説明

留置カテーテル

【課題】ワンタッチで尿道内に留置することができ、かつ、簡単に取り外すことができる留置カテーテルを提供する。
【解決手段】先端近辺に長手方向に延びる複数本のスリットを備えた可撓性を有するマレコットチューブ3と、そのマレコットチューブに沿って軸方向に移動自在に配置され、先端がマレコットチューブの先端に固定されている可撓性を有する心線6と、マレコットチューブ3の基端側に固定され、その端部から心線の基端を突出させている筒状のコネクタ2と、心線の勝手な移動を拘束するゴム体とを備えている留置カテーテル1。心線6の基端にノブ7を取り付け、コネクタ2に開口と蓋とを設けている。マレコット部16を閉じた状態でカテーテル1を尿道20に挿入し、ノブ7を手前に引くと、心線6が手前にスライドし、マレコット部16が拡張する。心線6を押し込むと、マレコット部16が閉じてカテーテル1を抜くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は留置カテーテルに関する。さらに詳しくは、動物や人体の尿道を通して膀胱まで挿入し、排尿を容易にしたり、膀胱内から採尿したり、膀胱内に投薬するためなどに用いる留置カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
犬、猫などの動物や、人体などの尿道に炎症が生じた場合などには排尿が困難になる。そこで、一時的に外部からカテーテルを尿道内に挿入し、排尿の流路を確保するなどの治療にあたっている。また、膀胱内の病気についてもカテーテルが用いられる。
【0003】
図7aは犬、猫などの動物の治療の場合を示しており、尿道51の先端からカテーテル52を挿入している状態である。符号53は膀胱、54は尿道51内に生じた炎症部である。このような動物の治療において、カテーテル52を尿道51内に留置せず、治療後にカテーテル52を抜き取ることもできる。しかし治療の都度カテーテルを挿入することは動物の負担が大きい。また尿道炎などが悪化し、カテーテル52が尿道51に入らなくなったり、別の病気にかかり、開腹手術が必要になったり死に至ることがある。そのため図7bに示すように、カテーテル52の外部に出ている部位の両側に設けた縫い付け部55を皮膚に縫合し、カテーテル52を常時尿道51内に留置させることが行われている。
【0004】
他方、人体の治療の場合は、図8に示すように、先端にバルーンを設けたカテーテル(バルーンカテーテル)62を用いて尿道61内に留置している。なお、符号63は膀胱である。カテーテル62の先端には、弾力的に膨縮自在のバルーン部64が設けられており、カテーテル62の基部には枝分かれした空気孔65を設けている。そしてこの空気孔65から空気を送気して膀胱63内に挿入したバルーン部64を拡張させ、空気孔65を閉じることにより、カテーテル62が尿道61から抜けないようにする。カテーテル62を尿道61から抜く場合には、空気孔65を開いて空気を逃がし、バルーン部64をその弾力で収縮させる。なお心臓内の電位を測定する電位カテーテルには、チューブの先端近辺に縦方向のスリットを形成したバスケット部を設け、チューブ内に通した心線の先端をチューブの先端に固着し、心線の出し入れにより多数の電極を配置したバスケット部を拡げるようにしたものが提案されている(米国特許第5255679号のFIG.7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5255679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記動物の治療においてカテーテル52の縫い付け部55を動物の皮膚に縫い付ける場合は、カテーテル52を長期間にわたって留置することは困難であり、動物のストレスも大きくなる。さらには、雄の場合においては、ペニスを包皮より露出させる必要があり、粘膜が乾燥し、別の炎症を生じ、開腹手術や死に至ることがある。他方、前記バルーンカテーテル62は、皮膚に縫い付ける必要はないが、バルーン部64がそれ自体の弾力性で収縮するので、たとえばバルーン部64の表面に尿の成分が滞積し、その弾力性が損なわれ、空気孔65を開いてもバルーン部64が収縮しなくなることがある。そのような場合は、腹腔下よりバルーン部64を強制的に破る手術を行なう必要が生ずる。
【0007】
