説明

異なる輪郭パターンを持ったペアのバインダー糸を有する多層布

製紙プロセスで利用してよい多層布。布層は、複数の横糸バインダー糸のペアによってともに結合されている。ペア内の各バインダー糸は異なる輪郭パターンを織り、そのペア中の別のバインダー糸と結合してトップ層に平織りパターンを形成する。複数のペアの各々は、次のペアとは異なる輪郭パターンを織るバインダー糸で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙技術に関する。より詳しくは、本発明は成形布のような製紙機械で用いられる布に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙プロセスでは、セルロース系繊維ウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維質のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液が堆積することによって成形される。スラリーからは多量の水が成形布を通して排水されていき、成形布の表面にはセルロース系繊維ウェブが残される。
【0003】
新しく作られたセルロース系繊維ウェブは成形部分からプレス部分へと移る。プレス部分には一連のプレスニップが設けられている。セルロース系繊維ウェブはプレス布によって支持されて、或いはよくあることであるが、そのようなプレス布の2つの間に支持されてプレスニップを通って行く。プレスニップではセルロース系繊維ウェブは圧縮力を受けて水を搾り出される。そして、その圧縮力はウェブ中のセルロース繊維を相互に接着させ、セルロース系繊維ウェブを紙シートへと変える。水は一枚あるいは複数枚のプレス布によって受け入れられ、理想的には、紙シートには戻らない。
【0004】
当然のことながら、成形、プレスおよび乾燥の各布はすべて製紙機械上で無端ループの形態をとっており、コンベヤのように機能している。さらに当然のことながら、紙の製造はかなりの速度で進行する連続プロセスである。すなわち、繊維質のスラリーは成形部分の成形布上に連続的に堆積させられる一方、新しく作られた紙シートは乾燥部分から出た後でロールに連続的に巻き取られている。
【0005】
プレス布もまた紙シートの表面の仕上げに関与している。すなわち、プレス布は、プレスニップを通過する過程で滑らかで跡の無い表面を紙に与えるため、滑らかな表面と一様に弾力性のある構造とを持つように設計されている。
【0006】
プレス布はプレスニップにおいて湿紙から搾り出された多量の水を受け入れる。この機能を満たすためには、水が入るための空間(一般に空隙容量といわれる)がプレス布内に存在している必要があり、また、布が全耐用年数にわたって十分な透水性を持っている必要がある。最後に、プレス布は湿紙から受け入れた水がプレスニップから出た後に紙に戻って紙を再び湿らしてしまうことを防止できるようになっている必要がある。
【0007】
紙シートは最後に乾燥部分に移る。乾燥部分は連続した回転乾燥ドラム或いはシリンダを少なくとも一連続含んでいる。これらのドラム或いはシリンダは内部をスチームで加熱されている。新しく形成された紙シートは、乾燥布によって曲がりくねった経路に沿って一連のドラムのそれぞれの周りを順番に運ばれる。乾燥布は紙シートをドラム表面に密着させる。加熱ドラムは蒸発によって紙シートの水分量を好ましいレベルまで減少させる。
【0008】
織布は多くの異なる形態をとる。例えば、無端に織られたものや、或いは、平織りされて縫合で無端の形態にされたものがある。
【0009】
本発明は特に、成形部分で用いられる成形布に関している。成形布は紙の製造プロセスの中で重大な役割を演じる。その機能の1つは、上で暗示したように、製造される紙製品を成形してプレス部分に運ぶことである。
【0010】
しかしながら、成形布は水除去と紙成形に関する問題を解決する必要もある。すなわち、成形布は、水が通り抜ける(つまり、排水速度をコントロールする)と同時に、繊維や他の固形物が水と一緒に通り抜けないように設計されている。排水が速すぎたり遅すぎたりすると、シートの性質や機械効率が損なわれる。排水をコントロールするため、成形布の内部の排水のための空間(一般に空隙容量といわれる)は適切に設計されなければならない。
【0011】
現代の成形布は、製造される紙の品質等級に応じて取り付けられる製紙機械の要求に適合するようにさまざまな種類のスタイルをもって製造されている。一般に、それらはモノフィラメントで織られたベース布を備え、また、それらは単一層或いは多層である。糸は、通常、たとえばポリアミドやポリエステル樹脂のような幾つかの合成ポリマー樹脂のうちの何れか一つから押出し成形され、製紙機械の布技術の分野における当業者によってこの目的で用いられる。
