説明

畜糞又は汚泥を主原料とする堆肥原料のペレット堆肥の製造方法

【課題】加圧・混練した堆肥原料を細長い練り状半成品に生成し、その後これを発酵させ発酵の過程で粒状化する。
【解決手段】畜糞又は汚泥を主原料1aとして加圧・混練した水分45〜65%の未発酵の練り状堆肥原料1bを、押し出しスクリュー筒10の受圧盤に形成した小径孔とこの小径孔に連通する外側支持盤の拡径排出口からなるダイス押出口13を通してスクリュー12で練り切り回転させながら押し出すことにより、前記拡径排出口で膨張しながら接続し、且つ空気との接触により酸素が内部まで侵入する径寸法の細長い練り状半成品1cに生成する。半成品1cを空気と接触させることにより粘性、水分を低下させて短軸に破砕・分断させた後、発酵させる。練り状半成品1cの径寸法を4〜10mmに設定する。スクリュー回転軸17に、ダイス受圧盤に摺接する回転刃20を設け、原料を切断しながら受圧盤小径孔に圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜糞、汚泥などの粘性が高く水分の多い堆肥原料をペレットにして発酵させる堆肥の製造方法に関し、詳細には製造時の悪臭発生を抑制し、作物に施肥したときに障害物質が発生しない畜糞原料のペレット堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機質堆肥は施肥の際の使い勝手や、商品としての取扱いの利便性から、肥料法に基づく特定原料の有機肥料は発酵完了後にペレットに成形することが一般的になっている。
一般に、この種のペレット化堆肥は加圧・混練した堆肥原料を発酵槽において好気性菌の働きで発酵させ、発酵が完了して堆肥化した水分50%前後のものをペレタイザーなどの造粒機のダイスから個々に加圧押出してペレットに成形している。
【0003】
すなわち、有機物質を原料として悪臭の発生を抑え、良質の堆肥を生成するためには空気(酸素)を必要とする好気性菌の働きが発酵に不可欠であり、このため発酵の際には加圧・混練処理をした堆肥原料を発酵槽に堆積させ、発酵槽床面の通気孔から空気を圧送してエアレーションを行ない、また、槽内の原料を切り返して空気と接触させることで好気性菌による酸化分解で発酵させている。そして、従来の有機肥料のペレット化は、上記のようにして発酵が完了した水分50%前後の堆肥をペレタイザーのダイスを通してペレット状に押し出すことにより、肥料としての扱い易さなどの商品性を高めることを目的としている。
【0004】
このように、従来のペレット化堆肥は加圧・混練した堆肥原料を発酵槽で分解し、充分に発酵した堆肥をペレット化しているものである。従って、この場合のペレット化は発酵の進行の課題とは直接の関連性がなく、使い易さや見た目の商品性の向上を目的としたものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、畜糞(特に鶏糞)や汚泥など、もともと粘性が高く繊維質の少ない堆肥原料は、加圧・混練工程でさらに粘性を増すため大きな団塊となってそれ自体に空気が入りにくく、また、発酵槽床面の通気孔から空気を供給しても目詰りが生じ、好気性菌による酸化分解が阻害されることによって嫌気性菌による分解が支配的になる。このため、強い悪臭が発生するとともに、嫌気性菌の働きによって作物育成に有害な物質が生成される。
【0006】
また、堆肥化の発酵のための適正水分は、農林水産省の補助金を受けるための指針とされる「堆肥化設計マニュアル」の基準では60〜70%であるが、鶏糞などを主材とする堆肥原料はこの高水分では軟らかすぎて従来のペレタイザーのダイス孔を用いて押し出してもペレット化はできず、通常このような軟らかいものを成形することも求められていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、畜糞、汚泥等を主原料として加圧・混練した堆肥原料を空気との接触で酸素の侵入を許容する径寸法の細長い練り状半成品に生成した後に発酵させ、発酵による水分及び粘性の低下、衝撃による破砕の結果として粒状化するペレット堆肥の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、商品性を高める目的でペレット化するのではなく、粘性の高い原料を発酵させる目的で所定径