説明

留め具

【課題】留め具に関し、ナットを仮止めした基部を構造物の開口部から挿入した上、当該開口部から挿入した雄ネジ部をナットにねじ込むことで、ナットを開口部より抜けない固定位置に回動することができる。
【解決手段】ナット90は、短辺が開口部の幅より短く、長辺が開口部の幅より長く形成され、短辺が基部80の短辺と一致した装着位置において、構造物(例えばC形鋼)内の中空部内に挿入され、ナット90は、開口部から挿入された雄ネジ部(例えばボルト)がねじ込まれるとともに、中空部内で回動することで、当該開口部より抜けない固定位置に至り、雄ネジ部(例えばボルト)を介して中空部内に固定される。基部80には、ナット90を装着位置に仮止めする仮止め爪104を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば屋根に設置される長尺なC形鋼等の構造物に、太陽電池モジュール等の相手部材を固定するための留め具に関し、ナットを仮止めした基部を構造物の開口部から挿入した上、当該開口部から挿入した雄ネジ部をナットにねじ込むことで、ナットを開口部より抜けない固定位置に回動することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナットにネジをねじ込むことで、ナットを回動させてパネルの開口部からの抜け止めを行うことにより、パネルに対し部品を固定するようにした留め具が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2576880号公報
【特許文献2】実開昭62-196920号公報
【特許文献3】実公平08-008334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の留め具は、搬送中や装着時の振動、衝撃等により、ナットが不要に回動してしまうと、ナットがパネルの開口部を通り抜けられなくなり、その度にナットを戻し回動する必要があり、装着に手間と時間が掛かるという問題点があった。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
【0005】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ナットを仮止めした基部を構造物の開口部から挿入した上、当該開口部から挿入した雄ネジ部をナットにねじ込むことで、ナットを開口部より抜けない固定位置に回動することができるようにしたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、ナットを仮止め爪を用いて装着位置に仮止めすることで、固定位置に不要に回動するのを未然に防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0006】
すなわち、請求項2に記載の発明は、仮止め爪の弾性を利用して、ナットを装着位置に簡便に且つ迅速に仮止めすることができるようにしたものである。
弾性片
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項3に記載の発明は、カム斜面を利用し、雄ネジ部のねじ込みにより、当該雄ネジ部の軸方向にナットが移動した際に、当該ナットを回動することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項4に記載の発明は、係止爪により、構造物の開口部から基部の抜けを防止することができるようにしたものである。
また、請求項4に記載の発明によれば、係止爪を開口部の開口縁に弾性的に当接させることにより、構造物の中空部内、すなわち構造物の長手方向に基部が移動するのを防止することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項5に記載の発明は、操作摘みを使用して、構造物の中空部内、すなわち構造物の長手方向に基部を移動することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0011】
第1に、例えば図1〜5に示すように、断面略C字状の構造物(例えばC形鋼30)に相手部材(例えば太陽電池モジュール40)を固定するための留め具(10)である。
第2に、留め具(10)は、例えば図1〜4に示すように、構造物(例えばC形鋼30)の開口部(31)から挿入する基部(80)と、基部(80)に可動可能に支持され、内周に雌ネジ部(91)を有したナット(90)とからなる。
【0012】
第3に、ナット(90)は、例えば図3、図4及び図13に示すように、短辺(c1)が開口部(31)の幅(a1)より短く、長辺(c2)が開口部(31)の幅(a1)より長く形成されている。
