留め具
【課題】 留め具の嵌合部を自動車ボデーなどの取付け孔に挿入するときの剛性を維持して挿入荷重の安定化を図るとともに、挿入後の横方向の荷重に対する剛性も高めて、ぐらつき、がたつきを抑える。
【解決手段】 所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部20が、基板10上の円周に沿った配置で、かつこの基板10から一体に突出した複数個の係止部材22と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材22を相互に結合した連結部材30とを備え、これらの係止部材22及び連結部材30によって嵌合部20の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている。
【解決手段】 所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部20が、基板10上の円周に沿った配置で、かつこの基板10から一体に突出した複数個の係止部材22と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材22を相互に結合した連結部材30とを備え、これらの係止部材22及び連結部材30によって嵌合部20の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車ボデーに対してドアトリムなどの内装材あるいはオーバーフェンダなどの外装材といった取付け部材を着脱可能に取付けるための留め具に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の留め具には種々の構造のものがあり、その一例として基板から一体に突出させた3本の係止部材を、それぞれの先端部で互いに一体化して嵌合部とした構造の留め具がある。つまり個々の係止部材は、それぞれの先端部及び基板との接合部を除いて互いに分離している。また各係止部材の外側には、自動車ボデーなどの取付け孔への嵌合部の挿入を案内するテーパ面と、嵌合部が取付け孔に挿入されたときに、この取付け孔の縁に係止可能な係止肩とが形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが前記の嵌合部を自動車ボデーの取付け孔に挿入するとき、各係止部材を内方へ押しつぶすような力が加わるため、嵌合部が外方に押し広げられ、それが抵抗となって取付け孔に対する嵌合部の挿入荷重が不安定となる。また嵌合部を取付け孔に挿入した後において、留め具に加わる横方向の荷重(横ずれ荷重)は、前記のようにそれぞれの先端部及び基板との接合部を除いて互いに分離している3本の係止部材のみで受けることとなる。したがって横方向の荷重に対する剛性が低く、ぐらつき、がたつきなどを招くことがある。
【0004】本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、留め具の嵌合部を自動車ボデーなどの取付け孔に挿入するときの剛性を維持して挿入荷重の安定化を図るとともに、挿入後の横方向の荷重に対する剛性も高めて、ぐらつき、がたつきを抑えることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1記載の発明は、所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部が、基板上の円周に沿った配置で、かつこの基板から一体に突出した複数個の係止部材と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材を相互に結合した連結部材とを備え、これらの係止部材及び連結部材によって嵌合部の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている。
【0006】このように各係止部材と連結部材とからなる嵌合部が縮径可能なほぼ円筒形状になっていることから、前記取付け孔に挿入されるときの嵌合部の剛性が維持され、この挿入時の荷重が安定する。また取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに取付けた後においては、横方向からの荷重に対する嵌合部の剛性も高く、取付け部材のぐらつき、がたつきといった事態が抑えられる。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、各連結部材が基板と一体に接合されているとともに、これらの連結部材における基板との接合箇所が部分的に切り取られた肉抜き部となっている。この構成によれば、前記の機能に加えて嵌合部がパネルの取付け孔に挿入されるときの嵌合部の縮径方向への弾性変形が容易となり、挿入作業が容易となる。
【0008】請求項3記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材が、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内する傾きのテーパ面と、このテーパ面の終端部位に位置する膨出部と、この膨出部から基板までの間において前記取付け孔の縁に係止可能に形成された係止肩とを備えている。これにより、前記取付け孔に対する嵌合部の挿入性がさらに高められ、かつ挿入後は取付け孔と係止肩との係止によって充分な保持力が得られる。
