説明

異なって発現される冠動脈疾患関連遺伝子

本発明は、その発現が冠動脈疾患の罹患と相関する遺伝子に関する。特に、本発明は、遺伝子発現の測定に基づく、冠動脈疾患の予後、診断およびモニタリング方法に関する。加えて、本発明は、冠動脈疾患の処置で使用するための化合物のスクリーニング方法、並びに冠動脈疾患の同定に使用するキットおよびアレイに関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、その発現が冠動脈疾患の罹患(prevalence)と相関する遺伝子に関する。特に、本発明は、遺伝子発現の測定に基づく、対象における冠動脈疾患の同定、予測およびモニタリング方法に関する。加えて、本発明は、冠動脈疾患の処置で使用するための化合物のスクリーニング方法、および冠動脈疾患の同定に使用するためのキットに関する。
【0002】
発明の背景
冠動脈疾患は、合衆国、ヨーロッパおよびアジアの殆どで、主要な死因である。複遺伝子性の疾患として、遺伝子発現パターンの理解は、この疾患に対する感受性の個体差を説明する助けとなり得る。
【0003】
本発明によると、冠動脈疾患は、血液と酸素を心臓に供給する冠動脈が狭くなることであると定義される。冠疾患は、通常、脂質物質およびプラークの発達に起因する(アテローム性動脈硬化)。冠動脈狭窄の結果、心臓への血流は、遅延または停止し得る。この疾患は、胸部痛(安定狭心症)、息切れ、アテローム性動脈硬化、虚血/再灌流、高血圧、再狭窄および動脈の炎症を含むがこれらに限定されるものではない症状を特徴とする。
【0004】
ゲノムの知識における革命にも関わらず、遺伝子の変異がどのように冠疾患に関連するかについての、決定的かつ再現可能な洞察は欠如している。遺伝子発現産物が、例えばmRNA、cDNAまたはタンパク質の集団全体の形態で、どのように病状に関連するかを定義することは、疾患への新しい洞察を得る機会をもたらす。
【0005】
全身的および局所的炎症は、アテローム硬化性の冠動脈疾患(CAD)に顕著な病原的役割を果たすが、対象から単離された血液、血漿または循環している白血球などのサンプルにおける発現型の変化とCADの程度との関係は、不明なままである。従って、当分野では、かかるサンプルにおける遺伝子発現パターンが、CADの存在および程度に関係するか否かを理解することへの必要性がある。
【0006】
発明の要旨
本発明は、冠動脈疾患を有する対象において、正常または非疾患状態での発現と比べて、異なって(differentially)発現される遺伝子に関する。そのようなものとして、それらは、冠動脈疾患のバイオマーカーとして使用できる。さらに、これらの同定された遺伝子は、それらの遺伝子発現産物を介して、冠動脈疾患に関与する他の遺伝子と共に作用し得る。さらに、本発明は、CADを有する対象においてその存在量が変化するタンパク質に関する。
【0007】
対象における冠動脈疾患の同定、冠動脈疾患の素因を有し得る患者の同定、および冠動脈疾患の処置および進行のモニタリングの方法が提供される。さらに提供されるのは、冠動脈疾患の処置に使用するための作用物質のスクリーニング方法である。本発明はまた、冠動脈疾患の同定およびモニタリングに使用できるキットを提供する。本発明のバイオマーカーの測定は、冠動脈疾患の診断と相関し得る情報を提供できる。
【0008】
これらのバイオマーカーは実施例に記載の通り血液から同定されるが、それらが検出され得るサンプルは血液に限定されず、血清、血漿、リンパ、尿、涙、唾液、脳脊髄液または組織などの他のタイプのサンプルで検出され得る。
【0009】
系統的かつ包括的なアプローチは、冠疾患を有する集団と有さない集団で異なって表示される、mRNAまたはタンパク質などの多数の遺伝子発現産物を同定した。これらの遺伝子発現産物には、炎症介在因子および防御メカニズムのタンパク質およびそれらをコードするmRNAが含まれる。
【0010】
8種の遺伝子(表7)、19種の遺伝子(表9)、15種の遺伝子(表10)の同時発現パターン、および/または、11種の疾患>対照および疾患で支配的なペプチドの存在量、および/または、4種の対照>疾患および対照で支配的なペプチドの存在量(表11)は、冠動脈疾患(CAD)を高度に予測するものである。従って、血液、血漿または末梢白血球の遺伝子発現パターンは、冠動脈疾患の非侵襲性のバイオマーカーであり、新しい病態生理学的洞察を導く。
【0011】
本発明のある態様では、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測する方法が提供され、それは、
(i)対象における表6から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(ii)対照または参照基準における該表6から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)該第1の値と第2の値との間に差異があるか否かを比較すること、
を含む。
【0012】
本発明の別の実施態様では、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測する方法が提供され、それは、(i)対象における表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、(ii)対照または参照基準における該表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第2の値を提供すること、(iii)該第1の値と第2の値との間に差異があるか否かを比較すること、の各段階を含む。好ましくは、対照または参照基準は、冠動脈疾患のない対象または対象群から決定する。ここで、試験されている対象における遺伝子発現レベル(第1の値)が対照または参照基準のもの(第2の値)より高いならば、そのことは冠動脈疾患の存在または予測を示すものである。
【0013】
本発明の別の態様は、対象における冠動脈疾患(CAD)の同定または予測方法を提供し、該方法は、(a)対象における表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルを決定し、第1の値を提供すること、(b)対照または参照基準における該表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルを決定し、第2の値を提供すること、(c)該第1の値と第2の値の間に差異があるか否かを比較すること、の各段階を含む。ある実施態様では、第1の値が、表11の1種またはそれ以上の疾患>対照のペプチドおよび/または疾患で支配的なペプチドについて上昇している、かつ/または、第1の値が、表11の1種またはそれ以上の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドで低下しているならば、そのことは冠動脈疾患の同定または予測である。
【0014】
本発明の別の実施態様では、対象における冠動脈疾患(CAD)の同定または予測方法が提供され、それは、段階(a)対象における表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、段階(b)対照または参照基準における該表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび該表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第2の値を提供すること、および段階(c)該第1の値と第2の値との間に差異があるか否かを決定すること、ここで、第1の値における表11の1種またはそれ以上の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのペプチドレベルの上昇、および/または、第1の値における表11の1種またはそれ以上の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのペプチドレベルの低下、および、第1の値における表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの上昇は、冠動脈疾患の同定または予測である、を含む。
【0015】
本発明の他の実施態様では、冠動脈疾患の存在の予測は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%の確率(probability)である。
【0016】
本発明の別の実施態様では、遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドレベルは、絶対量(例えば、ug/ml)または相対量(例えば、相対的シグナル強度)として表現し得、一方のサンプルにおいて、他方のサンプルと比較して遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドレベルの数倍の上昇があり得る。本発明の好ましい実施態様では、第1の値に第2の値と比較して少なくとも20%大きい差異がある。
【0017】
他の本発明の好ましい実施態様では、以下の遺伝子群:
(i)受託コードで:BG537190、L37033、AL581768、AF055000、NM025241、AF151074、AF279372およびBF432478(表6)、または、
(ii)配列番号で:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8(表7)
から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。さらなる好ましい実施態様では、表7から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。他の好ましい実施態様では、少なくとも表7の配列番号1に相当する遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。また別の好ましい実施態様では、表7から選択される少なくとも2種ないし8種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましくは、表7の2種、3種、4種、5種、6種および/または7種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表7から選択される8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。
【0018】
本発明の別の実施態様では、表9のPMS2L5(配列番号9)、RXRA(配列番号10)、GCN5L1(配列番号11)、CABIN1(配列番号12)、LGALS9(配列番号13)、CEBPA(配列番号14)、LRRN4(配列番号15)、STXBP2(配列番号16)、SH3BP2(配列番号17)、RNF24(配列番号18)、PLAUR(配列番号19)、RIS1(配列番号20)、ADD1(配列番号21)、GPSM3(配列番号22)、BC002942(配列番号23)、TNFRSF5(配列番号24)、N4BP1(配列番号25)、FLJ12438(配列番号26)およびMMP24(配列番号27)からなる遺伝子群から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましい実施態様では、表9のPMS2L5(配列番号9)および/またはRNF24(配列番号18)に相当する少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。また別の好ましい実施態様では、表9から選択される少なくとも2種ないし19種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましくは、表9の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種および/または18種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表9から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より一層好ましい実施態様では、表9から選択される19種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。
【0019】
さらなる実施態様では、表10のPTP4A1(配列番号28)、PAFAH1B1(配列番号29)、SOX4(配列番号30)、ASNA1(配列番号31)、MAN2A2(配列番号32)、NFYC(配列番号33)、NOTCH2(配列番号34)、HDAC5(配列番号35)、HCFC1(配列番号36)、NFX1(配列番号37)、CRSP2(配列番号38)、ICAM1(配列番号39)、PSG3(配列番号40)、STC2(配列番号41)およびSEMA3C(配列番号42)からなる遺伝子群から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましくは、表10のPTP4A1(配列番号28)および/またはMAN2A2(配列番号32)に相当する遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より好ましくは、表10から選択される少なくとも2種ないし15種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましくは、表10の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種および/または14種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より一層好ましい実施態様では、表10から選択される15種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。
【0020】
本発明の別の実施態様によると、表7の遺伝子から選択される少なくとも1種の遺伝子および/または表9の少なくとも1種の遺伝子および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。別の実施態様では、表9の遺伝子から選択される少なくとも1種の遺伝子および表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましくは、表7の2種、3種、4種、5種、6種または7種の遺伝子の遺伝子発現レベル、および/または、表9の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種または18種の遺伝子の遺伝子発現レベル、および/または、表10の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種または14種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表7および/または表9および/または表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より一層好ましい実施態様では、表7および/または表9および/または表10から選択される全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。2種またはそれ以上の遺伝子発現レベルの決定は、別々にまたは連続的に実施し得る。
【0021】
他の本発明の好ましい実施態様では、表11の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種および/または9種の疾患>対照のペプチドのレベルおよび/または2種の疾患で支配的なペプチドのレベル、および/または、2種または3種の対照>疾患のペプチドおよび/または対照で支配的なペプチドのレベルを決定する。最も好ましくは、表11の複数または全ての疾患>対照のペプチドおよび/または全ての疾患で支配的なペプチドおよび/または全ての対照>疾患のペプチドおよび/または全ての対照で支配的なペプチドのレベルを決定する。最も好ましい実施態様では、該ペプチドレベルは、血液、血漿または血清サンプルで測定する。2種またはそれ以上の遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドレベルの決定は、別々にまたは連続的に実施し得る。