【0012】
成形布の設計では、さらに、望ましい繊維支持と布安定性との間の妥協が必要となる。細かいメッシュの布は望ましい紙表面と繊維支持特性とを得ることができるかもしれない。しかし、そのような設計は望ましい安定性に欠き、布の寿命を短くしてしまうかもしれない。反対に、粗いメッシュの布は安定性と長寿命を得ることができるが、繊維支持と跡に関する可能性を犠牲にしてしまう。設計の妥協を最小限にして支持と安定性の両方を最適化するため、多層布が開発された。たとえば、2層或いは3層の布において、成形面はシートおよび繊維支持に合わせて設計され、また、着用面は安定性、空隙容量および着用耐性に合わせて設計されている。
【0013】
2層或いは3層の布の両方とも通常は紙産業にて使用される。典型的な2層布は一組の縦糸によって織り交ぜられる一組の成形横糸(シュート)と一組の着用横糸とを備えている。一方、典型的な3層布は実質的にバインダー糸で固定されや2つの布(成形層と着用層)からなっている。何れのタイプの布にとっても、バインディングは布の総合的完全性にとって極めて重要である。多層布に関する1つの問題は、布をそのうちに破壊してしまう層間の相対的な滑りである。さらに、バインダー糸は成形層の構造を破壊して紙に跡をつけてしまう。
【0014】
多層布はしばしば、二本のバインダー糸が一緒に(すなわち、ペアとなって)作用して布の表面に切れ目の無い輪郭を効果的に編む「ペアのバインダー糸」の概念を取り入れている。ペアのバインダー糸について記述している参照文献には、米国特許5,967,195(Ward特許)、米国特許5,826,627(Seabrook特許)および米国特許4,501,303(Osterberg特許)が含まれている。
【0015】
この分野の当業者であれば、布は織りによって作られ、縦糸つまり機械方向(MD)と横糸つまり幅方向(CD)の繰り返しである織りパターンを持つことを理解するであろう。
【0016】
3層布のような多層布は、内部摩耗への受け入れられない抵抗があるかもしれない。および/又は、使用している間に織りが緩むかもしれない(すなわち、糸がパターン内の本来の位置から滑るかもしれない)。本発明はそのような不利な点を克服する布を提供する。
【発明の開示】
【0017】
したがって、本発明は製紙機の成形、プレスおよび/または乾燥セクションで使用できる可能性がある多層布である。
【0018】
本発明は、好ましくは、機械方向(MD)糸の第1の層と、MD糸の第2の層と、第1の輪郭パターンを織る第1のバインダー糸と前記第1の輪郭パターンとは異なる第2の輪郭パターンを織る第2のバインダー糸とを備えるペアの幅方向(CD)糸の第1のシステムと、第3の輪郭パターンを織る第3のバインダー糸と前記第3の輪郭パターンとは異なる第4の輪郭パターンを織る第4のバインダー糸とを備えるペアCD糸の第2のシステムとを備えている多層製紙布である。バインダー糸のそれぞれのペアは前記第1の層と本質的に関連するとともに前記第2の層と結合している。ペアCD糸の前記第1および第2のシステムは異なる輪郭パターンを織る。
【0019】
本発明の別の特徴には前記布は3層成形布であってもよいことが含まれる。MD糸の第1の層を備える前記第1の層は前記布の成形側を形成してもよく、MD糸の第2の層を備える前記第2の層は前記布の着用側を形成してもよい。前記第1および第2のシステムのそれぞれのペアのバインダー糸は組み合わさってMD糸の前記第1の層のそれぞれのMD糸を織ってもよい。前記布はCDバインダー糸の前記第1および第2のシステムのペア間において前記第1の層と織り交ぜられるCD糸の第3のシステムをさらに備えてもよく、および/または、MD糸の前記第2の層と織り交ぜられるCD糸の第4のシステムをさらに備えてもよい。前記バインダー糸のうちの少なくともどれかは前記第2の層に2重節を織ってもよい。前記布は1:1、2:1、3:2、3:1といった成形側バインダーシュート比を有していてもよく、或いは、他の適当なシュート比を有していてもよい。前記第2の層の前記MD糸は前記第1の層のとは異なる径であってもよい。前記MD糸とCD糸のうちの少なくともどれかはモノフィラメント糸であってもよく、また、ポリアミド糸あるいはポリエステル糸の1つであってもよい。前記MD糸とCD糸のうちの少なくともどれかは円形断面形状、矩形断面形状および非円形断面形状の中のうちの1つをもっていてもよい。
【0020】