【0009】請求項4記載の発明は、請求項3記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材の幅が、この嵌合部の膨出部がパネルの取付け孔を通過するときの嵌合部の径の縮小に伴い、隣り合う各係止部材が互いに接近してほぼ円筒を構成する寸法に設定されている。このように嵌合部が縮径されたときの各係止部材がほぼ円筒を構成することにより、この嵌合部がパネルの取付け孔に挿入されるときの剛性がより高められ、嵌合部の挿入荷重がより安定する。
【0010】請求項5記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、嵌合部の中心軸部に、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内するための案内部材が、嵌合部の先端から突出する長さで形成されている。この構成によれば、嵌合部の剛性や保持力による前記の機能を維持しつつ、前記案内部材によって取付け孔に嵌合部を的確に合わせて挿入するまでの作業が容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1図1はドアトリムなどの取付け部材(図示外)を自動車ボデーなどに取り付けるために使用する留め具を表した外観斜視図、図2は留め具の正面図、図3は図2の平面図、図4は同じく図2の側面図である。また図5は図3のA−A線断面図、図6は同じく図3のB−B線断面図、図7は図4のC−C線断面図である。これらの図面から明らかなように留め具は、大別して基板10、この基板10の片側に形成された取付け部14、基板10の反対側に形成された嵌合部20を備え、これらが合成樹脂によって一体成形されている。
【0012】前記基板10の外周部分は、弾力性を有するように片側(連結部材30の側)に湾曲させたスタビライザー12となっていて、基板10とともに皿形状になっている。そして前記取付け部14は前記取付け部材の取付け台座(図示外)に留め具を取り付けるための部分で、基板10の中心部付近から首部18が一体に突出している。この首部18には、それぞれ円形状をした受け板16と押え板17とが基板10とほぼ平行に形成されている。
【0013】この受け板16は基板10から少し離れた箇所に位置し、また押え板17は首部18の端部に位置している。これらの受け板16と押え板17との間隔は、前記取付け部材における取付け台座の板厚に対応した寸法に設定されていて、これらの両板16,17により取付け台座を両面から挟みつけた状態で留め具が取付け部材に取り付けられることとなる。なお図7からも明らかなように首部18はその軸心部に孔19を有する中空構造になっている。
【0014】前記嵌合部20は、図4で示す自動車ボデーなどのパネル36に形成された取付け孔38に挿入される部分で、基板10から一体に突出した複数個(4個)の係止部材22と、これらを結合する連結部材30とを備えている。各係止部材22は基板10上の円周に沿って配置されており、基板10に対してそれぞれ撓むことができる片持ち状になっている。しかも各係止部材22の平面形状は円弧状になっており、かつ各係止部材22は周方向の幅が異なる二種類のものが交互に配置されている(図3)。
【0015】一方、連結部材30も基板10と一体に形成されているとともに、円周方向に関して隣り合う係止部材22を相互に結合している。これらの連結部材30は、各係止部材22の間で襞状に折りたたまれるような弾性変形が可能である。また各連結部材30には、基板10と接合されている箇所を部分的に切り取ることで肉抜き部32が形成されており、これによって個々の弾性変形が容易となる。
【0016】このように嵌合部20は、各係止部材22と連結部材30とによって全体形状が筒状になっているとともに、これら両部材22,30の弾性により径を縮小する方向への変形が可能となっている。そして嵌合部20の先端部は、パネル36の取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する傾きのテーパ面24となっており、かつこのテーパ面24に続く各係止部材22の表面ほぼ同じ傾きのテーパ面25となっている。なおテーパ面24は各係止部材22及び連結部材30の先端部分を所定の傾斜角で共に削り取った形状になっている。
【0017】各係止部材22におけるテーパ面25の終端部分は、嵌合部20において最も外方に張り出した膨出部26となっている。さらに各係止部材22の膨出部26に続く基板10側の部分は、テーパ面24,25とは逆方向に傾斜した係止肩28となっている。これらの係止肩28は、嵌合部20が取付け孔38に挿入されたときに、この取付け孔38の縁に係止できる寸法に設定されている。
【0018】つぎに前記の留め具によって所定の取付け部材をパネル36に取り付ける手順について説明する。まず留め具の取付け部14を前記のようにして取付け部材の取付け台座に取り付けた後、嵌合部20の先端部をパネル36の取付け孔38に挿入する。このとき、嵌合部20が前記テーパ面24,25に案内されて取付け孔38に挿入されていくのに伴い、取付け孔38の縁によって各係止部材22が内方へ押される。この結果、嵌合部20は各係止部材22と連結部材30との弾性変形により図8の仮想線(左側)で示すように径が縮小され、取付け孔38に対して円滑に挿入される。