【0022】
本発明の別の好ましい実施態様では、表6の遺伝子から選択される少なくとも5種、10種、15種、20種、25種、30種、40種、50種、60種、70種、または、少なくとも80種、90種、100種、または、少なくとも110種、120種、140または150種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。別の実施態様では、表6から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、さらなる実施態様では、表6の160種全ての遺伝子の発現レベルを決定する。
【0023】
本発明によると、遺伝子発現レベルの決定は、タンパク質発現産物の測定を含み、該タンパク質発現産物の検出は、そのタンパク質に特異的に結合する抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを使用することにより行い得る。
【0024】
本発明の別の実施態様では、遺伝子発現レベルまたはペプチドレベルの決定は、ペプチドをコードする遺伝子の転写されたポリヌクレオチドの遺伝子発現を測定することを含み、転写されたポリヌクレオチドは、mRNAまたはcDNAであり得る。従って、発現レベルは、マイクロアレイ分析、ノザンブロット分析、逆転写PCRまたはRT−PCRにより検出し得る。
【0025】
本発明のさらなる態様では、遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドレベルは、血液、血清、血漿、リンパ、尿、涙、唾液、脳脊髄液、白血球サンプルまたは組織サンプルの群から選択されるサンプルにおいて、エクスビボで測定し得る。
【0026】
本発明のまた別の実施態様では、CAD指数を測定し得、23ないし100のCAD指数は、冠動脈疾患の存在する確率の指標である。
【0027】
本発明の他の態様では、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前後にモニタリングする方法が提供され、それは、(i)該対象における表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、(ii)同じ遺伝子の遺伝子発現レベルを処置後に決定し、第2の値を提供すること、および(iii)処置前および処置後の該対象の遺伝子発現レベルにおける差異を比較すること、を含む。本発明の別の態様は、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前、間および/または後でモニタリングする方法を提供し、それは、段階(i)該対象における表9または表10の少なくとも1種の遺伝子遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、段階(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、処置の間および/または後に決定し、第2の値を提供すること、および(iii)第1の値を第2の値と比較すること、を含む。別の実施態様は、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前および間/後にモニタリングする方法を提供し、それは、表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現の分析をベースとする。本発明のさらなる実施態様は、該方法における、表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルの決定の使用に関する。なおさらなる本発明の実施態様は、表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの決定をベースとする、かかる方法を提供する。
【0028】
本発明のある実施態様では、対象のモニタリング方法は、さらに、(iv)遺伝子発現レベルの差異が、該対象における冠動脈疾患の処置の効力に対応することを決定することを含む。本発明の好ましい実施態様では、遺伝子発現レベルが低下するとき、処置に対する正の応答を測定する。別の好ましい実施態様では、表11の1種またはそれ以上の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドについての第2の値のペプチドレベルの低下;および/または、表11の1種またはそれ以上の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドについての第2の値のペプチドレベルの上昇、および/または第2の値における表6または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの低下は、処置に対する正の応答を示すものである。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも配列番号1の遺伝子発現レベルを決定する。本発明の別の好ましい実施態様では、表7の複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。本発明の最も好ましい実施態様では、表7に列挙する8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。他の本発明の好ましい実施態様では、表11の1種またはそれ以上のペプチドおよび/または表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の様々な組合せを、さらに上記したように決定する。
【0030】
本発明の別の態様では、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法が提供され、それは、
(i)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点で決定し、第1の値を提供すること、
(ii)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、
(iii)第1の値の遺伝子発現レベルの第2の値に対する差異を比較すること、ここで、第2の値におけるより高い遺伝子発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである、を含む。本発明の別の実施態様は、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法を提供し、それは、(i)表9または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点で決定し、第1の値を提供すること、(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、および(iii)第1の値の遺伝子発現レベルの第2の値に対する差異を決定すること、ここで、第2の値におけるより高い遺伝子発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである、の各段階を含む。さらなる実施態様では、該方法は、表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの決定をベースとする。本発明の好ましい実施態様では、第2の値におけるより低い遺伝子発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの低下を示すものである。なおさらなる本発明の実施態様は、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法を提供し、それは、段階(i)表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび/または表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点で決定し、第1の値を提供すること、段階(ii)(i)と同じ遺伝子の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、および段階(iii)第1の値の1種またはそれ以上のペプチドおよび遺伝子発現のレベルの第2の値に対する差異を決定すること、ここで、第2の値における表11の1種またはそれ以上の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのより高いレベル、または、対照>疾患のペプチドまたは対照で支配的なペプチドのより低いレベル、および/または、第2の値における表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子のより高い発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである。
【0031】
本発明のまた別の態様では、冠動脈疾患の処置で使用するための候補作用物質のスクリーニング方法が提供され、それは、
(i)表6または表7から選択される遺伝子を発現する能力のある細胞を、候補作用物質とエクスビボで接触させること、
(ii)該表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(iii)同じ表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、
(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、遺伝子発現レベルの差異は、作用物質が冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有することを示すものである、を含む。本発明の別の態様は、冠動脈疾患の処置で使用するための候補作用物質のスクリーニング方法を提供し、該方法は、(i)表7および/または表9および/または表10から選択される遺伝子を発現する能力のある細胞または細胞のサンプルを、候補作用物質とエクスビボで接触させること、(ii)該表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、(iii)同じ表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下の細胞または細胞のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、遺伝子発現レベルの差異は、作用物質が冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有することを示すものである、の各段階を含む。本発明の別の実施態様は、以下の各段階(i)表11から選択される少なくとも1種のペプチドを産生する能力のある、および/または、表6または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子を発現する能力のある細胞または細胞のサンプルを、候補作用物質とエクスビボで接触させること、(ii)(i)の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび/または(i)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、(iii)(i)の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび/または(i)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下の細胞または細胞のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび/または遺伝子発現レベルの差異は、作用物質が冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有することを示すものである、を提供する。好ましくは、第1の値における少なくとも1種の表11の疾患>対照のペプチドおよび/または疾患で支配的なペプチドの低下、および/または第1の値における少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドの上昇、および/または、第1の値における表6または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の低下は、作用物質が冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有することを示すものである。
【0032】
本発明の好ましい実施態様では、候補作用物質の存在下で、遺伝子発現レベルの低下がある。また別の好ましい実施態様では、少なくとも配列番号1の遺伝子発現レベルの低下を測定し得る。さらなる好ましい実施態様では、表7から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルの低下を測定できる。最も好ましい実施態様では、表7から選択される8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルの低下を測定し得る。別の好ましい実施態様では、少なくとも表9の配列番号9および/または少なくとも表10の配列番号28の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましくは、複数の表11のペプチドのレベルおよび/または表7および/または表9および/または表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現のレベルを測定する。
【0033】
本発明の別の態様では、冠動脈疾患の処置または予防方法が提供される。それは、表6または表7の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む。本発明の別の態様では、冠動脈疾患の処置または予防方法が提供され、該方法は、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む。さらに提供されるのは、冠動脈疾患の処置または予防方法であって、それは、表11の少なくとも1種の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのレベルの低下、および/または、少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの上昇、および/または、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性の低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む。好ましい実施態様では、該作用物質は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、リボザイム、低分子、抗体または抗体フラグメントからなる群から選択される。
【0034】
本発明のまた別の態様では、冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造方法が提供され、それは、表6または表7の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる作用物質の有効量を含む。
【0035】
