説明

界面活性剤、ポリマー、マイクロカプセル及びマイクロカプセルの製造方法

【課題】マイクロカプセルを効率よく生産可能とすることができる界面活性剤、及びこの界面活性剤が結合されたポリマー、及びこの界面活性剤を用いて生成したマイクロカプセル、及びこのマイクロカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤とする。マイクロカプセルは、この界面活性剤と、油性であるモノマーと、水とを混合して乳化させることにより油中水滴が生成された乳濁液で、モノマーを重合させて生成する。また、モノマーに代えて、片末端に前記界面活性剤が結合されたポリマーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤、及びこの界面活性剤が結合されたポリマー、及び前記界面活性剤を用いて生成したマイクロカプセル、及びこのマイクロカプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロカプセルは、感圧複写紙をはじめとして、医薬、農薬、香料、液晶、接着剤、インク等数多くの用途に用いられており、その製法としては、界面重合法、イン・サイチュ(in situ)法、コアセルベーション法、相分離法などが提案されている。
【0003】
これらの中でも、in situ法は、マイクロカプセルの粒径やマイクロカプセルの壁の厚さを制御しやすく、しかも、マイクロカプセルの形成反応を容易に生じさせることができるため、研究開発が盛んに行われており、各種の材料を用いたマイクロカプセルの製造方法が提案されている。
【0004】
特に、このin situ法では、分散媒中または分散質中に溶解させたモノマーを重合させることによりマイクロカプセルの壁を形成しているが、モノマーが分散媒または分散質、もしくは分散媒と分散質の両方に均一に分布するために、マイクロカプセルの壁が形成されている界面においてモノマーの濃度が低くなりやすく、マイクロカプセルを効率よく生成できなくなるおそれがあった。
【0005】
そこで、モノマーには、アクリロニトリルなどのように油溶性溶媒と水溶性溶媒のいずれにも相分離する非相溶性モノマーと、(メタ)アクリル酸などのように水溶性溶媒と相分離していない水溶性モノマーとを用いてマイクロカプセルを製造することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−266433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非相溶性モノマーと水溶性モノマーを用いた場合でも、非相溶性モノマーを重合させて形成したマイクロカプセルの周囲では、水溶性モノマーを重合させながらマイクロカプセルの壁の厚さを調整することとなり、非相溶性モノマーの重合が生じている間は比較的効率よく重合が生じるが、その後、水溶性モノマーの重合が開始されると、水溶性モノマーの濃度が低くなることは従来のままであるために、生産性の低下を完全に解消できているわけではなかった。
【0008】
また、in situ法以外の既知のマイクロカプセルの製造方法でも、芯となる液滴の安定化のために多種類の試薬を用いたり、モノマーの重合反応の反応性を向上させるために繊細な工程管理を必要としたりするために、生産性を向上させることが困難であった。
【0009】
本発明者は、このような現状に鑑み、マイクロカプセルを効率よく生産可能とすべく研究開発を行う中で、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の界面活性剤では、一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有することとした。さらに、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基に重合開始基を結合させたことにも特徴を有するものである。
【0011】
また、本発明のポリマーでは、一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤が片末端に結合されたポリマーとするものである。
【0012】
また、本発明のマイクロカプセルでは、油性であるモノマーと、水と、界面活性剤とを混合して乳化させることにより油中水滴が生成された乳濁液で、モノマーを重合させて生成したマイクロカプセルであって、界面活性剤は、一方の片末端に親水基を有するとともにアルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤として、球面状にモノマーを重合させているものである。
【0013】
また、本発明のマイクロカプセルでは、前記モノマーに代えて、片末端に前記界面活性剤が結合されたポリマーを用いているものである。
【0014】
また、本発明のマイクロカプセルの製造方法では、油性であるモノマーと、水と、界面活性剤とを混合して乳化させることにより油中水滴を含有する乳濁液を生成する乳化工程と、乳濁液においてモノマーを重合させる重合工程とを有するマイクロカプセルの製造方法であって、界面活性剤を、一方の片末端に親水基を有するとともにアルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤としているものである。
【0015】
さらに、本発明のマイクロカプセルの製造方法では、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)乳濁液中の界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度以下としていること。
(2)重合工程では、乳濁液を125℃以上に加温してモノマーを重合させる一方で、125℃より低い温度として重合を停止させていること。