【0019】この嵌合部20の縮径により、とくに前記膨出部26が取付け孔38を通過する時点では隣り合う各係止部材22が互いに接近して円筒に近い形状になる。このため嵌合部20が挿入時の抵抗によって押しつぶされるようなことがなく、その剛性が維持されて挿入時の荷重が安定する。そして留め具のスタビライザー12がパネル36の表面に押しつけられるまで嵌合部20を挿入すると、係止肩28がパネル36の内側において取付け孔38の縁に係止する。
【0020】このようにして通常は複数個の留め具を用いてパネル36に取付け部材が取り付けられる。この取り付け後においても、嵌合部20が筒状であることから横方向からの荷重(横ずれ荷重)に対する剛性が高く、取付け部材がぐらついたり、がたついたりすることが抑えられる。また4個の各係止部材22が係止肩28を備えていることから、この係止肩28の面積が大きく確保されることとなり、取付け孔38に対する留め具の保持力が安定する。なお取付け部材の種類によってはその留め具挿通用の孔とパネル36の取付け孔38との位置を合わせた状態で、そこに嵌合部20を挿入する場合もある。メンテナンスなどに際してパネル36から取付け部材を外す場合には、この取付け部材あるいは留め具を単体で強く引っ張ることにより、嵌合部20がパネル36の取付け孔38から引き抜かれ、留め具を再使用できる。
【0021】実施の形態2図9は実施の形態2の留め具を表した外観斜視図、図10R>0は実施の形態2の留め具を表した正面図、図11は図1010の平面図、図12は同じく図10の側面図である。また図13は図11のD−D線断面図、図14は同じく図11のE−E線断面図である。この実施の形態2の留め具では、その嵌合部20のテーパ面24が実施の形態1のそれより短く設定され、その代わりに嵌合部20の中心軸部に、取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する案内部材40が基板10と一体に形成されている。
【0022】この案内部材40は、嵌合部20の先端から突出する長さで、各係止部材22と対応する4箇所においてリブ40aが外側に張り出した平面十字形状に設定されている。そして各リブ40aの先端部分には、取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する傾きの案内面42が形成されている。この嵌合部20が取付け孔38への挿入に伴って図15の仮想線(左側)で示すように縮径し、この状態において大きく変形する連結部分30は案内部材40の各リブ40aの間に入り込むように位置する。これによって係止部材22及び連結部材30は案内部材40に干渉しないか、もしくは軽く接触する程度となる。したがってこの案内部材40が嵌合部20の縮径機能を妨げることはなく、しかも案内部材40により嵌合部20を取付け孔38に的確に合わせて挿入できる。
【0023】なお実施の形態1,2の留め具は、そのほとんどが同一もしくは均等構成であるので、図9〜図15R>5に同一符号を付すことにより、重複する説明は省略する。また実施の形態1,2において、嵌合部20を構成している係止部材22の個数は4個に限るものではなく、それ以上(8個程度まで)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】留め具を表した外観斜視図。
【図2】留め具の正面図。
【図3】図2の平面図。
【図4】同じく図2の側面図。
【図5】図3のA−A線断面図。
【図6】同じく図3のB−B線断面図。
【図7】図4のC−C線断面図。
【図8】嵌合部をパネルの取付け孔に挿入するときの変形状態を表した平面図。
【図9】実施の形態2の留め具を表した外観斜視図。
【図10】実施の形態2の留め具を表した正面図。
【図11】図10の平面図
【図12】同じく図10の側面図。
【図13】図11のD−D線断面図。
【図14】同じく図11のE−E線断面図。
【図15】嵌合部をパネルの取付け孔に挿入するときの変形状態を表した平面図。
【符号の説明】
10 基板
20 嵌合部
24,25 テーパ面
26 膨出部
28 係止肩
30 連結部材
36 パネル
38 取付け孔
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車ボデーに対してドアトリムなどの内装材あるいはオーバーフェンダなどの外装材といった取付け部材を着脱可能に取付けるための留め具に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の留め具には種々の構造のものがあり、その一例として基板から一体に突出させた3本の係止部材を、それぞれの先端部で互いに一体化して嵌合部とした構造の留め具がある。つまり個々の係止部材は、それぞれの先端部及び基板との接合部を除いて互いに分離している。また各係止部材の外側には、自動車ボデーなどの取付け孔への嵌合部の挿入を案内するテーパ面と、嵌合部が取付け孔に挿入されたときに、この取付け孔の縁に係止可能な係止肩とが形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが前記の嵌合部を自動車ボデーの取付け孔に挿入するとき、各係止部材を内方へ押しつぶすような力が加わるため、嵌合部が外方に押し広げられ、それが抵抗となって取付け孔に対する嵌合部の挿入荷重が不安定となる。また嵌合部を取付け孔に挿入した後において、留め具に加わる横方向の荷重(横ずれ荷重)は、前記のようにそれぞれの先端部及び基板との接合部を除いて互いに分離している3本の係止部材のみで受けることとなる。したがって横方向の荷重に対する剛性が低く、ぐらつき、がたつきなどを招くことがある。