本発明の別の態様は、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる有効量の作用物質を含む物質の冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造における使用に関する。別の態様は、表11の少なくとも1種の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのレベルの低下、および/または、少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの上昇、および/または、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性の低下を誘導できる有効量の作用物質を含む物質の、冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造における使用に関する。
【0036】
他の本発明の好ましい実施態様では、表11のペプチドのレベルおよび取合せ/組合せ、および/または、表6および/または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の遺伝子発現レベルおよび取合せを決定する。
【0037】
本発明により提供される、候補作用物質のスクリーニング方法、冠動脈疾患の進行または重篤さのモニタリング方法、冠動脈疾患を有すると同定された対象の処置の前後のモニタリング方法、冠動脈疾患の処置または予防方法、または冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造方法では、ペプチドまたは遺伝子発現のレベルを、冠動脈疾患の素因を同定または予測する方法についてさらに上記した通り、ペプチドまたは遺伝子の取合せ/組合せについて決定し得る。従って、表7の2種、3種、4種、5種、6種または7種の遺伝子の遺伝子発現レベル、および/または表9の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種または18種の遺伝子の遺伝子発現レベル、および/または表10の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種または14種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表6または表7および/または表9および/または表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より一層好ましい実施態様では、表6または表7および/または表9および/または10から選択される全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。他の本発明の好ましい実施態様では、表11の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種または9種の疾患>対照のペプチドのレベルおよび/または2種の疾患で支配的なペプチドのレベル、および/または、2種または3種の対照>疾患のペプチドのレベルおよび/または対照で支配的なペプチドを決定する。最も好ましくは、表11の全ての疾患>対照のペプチドおよび/または全ての疾患で支配的なペプチドおよび/または全ての対照>疾患のペプチドおよび/または全ての対照で支配的なペプチドのレベルを決定する。さらなる実施態様は、複数または全ての該表11のペプチドおよび/または表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子のペプチドまたは遺伝子発現のレベルを決定することを提供する。
【0038】
本発明のさらなる態様では、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測するためのキットが提供され、それは、(i)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための指示書、および(ii)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準の遺伝子発現レベル、を含む。別の態様では、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測するためのキットが提供され、該キットは、(i)表6または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための指示書、(ii)表6または表7および/または表9および/または表10から選択される(i)の遺伝子の、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準の遺伝子発現レベルを含む。ある実施態様では、キットはさらに、表6および/または表7、および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する能力のある抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含有する。さらに、本発明は、対象における冠動脈疾患を同定または予測するためのキットに関し、それは、(a)表11の少なくとも1種のペプチドのペプチドレベルを決定するための指示書、および(b)表11の少なくとも1種のペプチドの、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準のペプチドレベル、を含む。好ましい実施態様では、キットはさらに、(c)該表11の少なくとも1種のペプチドに結合する抗体、を含む。本発明の別の実施態様は、対象における冠動脈疾患を同定または予測するためのキットを提供し、それは、(a)表11の少なくとも1種のペプチドのペプチドレベルを決定するための、そして、表6または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための、指示書、および(b)表11の少なくとも1種のペプチドの、そして表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準のペプチドレベル、および、場合によりまた(c)該表11の少なくとも1種のペプチドに結合する抗体、および、表6または表7、および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子にコードされるポリペプチドに結合する能力のある、さらなる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメント、を含む。本発明のさらなる実施態様では、キットを本発明の方法のいずれかで使用し得る。
【0039】
図面の簡単な説明
図1は、r=0.764(p<0.001)で回帰の信頼範囲95%および予測区間95%を含む予測モデルをもたらす、t−スコア対CAD指数の二次多項式回帰分析を図解し(A)、8種の予測性(predictor)遺伝子に関わるモデル1の予測されるCAD指数対CAD指数(B)を図解する。
【0040】
図2は、3つの異なるコホートの別々のPLS分析についての各遺伝子の射影に重要な変数(Variable Importance in the Projection)(VIP)を、全対象を含むPLS分析と比較したものを図解する。表示されているのは、最もVIPが高い24種の遺伝子である。曲線は、最初の8種の遺伝子について急勾配の減少を示す;その後、減少は幾分平坦になり、ほぼ直線状である。
【0041】
図3は、本研究に参加した222人の対象全員に適用した、8種の最も重要な予測性遺伝子を含む最終的PLS分析を図解する。対象は、彼らのCAD指数により順序付けられ、狭窄の重篤さに応じて23−100のCAD指数を有する。モデルの予測力をより良好に立証するために、CAD指数をt−スコアに重ね合わせる。
【0042】
図4は、19種の予測性遺伝子に関わるモデル2(A)および15種の予測性遺伝子に関わるモデル3(B)の、予測されたCAD指数対CAD指数を図解する。
【0043】
発明の詳細な説明
別に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、当業者に本発明で使用される多くの用語の一般的定義を提供する: Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991); および Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用するとき、以下の用語は、断りの無い限り、それらに与えられた意味を有する。
【0044】
本発明の文脈における「バイオマーカー」は、冠動脈疾患を有する対象から取られたサンプルにおいて、対照の対象(例えば、陰性の診断または検出不可能な冠動脈疾患の者、正常または健康な対象)から取られた比較可能なサンプルと比較して異なって発現される遺伝子および遺伝子発現産物(即ち、タンパク質またはポリペプチド、mRNA)を表す。
【0045】
本発明の「タンパク質またはポリペプチドまたはペプチド」は、その任意のフラグメント、特に、免疫学的に検出可能なフラグメントを含むことを企図している。当業者は、血管の損傷の間に損なわれた心臓の細胞から放出されるタンパク質は、かかるフラグメントに分解または切断され得ることを認識するであろう。加えて、ある種のタンパク質またはポリペプチドは、不活性形態で合成され、その後タンパク質分解により活性化され得る。そのような特定のタンパク質のフラグメントを、そのタンパク質自体の代用物として検出し得る。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「サンプル」は、同定、診断、予測またはモニタリングのために得られた対象由来のサンプルを表す。本発明のある種の態様では、かかるサンプルは、進行中の状態または処置法の冠動脈疾患に対する効果の成果を決定するために入手し得る。好ましい試験サンプルには、血液、血清、血漿、リンパ、尿、涙、唾液、脳脊髄液、白血球または組織サンプルが含まれる。加えて、当業者は、いくつかの試験サンプルは、分画または精製操作、例えば、全血の血清または血漿成分への分離の後に、より容易に分析されることを了解するであろう。
【0047】
「遺伝子発現レベル」または「ペプチドレベル」の差異は、相対的差異である。例えば、対照対象または参照基準と比較した、冠動脈疾患を有する対象から採取したサンプルの遺伝子発現レベルの差異であり得る。比較は、冠動脈疾患のリスクのある対象と、所定の症状がないとわかっている対象、即ち、「正常」または「対照」の、遺伝子発現レベル間で行うことができる。あるいは、比較は、冠動脈疾患を患っていない正常な固体の集団で見出される平均レベルなどの、良好な成果(例えば、冠動脈疾患がないこと)に伴うとわかっている「参照基準」に対して行うことができる。本発明によると、対比は、遺伝子発現レベルと、対象の冠動脈疾患を発症する同定または素因との間で行うことができる。
【0048】
試験されているサンプルに存在する遺伝子発現レベルまたはタンパク質/ペプチドレベルは、絶対量(例えば、μg/ml)または相対量(例えば、相対的シグナル強度)であり得る。
【0049】
遺伝子発現量が他方のサンプルのポリペプチド量と統計的に有意に異なるならば、2つのサンプル間に差異が存在する。例えば、ポリペプチド量が、他方のサンプルに存在するものより、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約400%、少なくとも約600%、少なくとも約800%または少なくとも約1000%多く存在するならば、2つのサンプル間の遺伝子発現またはタンパク質/ペプチドレベルに差異がある。
【0050】
冠動脈疾患の素因の同定または予測は、診断技法と考えてもよい。診断方法は、それらの感度および特異性において異なる。当業者はしばしば、例えば1種またはそれ以上の診断指示物質をベースとして診断を行い、本発明では、これらは表6および/または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の発現レベル、および/または表11のペプチドのレベルである。存在、非存在、またはその量は、冠動脈疾患の存在、重篤さ、または非存在を示すものである。
【0051】
表6および/または表7および/または表9および/または表10の1種またはそれ以上遺伝子の遺伝子発現、および/または表11のペプチドレベルの多重の決定、並びに、遺伝子発現またはペプチド存在量の経時変化の決定を成すことができ、それは、疾患の進行または疾患の処置をモニターするのに使用できる。例えば、遺伝子発現/ペプチド存在量を、第1の時間に決定し、再度第2の時間に決定し得る。かかる態様では、第1の時間から第2の時間への遺伝子発現および/またはペプチドレベルの上昇は、冠動脈疾患の診断であり得る。同様に、第1の時間から第2の時間への遺伝子発現および/またはペプチドレベルの低下は、特定の冠動脈疾患の処置タイプに対する対象の応答性を示すものであり得る。さらに、1種またはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現の変化は、冠動脈疾患の重篤さおよび将来的な有害事象に関連し得る。
【0052】
本発明のある実施態様では、表6の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。好ましい実施態様では、少なくとも配列番号1(表7)の遺伝子発現レベルを決定する。別の好ましい実施態様では、表7の複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表7の8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。他の好ましい実施態様では、少なくとも配列番号9(表9)および/または配列番号28(表10)の遺伝子発現レベルを決定する。また他の好ましい実施態様では、表7の2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種の遺伝子の遺伝子発現レベルおよび/またはおよび/または、表9の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種または19種の遺伝子の遺伝子発現レベル、および/または、表10の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種または15種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。最も好ましい実施態様では、表6または表7および/または表9および/または表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。より一層好ましい実施態様では、表6または表7および/または表9および/または10から選択される全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する。他の本発明の好ましい実施態様では、表11の2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種または9種の疾患>対照のペプチドのレベルおよび/または2種の疾患で支配的なペプチドのレベル、および/または、2種または3種の対照>疾患のペプチドおよび/または対照で支配的なペプチドのレベルを決定する。最も好ましくは、表11の全ての疾患>対照のペプチドおよび/または全ての疾患で支配的なペプチドおよび/または全ての対照>疾患のペプチドおよび/または全ての対照で支配的なペプチドのレベルを決定する。ペプチドレベルは、場合により、表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の遺伝子発現レベルと共に、同時に、または連続的に決定し得る。さらなる実施態様は、複数または全ての該表11のペプチドおよび/または表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子のペプチドまたは遺伝子発現のレベルが決定されることを提供する。
【0053】
