
対象に界面活性ペルオキシカルボン酸組成物を接触させて、対象上の微生物の集団を減少させる方法であって、
該組成物が、
有効な抗微生物量の界面活性ペルオキシカルボン酸と、
約0.0005〜約40重量%のカルボン酸界面活性剤とを含んでなる、方法。
【請求項24】
カルボン酸界面活性剤と担体とを含んでなる第1組成物と、
酸化剤を含んでなる第2組成物と、
第1及び第2の組成物を組み合わせるための指令書とを含んでなる製品であって、
第1及び第2の組成物を組み合わせることにより、界面活性ペルオキシカルボン酸組成物が提供され、
界面活性ペルオキシカルボン酸組成物が、
有効な抗微生物量の界面活性ペルオキシカルボン酸と、
約0.0005〜約40重量%のカルボン酸界面活性剤とを含んでなる、製品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−500415(P2009−500415A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520321(P2008−520321)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025880
【国際公開番号】WO2007/008478
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】