【0004】本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、留め具の嵌合部を自動車ボデーなどの取付け孔に挿入するときの剛性を維持して挿入荷重の安定化を図るとともに、挿入後の横方向の荷重に対する剛性も高めて、ぐらつき、がたつきを抑えることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1記載の発明は、所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部が、基板上の円周に沿った配置で、かつこの基板から一体に突出した複数個の係止部材と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材を相互に結合した連結部材とを備え、これらの係止部材及び連結部材によって嵌合部の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている。
【0006】このように各係止部材と連結部材とからなる嵌合部が縮径可能なほぼ円筒形状になっていることから、前記取付け孔に挿入されるときの嵌合部の剛性が維持され、この挿入時の荷重が安定する。また取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに取付けた後においては、横方向からの荷重に対する嵌合部の剛性も高く、取付け部材のぐらつき、がたつきといった事態が抑えられる。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、各連結部材が基板と一体に接合されているとともに、これらの連結部材における基板との接合箇所が部分的に切り取られた肉抜き部となっている。この構成によれば、前記の機能に加えて嵌合部がパネルの取付け孔に挿入されるときの嵌合部の縮径方向への弾性変形が容易となり、挿入作業が容易となる。
【0008】請求項3記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材が、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内する傾きのテーパ面と、このテーパ面の終端部位に位置する膨出部と、この膨出部から基板までの間において前記取付け孔の縁に係止可能に形成された係止肩とを備えている。これにより、前記取付け孔に対する嵌合部の挿入性がさらに高められ、かつ挿入後は取付け孔と係止肩との係止によって充分な保持力が得られる。
【0009】請求項4記載の発明は、請求項3記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材の幅が、この嵌合部の膨出部がパネルの取付け孔を通過するときの嵌合部の径の縮小に伴い、隣り合う各係止部材が互いに接近してほぼ円筒を構成する寸法に設定されている。このように嵌合部が縮径されたときの各係止部材がほぼ円筒を構成することにより、この嵌合部がパネルの取付け孔に挿入されるときの剛性がより高められ、嵌合部の挿入荷重がより安定する。
【0010】請求項5記載の発明は、請求項1記載の留め具であって、嵌合部の中心軸部に、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内するための案内部材が、嵌合部の先端から突出する長さで形成されている。この構成によれば、嵌合部の剛性や保持力による前記の機能を維持しつつ、前記案内部材によって取付け孔に嵌合部を的確に合わせて挿入するまでの作業が容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1図1はドアトリムなどの取付け部材(図示外)を自動車ボデーなどに取り付けるために使用する留め具を表した外観斜視図、図2は留め具の正面図、図3は図2の平面図、図4は同じく図2の側面図である。また図5は図3のA−A線断面図、図6は同じく図3のB−B線断面図、図7は図4のC−C線断面図である。これらの図面から明らかなように留め具は、大別して基板10、この基板10の片側に形成された取付け部14、基板10の反対側に形成された嵌合部20を備え、これらが合成樹脂によって一体成形されている。
【0012】前記基板10の外周部分は、弾力性を有するように片側(連結部材30の側)に湾曲させたスタビライザー12となっていて、基板10とともに皿形状になっている。そして前記取付け部14は前記取付け部材の取付け台座(図示外)に留め具を取り付けるための部分で、基板10の中心部付近から首部18が一体に突出している。この首部18には、それぞれ円形状をした受け板16と押え板17とが基板10とほぼ平行に形成されている。
【0013】この受け板16は基板10から少し離れた箇所に位置し、また押え板17は首部18の端部に位置している。これらの受け板16と押え板17との間隔は、前記取付け部材における取付け台座の板厚に対応した寸法に設定されていて、これらの両板16,17により取付け台座を両面から挟みつけた状態で留め具が取付け部材に取り付けられることとなる。なお図7からも明らかなように首部18はその軸心部に孔19を有する中空構造になっている。