当業者は、ある種の態様では、遺伝子発現の比較測定は、同じ遺伝子を用いて複数の時点で行うが、所定の遺伝子を一時点で、第2の遺伝子を第2の時点で測定することもでき、これらの遺伝子の遺伝子発現の比較が診断情報を提供し得るか、または疾患の進行をモニターし得ることを理解するであろう。
【0054】
本発明の好ましい態様では、表7および/または表9および/または表10の1種またはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現および/または表11のペプチドレベルを、異なる時点で比較して測定し得る。
【0055】
本明細書で使用されるとき、語句「冠動脈疾患の存在の確率」は、それにより当業者が対象の状態を予測できる方法を表す。それは、冠動脈疾患を100%の精度で予測する能力を表さない。むしろ、当業者は、冠動脈疾患が存在するか、または発症する確率の上昇を表すと理解するであろう。例えば、冠動脈疾患は、CADに冒されていないかまたは素因のない対象などの対照または参照基準と比較したとき、表6および/または表7および/または表9および/または表10の高レベルの遺伝子発現、および/または表11の疾患>対照のペプチドおよび/または疾患で支配的なペプチドのレベルの上昇、および/または表11の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの低下のある対象で、起こる見込みが高い。本発明のある態様では、冠動脈疾患が存在する確率は、約50%の見込み、約60%の見込み、約75%の見込み、約90%の見込み、および約95%の見込みである。用語「約」は、この文脈では+/−1%を表す。
【0056】
当業者は、特定の遺伝子を冠動脈疾患の素因に関連付けることは、統計的分析であることを理解するであろう。加えて、基底レベルからの遺伝子発現および/またはペプチドレベルの変化は、患者の予後を反映するものであり得、遺伝子発現の変化の度合いは、有害事象の重篤さに関連付け得る。統計的有意さは、しばしば2つまたはそれ以上の集団を比較し、信頼区間および/またはp値を決定することにより決定される。本発明の好ましい信頼区間は、90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%および99.99%であり、一方好ましいp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0001である。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、対象における冠動脈疾患を同定するためのキットに関する。これらのキットは、対象のサンプルの遺伝子発現の測定および/またはペプチドレベルの決定のための器具および試薬、並びにアッセイの実施および結果の解釈のための指示書を含む。かかるキットは、好ましくは、1回またはそれ以上のかかる決定を実施するのに十分な試薬を含有する。
【0058】
本発明によるアッセイの「感度」は、陽性と試験される疾患のある個体(冠動脈疾患のある者)の割合(「真の陽性」の割合)である。アッセイにより検出されない疾患のある個体は、「偽陰性」である。疾患がなく、かつアッセイで陰性と試験される対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1から擬陽性率を引いたものであり、ここで、「擬陽性率」は、陽性と試験される疾患のない者の割合として定義される。ある特定の診断方法は、状態の決定的な診断を提供し得ないが、その方法が診断の助けとなる肯定的な指示を提供すれば十分である。
【0059】
遺伝子発現の測定
本発明の遺伝子発現の検出および分析並びにペプチドレベルの測定のために、多数の方法および器具が当業者に周知である。用語「遺伝子発現」は、mRNA、cDNAを含むがこれらに限定されるものではない特定の遺伝子、または、特定の遺伝子のポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質発現産物の、存在または量を表す。本発明の好ましい態様では、表6および/または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の遺伝子発現および/または表11のペプチドのレベルを決定する。
【0060】
本発明のある実施態様では、RNAレベルの測定により遺伝子発現を決定する。遺伝子発現は、PCRをベースとするアッセイを使用して検出し得る。あるいは、本発明の他の態様では、逆転写PCR(RT−PCR)を使用してRNAの発現を検出する。RT−PCRでは、逆転写酵素を使用してRNAを酵素的にcDNAに変換する。次いで、cDNAをPCR反応のテンプレートとして使用する。PCR産物は、ゲル電気泳動およびDNA特異的染料による染色または標識化プローブへのハイブリダイゼーションを含むがこれらに限定されるものではない、任意の適する方法により検出できる。本発明のまた別の態様では、標準化した競合テンプレートの混合物を用いて、定量的RT−PCRを利用できる。
【0061】
本発明の別の実施態様では、ハイブリダイゼーションアッセイを使用して遺伝子発現を検出する。ハイブリダイゼーションアッセイでは、サンプル由来の核酸が、相補的核酸分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブ、にハイブリダイズする能力をベースとして、バイオマーカーの有無を決定する。様々なハイブリダイゼーションアッセイが利用可能である。本発明のいくつかの実施態様では、関心のある配列へのプローブのハイブリダイゼーションを、結合したプローブを可視化することにより、例えば、ノザンまたはサザンアッセイにより、直接検出する。これらのアッセイでは、DNA(サザン)またはRNA(ノザン)を単離する。次いで、DNAまたはRNAを、ゲノム中でまれに切断し、アッセイするマーカーのいずれかの近くでは切断しない、一連の制限酵素で切断する。次いで、DNAまたはRNAを例えばアガロースゲル上で分離し、メンブレンに転写する。例えば放射性ヌクレオチドの導入により標識化したプローブまたはプローブ群を、低−中程度−または高−ストリンジェンシー(stringency)条件下で、メンブレンに接触させる。結合していないプローブを除去し、標識化プローブの可視化により結合の存在を検出する。本発明の別の実施態様では、表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子および/または表11のペプチドをコードする遺伝子について、遺伝子発現を決定する。
【0062】
本発明のまた他の実施態様では、ポリペプチドの遺伝子発現産物の測定により、遺伝子発現を決定する。本発明の好ましい態様では、表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の1つにコードされる1種またはそれ以上のポリペプチドの量、および/または表11のペプチドの量を同定することにより、遺伝子発現を測定する。本発明は、遺伝子発現を検出または測定する方法により限定されない。
【0063】
表6または表7および/または表9および/または表10の遺伝子の1つによりコードされるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドの発現産物、および/または表11のペプチドは、適する方法により検出し得る。サンプル中のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関して、免疫アッセイの器具および方法がしばしば使用される。これらの器具および方法は、関心のある被験物の存在または量に関連するシグナルを生成させるために、様々なサンドイッチ、競合、または非競合のアッセイ様式で、標識化分子を利用できる。加えて、バイオセンサーおよび光学的免疫アッセイなどのある種の方法および器具を用いて、標識化分子を必要とせずに、被験物の存在または量を決定し得る。
【0064】
タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドの存在または量は、一般的に、特異的抗体を使用し、特異的結合を検出して決定する。例えば酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、競合結合アッセイなどの、任意の適する免疫アッセイを利用し得る。抗体のタンパク質またはポリペプチドへの特異的免疫学的結合は、直接または間接的に検出できる。直接標識には、抗体に結合した、蛍光または発光タグ、金属、染料、放射性核種などが含まれる。間接標識には、アルカリ性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの、当分野で周知の様々な酵素が含まれる。
【0065】
タンパク質またはポリペプチドに特異的な固定抗体の使用も、本発明により企図されている。磁気またはクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイプレート(マイクロタイターウェルなど)の表面、固体基板材料片(プラスチック、ナイロン、紙など)などの、様々な固体支持体に抗体を固定できる。抗体または複数の抗体を固体支持体上にアレイで被覆することにより、アッセイ細片を調製できる。次いで、この細片を、試験サンプルに浸し、次いで洗浄および検出段階を介して迅速に加工し、着色スポットなどの測定可能なシグナルを生成させることができる。
【0066】
本発明の複数の遺伝子および/またはペプチドの分析は、1つの試験サンプルで、別々または同時に実行し得る。加えて、当業者は、同じ個体からの複数のサンプル(例えば、連続的な時点で)を試験する価値を認識するであろう。かかる連続サンプルの試験は、経時的な遺伝子発現および/またはペプチドレベルの変化の同定を可能にする。遺伝子発現レベルの上昇または低下、並びに遺伝子発現および/またはペプチドレベルの変化のないことは、患者の状態についての有用な情報を提供でき、これには、事象発生からの概算時間の同定、回収可能なサンプルの存在および量、薬物治療の適切さ、再灌流または症状の回復により示される様々な治療の有効性、様々なタイプの冠動脈疾患の分別、事象の重篤さの同定、疾患の重篤さの同定、および将来的事象のリスクを含む患者の結果の同定が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
上記で言及した遺伝子を含むパネルを構築し、冠動脈疾患の診断または予後および冠動脈疾患を有する対象の管理に関する関連情報を提供し得る。かかるパネルは、好ましくは表7および/または表9および/または表10の配列および/または表11のペプチドを使用して構築できる。感度または特異性を最適化するために、単一の遺伝子またはより大きい遺伝子のパネルを含む遺伝子のサブセットの分析は、単独で、または単一のペプチドまたはペプチドのサブセットの分析と組み合わせて、当業者により実行できる。
【0068】
遺伝子発現の分析および/またはペプチドレベルの決定は、同様に様々な物理的様式で実行できる。例えば、マイクロタイタープレートの使用または自動化により、高処理量形式での多数の試験サンプルの処理を助長し得る。
【0069】
本発明の別の態様では、遺伝子産物、例えばcDNA、mRNA、cRNA、ポリペプチドおよびそれらのフラグメントに配列において対応するプローブが、わかっている位置で特異的にハイブリダイズまたは結合できるアレイが提供される。本発明のある実施態様では、アレイは、各位置がある遺伝子によりコードされる産物(例えば、タンパク質またはRNA)、好ましくは表7および/または表9および/または表10に列挙した遺伝子および/または表11に列挙したペプチドの独立した結合部位を表す、マトリックスである。本発明の別の態様では、「結合部位」、以後「部位」は、特定の同族cDNAが特異的にハイブリダイズできる核酸または核酸類似体である。結合部位の核酸または類似体は、例えば、合成オリゴマー、全長cDNA、全長より短いcDNAまたは遺伝子フラグメントであり得る。
【0070】
別の態様では、本発明は、遺伝子発現および/またはペプチドレベルの分析用のキットを提供する。かかるキットは、好ましくは、少なくとも1つの試験サンプルの分析用の器具および試薬、並びにアッセイを実施するための指示書を含む。場合により、キットは、遺伝子発現および/またはペプチド量を対象における冠動脈疾患の診断または予後に変換するための1種またはそれ以上の手段を含有し得る。対象の遺伝子発現パターンの対照または参照基準との比較は、対象が冠動脈疾患を有するか否かを示すであろう。
【0071】
本発明のある実施態様では、キットは、少なくとも1種の遺伝子、好ましくは表7および/または表9および/または表10からのもの、および/または少なくとも1種の表11のペプチドに特異的な抗体を含有する。他の実施態様では、キットは、核酸の検出に特異的な試薬、例えばオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、を含有する。好ましい実施態様では、キットは、検出アッセイを実施するために必要な全ての成分を含有し、これには、全ての対照並びにアッセイの実施および結果の解析のための指示書が含まれる。本発明のある実施態様では、キットは、インビトロ診断アッセイおよび/または医薬または食品を標識するために、環境保護庁または米国食品医薬品局(FDA)により要求される使用意図の表示を含む指示書を含有する。
【0072】
本発明の別の態様では、冠動脈疾患の処置で使用するための作用物質のスクリーニング方法が提供される。特に、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の、遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導でき、かつ/または、表11の少なくとも1種の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドレベルの低下を誘導でき、かつ/または、少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの上昇を誘導できる作用物質である。
【0073】
例えば、ある実施態様では、冠動脈疾患を有するとわかっている試験対象を最初に試験作用物質で処置し、次いで、対象の代表的サンプルを、冠動脈疾患に応答して発現が変化する遺伝子または配列の発現レベル、および/またはペプチドのレベルについて分析する。次いで、サンプルの分析を、冠動脈疾患を有するとわかっているが試験化合物を与えられていない対照と比較し、それにより遺伝子発現を改変する能力がある試験化合物を同定する。
【0074】
本発明の別の実施態様では、表7および/または表9および/または表10および/または表11で開示する遺伝子の配列を、治療の基礎とする。一般に、本明細書において冠動脈疾患で過剰発現されると同定される遺伝子の発現を低下させ、疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのレベルの低下を誘導し、本明細書で同定される対照>疾患および/または対照で支配的なもののレベルの上昇を誘導しようと試みる。
【0075】
該遺伝子の発現を低下させる方法は、当業者に知られている。発現の補充の例には、対象に付加的な遺伝子のコピーを供給することが含まれる。発現を低下させるために好ましい例には、RNAアンチセンス技術または医薬的介入が含まれる。表6または表7および/または表9および/または表10に開示する遺伝子またはペプチドは、適切な薬物開発標的であり、表7および9および10および/または表11のものが好ましい。
【0076】