本発明は前記従来のカテーテルの問題を解決するため、皮膚に縫い付ける必要がなく、ワンタッチで尿道内に留置することができ、しかも容易に取り外すことができる留置カテーテルを提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の留置カテーテル(請求項1)は、先端近辺に長手方向に延びる複数本のスリットを備えた可撓性を有するマレコットチューブと、そのマレコットチューブに沿って軸方向に移動自在に配置され、その先端がマレコットチューブの先端に固定されている可撓性を有する心線と、マレコットチューブの基端側に固定され、その内部に心線の基端近辺を通している筒状のコネクタと、そのコネクタに設けられる、心線の勝手な移動を拘束するストッパとを備えていることを特徴としている。
【0009】
このような留置カテーテルでは、マレコットチューブ内の液体を通すための流路とは別個に通路を設け、その通路内に心線を収容することもできるが、前記流路内に液体を通す空間を残して心線を収容するのが好ましい(請求項2)。その場合、前記ストッパを、心線が貫通する孔を備え、摩擦力で心線の移動を拘束するゴム体で構成し、そのゴム体で心線とコネクタとの間のシール作用を行わせるのが好ましい(請求項3)。ただしストッパを、コネクタに設けた心線と機械的に係合する部材で構成することもできる(請求項4)。さらに前記コネクタの側壁に、内部と外部を連通する開口部と、その開口部を開閉自在に密閉する蓋とを設けるのが好ましい(請求項5)。
【0010】
また、マレコットチューブの先端部に、造影部材やスケール(目盛り)などの挿入代を確認する手段を設けるのが好ましい(請求項6)。さらにコネクタの端部から突出した心線の基端にノブを取り付け、前記心線に、心線を基端側に引き出したときにコネクタの端面からいくらか出ている部位を残して折り取るためのスナップ部を設けるのが一層好ましい(請求項6)。その場合、コネクタの端面に、折り取った残りの心線の端部を覆うカバー部を設けるのが好ましい(請求項7)。さらに心線の基端近辺を、あらかじめ先端側と基端側とに分離しておき、それらの端部同士を、両者をその内部に通すスナップチューブによって連結し、かつ、そのスナップチューブの心線の分離点よりいくらかずれた部位に、折り取り容易なスナップ点を形成するのが一層好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の留置カテーテル(請求項1)では、片手でコネクタを保持し、他方の手でコネクタの端部から突出している心線の基端を引くと、心線の先端がマレコットチューブに固定されているため、マレコットチューブに圧縮力が加わる。そのため、マレコットチューブのスリットで分割されているテープ状の部位が座屈し、その中央部分で折れ曲がって外向きに拡がる。そしてストッパの働きにより、その状態が維持される。他方、心線の基端を先端側に押すと、マレコットチューブに引っ張り力が加わり、前記テープ状の部位が引き延ばされ、マレコット部が収縮する。
【0012】
したがってカテーテルを尿道に留置する場合は、まず、マレコットチューブを先端部が膀胱内に入るまで尿道に挿入し、ついで心線を引いてマレコット部を拡張させ、ストッパを作用させるという簡単な操作でよい。それによりマレコット部が拡張した状態が維持され、拡張したマレコット部が膀胱の内壁に引っかかり、カテーテルを尿道内に安全に留置することができる。それにより手技者の労力の低減化と、猫や犬などの動物へのストレスの軽減化を図ることができる。また、カテーテル本体を母体に対してやさしく留置することができ、治療期間の短縮、治癒率の向上を図ることができる。
【0013】
なお、留置期間中、カテーテルはコネクタの部分だけが尿道の先端に出ているだけであるので、動物がこれに噛みつくおそれが少なく、また舐めても外れることがない。カテーテルを外す場合は、心線を押すことにより、拡張していたマレコット部を強制的に収縮させることができる。そのため、その状態でカテーテルを引くだけで、尿道から簡単に抜くことができる。
【0014】
マレコットチューブの流路内に液体を通す空間を残して心線を収容した留置カテーテル(請求項2)では、流路が液体を通す空間と心線を挿通させる通路を兼ねているので、カテーテルをとくに太くする必要がなく、従来とほぼ同じ太さで構成することができ、しかも、内部空間が1本だけであるので、構成が簡単で製造が容易である。
【0015】
ストッパを心線を貫通させるゴム体で構成し、そのゴム体で心線とコネクタとの間のシール作用を行わせる留置カテーテル(請求項3)は、ゴム体の弾力性と摩擦抵抗により、心線の軸方向の移動を拘束することができる。そのため、意図的に心線を移動する場合は容易に移動させることができ、しかも心線が勝手に移動するおそれが少ない。したがってマレコットを拡張したり収縮する操作が容易で、かつ、マレコットが勝手に拡がって留置カテーテルが尿道から抜け落ちるおそれが少ない。また、ストッパがゴム体だけで構成されているので、構成が簡単で製造が容易である。さらにゴム体はコネクタと心線の間でシール作用を奏するので、別個にシール部材を設ける必要がない。なお、ゴム体によるシール作用により、留置状態での外部から雑菌などが侵入することを防止しうる。前記ストッパをコネクタに設けた心線と機械的に係合する部材で構成する場合(請求項4)は、留置カテーテルが一層確実に抜けにくくなる。