これに加え、ナット(90)は、例えば図3及び図13に示すように、短辺(c1)が基部(80)の短辺(b1)と一致した装着位置(例えば図12及び図13参照)において、開口部(31)から基部(80)を挿入することにより、構造物(例えばC形鋼30)内の中空部(32)内に挿入される。
【0013】
さらに、ナット(90)は、例えば図12〜16に示すように、開口部(31)から挿入された雄ネジ部(例えばボルト60)がねじ込まれるとともに、中空部(32)内で回動することで、長辺(c2)が開口部(31)と交差することにより、当該開口部(31)より抜けない固定位置(例えば図14及び図15参照)に至り、雄ネジ部(例えばボルト60)を介して中空部(32)内に固定される。
【0014】
第4に、基部(80)には、例えば図1及び図4に示すように、ナット(90)を装着位置に仮止めする仮止め爪(104,105)を備えた。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、仮止め爪(104,105)は、例えば図4に示すように、弾性片(104a,105a)である。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、基部(80)とナット(90)との間には、例えば図4、図12、図13及び図16に示すように、雄ネジ部(例えばボルト60)のねじ込みにより、当該雄ネジ部(例えばボルト60)の軸方向にナット(90)が移動した際に、当該ナット(90)を構造物(例えばC形鋼30)の中空部(32)内で回動するカム斜面(106a,107a)を設けている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、基部(80)の外側面に、例えば図3及び図12に示すように、構造物(例えばC形鋼30)の開口部(31)の開口縁に係止する係止爪(130)を備えた。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、基部(80)には、例えば図3及び図5に示すように、当該基部(80)を構造物(例えばC形鋼30)の中空部(32)内に挿入した状態で、開口部(31)に臨む操作摘み(120)を備えた。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、ナットを仮止めした基部を構造物の開口部から挿入した上、当該開口部から挿入した雄ネジ部をナットにねじ込むことで、ナットを開口部より抜けない固定位置に回動することができる。
【0020】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、ナットを仮止め爪を用いて装着位置に仮止めすることで、固定位置に不要に回動するのを未然に防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0021】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、仮止め爪の弾性を利用して、ナットを装着位置に簡便に且つ迅速に仮止めすることができる。
弾性片
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0022】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、カム斜面を利用し、雄ネジ部のねじ込みにより、当該雄ネジ部の軸方向にナットが移動した際に、当該ナットを回動することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0023】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、係止爪により、構造物の開口部から基部の抜けを防止することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、係止爪を開口部の開口縁に弾性的に当接させることにより、構造物の中空部内、すなわち構造物の長手方向に基部が移動するのを防止することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0024】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、操作摘みを使用して、構造物の中空部内、すなわち構造物の長手方向に基部を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】留め具の斜視図である。
【図2】留め具の取付位置を説明するための分解斜視図、並びに支持金具の取付状態を説明するための一部斜視図である。
【図3】留め具の取付状態を説明するための分解斜視図である。
【図4】留め具の分解斜視図である。
【図5】留め具の取付状態を説明するための斜視図である。