(3)乳濁液には所定の油溶性薬剤を溶解させていること。
【0016】
また、本発明のマイクロカプセルの製造方法では、前記モノマーに代えて、片末端に前記界面活性剤が結合されたポリマーを用いるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤を用いることにより、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基によって促進されるラジカル重合反応により、モノマーの濃度の影響を大きく受けることなく重合反応を生じさせることができる。したがって、マイクロカプセルの製造効率を向上させることができる。
【0018】
しかも、マイクロカプセルは、一種類のモノマーから生成できるので単層状態とすることができ、簡潔な構造のマイクロカプセルを提供できるだけでなく、使用する試薬の品種を少なくすることができ、工程管理が容易となることによっても生産性を向上させやすくすることができる。
【0019】
あるいは、モノマーではなくポリマーを重合させてマイクロカプセルを生成した場合には、ポリマーの特性に応じた特性を有するマイクロカプセルを生成することができ、高機能なマイクロカプセルを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に基づいて生成されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真である。
【図2】図1に示したマイクロカプセルの断面の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2に基づいて生成されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、下記の一般式(1)に示すように、一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端にTEMPO誘導体と呼ばれている2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤を用いるものである。
【化1】

【0022】
ここで、親水基としてスルホン酸基を用いているが、スルホン酸基に限定するものではなく、親水基であれば何でもよい。以下において、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基をTEMPO誘導体と呼ぶ。
【0023】
この界面活性剤では、ニトロキシド基を含むTEMPO誘導体がラジカルを安定的にキャッピングすることができるので、制御ラジカル重合を実現することができ、モノマーの濃度の影響を大きく受けることなく重合反応を生じさせることができる。
【0024】
マイクロカプセルを生成する場合には、上記一般式(1)の界面活性剤を用いて油性であるモノマーと水とを乳化させることにより油中水滴を含有する乳濁液を生成し、モノマーを重合させてマイクロカプセルとしている。
【0025】
このように上記一般式(1)の界面活性剤を用いて油中水滴を生成し、この油中水滴を含有する乳濁液において水滴を芯として水滴の周囲にモノマーを重合させてマイクロカプセルを生成することにより、マイクロカプセルの内部がモノマーで充填されることがなく、中空状のマイクロカプセルを確実に形成できる。
【0026】
なお、モノマーの代わりに適宜のポリマーを用いてもよく、特に、ポリマーは、適宜のモノマーと上記一般式(1)の界面活性剤とを混合した混合溶液から生成して、片末端に上記一般式(1)の界面活性剤が結合されたポリマーとしてもよい。
【0027】
ここで、モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体などを用いることができ、少なくとも1種の芳香族ビニル単量体を用いてポリマーを形成してよい。
【0028】
あるいは、芳香族ビニル単量体を主成分とし、芳香族ビニル単量体と共重合しうる(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、及びジビニルベンゼンからなる群から選ばれた少なくとも1種をコモノマーとして、ポリマーを形成してよい。なお、コモノマーは、共重合体中の共重合しうるコモノマー成分単位として0〜50wt%程度であることが望ましい。
【0029】
また、ポリマーは、分子量分布Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が、1.00〜2.00程度であることが望ましい。
【0030】
モノマーを重合させる開始剤は、乳濁液に添加してもよいが、下記の一般式(2)に示すように、界面活性剤のTEMPO誘導体に重合開始基としてアルコキシアミンを結合させてもよい。
【化2】

【0031】
このように界面活性剤のTEMPO誘導体に重合開始基を結合しておくことにより、油中水滴を含有する乳濁液の調整を容易としやすく、しかも制御ラジカル重合をより効果的に生じさせて、効率よくマイクロカプセルを生成できる。
【0032】
以下において、具体的な実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0033】
(1)界面活性剤の合成
1−1)界面活性TEMPO誘導体の合成
まず、スターラーチップを入れた50mlナス型フラスコに、4-アミノ-TEMPO[H2NC9H18NO]と、ブロモカルボキシル酸[Bromocarboxylic acid]と、N,N'-ジシクロヘキシカルカルボジイミド[C6H11NCNC6H11,DCC]と、4-ジメチルアミノピリジン[(CH3)2NC5H4N,DMAP]と、クロロホルム[CHCl3]をそれぞれ秤量した後、窒素置換を行って、室温下で18時間、700rpmで反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、減圧濃縮した。