本出願においては、幅方向糸はCD糸、横糸、或いは、シュート糸として記述される。前記バインダー糸は好ましくは幅方向であるが、代わりに機械方向であってもよい。
【0021】
本発明は、以下に識別される図を参照することででより完全に詳細に記述される。図においては対応する要素は同じ参照数字によって識別されている。
【好ましい実施の形態の詳細な説明】
【0022】
この発明は、製紙プロセスで利用されるかもしれない3層布のような多層布に関係する。そのような多層布は第1の(トップ)層および第の(ボトム)層を含んでいて、第1と第2の層の何れも、それとともに織り込まれる機械方向(MD)糸および幅方向(CD)糸のシステムを有していてもよい。第1の層は製紙工程中にセルロースの紙/ファイバースラリーが置かれる紙側か成形層であってよく、第2の層は機械側か着用側層であってよい。布層は横バインダー糸の複数のペアによってともに結び付けられる。ペア内のバインダー糸はそれぞれ異なる輪郭パターンを織り、そして、そのペア内で別のバインダー糸と結び合わさってトップ層(つまりシートサポートバインダー(SSB)シーケンス)中に平織りパターンあるいは二者択一で非平織りパターンを形成している。それぞれのペアは次のペアとは異なった輪郭パターンを織るバインダー糸で構成されている。例えば、布は、第1のペア中のバインダー糸がそれぞれトップ層に2つおよび3つの平織り輪郭を織り、第2のペアが4つおよび1つの平織り輪郭をそれぞれ織るような2つのSSBペアを有する3層成形布であってもよい。
【0023】
ペア中のバインダー糸が異なる輪郭パターンを持っているペアのバインダー糸を組込んだ多層布は以前に提案されている。しかしながら、以前の布は、複数の異なるバインダー糸のペアリングであって、そこでは輪郭パターンが各ペア内で異なるだけでなく輪郭パターンがペア間で異なっているペアリングは含んではいなかった。本発明の付加的な特徴は望まれた特性で布を設計する際のより大きな柔軟性を可能にする。
【0024】
本発明の利点は縮小された表面跡および改善された紙平滑性のための単一平面表面を含んでいる。本発明による布は高速製紙機械上を走行するのに良い安定特性を有している。本布もまた良い紙保持力に帰着する多くの接触点を持っている。
【0025】
図1は、本発明による典型的な布のためのバインダー糸輪郭の2つの異なるペアの概略断面図を示している。図1では、2つのバインダー糸ペアの複数の輪郭が、それらがトップ(成形)層101のMD糸とともに織られ、また、ボトム(着用側)層102を結び付けているように示されている。本布では、バインダー糸103,104の第1のペアは、各ペア間に織られた固有のシュート糸(図示しない)を用いて、バインダー糸105,106の第2のペアと交替する。以下に説明されるように、この例示の布は4+1,2+3の輪郭パターンを持っているとして引用される。その数は、トップ層中にバインダー糸によって作られる節の数を示している。この出願においては、節はCD糸が布の外部の表面で1つ以上のMD糸の上を通ったときに形成される。プラスは次のバインダー糸、つまり、ペアの別のバインダー糸の存在を示している。
【0026】
図1に示す布の第1のバインダーペアに関して、第1のバインダー糸103はトップ層101内でスタートし、MD糸1の上を通り、MD糸3の下を通り、MD糸5の上を通り、MD糸7の下を通り、MD糸9の上を通り、MD糸11の下を通り、MD糸13の上を通り、そして、MD糸15の下を通ってそこで第2のバインダー糸104と交差する。このように、第1のバインダー糸はトップ層に4つの節を形成する。その後、第1のバインダー糸はボトム層102に移り、MD糸18と掛かり合って再びトップ層に移り、そこではMD糸19の下で第2のバインダー糸102と交差して、織りパターンの1つの繰り返しを完成する。したがって、第1のバインダー糸は4の輪郭パターンを持っているとして指定される。第2のバインダー糸104はボトム層102の中でパターンを開始し、MD糸8と掛かり合ってからMD糸15の下でトップ層101に移る。第2のバインダー糸104はMD糸17の上を通ってその唯一の節をトップ層に形成し、その後にMD糸19の下でボトム層に戻り、織りパターンの繰り返しを完成する。したがって、第2のバインダー糸は1の輪郭パターンを持っているとして指定され、この第1のペアはそのバインダー糸パターンが4+1であるとして識別される。第1および第2のバインダー糸の輪郭が結びついてトップ層の1つおきのMD糸を織っており、それによりトップ層に平織りパターンを生み出していることに注意されたい。この場合、バインダーペアはトップ層には本質的であるが、ボトム層を拘束するだけであることにも注意されたい。