【図6】基部の正面図である。
【図7】基部の背面図である。
【図8】基部の平面図である。
【図9】基部の底面図である。
【図10】基部の左側面図である。
【図11】基部の右側面図である。
【図12】留め具の取付状態を説明するための断面図である。
【図13】図12のA−A線に沿う断面図である。
【図14】ボルトをねじ込んだ状態を説明するための断面図である。
【図15】図14のB−B線に沿う断面図である。
【図16】ナットの回動状態を説明するための留め具の一部を拡大した斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態を説明するための留め具の斜視図である。
【図18】同図の(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態を説明するためのナットの斜視図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態を説明するための留め具の斜視図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態を説明するための留め具の取付状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(留め具10)
図1中、10は、留め具を示し、図2に示すように、例えば屋根(瓦20)に設置される長尺なC形鋼30等の構造物に、太陽電池モジュール40等の相手部材を固定するためのものである。
具体的には、図2に示すように、瓦20に支持金具50を複数個取り付け、支持金具50に対し、縦桟30aを渡らせて複数本固定し、更に、縦桟30aに対し、C形鋼30である横桟30bを渡らせて複数本固定する。最後に、留め具10を使用して、横桟30bに対し、太陽電池モジュール40を渡らせて複数枚固定する。
【0027】
なお、瓦20に支持金具50を介して縦桟30aを固定したが、これに限定されず、図示しないが、支持金具が固定されたいわゆる支持瓦を使用し、支持瓦に対して縦桟30aを固定しても良い。また、瓦20を使用した屋根を例示したが、これに限定されず、図示しないが、瓦20を使用しない屋根でも良い。
さらに、縦桟30aと横桟30bとを組んで、太陽電池モジュール40を固定したが、縦桟30aと横桟30bとのいずれか一方のみを使用しても良い。
【0028】
また、太陽電池モジュール40の取付位置として、屋根(瓦20)を例示したが、これに限定されない。また、相手部材として、太陽電池モジュール40を例示したが、これに限定されず、太陽熱の集熱器、緑化設備、看板等でも良い。
一方、C形鋼30は、図3に示すように、断面略C字状に形成され、溝形鋼(チャンネル)の開口部31を内側に少し折り込んでアルファベットの「C」を四角く押しつぶしたような形状の断面を持つ長尺な鋼材から構成されている。C形鋼30は、上面に開口部31を有し、内部に中空部32を有する。そして、C形鋼30の開口部31の幅a1より中空部32の内部の幅b2が幅広になっている。
【0029】
C形鋼30と留め具10との間には、図3に示すように、留め具10の後述するナット90にねじ込む雄ネジ部を有するボルト60と、当該ボルト60の軸部61が通る、後述する貫通孔71を有する取付プレート70とを備える。
ボルト60は、図3に示すように、金属製であり、雄ネジ部を有し、取付プレート70の後述する貫通孔71を通る軸部61と、貫通孔71の内径より大きな外径を有する頭部62とを有する。
【0030】
なお、ボルト60として、金属製のものを例示したが、これに限定されず、樹脂製のものでも良い。
取付プレート70は、図3に示すように、太陽電池モジュール40を取り付けるためのものであり、金属製で、貫通孔71は表裏面に円形に貫通している。
なお、取付プレート70として、金属製のものを例示したが、これに限定されず、樹脂製のものでも良い。
【0031】
留め具10は、大別すると、図4に示すように、次のパーツを備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)基部80
(2)ナット90
なお、留め具10のパーツは、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(基部80)
基部80は、図1、図3〜5及び図6〜11に示すように、C形鋼30の開口部31から挿入し、短辺b1が開口部31の幅a1より短いものである。基部80は、適度な弾性と剛性とを有する樹脂により一体的に形成する。
【0032】
具体的には、基部80には、図4及び図6〜11に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(4)については、後述する。
(1)ナット保持部100
(2)弾性脚110,111