【0016】
コネクタの側壁に内部と外部を連通する開口部と、その開口部を開閉自在に密閉する蓋を設けた留置カテーテル(請求項5)では、開口部を介して膀胱からの採尿や治療薬の注入を容易に行うことができる。また留置状態では蓋で開口部を塞ぐことができるので、外部からの雑菌の浸入を防止しうる。
【0017】
またマレコットチューブの先端部に、挿入代を確認する手段を設けた留置カテーテル(請求項6)では、マレコット部が膀胱内に入っていることを充分確認してからマレコットを拡張させることができる。さらにコネクタの端部から突出した心線の基端にノブを取り付け、前記心線に、心線を基端側に引き出したときにコネクタの端面からいくらか出ている部位を残して折り取るためのスナップ部を設けた留置カテーテル(請求項7)では、ノブを引っ張ることにより、容易に心線をコネクタから引き出すことができる。さらに引き出した後、スナップ部で心線を簡単に折り取ることができ、ノブや心線の無駄な突出部を容易に除去することができる。それにより、動物がノブをかじったり舐めたりしにくくなる。さらにスナップ部で折り取ることにより、一旦抜いた留置カテーテルのマレコット部を再拡張できなくなる。そのため再使用を防ぐことができ、二次感染などの心配がなくなり、完全なディスポーザブル性を保証することができる。また、マレコットコネクタの端面に、折り取った残りの心線の端部を覆うカバー部を設けた留置カテーテル(請求項8)では、心線の基端がカバー部に覆われているので、動物が心線の基端を舐めようとしても安全であり、あるいはその基端で皮膚などが傷つくおそれが少ない。
【0018】
心線の基端近辺をあらかじめ先端側と基端側とに分離し、それらの端部同士をスナップチューブによって連結し、かつ、そのスナップチューブの特定の部位にスナップ点を形成した留置カテーテル(請求項9)では、心線の基端に曲げ方向の力を加えると、スナップチューブがスナップ点で破断し、心線を先端側と基端側に容易に分離することができる。さらに心線の分離している部位とスナップチューブのスナップ点とがずれているので、スナップチューブの破断部から突出している心線を他方のスナップチューブの空洞に挿入することができる。したがって、一旦分離したノブが付いている心線の基端側を一時的に先端側の端部に連結し、ノブを利用して心線を先端側に押すことができる。それによりマレコットを収縮させる操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカテーテルの使用状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明のカテーテルの他の使用状態を示す概略側面図である。
【図3】本発明のカテーテルの一実施形態を示す一部断面側面図である。
【図4】図4aは図3のカテーテルのコネクタ近辺を示す要部拡大縦断面図、図4bは図4aの心線の拡大断面図、図4cは図4bの要部拡大断面図、図4dは図4bの心線の分離状態を示す断面図である。
【図5】図5aは図3のカテーテルの先端部およびマレコット部を示す要部拡大断面図、図5bは図4aのV-V 線断面図、図5cは図4aのV-V 線断面図である。
【図6】図6aは図3のカテーテルのマレコット部を拡張した状態を示す側面図、図6bは図6aのVI-VI 線断面図である。
【図7】図7aは従来の動物用のカテーテルの使用状態を示す概略側面図であり、図7bはそのカテーテルの平面図である。
【図8】従来例の人体用の留置カテーテルの使用法を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3に示すカテーテル1の基部側(図面の右側)には、コネクタ2が設けられており、その先端に可撓性を有するマレコットチューブ3の基部が固着されている。コネクタ2は図4に示すように実質的に円筒状を呈しており、たとえば透明なアクリル樹脂などの合成樹脂の成形品からなる。コネクタ2の内部は空洞となっており、軸方向の両端には小孔がそれぞれ穿孔されている。コネクタ2の先端側は略円錐状に形成され、その部分にマレコットチューブ3の基部が埋め込まれて固着されている。マレコットチューブ3はたとえば透明なポリウレタン樹脂により形成されている。
【0021】