【0027】
同様に、第2のバインダーペアに関しては、第3のバインダー糸105はトップ層101内でスタートし、MD糸1の上を通り、MD糸3の下を通り、MD糸5の上を通り、そして、MD糸7の下を通ってそこで第4のバインダー糸106と交差する。このようにして、第3のバインダー糸はトップ層に2つの節を形成する。第3のバインダー糸はそれからボトム層102に移り、MD糸14と掛かり合った後に再びトップ層に移り、そこではMD糸19の下で第4のバインダー糸106と交差して、織りパターンの1つの繰り返しを完成する。第4のバインダー糸106はボトム層102の中でパターンを開始し、そこではMD糸4と掛かり合った後にMD糸7の下でトップ層101に移る。第4のバインダー糸106はMD糸9の上を通り、MD糸11の下を通り、MD糸13の上を通り、MD糸15の下を通り、そして、MD糸17の上を通って3つのの節をトップ層に形成し、その後にMD糸19の下でボトム層に戻り、織りパターンの繰り返しを完成する。ゆえに、第2のバインダーペアはそのバインダー糸輪郭パターンが2+3であるとして識別される。したがって、この例示の布は4+1,2+3の輪郭パターンを持っているとみなされる。
【0028】
本発明は多数のバインダー糸輪郭の置換を包含する。例えば、本発明による布はさらに2+3,1+4;3+2,1+4;2+3,4+1;および3+2,4+1の輪郭パターンを持っていても良い。もちろん、これら、輪郭パターンは発明の単なる代表的例であり、当業者にとっては明白であろう多くの更なる置換が可能である。
【0029】
図2は本発明による典型的な布の成形面の図である。より暗い水平の糸は平織りパターン内に織られている本質的な成形層シュート207である。2+3バインダー糸(205,206)と4+1バインダー糸(203,204)のペアがこれらのシュートの間で交替している。したがって、この典型的な布はバインダーペアに対する成形側シュートの比として1:1の比を有している。
【0030】
図3および図4は、本発明の教示に従って作られた2つの布から抽出されたバインダー糸の2つの異なるペアのプロフィール輪郭図である。図3では、第1のペアは第1のバインダー糸303および第2のバインダー糸304で構成されて4+1の輪郭パターンを作り出している。その一方で、第2のペアは3+2の輪郭パターンを形成する第3のバインダー糸305および第4のバインダー糸306を有している。同様に図4では、第1のペアは第1のバインダー糸403および第2のバインダー糸404で構成されて4+1の輪郭パターンを作り出している。その一方で、第2のペアは2+3の輪郭パターンを形成する第3のバインダー糸405および第4のバインダー糸406を有している。このように、図3中のバインダー糸は4+1,3+2の布から出たもので、図4は4+1,2+3の布から出たものである。
【0031】
図5は本発明による布から出たa)縦糸、b)トップシュート、及び、c)ボトムシュートの輪郭プロフィール図を示している。トップ層の縦糸501の輪郭プロフィールは平織り表面パターンを示している。ボトム層縦糸502は、多くの場合、布の磨耗抵抗を改善するためにトップ層縦糸より大きな直径になっている。トップシュート507もまた平織り表面パターンを反映する。ボトムシュート508もまた典型的には磨耗抵抗のためにより大きな直径になっている。ボトムシュートはさらに布のボトム表面で長いフロートあるいはランナーを形成してもよい。トップおよびボトムシュートはそれぞれの層に本質的であって、バインダー糸のペアの間に織られている。本布のシュート比はトップおよびボトムシュートの数の調節によって、すなわち、如何なる機能的なトップあるいはボトムシュートも有することなく変化させることができる。
【0032】
図6は本発明による別の典型的な布のためのバインダー糸輪郭の2つの異なるペアの概略断面図を示している。図6では、2つのバインダー糸ペアの複数の輪郭が、それらがトップ(成形)層601のMD糸とともに織られ、また、ボトム(着用側)層602を結び付けているように示されている。本布では、バインダー糸603,604の第1のペアは、各ペア間に織られた本質的なシュート糸(図示しない)を用いて、バインダー糸605,606の第2のペアと交替する。この第2の例示の布は3+2,4+1の輪郭パターンを持っている。この布では、各ペア中のバインダー糸のうちの1つが布の着用側表面に2重節輪郭(2重ロックとも呼ばれる)を形成することに注意されたい。具体的には、バインダー糸604はボトム層602中のMD糸4および8と掛かり合い、バインダー糸606はボトム層602中のMD糸6および10と掛かり合って、それぞれが着用側表面に2重節を形成している。