本発明の1つまたはそれ以上の実施態様の詳細を、上記の付随する説明で記載する。本明細書で記載したものと類似または均等な任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および作用物質をここで記載する。本発明の他の特質、目的および利点は、本説明から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。明細書および添付の特許請求の範囲では、文脈が明確に指図しない限り、単数形は複数形への言及を含む。特記しない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用する全ての特許および刊行物を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0077】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様をより詳細に例示説明するために提示する。これらの例は、決して添付の特許請求の範囲により規定される通りの本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。下記に例示説明するのは、サンプル研究プロトコールおよび、冠動脈疾患に正または負の相関を有するバイオマーカーの同定である。サンプルプロトコールはヒト血漿サンプルで開発されたが、同じ一般的実験構成を他の適する生物学的サンプルに使用して、バイオマーカーを検出し得る。本明細書で言及する全文書を、出典明示により完全に本明細書の一部とする。
【0078】
実施例1
患者および対照の対象は、Duke Clinical Research Institute (DCRI) の "Duke Databank for Cardiovascular Disease and the Duke Cardiac Catheterization Laboratory" に由来する。対象がインフォームドコンセントを与えた後、その臨床データベースを補うさらなる臨床データを収集する。冠動脈疾患の患者を彼らの心臓カテーテル試験室での処置時に集め、対照集団を心臓カテーテル試験室および遡及的に心臓カテーテル処置の2年以内の両方から集める。
【0079】
冠動脈疾患の有無に関連しない血漿タンパク質の差異を最小化するために集団を定義する。3つの異なる対象および対照のコホートを登録する:
(i)「集積した男性群」は、年齢および人種群について調和させる。タンパク質の変化を伴うと知られている主要な疾患、例えば真性糖尿病および炎症状態、例えば最近の急性心筋梗塞または活性な悪性腫瘍を除外する。
(ii)「他の男性群」は、調和操作を必要としない。若い集団でより顕著であると予期される冠疾患関連因子をサンプルに増やすために、比較的若い冠動脈疾患の患者集団を含める意図である。
(iii)「女性群」は、包括的集団の特徴を定義できるように、そして、関心のある遺伝子多型を女性集団において評価できるように、第3のコホートとして登録する。
【0080】
冠疾患患者集団への包含基準は:年齢40ないし65歳、および少なくとも1つの主要な冠動脈における>50%の冠動脈狭窄である。除外基準は、1ヶ月以内の急性心筋梗塞、真性糖尿病、非制御高血圧(収縮期血圧>180mmHgまたは弛緩期血圧>100mmHg)、および/または末端器官損傷、腎機能不全(血清クレアチニン>2.0mg/dLおよび/またはBUN>40mg/dL)、活性な悪性腫瘍、重大な心臓弁膜症、NYHAクラスIIIまたはIVの心不全、1日につき>2パックの喫煙、総コレステロール>300mg/dLまたはトリグリセリド>400mg/dL、血漿タンパク質組成に大変化をもたらすと予期される他の疾患または症状、貧血(女性でヘモグロビン<12.5g/dL、または男性で<13.5g/dL)、および低血圧(収縮期血圧<90mmHgおよび弛緩期血圧<50mmHg)である。
【0081】
「対照」集団への包含基準は:集積した男性群のみ、年齢40ないし65歳、2年以内の心臓カテーテル処置に関して>25%の冠動脈狭窄がないこと、および正常な左心室駆出分画および正常な局所壁運動である。除外基準は、典型的な狭心症のシグナル、またはストレス試験における心筋虚血の証拠、心筋梗塞または不安定狭心症、跛行、卒中、一過性脳虚血発作を含む末梢動脈または脳血管疾患の病歴、または非侵襲性イメージングまたは血管造影法での重大な血管狭窄、糖尿病、非制御高血圧(収縮期血圧>180mmHgまたは弛緩期血圧>100mmHg)、および/または末端器官損傷、腎機能不全(血清クレアチニン>2.0mg/dLおよび/またはBUN>40mg/dL)、活性な悪性腫瘍、重大な心臓弁膜症、NYHAクラスIIIまたはIVの心不全、1日につき>2パックの喫煙、総コレステロール>300mg/dLまたはトリグリセリド>400mg/dL、症候性心不全、重大な弁膜症、血漿タンパク質組成に大変化をもたらすと予期される他の疾患または症状、貧血(女性でヘモグロビン<12.5g/dL、または男性で<13.5g/dL)、および低血圧(収縮期血圧<90mmHgおよび弛緩期血圧<50mmHg)である。
【0082】
臨床パラメーターの評価
対象の個体群統計学的情報には、研究時の歳(年齢)、最後のカテーテル処置時の歳(年齢)、性別、人種、喫煙行動、収縮期および弛緩期の血圧(mmHg)、および冠動脈疾患の重篤さ(CAD指数)が含まれる。病歴の評価には、狭心症、末端器官損傷を含む真性糖尿病、高血圧、心筋梗塞、PCI、CABG、末梢血管疾患、脳血管疾患、うっ血性心不全、うっ血性心不全の重篤さ、および腎機能不全が含まれる。
【0083】
冠疾患に関し、以下の情報を収集する:LV駆出分画率(%)、有意にふさがれている血管の数、左冠動脈系の最大狭窄パーセント、左前下行枝の最大狭窄パーセント、右冠動脈の最大狭窄パーセント、左回旋枝動脈系の最大狭窄パーセント、僧帽弁の狭窄、僧帽弁閉鎖不全のグレード、弁膜症、大動脈の狭窄、冠動脈疾患の重篤さ、追跡MI、PCIおよびCABG、異なるならばカテーテル処置およびカテーテル処置後の診断が含まれる。
【0084】
薬物療法の評価には、ACE阻害剤、アミオダロン、アンギオテンシン受容体遮断剤(ARB)、アスピリン製品、ベータ−遮断剤、カルシウム遮断剤、中枢作用物質、ジゴキシン、利尿剤、ドフェチリド、フィブラート、ホルモン補充治療剤、ナイアシン化合物、硝酸塩、他の抗血小板剤、ソタロール、スタチン、タイプ1作用物質、血管拡張剤およびワーファリンが含まれる。Duke 研究室で評価される臨床検査室のパラメーターには、総コレステロール、トリグリセリド、LDL、HDL、HbA1C、Hct、クレアチニン、PT、PTT、WBC、リン、ナトリウム、カリウム、塩素、カルシウムおよび二酸化炭素が含まれる。
【0085】
臨床検査室のパラメーターには、ナトリウム、カリウム、塩素血症(chloremia)、カルシウム、マグネシウム、リン、BUN、クレアチニン、総タンパク質、総CK、CK−MB、LDH、γ−GT、ASAT、ALAT、アルカリ性ホスファターゼ、総ビリルビン、結合ビリルビン、C反応性タンパク質、コレステロール、トリグリセリド、HDL、アルブミン、モル浸透圧濃度、LDLcalc、Cacalc、トロポニンI、TSH、ホモシステイン、HIV1−2、HCV3、HBsAgおよびHBcIgが含まれる。
【0086】
冠動脈疾患の重篤さ(CAD指数)は、以下の相互参照表に従ってスコアを付ける:
表1:CAD指数のコード付け、vdは有意にふさがれている血管を表す
【表1】

【0087】
血液サンプル採取
クエン酸塩、リン酸塩およびデキストロースを含有する20mLのチューブに、血液100mLの1つのアリコートを男性の疾患のある患者から収集し、血液200ml(2x100mLアリコート)を、男性の対照の対象から収集する。女性から2x10mLチューブの血液を採る。収集プロセスの始めからチューブを25℃の水浴に置くことにより、外界温度への温度低下を加速する。収集終了後、チューブを冷却し、温度を1時間かけて段々と20−22℃に低下させる。白血液細胞および血小板の減少(1x10/ユニットより少ない)を、血液を標準的重力フィルターに通すことにより、室温での濾過で系統的に実施する。標準的なやり方でバッグを遠心分離する。
【0088】
圧力を使用して血漿を赤血球と分離し、別のバックに収集する。プロテアーゼ阻害剤を添加する。チューブを−70℃に冷凍し、GeneProt, Geneva, Switzerland へドライアイス上で貨物輸送するまで保存する。
【0089】
マイクロアレイ分析
血液サンプル(2.5mL)を、RNAの即時安定化をもたらす試薬の専売混合物 (PreAnalytiX, Qiagen) を含有する PAXgene(商標)Blood RNA チューブに直接収集する。次いで、PAXgene Blood RNA Kit で供給されるシリカゲルメンブレン技術を使用して、RNAを単離する。得られるRNAは、インビボの発現プロフィールを正確に表し、幅広い下流の適用で使用するのに適する。RNAの単離は、PAXgene Blood RNA Tube 中で核酸をペレットにする遠心分離段階から始まる。ペレットを洗浄し、プロテイナーゼKを添加してタンパク質を分解する。アルコールを添加して結合条件を調節し、サンプルを PAXgene RNA スピンカラムに載せる。短い遠心分離の間に、RNAが PAXgene シリカゲルメンブレンに選択的に結合し、夾雑物は通り過ぎる。洗浄段階に続き、最適化バッファー中でRNAを抽出する。λ=260nm(A260nm)の吸光度により総RNAを定量し、比A260nm/A280nmにより純度を評価する。RNA分子の完全性を、非変性アガロースゲル電気泳動により確認する。分析までRNAを約−80℃で保存した。
【0090】
DNAマイクロ−アレイ実験
全ての GeneChip 実験は、GeneChip システムの製造業者により推奨される通りに、Genomics Factory EU で実行する (Affymetrix, Santa Clara, CA; 発現分析技法のマニュアル:参考文献に加える)。ゲノムU133A発現プローブアレイセット(Affymetrix, Inc., San Diego, CA, USA) を使用する。
【0091】
GeneChip 実験
T7−(dT)24DNAオリゴヌクレオチドプライマーの存在下で Superscript Choice System (Invitrogen Life Technologies) を使用して、出発量約1ないし10μgの全長総RNAを用いて二本鎖cDNAを合成する。合成後、cDNAを親和性樹脂 (QiaQuick, Qiagen) で精製する。次いで、ビオチン化リボヌクレオチドの存在下で BioArray(登録商標) High Yield RNA Transcript Labeling Kit (ENZO) を使用して、精製cDNAをインビトロで転写し、ビオチン標識cRNAを形成させる。次いで、標識cRNAを親和性樹脂 (RNeasy, Qiagen) で精製し、定量し、フラグメント化する。厳密に10μgの量の標識cRNAを、約16時間45℃で発現プローブアレイにハイブリダイズさせる。次いで、GeneChip Fluidics Workstation 400 (Affymetrix) を使用して、アレイを洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリン (Molecular Probs) で2回染色する。次いで、共焦点レーザースキャナー (GeneArray Scanner, Agilent) を使用してアレイを2回スキャンし、1つのスキャンイメージ「.dat−ファイル」を得る。
【0092】
臨床データ
臨床データをDCRIによる臨床データベースに入力し、二重データ入力によりデータ検証を行う。データ入力およびデータベースのロックの完了後、暗号化SASフォーマットでデータをスポンサーに送る。スポンサーのサイトで、臨床データを MSAccess データベースにロードする。6つの下位集団;即ち、集積した男性群および対照群、他の男性群の症例および対照並びに女性群の症例および対照、の各々について、記述統計パラメーターを算出する。記述統計には、サンプルのサイズ、頻度、算術平均、標準偏差、中央値、最小値および最大値が含まれる。個人の臨床データは、全部で241人の対象:121人の疾患のある対象および120対照である。集積した男性群のコホートは、53人の疾患のある対象および53人の対照を含み、他の男性群のコホートは44人の疾患のある対象および38人の対照を含み、女性群のコホートは24人の疾患のある対象および29人の対照を含む。
【0093】
遺伝子発現データ
この得られた「.dat−ファイル」を、MAS5プログラム(Affymetrix)を使用して「.cel−ファイル」に加工する。「.celファイル」を取り込み、Affymetrix GeneChip Laboratory Information Management System(LIMS)にロードする。LIMSデータベースを、ネットワークファイリングシステムを通して UNIX Sun Solaris サーバーに繋ぐ。それは、全てのプローブのセルの平均強度(CELファイル)を Oracle データベース(NPGN)にダウンロードさせる。「標的強度」150を使用して、未加工データを発現レベルに変換する。表示される数値は、所定の転写物配列用のプローブ−セットを含むプローブ−ペアのシグナル強度の重みを付けられた平均値である(AvgDiff値)。個人の遺伝子発現データを、241人の患者中222人から得る。
【0094】
部分最小二乗法によるPLS
PLSは、部分最小二乗法を利用する潜在的構造に対する射影(Projections to Latent Structures)を意味する。PLSは、従属応答変数を含有する行列Yと予測変数を含有する行列Xとの間に、線形または多項式の関係を見出す。PLSモデリングは、XおよびY空間の両方の低次元超平面への同時投影からなる。これらの超平面上の点の座標は、下記のPLS結果のグラフ表示においてt−スコアおよびu−スコアと呼ばれる行列TおよびUの要素を構築する。PLS分析は、XおよびY空間を良好に近似し、XとYとの間の相関を最大にするという目的;即ち、正準相関分析と非常に似た目的を有する。X(予測)およびY(従属変数)行列に関し、直交シグナル補正−OSC−の目的は、Yに無関係(直交)であり、関心のある情報に貢献しない全情報をXから除去することである。PLSによる予測的モデリングに、SIMCA-P Version 10.0 (Umetrics, Sweden) を使用した。
【0095】
データの統合
臨床データ、遺伝子発現データを、全データセットに亘り対象を唯一に同定するバーコードにより関連付ける。
【0096】
研究集団
研究集団は、3つのコホートからなる。第1コホート−「集積した男性群」と呼ばれる−は、53人の男性対照および53人の男性症例であった。これらの個体は、彼らの年齢および人種が調和していた。「他の男性群」と呼ばれる第2コホートは、38人の男性対照および44人の男性症例を含み、「女性群」と呼ばれる第3コホートは、29人の女性対照および24人の症例からなる。120人の対照と121人の症例の全部で241人がこの臨床調査に参加した。241人中、188人が男性であり、53人が女性であった。
【0097】
個体群統計学的情報
研究集団の平均年齢は、51.1歳ないし57.6歳であり、「集積した男性群」コホートで症例と対照との差異が最小であった。男性の体重は93.9−100.6kgの範囲にあり、女性は83.9−89.5kgであった。一般に、対照は症例より重い体重であった。喫煙者頻度は集積した男性群の症例で29/53、集積した男性群の対照で26/53、他の男性群の症例で34/44、他の男性群の対照で20/38、そして、女性群の症例で13/24、女性群の対照で9/29であり、対照と比較して症例により多くの喫煙者がいることを示す。個人の収縮期および弛緩期の血圧は、平均して正常範囲にあった。しかしながら、症例と比較して対照で血圧が高い傾向があった。研究集団の殆どがコーカサス人種に属し、次いでアフリカ系アメリカ人、少数のアジア人およびラテンアメリカ人であった。
【0098】
病歴
狭心症は、各コホートにおいて最も顕著な臨床事象であり、症例と対照の間に明らかな差異はなかった。しかしながら、高血圧の病歴は、対照と比較して男性の症例でより多く報告された。女性群コホートには差異がなかった。心筋梗塞は、全コホートの症例で有意に高く、冠動脈バイパス術(CABG)および末梢冠動脈インターベンション(PCI)も同様であった。少数の症例は冠動脈性心不全(CHF)と報告されたが、対照ではいなかった。非常に少数の症例は、末梢または脳血管疾患を患っていたが、対照ではいなかった。真性糖尿病は報告されず、腎機能不全は2人の対象のみであった。