【0034】
減圧濃縮で得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、1Nの塩酸[HCl]と、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と、飽和塩化ナトリウム水溶液[brine]で2回ずつ洗浄した後、酢酸エチル相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾別し、濾液を減圧濃縮した。
【0035】
減圧濃縮で得られた粗生成物をシリカゲル上に吸着させ、カラムクロマトグラフィで精製して、下記の一般式(3)に示すBr-TEMPOを得た。なお、カラムクロマトグラフィにおける展開溶媒は、ヘキサン/酢酸エチル、5〜0.5/1、vol./vol.とした。
【化3】

【0036】
次いで、スターラーチップを入れた50mlナス型フラスコに、Br-TEMPOと、エタノールを秤量した後、さらに超純水に溶かした硫酸ナトリウム(無水)[Na2SO3]を加え、窒素置換を行って、環流下300rpmで20時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、減圧濃縮した。
【0037】
減圧濃縮で得られた残渣をシリカゲル上に吸着させ、カラムクロマトグラフィで精製して、上記の一般式(1)に示すNaSO3-TEMPOからなる界面活性TEMPO誘導体を得た。なお、カラムクロマトグラフィにおける展開溶媒は、クロロホルム/アセトニトリル、5〜1/1、vol./vol.とした。
【0038】
1−2)アルコキシアミン(重合開始基)の合成
スターラーチップを入れた50mlナス型フラスコに、NaSO3-TEMPOと、アゾビスイソブチロニトリル[C8H12N4,AIBN]と、エタノールを秤量した後、窒素置換を行って、環流下300rpmで6時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、減圧濃縮した。
【0039】
減圧濃縮で得られた残渣をシリカゲル上に吸着させ、カラムクロマトグラフィで精製して、上記の一般式(2)に示すNaSO3-TEMPO-IBNを得た。なお、カラムクロマトグラフィにおける展開溶媒は、クロロホルム/アセトニトリル、5〜1/1、vol./vol.とした。
【0040】
上述した方法によって、一般式(2)で表される界面活性剤が合成でき、特に、n=15の場合には、アルコキシアミンの合成前の臨界ミセル濃度(CMC)が0.024wt%であって、CMCが0.19wt%であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)よりも高い界面活性を有することが確認された。なお、界面活性の評価は、ペンダントドロップ(Pendant Drop)法で行った。なお、n=10の場合のCMCは0.92wt%であり、n=5の場合には計測できなかった。n=15の場合で、アルコキシアミンの合成後ではCMCは0.022wt%であって、アルコキシアミンが合成された界面活性剤を、以下において「15-SO3-TEMPO-IBN」と称することとする。
【0041】
(2)マイクロカプセルの生成
2−1)乳化工程
8gの水と、1.6mgの15-SO3-TEMPO-IBNと、150mgのスチレンと、7.5mgのヘキサデカンとを混合し、ホモジナイザーで10,000rpm、90秒の攪拌処理を行い、油中水滴を含有する乳濁液を生成した。ヘキサデカンはオストワルドライプニング現象を防止するための安定剤である。
【0042】
本実施形態では、モノマーとしてスチレンを用いているが、メタクリル酸やジビニルベンゼンなどを用いてもよく、適宜のモノマーを用いてよい。
【0043】
水とスチレンの配合比率は、水中油滴を安定的に生成可能な比率であればいくらでもよく、少なくとも水がスチレンよりも多くなっていればよい。
【0044】
15-SO3-TEMPO-IBNは、CMC以下としており、本実施形態では、0.020wt%としている。
【0045】
乳濁液の生成のためにホモジナイザーを用いたが、均質な乳濁液の生成ができるのであれば、マイクロリアクターなどの適宜の攪拌手段を用いてもよい。
【0046】
2−2)重合工程
乳化工程で生成された乳濁液を耐圧反応器内に収容し、耐圧反応器内を0.4MPaの窒素雰囲気とし、さらに乳濁液を125℃以上に加熱して乳濁液中のスチレンを重合させた。反応時間は24時間とした。本実施形態では、窒素雰囲気としているが、不活性ガス雰囲気であればよい。
【0047】
24時間後、乳濁液を氷浴で125℃以下に急速冷却して重合反応を停止させた。なお、乳濁液を125℃以下に冷却できれば氷浴を用いる必要はなく、適宜の方法で冷却してよい。
【0048】
乳濁液に対してエタノール洗浄を行い、遠心分離処理を行ってマイクロカプセルを回収した。図1は、回収されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真であり、図2は、そのうちの1つのマイクロカプセルの断面の電子顕微鏡写真である。生成されたマイクロカプセルは、ナノスケールからマイクロスケールの粒径であって、図2に示すように中空状となっていた。生成されたマイクロカプセルを構成する高分子の分子量は1,000〜10万程度であった。
【0049】
マイクロカプセルの大きさは、界面活性剤の濃度を調整したり、ホモジナイザーの出力を調整したりすることにより調整できる。なお、マイクロカプセルの壁の厚さは、重合時間を長くしても大きな変化はなく、約100nm程度であった。
【0050】
このように、乳化工程と重合工程の2ステップでマイクロカプセルを生成でき、マイクロカプセルの製造効率を向上させることができる。
【0051】