(3)操作摘み120
(4)係止爪130
なお、基部80の各部は、上記した(1)〜(4)に限定されない。
(ナット90)
ナット90は、図4に示すように、基部80と、基部80に回動可能に支持され、内周に雌ネジ部91を有したものである。ナット90は、ボルト60と同様に、金属製である。なお、ナット90として、金属製のものを例示したが、これに限定されず、樹脂製のものでも良い。
【0033】
ナット90は、図3、図4及び図13に示すように、短辺c1が開口部31の幅a1より短く、長辺c2が開口部31の幅a1より長く形成されている。
これに加え、ナット90は、図3及び図13に示すように、短辺c1が基部80の短辺b1と一致した装着位置(図12及び図13参照)において、開口部31から基部80を挿入することにより、C形鋼30内の中空部32内に挿入される。
【0034】
さらに、ナット90は、図15に示すように、開口部31から挿入されたボルト60の軸部61がねじ込まれるとともに、中空部32内で回動することで、長辺c2が開口部31と交差することにより、当該開口部31より抜けない固定位置(図14及び図15参照)に至り、ボルト60を介して中空部32内に固定される。
具体的には、ナット90には、図4に示すように、大別すると、次の各部を備える。
【0035】
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)ナット本体92
(2)フランジ部93
なお、ナット90の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(ナット本体92)
ナット本体92は、図4に示すように、円筒形に形成され、内周に雌ネジ部91を有する。また、ナット本体92の外周は、後述する基部80の支持穴101の内径以下に設定されている。
(フランジ部93)
フランジ部93は、図4に示すように、ナット本体92の上部から非円形、例えば平面が長円形に張り出し、外周が後述する支持穴101の内径より大きく設定されている。フランジ部93は、図4及び図13に示すように、短辺c1がC形鋼30の開口部31の幅a1より短く設定されている。また、フランジ部93の長辺c2は、開口部31の幅a1より長く、且つC形鋼30内の中空部32の内部の幅b2より長く設定されている。
(ナット保持部100)
ナット保持部100は、図4及び図6〜9に示すように、ナット90のフランジ部93がはまり込む凹状に形成され、ナット90を回転可能に保持するものである。ナット保持部100の短辺b1は、図4、図6〜9及び図12に示すように、開口部31の幅a1より短く、フランジ部93の短辺c1とほぼ等しく設定されている。ナット保持部100の長辺b2は、フランジ部93の長辺c2以上、例えばほぼ等しく設定されている。
【0036】
具体的には、ナット保持部100には、図4及び図6〜9に示すように、大別すると、次の各部を有する。
なお、次の(1)〜(4)については、後述する。
(1)支持穴101
(2)側壁部102,103
(3)仮止め爪104,105
(4)カム部106,107
なお、ナット保持部100の各部は、上記した(1)〜(4)に限定されない。
(支持穴101)
支持穴101は、図4、図8及び図9に示すように、ナット90のナット本体92がはまり込むものである。支持穴101は、ナット保持部100の中央に位置し、上下に貫通し、その内径をナット本体92の外径以上、例えばほぼ等しく設定している。
(側壁部102,103)
側壁部102,103は、図1、図4、図6〜8及び図13に示すように、ナット90の一方向の回転を阻止するためのものである。
【0037】
具体的には、側壁部102,103は、ナット保持部100の短辺b1の方向の両側から上方に向かってそれぞれ突出する。側壁部102,103は、ナット保持部100の長辺b2の半分以下の長さを有し、長辺b2の方向の前後に互い違いに形成され、フランジ部93の短辺c1の方向に位置する外側面に当接することで、ナット90の一方向の回転を阻止している。これに対し、ナット90が一方向と反対方向に回転しようとした際には、側壁部102,103の無い片半部を通過し、ナット90の回転を許容する。
【0038】
なお、側壁部102,103を、2個設けたが、これに限定されず、単数或いは3個以上設けても良い。
(仮止め爪104,105)
仮止め爪104,105は、図1、図4及び図6〜8に示すように、ナット90を装着位置に仮止めするためのもである。
【0039】
具体的には、仮止め爪104,105は、ナット保持部100の短辺b1の方向の両側であって、側壁部102,103の無い片半部から上方に向かって弾性的に突出する。仮止め爪104,105は、各側壁部102,103とナット保持部100の短辺b1の方向に対向する。仮止め爪104,105は、ナット保持部100の長辺b2の方向に長く延びた弾性片104a,105aと、弾性片104a,105aの自由端部から上方に向かって突出した突起104b,105bとを有する。突起104b,105bのナット90と対向する外側面は、傾斜させ、ナット90にボルト60がねじ込まれ、回動する際にフランジ部93に押され、下方に撓んで引っ込むようにしている。