【0099】
薬物療法
患者の殆どは、少なくとも1種の薬物療法(NSAID類)を受けており、それは対象の殆どが受けた薬物治療のクラスであり、症例と対照の間で、または3つのコホート間で差異はない。ベータ−遮断剤、ACE−阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、利尿剤およびアンギオテンシン受容体遮断剤などの血圧低下剤は、一般に対照と比較して症例で多く摂られた。同じことがスタチン類について真である。あまり多くない薬物療法には、アミオダロン、フィブラート、ジゴキシン、硝酸塩、ナイアシンおよび抗凝血剤が含まれ、それらは対照よりも症例で多く摂られた。何人かの女性はホルモン補充治療剤を摂り、少数の患者のみが中枢作用性の薬物療法を受けた。
【0100】
冠動脈疾患の重篤さ−CAD指数
しかしながら、症例の間では、広い分布があった;症例の52%は、42より低いCAD指数を有した;症例の79%は、56より低いCAD指数を有した;症例の残りの21%は、63ないし100%のCAD指数を有した。対照の殆どは、15ないし22のCAD指数の範囲に見出されるが、CAD指数ゼロは全タイプの回帰分析に甚だしく高いレバレッジ効果を有するので、23より低い全CAD値は初期設定でゼロに設定した。
【0101】
表2:研究集団
【表2】

【0102】
表3:平均個体群統計学的データ
【表3】

【0103】
表4:病歴のまとめ(頻度)
【表4】

【0104】
表5:薬物療法のまとめ(頻度)
【表5】

【0105】
遺伝子発現とCAD指数を含む検査値の相関
パラメトリックおよびノンパラメトリック法による一変量相関分析を、全検査値および全遺伝子に適用した。検査室のパラメーターのセットにCAD指数を含めた。後の全ての一変量および多変量法の遺伝子フィルタリングは、この回帰分析に基づいた;即ち、部分最小二乗法分析で裁量的レベルのabs(rho)>0.2より高いCAD指数との絶対的相関係数を示す遺伝子のみを分析に含めた。
【0106】
部分最小二乗法(PLS)の潜在的構造に対する射影は、多変量応答データをモデル化するための代替的モデル化アプローチである。アルゴリズムが最適化されているので、短くて太い行列に対処することができる;即ち、変数の数は、観察の数よりはるかに多くてもよい。
【0107】
160種の遺伝子が、絶対的相関係数rho>0.2でCAD指数と相関した(表6);これらの遺伝子を、PLS分析に含めた。LPSを実施する前に、遺伝子発現データを、CAD指数を唯一の応答変数として直交シグナル補正(Orthogonal Signal Correction)(OSC)に付した。
【0108】
表6:160種の各遺伝子の平均およびp値
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
【表8】

【0111】
【表9】

【0112】
【表10】

【0113】
得られるt−スコア対CAD指数の二次多項式回帰分析は、r=0.764(p<0.001)で回帰の信頼範囲95%および予測区間95%を含む予測モデルをもたらす。幾分広い予測区間は、準定量的でしかないCAD指数評価の変動性および遺伝子発現の変動性の両方に起因する。
【0114】
モデルの安定性を試験するために、3つのコホート;即ち、「集積した男性群」、「他の男性群」および「女性群」で、別々にPLS分析を実施した。対照は−2の標準偏差の範囲で全く安定のままであり、一方症例のt1−スコアは、主に+2の標準偏差範囲に局在し、CAD指数の上昇に伴い上昇する。この関係は各コホートに存在し、最低の変動は「他の男性群」にある。3つの異なるコホートの別々のPLS分析についての各遺伝子の射影に重要な変数(VIP)を、全対象を含むPLS分析と比較したものを、本文の図5に示す。表示されているのは、最もVIPが高い24種の遺伝子である。曲線は、最初の8種の遺伝子について急勾配の減少を示す;その後、減少は幾分平坦になり、ほぼ直線状である。これらの8種の遺伝子は別として、全ての他の遺伝子は、射影に少しばかり貢献するだけである。最初の24遺伝子のVIPは、異なるコホート間にほんのわずかの変動を示すのみであり、予測モデルの幾分高い安定性を指摘している。
【0115】
CAD指数を予測できる8種の予測性の高い遺伝子の実体を表7に示す。
表7:予測モデルに主として貢献する8種の遺伝子の実体(モデル1)
【表11】

【0116】
8種の最も予測的な遺伝子を含む最終的PLS分析を、本研究に参加した全222人の対象に適用した。この8種の遺伝子のt−スコアは、CAD指数を非常に正確に予測できる。CAD指数が、狭窄の準定量的評価にすぎず、同程度の狭窄でも本来的に対象間の変動を内包することを考慮すると、8種の最も予測的な遺伝子の発現パターン基づく予測は、説得力がある。
【0117】
8種の予測性遺伝子(表7)の異なる発現パターンを、RT−PCRにより確認する。以下のプライマーをこれらの遺伝子のRT−PCRに使用した:
表8−プライマー
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
要約すると、循環している白血球の遺伝子発現パターンがCADの存在および程度に関連しているか否かを調べる。冠動脈造影検査を受ける患者を、彼らの Duke CAD指数(CADi)、即ち、結果と相関する、裏付けられた冠動脈アテローム性動脈硬化の程度の血管造影的測定に従って、選択した。120人のCAD患者(CADi>23)および121人の部分的に合致するCADのない対照(CADi=0)から、RNAを抽出した。Affymetrix U1333A チップを使用して遺伝子発現を評価した。CADと相関する遺伝子を、Spearman 試験を使用して同定し、予測的遺伝子発現パターンを、部分最小二乗法(PLS)回帰分析を使用して同定した。
【0121】
160種の個々の遺伝子は、CADiと有意に相関する(rho>0.2、P<0.0027、n=222)と見出されたが、個々の遺伝子発現の変化は比較的小さかった(1.2ないし1.5倍)。これらの160種の遺伝子を使用して、PLS多変量回帰モデルは、予測性の高いモデルをもたらした(r=0.764、P<0.001)。続く分析は、予測モデルの大部分が8種の遺伝子のみにより実行されることを示した(r=0.752)(表7)。
【0122】
まとめると、8種の遺伝子の同時発現パターンは、CADの予測性が高い。従って、末梢白血球遺伝子発現パターンは、CADの非侵襲性バイオマーカーであり、新しい病態生理学的洞察を導く。
【0123】
実施例2
モデルの拡張(モデル2)
モデル化操作を152種の候補遺伝子、即ち、表6の160種の候補遺伝子から実施例1の表7の8種の予測性遺伝子を引いたものについて、モデル1(実施例1)と全く同じPLS方法を使用して繰り返す。医師により評価される実際のCAD指数に対する、19種の遺伝子(表9)の遺伝子発現パターンにより予測されるCAD指数を図4に表示する。モデル2のrは、モデル1(実施例1)のものよりわずかに小さいのみであり(0.72対0.75)、予測信頼帯95%は匹敵する。
【0124】
表9:モデル2の19種の最良の予測性遺伝子
【表15】

*中央値は、シグナルの中央強度を表し、rhoは、各遺伝子のCAD指数との Spearman の順位相関である。
【0125】
実施例3
モデル化の拡張(モデル3)
第3のモデル化アプローチでは、残っている133種の遺伝子、即ち、160種の候補遺伝子(表6)からモデル1の8種の予測性遺伝子(表7;実施例1)を引き、モデル2の19種の予測性遺伝子(表9;実施例2)を引いたものを、実施例1に記載の通りの部分最小二乗法回帰に付す。結果を図4に示し、対応する15種の最良の予測性遺伝子を表10にまとめる。
【0126】
表10:モデル3の15種の最良の予測性遺伝子
【表16】

*中央値は、シグナルの中央強度を表し、rhoは、各遺伝子のCAD指数との Spearman の順位相関である。
【0127】
まとめると、160種の遺伝子の高い情報量のために、遺伝子発現パターンに基づいて冠動脈疾患の程度を予測し得る3つのモデルの生成が可能である。3つのモデルを、例えば新規の未知サンプルに並行して適用することにより、正しい予測の見込みが劇的に上昇し得る。さらに、予測モデルのロバスト性は、上昇し得る;即ち、何らかの技術的または生物学的理由により1つのモデルに含まれる遺伝子の質が悪い場合、予測に使用できるさらに2つの予測モデルが依然としてある。
【0128】
表7および/または表9および/または表10の遺伝子に関する、ユニジーン#、プローブセット#および/または受託#などのさらなる情報は、表6に列挙されている。
【0129】
実施例4
集めた血漿の産業スケールの分析を使用する、冠動脈疾患タンパク質のプロテオミクス的探索研究
確立されたのは、Duke Databank for Cardiovascular Disease からの、血管造影的に冠動脈疾患を有する(>または=50%の狭窄の少なくとも1つの病変として定義される)53人の患者および、血管造影的に冠動脈疾患を有さない53人の患者の、男性の集団である。Duke Databank for Cardiovascular Disease の説明には、Allen LaPointe, Nancy M. et al., Journal of the American College of Cardiology 41(Suppl A):517A (2003)を参照。これらの患者は、年齢および人種について調和しており、リスク因子および主要な血漿タンパク質の異常の極端な者は、プレスクリーニングで除外された。各群の血漿サンプルを集めて大容積(各6リットル)にし、ピコモル濃度の範囲の存在量の少ないタンパク質を同定する。アルブミンおよび免疫グロブリンを特異的に除去し、より小さいタンパク質(<20−40kDa)を豊富にした後、液体クロマトグラフィーによりサンプルを12,960個の画分に分け、酵素的分解の前および後に、質量分析により分析した (LC-ESI MS/MS および MALDI-TOF)。Rose, Keith et al., Proteomics (2004) (DOI 10.1002/pmic.200300718) 参照。
【0130】
レプチンおよびブラジキニンなどの存在量の少ない成分を含む731種の血漿タンパク質またはフラグメントを同定した。17種は、良好に検出され、疾患の状態に従って強く異なって表示された。カテゴリーに属するタンパク質を、それらの親の受託番号と共に次の表11にまとめる:
【0131】
【表17】

【0132】
ペプチドQ96NZ9についてのさらなる情報は、PCT特許出願WO02/00690およびWO02/08284(PRO1195−配列番号212)で提供される。ペプチドQ9NS71についてのさらなる情報は、PCT特許出願WO02/00690およびWO02/08284(PRO1005−配列番号140)で提供される。
【0133】
まとめると、この統計的かつ包括的なアプローチは、冠疾患を有する集団と有さない集団で異なって表示される多数のタンパク質を同定した。これらのタンパク質は、炎症媒介物質および防御メカニズムのタンパク質を含み、今や、疾患の新規マーカーを同定するさらなる確認試験のための候補群を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、r=0.764(p<0.001)で回帰の信頼範囲95%および予測区間95%を含む予測モデルをもたらす、t−スコア対CAD指数の二次多項式回帰分析を図解し(A)、8種の予測性遺伝子に関わるモデル1の予測されるCAD指数対CAD指数(B)を図解する。
【図2】図2は、3つの異なるコホートの別々のPLS分析についての各遺伝子の射影に重要な変数(VIP)を、全対象を含むPLS分析と比較したものを図解する。
【図3】図3は、本研究に参加した222人の対象全員に適用した、8種の最も重要な予測性遺伝子を含む最終的PLS分析を図解する。
【図4】図4は、19種の予測性遺伝子に関わるモデル2(A)および15種の予測性遺伝子に関わるモデル3(B)の、予測されたCAD指数対CAD指数を図解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)対象における表6から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(ii)対照または参照基準における該表6から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)該第1の値と第2の値との間に差異があるか否かを比較すること、
を含む、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測する方法。
【請求項2】
該対照または参照基準が、冠動脈疾患のない対象または対象群から決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の値が第2の値より高いことが、冠動脈疾患の存在または予測を示すものである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
冠動脈疾患の存在の予測が、少なくとも50%の確率である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1の値が、第2の値より少なくとも20%高い、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(i)受託コードで:BG537190、L37033、AL581768、AF055000、NM025241、AF151074、AF279372およびBF432478(表6)または、
(ii)配列番号で:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8(表7)
からなる遺伝子群から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
表9のPMS2L5(配列番号9)、RXRA(配列番号10)、GCN5L1(配列番号11)、CABIN1(配列番号12)、LGALS9(配列番号13)、CEBPA(配列番号14)、LRRN4(配列番号15)、STXBP2(配列番号16)、SH3BP2(配列番号17)、RNF24(配列番号18)、PLAUR(配列番号19)、RIS1(配列番号20)、ADD1(配列番号21)、GPSM3(配列番号22)、BC002942(配列番号23)、TNFRSF5(配列番号24)、N4BP1(配列番号25)、FLJ12438(配列番号26)およびMMP24(配列番号27)からなる遺伝子群から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
表10のPTP4A1(配列番号28)、PAFAH1B1(配列番号29)、SOX4(配列番号30)、ASNA1(配列番号31)、MAN2A2(配列番号32)、NFYC(配列番号33)、NOTCH2(配列番号34)、HDAC5(配列番号35)、HCFC1(配列番号36)、NFX1(配列番号37)、CRSP2(配列番号38)、ICAM1(配列番号39)、PSG3(配列番号40)、STC2(配列番号41)およびSEMA3C(配列番号42)からなる遺伝子群から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
表7の遺伝子から選択される少なくとも1種の遺伝子並びに/または表9および/もしくは表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
(a)対象における表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルを決定し、第1の値を提供すること、