コネクタ2の内部には円柱状のシールゴム4が装着されており、このシールゴム4の中心部分には前後に貫通した貫通孔5が穿設されている。なおコネクタ4内にシールゴム4を収容するため、コネクタ2は前部2aと有底筒状の後部2bとに分けて成形し、シールゴム4を装着した後に、たとえば後部2bの前端を加熱成形するなどにより、前部2aと溶着し、一体化する。なお、ネジで螺合してもよく、接着してもよい。シールゴム4はたとえば天然ゴムで形成しうる。このシールゴム4の貫通孔5および上記マレコットチューブ3内には、可撓性を有する心線6が軸方向に移動自在に挿通されている。心線6はたとえばステンレス製のワイヤなどで構成しうる。コネクタ2の後端には、折り取った心線6の端部を覆うためのカバー部2cを形成するべく、溝(スリット)2dが形成されている。
【0022】
心線6の基部はコネクタ2の後端の孔2eより突出しており、その基端には略円柱状のノブ7が固定されている。この実施形態では、ノブ7に係合穴7aを形成し、心線6の基端に固着した係合片(アンカー)7bを挿入することにより係止させている。さらに本実施形態では、図4bに拡大して示すように、心線6を分離点Pにおいて先端側6aと基部側6bに分離し、その周囲に設けたスナップチューブ8により両者を連結している。すなわち先端側6aはスナップチューブ8の前端部に固着し、基端側6bはスナップチューブ8の後部に固着している。スナップチューブ8はたとえばステンレス製のパイプから構成しうる。さらにスナップチューブ8の周囲には、図4cに示すように、環状溝からなる折り取り容易なスナップ点9が形成されている。スナップ点9の位置は、心線6の分離点Pよりいくらか基端側にずれている。なお、先端側にずれていてもよい。
【0023】
スナップチューブ8の外径は、心線6がシールゴム4の貫通孔5に対し、スライド自在で、かつ、シールゴム4の貫通孔5の内周面が心線6の外周面を圧接する程度にシールゴム4の貫通孔5の内径よりいくらか小さくしている。それにより、両者の摩擦力により、ある程度以上の力を加えたときには心線6を軸方向に移動させることができ、しかも心線6が勝手に移動しないようにしている。それにより意図的な操作により心線を移動させて、任意の位置で止めておくことができる。同時に、心線6とコネクタ2の隙間から雑菌が侵入するのを防止している。
【0024】
図4aに戻って、コネクタ2の前方には、内部空洞と外部とを連通する開口10が設けられている。さらにこの開口10の部分に対応したコネクタ2の外周面には、環状の溝11が周設されており、その溝11に天然ゴム製のゴムリング12が装着されている。なお図5cに示すように、環状溝11の上部は平坦にされており、ゴムリング12の対応する部位を肉厚にしている。そのためゴムリング12は勝手に回動しない。ゴムリング12の下部には窓13が形成されている。このゴムリング12は、図4aのように窓13が下向きになるように回動させている状態では開口10を閉じることができ、窓13が上向きになるように回動させると、コネクタ2の開口10を開放することができる。すなわちこのゴムリング12は請求項4の蓋である。
【0025】
一方、マレコットチューブ3の先端側には、図5aに示すように、スリット15が軸方向に沿って切り込まれている。それらのスリット15は図5bに示すように、マレコットチューブ3の周方向に沿って略等間隔で3本形成している。この部分がマレコット部16である。スリット15の長さは、マレコットチューブ3の外径や長さに応じて適宜選択できるが、外径1.5mmで長さ115mm程度のマレコットチューブの場合、スリット15の長さは20mm程度である。スリット15な通常は、切り込みにより形成するので幅はない。しかし幅のあるスリット15を設けてもよい。心線6の先端にはステンレス製のチューブ状のチップ17が固着されており、このチップ17の外周面とマレコットチューブ3の先端近辺の内周面とをエポキシ系の接着剤などで接着し、さらにマレコットチューブ3の先端の空所にその接着剤18を充填している。それにより、心線6の先端部はマレコットチューブ3の先端近辺に固着される。なお、硬化した接着剤18の先端は、研磨するなどにより丸く加工しており、それにより挿入時の尿道が保護される。
【0026】
前記ステンレス製のチップ17はX線を透過するので、造影部材として利用することができない。また、ステンレス製の心線6も造影部材として使用できない。しかし心線6に被せるチップ17を白金、タングステン、金などで構成すると造影作用が高くなる。また、チップ17に代えて、コイル状のものを心線6に被せるようにしてもよい。さらにマレコットチューブ3の材料に、硫酸バリウム、次炭酸ビスマスなどの造影性のある粉末を混合したものを、チューブの先端あるいは全長に渡って用いることにより、マレコットチューブ3自体に造影作用を付与することができる。このように留置カテーテルに造影作用を付与する場合は、留置カテーテルを尿道に装着するとき、X線で膀胱内におけるチップ17の位置を確認し、マレコット部が膀胱内に充分に入っていることを確認してからマレコット部を拡張させることができる。また、図1に示すようにマレコットチューブ3の根元近辺に、スケール(目盛り)17aを印刷しておくと、図1のように尿道に挿入したとき、マレコットチューブ3の先端のおおよその位置がわかる。上記のチップ17などの造影部材やスケール17aは、請求項5における「挿入代を確認する手段」である。