【0040】
なお、仮止め爪104,105を、2個設けたが、これに限定されず、単数或いは3個以上設けても良い。
(カム部106,107)
カム部106,107は、図1、図4、図6〜8及び図16に示すように、ボルト60のねじ込みにより、当該ボルト60の軸方向にナット90が移動した際に、当該ナット90をC形鋼30の中空部32内で回動するカム斜面106a,107aを有する。
【0041】
具体的には、カム部106,107は、ナット保持部100の底から上方に離れて片状に突出する。
カム斜面106a,107aは、ナット保持部100の底と対向する下面に位置し、仮止め爪104,105の一方に向かって上り傾斜している。
なお、カム部106,107を、2箇所に設けたが、これに限定されず、一箇所或いは3箇所以上に設けても良い。
(弾性脚110,111)
弾性脚110,111は、図1、図4、図6及び図7に示すように、ナット保持部100の長辺b2の方向の両側にそれぞれ位置し、C形鋼30の中空部32の底に向かって弾性的に延びている。
【0042】
具体的には、弾性脚110,111は、中空部32の底に向かって、ナット保持部100の長辺b2の外向きに広がるように斜めに下り傾斜している。
なお、弾性脚110,111を、一対設けたが、これに限定されず、単数或いは3個以上設けても良い。
(操作摘み120)
操作摘み120は、図5に示すように、基部80をC形鋼30の中空部32内に挿入した状態で、開口部31に臨むものである。
【0043】
具体的には、操作摘み120は、弾性脚110,111の一方の弾性脚111から断面V字形に折れ曲がって延びている。操作摘み120は、図5に示すように、基部80をC形鋼30の中空部32内に挿入した状態で、開口部31から上方に突出する。
なお、操作摘み120を、弾性脚110,111の一方の弾性脚111に設けたが、これに限定されず、弾性脚110,111の両方に設けたり、他方の弾性脚110にだけ設けたり、或いは基部80の他の箇所に設けても良い。また、操作摘み120を、1個設けたが、これに限定されず、複数個設けても良い。さらに、操作摘み120を開口部31から上方に突出させたが、これに限定せず、開口部31に面していたり、開口部31から引っ込んでいても良く、この場合には、指や治具等を開口部31から差し込んで、操作摘み120をスライドするようにしても良い。
(係止爪130)
係止爪130は、図1、図4、図6〜11及び図12に示すように、基部80の外側面に形成され、C形鋼30の開口部31の開口縁に係止するものである。
【0044】
具体的には、係止爪130は、基部80の短辺b1の方向の左右の外側面から外向きにそれぞれ突出し、四方に配置され、計4個設けられている。係止爪130は、開口部31を通過する際に、その内縁に押されて内向きにたわみ込むことで、開口部31を通過する。係止爪130は、開口部31を通過後、弾性的に復元することで、開口部31からの基部80の抜けを防止する。
【0045】
また、このとき、弾性脚110,111により、基部80が開口部31に向かって弾性的に押し上げられることで、開口部31の両側の内面に係止爪130が弾性的に当接し、基部80がC形鋼30の長手方向に移動するのを防止している。
なお、係止爪130を4個設けたが、これに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上も設けても良い。
(留め具10の取付方法)
つぎに、上記した構成を備えた留め具10を用いて、構造物であるC形鋼30に対し、相手部材である太陽電池モジュール40を取り付けるための取付プレート70をボルト60を使用して固定する取付方法について説明する。
(留め具10の組み立て)
まず、図1及び図4に示すように、基部80のナット保持部100に合わせてナット90をはめ込み、留め具10を組み立てる。
【0046】
すなわち、ナット90のナット本体92を、ナット保持部100の支持穴101に合わせてはめ込む。なお、このとき、フランジ部93の短辺c1と、ナット保持部100の短辺b1と交差する位置において、ナット本体92をはめ込むことで、フランジ部93がナット保持部100のカム部106,107と干渉しないようにする。
つぎに、ナット90のフランジ部93の短辺c1とナット保持部100の短辺b1とが一致する向き、すなわち図1において反時計回りに回動させる。
【0047】
ナット90を回動させると、フランジ部93とナット保持部100の仮止め爪104,105とが当接する。