(b)対照または参照基準における該表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルを決定し、第2の値を提供すること、および、
(c)該第1の値と第2の値の間に差異があるか否かを比較すること、
を含む、対象における冠動脈疾患(CAD)を同定または予測する方法。
【請求項11】
表11の疾患>対照のペプチドについて、または、表11の疾患で支配的であるペプチドについて、比較したペプチドレベルが冠動脈疾患の同定または予測において上昇している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
表11の対照>疾患のペプチドについて、または、表11の対照で支配的であるペプチドについて、比較したペプチドレベルが冠動脈疾患の同定または予測において低下している、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(a)対象における表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(b)対照または参照基準における該表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第2の値を提供すること、および、
(c)該第1の値と第2の値の間に差異があるか否かを決定すること、
を含み、第1の値における表11の1種またはそれ以上の疾患>対照のペプチドおよび/または疾患で支配的なペプチドのペプチドレベルの上昇、および/または、第1の値における表11の1種またはそれ以上の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのペプチドレベルの低下、および、第1の値における表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの上昇が、冠動脈疾患の同定または予測である、
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
表7の配列番号1に相当する少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項6、請求項9または請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
表7から選択される少なくとも2種ないし8種の配列の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項6、請求項9、請求項13または請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
表7から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項6、請求項9、または請求項13ないし請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
表7から選択される8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項6、請求項9、または請求項13ないし請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
表9の配列番号9に相当する少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項7、請求項9または請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
表9から選択される少なくとも2種ないし19種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項7、請求項9、請求項13または請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
表9から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項7、請求項9、請求項13、請求項18または請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
表9から選択される19種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項7、請求項9、請求項13、請求項18ないし請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
表10の配列番号28に相当する少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9または請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
表10から選択される少なくとも2種ないし15種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9、請求項13または請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9、請求項13、請求項22または請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
表10から選択される15種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9、請求項13、請求項22または請求項24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
表11から選択される複数のペプチドのペプチドレベルを決定する、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
表11から選択される全てのペプチドのペプチドレベルを決定する、請求項10ないし請求項13または請求項26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
該ペプチドレベルが、血液、血漿または血清サンプルで決定される、請求項10ないし請求項13、請求項26または請求項27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
遺伝子発現レベルの決定が、タンパク質発現産物を測定することを含む、請求項1ないし請求項9または請求項13ないし請求項28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
該タンパク質発現産物の量および/またはペプチドの量を、該タンパク質に特異的に結合する抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを使用して検出する、請求項10ないし請求項13または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
遺伝子発現レベルの決定が、該遺伝子の転写されたポリヌクレオチドの遺伝子発現を測定することを含む、請求項1ないし請求項9または請求項13ないし請求項28のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
該転写されたポリヌクレオチドがmRNAまたはcDNAである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
発現レベルが、マイクロアレイ分析、ノザンブロット分析、逆転写PCRまたはRT−PCRにより検出される、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドレベルが、血液、血清、血漿、リンパ、尿、涙、唾液、脳脊髄液、白血球サンプルまたは組織サンプルの群から選択されるサンプルにおいてエクスビボで測定される、請求項1ないし請求項33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
該方法がCAD指数の測定をさらに含む、請求項1ないし請求項34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
23ないし100のCAD指数が、冠動脈疾患の存在または素因の確率を示すものである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(i)該対象における表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、
(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置後に決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)該対象の処置前および処置後の遺伝子発現レベルの差異を比較すること、
を含む、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前後にモニタリングする方法。
【請求項38】
(i)該対象における表9または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、
(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置後に決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)第1の値を第2の値と比較すること、
を含む、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前後にモニタリングする方法。
【請求項39】
(i)該対象における表7から選択される少なくとも1種の遺伝子および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、
(ii)(i)と同じ遺伝子の遺伝子発現レベルを処置後に決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)第1の値を第2の値と比較することにより、該対象の処置前および処置後の遺伝子発現レベルの差異を決定すること、
を含む、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前後にモニタリングする方法。
【請求項40】
(i)該対象における表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを処置前に決定し、第1の値を提供すること、
(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび遺伝子発現レベルを処置後に決定し、第2の値を提供すること、および、
(iii)第1の値を第2の値と比較することにより、該対象の処置前および処置後の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび遺伝子発現レベルの差異を決定すること、
を含む、冠動脈疾患を有すると同定された対象を、処置の前後にモニタリングする方法。
【請求項41】
(iv)該対象における冠動脈疾患の処置の効力に対応する、遺伝子発現レベルおよび/またはペプチドのレベルの差異を決定すること、
をさらに含む、請求項37ないし請求項40のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項42】
処置に対する正の応答が、遺伝子発現レベルの第2の値が第1の値より低い場合に測定される、請求項37ないし請求項41のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項43】
表11の1種またはそれ以上の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドについての第2の値のペプチドレベルの低下;および/または、表11の1種またはそれ以上の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドについての第2の値のペプチドレベルの上昇、および/または、第2の値における表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの低下が、処置に対する正の応答を示すものである、請求項40または請求項41に記載の対象のモニタリング方法。
【請求項44】
少なくとも配列番号1の遺伝子発現レベルを決定する、請求項37、請求項39ないし請求項43のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項45】
表7の複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項37、請求項39ないし請求項44のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項46】
表7に列挙される8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項37、請求項39ないし請求項45のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項47】
少なくとも表9の配列番号9の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項48】
表9から選択される少なくとも2種ないし19種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43または請求項47のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項49】
表9から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43、請求項47または請求項48のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項50】
表9から選択される19種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43、請求項47ないし請求項49のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項51】
少なくとも表10の配列番号28の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項52】
表10から選択される少なくとも2種ないし15種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43または請求項51のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項53】
表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43、請求項51または請求項52のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項54】
表10から選択される15種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項38ないし請求項43、請求項51ないし請求項53のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項55】
表11の複数のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10の遺伝子から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項40ないし請求項43のいずれかに記載の対象のモニタリング方法。
【請求項56】
(i)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点で決定し、第1の値を提供すること、