【0027】
また、心線6の外径はマレコットチューブ3の内径より小さくしており、それにより図5bに示すように、マレコットチューブ3の内周面と心線6との間に空間19を設けている。この空間19はをマレコットチューブ3の先端側からコネクタ2の内部の空洞まで連続している。その空間19はカテーテル1による採尿用や投薬用の流路である。すなわちこの実施形態では、マレコットチューブ3の内部空洞は心線6を通す通路と、液体を流す流路と兼ねている。
【0028】
上記のごとく構成されるカテーテル1は、片手の指でコネクタ2を摘み、他方の手の指でノブ7を摘んで引くと、それに連動して心線6も手前にスライドする。なおノブ7を摘んだ手を静止させてコネクタ2を摘む手を押しても同じである。心線6が手前に引かれると、マレコットチューブ3の先端も手前に引かれ、圧縮力が加わる。それによりマレコット部16を構成する3本のテープ状の部分16aが座屈し、マレコット部16を図6aおよび図6bに示すように拡張させることができる。そしてマレコット部16を拡張させた状態でノブ7から手を離しても、上述したようにシールゴム4の摩擦力により、心線6はその位置で保持される。なお上記の操作は、マレコットチューブ3および心線6が滑らかに湾曲している場合でも可能である。
【0029】
上記のように心線6をコネクタ2から引き出すと、図4bに示すように、スナップチューブ8がコネクタ2の貫通孔5から出てくる。そこでスナップ点でスナップチューブを折り取る。それにより図4dに示すように、折り取った残りの部分がコネクタ2の貫通孔5から出た状態で残る。しかしその部分はカバー部2cで挟まれている溝2d内に隠れているので、邪魔にならない。その状態でカテーテル1を留置させておく。折り取った側のノブ7、心線6bおよびスナップチューブ8は保管しておく。なお残った部分では、図4dに示すように、心線6aの端部がスナップチューブ8の端部よりいくらか引っ込んでいる。
【0030】
ついでカテーテル1を取り外す場合は、保管しておいたノブ7を摘み、折り取った側の心線6bの先端を残っているスナップチューブ8の端部に嵌合させ、心線6a、6bの端面同士を当接させる。その状態でノブ7を押すと、心線6a、6bの全体がマレコットチューブ3の先端側にスライドするので、マレコット部16は図3に示すように元の状態に戻る。なお上記の戻し操作についても、マレコットチューブ3および心線6が滑らかに湾曲していても可能である。
【0031】
つぎに実際に犬、猫などの動物、人体などの尿道にカテーテル1を挿入して治療する場合について説明する。まず、マレコット部16を膨らませない状態のカテーテル1を、図1の尿道20内に先端から挿入していき、マレコット部16の先端部を膀胱21内に位置させる。ついでノブ7を手前に引いて心線6を手前にスライドさせると、膀胱21内のマレコット部16が拡張する。そのため拡張したマレコット部16がストッパとなって、マレコット部16が膀胱21から抜け出るのを防止することができ、カテーテル1を留置することができる。
【0032】
このようにカテーテル1を留置させた状態で、種々の治療を行う。たとえば図2は、コネクタ2から蓋(栓)22を外し、コネクタ2の開口10に採尿器23を入れ、膀胱21内の尿をカテーテル1の流路(空間)19を介して採尿している状態を示している。さらにコネクタ2の開口10から流路19を介して膀胱21内に治療薬を注入することもできる。
【0033】
治療が完了してカテーテル1を取り外す場合は、心線6を先端側に押すとマレコット部16が収縮して閉じる。そのため、そのままカテーテル1を手前に引くことにより、カテーテル1を尿道20から容易に抜くことができる。
【0034】
このように、上記のカテーテル1では、尿道20内に挿入して、ノブ7を手前に引くだけで、膀胱21ないし尿道20内にカテーテル1をワンタッチで留置することができる。そのため、治療期間の短縮、治癒率の向上を図ることができる。また、従来の方法と比較して、より簡単にカテーテル1を留置しうるので、手技者の労力の低減、動物へのストレスの軽減化を図ることができる。また、カテーテル1を尿道20から抜く場合も、簡単である。さらにノブ7がスナップ部で分離されているので、心線6aを再度引くことができず、マレコット部が開かない。そのため完全なディスポーザブル性も確保することができる。