【0033】
本発明の別の特徴は、布の紙成形表面上に平織りパターンを生み出さないパターンを含んでいる。例えば、図7は、紙成形表面上に3シェッドパターンを生み出すバインダー糸輪郭の2つの異なるペア(第1のペア703,704と第2のペア705,706)の概略断面図を示している。図6中に示される例示の布のように、図7中に示される布はさらに3+2,4+1の輪郭パターンを持っているが、そのパターンは10フレームごとではなく15フレーム毎に繰り返す。したがって、図7中の布は、図6中の布が必要とするような20ハーネス織機ではなく30ハーネス織機を必要とする。3シェッドパターンを生み出すため、それぞれのバインダー糸ペアはトップ層中の2つおきにMD糸の下を織る。さらに、第4のバインダー糸706がボトム層に2重節輪郭を形成することに注意されたい。本発明は、多数のハーネスを持った織機を必要とするパターンを含め、他の多くの非平織り表面パターンを包含する。
【0034】
先に述べたように、本発明は、バインダー糸が典型的に布を支持する構造の一部となるシートサポートバインダー(SSB)概念から派生したものである。一般に、これらのバインダー糸は成形層にとっては本質的なペアの横バインダー糸である。また、これらのバインダー糸は着用側層にとっても本質的かもしれないが、着用側層にはくっついているだけである。本発明の好ましい実施の形態では、バインダー糸は結合してトップサイドMD糸を備えた平織りを生み出すことで、トップ層にとって本質的なものになっている。
【0035】
本発明の他の特徴には、パターンが成形側バインダーシュート比として1:1,2:1,3:2,3:1,あるいは当技術において既知の他のシュート比率を有していてもよいことが含まれる。成形側バインダーシュート比は、ここでは、布の成形層中のバインダー糸のペアに対する成形側シュート(あるいは規則的なCD糸)の比率であるとして定義される。なお、バインダー糸の各ペアは単一のシュートと見なされる。布は、また、成形側と着用側のシュート比として1:1,2:1,3:2,3:1,もしくは他の適当なシュート比を有していてもよい。バインダー糸の各々は単に着用側を拘束するように作用するだけでもよいし、あるいは、着用側パターンと一体的に混在することもできる。バインダー糸は同じ若しくは異なる材料で作られていてもよいし、異なる直径であってもよい。バインダー糸は、さらに、布の着用側表面で2重節輪郭を形成してもよい。各ペア中の1つあるいは両方のバインダー糸は、着用側層の構造にとって本質的であってもよい。バインダー糸は幅方向に走行してもよいし、代わりに、機械方向に走行してもよい。バインダー糸ペアは、トップ層に平織りパターンあるいは非平織りパターンを形成してもよい。本発明による布は、20,30,40,および48のハーネス織機を含むがこれらには限定されない、様々なサイズの織機で織ってもよい。これらの例は発明の単に代表的な例であって発明を制限するのが目的ではないことに注意されたい。
【0036】
本発明による布はモノフィラメント糸を含んでいてもよい。糸はポリエステルモノフィラメントでもよく、および/または、ポリエステルまたはポリアミドでできたものがあってもよい。さらに、布は、マルチフィラメント糸、プライド或いはモノフィラメント糸、バイコンポーネント糸、および/または、当技術において既知の他の適切な糸からなっていてもよい。糸は1つ以上の異なる直径を備えた円形断面形状を有していてもよい。さらに、円形断面形状に加えて、1つ以上の糸が長方形断面形状や別の非円形断面形状のような他の断面形状を有していてもよい。
【0037】
さらに、本発明は製紙プロセスに使用可能であると説明されたが、本発明はそのようには限定されない。すなわち、本布は他の用途に利用されてもよい。
【0038】
上記への変形は当業者にとっては明白だろうが、本発明の範囲を超えるように変形された発明をもたらさないであろう。特許請求の範囲はそのような状況をカバーするように解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による典型的な布のためのバインダー糸輪郭の2つの異なるペアの概略断面図を示している。
【図2】本発明の実施の形態による布の形成面の図である。
【図3】本発明による布からのバインダー糸の2つの異なるペアの輪郭プロフィール図を示している。
【図4】本発明による別の布からのバインダー糸の2つの異なるペアの輪郭プロフィール図を示している。
【図5】本発明による布から出たa)縦糸、b)トップシュート、及び、c)ボトムシュートの輪郭プロフィール図を示している。