寸法に成形し、発酵の結果としてペレット化する新規なペレット堆肥の製造方法を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のペレット堆肥の製造方法は、鶏糞などの畜糞又は汚泥を主原料として加圧・混練した水分45〜65%、好ましくは48〜60%の未発酵の練り状堆肥原料を、押し出しスクリュー筒の受圧盤に形成した小径孔とこの小径孔に連通する外側支持盤の拡径排出口からなるダイス押出口を通してスクリューで練り切り回転させながら連続的に押し出すことにより、前記拡径排出口で膨張しながら接続し、且つ空気との接触により酸素が内部まで侵入する径寸法の細長い練り状半成品に生成し、この細長練り状半成品を空気と接触させながら搬送して落下させ、落下の衝撃で長手方向に破砕・分断させた堆積原料を、発酵させることを特徴とする。
破砕・分断手段は上方からの落下に限らず、軽い衝撃を加えることで達成してもよい。
【0009】
また、好ましくは、上記ペレット堆肥の製造方法において、ダイス押出口から排出される練り状半成品の径寸法を4〜10mm、好ましくは7〜8mmに設定する。径寸法7〜8mmの練り状半成品は、発酵完了後は水分が低下して径寸法が5mm程度のペレットになる。
【0010】
さらに、好ましくは、押し出しスクリュー筒のスクリュー回転軸に、ダイス受圧盤の内面に摺接する回転刃を設け、この回転刃を受圧盤小径孔の縁辺に摺り合わせて原料を切断しながら受圧盤小径孔に圧入する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペレット堆肥の製造方法は、加圧・混練された畜糞、汚泥等を主原料とした堆肥原料が、粘性が高く高水分であっても、ダイス内側受圧盤の薄板小径孔から圧入され、外側の支持盤の拡径排出口に押し出されて膨張するので押し出しスクリュー筒の排出口から所定径寸法の細長い練り状半成品に成形されて排出される。この練り状半成品は、酸素が内部までむら無く侵入する径寸法に成形され、また、加圧・混練された堆肥原料は薄板のダイス受圧盤の小径孔内容量が一単位として練り切られて押し出され、拡径排出口で膨張しながら粘性で連続しているので細長く連なっているものの、ダイス排出口からベルトコンベアなどに放出されて搬送される過程で、温度が下がって粘性が急速に低下し、これを揚送コンベアの先端などの高い位置から発酵槽に落下させると衝撃で長手方向に短軸に折れる。折れた長さは径の長さよりも短くなることはなく、長いものでも径の2〜3倍で、この時点では長さが不揃いであるが、前記練り状半成品の径は内部まで空気が侵入する寸法(径5〜10mm)に成形されているので、その後の好気性発酵をさせるには何ら問題がない。
【0012】
発酵槽内に落下した発酵未完成の原料は粒子形状が不揃いで発酵槽内に堆積するので、粒子間に隙間が形成され空気流通がよくなり好気性菌がよく働いて悪臭を発生させずに発酵が進む。このため、発酵槽床面からのエアレーションは必ずしも必須ではなくなり、切り返しも不要となるのでコストが大幅に削減される。
【0013】
さらに、発酵が進み水分が低下し、分解により粘性物がなくなると、取扱い中の衝撃で長いものはさらに短く折れ、ペレット粒子の長さがほぼ揃うので発酵完了時には形状の面から見た商品性及び使い勝手には発酵後にペレット化したものに比較しても支障がない。
【0014】
また、ペレット化させた堆肥肥料は、内部に均一な空間がほどよく形成されているので分解による発熱温度によって内部に上昇気流が発生し、しかも発酵温度によって上昇速度が異なるため必要酸素の自動調節作用が働く。この場合、空気は発酵槽床面より自動的に吸い込まれて上昇するので送風装置を必要としない。
【0015】
押し出しペレタイザーのスクリュー回転軸に受圧盤に摺接する回転刃を設け、原料中の繊維質を回転刃で練り切りながら押し出すことにより、ダイス孔の目詰りがなくなるとともに、細長い練り状半成品のつなぎ材繊維質が切断され、発酵後の堆肥が衝撃で適切な長さのペレットに分断し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施例を添付の図面を参照して説明する。
鶏糞などの畜糞又は汚泥を主材とする粘性の強い堆肥原料1aを加圧・混練筒2に投入し、加圧・混練処理がなされる。