【0035】
なお、上記の実施形態では、心線6をその位置で止める方法としてシールゴム4の摩擦力を用いている。そのため、シールゴム4の貫通孔5の部分でシール性が保持されることになり、カテーテル1の留置状態で外部から尿道20内に雑菌などが入るのを防止することができる。
【0036】
また、構成を簡単にするため、スナップチューブ8を用いずに、心線6に直接スナップ点を設けることもできる。また心線6を工具で折り取ったり折り曲げたりするようにしてもよい。しかしスナップチューブ8を設けたり、スナップ点9を設ける方が操作が簡単であるので好ましい。またスナップチューブ8のスナップ点として、あるいは心線6に設けるスナップ点として、あらかじめ分離しているスナップチューブの端部同士や心線の端部同士を、折り取り可能な接着剤などで接合してもよい。またスナップチューブ8を設けると、その部位の心線6の直径が大きくなるので、シールゴムによる摩擦力が安定する利点がある。
【0037】
他方、スナップチューブあるいは心線とシールゴムとの摩擦だけでは心線が移動するおそれがある場合は、たとえば心線とコレットチャックからなる機械的なストッパ機構を設ける。このストッパ機構はコネクター、心線、コレットチャックおよび締付けナットから構成されている。
【符号の説明】
【0038】
1 カテーテル
2 コネクタ
3 マレコットチューブ
4 シールゴム
5 貫通孔
6 心線
6a 先端側(心線)
6b 基端側(心線)
7 ノブ
8 スナップチューブ
P 分離点
9 スナップ点
10 開口
11 溝
12 ゴムリング
13 窓
15 スリット
16 マレコット部
17 チップ
18 接着剤
19 空間(流路)
20 尿道
21 膀胱
22 蓋
23 採尿器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端近辺に長手方向に延びる複数本のスリットを備えた可撓性を有するマレコットチューブと、そのマレコットチューブに沿って軸方向に移動自在に配置され、その先端がマレコットチューブの先端に固定されている可撓性を有する心線と、マレコットチューブの基端側に固定され、その端部から心線の基端を突出させている筒状のコネクタと、そのコネクタに設けられる、心線の勝手な移動を拘束するストッパとを備えている留置カテーテル。
【請求項2】
前記心線がマレコットチューブ内の流路内に空間を残して収容されている請求項1記載の留置カテーテル。
【請求項3】
前記ストッパが、心線が貫通する孔を備え、摩擦力で心線の移動を拘束するゴム体であり、そのゴム体が心線とコネクタとの間のシール作用を奏している請求項2記載の留置カテーテル。
【請求項4】
前記ストッパが、コネクタに設けられた、心線と機械的に係合する部材である請求項1記載の留置カテーテル。
【請求項5】
前記コネクタの側壁に、内部と外部を連通する開口部と、その開口部を開閉自在に密閉する蓋とが設けられている請求項2記載の留置カテーテル。
【請求項6】
前記マレコットチューブに、挿入代を確認する手段が設けられている請求項1記載の留置カテーテル。
【請求項7】
前記コネクタの端部から突出している心線の基端にノブが取り付けられており、かつ、前記心線に、心線を基端側に引き出したとき、コネクタの端面からいくらか出ている部位を残して折り取るためのスナップ部が設けられている請求項1記載の留置カテーテル。
【請求項8】
前記コネクタの端面に、折り取った残りの心線の端部を覆うカバー部が設けられている請求項7記載の留置カテーテル。
【請求項9】
前記心線の基端近辺が、あらかじめ先端側と基端側とに分離されると共に、それらの端部同士が、両者をその内部に通すスナップチューブによって連結されており、かつ、そのスナップチューブの心線の分離点よりいくらかずれた部位に、折り取り容易なスナップ点が形成されている請求項7記載の留置カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−195727(P2009−195727A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108516(P2009−108516)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願2000−14811(P2000−14811)の分割
【原出願日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【出願人】(500034170)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】