特に、マイクロカプセルは、一種類のモノマーから生成できるので単層状態とすることができ、簡潔な構造のマイクロカプセルを提供できるだけでなく、使用する試薬の品種を少なくすることができ、工程管理が容易となることによっても生産性を向上させやすくすることができる。
【0052】
なお、必要に応じて複数種類のモノマーを混合した乳濁液を生成してマイクロカプセルを生成してもよい。
【0053】
本実施例では、重合工程での重合反応の開始及び停止を温度によって制御できるので、工程管理をさらに容易とすることができる。
【0054】
また、乳濁液または乳濁液を生成するために用いた油には、所定の油溶性薬剤をあらかじめ溶解させておくことにより、油溶性薬剤入りのマイクロカプセルを容易に生成できる。この場合、油溶性薬剤は、重合工程での圧力条件及び温度条件で分解しないものでなければならない。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、実施例1の場合と15-SO3-TEMPO-IBNの配合量が異なるだけであり、15-SO3-TEMPO-IBNをCMC以上配合しているものである。
【0056】
すなわち、本実施例では、乳化工程において、5gの水と、31mgの15-SO3-TEMPO-IBNと、273mgのスチレンと、13mgのヘキサデカンとを混合し、ホモジナイザーで10,000rpm、90秒の攪拌処理を行い、油中水滴を含有する乳濁液を生成した。すなわち、15-SO3-TEMPO-IBNを0.62wt%とした。
【0057】
この乳濁液に対して実施例1の場合と同じ重合工程を施してマイクロカプセルを生成し、エタノール洗浄を行い、遠心分離処理を行ってマイクロカプセルを回収した。図3は、回収されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真である。
【0058】
15-SO3-TEMPO-IBNの配合量をCMC以上とすると、粒径が200nm以下で、中空ではなく内部が詰まった粒体が多数発生する一方で、粒径の大きなマイクロカプセルを生成することができる。
【0059】
すなわち、15-SO3-TEMPO-IBNの配合量をCMC以下とした場合には、小粒径の内部の詰まった粒体の生成を抑えながら、比較的小径のマイクロカプセルであって、粒形のばらつきの小さい中空のマイクロカプセルを効率よく生成できる一方で、15-SO3-TEMPO-IBNの配合量をCMC以上とした場合には、小粒径の内部の詰まった粒体とともに、粒径の大きい中空のマイクロカプセルを同時に生成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤。
【請求項2】
前記2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基に重合開始基を結合させた請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
一方の片末端に親水基を有し、アルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤が片末端に結合されたポリマー。
【請求項4】
油性であるモノマーと、水と、界面活性剤とを混合して乳化させることにより油中水滴が生成された乳濁液で、前記モノマーを重合させて生成したマイクロカプセルであって、
前記界面活性剤は、一方の片末端に親水基を有するとともにアルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤として、球面状に前記モノマーを重合させたマイクロカプセル。
【請求項5】
前記モノマーに代えて、片末端に前記界面活性剤が結合されたポリマーを用いた請求項4に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
油性であるモノマーと、水と、界面活性剤とを混合して乳化させることにより油中水滴を含有する乳濁液を生成する乳化工程と、
前記乳濁液において前記モノマーを重合させる重合工程と
を有するマイクロカプセルの製造方法であって、
前記界面活性剤を、一方の片末端に親水基を有するとともにアルキル鎖を介して他方の片末端に2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルラジカル基を有する界面活性剤としているマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記乳濁液中の前記界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度以下としている請求項6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記重合工程では、前記乳濁液を125℃以上に加温して前記モノマーを重合させる一方で、125℃より低い温度として重合を停止させている請求項6または請求項7に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記乳濁液には、所定の油溶性薬剤を溶解させている請求項6〜8のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記モノマーに代えて、片末端に前記界面活性剤が結合されたポリマーを用いる請求項6〜9のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106147(P2012−106147A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60057(P2009−60057)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】