【0014】前記嵌合部20は、図4で示す自動車ボデーなどのパネル36に形成された取付け孔38に挿入される部分で、基板10から一体に突出した複数個(4個)の係止部材22と、これらを結合する連結部材30とを備えている。各係止部材22は基板10上の円周に沿って配置されており、基板10に対してそれぞれ撓むことができる片持ち状になっている。しかも各係止部材22の平面形状は円弧状になっており、かつ各係止部材22は周方向の幅が異なる二種類のものが交互に配置されている(図3)。
【0015】一方、連結部材30も基板10と一体に形成されているとともに、円周方向に関して隣り合う係止部材22を相互に結合している。これらの連結部材30は、各係止部材22の間で襞状に折りたたまれるような弾性変形が可能である。また各連結部材30には、基板10と接合されている箇所を部分的に切り取ることで肉抜き部32が形成されており、これによって個々の弾性変形が容易となる。
【0016】このように嵌合部20は、各係止部材22と連結部材30とによって全体形状が筒状になっているとともに、これら両部材22,30の弾性により径を縮小する方向への変形が可能となっている。そして嵌合部20の先端部は、パネル36の取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する傾きのテーパ面24となっており、かつこのテーパ面24に続く各係止部材22の表面ほぼ同じ傾きのテーパ面25となっている。なおテーパ面24は各係止部材22及び連結部材30の先端部分を所定の傾斜角で共に削り取った形状になっている。
【0017】各係止部材22におけるテーパ面25の終端部分は、嵌合部20において最も外方に張り出した膨出部26となっている。さらに各係止部材22の膨出部26に続く基板10側の部分は、テーパ面24,25とは逆方向に傾斜した係止肩28となっている。これらの係止肩28は、嵌合部20が取付け孔38に挿入されたときに、この取付け孔38の縁に係止できる寸法に設定されている。
【0018】つぎに前記の留め具によって所定の取付け部材をパネル36に取り付ける手順について説明する。まず留め具の取付け部14を前記のようにして取付け部材の取付け台座に取り付けた後、嵌合部20の先端部をパネル36の取付け孔38に挿入する。このとき、嵌合部20が前記テーパ面24,25に案内されて取付け孔38に挿入されていくのに伴い、取付け孔38の縁によって各係止部材22が内方へ押される。この結果、嵌合部20は各係止部材22と連結部材30との弾性変形により図8の仮想線(左側)で示すように径が縮小され、取付け孔38に対して円滑に挿入される。
【0019】この嵌合部20の縮径により、とくに前記膨出部26が取付け孔38を通過する時点では隣り合う各係止部材22が互いに接近して円筒に近い形状になる。このため嵌合部20が挿入時の抵抗によって押しつぶされるようなことがなく、その剛性が維持されて挿入時の荷重が安定する。そして留め具のスタビライザー12がパネル36の表面に押しつけられるまで嵌合部20を挿入すると、係止肩28がパネル36の内側において取付け孔38の縁に係止する。
【0020】このようにして通常は複数個の留め具を用いてパネル36に取付け部材が取り付けられる。この取り付け後においても、嵌合部20が筒状であることから横方向からの荷重(横ずれ荷重)に対する剛性が高く、取付け部材がぐらついたり、がたついたりすることが抑えられる。また4個の各係止部材22が係止肩28を備えていることから、この係止肩28の面積が大きく確保されることとなり、取付け孔38に対する留め具の保持力が安定する。なお取付け部材の種類によってはその留め具挿通用の孔とパネル36の取付け孔38との位置を合わせた状態で、そこに嵌合部20を挿入する場合もある。メンテナンスなどに際してパネル36から取付け部材を外す場合には、この取付け部材あるいは留め具を単体で強く引っ張ることにより、嵌合部20がパネル36の取付け孔38から引き抜かれ、留め具を再使用できる。
【0021】実施の形態2図9は実施の形態2の留め具を表した外観斜視図、図10R>0は実施の形態2の留め具を表した正面図、図11は図1010の平面図、図12は同じく図10の側面図である。また図13は図11のD−D線断面図、図14は同じく図11のE−E線断面図である。この実施の形態2の留め具では、その嵌合部20のテーパ面24が実施の形態1のそれより短く設定され、その代わりに嵌合部20の中心軸部に、取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する案内部材40が基板10と一体に形成されている。
【0022】この案内部材40は、嵌合部20の先端から突出する長さで、各係止部材22と対応する4箇所においてリブ40aが外側に張り出した平面十字形状に設定されている。そして各リブ40aの先端部分には、取付け孔38に対する嵌合部20の挿入を案内する傾きの案内面42が形成されている。この嵌合部20が取付け孔38への挿入に伴って図15の仮想線(左側)で示すように縮径し、この状態において大きく変形する連結部分30は案内部材40の各リブ40aの間に入り込むように位置する。これによって係止部材22及び連結部材30は案内部材40に干渉しないか、もしくは軽く接触する程度となる。したがってこの案内部材40が嵌合部20の縮径機能を妨げることはなく、しかも案内部材40により嵌合部20を取付け孔38に的確に合わせて挿入できる。