この処理工程に用いられる加圧・混練筒2は一般に使用されているもので、概略的には、円筒ケーシング3内に、モータ4で駆動する回転軸5に圧送スクリュー6、撹拌刃7等を固定した部材を内蔵し、投入した原料を加圧・混練して発酵に必要な温度(例えば30度)、水分(例えば45〜65%)に昇温させる。
【0017】
加圧・混練筒2から排出された加圧・混練原料1bは、通常、発酵槽に堆積させてエアレーションや切り返しを行なって発酵させ、発酵完了した堆肥を粒造機のダイス孔から押し出して個々のペレットに成形するのが通常の方法であるが、畜糞のように粘性が高く繊維質の少ない堆肥原料は加圧・混練筒で混練されると粘性がさらに増して大きな団塊になり、エアレーションや切り返しを行なっても空気が団塊内部まで侵入しない。このため、好気性菌が働かず、嫌気性菌の支配下で分解されるため、悪臭の発生が著しく、また作物障害物質を発生させる。
【0018】
このため、本発明では加圧・混練筒2で高温に加圧・混練された粘性の強い畜糞又は汚泥の加圧・混練原料1bを発酵槽に送る前に、先ず、連通路8を介してペレタイザー9に導入し、一定の形状を保つのに適正な水分45〜65%、好ましくは48〜60%に調整してスクリュー12で圧送し、ダイス14の押出口13から押し出して発酵に必要な条件を備えた径寸法の細長い練り状半成品1cに加工する。この場合、水分が高すぎると押し出せなくなり、また、形が崩れはじめて空気の通りをふさいだり、あるいは細長の練り状半成品が互いに粘着してしまう。
【0019】
ペレタイザー9はスクリュー筒10内の長手方向にモータ11で回転する送り出しスクリュー12を内蔵するとともに、スクリュー筒10の先端に所定寸法の多数の押出口13を形成したダイス14を設け、スクリュー筒10に導入した発酵未完了の前記加圧・混練原料1bをスクリュー12で圧送してダイス14の押出口13から細長い練り状半成品1cとして押し出すようになっている。
【0020】
ペレタイザー9のダイス14は、図2に示すように、内側の薄い受圧盤15と外側の厚い支持盤16をビス(図は省略)で接合してなり、ダイス14の押出口13は、内側の受圧盤15に多数の小径孔13aを穿孔するとともに、外側の支持盤16にこの小径孔13aに対応する拡径排出口13bを形成し、この小径孔13aと前記拡径排出口13bを連通させた構成になっている。
【0021】
本発明の方法におけるダイス14の排出口13bの径寸法は、ここから排出される半成品の次の発酵工程との関係できわめて重要な意味をもたせて設定されているもので、原料を所定の径に成形した後に発酵させる本発明のペレット堆肥製造方法の要件として前記排出口13bの径は重要であり、大きすぎると排出口13bから押し出される細長い練り状半成品1cの内部まで酸素が混入しにくくなって好気性菌による発酵に支障が生じ、また、小さすぎると発酵槽に落下させて堆積させた堆肥粒子1d間の通気性が阻害されて嫌気状態になってしまう。従って、本発明によるペレット堆肥の製造方法におけるダイス14の排出口13bの径寸法は、前記練り状半成品1cが空気にさらされたときに内部まで酸素がむらなく侵入し、しかも折れて堆積したペレット粒子1d間に通気性が保持される寸法に設定する。ちなみに鶏糞を主原料とする場合の径寸法は、4〜10mm、より好ましくは6〜8mm、さらに好ましくは7mmが適切である。
【0022】
かくして、ペレタイザー9に導入された畜糞又は汚泥を主材とする加圧・混練堆肥原料1bは、スクリュー筒10のスクリュー12でダイス14に圧送され、スクリュー12の回転軸17に固定した回転刃20で練り切られるようにしてダイス14の受圧盤15の小径孔13aから支持盤16の拡径排出口13bに押し出され、この拡径排出口13bで膨張しながら粘着して排出口13bの径寸法を径とする細長い練り状半成品1cとなって、ベルトコンベア等の搬送路18で搬送されて上方から発酵槽19に落下される。
【0023】