ここで、フランジ部93を強く回動すると、仮止め爪104,105がフランジ部93の下面に押されて、下方に撓むことでフランジ部93が通過する。
フランジ部93は、ナット保持部100の側壁部102,103に当接することで、フランジ部93の回動が停止し、このとき、仮止め爪104,105が復元し、側壁部102,103と仮止め爪104,105との間に、フランジ部93が不用意に回動しないように弾性的に保持する。また、フランジ部93がカム部106,107の下側にはまり込む。
(C形鋼30への留め具10の仮止め)
つぎに、組み立てた留め具10を、図3、図5、図12及び図13に示すように、C形鋼30の開口部31に合わせて挿入することで、留め具10をC形鋼30に対して仮止めする。
【0048】
すなわち、開口部31の幅a1と、留め具10の基部80の短辺b1とが一致する向きとし、基部80を開口部31に合わせて上方から挿入する。基部80を挿入すると、その短辺b1の方向に外向きに突出する係止爪130が、開口部31の内縁に当接する。
ここで、基部80を強く挿入すると、開口部31の内縁に押されて、係止爪130が内向きにたわみ込むことで、開口部31を通過する。係止爪130は、開口部31を通過後、弾性的に復元することで、開口部31からの基部80の抜けを防止する。
【0049】
また、このとき、弾性脚110,111により、基部80が開口部31に向かって弾性的に押し上げられることで、開口部31の両側の内面に係止爪130が弾性的に当接し、基部80がC形鋼30の長手方向に移動するのを防止する。
さらに、基部80の操作摘み120は、図5に示すように、開口部31から上方に突出する。このため、操作摘み120を摘んで、C形鋼30の長手方向に沿って、基部80をスライドさせることで、後述する取付プレート70を取り付ける位置決めを行うことができる。
(C形鋼30への取付プレート70の取り付け)
つぎに、C形鋼30に取り付けた留め具10を使用して、図3、図5、図14及び図15に示すように、C形鋼30に対して取付プレート70を取り付ける。
【0050】
まず、取付プレート70の貫通孔71に、図3に示すように、ボルト60の軸部61を通し、貫通孔71から突出した軸部61を、C形鋼30の開口部31を通し、留め具10のナット90の雌ネジ部91に合わせて挿入し、ねじ込む。
ボルト60をねじ込むと、ナット90が開口部31に向かって上昇する。このとき、ナット90とカム部106,107のカム斜面106a,107aとの当接により、ナット90のフランジ部93が、図1において時計回りに回動する。
【0051】
フランジ部93は、図15に示すように、C形鋼30の中空部32の幅b2の方向に対向する左右の内側面に当接することで、回動が阻止される。
フランジ部93の回動が阻止された状態で、ナット90を強く締め込むと、ナット90が中空部32内で上昇し、開口部31の外縁に位置する内面に当接し、ナット90、C形鋼30、取付プレート70、ボルト60の頭部62の4個の金属製の部品が互いに密着し、C形鋼30に対して取付プレート70が固定される。
(第2の実施の形態)
つぎに、図17を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0052】
本実施の形態の特徴は、図17に示すように、仮止め爪200,201を基部80のナット保持部100の長辺b2の方向の両側に配設し、又、先に図1〜16を用いて説明した第1の実施
の形態のカム斜面106a,107aを有するカム部106,107を省いた点である。
第1に、仮止め爪200,201は、図17に示すように、ナット90の上端部に係合し、ナット保持部100の底との間で仮止めしている。
【0053】
第2に、第1の実施の形態のカム斜面106a,107aを有するカム部106,107を省き、ボルト60をねじ込んだ際のナット90の共回りを利用して、ナット90を回動させている。
なお、本実施の形態の説明において、先に図1〜16を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。
(第3の実施の形態)
つぎに、図18を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態の特徴は、図18(a)〜(c)に示すように、ナット90のフランジ部93の変形例を示した点にある。
【0054】
すなわち、図18(a)は、フランジ部300を、平面が八角形に形成している。同図(b)は、フランジ部300を、平面が長方形に形成している。同図(c)は、フランジ部300を、平面が平行四辺形に形成している。
なお、先に図1〜16を用いて説明した第1の実施の形態では、フランジ部93を平面が長円形に形成し、図18の本実施の形態では、平面が八角形、平面が長方形、平面が平行四辺形に形成したが、これらに限定されず、異なる長さの長辺と短辺が有る非円形であれば良い。