【0023】なお実施の形態1,2の留め具は、そのほとんどが同一もしくは均等構成であるので、図9〜図15R>5に同一符号を付すことにより、重複する説明は省略する。また実施の形態1,2において、嵌合部20を構成している係止部材22の個数は4個に限るものではなく、それ以上(8個程度まで)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】留め具を表した外観斜視図。
【図2】留め具の正面図。
【図3】図2の平面図。
【図4】同じく図2の側面図。
【図5】図3のA−A線断面図。
【図6】同じく図3のB−B線断面図。
【図7】図4のC−C線断面図。
【図8】嵌合部をパネルの取付け孔に挿入するときの変形状態を表した平面図。
【図9】実施の形態2の留め具を表した外観斜視図。
【図10】実施の形態2の留め具を表した正面図。
【図11】図10の平面図
【図12】同じく図10の側面図。
【図13】図11のD−D線断面図。
【図14】同じく図11のE−E線断面図。
【図15】嵌合部をパネルの取付け孔に挿入するときの変形状態を表した平面図。
【符号の説明】
10 基板
20 嵌合部
24,25 テーパ面
26 膨出部
28 係止肩
30 連結部材
36 パネル
38 取付け孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部が、基板上の円周に沿った配置で、かつこの基板から一体に突出した複数個の係止部材と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材を相互に結合した連結部材とを備え、これらの係止部材及び連結部材によって嵌合部の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている留め具。
【請求項2】 請求項1記載の留め具であって、各連結部材が基板と一体に接合されているとともに、これらの連結部材における基板との接合箇所が部分的に切り取られた肉抜き部となっている留め具。
【請求項3】 請求項1記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材が、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内する傾きのテーパ面と、このテーパ面の終端部位に位置する膨出部と、この膨出部から基板までの間において前記取付け孔の縁に係止可能に形成された係止肩とを備えている留め具。
【請求項4】 請求項3記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材の幅が、この嵌合部の膨出部がパネルの取付け孔を通過するときの嵌合部の径の縮小に伴い、隣り合う各係止部材が互いに接近してほぼ円筒を構成する寸法に設定されている留め具。
【請求項5】 請求項1記載の留め具であって、嵌合部の中心軸部に、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内するための案内部材が、嵌合部の先端から突出する長さで形成されている留め具。
【請求項1】 所定の取付け部材を自動車ボデーなどのパネルに対して着脱可能に取付けるための留め具であって、前記パネルの取付け孔に挿入される嵌合部が、基板上の円周に沿った配置で、かつこの基板から一体に突出した複数個の係止部材と、前記円周方向に関して隣り合う係止部材を相互に結合した連結部材とを備え、これらの係止部材及び連結部材によって嵌合部の全体形状が径を縮小する方向への弾性変形可能な筒状に設定されている留め具。
【請求項2】 請求項1記載の留め具であって、各連結部材が基板と一体に接合されているとともに、これらの連結部材における基板との接合箇所が部分的に切り取られた肉抜き部となっている留め具。
【請求項3】 請求項1記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材が、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内する傾きのテーパ面と、このテーパ面の終端部位に位置する膨出部と、この膨出部から基板までの間において前記取付け孔の縁に係止可能に形成された係止肩とを備えている留め具。
【請求項4】 請求項3記載の留め具であって、嵌合部の各係止部材の幅が、この嵌合部の膨出部がパネルの取付け孔を通過するときの嵌合部の径の縮小に伴い、隣り合う各係止部材が互いに接近してほぼ円筒を構成する寸法に設定されている留め具。
【請求項5】 請求項1記載の留め具であって、嵌合部の中心軸部に、パネルの取付け孔に対する嵌合部の挿入を案内するための案内部材が、嵌合部の先端から突出する長さで形成されている留め具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2001−12422(P2001−12422A)
【公開日】平成13年1月16日(2001.1.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−188096
【出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年1月16日(2001.1.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
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