(ii)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、
(iii)第1の値の遺伝子発現レベルの第2の値に対する差異を比較すること、ここで、第2の値におけるより高い遺伝子発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法。
【請求項57】
(i)表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定すること、
(ii)(i)と同じ少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、
(iii)第1の値の遺伝子発現レベルの第2の値に対する差異を比較すること、ここで、第2の値におけるより高い遺伝子発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法。
【請求項58】
第2の値におけるより低い遺伝子発現レベルが、冠動脈疾患の重篤さの低下を示すものである、請求項56または請求項57に記載の方法。
【請求項59】
(i)表11から選択される1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび表6および/または表7および/または表9および/または表10からの少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点で決定し、第1の値を提供すること、
(ii)(i)と同じ1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを最初の時点の後の時点で決定し、第2の値を提供すること、
(iii)第1の値の1種またはそれ以上のペプチドおよび遺伝子発現のレベルの第2の値に対する差異を比較すること、ここで、第2の値における表11の1種またはそれ以上の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのより高いレベル、または、対照>疾患のペプチドまたは対照で支配的なペプチドのより低いレベル、および、第2の値における表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子のより高い発現レベルは、冠動脈疾患の重篤さの上昇を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の進行または重篤さをモニタリングする方法。
【請求項60】
(i)表6または表7から選択される遺伝子を発現する能力のある細胞または細胞のサンプルを、候補作用物質とエクスビボで接触させること、
(ii)該表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(iii)同じ表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下の細胞または細胞のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、
(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、遺伝子発現レベルの差異は、冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有する作用物質を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の処置で使用するための候補作用物質のスクリーニング方法。
【請求項61】
(i)表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子を発現する能力のある細胞または細胞のサンプルを、候補作用物質とエクスビボで接触させること、
(ii)(i)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(iii)(i)および(ii)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下の細胞または細胞のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、
(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、遺伝子発現レベルの差異は、冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有する作用物質を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の処置で使用するための候補作用物質のスクリーニング方法。
【請求項62】
第1の値が第2の値より低いとき、候補作用物質の存在下での遺伝子発現レベルの低下が決定され、冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有する作用物質を示すものである、請求項61または請求項62に記載のスクリーニング方法。
【請求項63】
(i)表11から選択される少なくとも1種のペプチドを産生する能力のある、かつ、表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子を発現する能力のある細胞または細胞のサンプルを、候補作用物質とエクスビボで接触させること、
(ii)(i)の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび(i)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定し、第1の値を提供すること、
(iii)(i)の1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび(i)の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを、候補作用物質の非存在下の細胞または細胞のサンプルで決定し、第2の値を提供すること、および、
(iv)第1の値を第2の値と比較すること、ここで、1種またはそれ以上のペプチドのレベルおよび少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルの差異は、冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有する作用物質を示すものである、
を含む、冠動脈疾患の処置で使用するための候補作用物質のスクリーニング方法。
【請求項64】
第2の値と比較したとき、第1の値における少なくとも1種の表11の疾患>対照のペプチドおよび/または疾患で支配的なペプチドのより低いレベル、および/または、第1の値における少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのより高いレベル、および、第1の値における表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子のより低いレベルは、冠動脈疾患の処置に使用される能力を潜在的に有する作用物質を示すものである、請求項63に記載のスクリーニング方法。
【請求項65】
少なくとも配列番号1の遺伝子発現レベルを決定する、請求項60ないし請求項64のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項66】
表7から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項60ないし請求項65のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項67】
表7から選択される8種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項60ないし請求項66のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項68】
少なくとも表9の配列番号9の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項69】
表9から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64または請求項68のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項70】
表9から選択される19種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64、請求項68または請求項69のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項71】
少なくとも表10の配列番号28の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項72】
表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64または請求項71のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項73】
表10から選択される15種全ての遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項61ないし請求項64、請求項71または請求項72のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項74】
表11の複数のペプチドのレベルおよび表6、表7、表9および/または表10から選択される複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する、請求項63または請求項64に記載のスクリーニング方法。
【請求項75】
表6または表7の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む、冠動脈疾患の処置または予防方法。
【請求項76】
表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む、冠動脈疾患の処置または予防方法。
【請求項77】
表11の少なくとも1種の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのレベルの低下、および/または、少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの上昇、および/または、表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性の低下を誘導できる作用物質の有効量を、対象に投与することを含む、冠動脈疾患の処置または予防方法。
【請求項78】
該作用物質が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、リボザイム、低分子、抗体または抗体フラグメントからなる群から選択される、請求項75ないし請求項77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる有効量の作用物質を含む冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造方法。
【請求項80】
表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる有効量の作用物質を含む物質の、冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造における使用。
【請求項81】
表11の少なくとも1種の疾患>対照および/または疾患で支配的なペプチドのレベルの低下、および/または、少なくとも1種の対照>疾患および/または対照で支配的なペプチドのレベルの上昇、および/または、表6または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子または遺伝子発現産物の遺伝子発現、合成または活性のレベルの低下を誘導できる有効量の作用物質を含む物質の冠動脈疾患の処置または予防用の医薬の製造における使用。
【請求項82】
(i)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための指示書、および、
(ii)表6または表7の少なくとも1種の遺伝子についての、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準の遺伝子発現レベル、
を含む、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測するためのキット。
【請求項83】
(i)表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための指示書、
(ii)(i)の遺伝子についての、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準の遺伝子発現レベル、
を含む、対象における冠動脈疾患の素因を同定または予測するためのキット。
【請求項84】
表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する能力のある抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントがさらに提供される、請求項82ないし請求項83のいずれかに記載のキット。
【請求項85】
(a)表11の少なくとも1種のペプチドのペプチドレベルを決定するための指示書、および、
(b)表11の少なくとも1種のペプチドについての、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準のペプチドレベル、
を含む、対象における冠動脈疾患を同定または予測するためのキット。
【請求項86】
(c)該表11の少なくとも1種のペプチドに結合する抗体、
をさらに含む、請求項85に記載のキット。
【請求項87】
(a)表11の少なくとも1種のペプチドのペプチドレベルを決定するための、そして、表6および/または表7および/または表9および/または表10から選択される少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための、指示書、および、
(b)(i)の表11の少なくとも1種のペプチドについての、そして表6および/または表7および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定するための、正常な対象または冠動脈疾患のない対象に由来する対照または参照基準のペプチドレベル、
を含む、対象における冠動脈疾患を同定または予測するためのキット。
【請求項88】
(c)該表11の少なくとも1種のペプチドに結合する抗体、および、表6および/または表7、および/または表9および/または表10の少なくとも1種の遺伝子にコードされるポリペプチドに結合する能力のある、さらなる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントが提供される、
をさらに含む、請求項87に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515155(P2007−515155A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534710(P2006−534710)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011651
【国際公開番号】WO2005/040422
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】