なお、本実施の形態の説明において、先に図1〜16を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。
(第4の実施の形態)
つぎに、図19及び図20を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0055】
本実施の形態の特徴は、図19及び図20に示すように、操作摘み400を利用して、取付プレート70を保持できるようにした点にある。
すなわち、操作摘み400の先端部を、図19及び図20に示すように、上方に向かってU字形に折り返して、プレート保持部410を形成している。
取付プレート70は、図19に示すように、プレート保持部410に差し込み、弾性を利用して挟み込むようにして保持する。プレート保持部410は、取付プレート70を保持した際に、その貫通孔71と、基部80のナット保持部100に仮止めしたナット90の雌ネジ部91との中心が上下方向に一致するに、寸法が設定されている。
【0056】
本実施の形態によれば、取付プレート70をプレート保持部410に保持した状態で、その貫通孔71とナット90の雌ネジ部91との中心の位置決めを行うことができる。
なお、本実施の形態の説明において、先に図1〜16を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0057】
10 留め具
20 瓦
30 C形鋼(構造物)
30a 縦桟 30b 横桟
31 開口部 a1 開口部の幅
32 中空部 a2 中空部の内部の幅
40 太陽電池モジュール(相手部材)
50 支持金具
60 ボルト(雄ネジ部)
61 軸部 62 頭部
70 取付プレート 71 貫通孔
80 基部
90 ナット
91 雌ネジ部 92 ナット本体
93 フランジ部
c1 フランジ部の短辺 c2 フランジ部の長辺
100 ナット保持部
b1 ナット保持部(基部)の短辺 b2 ナット保持部の長辺
101 支持穴 102,103 側壁部
104,105 仮止め爪
104a,105a 弾性片 104b,105b 突起
106,107 カム部 106a,107a カム斜面
110,111 弾性脚
120 操作摘み 130 係止爪
(第2の実施の形態)
200,201 仮止め爪
(第3の実施の形態)
300,301,302 フランジ部
(第3の実施の形態)
400 操作摘み 410 プレート保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略C字状の構造物に相手部材を固定するための留め具であって、
前記留め具は、
前記構造物の開口部から挿入する基部と、
前記基部に回動可能に支持され、内周に雌ネジ部を有したナットとからなり、
前記ナットは、
短辺が前記開口部の幅より短く、
長辺が前記開口部の幅より長く形成されており、
前記短辺が前記基部の前記短辺と一致した装着位置において、前記開口部から前記基部を挿入することにより、前記構造物内の中空部内に挿入され、
前記開口部から挿入された雄ネジ部がねじ込まれるとともに、
前記中空部内で回動することで、前記長辺が前記開口部と交差することにより、当該開口部より抜けない固定位置に至り、前記雄ネジ部を介して前記中空部内に固定され、
前記基部には、
前記ナットを前記装着位置に仮止めする仮止め爪を備えたことを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記仮止め爪は、
弾性片であることを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
前記基部と前記ナットとの間には、
前記雄ネジ部のねじ込みにより、当該雄ネジ部の軸方向に前記ナットが移動した際に、当該ナットを前記構造物の前記中空部内で回動するカム斜面を設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の留め具。
【請求項4】
前記基部の外側面に、
前記構造物の前記開口部の開口縁に係止する係止爪を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の留め具。
【請求項5】
前記基部には、
当該基部を前記構造物の前記中空部内に挿入した状態で、前記開口部に臨む操作摘みを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−163475(P2011−163475A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28217(P2010−28217)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】