ペレタイザー9のダイス押出口13から排出された細長い練り状半成品1cは搬送路18で搬送される過程で温度が下がって粘性が急激に低下し、長手方向に折れ易くなる。これを揚送して発酵槽19の上方から落下させると長手方向に短く折れ、ペレット又は粒子1dに分断される。この場合、折れたペレット粒子1dの長さは短いものでも練り状半成品1c径より短くなることはなく、また、長いものでも練り状半成品1cの径の2〜3倍であってペレット粒子1dの長さは不揃いであるが、練り状半成品1cの径は空中の酸素が内部までむら無く侵入する寸法に設定されているので発酵には何ら支障がない。従って、長手方向に分断されたペレット粒子1dは形状そのものが酸素が内部まで浸透し、しかも分断されたペレット粒子1d間に空気通路が形成されるので、堆積しておくだけで発酵が進み、下方からの人工的な空気の圧送の必要がなく、切り返しも不要である。
ちなみに、径寸法が7mm程度の練り状半成品は発酵が完了すると粘性、水分低下により5mm程度の乾いたペレットに縮小して扱い易くなる
【0024】
分断されたペレット粒子1dは発酵が進むと分解による発熱温度で上昇気流が発生し、床面から空気がペレット粒子1dの隙間を通して吸い上げられ酸素が供給されるが、発酵温度に応じて空気の上昇速度が変わるので必要な酸素量の供給が自動的に調整される。
【0025】
発酵が完了したペレット粒子1dは発酵槽からの取出しなどのその後の取扱中に長いものはさらに分断され、最終的にはほぼ粒の揃った商品性の高いペレット堆肥として成品化される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
従来、加圧・混練した畜糞、汚泥等の堆肥原料を悪臭を発生させないでペレット堆肥化することはきわめて難しい課題とされているが、本発明は加圧・混練した粘性の高い畜糞又は汚泥堆肥原料を内部まで空気中の酸素が侵入する径寸法の練り状半成品に成形し、水分、粘性を低下させてペレット粒子に分断した後、発酵させるようにしたことにより、好気性菌による畜糞原料のペレット堆肥化を可能にした。従って、粘性の高い畜糞又は汚泥原料から悪臭や作物障害物質を発生させずに商品性の高いペレット堆肥が得られ、堆肥としての使い勝手はもちろん、コストが削減され、環境公害のない堆肥の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による堆肥製造方法の工程説明図
【図2】ペレタイザーの要部拡大断面図
【符号の説明】
【0028】
1a…堆肥原料
1b…加圧・混練原料
1c…練り状半成品
1d…ペレット粒子
2…加圧・混練筒
3…円筒ケーシング
4…モータ
5…回転軸
6…圧送スクリュー
7…撹拌刃
8…連通路
9…ペレタイザー
10…スクリュー筒
11…モータ
12…スクリュー
13…押出口
13a…小径孔
13b…拡径排出口
14…ダイス
15…受圧盤
16…支持盤
17…回転軸
18…搬送路
19…発酵槽
20…回転刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏糞などの畜糞又は汚泥を主原料として加圧・混練した水分45〜65%の未発酵の練り状堆肥原料を、押し出しスクリュー筒の受圧盤に形成した小径孔とこの小径孔に連通する外側支持盤の拡径排出口からなるダイス押出口を通してスクリューで練り切り回転させながら連続的に押し出すことにより、前記拡径排出口で膨張しながら接続し、且つ空気との接触により酸素が内部まで侵入する径寸法の細長い練り状半成品に生成し、この細長練り状半成品を空気と接触させることにより粘性、水分を低下させて短軸に破砕・分断させた後、発酵させることを特徴とするペレット堆肥の製造方法
【請求項2】
ダイス押出口から排出される練り状半成品の径寸法を4〜10mmに設定することを特徴とする請求項1記載のペレット堆肥の製造方法
【請求項3】
押し出しスクリュー筒のスクリュー回転軸に、ダイス受圧盤の内面に摺接する回転刃を設け、この回転刃を受圧盤小径孔の縁辺に摺り合わせて原料を切断しながら受圧盤小径孔に圧入することを特徴とする請求項1又は2記載のペレット堆肥の製造方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−342009(P2006−342009A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167176(P2005−167176)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(597072774)日本システム化研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】