【図6】本発明による別の典型的な布のためのバインダー糸輪郭の2つの異なるペアの概略断面図を示している。
【図7】本発明による第3の典型的な布のためのバインダー糸輪郭の2つの異なるペアの概略断面図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械方向(MD)糸の第1の層と、
MD糸の第2の層と、
第1の輪郭パターンを織る第1のバインダー糸と前記第1の輪郭パターンとは異なる第2の輪郭パターンを織る第2のバインダー糸とを備えるペアの幅方向(CD)糸の第1のシステムと、
第3の輪郭パターンを織る第3のバインダー糸と前記第3の輪郭パターンとは異なる第4の輪郭パターンを織る第4のバインダー糸とを備えるペアCD糸の第2のシステムとを備え、
前記第1および第2のシステムの前記ペアCD糸はそれぞれ前記第1の層にとって本質的であるとともにそれぞれ前記第2の層と結合し、
ペアCD糸の前記第1および第2のシステムは異なる輪郭パターンを織る、
ことを特徴とする製紙機械の布。
【請求項2】
前記布は横糸で結び付けられた3層成形布である、
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項3】
MD糸の前記第1の層は前記布の成形側を形成し、MD糸の前記第2の層は前記布の着用側を形成している
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項4】
バインダー糸の前記第1および第2のシステムのペア間においてMD糸の前記第1の層と織り交ぜられるCD糸の第3のシステムをさらに備える
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項5】
MD糸の前記第2の層と織り交ぜられるCD糸の第4のシステムをさらに備える
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項6】
前記第1および第2のシステムのそれぞれのペアの前記バインダー糸は組み合わさって前記第1の層のMD糸を織っている
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項7】
前記バインダー糸のうちの少なくともどれかは前記第2の層に2重節を織っている
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項8】
前記MD糸とCD糸のうちの少なくともどれかはモノフィラメント糸である
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項9】
前記MD糸とCD糸のうちの少なくともどれかはポリアミド糸あるいはポリエステル糸の1つである
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項10】
前記MD糸とCD糸のうちの少なくともどれかは円形断面形状、矩形断面形状および非円形断面形状の中のうちの1つをもつ
ことを特徴とする請求項1記載の製紙機械の布。
【請求項11】
幅方向(CD)糸の第1の層と、
CD糸の第2の層と、
第1の輪郭パターンを織る第1のバインダー糸と前記第1の輪郭パターンとは異なる第2の輪郭パターンを織る第2のバインダー糸とを備えるペアの機械方向(MD)糸の第1のシステムと、
第3の輪郭パターンを織る第3のバインダー糸と前記第3の輪郭パターンとは異なる第4の輪郭パターンを織る第4のバインダー糸とを備えるペアMD糸の第2のシステムとを備え、
前記第1および第2のシステムの前記ペアMD糸はそれぞれ前記第1の層と本質的に関連するとともにそれぞれ前記第2の層と結合し、
ペアMD糸の前記第1および第2のシステムは異なる輪郭パターンを織る、
ことを特徴とする製紙機械の布。
【請求項12】
前記布は縦糸で結び付けられた3層成形布である、
ことを特徴とする請求項11記載の製紙機械の布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−522458(P2009−522458A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548574(P2008−548574)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047811
【国際公開番号】WO2007/075372
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】